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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149291
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】継手保温カバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 59/18 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
F16L59/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051358
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 康晴
【テーマコード(参考)】
3H036
【Fターム(参考)】
3H036AA04
3H036AB18
3H036AB25
3H036AC02
3H036AD07
3H036AE04
(57)【要約】
【課題】給湯給水用のパイプ同士を接続する保温カバーにおいて、カバーの外側面及び内側面が紫外光に晒されることによる変質の発生を抑制し、耐候性を向上させる。
【解決手段】継手の片側半面を覆う半円筒形の被覆面部2,2を、継ぎ目部3を挟んで連接して保温カバー1を形成する。両被覆面2,2及び継ぎ目部3の外側面には耐候フィルム12が一体に接着する。両被覆面部2,2の軸方向両端部には、潰されて肉薄に形成されたフランジ部4を一体に設ける。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継ぎ目部を挟んで連接された半円筒形の被覆面部を、給水給湯用のパイプが接続した継手の片側半面にそれぞれ被せて継手を保温する合成樹脂製の保温材からなる継手保温カバーであって、
前記両被覆面及び継ぎ目部の外側面に耐候フィルムが一体に接着されているとともに、
前記両被覆面部はその軸方向両端部に、潰されて肉薄に形成された当該両被覆面部の内面と連なるフランジ部が設けられた構成を有することを特徴とする継手保温カバー。
【請求項2】
被覆面部の両側部に沿って線材の巻き付け位置を特定する複数の凹部が設けられた構成を有することを特徴とする請求項1に記載の継手保温カバー。
【請求項3】
継ぎ目部を挟んで連接された被覆面部のうち、少なくとも一方の被覆面部の側部に重なり代が設けられた構成を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の継手保温カバー。
【請求項4】
両被覆面部の内面に、継手表面の凸面部の外面に嵌って重なる凹面部が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の継手保温カバー。
【請求項5】
耐候フィルムにエンボス加工がされていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の継手保温カバー。
【請求項6】
表面が半円筒状に湾曲した凸面部が上面に並設された凸状型と、凸状型の上面に重なる凹状型からなる成形金型を用い、
耐候フィルムが上面に重なったシート状の保温材を前記凸状型の凸面部上に載せ、その上に凹状型を重ねて耐候フィルムとシート状の保温材を挟み込み、これを両型で圧縮し加熱して前記保温材を、半円筒形の被覆面部が継ぎ目部で連接した形状に成形することを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の継手保温カバーの製造方法。
【請求項7】
凸状型の凸面部は、継手の片側半面の輪郭に略沿った形状であることを特徴とする請求項6に記載の継手保温カバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水給湯用のパイプが接続した継手に被せて継手を保温する継手保温カバー(以下、「保温カバー」ともいう。)の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
