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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149366
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】鋼製支保工
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/18 20060101AFI20220929BHJP
   E21D 9/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E21D11/18
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051488
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】村山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 奈央
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝識
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA06
2D155BB02
2D155CA01
2D155FB01
2D155KB04
(57)【要約】
【課題】掘削表面の周囲に地盤からの圧力が作用した際、トンネルの内側に大きく突出することなく支保工にある程度の変形を許容させることができ、覆工工事を円滑に行なえる鋼製支保工を提供すること。
【解決手段】吹き付けコンクリート14と、複数のロックボルト18と協働して掘削表面12を支える鋼製支保工16である。鋼製支保工16は、掘削表面12に沿って延在する支保工20を備え、支保工20は複数の鋼製支保部材22が連結されて構成されている。隣り合う鋼製支保部材22の間にオイルダンパー26Bと、オイルダンパー26Bを覆うカバー28Bとが配置されている。オイルダンパー26Bは、掘削表面12からの荷重が鋼製支保部材22に作用した際に鋼製支保部材22の変形よりも率先して縮小作動する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの掘削方向と直交する平面内で掘削表面に沿って延在する複数の鋼製支保部材が連結されて構成された支保工を含んで構成され、吹き付けコンクリートと協働して前記掘削表面を支える鋼製支保工であって、
前記支保工の延在方向に間隔をおいた複数箇所に、その軸心方向を前記延在方向に沿わせ前記掘削表面からの荷重が前記支保工に作用した際に前記鋼製支保部材の変形よりも率先して縮小作動するオイルダンパーが介設されている、
ことを特徴とする鋼製支保工。
【請求項2】
前記オイルダンパーは、ピストンがシリンダのシリンダ室の軸心方向の一方に変位しピストンロッドが前記シリンダから突出した伸長状態で設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の鋼製支保工。
【請求項3】
前記オイルダンパーは、互いに反対方向に位置する前記ピストンロッドの先部と前記シリンダの基部とが、向かい合う前記鋼製支保部材の端部に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の鋼製支保工。
【請求項4】
前記オイルダンパーは、一対のダンパー取り付け板を介して前記隣り合う鋼製支保部材の端部間に取り付けられ、
前記ダンパー取り付け板は、前記ピストンロッドの先部または前記シリンダの基部が取り付けられるダンパー保持板部と、前記鋼製支保部材に取り付けられる支保部材取り付け板部とを含んで構成され、
前記オイルダンパーと前記一対のダンパー取り付け板の前記ダンパー保持板部とは一体化されている、
ことを特徴とする請求項3記載の鋼製支保工。
【請求項5】
前記ダンパー保持板部と前記支保部材取り付け板部とは別部材で構成され、それら板部は締結具で締結される、
ことを特徴とする請求項4記載の鋼製支保工。
【請求項6】
前記オイルダンパーのシリンダから突出するピストンの周囲を覆うカバーが設けられている、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載の鋼製支保工。
【請求項7】
前記カバーは、前記一対のダンパー取り付け板の前記ダンパー保持板部と一体化されている、
ことを特徴とする請求項4を引用する請求項6記載の鋼製支保工。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はNATMの支保に用いられる鋼製支保工に関する。
