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特開2022-149286ポルフィラン粒子とその製造方法、および化粧料
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  • 特開-ポルフィラン粒子とその製造方法、および化粧料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149286
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ポルフィラン粒子とその製造方法、および化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220929BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220929BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61Q1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051352
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 直幸
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 裕一
(72)【発明者】
【氏名】佐土原 功樹
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB232
4C083AB442
4C083AC022
4C083AC422
4C083AC482
4C083AD152
4C083AD211
4C083AD212
4C083CC12
4C083DD16
4C083DD17
4C083EE06
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】優れた感触特性を持つ粒子を、生分解性に優れた水溶性の材料で実現する。
【解決手段】 本発明のポルフィラン粒子は、ガラクトース分子を構成単位とするトランス型の多糖類であるポルフィランで主に構成されている。平均粒子径が0.5~20μm未満、蛋白質の含有量が100ppm未満である。また、本発明のポルフィラン粒子の製造方法は、蛋白質の含有量が100ppm未満のポルフィランの分散液を調製する工程と、分散液を噴霧乾燥して造粒し、ポルフィラン粒子の粉末を得る工程を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラクトース分子により構成されたトランス型の多糖類であるポルフィランが集って形成されたポルフィラン粒子であって、平均粒子径が0.5~20μm未満、蛋白質の含有量が100ppm未満であることを特徴とするポルフィラン粒子。
【請求項2】
真球度が0.85以上である請求項1に記載のポルフィラン粒子。
【請求項3】
ヒ素の含有量が5ppm未満である請求項1または2に記載のポルフィラン粒子。
【請求項4】
当該ポルフィラン粒子を40℃/90%RHの条件下で12時間放置したとき、水分保持量が30%以上である請求項1~3のいずれか一項に記載のポルフィラン粒子。
【請求項5】
前記ポルフィラン粒子中のポルフィランの含有率が、90%以上である請求項1~4のいずれか一項に記載のポルフィラン粒子。
【請求項6】
蛋白質の含有量が100ppm未満のポルフィランの分散液を調製する工程と、
前記分散液を噴霧乾燥して造粒し、ポルフィラン粒子の粉末を得る工程と、を備えることを特徴とするポルフィラン粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポルフィラン粒子が配合された化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な生分解性を持つポルフィランが集まって形成されたポルフィラン粒子に関し、特に、球状のポルフィラン粒子とこれを含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、石油由来の合成高分子(プラスチック)は、さまざまな産業で利用されている。合成高分子の多くは、長期安定性を求めて開発されているため、自然環境中で分解されない。これにより、様々な環境問題が起こっている。例えば、水環境に流出したプラスチック製品が長い期間蓄積され、海洋や湖沼の生態系に大きな害を与えている。また、近年、マイクロプラスチックと呼ばれる長さが5mm以下からナノレベルまでの微細なプラスチックが大きな問題となっている。マイクロプラスチックに該当するものとして、化粧用品などに含まれる微粒子、加工前のプラスチック樹脂の小さな塊、大きな製品が海中で浮遊するうちに微細化した物、などが挙げられている。