給水給湯用のパイプ同士を接続する継手の保温カバーとして、管体を二つ割り形状にした構造の金型を用意し、この中に発泡性樹脂を充填して加熱発泡させて、継手の外側半面を覆う半円筒形の殻体がヒンジ部を挟んで一体につなげて成形した構成のものが使用されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-54986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発泡性樹脂成形体は耐候性に劣るため、前記保温カバーの設置にあたっては、継手に被せた保温カバーを耐候シートや耐候フィルムで覆い、その上から粘着テープを巻き付けて固定したり、耐候テープを保温カバーの表面に何重にもぐるぐる巻きにして耐候テープで保温カバーが覆われるようしたりするなど、保温カバーが露出しないようにする処理が必要であった。
【0005】
継手に保温カバーを取り付けた後に耐候シートや耐候フィルム、耐候テープで保温カバーを覆う処理は面倒であり、とりわけ配管スペースが狭小な場合にはテープ巻き付け作業がしづらく、継手を保温カバーで覆う工事の作業性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような問題点に鑑み、前記耐候シートや耐候フィルム、耐候テープなどを準備して保温カバーに取り付ける作業の手間をなくし、耐候性に優れた継手保温カバーを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明の継手保温カバーは、継ぎ目部を挟んで連接された半円筒形の被覆面部を、給水給湯用のパイプが接続した継手の片側半面にそれぞれ被せて継手を保温する合成樹脂製の保温材からなる保温カバーであって、
前記両被覆面及び継ぎ目部の外側面に耐候フィルムが一体に接着されているとともに、
前記両被覆面部はその軸方向両端部に、潰されて肉薄に形成された当該両被覆面部の内面と連なるフランジ部が設けられた構成を有することを特徴とする。
【0008】
前記構成の保温カバーは、継ぎ目部で折り曲げて両被覆面部を継手の片側半面にそれぞれ被せ、保温カバーの表面に後述する固定用線材を巻き付けて結束し、継手の外側面に保温カバーの内周面を密着させて取り付けることで、外気との接触を遮断して継手を保温することができる。
これによれば、保温カバーはその外側面に耐候フィルムが接着されており、当該保温カバーを成形する保温材の外側面が耐候フィルムで覆われて外側に露出してはいないので、紫外線が当たることによる変形や変色、劣化などの変質が保温カバーに生じることを防止し、保温カバーの耐候性を高めることができる。保温カバーの外側面が耐候フィルムで覆われているので、保温カバーの設置にあたり、別途耐候シートや耐候フィルム、粘着テープ、耐候テープなどを準備する必要はなく、これらで継手に取り付けられた保温カバーを覆う処理も不要である。
また、保温カバーの両被覆面部の軸方向両端部には、当該両端部外面を潰して肉薄に形成されたフランジ部が設けられているので、前記両被覆面部の内側面、換言すれば前記保温材の耐候フィルムが貼られていない部分が、前記フランジ部から外側に露出しにくくなり、保温カバーの内面側が露出することによる変質の発生を抑制し、保温カバーの耐候性がより高められる。
【0009】
前記構成の保温カバーは、両被覆面部を継手の片側半面にそれぞれ装着して継手の外側面全体をぐるりと覆って接触させた状態で、継手に被せた保温カバーの外側に結束バンドなどの固定用線材を巻き付けて結束することにより固定される。
この固定用線材を巻き付ける操作の際に、継手に保温カバーがしっかりと被さるよう、保温カバーの被覆面部の側部に巻き付け位置を特定するための複数の凹部が設けられていることが好ましい。
凹部に沿って固定用線材を巻き付けて結束することで、継手の表面に保温カバーをしっかりと密着させることできて保温効果が高まり、また、凹部に固定用線材を掛けて巻き付ける操作は容易であり、保温カバーを取り付ける作業性が向上する。固定用線材を巻き付けるための孔部を保温カバーに設ける場合、孔部から保温カバーの内部が露出して変質をきたしやすくなるが、凹部であるため保温カバーの内部が露出する虞はない。
【0010】
前記のとおり、保温カバーは、継ぎ目部で折り曲げて両被覆面部を継手の片側半面にそれぞれ被せ、両被覆面部の継ぎ目部の側とは反対側の側部同士を突き合せ或いは重ね合わせることで筒状に形を変えて継手の外側面に装着される。この場合に、保温カバーを筒状にしたときに、前記両被覆面部の側部同士を突き合せ或いは重ね合わせた部分に隙間ができないように、一方の被覆面部の側部に重なり代が設けられていてもよい。
【0011】
前記構成の保温カバーにおいて、両被覆面部の内面に、継手表面の凸面部の外面に嵌って重なる凹面部が形成されていることが好ましい。
