(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149377
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】ワイパブラケット
(51)【国際特許分類】
B60S 1/04 20060101AFI20220929BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60S1/04 710
B62D25/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051503
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 正明
(72)【発明者】
【氏名】半田 正樹
【テーマコード(参考)】
3D203
3D225
【Fターム(参考)】
3D203AA13
3D203BB35
3D203CA23
3D203CA30
3D203CA34
3D203CB19
3D203DA19
3D225AB02
3D225AE03
(57)【要約】
【課題】歩行者保護性能を確保する。
【解決手段】ワイパブラケット10は、第1ブラケット11と第2ブラケット12とを備える。第1ブラケット11は、1つのワイパ支持板部13によって構成される。ワイパ支持板部13の上端部には、ピボット軸9aを支持する軸支持部16が設けられる。ワイパ支持板部13の上端側は、ダッシュパネル4に対して固定される。第2ブラケット12は、第1ブラケット11の下端側に固定される前板部18と、前板部18の下端から曲折して後方へ延びる中板部19a,19bと、中板部19a,19bの後端から曲折して下方へ延びる後板部20a,20bとを有する。中板部19a,19bは、開口23を有する。中板部19a,19bのうち後部領域25は、前部領域26よりも幅が狭く、前後方向に荷重が入力した際に変形し易い。後板部20a,20bは、ダッシュパネル4に固定される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前方で起立するダッシュパネルに対してワイパを取り付けるワイパブラケットであって、
前記ワイパのピボット軸を回転可能に支持する軸支持部を有し、前後方向と交叉する板状に形成されて前記ダッシュパネルの前方に配置され、上端側が前記ダッシュパネルに対して固定されるワイパ支持板部と、
上下方向と交叉する板状に形成されて前記ワイパ支持板部の下端側から後方の前記ダッシュパネル側へ延びる脚部と、
前後方向と交叉する板状に形成されて前記脚部の後端から上方又は下方へ延びて、前記ダッシュパネルに固定される固定板部と、を備え、
前記脚部は、前後方向の荷重が入力した際に変形しやすい易変形部を有する
ことを特徴とするワイパブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のワイパブラケットであって、
前記ワイパ支持板部を含む第1ブラケットと、
前記脚部と、前記固定板部とを含み、前記第1ブラケットに固定される第2ブラケットと、を備え、
前記第2ブラケットは、前後方向と交叉する板状に形成されて前記脚部の前端から上方又は下方へ延びて前記第1ブラケットの前記ワイパ支持板部に固定されるブラケット支持板部と、前記脚部と、前記固定板部とを一体的に有し、
前記第1ブラケットの前記ワイパ支持板部の上端側は、前記ダッシュパネルに対して締結固定され、
前記第1ブラケットの前記ワイパ支持板部の下端側は、前記第2ブラケットの前記ブラケット支持板部に対して締結固定される
ことを特徴とするワイパブラケット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のワイパブラケットであって、
前記脚部は、車幅方向に延びて前記易変形部として機能する曲折部を有し、前記曲折部で曲折した形状に形成される
ことを特徴とするワイパブラケット。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載のワイパブラケットであって、
前記ワイパ支持板部の前記軸支持部は、前記ワイパ支持板部の上端側に配置され、
前記ワイパ支持板部のうち前記軸支持部の車幅方向両側の領域が、前記ダッシュパネルに対して固定される