【0003】
近年では、数百μm級のプラスチック粒子(例えば、ポリエチレン粒子)を化粧料に配合して、化粧料の感触特性を向上させている。プラスチック粒子は、真比重が軽いため下水処理場で除去し難く、河川、海洋、池沼等に流れ出易い。更に、プラスチック粒子は、殺虫剤などの化学物質を吸着し易いため、生物濃縮により人体に影響を与える虞がある。このことは国連環境計画等でも指摘されており、各国、各種業界団体が規制を検討している。
【0004】
また、自然派化粧品やオーガニック化粧品に関心が高まっており、化粧品の自然・オーガニック指数表示に関するガイドライン(ISO16128)が制定されている。このガイドラインによれば、製品中の原料を、例えば、自然原料、自然由来原料、非自然原料に分類し、各原料の含有量に基づいて指数が算出される。今後、このガイドラインに沿って商品に指数が表示されることとなるため、自然由来原料、更に、自然原料が要求されるであろう。
【0005】
このような背景から、自然環境中で微生物などにより水と二酸化炭素に分解され、自然界の炭素サイクルに組み込まれる生分解性プラスチックが注目されている。特に、植物由来の自然原料であるセルロース粒子は、環境に流出しても水に浮くことがなく、また、良好な生分解性を持つため、環境問題を引き起こす懸念が少ない。意図的な化学修飾を行わないプロセスにより得られるセルロースを用いて、スクラブ剤に適した強度と崩壊性を持つ粉末状セルロース粒子が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、有機溶媒に分散させたセルロースをスプレードライ法により造粒、乾燥し、I型の結晶性セルロース粒子を作製することが知られている(例えば、特許文献2を参照)。また、I型の結晶性セルロースとシリカを含む球状の複合粒子を用いることにより、感触特性と環境への配慮が両立した化粧料が得られることが知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-88873号公報
【特許文献2】特開平2-84401号公報
【特許文献3】WO2019/189692
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献のセルロースは、グルコース分子により構成されたトランス型の多糖類であり、水には溶解しない。そのため、セルロースは、自然界での分解性は高くないと考えられている。そこで、本発明の目的は、生分解性に優れた水溶性の材料を用いて、優れた感触特性が得られる粒子を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、ポルフィランを用いて、良好な感触特性が得られる粒子を実現した。ポルフィランは、ガラクトース分子により構成されたトランス型の多糖類の一種であり、水酸基の一部が硫酸基に置換されている。そのため、水溶性が高く、高い生分解性を持つとされている。このようなポルフィランで形成された粒子が配合された化粧料は、環境問題を引き起こす懸念が少なく、さらに、従来のプラスチックビーズと同様な感触特性を得ることができる。本発明によるポルフィラン粒子は、ガラクトース分子で構成されたトランス型の多糖類であるポルフィランが集まって形成されている。ポルフィラン粒子の平均粒子径は0.5~20μm未満、蛋白質の含有量は100ppm未満である。
【0009】
本発明によるポルフィラン粒子の製造方法は、蛋白質の含有量が100ppm未満のポルフィランの分散液を調製する工程と、分散液を噴霧乾燥して造粒し、ポルフィラン粒子の粉末を得る工程を備えている。
【0010】
上述したいずれかのポルフィラン粒子と化粧料成分を配合して、化粧料を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のポルフィラン粒子の外観を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるポルフィラン粒子は、「ガラクトース分子により構成されたトランス型の多糖類」であるポルフィランが集って形成されており、平均粒子径dが0.5μm以上20μm未満、蛋白質の含有量が100ppm未満である。平均粒子径dは化粧料の感触特性に影響を与える。0.5μm未満では、転がり感、転がり感の持続性、均一な延び広がり性などの感触特性が著しく低下する。一方、20μmを超えると、ざらつきが感じられ、ソフト感としっとり感が低下する。平均粒子径dは1~20μmが好ましく、1~15μmが最適である。
【0013】