【背景技術】
【0002】
NATMで掘削されるトンネルでは、爆破や掘削装置で地山に掘削したトンネルの掘削表面に一次吹き付けとしてコンクリートを吹き付け、このコンクリートに沿わせて鋼製支保工を組み立て、コンクリートと鋼製支保工の上から二次吹き付けとしてコンクリートを吹き付け、さらに、このコンクリートの上から複数のロックボルトを地山に打ち込む支保がなされる。
そして、鋼製支保工と、吹き付けコンクリートと、ロックボルトとにより掘削表面の崩落を防止しつつ掘削表面を支えるようにしている。
なお、地山の地質によっては、鋼製支保工とロックボルトのうち何れか一方が省略される場合もある。
その後、掘削表面の周囲の地山が安定したならば、鋼製支保工、吹き付けコンクリート、ロックボルトの上からスライドセントルを利用してコンクリートを打設する覆工がなされる。
このようにNATMでは、鋼製支保工と、吹き付けコンクリートと、ロックボルトとにより掘削表面の崩落を防止しつつ掘削表面を支え、掘削表面の周囲の地山を安定化させるため、覆工のコンクリートの厚さを小さくできるという利点を有している。
一方、NATMでは、掘削表面に周囲の地山からの圧力が作用した場合、掘削表面の周囲の地山を安定化させるため、鋼製支保工にはある程度の変形を許容し、地山の変形を吸収することが望ましい。
このような観点から、鋼製支保工を構成する鋼製支保部材に変形を許容させる技術が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、上述の従来技術では、合成樹脂製の骨組み構造体にコンクリートを吹き付けたコンクリート体を用いるため、地山からの圧力が掘削表面の周囲に作用した際、コンクリートが圧縮されてトンネルの内側に大きく突出し、覆工工事を円滑に行なえず、覆工工事に支障をきたす不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6584738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、トンネル全線のうちの一部が、例えば、軟質なため変位が大きいことが想定される断層破砕帯区間、将来の地震活動によってずれ変位の可能性がある活断層の横断区間、あるいは、過去のトンネル工事で大きな変状が発生した地質で、蛇紋岩、泥岩、凝灰岩などの特殊地質区間、あるいは、土被りが小さく将来想定されない外力として地震力などが作用する可能性のある低土被り区間を通る場合には、鋼製支保工にはある程度の変形を許容させ、地山の変形を吸収するための何らかの対策が望まれている。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、掘削表面の周囲に地盤からの圧力が作用した際、トンネルの内側に大きく突出することなく支保工にある程度の変形を許容させることができ、上述の従来技術に比べて覆工工事を円滑に行なえ、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利な鋼製支保工を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明の一実施の形態は、トンネルの掘削方向と直交する平面内で掘削表面に沿って延在する複数の鋼製支保部材が連結されて構成された支保工を含んで構成され、吹き付けコンクリートと協働して前記掘削表面を支える鋼製支保工であって、前記支保工の延在方向に間隔をおいた複数箇所に、その軸心方向を前記延在方向に沿わせ前記掘削表面からの荷重が前記支保工に作用した際に前記鋼製支保部材の変形よりも率先して縮小作動するオイルダンパーが介設されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記オイルダンパーは、ピストンがシリンダのシリンダ室の軸心方向の一方に変位しピストンロッドが前記シリンダから突出した伸長状態で設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記オイルダンパーは、互いに反対方向に位置する前記ピストンロッドの先部と前記シリンダの基部とが、向かい合う前記鋼製支保部材の端部に取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記オイルダンパーは、一対のダンパー取り付け板を介して前記隣り合う鋼製支保部材の端部間に取り付けられ、前記ダンパー取り付け板は、前記ピストンロッドの先部または前記シリンダの基部が取り付けられるダンパー保持板部と、前記鋼製支保部材に取り付けられる支保部材取り付け板部とを含んで構成され、前記オイルダンパーと前記一対のダンパー取り付け板の前記ダンパー保持板部とは一体化されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