ことを特徴とするワイパブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイパブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、衝撃吸収手段を設けたワイパブラケットが記載されている。ワイパブラケットは、斜部および斜部の下端から略垂直に延設されて水平部とつながる垂直部を有し、全体として側面視略L字状に形成されており、側縁部分にはリブが設けられている。ワイパブラケットの斜部側の一端部には、ピボットシャフトを回転可能に支持する筒部が設けられている。ワイパブラケットの筒部近傍の部材角部には、取付孔がそれぞれ形成され、これらの取付孔に挿通された取付ボルトによって、ワイパブラケットの車両後方側端部がカウルパネルに固定される。一方、ワイパブラケットの水平部側の他端部には、取付ボルトが挿通される取付孔が形成され、この取付孔に挿通された取付ボルトによってワイパブラケットがサスペンションタワー部の水平部に固定される。ワイパブラケットのリブには、取付孔に対するウインドガラス側の位置に薄肉部が設けられている。車体の変形によりワイパブラケットに衝撃荷重が加わり、取付ボルトが取付孔から外れ、車体が変形してワイパブラケットにぶつかった場合、ワイパブラケットに作用する衝撃荷重が所定値を超えて薄肉部が変形し、薄肉部に近接する斜部も変形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トラック等の車両では、車室の前方で起立するダッシュパネルに対してワイパブラケットが固定されるので、歩行者が車両の前面に衝突する場合、ワイパブラケットが配置される部分に歩行者が衝突する可能性がある。ワイパブラケットが、車体側のダッシュパネルから前方へ立ち上がっている部分(例えば、上記特許文献1に記載の車体側のサスペンションタワー部から上方へ立ち上がっているワイパブラケットの垂直部に該当する部分)を有する場合には、係る部分は前方からの荷重に対する剛性が高いので、歩行者保護性能が低くなってしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、歩行者保護性能を確保することが可能なワイパブラケットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、車室の前方で起立するダッシュパネルに対してワイパを取り付けるワイパブラケットであって、ワイパ支持板部と脚部と固定板部とを備える。ワイパ支持板部は、ワイパのピボット軸を回転可能に支持する軸支持部を有し、前後方向と交叉する板状に形成されてダッシュパネルの前方に配置され、上端側がダッシュパネルに対して固定される。脚部は、上下方向と交叉する板状に形成されてワイパ支持板部の下端側から後方のダッシュパネル側へ延びる。固定板部は、前後方向と交叉する板状に形成されて脚部の後端から上方又は下方へ延びて、ダッシュパネルに固定される。脚部は、前後方向の荷重が入力した際に変形しやすい易変形部を有する。
【0007】
上記構成では、脚部は、ワイパ支持板部の下端側から後方のダッシュパネル側へ延びる。すなわち、脚部は、ダッシュパネル側から前方へ立ち上がっている。そして、脚部は、前後方向の荷重が入力した際に変形しやすい易変形部を有する。このため、歩行者が車両の前面に衝突した際に、ダッシュパネル側から前方へ立ち上がっているワイパブラケットの脚部に対して歩行者が前方から衝突したとしても、易変形部によって脚部を変形させることができるので、脚部の変形によって歩行者側への衝撃を抑えることができ、歩行者保護性能を確保することができる。
【0008】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のワイパブラケットであって、第1ブラケットと第2ブラケットとを備える。第1ブラケットは、ワイパ支持板部を含む。第2ブラケットは、脚部と、固定板部とを含み、第1ブラケットに固定される。第2ブラケットは、前後方向と交叉する板状に形成されて脚部の前端から上方又は下方へ延びて第1ブラケットのワイパ支持板部に固定されるブラケット支持板部と、脚部と、固定板部とを一体的に有する。第1ブラケットのワイパ支持板部の上端側は、ダッシュパネルに対して締結固定される。第1ブラケットのワイパ支持板部の下端側は、第2ブラケットのブラケット支持板部に対して締結固定される。
【0009】
上記構成では、第1ブラケットと第2ブラケットとを備え、第1ブラケットのワイパ支持板部の上端側は、ダッシュパネルに対して締結固定され、第1ブラケットのワイパ支持板部の下端側は、第2ブラケットのブラケット支持板部に対して締結固定される。このため、第1ブラケットの上端側及び下端側を締結固定しているボルト等を緩めることによって、ワイパを支持している第1ブラケットを、第2ブラケット及びダッシュパネル側から取り外すことができるので、ワイパを取り外して点検・交換等を行うことができる。
