(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149299
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】被覆材、及び被膜形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220929BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220929BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220929BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/63
C09D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051379
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村岸 建吾
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038DD121
4J038GA01
4J038GA07
4J038JA02
4J038JC38
4J038KA06
4J038MA13
4J038MA14
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】
酸化硬化型樹脂を含む被覆材の密着性、耐リフティング性等を改善することを目的とする。
【解決手段】
本発明の被覆材は、酸化硬化型樹脂(A)、金属ドライヤー(B)、及び脂肪族炭化水素含有溶剤(C)を含み、上記酸化硬化型樹脂(A)は、上記脂肪族炭化水素含有溶剤(C)に可溶な可溶型樹脂であり、上記酸化硬化型樹脂(A)は、重量平均分子量の異なる2種以上を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化硬化型樹脂(A)、金属ドライヤー(B)、及び脂肪族炭化水素含有溶剤(C)を含み、
上記酸化硬化型樹脂(A)は、上記脂肪族炭化水素含有溶剤(C)に可溶な可溶型樹脂であり、
上記酸化硬化型樹脂(A)は、重量平均分子量の異なる2種以上を含むことを特徴とする被覆材。
【請求項2】
上記酸化硬化型樹脂(A)は、重量平均分子量が25000以下の酸化硬化型樹脂(A1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆材。
【請求項3】
上記酸化硬化型樹脂(A)は、重量平均分子量が25000以下の酸化硬化型樹脂(A1)、及び重量平均分子量が25000超の酸化硬化型樹脂(A2)を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆材。
【請求項4】
基材に対し、下塗材を塗付した後、請求項1~請求項3のいずれかに記載の被覆材を塗付することを特徴とする被膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被覆材、及び被膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等においては、その基材の機能性付与、及び保護や美観性の向上等を目的として、各種被覆材(下塗材及び上塗材等)を積層して被膜を形成する仕上げが行われている。近年、このような被覆材の分野においては、塗装時の安全性や、作業衛生の点、あるいは大気汚染への影響等を考慮し、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素含有溶剤の使用を抑える動きが強まっている。このような動きに対応するため、脂肪族炭化水素含有溶剤を用いた環境対応型の被覆材が種々提案されている。
【0003】
また、このような環境対応型の被覆材として、酸化硬化型樹脂を使用した被覆材が知られている(特許文献1等)。特許文献1は、不飽和脂肪酸に含まれる反応性二重結合同士の酸化によって架橋反応を生じさせる1液架橋性(硬化型)の被覆材である。このような酸化硬化型樹脂を含む被覆材は、光沢性、作業性に優れることから、上塗材として多く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような環境対応型の被覆材を上塗材として使用した際、下塗材の種類によっては被覆材のリフティング等が発生する場合があった。また、光沢性にも劣る場合があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、酸化硬化型樹脂を含む被覆材の耐リフティング性、光沢性等を改善することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の酸化硬化型樹脂を必須成分とする被覆材に想到し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.酸化硬化型樹脂(A)、金属ドライヤー(B)、及び脂肪族炭化水素含有溶剤(C)を含み、