記ダンパー保持板部と前記支保部材取り付け板部とは別部材で構成され、それら板部は締結具で締結されることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記オイルダンパーのシリンダから突出するピストンの周囲を覆うカバーが設けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、前記カバーは、前記一対のダンパー取り付け板の前記ダンパー保持板部と一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、地山からの荷重が掘削表面から支保工に作用し、鋼製支保部材に軸方向の圧縮力が生じた場合、鋼製支保部材の変形よりも率先してオイルダンパーが縮小作動し、地山の変形を吸収してトンネルの周囲の地山を安定化する。
この場合、オイルダンパーが縮小作動するので、上述の従来技術のように、トンネルの内側に大きく突出することもない。
したがって、掘削表面に周囲の地山からの荷重が作用した場合、鋼製支保工にある程度の変形を許容させ、地山の変形を吸収して地山を安定させることができ、上述の従来技術のようにトンネルの内側に大きく突出することもないので、上述の従来技術に比べて覆工工事を円滑に行なえ、トンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
特に、トンネル工事が断層破砕帯区間や、活断層の横断区間、特殊地質区間、低土被り区間で行なわる場合に上記の効果が顕著に発揮される。
また、オイルダンパーは、伸長状態で、向かい合う鋼製支保部材の端部間に介設されるので、オイルダンパーの縮小作動時のストロークを大きく確保する上で有利となり、地山の変形を吸収し、地山を安定化する上で有利となる。
また、オイルダンパーは、ピストンロッドの先部とシリンダの基部とが、向かい合う鋼製支保部材の端部に取り付けられているので、オイルダンパーの配設も簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、オイルダンパーは、一対のダンパー取り付け板を介して隣り合う鋼製支保部材の端部間に介設され、ダンパー取り付け板は、ダンパー保持板部と支保部材取り付け板部とを含んで構成され、オイルダンパーと、一対のダンパー取り付け板のダンパー保持板部とは一体化されているので、オイルダンパーと一対のダンパー保持板部との取り扱いも簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、ダンパー保持板部と支保部材取り付け板部とを別部材で構成すると、オイルダンパーの取り扱いをより簡単に行なう上で有利となる。
また、カバーを設けると、二次吹き付けとしてコンクリートの吹き付けを効率良く行なう上で有利となる。
また、オイルダンパーと、一対のダンパー取り付け板のダンパー保持板部と、カバーとを一体化すると、それらの取り扱いも簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】掘削表面を支える鋼製支保工と、吹き付けコンクリートと、ロックボルトの説明図である。
図2】支保工の正面図である。
図3】掘削表面と、一次吹き付けとしてのコンクリートと、鋼製支保部材を構成するH形鋼の説明図である。
図4】鋼製支保部材とオイルダンパーの位置関係の説明図である。
図5】第1の実施の形態の説明図で、(A)トンネル断面の中央から鋼製支保部材とオイルダンパーとカバーとを見た図、(B)はトンネルの掘削方向から鋼製支保部材とオイルダンパーとカバーとを見た図であり、要部を断面で示している。
図6】(A)は他方のダンパー保持板部の平面図、(B)は同断面正面図、(C)は同側面図である。
図7】第2の実施の形態の説明図で、(A)トンネル断面の中央から鋼製支保部材とオイルダンパーとカバーとを見た図、(B)はトンネルの掘削方向から鋼製支保部材とオイルダンパーとカバーとを見た図であり、要部を断面で示している。
図8】(A)は一方のダンパー取り付け板の平面図、(B)はダンパー取り付け板の一部断面正面図、(C)は同側面図である。
図9】(A)は他方のダンパー取り付け板の平面図、(B)はダンパー取り付け板の一部断面正面図、(C)は同側面図である。
図10】カバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について図1図6を参照して説明する。
図1に示すように、切羽の近傍のトンネル10の箇所では、爆破や掘削装置でトンネル10が掘削され、このトンネル10の掘削表面12に一次吹き付けとしてコンクリート14Aが吹き付けられ、このコンクリート14Aの表面に沿わせて鋼製支保工16がアーチ状に組み立てられる。