【0010】
また、ワイパを支持している第1ブラケットを、第2ブラケットから取り外し可能であるので、第2ブラケットをダッシュパネルに対して取り外し可能にしなくても、第1ブラケットを車体側から取り外すことができる。このため、第2ブラケットの固定板部をダッシュパネルに対して、例えばスポット溶接によって固定することができるので、第2ブラケットを固定するためのボルト挿通孔をダッシュパネルに設ける必要がなく、ダッシュパネルに設ける開口を減らすことができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様または上記第2の態様のワイパブラケットであって、脚部は、車幅方向に延びて易変形部として機能する曲折部を有し、曲折部で曲折した形状に形成される。
【0012】
上記構成では、脚部は、車幅方向に延びて易変形部として機能する曲折部を有し、曲折部で曲折した形状に形成される。このように、脚部を曲折部で曲折した形状に形成するだけで曲折部を易変形部として機能させることができるので、易変形部を有する脚部を容易に形成することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様~上記第3の態様のいずれかのワイパブラケットであって、ワイパ支持板部の軸支持部は、ワイパ支持板部の上端側に配置される。ワイパ支持板部のうち軸支持部の車幅方向両側の領域が、ダッシュパネルに対して固定される。
【0014】
上記構成では、ワイパ支持板部の軸支持部は、ワイパ支持板部の上端側に配置され、ワイパ支持板部のうち軸支持部の車幅方向両側の領域が、ダッシュパネルに対して固定される。このため、ワイパ支持板部の軸支持部の車幅方向両側がダッシュパネル側から支持されるので、ワイパ支持板部の軸支持部の強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、歩行者保護性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示に係るワイパブラケットを適用する車両のダッシュパネルの正面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るワイパブラケットを示す
図1のII部分の拡大図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るワイパブラケットを示す
図1のIV部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係るワイパブラケットを図面に基づいて説明する。なお、各図において、FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。また、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。
【0018】
図1に示すように、本開示に係るワイパブラケットを適用する車両1は、キャブ2が概ねエンジン(図示省略)の上方に配置されるキャブオーバ型の車両1であって、車室3の前方を区画するダッシュパネル4を有する。
【0019】
ダッシュパネル4は、車室3の前方で車幅方向に沿って起立する。ダッシュパネル4の前方には、キャブ2の前面を構成するフロントパネル(図示省略)が配置される。ダッシュパネル4の前面側の上端部には、前方へ突出した状態で車幅方向に延びる凸部4aが設けられる。凸部4aには、複数のボルト挿通孔(図示省略)が形成され、凸部4aの後面側には、上記ボルト挿通孔と連通する位置にナット(図示省略)が固定される。なお、
図1は、車両1のフロントパネルを取り外した状態(ダッシュパネル4が露出した状態)のキャブ2の前面を図示している。
【0020】
ダッシュパネル4の前面側の上端部には、車両1のフロントガラス6の表面(前面)の水滴や埃を拭い取るためのワイパ装置(ワイパ)5が取り付けられる。本実施形態では、ワイパ装置5は、ダッシュパネル4の上端部のうち右側の車幅方向外端部に配置されるワイパアーム7a、ワイパブレード8a、及びピボット軸9aと、ダッシュパネル4の上端部のうち車幅方向中央部に配置されるワイパアーム7b、ワイパブレード8b、及びピボット軸9bとを有する。ワイパアーム7a,7bは、基端側(下端側)のピボット軸9a,9bを中心として先端側(上端側)が車幅方向へ傾動である。ワイパブレード8a,8bは、ワイパアーム7a,7bの先端側に支持され、フロントガラス6の表面に沿って延びる。ピボット軸9a,9bは、ワイパモータ(図示省略)に駆動されて回転可能な軸であって、ワイパアーム7a,7bの基端側に設けられて前後方向に延び、ワイパアーム7a,7bを左右に傾動可能に支持する。