上記酸化硬化型樹脂(A)は、上記脂肪族炭化水素含有溶剤(C)に可溶な可溶型樹脂であり、
上記酸化硬化型樹脂(A)は、重量平均分子量の異なる2種以上を含むことを特徴とする被覆材。
2.上記酸化硬化型樹脂(A)は、重量平均分子量が25000以下の酸化硬化型樹脂(A1)を含むことを特徴とする請求項1に記載の被覆材。
3.上記酸化硬化型樹脂(A)は、重量平均分子量が25000以下の酸化硬化型樹脂(A1)、及び重量平均分子量が25000超の酸化硬化型樹脂(A2)を含むことを特徴とする1.または2.に記載の被覆材。
4.基材に対し、下塗材を塗付した後、1.~3.のいずれかに記載の被覆材を塗付することを特徴とする被膜形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の被覆材によれば、耐リフティング性等に優れた被膜を形成することができる。さらに、光沢等の仕上がり性等においても有利な効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
<被覆材>
本発明の被覆材は、酸化硬化型樹脂(A)、金属ドライヤー(B)、及び脂肪族炭化水素含有溶剤(C)を含むものであり、所謂弱溶剤形の被覆材である。
【0012】
本発明の酸化硬化型樹脂(A)(以下「(A)成分」ともいう)は、酸化重合可能な二重結合(酸化重合性基)によって、空気酸化し硬化乾燥するものであり、脂肪族炭化水素含有非水溶剤(C)に溶解可能な樹脂であることを特徴とする。このような(A)成分としては、酸化重合性基を有するものであれば特に限定されず、例えば、上記脂肪族炭化水素含有非水溶剤(C)中で、各種のビニル単量体を常法により重合させること等によって得ることができる。
【0013】
具体的には以下に示すような樹脂が使用できる。
1)酸化重合性基を有するビニル単量体と、この単量体と共重合可能な他のビニル単量体とを共重合させて得られた樹脂。
2)エポキシ基含有ビニル単量体と、この単量体と共重合可能な他のビニル単量体とを共重合させた後、前記エポキシ基含有ビニル単量体に不飽和脂肪酸を付加させて得られた樹脂。
3)酸化重合性基を有するビニル単量体、及び/またはこの単量体と共重合可能な他のビニル単量体とをアルキド樹脂に共重合及び/またはグラフト重合させて得られた樹脂。
本発明では、上記1)~3)の樹脂を混合して使用することができる。
【0014】
上記1)、3)における酸化重合性基を有するビニル単量体としては、例えばエポキシ基含有ビニル単量体に不飽和脂肪酸が付加されたビニル単量体が挙げられる。このビニル単量体は、エポキシ基と不飽和脂肪酸中のカルボキシル基との反応によって得られるものである。また、上記2)の樹脂は、樹脂中のエポキシ基に対する不飽和脂肪酸の付加反応によって得られるものである。エポキシ基と不飽和脂肪酸を反応させる際には、第3級アミンや第4級アンモニウム塩等の触媒を使用することができる。
【0015】
具体的にエポキシ基含有ビニル単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-オキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0016】
不飽和脂肪酸としては、例えば、亜麻仁油脂肪酸、桐油脂肪酸、魚油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、ケシ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、麻実油脂肪酸、ブドウ核油脂肪酸、トール油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、トウモロコシ油脂肪酸、クルミ油脂肪酸等が挙げられる。
【0017】
上記1)、3)における酸化重合性基を有するビニル単量体としては、例えば、ジシクロペンタジエンオキシアルキル(メタ)アクリレート等のジシクロペンタジエンオキシアルキル基含有ビニル単量体、アリル(メタ)アクリレート等のアリル基含有ビニル単量体を使用することもできる。
【0018】
上記1)~3)における不飽和脂肪酸の含有量は、(A)成分中に固形分として、好ましくは1~20重量%(より好ましくは2~15重量%)である。このような範囲で(A)成分が不飽和脂肪酸を含有することで、本発明の被覆材は、密着性、耐リフティング性、光沢性等に優れた被膜を形成することができる。なお、本発明において「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0019】
上記3)におけるアルキド樹脂としては、多価アルコールと多価カルボン酸を重縮合させ、これを乾性油、不飽和脂肪酸等で変性したものが使用可能である。このうち多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、多価カルボン酸としては、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。また、乾性油としては、例えば亜麻仁油、桐油、オイチシカ油、サフラワー油等が挙げられる。アルキド樹脂の含有量は、(A)成分中に固形分として、好ましくは0~20重量%(より好ましくは2~15重量%)である。このような範囲で(A)成分がアルキド樹脂を含有することで、本発明の被覆材は、密着性、耐リフティング性、光沢性等に優れた被膜を形成することができる。
