(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149382
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】塞栓物装填済みカテーテルおよび医療器具セット
(51)【国際特許分類】
A61M 31/00 20060101AFI20220929BHJP
A61B 17/12 20060101ALI20220929BHJP
A61M 25/16 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61M31/00
A61B17/12
A61M25/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051510
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 秀彬
(72)【発明者】
【氏名】生野 恵理
(72)【発明者】
【氏名】水田 亮
【テーマコード(参考)】
4C066
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C160DD53
4C160DD54
4C160DD62
4C160MM33
4C267AA05
4C267AA28
4C267AA50
4C267AA51
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB33
4C267CC10
4C267DD08
4C267HH09
(57)【要約】
【課題】カテーテルによって瘤内に塞栓物を留置する際にカテーテルの管腔から空気が瘤内の空間に吐出されることを防止または抑制する。
【解決手段】本発明に係る塞栓物装填済みカテーテル20は、先端が開口した装填用ルーメン22を含むカテーテル本体21と、装填用ルーメンの基端と連通した挿通路を含む基端ハブ26と、カテーテル本体の先端側に設けられ、装填用ルーメンを外部と隔離する第1弁部材24と、基端ハブに設けられ、装填用ルーメンを外部と隔離する第2弁部材27と、装填用ルーメンに血液に溶けやすいガスとともに装填された塞栓物10と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端が開口した装填用ルーメンを含むカテーテル本体と、
前記装填用ルーメンの基端と連通した挿通路を含む基端ハブと、
前記カテーテル本体の先端側に設けられ、前記装填用ルーメンを外部と隔離する第1弁部材と、
前記基端ハブに設けられ、前記装填用ルーメンを外部と隔離する第2弁部材と、
前記装填用ルーメンに血液に溶けやすいガスとともに装填された塞栓物と、を備える塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項2】
前記第1弁部材および前記第2弁部材の少なくとも一つは、軸方向に外力を付与しない状態において開口部を形成し、前記外力を付与することによって開口部を閉じる弾性変形可能な弾性部材を備える請求項1に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項3】
前記第1弁部材および前記第2弁部材の少なくとも一つは、軸方向に外力を付与することによって中央部が拡開変形して開口部を形成し、前記外力を付与しない状態において前記開口部が閉じるスリットを備える請求項1に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項4】
前記カテーテル本体は、前記ガスの漏出を防ぐまたは困難な材料から構成される請求項1~3のいずれか1項に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項5】
前記カテーテル本体は、先端側に設けられ、前記塞栓物を生体管腔に形成された瘤内に送達し前記塞栓物が移動可能なシースルーメンを備えた送達用カテーテルと接続可能な接続部を備える請求項1~4のいずれか1項に記載の塞栓物装填済みカテーテル。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の塞栓物装填済みカテーテルと、
前記塞栓物装填済みカテーテルの前記基端ハブの前記挿通路を介して前記装填用ルーメンに挿入可能な長尺状のプッシャー本体を備える送達用プッシャーと、を有する医療器具セット。
【請求項7】
前記第1弁部材および前記第2弁部材の少なくとも一方は、前記装填用ルーメンを外部と連通した状態および前記装填用ルーメンを外部と隔離した状態を切り替え可能に構成され、
前記ガスの漏出を防ぐまたは困難な材料から構成され、前記塞栓物装填済みカテーテルを収容した状態で内部空間を密封可能な収容袋をさらに有する請求項6に記載の医療器具セット。
【請求項8】
前記塞栓物装填済みカテーテルは、前記装填用ルーメンと連通した分岐ルーメンと、前記分岐ルーメンの前記装填用ルーメンと反対側の末端に設けられた第3弁部材を有し、
前記第3弁部材は、前記分岐ルーメンを介して、前記装填用ルーメンを外部と連通した状態および前記装填用ルーメンを外部と隔離した状態を切り替え可能に構成され、
前記ガスの漏出を防ぐまたは困難な材料から構成され、前記塞栓物装填済みカテーテルを収容した状態で内部空間を密封可能な収容袋をさらに有する請求項6に記載の医療器具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塞栓物装填済みカテーテルおよび医療器具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の大動脈に生じた瘤(大動脈瘤)は、瘤径の増大、破裂を防ぐ薬物的治療はなく、破裂の危険を伴う瘤径のものに対しては、一般的に外科的療法(手術)が行われる。また、大動脈瘤の手術は、従来、開腹または開胸して人工血管を移植する人工血管置換術が主流であったが、近年では、より低侵襲なステントグラフト内挿術(Endovascular Aneurysm Repair;EVAR)の適用が急速に拡大しつつある。