【0021】
本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図3に示すように、本実施形態に係るワイパブラケット10は、ワイパ装置5をダッシュパネル4に対して取り付けるための部材であって、ダッシュパネル4の上端部のうち右側の車幅方向外端部に固定され、ワイパ装置5のピボット軸9aを支持する。ワイパブラケット10は、ピボット軸9aを支持する第1ブラケット11と、第1ブラケット11をダッシュパネル4側から支持する第2ブラケット12とを備える。
【0022】
第1ブラケット11は、本実施形態では、ピボット軸9aを支持する1つの板状部材(ワイパ支持板部13)によって構成される。ワイパ支持板部13は、前後方向と交叉する板状に形成される。ワイパ支持板部13の上端部の車幅方向両側には、左右の上側ボルト固定部14が設けられる。左右の上側ボルト固定部14には、ボルト挿通孔(図示省略)が形成される。左右の上側ボルト固定部14は、ダッシュパネル4の凸部4aに対して締結固定される。具体的には、ボルト15を、左右の上側ボルト固定部14のボルト挿通孔及びダッシュパネル4の凸部4aのボルト挿通孔に前方から挿通してナットに螺合させて締め付けることによって、ワイパ支持板部13の左右の上側ボルト固定部14は、ダッシュパネル4の凸部4aに対して締結固定される。ワイパ支持板部13のうちダッシュパネル4の凸部4aよりも下方の領域は、ダッシュパネル4の前面から前方へ離間している。ワイパ支持板部13の上端部の左右の上側ボルト固定部14の間(左右の上側ボルト固定部14に挟まれる位置)には、ピボット軸9aを支持する軸支持部16が設けられる。すなわち、ワイパ支持板部13の上端側は、軸支持部16の車幅方向両側の領域がダッシュパネル4に対して固定される。軸支持部16は、ワイパ支持板部13を前後方向に貫通する軸挿通孔(図示省略)を有する。軸支持部16は、上記軸挿通孔を挿通するピボット軸9aを回転可能に支持する。ワイパ支持板部13のうち軸支持部16より下方の領域(下端側)には、下側ボルト固定部17が設けられる。下側ボルト固定部17には、ボルト挿通孔(図示省略)が形成される。下側ボルト固定部17は、後述するように第2ブラケット12に対して締結固定される。
【0023】
第2ブラケット12は、1つの板状部材を曲折して形成され、前板部(ブラケット支持板部)18と、前板部18の下端から曲折して後方へ延びる2つの中板部(脚部)19a,19bと、2つの中板部19a,19bの後端から曲折して下方へ延びる2つの後板部(固定板部)20a,20bとを有する。
【0024】
第2ブラケット12の前板部18は、第1ブラケット11に固定される板部であって、前後方向と交叉する板状に形成され、第1ブラケット11の下端側の後面に沿って所定方向(本実施形態では、車幅方向外側の上方から車幅方向内側の下方へ向かう方向)に延びる。前板部18には、ボルト固定部21が設けられる。ボルト固定部21には、ボルト挿通孔(図示省略)が形成され、ボルト固定部21の後面側には、上記ボルト挿通孔と連通する位置にナット27(
図3参照)が固定される。前板部18のボルト固定部21には、第1ブラケット11のワイパ支持板部13の下側ボルト固定部17が締結固定される。具体的には、ボルト22を、第1ブラケット11のワイパ支持板部13の下側ボルト固定部17のボルト挿通孔及び第2ブラケット12の前板部18のボルト固定部21のボルト挿通孔に前方から挿通してナット27に螺合させて締め付けることによって、第1ブラケット11のワイパ支持板部13の下側ボルト固定部17が第2ブラケット12の前板部18のボルト固定部21に締結固定される。すなわち、第1ブラケット11のワイパ支持板部13の下端側は、第2ブラケット12の前板部18に対して締結固定される。
【0025】
第2ブラケット12の2つの中板部19a,19bは、前板部18と後板部20a,20bとを連結する板部であって、上下方向と交叉する板状に形成されて、前板部18の下端側の車幅方向両側に互いに離間して設けられ、前板部18の下端から曲折して後方へ延びる。すなわち、前板部18は、中板部19a,19bの前端から上方ヘ延びる。2つの中板部19a,19bは、所定の前後位置24(