そして、コンクリート14Aと鋼製支保工16の上から鋼製支保工16の表面付近まで二次吹き付けとしてコンクリート14Bが吹き付けられ、さらに、このコンクリート14Bの上から複数のロックボルト18がトンネル10の周辺の地山に打ち込まれる。
NATMでは、このような鋼製支保工16と、吹き付けコンクリート14と、ロックボルト18とにより掘削表面12の崩落を防止しつつ掘削表面12を支え、掘削表面12の周囲の地山を安定化させるようにしている。
なお、地山の地質によってはロックボルト18が省略される場合もあり、その場合にも本発明は適用される。
そして、掘削表面12の周囲の地山が安定したならば、鋼製支保工16、吹き付けコンクリート14、ロックボルト18の上からスライドセントルを利用してコンクリートを打設する覆工がなされる。
【0009】
鋼製支保工16は、トンネル10の掘削方向X(図3図4参照)に間隔をおいて設けられた図2に示す複数の支保工20を含んで構成されている。
支保工20は、トンネル10の掘削方向Xと直交する平面でトンネル10を切断したトンネル断面の周方向に沿ってアーチ状に延在し、不図示のつなぎ材が、トンネル10の掘削方向Xに延在し隣り合う支保工20の複数箇所を連結している。
【0010】
図2図5に示すように、支保工20は、複数の鋼製支保部材22と、複数のオイルダンパー26Aと、カバー28Aとを含んで構成されている。
鋼製支保部材22は形鋼で構成され、本実施の形態では、鋼製支保部材22は、図3に示すように、一対のフランジ2402とそれらフランジ2402を接続するウェブ2404とからなるH形鋼で構成され、H形鋼の断面形状の縦横比は1:1である。
鋼製支保部材22を構成するH形鋼は、一対のフランジ2402を、トンネル10の掘削方向Xと直交する平面でトンネル10を切断したトンネル断面のほぼ中央に対向させ、ウェブ2404をトンネル10の掘削方向Xに対向させて配置されている。
【0011】
オイルダンパー26Aとカバー28Aは、図2図5に示すように、支保工20の延在方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている。
支保工20に設けられる複数のオイルダンパー26Aの長さの総和は、支保工20の全長の1割程度であり、一つのオイルダンパー26Aの長さは、支保工20の全長の数パーセント程度である。
オイルダンパー26Aは、地山からの荷重が掘削表面12から支保工20に作用し、支保工20がそのアーチ形状を維持するため支保工20に軸方向の圧縮力が生じた場合、鋼製支保部材22の変形よりも率先して縮小作動する。
すなわち、鋼製支保部材22を変形させる圧縮応力がオイルダンパー26Aに作用した際に、鋼製支保部材22の変形よりも率先して縮小作動する。
詳細には、支保工20に生じる圧縮応力が、鋼製支保部材22を変形させる応力よりも十分に小さい場合には、オイルダンパー26Aは縮小作動せず初期状態を維持し、鋼製支保部材22を変形させる応力に近づいた圧縮応力となった場合に、オイルダンパー26Aは初期状態から縮小作動する。
【0012】
詳細に説明すると、オイルダンパー26Aは、図5に示すように、シリンダ室2602にオイルが充填されたシリンダ2604と、シリンダ2604にその軸心方向に移動可能に配設されシリンダ室2602を2分するピストン2606と、ピストン2606に連結されシリンダ2604から突出するピストンロッド2608と、2分されたシリンダ室2602を連通する油路2610と、油路2610に設けられた一方向弁2612とを備えている。
本実施の形態では、図4に示すように、シリンダ2604は、鋼製支保部材22を構成するH形鋼の断面形状の輪郭をなす正方形の内側に入る大きさの外径のものが用いられている。
ピストンロッド2608からの荷重がピストン2606に作用すると、ピストン2606がシリンダ室2602内を移動し、その際に、オイルが油路2610を介して2分されたシリンダ室2602の一方から他方へ移動し、油路2610を通過するオイルの粘性抵抗により運動エネルギ―を吸収する。
【0013】
オイルダンパー26Aは、鋼製支保部材22の端部間に介設され、地山から支保工20に作用する荷重が所定値以上となった場合に縮小作動する。
本実施の形態では、所定値以上の荷重がピストンロッド2608に作用した場合に、油路2610を開放するように一方向弁2612が設定され、また、その場合に、所定の速度でピストン2606がシリンダ室2602内を移動するように、油路2610の内径や個数が設定されている。
また、本実施の形態では、ピストン2606のストロークを確保するため、ピストン2606がシリンダ室2602の軸心方向の一方に変位し、ピストンロッド2608がシリンダ2604から大きく突出した伸長状態を初期状態として、オイルダンパー26Aは、向かい合う鋼製支保部材22の端部間に介設されている。