ポルフィランの原料である海藻類には、豊富な蛋白質が含まれている。代表的な加工食品である海苔でも、まれに食物アレルギーを引き起こすことがあると指摘されている。また、加水分解コムギによる食物依存性運動誘発性アレルギーのような未知の健康被害も懸念される。そのため、あらかじめ原料の段階で精製して、蛋白質を低減することが望ましい。そこで、ポルフィラン粒子中の蛋白質を100ppm未満にする。10ppm未満がさらに好ましい。蛋白質量は、ケルダール法で求められる。
【0014】
また、海藻類にはヒ素を吸収する性質がある。そのため、ポルフィランには、ヒ素が数十~数百ppm程度含まれると言われている。そこで、安全性を考慮して、造粒前に精製し、あらかじめヒ素を除去(低減)しておくことが好ましい。ポルフィラン粒子中のヒ素含有量は、5ppm未満が好ましい。5ppm以上含まれる場合、化粧料への配合が許されないおそれがある。
【0015】
ポルフィラン粒子の真球度は0.85以上が好ましい。真球度が0.85未満の粒子が配合された化粧料では、良好な転がり性が得られない。真球度は0.90以上が特に好ましい。
【0016】
ポルフィランは、ヒアルロン酸と同等の保湿力を持つことが知られている。ポルフィラン粒子を40℃/90%RHの条件下で12時間静置した後、水分保持量が30%以上であることが好ましい。化粧料に配合した際に外部刺激や乾燥を防ぐことができる。特に、50%以上が好ましい。
【0017】
ここで、ポルフィラン粒子中のポルフィランの含有率は、90%以上が望ましい。95%以上、99%超、実質的に100%が特に好ましい。含有量が多いほど前述のガイドラインによる自然指数が高くなる。なお、ポルフィランの含有率(固形分あたりのポルフィランの含有量)は、フェノール硫酸法によって測定し、あらかじめガラクトースを用いて作成した検量線により得られた濃度から算出することができる。
【0018】
次に、ポルフィラン粒子の製造方法について説明する。
【0019】
まず、ポルフィランの分散液を用意する。ポルフィランは、海苔などに多く含まれており、熱水処理により抽出する公知の方法(例えば、特開2005-120193号公報)により得ることができる。その他、市販のポルフィラン粉末(MMO社製)やポルフィラン抽出液(白子社製)を用いてもよい。ポルフィラン粉末を用いる場合は、70℃以上90℃未満の温水に分散させる。さらに超音波を照射して分散を促進する。更に任意のアルカリ水溶液を用いてpHを8以上10未満に調整することで、均一な分散液を得ることができる。この分散液の固形分濃度を1~7%の範囲に調整して、適切な粘度の分散液とする。
【0020】
ポルフィラン粉末を分散させる温水の温度が70℃未満の場合は、ポルフィラン粉末の分散が不十分となりやすい。そのため、噴霧乾燥時に粒子が球状になりにくく、真球度が低くなる。温水の温度を90℃以上にしてもポルフィラン粉末の分散が促進されることもなく、経済性が悪く特に利点が無い。また、超音波照射をしなかった場合も、分散が不十分となる。アルカリ水溶液を用いて調整するpHが8未満の場合も、分散が不十分となる。pHを10以上にしても分散がさらに促進されることもなく、経済性が悪く特に利点が無い。固形分濃度が7%を超える場合は、通常、粘度が高くなり、噴霧乾燥時に球状液滴を形成できず、粒子の真球度が低下しやすい。また、噴霧乾燥時に液滴が大きくなりやすく、粒子径が大きくなりやすい。1%未満では経済性が悪く、特に利点もない。なお、分散液の溶媒は水が好ましい。
【0021】
次に、ポルフィラン粉末の分散液に、プロテアーゼ等を用いた酵素処理、アセトン等を用いた溶媒抽出処理、あるいは、リンゴ酸等を用いた有機酸処理を行う。これにより、蛋白質を低減させ、残留蛋白質を100ppm未満にすることができる。これらの低減化処理を組み合わせてもよい。
【0022】
さらに、分散液に含まれるヒ素を低減することが好ましい。前述の蛋白質の低減化処理における洗浄により、ヒ素をある程度減らすことができるものの、5ppm未満にすることは困難である。そこで、強酸性の陽イオン交換樹脂を用いることにより、分散液からヒ素を5ppm未満まで除去することができる。このヒ素の低減処理は蛋白質の低減処理前に行ってもよい。
【0023】