保温カバーの両被覆面部に、これを装着して保温する継手の表面の凸面の部分に対応した凹面部が形成されていれば、両被覆面部を継手の片側半面にそれぞれ被せた際に、前記凹面部が継手表面の凸面部の外面に嵌って重なることで保温カバーの継手外面への密着性が増し、継手に装着した保温カバーがずれにくくなり、継手の保温性能が向上する。また、継手に装着したときの保温カバーの外面に表出する凹凸も目立たなくなる。
【0012】
前記構成の保温カバーは、例えば、表面が半円筒状に湾曲した凸面部が上面に並設された凸状型と、凸状型の上面に重なる凹状型からなる成形金型を用い、耐候フィルムが上面に重なったシート状の保温材を前記凸状型の凸面部上に載せ、その上に凹状型を重ねて耐候フィルムと保温材を挟み込み、これを両型で加熱し圧縮して前記保温材を成形する加工工程により製造することができる。
この場合、前記凸状型の凸面部が継手の片側半面の輪郭に略沿った形状であれば、保温カバーの被覆面部の内面に、継手表面の凸面部に対応した凹面部を設けることができる。
【0013】
保温カバーの材料である保温材としては、ポリエチレン系発泡体などの発泡性樹脂からなるシートを用いることができる。
耐候フィルムは、耐候剤を含んだポリエチレンフィルムなどの紫外光を遮蔽する効果を奏するフィルムを用いることができる。
前記のとおり、耐候フィルムはシート状の保温材の上に重なって成形金型内にセットされ、成形金型内で圧縮し加熱されて保温カバーに成形されるが、耐候フィルムの表面にエンボス加工がされていれば、成形の際にフィルムが破断せず、且つ保温材の表面に厚みのムラのない一様な厚さに延伸させて保温材の表面に接着させることができて好ましい。
表面に耐候シートが重なって接着されたシート状の保温材を用い、これを前記成形金型にセットして保温カバーを成形してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の保温カバーの外側の外観図である。
図2図1の保温カバーの内側の外観図である。
図3】(A),(B)は図1の保温カバーの軸方向に沿った一側の端部の拡大外観図である。
図4図1の保温カバーを筒状に曲げた状態の要部外観図である。
図5】被覆面部の内面に継手表面の凸部に対応した凹部を有する保温カバーの内側の外観図である。
図6】保温カバーを製造するための成形金型の態様の一例を示した図である。
図7】保温カバーを継手に取り付ける手順を説明するための図である。
図8】保温カバーを継手に取り付けた状態の外観図である。
図9図8の保温カバーの端部部分の拡大外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の保温カバーの好適な一実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は本発明の一実施形態の保温カバーの外側の面、図2はその内側の面をそれぞれ示している。
図示した形態の保温カバー1は、上面に耐候シート12が重なった発泡性樹脂からなるシート状の保温材11を成形金型で圧縮成形して継手PFの外側面に装着され得る大きさに形成され、両図に示されるように、継手PFの片側半面ずつを覆う半円筒形の被覆面部2,2が継ぎ目部3を挟んで連接されているとともに、両被覆面部2,2の軸方向両端部に、それぞれ潰されて肉薄に形成された、両被覆面部2,2の内面と連なるフランジ部4を一体に設けて形成されている。
【0017】
保温カバー1を形成する保温材11の上面には耐候フィルム12が一体に接着されている。図3に示されるように、両被覆面部2,2の両端部の薄肉に潰して形成されたフランジ部4の上面にも耐候フィルム12が接着されている。
【0018】
また、図1及び図4に示されるように、保温カバー1の両被覆面部2,2の両側部21,21の外側面にはそれぞれ固定用線材である結束バンド7を巻き付ける位置を特定する複数の凹部5が設けてある。本形態では、被覆面部2の側部21の外側面に沿って、その両側と中央に等間隔を開けて三つの凹部5を設けてあるが、保温カバー1を装着する継手PFの大きさや形状などに応じて、適宜な数の凹部を適宜な位置に設けることができる。
【0019】
また、継手カバー1の両被覆面部2,2の内面には、図5に示されるように、継手PF表面の凹凸の凸面部に対応した凹面であり、当該継手PF表面の凸面部の外面に嵌って重なる凹面部2aが設けられててもよい。
両被覆面部2,2に凹面部2aが設けられていれば、継手PFに装着した際に、凹面部2aが継手表面の凸面部の外面に嵌って重なり、保温カバー1がずれにくくなって継手PFの保温性能を向上させることができる。