【0020】
上記1)~3)における他のビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族単量体、及びその他のビニル単量体等が挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0022】
芳香族単量体としては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0023】
その他のビニル単量体としては、例えば、水酸基含有ビニル単量体、カルボキシル基含有ビニル単量体、アミノ基含有ビニル単量体等も使用できる。
水酸基含有ビニル単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
カルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸またはそのモノアルキルエステル、イタコン酸またはそのモノアルキルエステル、フマル酸またはそのモノアルキルエステル等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
アミノ基含有ビニル単量体としては、例えば、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0024】
本発明の(A)成分としては、他のビニル単量体として、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルが共重合されたもの、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び芳香族単量体が共重合されたもの等を含むことが好適である。
【0025】
本発明では、(A)成分として、その酸価が好ましくは0.1~20mgKOH/g(より好ましくは0.5~10mgKOH/g)であるものを使用することができる。このような(A)成分の酸価は、下塗材との密着性向上等に寄与するものである。さらに、(A)成分の酸価が上記範囲内であれば、長期保存後の密着性も確保される。なお、酸価は、(A)成分の固形分1gに含まれる酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値である。(A)成分の酸価を上記範囲内に設定するには、例えば(A)成分の重合時に、ビニル単量体として上記カルボキシル基含有ビニル単量体を使用すればよい。
【0026】
本発明では(A)成分として、重量平均分子量の異なる少なくとも2種以上を含むことを特徴とする。このような(A)成分を含むことにより、密着性、耐リフティング性等に優れ、光沢等の仕上り性等において優れた効果を発揮することができる。(A)成分の重量平均分子量は、好ましくは2,000~300,000(より好ましくは5,000~250,000)である。なお、重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0027】
本発明では、(A)成分として、重量平均分子量が25,000以下(より好ましくは2,000~20,000)の酸化硬化型樹脂(A1)(以下「(A1)成分」ともいう)を含むことが好ましい。これにより、密着性、耐リフティング性、光沢等の仕上り性等において優れた向上効果が得られる。本発明では、(A)成分として、上記(A1)成分を2種以上含むこともできるが、特に、上記(A1)成分、及び重量平均分子量が25,000超(より好ましくは28,000~300,000)の酸化硬化型樹脂(A2)(以下「(A2)成分」ともいう)を含むことが好ましい。このような(A1)成分及び(A2)成分を含むことにより、密着性、耐リフティング性、光沢等の仕上り性等においてよりいっそう優れた向上効果が得られる。
【0028】
上記(A1)成分と上記(A2)成分の混合比は、固形分重量比(A1):(A2)=100:0~50:50(より好ましくは99:1~60:40)であることが好ましい。このような場合、上記効果をよりいっそう高めることができる。
【0029】
(A)成分のガラス転移点は、好ましくは0℃~80℃(より好ましくは10℃~60℃)である。ガラス転移点がこのような範囲内であれば、密着性、耐久性等の被膜物性を高めることができる。なお、ガラス転移温度は、樹脂を構成するビニル単量体に基づき、Foxの計算式によって求められる値である。
【0030】