次に、残留蛋白質が低減されたポルフィランの分散液を用いて、スプレードライヤーによる噴霧乾燥法で造粒する。造粒の前に蛋白質やヒ素の低減化処理を行う。熱風気流中に1~3リットル/分の速度で噴霧することによって、ポルフィラン粒子が作製される。噴霧は、アトマイザー、二流体ノズル等を用いて行うことができる。熱風は、入口温度で70~200℃、出口温度で40~60℃が好ましい。入口温度が70℃未満では、分散液中に含まれる固形分の乾燥度合いが悪くて装置内に付着してしまう。また200℃を超えると、ポルフィランが分解するおそれがある。また、出口温度が40℃未満では、固形分の乾燥度合いが悪くて装置内に付着してしまう。より好ましい入口温度は、130~190℃である。また、二流体ノズルの場合は、噴霧液滴を生成させるための噴霧エアー圧力を目的の粒子径に応じて0.05~0.60MPaの範囲で調整することができる。噴霧エアー圧力が0.05MPa未満の場合は、均一な噴霧液滴になりにくく、一部の液滴が大きくなりすぎて熱風気流中で乾燥できず、装置内部に付着してしまう。0.60MPaを超えても噴霧状態がさらに良化することはなく特に利点がない。アトマイザーを用いる場合は、回転数を所望の粒子径に応じて3000~30000rpmの範囲で調整することができる。回転数が3000rpm未満の場合は、均一な噴霧液滴になりにくく、一部の液滴が大きくなりすぎて熱風気流中で乾燥できず、装置内部に付着してしまう。30000rpmを超えても噴霧状態がさらに良くなることはなく特に利点がない。
【0024】
<化粧料>
上述のポルフィラン粒子と各種化粧料成分を配合して化粧料が得られる。このような化粧料によれば、シリカ粒子と同様の転がり感、転がり感の持続性、及び均一な延び広がり性、プラスチックビーズと同様のソフト感としっとり感を同時に得ることができる。すなわち、化粧料の感触改良材に求められる代表的な感触特性を満たすことができる。
【0025】
具体的な化粧料を表1に分類別に例示する。このような化粧料は、従来公知の一般的な方法で製造できる。化粧料は、粉末状、ケーキ状、ペンシル状、スティック状、クリーム状、ジェル状、ムース状、液状、クリーム状などの各種形態で使用される。
【0026】
各種化粧料成分として代表的な分類や成分を表2に例示する。さらに、医薬部外品原料規格2006(発行:株式会社薬事日報社、平成18年6月16日)や、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook(発行:The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Association、Eleventh Edition2006)等に収載されている化粧料成分を配合してもよい。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【実施例0029】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。
【0030】
[実施例1]
ポルフィラン粉末(MMO社製)300gを5700gの純水に懸濁した。その懸濁液に蛋白質分解酵素(ノボザイムス社製フレーバーザイム1000L)を30g添加して25℃で19時間攪拌した。ブフナー漏斗(関谷理化硝子器械社製3.2L)を用いて定量濾紙(アドバンテック東洋社製No.2)で濾過した。その後、濾水の電導度が1mS/m以下になるまで、純水により繰り返し洗浄し、蛋白質分解酵素を除去した。このような蛋白質除去処理により得られたケーキ状物質を、60℃で12時間乾燥した。これによって、蛋白質を87ppmまで低減したポルフィラン粉末250gを得た。
【0031】
次に、このポルフィラン粉末150gを純水2850gに懸濁した。この懸濁液を陽イオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)200mLが充填されたカラムに通過させて、ヒ素を低減した。得られたポルフィラン懸濁液を300g取り、これを80℃に加熱し30分間保持した。その後、ホーン型超音波分散機(BANDELIN社製SONOPLUS HD2070型)を用いて超音波出力100%で3分間超音波を照射した。その後、23℃まで冷却し、1%NH水溶液を加えてpHを9.1に調整した。これにより、固形分濃度5%のポルフィラン分散液が得られた。
【0032】
このポルフィラン分散液を噴霧乾燥して、ポルフィラン粒子の粉体を得た。本実施例では、入口温度160℃の熱風気流中に1リットル/分の速度で分散液を供給した。アトマイザーを用いて噴霧し、その回転数を27000rpmとした。本実施例で出口温度を測定したところ55℃であった。得られたポルフィラン粒子のSEM写真を図1に示す。
【0033】
ポルフィラン粒子の噴霧条件を表3に示す。また、ポルフィラン粒子の粉体の物性を以下の方法で測定した。その結果を表4に示す。後述の実施例と比較例も同様とする。
【0034】
(1)平均粒子径
レーザー回折法により、ポルフィラン粒子の粒度分布を測定する。ここでは、堀場製作所製のLA-950v2を用いて粒度分布を測定した。得られた粒度分布からメジアン値を求め、平均粒子径とした。
【0035】
(2)真球度