【0020】
前記構成の保温カバー1は、図6に示されるように、半筒柱状に表面が湾曲した凸面部が上面に並設された凸状型61と、この凸状型61の上面に重なる凹状型62からなる成形金型6を用いて成形することができる。
【0021】
詳しくは、図示した成形金型6は、前記図6に示された両被覆面部2,2の内面に継手PF表面の凸面部の外面に嵌まる凹面部2aを有する保温カバー1を複数個まとめて成形する態様のものであり、凸状型61は、その上面に前記両被覆面部2,2を成形するための、表面が半円筒状に湾曲していて継手PFの片側半面の輪郭形状に略対応した形状の一対の凸面部を、前記継ぎ目部3分の間隔を開けて平行に適宜な長さ連ね、且つこの一対の突面部列を三列に配置した構成としてある。
また、凹状型62は、前記凸状型61の凸面部との間でシート状の保温材11を挟んで圧縮し加熱することで、保温カバー1の両被覆面部2,2、継ぎ目部3、フランジ部4、凹部5などの各部を成形する凹凸面部を有する。
そして、凸状型61と凹状型62は、成形の際に保温材11の両被覆面部2,2の軸方向両端部の部分を潰してフランジ部4を薄肉に形成するように構成してある。
【0022】
前記成形金型6を用いた保温カバー1の成形は、耐候フィルム12が上面に重なったシート状の保温材11を前記凸状型61の凸面部上に載せる工程と、その上から凹状型62を重ねて耐候フィルム12とシート状の保温材11を挟み込み、これを両型で圧縮し加熱して成形する工程と、凹状型62を凸状型61から外した後、複数個が連なって成形された保温カバーを個々の保温カバー1の外形状に切断する工程により行うことができる。
成形金型6内にシート状の保温材11と耐候フィルム12を挟んで圧縮し加熱して保温カバー1を成形と同時に、凸状型61又は凹状型62に設けた切断刃で、個々の保温カバー1の外形状に切断されるようにしてもよい。
【0023】
このように構成される保温カバー1は、図7に示されるように、給水給湯用のパイプP,P同士を接続する継手PFの外側面に取り付けられる。
保温カバー1の設置は、同図に示されるように、一方の被覆面部2の内面を継手PFの片側半面に被せて添えた状態で、継ぎ目部3で折り曲げて(図4参照)他方の被覆面部2を継手PFの他側半面に被せて、継手PFの全周を保温カバー1で覆う。
そして、図8に示されるように、前記両被覆面部2,2の両側部21,21に形成された各凹部5に結束バンド6を掛け、保温カバー1の外側面に巻き付けて結束することにより継手PFの外側面に取り付けられる。
【0024】
継手PFに取り付けられた保温カバー1は、その内周面が継手PFの表面に密着して継手PFの外側面を覆い、外気との接触を遮断して継手PFを保温することができる。
保温カバー1はその外側面に耐候フィルム12が接着されてており、外側に保温材11が露出してはいなので、紫外線が当たることによる変形や変色、劣化などの変質の発生を効果的に防止し、高い耐久性を発揮することが可能である。保温カバー1の設置にあたり、別途耐候シートや耐候フィルム、耐候テープなどを準備する必要はなく、これらで継手PFに取り付けられた保温カバーを覆う処理も不要である。
また、図9に示されるように、保温カバー1の両被覆面部2,2の軸方向両端部には、当該両端部外面を潰して肉薄に形成されたフランジ部4が設けられているので、保温カバー1の両端のフランジ部4,4がパイプPの外周面にぴったりと密着して巻き付き、耐候フィルム12が貼られていない被覆面部2の内側の部分が外側に露出することを防ぎ、保温カバー1の内面側が露出することによる変質の発生を効果的に抑制可能である。
【0025】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は実施形態のものに限定されないことは言うまでもない。保温カバー1、被覆面部2、継ぎ目部3、フランジ部4、凹部5などの各部の形状や組み合わせ、凸状型61と凹状型62からなる成形金型6の構成は一例であり、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 継手保温カバー、11 保温材、12 耐候シート、2 被覆面部、3 継ぎ目部、4 フランジ部、5 凹部、6 成形金型、61 凸状型、62 凹状型、7 結束バンド、P パイプ、PF 継手
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