【0003】
一例として、腹部大動脈瘤(AAA:Abdominal aortic aneurysm)に対するステントグラフト内挿術においては、先端にステントグラフトを収納したカテーテルを患者の末梢血管から挿入し、ステントグラフトを動脈瘤患部に展開・留置することにより、動脈瘤への血流が遮断されて動脈瘤の破裂が防止され得る。
【0004】
一般的に、ステントグラフト内挿術で使用されるステントグラフトは、略Y字状に分岐した分岐部を備える「主本体部」と、分岐部に装着されると共に右腸骨動脈および左腸骨動脈にそれぞれ装着される「脚部」の2種類の部材を組み立てられる構造を有している。
【0005】
そのため、ステントグラフト内挿術において、内挿したステントグラフトの密着不足によるステントグラフト周囲からの血液漏れ、動脈瘤から枝分れした細い血管(側枝血管)からの血液の逆流などにより、動脈瘤内に血流が残存する、所謂「エンドリーク」が生じることがある。この場合、動脈瘤内に浸入した血流によって動脈瘤壁に圧がかかってしまうため、動脈瘤破裂の危険性が潜在する。
【0006】
下記特許文献1には、エンドリークを起因とする大動脈瘤内への血流残存を遮断するため、圧縮した比較的細長なスポンジ(塞栓物)をその管腔内に保持可能なカテーテルと、カテーテル内に保持された塞栓物を血液で満たされた動脈瘤内に押し出すプランジャーとを備えたデバイスについて開示されている。このデバイスに使用されるスポンジは、血液に曝されると直ちに拡張するため、動脈瘤内に押し出されて瘤内の血液を吸収すると膨張し、その状態で動脈瘤内に留置されて血流を遮断して破裂を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塞栓物を管腔に収容したカテーテルを用いて塞栓物を大動脈瘤内に留置する際に、塞栓物を収納するカテーテルの管腔には空気が存在する場合がある。このような場合、管腔の空気を患者の生体管腔に送達しないように、上述したカテーテルの使用前にはカテーテルの管腔に存在する空気を生理食塩水などで置換するプライミングなどと呼ばれる操作が一般的に行われる。また、塞栓物を大動脈瘤内に留置する手技では瘤内に留置するために必要な塞栓物が、塞栓物を収容したカテーテルの複数本分に該当する場合がある。本発明者らはこのようなカテーテルのプライミング操作をする際であって、塞栓物を装填したカテーテルが複数必要な場合などに、複数のカテーテルのいずれかに対して術者がプライミングを失念等することによってカテーテル中に空気が残存したまま、当該空気が患者に投与される事項について検討している。瘤内に空気が吐出された場合、空気は側枝血管に流れ込み、エアーエンボリズムを引き起こす虞がある。
【0009】
そこで本発明は、カテーテルによって瘤内に塞栓物を留置する手技を行う際にカテーテルの管腔から空気が瘤内の空間に吐出されることを防止または抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の一態様は、先端が開口した装填用ルーメンを含むカテーテル本体と、装填用ルーメンの基端と連通した挿通路を含む基端ハブと、カテーテル本体の先端側に設けられ、装填用ルーメンを外部と隔離する第1弁部材と、基端ハブに設けられ、装填用ルーメンを外部と隔離する第2弁部材と、装填用ルーメンに血液に溶けやすいガスとともに装填された塞栓物と、を備える塞栓物装填済みカテーテルである。また、本発明の一態様は、上記塞栓物装填済みカテーテルと、塞栓物装填済みカテーテルの基端ハブの挿通路を介して装填用ルーメンに挿入可能な長尺状のプッシャー本体を備える送達用プッシャーと、を有する医療器具セットである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る塞栓物装填済みカテーテルおよび医療器具セットは、上記のように構成しているため、カテーテルによって瘤内に塞栓物を留置する手技を行う際に装填用ルーメンというカテーテルの管腔から空気が瘤内の空間に吐出されることを防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る医療器具セットおよびデリバリーシステムの構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システムの構成を示す図である。
【
図3】医療器具セットを構成する塞栓物装填済みカテーテルの第1弁部材の動作を示す断面図である。
【
図4A】塞栓物装填済みカテーテルの基端側において第2弁部材によって装填用ルーメンが外部と隔離されている状態を示す部分拡大図である。
【
図4B】送達用プッシャーの塞栓物装填済みカテーテルに対する挿入状態を示す部分拡大図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係る医療器具セットの動作例であって、送達用カテーテルを瘤内に送達した状態を示す図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係る医療器具セットの動作例であって、瘤内にステントグラフトが展開された状態を示す図である。
【
図5C】本発明の一実施形態に係る医療器具セットの動作例であって、塞栓物装填済みカテーテルを送達用カテーテルに装着する前の状態を示す図である。
【
図5D】本発明の一実施形態に係る医療器具セットの動作例であって、塞栓物装填済みカテーテルを送達用カテーテルに装着した状態を示す図である。
【