透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H-8000)により、2000倍から25万倍の倍率で撮影し、写真投影図を得た。この写真投影図から、任意の50個の粒子を選び、それぞれの最大径Dと、これに直交する短径Dを測定し、比(D/D)を求めた。それらの平均値を真球度とした。
【0036】
(3)ヒ素含有量
ポルフィラン粒子の粉体約1gを白金皿に採取し、硝酸5ml、弗化水素酸10mlを加えて、サンドバス上で加熱した。乾固した後、少量の水と硝酸50mlを加えて溶解させて100mlのメスフラスコにおさめ、水を加えて100mlの溶液とした。次に、この溶液(100ml)から分液10mlを5個得る。そして、これを用いて、ICPプラズマ発光分析装置(SII社製、SPS5520)により標準添加法でヒ素の含有量を測定した。
【0037】
(4)蛋白質含有量
蛋白質含有量は、ケルダール法により求めた。具体的には、ポルフィラン粒子の粉体を硫酸により加熱分解し、試料中の窒素を硫酸アンモニウムとした。次に、この分解液をアルカリ性として、遊離したアンモニアを蒸留し、そのN量を滴定により測定した。このN量に6.25を乗じた値を蛋白質含有量とした。
【0038】
(5)水分保持量
予め500℃1時間の条件で吸着水分を除去した磁性るつぼにポルフィラン粉末を投入し、40℃90%RHの条件下に12時間曝した。さらに、105℃2時間の条件で乾燥させ、減量を測定した。減量した割合(重量%)をポルフィラン粒子の水分保持量とした。
【0039】
[実施例2]
アトマイザーの回転数を20000rpmとした以外は実施例1と同様にしてポルフィラン粒子の粉体を得た。
【0040】
[実施例3]
二流体ノズルを用いて、噴霧エアー圧力を0.4MPaとして噴霧した。このとき、入口温度190℃の熱風気流中に2リットル/分の速度でポルフィラン分散液を供給した。これ以外は実施例1と同様にしてポルフィラン粒子の粉体を得た。
【0041】
[実施例4]
噴霧エアー圧力を0.5MPaとし、入口温度160℃の熱風気流中に1リットル/分の速度でポルフィラン分散液を供給した。これ以外は実施例3と同様にしてポルフィラン粒子の粉体を得た。
【0042】
[比較例1]
アトマイザーの回転数を5000rpmとした以外は実施例1と同様にしてポルフィラン粒子の粉体を得た。
【0043】
[比較例2]
本比較例では、蛋白質低減処理を行わないこと以外は実施例1と同様にしてポルフィラン粒子の粉体を得た。すなわち、ポルフィラン粉末(MMO社製)150gを純水2850gに懸濁し、ヒ素低減処理を行った。これ以降は実施例1と同様にポルフィラン粒子の粉体を調製した。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
〈ポルフィラン粒子の粉体の感触特性〉
次に、各実施例と比較例で得られた粉体の感触特性を評価した。各粉体について、20名の専門パネラーによる官能テストを行い、さらさら感、しっとり感、転がり感、均一な延び広がり性、肌への付着性、転がり感の持続性、およびソフト感の7つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。評価点基準(a)に基づく各人の評価点を合計し、評価基準(b)に基づき感触特性を評価した。結果を表5に示す。
評価点基準(a)
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣る。
1点:非常に劣る。
評価基準(b)
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
▲:合計点が20点以上40点未満
×:合計点が20点未満
【0047】
【表5】
【0048】
〈パウダーファンデーションの使用感〉
ポルフィラン粒子の粉体を用いて表6に示す配合比率(重量%)となるようにパウダーファンデーションを作製した。すなわち、各例で得られた粉体を成分(1)として、成分(2)~(9)とともにミキサーに入れて撹拌し、均一に混合した。次に、化粧料成分(10)~(12)をこのミキサーに入れて撹拌し、さらに均一に混合した。得られたケーキ状物質を解砕処理した後、その中から約12gを取り出し、46mm×54mm×4mmの角金皿に入れてプレス成型した。このようにして得られたパウダーファンデーションについて、20名の専門パネラーによる官能テストを行った。肌への塗布中の均一な延び、しっとり感、滑らかさ、および、肌に塗布後の化粧膜の均一性、しっとり感、柔らかさの6つの評価項目に関して聞き取り調査を行った。前述の評価点基準(a)に基づく各人の評価点を合計し、前述の評価基準(b)に基づきファンデーションの使用感を評価した。結果を表7に示す。
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
図1