図3に一点鎖線24で示す前後位置)から後方の後板部20a,20bまで連続する開口23を有する。2つの中板部19a,19bのうち上記所定の前後位置24から後方へ延びる後部領域(易変形部)25は、上記所定の前後位置24から前方へ延びる前部領域26よりも幅(車幅方向の長さ)が狭く、前後方向に荷重が入力した際に変形し易い。
【0026】
第2ブラケット12の2つの後板部20a,20bは、ダッシュパネル4に対して固定される板部であって、2つの中板部19a,19bの後端から曲折して下方へ延びる。後板部20a,20bは、互いに離間して配置され、ダッシュパネル4の前面に沿って延び、ダッシュパネル4に対して固定(本実施形態では、スポット溶接によって固定)される。本実施形態では、中板部19a,19bの開口23の後端側が、後板部20a,20bの上端側に連続している。
【0027】
上記のように構成されたワイパブラケット10では、第2ブラケット12の中板部19a,19bのうち上記所定の前後位置24から後方へ延びる後部領域25は、上記所定の前後位置24から前方へ延びる前部領域26よりも幅が狭く、前後方向に荷重が入力した際に変形し易い。このため、歩行者が車両1の前面に衝突し、ワイパブラケット10のうちダッシュパネル4側から前方へ立ち上がっている部分(第2ブラケット12の中板部19a,19b(
図3に白抜き矢印で示す位置))に対して歩行者が前方から衝突した場合に、中板部19a,19bの後部領域25で中板部19a,19bを変形させることができる。
【0028】
このように、本実施形態によれば、ワイパブラケット10のうちダッシュパネル4から前方へ立ち上がっている比較的硬い部分(中板部19a,19b)に歩行者が前方から衝突したとしても、中板部19a,19bの変形によって歩行者側への衝撃を抑えることができるので、歩行者保護性能を確保することができる。
【0029】
また、第1ブラケット11のワイパ支持板部13は、上側ボルト固定部14が、ダッシュパネル4の凸部4aに対してボルト15によって締結固定され、下側ボルト固定部17が、第2ブラケット12に対してボルト22によって締結固定される。このため、第1ブラケット11の上端側及び下端側を締結固定しているボルト15,22を緩めることによって、ワイパ装置5のピボット軸9aを支持している第1ブラケット11を、第2ブラケット12及びダッシュパネル4側から取り外すことができるので、ワイパ装置5を取り外して点検・交換等を行うことができる。
【0030】
また、ワイパ装置5を支持している第1ブラケット11を、第2ブラケット12から取り外し可能であるので、第2ブラケット12をダッシュパネル4に対して取り外し可能にしなくても、第1ブラケット11を車体側から取り外すことができる。このため、第2ブラケット12の後板部20a,20bをダッシュパネル4に対して、スポット溶接によって固定することができるので、第2ブラケット12を固定するためのボルト挿通孔をダッシュパネル4に設ける必要がなく、ダッシュパネル4に設ける開口を減らすことができる。
【0031】
また、第1ブラケット11のワイパ支持板部13の上端側は、軸支持部16の車幅方向両側に配置される左右の上側ボルト固定部14がダッシュパネル4に対して固定される。このため、ワイパ支持板部13の軸支持部16の車幅方向両側がダッシュパネル4側から支持されるので、ワイパ支持板部13の軸支持部16の強度を確保することができる。
【0032】
なお、本実施形態では、第1ブラケット11を、1つの板状部材(ワイパ支持板部13)によって構成したが、これに限定されるものではなく、ピボット軸9aを支持するワイパ支持板部13を含んでいれば、他の構成であってもよい。
【0033】
また、本実施形態では、第2ブラケット12を、前板部(ブラケット支持板部)18と中板部(脚部)19a,19bと後板部(固定板部)20a,20bとによって構成したが、ブラケット支持板部、脚部、及び固定板部を含んでいれば、他の構成であってもよい。
【0034】
また、本実施形態では、車幅方向に互いに離間する2つの中板部19a,19bを設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、中板部19a,19bを互いに連続させた1つの中板部(脚部)を設けてもよい。
【0035】
また、本実施形態では、中板部19a,19bに開口23を形成することによって、前部領域26よりも幅が狭い後部領域(易変形部)25を設け、易変形部として機能させたが、易変形部は、これに限定されるものではなく、前後方向の荷重に対して変形し易い部分であれば、他の構成であってもよい。
【0036】