図5E】本発明の一実施形態に係る医療器具セットの動作例であって、送達用プッシャーを塞栓物装填済みカテーテルに挿入中の状態を示す図である。
【
図5F】本発明の一実施形態に係る医療器具セットの動作例であって、送達用プッシャーによって塞栓物が瘤内に押し出された状態を示す図である。
【
図5G】本発明の一実施形態に係る医療器具セットの動作例であって、送達用カテーテルから塞栓物装填済みカテーテルと送達用プッシャーを離脱させる状態を示す図である。
【
図6】変形例1に係る医療器具セットを構成する塞栓物装填済みカテーテルの第1弁部材の動作を示す図である。
【
図7】変形例3に係る医療器具セットを構成する塞栓物装填済みカテーテルを収容袋に収容した状態を示す図である。
【
図8】変形例4に係る医療器具セットを構成する塞栓物装填済みカテーテルを収容袋に収容した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ここで示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するために例示するものであって、本発明を限定するものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者などにより考え得る実施可能な他の形態、実施例および運用技術などは全て本発明の範囲、要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0014】
さらに、本明細書に添付する図面は、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺、縦横の寸法比、形状などについて、実物から変更し模式的に表現される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0015】
図1は本発明の第1実施形態に係る医療器具セット100およびデリバリーシステム200の構成を示す図、
図2は塞栓物デリバリー医療システム300の構成を示す図である。
図3は医療器具セット100を構成する塞栓物装填済みカテーテル20の第1弁部材24の動作を示す図である。
図4Aは塞栓物装填済みカテーテル20の基端側において第2弁部材27によって装填用ルーメン22が外部と隔離されている状態を示す部分拡大図である。
図4Bは送達用プッシャー30の塞栓物装填済みカテーテル20に対する挿入状態を示す部分拡大図である。
【0016】
なお、本明細書において、塞栓物デリバリー医療システム300を構成する各部の操作方向は、例えば送達用カテーテル40の軸方向に沿った方向であって塞栓物10が瘤内に搬送される側を「先端側(または先端部)」とし、先端側と軸方向で反対側に位置して術者が手元で操作する側(送達用カテーテル40が抜去される側)を「基端側(または基端部)」とする。なお、「先端」とは、最先端を含む軸方向の一定の範囲を意味し、「基端」とは、最基端を含む軸方向の一定の範囲を意味するものとする。
【0017】
本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300は、一例として血管内に生じた瘤(例えば動脈瘤)の破裂を防止するための治療法である、腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術に適用され得る。また、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300が適用可能な治療法としては、上記エンドリーク塞栓術に限らず、血管内に生じた瘤の破裂を防止させるための他のインターベンション治療法にも適用可能である。
【0018】
[構成]
次に、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300の構成について説明する。
図1には、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200を構成する各デバイスが示されており、
図2には、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300を構成する各デバイスが示されている。
【0019】
まず、本実施形態に係る医療器具セット100、デリバリーシステム200、および塞栓物デリバリー医療システム300で使用される塞栓物10について説明する。
【0020】
〈塞栓物〉
塞栓物10は、血管内に生じた動脈瘤のような瘤内に留置され、瘤内に流入される血液を含む液体を吸収して膨張する。塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20に装填され、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着された状態で送達用プッシャー30により押し出されて瘤内に留置される。
【0021】
塞栓物10は、生理条件下で血液を含む水性液体との接触により膨脹する膨張性材料(高分子材料(吸水ゲル材料)など)からなる細長い繊維状の線体(線状体)である。塞栓物10は、長手方向と直交する方向の断面形状が略円形の細長な線状体である。なお、塞栓物10の断面形状は特に限定されず、略円形の他、多角形でもよい。
【0022】
ここで、「生理条件」とは、哺乳動物(例えば、ヒト)の体内または体表面における少なくとも1つの環境特性を有する条件を意味する。そのような特性は、等張環境、pH緩衝環境、水性環境、中性付近(約7)のpH、またはそれらの組み合わせを包含する。また、「水性液体」は、例えば、等張液、水;血液、髄液、血漿、血清、ガラス体液、尿などの哺乳動物(例えば、ヒト)の体液を包含する。塞栓物10の外径は、塞栓物装填済みカテーテル20および送達用カテーテル40の内径に収容可能であればよく、これらカテーテルの内径と略同等とすることができる。また、塞栓物10の全長は、特に制限はないが、装填容易性と手技時間の短縮化などを考慮しつつ留置先となる瘤の大きさなどによって適宜決定されてよい。