【0014】
オイルダンパー26Aは、一対のダンパー取り付け板30Aを介して隣り合う鋼製支保部材22の間に介設されている。
オイルダンパー26Aは、一対のダンパー取り付け板30Aを介して、その軸心を支保工20の延在方向に沿わせて配置され、また、図4に示すように、鋼製支保部材22からの荷重により円滑に縮小作動されるように、その軸心を鋼製支保部材22を構成するH形鋼の図心に合致させて配置されている。
図5(A)、(B)に示すように、ダンパー取り付け板30Aは、ダンパー保持板部3002と支保部材取り付け板部3004とを含んで構成され、ダンパー取り付け板30Aが一対設けられることからダンパー保持板部3002と支保部材取り付け板部3004もそれぞれ一対設けられている。
一対のダンパー保持板部3002のうちの一方のダンパー保持板部3002Aは、シリンダ2604の基部2604Aが取り付けられる箇所である。
本実施の形態では、一方のダンパー保持板部3002Aは、シリンダ2604の基部2604Aに設けられた環板状のフランジで形成され、したがって、ダンパー保持板部3002Aはシリンダ2604と一体形成されている。
他方のダンパー保持板部3002Bは、ピストンロッド2608の先部2608Aが取り付けられる箇所である。
他方のダンパー保持板部3002Bは、鋼製支保部材22を構成するH形鋼の断面形状の輪郭をなす正方形と同一寸法の正方形の板材で形成されている。
他方のダンパー保持板部3002Bには、図5(B)、図6に示すように、ピストンロッド2608の先部2608Aが位置決めされて嵌合される筒状壁3019が設けられている。
そして、ピストンロッド2608の先部2608Aは筒状壁3019に嵌合されて配設されている。
したがって、オイルダンパー26Aと一対のダンパー取り付け板30Aのダンパー保持板部3002とは一体化されている。
【0015】
一対の支保部材取り付け板部3004は、隣り合う鋼製支保部材22の端部に取り付けられる箇所である。
一対の支保部材取り付け板部3004は、鋼製支保部材22を構成するH形鋼の断面形状の輪郭をなす正方形と同一寸法の正方形の板材で形成されている。
一対の支保部材取り付け板部3004は、その輪郭を鋼製支保部材22の輪郭に合致させて、鋼製支保部材22の端部に溶接により取り付けられている。
【0016】
図4図5(A)に示すように、一対のダンパー保持板部3002A、3002Bと、一対の支保部材取り付け板部3004には、鋼製支保部材22を構成するH形鋼の一対のフランジ2402の間でウェブ2404の両側の箇所に、それぞれ2つのボルト挿通孔H1が形成されている。
そして、一対のダンパー保持板部3002A、3002Bと一対の支保部材取り付け板部3004とが重ね合わされ、それらダンパー保持板部3002A、3002Bと支保部材取り付け板部3004の4つのボルト挿通孔H1に挿通されたボルトB1にナットN1が螺合され、すなわち、ボルトB1、ナットN1の締結具により一対のダンパー保持板部3002A、3002Bと一対の支保部材取り付け板部3004とが締結されることでオイルダンパー26Aが向かい合う鋼製支保部材22の端部間に介設されている。
【0017】
カバー28Aは、シリンダ2604から突出するピストンロッド2608の周囲への二次吹き付けとしてのコンクリート14Bの吹き付けを阻止する部材であり、オイルダンパー26Aが円滑に縮小作動できるようにする部材である。
なお、コンクリート14Bの吹き付け時に、コンクリート14Bがピストンロッド2608の周囲に吹付けられないようにコンクリート14Aに吹付けることで、カバー28Aは省略可能である。ただし、本実施の形態のようにカバー28Aを設けると、コンクリート14Bの吹き付けを効率良く行なう上で有利となる。
図5に示すように、本実施の形態では、カバー28Aは一方のダンパー保持板部3002Aから垂設され、シリンダ2604から突出するピストンロッド2608の周囲と、シリンダ2604の周囲の大半を覆っている。
オイルダンパー26Aが縮小作動すると、鋼製支保部材22の端部が近づくため、カバー28Aは、オイルダンパー26Aが円滑に縮小作動できるように、鋼製支保部材22をその延在方向と直交する平面で切断した鋼製支保部材22の断面形状がほぼ入る輪郭で設けられ、本実施の形態では、鋼製支保部材22の輪郭とほぼ合致する正方向の筒状に形成されている。
したがって、カバー18Aの4面のうちの互いに対向する一対の2面は、鋼製支保部材22を構成するH形鋼の一対のフランジ2402とほぼ同一面上に位置し、互いに対向する残りの一対の2面は、H形鋼の一対のフランジ2402の両端面とほぼ同一面上に位置している。