また、本実施形態では、前板部(ブラケット支持板部)18の下端から曲折して後方へ延びる中板部(脚部)19a,19bを設けたが、これに限定されるものではなく、ブラケット支持板部の上端から曲折して後方へ延びる脚部を設けてもよい。すなわち、ブラケット支持板部を、脚部の後端から上方ヘ延ばしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、車幅方向に互いに離間する2つの後板部20a,20bを設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、後板部20a,20bを互いに連続させた1つの後板部(固定板部)を設けてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、中板部(脚部)19a,19bの後端から曲折して下方へ延びる後板部(固定板部)20a,20bを設けたが、これに限定されるものではなく、脚部の後端から曲折して上方ヘ延びる固定板部を設けてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、ワイパ支持板部13の軸支持部16を、ワイパ支持板部13の上端部の左右の上側ボルト固定部14の間(左右の上側ボルト固定部14に挟まれる位置)に配置したが、これに限定されるものではなく、軸支持部16を、ワイパ支持板部13の上側ボルト固定部14よりも下方、且つ下側ボルト固定部17よりも上方の高さ位置に配置してもよい。すなわち、本実施形態では、ワイパ支持板部13の上端側の軸支持部16の車幅方向両側の領域を、ダッシュパネル4に対して固定したが、これに限定されるものではない。
【0040】
また、本実施形態では、ワイパブラケット10を、互いに固定される2つのブラケット11,12によって構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、ワイパ支持板部13と中板部(脚部)19a,19bと後板部(固定板部)20a,20bとを一体的に備えた1つの部材で構成されるワイパブラケット10であってもよい。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のワイパブラケット30は、第2ブラケット32の形状が第1実施形態と相違する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図1、
図4、及び
図5に示すように、本実施形態に係るワイパブラケット30は、ワイパ装置5をダッシュパネル4に対して取り付けるための部材であって、ダッシュパネル4の上端部のうち車幅方向中央部に固定され、ワイパ装置5のピボット軸9bを支持する。ワイパブラケット30は、ピボット軸9bを支持する第1ブラケット31と、第1ブラケット31をダッシュパネル4側から支持する第2ブラケット32とを備える。
【0043】
第1ブラケット31は、本実施形態では、ピボット軸9aを支持する1つの板状部材(ワイパ支持板部33)によって構成される。ワイパ支持板部33は、前後方向と交叉する板状に形成される。ワイパ支持板部33の上端部の車幅方向両側には、ダッシュパネル4の凸部4aに対して締結固定される左右の上側ボルト固定部51が設けられる。左右の上側ボルト固定部51には、ボルト挿通孔(図示省略)が形成される。左右の上側ボルト固定部51は、ダッシュパネル4の凸部4aに対して締結固定される。具体的には、ボルト53を、左右の上側ボルト固定部51のボルト挿通孔及びダッシュパネル4の凸部4aのボルト挿通孔に前方から挿通してナットに螺合させて締め付けることによって、ワイパ支持板部33の左右の上側ボルト固定部51は、ダッシュパネル4の凸部4aに対して締結固定される。ワイパ支持板部33のうちダッシュパネル4の凸部4aよりも下方の領域は、ダッシュパネル4の前面から前方へ離間している。ワイパ支持板部33の上端部の左右の上側ボルト固定部51の間(左右の上側ボルト固定部51に挟まれる位置)には、ピボット軸9bを支持する軸支持部52が設けられる。すなわち、ワイパ支持板部33の上端側は、軸支持部52の車幅方向両側の領域がダッシュパネル4に対して固定される。軸支持部52は、ワイパ支持板部33を前後方向に貫通する軸挿通孔(図示省略)を有する。軸支持部52は、上記軸挿通孔を挿通するピボット軸9bを回転可能に支持する。ワイパ支持板部33のうち軸支持部52より下方の領域(下端側)には、左右の下側ボルト固定部34が設けられる。左右の下側ボルト固定部34には、ボルト挿通孔35が形成される。左右の下側ボルト固定部34は、後述するように第2ブラケット32に対して締結固定される。
【0044】