本発明被覆材における金属ドライヤー(B)(以下「(B)成分」ともいう)は、上記(A)成分の硬化触媒として作用する成分である。(B)成分としては、例えば、コバルト系、マンガン系、ジルコニウム系、スズ系、鉛系、亜鉛系、銅系、鉄系、カルシウム系、バリウム系等の公知の有機金属化合物が使用できる。具体的には例えば、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト、オクチル酸マンガン、ナフテン酸マンガン、オクチル酸ジルコニウム、ナフテン酸ジルコニウム、オクチル酸スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉄、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、オクチル酸バリウム、ナフテン酸バリウム、等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。
【0031】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは金属分で0.001~10重量部(より好ましくは0.01~5重量部)である。
【0032】
本発明の脂肪族炭化水素含有溶剤(C)(以下「(C)成分」ともいう)は、芳香族炭化水素含有溶剤に比べ、低毒性であり、作業上の安全性が高く、さらには大気汚染に対する影響も小さい非水系溶剤である。(C)成分としては、例えば、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等が挙げられる。また本発明では、脂肪族炭化水素含有溶剤として、テルピン油やミネラルスピリット等を使用することもできる。
【0033】
本発明の被覆材では、上述の成分の他、本発明の効果に影響しない程度に各種成分を配合することも可能である。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0034】
本発明の被覆材は、以上のような各成分を常法により均一に撹拌・混合して製造することができる。本発明の被覆材は、1液型の形態で使用できる。
【0035】
<被膜形成方法>
本発明の被覆材は、主に建築物、土木構築物等における躯体の保護や美観性向上のために適用することができ、例えば、基材に下塗材塗膜を介して塗装する上塗用の被覆材として好適である。本発明では、例えば、基材に対し、下塗材を塗付した後、本発明の被覆材を塗付することにより被膜を形成することができる。
【0036】
基材としては、主に建築物、土木構築物等の躯体の保護等に使用するものであり、例えば、コンクリート、モルタル、磁器タイル、サイディングボード、押出成形板、カラー鋼板、銅板、アルミニウム板、チタン板、ステンレス板、亜鉛めっき鋼板、金属、ガラス、プラスチック、木材、合板等の各種基材の表面仕上げに使用することができる。これら基材は、その表面に旧塗膜を有するものであってもよい。本発明の被膜形成方法では、下塗材を基材に直接塗装することができるが、予め基材に何らかの表面処理(シーラー、プライマー、サーフェーサ、フィラー、パテ等の下塗材による下地処理等)を施すことも可能である。
【0037】
下塗材としては、公知または市販の各種下塗材が使用できる。具体的に下塗材としては、例えば、アクリル樹脂下塗材、エポキシ樹脂下塗材、ウレタン樹脂下塗材、塩化ゴム系下塗材等が挙げられる。このような下塗材は、クリヤータイプ、着色タイプのいずれであってもよい。また、リン酸塩系、モリブデン酸塩系、亜鉛系等の防錆顔料を含むものであってもよい。
【0038】
このうち、本発明ではエポキシ樹脂下塗材を使用した場合において、顕著な効果を得ることができる。例えば、エポキシ樹脂下塗材の上に、酸化硬化型樹脂及び金属ドライヤーを含む被覆材を重ね塗りした場合、被覆材塗膜が溶解する現象や浮き上がる現象(リフティング)を生じる場合がある。これに対し、本発明の被覆材を用いることにより、このような不具合の発生を抑制することができ、密着性、耐リフティング性に優れ、仕上り性等を高めることができる。
【0039】
エポキシ樹脂下塗材としては、バインダー成分として1種または2種以上のエポキシ樹脂を含むものが使用できる。エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルエーテル型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等、あるいはこれらの変性物等が挙げられる。
エポキシ樹脂下塗材の形態は、1液型、2液型のいずれであってもよい。2液型の場合、硬化剤としてはアミン化合物等を含むものが使用できる。
【0040】
下塗材は、上記バインダー成分を必須成分とし、本発明の効果に影響しない程度に各種成分を配合することも可能である。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆剤、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、希釈剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、繊維、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0041】