なお、カバー18Aは一対のダンパー取り付け板30Aや鋼製支保部材22の端部に接着剤で取り付けるなど従来公知の様々な取り付け構造が採用可能であるが、本実施の形態では、図5に示すように、カバー28Aの長手方向の端部に屈曲形成したフランジ2801を、ダンパー保持板部3002と一対の支保部材取り付け板部3004との間に挟持させることで配設している。
また、カバー18Aは単一の部材で構成してもよく、あるいは、複数に分割された分割体で構成するなど任意である。
【0018】
カバー28Aは、オイルダンパー26Aが円滑に縮小作動できるように、オイルダンパー26Aの軸心方向に変形可能であり、例えば、ゴムなどの弾性部材などにより形成される。なお、金属板や合成樹脂板等から蛇腹状に形成されたカバー28Aを使用するなど任意であり、要するにオイルダンパー26Aが円滑に縮小作動できるものであればよい。
【0019】
本実施の形態によれば、地山からの荷重が掘削表面12から支保工20に作用し、支保工20に軸方向の圧縮力が生じた場合、オイルダンパー26Aは、鋼製支保部材22の変形よりも率先して縮小作動する。
そして、このオイルダンパー26Aの縮小作動により、地山の変形(掘削表面の変位)を吸収し、トンネル10の周囲の地山を安定化する。
この場合、オイルダンパー26Aが縮小作動することから、上述の従来技術のように、トンネル10の内側に大きく突出することもない。
したがって、本実施の形態によれば、掘削表面12に周囲の地山からの荷重が作用した場合、鋼製支保工16にある程度の変形を許容させることで地山の変形を吸収し、地山を安定させることができ、上述の従来技術のようにトンネル10の内側に大きく突出することもないので、覆工工事を円滑に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0020】
特に、トンネル全線のうちの一部が、例えば、軟質なため変位が大きいことが想定される断層破砕帯区間、将来の地震活動によってずれ変位の可能性がある活断層の横断区間、あるいは、過去のトンネル工事で大きな変状が発生した地質で、蛇紋岩、泥岩、凝灰岩などの特殊地質区間、あるいは、土被りが小さく将来想定されない外力として地震力などが作用する可能性のある低土被り区間を通る場合には、地山からの荷重が掘削表面12から支保工20に作用する頻度が多くなると考えられるため、それらの区間に本発明が好適となり、上記の効果が顕著に発揮される。
【0021】
また、オイルダンパー26Aは、支保工20の延在方向において隣り合う鋼製支保部材22の間に介設されるので、オイルダンパー26Aの配設も簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
また、オイルダンパー26Aは、ピストン2606がシリンダ室2602の軸心方向の一方に変位しピストンロッド2608がシリンダ2604から大きく突出した伸長状態で、向かい合う鋼製支保部材22の端部間に介設されるので、オイルダンパー26Aの縮小作動時のストロークを大きく確保する上で有利となり、地山の変形を吸収し、地山を安定化する上で有利となる。
また、オイルダンパー26Aは、互いに反対方向に位置するピストンロッド2608の先部2608Aとシリンダ2604の基部2604Aとが、向かい合う鋼製支保部材22の端部に取り付けられているので、オイルダンパー26Aの配設も簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0022】
また、オイルダンパー26Aと一対のダンパー保持板部3002とは一体化されているので、オイルダンパー26と一対のダンパー保持板部3002の取り扱いを簡単に行なえ、上述の従来技術に比べてトンネル工事の施工期間を短縮し、コストダウンを図る上で有利となる。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について図7から図10を参照して説明する。
第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付してその説明を簡略、省略し、第1の実施の形態と異なった箇所を重点的に説明する。
第2の実施の形態は、オイルダンパー26Bの構造と、一対のダンパー取り付け板30Bの構造と、カバー28Bの構造が第1の実施の形態と異なっている。
図7(A)、(B)で示すように、オイルダンパー26Bのシリンダ2604は、鋼製支保部材22を構成するH形鋼の断面形状の輪郭をなす正方形の内側に入る大きさの外径のものが用いられている。
オイルダンパー26Bは、一対のダンパー取り付け板30Bを介して隣り合う鋼製支保部材22の間に介設されている。
ダンパー取り付け板30Bは、ダンパー保持板部3002と支保部材取り付け板部3004とを含んで構成されている。
ダンパー保持板部3002は、オイルダンパー26Bの外径よりも大きい輪郭の矩形を呈している。