第2ブラケット32は、1つの板状部材を曲折して形成され、前板部(ブラケット支持板部)36と、前板部36の下端から曲折して後方へ延びる中板部(脚部)37と、中板部37の後端から曲折して下方へ延びる後板部(固定板部)38とを有する。
【0045】
第2ブラケット32の前板部36は、第1ブラケット31に固定される板部であって、前後方向と交叉する板状に形成され、第1ブラケット31の下端側の後面に沿って車幅方向に延びる。前板部36には、左右のボルト固定部39が設けられる。左右のボルト固定部39には、ボルト挿通孔40が形成され、ボルト固定部39の後面側には、ボルト挿通孔40と連通する位置にナット41が固定される。前板部36の左右のボルト固定部39には、第1ブラケット31のワイパ支持板部33の左右の下側ボルト固定部34が締結固定される。具体的には、ボルト54を、第1ブラケット31のワイパ支持板部33の左右の下側ボルト固定部39のボルト挿通孔35及び第2ブラケット32の前板部36の左右のボルト固定部39のボルト挿通孔40に前方から挿通してナット41に螺合させて締め付けることによって、第1ブラケット31のワイパ支持板部33の左右の下側ボルト固定部39が第2ブラケット32の前板部36のボルト固定部39に締結固定される。すなわち、第1ブラケット31のワイパ支持板部33の下端側は、第2ブラケット32の前板部36に対して締結固定される。
【0046】
第2ブラケット32の中板部37は、前板部36と後板部38とを連結する板部であって、上下方向と交叉する板状に形成されて、前板部18の下端から曲折して後方へ延びる。すなわち、前板部36は、中板部37の前端から上方ヘ延びる。中板部37は、前板部18の下端から曲折して後方の所定の前後位置43(
図5に一点鎖線43で示す)まで後下方へ直線状に延びる第1領域42と、第1領域42の後端から曲折して後方のダッシュパネル4の前面まで延びる第2領域44とを有する。上記所定の前後位置43は、前板部18の下端よりも後方、且つダッシュパネル4よりも前方の前後位置である。中板部37の第2領域44は、第1領域42を下方へ延長した仮想線よりも上方に配置され、第1領域42の後端から曲折して後下方へ延びる。すなわち、中板部37は、車幅方向に延びて易変形部として機能する曲折部(易変形部)45を有し、曲折部45で曲折した形状に形成される。中板部37の曲折部45は、前下方へ突出した状態で車幅方向に延び、中板部37に前後方向に荷重が入力した際に、曲折変形し易い。
【0047】
第2ブラケット32の後板部38は、ダッシュパネル4に対して固定される板部であって、中板部37(第2領域44)の後端から曲折して下方へ延びる。後板部38は、ダッシュパネル4の前面に沿って延び、ダッシュパネル4に対して固定(本実施形態では、スポット溶接によって固定)される。
【0048】
上記のように構成されたワイパブラケット30では、第2ブラケット32の中板部37の曲折部45は、車幅方向に延び、中板部37に前後方向に荷重が入力した際に、曲折変形し易い。このため、歩行者が車両1の前面に衝突し、ワイパブラケット30のうちダッシュパネル4側から前方へ立ち上がっている部分(第2ブラケット32の中板部37(
図5に白抜き矢印で示す位置))に対して歩行者が前方から衝突した場合に、
図5に一点鎖線で示すように、曲折部45で中板部37を変形させることができる。
【0049】
また、第2ブラケット32の中板部37は、車幅方向に延びて易変形部として機能する曲折部45を有し、曲折部45で曲折した形状に形成される。このように、中板部37を曲折部45で曲折した形状に形成するだけで曲折部45を易変形部として機能させることができるので、易変形部を有する中板部37を容易に形成することができる。
【0050】
このように、本実施形態によれば、ワイパブラケット30のうちダッシュパネル4から前方へ立ち上がっている比較的硬い部分(中板部37)に歩行者が前方から衝突したとしても、中板部37の変形によって歩行者側への衝撃を抑えることができるので、歩行者保護性能を確保することができる。
【0051】
また、第1ブラケット31のワイパ支持板部33は、上側ボルト固定部51が、ダッシュパネル4の凸部4aに対してボルト53によって締結固定され、下側ボルト固定部34が、第2ブラケット32に対してボルト54によって締結固定される。このため、第1ブラケット31の上端側及び下端側を締結固定しているボルト53,54を緩めることによって、ワイパ装置5のピボット軸9bを支持している第1ブラケット31を、第2ブラケット32及びダッシュパネル4側から取り外すことができるので、ワイパ装置5を取り外して点検・交換等を行うことができる。
【0052】