このような下塗材は、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装、ロールコーター、フローコーター等、種々の方法を用いて塗装することができる。塗付け量については、下塗材の形態にもよるが、好ましくは0.05~3kg/m2(より好ましくは0.05~2kg/m2)である。
【0042】
本発明の被覆材の塗装方法としては、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装、ロールコーター、フローコーター等、種々の方法を用いることができる。この際、本発明の被覆材は、脂肪族炭化水素系溶剤で適宜希釈することもできる。また、塗付け量は、好ましくは0.1~0.5kg/m2程度である。さらに、被覆材は1層で仕上げてもよく、2層以上を積層して仕上げることもできる。
【実施例0043】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0044】
(被覆材1~10)
下記に示す原料を用い、表1に示す配合にて、常法により混合し、被覆材1~10を製造した。
【0045】
各上塗材においては、以下の原料を使用した。
(A)酸化硬化型樹脂
(A-1)スチレン・イソブチルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体の脱水ヒマシ油脂肪酸変性物[重量平均分子量:12,000、固形分:50重量%(固形分中の不飽和脂肪酸の含有量:10重量%)、酸価:1.5mgKOH/g、溶媒:ミネラルスピリット溶液]
(A-2)スチレン・イソブチルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体の大豆油脂肪酸変性物[重量平均分子量:25,000、固形分:50重量%(固形分中の不飽和脂肪酸の含有量:10重量%)、酸価:1.5mgKOH/g、溶媒:ミネラルスピリット溶液]
(A-3)スチレン・イソブチルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・グリシジルメタクリレート共重合体の大豆油脂肪酸変性物[重量平均分子量:40,000、固形分:50重量%(固形分中の不飽和脂肪酸の含有量:10重量%)、酸価:1.5mgKOH/g、溶媒:ミネラルスピリット溶液]
(A-4)グリシジルメタクリレートと大豆油脂肪酸とを付加させて得られたモノマー・スチレン・イソブチルメタクリレート・2-エチルヘキシルアクリレート・ジメチルアミノエチルメタクリレート・アルキド樹脂の共重合体[重量平均分子量:45,000、固形分:50重量%(固形分中の不飽和脂肪酸の含有量:8重量%、アルキド樹脂の含有量:10重量%)、酸価:1.5mgKOH/g、溶媒:ミネラルスピリット溶液]
(B)金属ドライヤー
・ナフテン酸コバルトとナフテン酸ジルコニウムの混合液(ミネラルスピリット溶液、Co分0.3重量%、Zr分3重量%)
(C)脂肪族炭化水素含有非水溶剤
・ミネラルスピリットと芳香族炭化水素含有石油混合溶剤の混合物(脂肪族炭化水素含有比率:65重量%)
(D)その他
・着色顔料:酸化チタン
・添加剤:消泡剤、分散剤、紫外線吸収剤、光安定剤等
【0046】
(実施例1~8、比較例1~2)
<試験体[I]の作製>
200×150mmのブリキ板に対し、2液反応硬化型エポキシ樹脂下塗材[主剤成分:エポキシ当量1350g/eqのフェノールノボラック型エポキシ樹脂、硬化剤成分:活性水素当量360g/eqのポリアミドアミン]を塗付量0.1kg/m2で刷毛塗りし、標準状態で24時間乾燥養生した。
次いで、上記方法にて得られた被覆材をローラーを用いて塗付量0.12kg/m2で塗付し、標準状態で16時間乾燥養生して被膜を作製し、カッターでクロスカットを入れた。次いで、同じ被覆材をローラーを用いて塗付量0.12kg/m2で塗付し、標準状態で24時間養生したものを試験体[I]とした。
【0047】
<耐リフティング性評価>
試験体[I]について、表面状態を観察し、以下の5段階で評価を行った。結果は表1に示す。
AA:異常が認められなかった。
A :ほとんど異常が認められなかった(少し縮みがあった)。
B :カット部分にややリフティング現象(少し縮みがあった)が認められた。
C :リフティング現象(全面に縮み)が認められた。
D :溶解現象が認められた。
【0048】
<試験体[II]の作製>
200×150mmのブリキ板に対し、2液反応硬化型エポキシ樹脂下塗材(同上)を塗付量0.1kg/m2で刷毛塗りし、標準状態で24時間乾燥養生した。
次いで、上記方法にて得られた被覆材をローラーを用いて塗付量0.12kg/m2で塗付し、標準状態で16時間乾燥養生後、同じ被覆材をローラーを用いて塗付量0.12kg/m2で塗付、標準状態で24時間養生したものを試験体[II]とし、以下の評価を行った。
【0049】
<仕上がり性>
試験体[II]について、その仕上外観(光沢等)を目視にて確認した。結果は表1に示す。
評価基準は、仕上り性に優れるものを「A」、仕上り性に劣るものを「D」とする4段階(優:A>B>C>D:劣)で行った。
【0050】