ダンパー保持板部3002の一方の面は、オイルダンパー26Bの端部が当接されるダンパー受け面3012に形成され、他方の面は、鋼製支保部材22の端部が当接される支保部材受け面3014とされている。
詳細には、一方のダンパー取り付け板30Bのダンパー保持板部3002のダンパー受け面3012には、シリンダ2604の基部2604Aが当接し、他方のダンパー取り付け板30Bのダンパー保持板部3002のダンパー受け面3012には、ピストンロッド2608の先部2608Aが当接している。
【0024】
一方のダンパー取り付け板30Bのダンパー保持板部3002のダンパー受け面3012には、図7図8に示すように、シリンダ2604の基部2604Aが位置決めされて嵌合される第1筒状壁3020が設けられている。
そして、シリンダ2604の基部2604Aは第1筒状壁3020に嵌合され、ダンパー受け面3012に当接されて配設されている。
他方のダンパー取り付け板30Bのダンパー保持板部3002のダンパー受け面3012には、図7図9に示すように、ピストンロッド2608の先部2608Aが位置決めされて嵌合される第2筒状壁3022が設けられている。
そして、ピストンロッド2608の先部2608Aは第2筒状壁3022に嵌合され、ダンパー受け面3012に当接されて配設されている。
したがって、オイルダンパー26Bと一対のダンパー取り付け板30Bのダンパー保持板部3002とは一体化されている。
【0025】
支保部材取り付け板部3004は、図7(B)に示すように、ダンパー保持板部3002の支保部材受け面3014の両側からそれぞれ突設され、一対設けられている。
一対の支保部材取り付け板部3004間の寸法は、鋼製支保部材22を構成するH形鋼の一対のフランジ2402が挿入できる寸法で形成されている。
各支保部材取り付け板部3004には、図7図9に示すように、ボルト挿通孔H1が間隔をおいて2つ設けられている。
図7に示すように、隣り合う鋼製支保部材22の端部が一対のダンパー取り付け板30Bのダンパー保持板部3002の支保部材受け面3014に当接され、鋼製支保部材22の端部のH形鋼のフランジ2402に一対の支保部材取り付け板部3004が合わされ、ボルト挿通孔H1に挿通されフランジ2402の雌ねじF1に螺合するボルトB1により一対のダンパー取り付け板30Bは隣り合う鋼製支保部材22の端部に取り付けられている。
【0026】
図7に示すように、カバー28Bは、シリンダ2604の基部2604Aと反対に位置するシリンダ2604の先部2604Bの周囲と、ピストンロッド2608の先部2608Aが取り付けられたダンパー保持板部3002の周囲とにわたって設けられている。
図7図10に示すように、本実施の形態では、カバー28Bは、ピストンロッド2608の先部2608Aが取り付けられたダンパー保持板部3002に装着される矩形筒状の第1装着部2802と、シリンダ2604の先部2604Bに装着される円形筒状の第2装着部2804と、それら第1装着部2802と第2装着部2804を接続する傾斜面からなる接続部2806とを有している。
カバー28Bが上記のように設けられていることから、オイルダンパー26Bとカバー28Bと一対のダンパー取り付け板30Bのダンパー保持板部3002とは一体となっており、取り扱いが簡単で、鋼製支保部材22に対するオイルダンパー26Bとカバー28Bとの連結作業の効率化が図られている。
このような第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様な効果が奏され、変形吸収能力の高い機構により、より大きな地山の変位を吸収する上で有利となる。
【符号の説明】
【0027】
10 トンネル
12 掘削表面
14 吹き付けコンクリート
14A 一次吹き付けコンクリート
14B 二次吹き付けコンクリート
16 鋼製支保工
18 ロックボルト
20 支保工
22 鋼製支保部材
2402 フランジ
2404 ウェブ
26A、26B オイルダンパー
2602 シリンダ室
2604 シリンダ
2604A 基部
2604B 先部
2606 ピストン
2608 ピストンロッド
2608A 先部
2610 油路
2612 一方向弁
28A、28B カバー
2801 フランジ
2802 第1装着部
2804 第2装着部
2806 接続部
30A、30B ダンパー取り付け板
3002、3002A、3002B ダンパー保持板部
3004 支保部材取り付け板部
3012 ダンパー受け面
3014 支保部材受け面
3019 筒状壁
3020 第1筒状壁
3022 第2筒状壁
H1 ボルト挿通孔
F1 雌ねじ
B1 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10