また、ワイパ装置5を支持している第1ブラケット31を、第2ブラケット32から取り外し可能であるので、第2ブラケット32をダッシュパネル4に対して取り外し可能にしなくても、第1ブラケット31を車体側から取り外すことができる。このため、第2ブラケット32の後板部38をダッシュパネル4に対して、スポット溶接によって固定することができるので、第2ブラケット32を固定するためのボルト挿通孔をダッシュパネル4に設ける必要がなく、ダッシュパネル4に設ける開口を減らすことができる。
【0053】
また、第1ブラケット31のワイパ支持板部33の上端側は、軸支持部52の車幅方向両側に配置される左右の上側ボルト固定部51がダッシュパネル4に対して固定される。このため、ワイパ支持板部33の軸支持部52の車幅方向両側がダッシュパネル4側から支持されるので、ワイパ支持板部33の軸支持部52の強度を確保することができる。
【0054】
なお、本実施形態では、第1ブラケット31を、1つの板状部材(ワイパ支持板部33)によって構成したが、これに限定されるものではなく、ピボット軸9bを支持するワイパ支持板部33を含んでいれば、他の構成であってもよい。
【0055】
また、本実施形態では、第2ブラケット32を、前板部(ブラケット支持板部)36と中板部(脚部)37と後板部(固定板部)38とによって構成したが、ブラケット支持板部、脚部、及び固定板部を含んでいれば、他の構成であってもよい。
【0056】
また、本実施形態では、前板部(ブラケット支持板部)36の下端から曲折して後方へ延びる中板部(脚部)37を設けたが、これに限定されるものではなく、ブラケット支持板部の上端から曲折して後方へ延びる脚部を設けてもよい。すなわち、ブラケット支持板部を、脚部の後端から上方ヘ延ばしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、中板部37の曲折部45を前側へ突出させたが、後側へ突出させてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、中板部(脚部)37の後端から曲折して下方へ延びる後板部(固定板部)38を設けたが、これに限定されるものではなく、脚部の後端から曲折して上方ヘ延びる固定板部を設けてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、ワイパ支持板部33の軸支持部52を、ワイパ支持板部33の上端部の左右の上側ボルト固定部51の間(左右の上側ボルト固定部51に挟まれる位置)に配置したが、これに限定されるものではなく、軸支持部52を、ワイパ支持板部33の上側ボルト固定部51よりも下方、且つ下側ボルト固定部34よりも上方の高さ位置に配置してもよい。すなわち、本実施形態では、ワイパ支持板部33の上端側の軸支持部52の車幅方向両側の領域を、ダッシュパネル4に対して固定したが、これに限定されるものではない。
【0060】
また、本実施形態では、ワイパブラケット30を、互いに固定される2つのブラケット31,32によって構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、ワイパ支持板部33と中板部(脚部)37と後板部(固定板部)38とを一体的に備えた1つの部材で構成されるワイパブラケット30であってもよい。
【0061】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【0062】
例えば、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、本開示に係るワイパブラケットをキャブオーバ型の車両1に適用したが、これに限定されるものではなく、車室の前方で起立するダッシュパネルを有する様々な車両に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示に係るワイパブラケットは、車室の前方で起立するダッシュパネルに対してワイパを取り付ける様々な車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1:車両
3:車室
4:ダッシュパネル
5:ワイパ装置(ワイパ)
9a,9b:ピボット軸
10,30:ワイパブラケット
11,31:第1ブラケット
12,32:第2ブラケット
13,33:ワイパ支持板部
16,52:軸支持部
18,36:前板部(ブラケット支持板部)
19a,19b,37:中板部(脚部)
20a,20b,38:後板部(固定板部)
25:中板部の後部領域(易変形部)
45:中板部の曲折部(易変形部)