【0023】
なお、塞栓物10の構成材料は、少なくとも血液のような液体を吸収して膨張し、かつ瘤内に留置された状態でも人体への有害性がない(または極めて低い)材料であれば、特に限定されない。また、塞栓物10は、X線、蛍光X線、超音波、蛍光法、赤外線、紫外線などの確認方法によって生体内の存在位置が確認可能な可視化材料が添加されていてよい。
【0024】
<医療器具セット>
次に、本実施形態に係る医療器具セット100の構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る医療器具セット100は、塞栓物装填済みカテーテル20と、送達用プッシャー30を備えている。
【0025】
〈塞栓物装填済みカテーテル〉
塞栓物装填済みカテーテル20は、
図1、
図3に示すように内方に装填用ルーメン22が設けられる長尺状のカテーテル本体21と、カテーテル本体21の基端側に設けられる基端ハブ26と、先端接続部23と、第1弁部材24と、接続部材25と、第2弁部材27と、を備える。
【0026】
カテーテル本体21は、軸方向に沿って先端側の開口部から基端側の開口部にかけて連通する孔(装填用ルーメン22)が形成された管状部材である。カテーテル本体21の延在方向の長さは、適宜規定されるが、少なくとも塞栓物10が収容可能な長さを有していればよい。
【0027】
装填用ルーメン22の内径は、送達用カテーテル40のシースルーメン42の内径と略同等に設計されている。これにより、塞栓物10の外径は、塞栓物装填済みカテーテル20および送達用カテーテル40の内径と略同等にできる。
【0028】
装填用ルーメン22には塞栓物10と血液に溶けやすいガスとして炭酸ガスを収容するように構成している。装填用ルーメン22に炭酸ガスを収容することによって塞栓物10を瘤内に留置する際に患者の生体管腔に誤って空気を注入することを防止または抑制できる。
【0029】
カテーテル本体21は、後述する接続部材25によって塞栓物10が収容された状態で送達用カテーテル40のシースハブ43と係合して装着される。この装着状態において、送達用プッシャー30が基端ハブ26から挿入されることにより、装填される塞栓物10は、送達用カテーテル40に向けて押し出される。
【0030】
カテーテル本体21は、炭酸ガスなどの血液に溶けやすいガスが外部に漏出せず、空気などが内部に侵入しないようにガスバリア性の高い材料を含むように構成している。カテーテル本体21を構成する材料は、例示すればポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料、またはこれらの混合物のような樹脂材料を挙げることができる。また、カテーテル本体21は、ガスバリア性向上のため、アルミ箔やスチール箔の付与、アルミニウム、アルミナ、シリカの蒸着、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)のコーティング、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH、エバール)との多層化などを施すように構成してもよい。
【0031】
先端接続部23は、塞栓物装填済みカテーテル20の先端側において送達用カテーテル40のシースハブ43と接続可能に構成している。先端接続部23には、
図3に示すように第1弁部材24と接続部材25を設けている。
【0032】
第1弁部材24は、塞栓物装填済みカテーテル20における先端側の外部から空気などの流体が装填用ルーメン22に流入しないように装填用ルーメン22を外部と隔離する。第1弁部材24は、
図3に示すように外側部24aと、内側部24bと、を備える。
【0033】
外側部24aは、第1弁部材24をカテーテル本体21に固定する(取り付ける)部位として構成している。外側部24aは、本実施形態において円筒の側面をカテーテル本体21の側面と篏合させることによって構成している。ただし、第1弁部材をカテーテル本体に固定できれば、取り付け部の具体的態様は上記に限定されない。取り付け部は、円筒の側面形状以外にも凹凸形状によってカテーテル本体21に取り付けたり、接着剤等でカテーテル本体21に接合したりしてもよい。
【0034】
内側部24bは、後述する弾性部材等で形成した中空形状の内側を含むように構成している。内側部24bは、後述する接続部材25の当接部25fが当接せず、軸方向に外力を付与しない状態において
図3の右側に示すように開口部P1を形成した状態となるように構成している。内側部24bは、上記と反対に接続部材25の当接部25fと当接し、軸方向に押し込むように外力が付与されることで、
図3の左側に示すように開口部P1を形成する内側部24bの壁面が径方向内方に変位して開口部P1を閉じる。これにより、装填用ルーメン22と外部とを隔離することができる。
【0035】
接続部材25は、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40とを接続するように構成している。接続部材25は、
図3に示すように外側部25aと、内側部25bと、連結部25cと、第1取り付け部25dと、第2取り付け部25eと、当接部25fと、を備える。
【0036】
外側部25aは、第1取り付け部25dを設けるように構成している。外側部25aは、本実施形態において中空の筒形状に構成している。
【0037】
内側部25bは、外側部25aよりも径方向の内側に設けるように構成している。内側部25bは、本実施形態において外側部25aよりも径方向の寸法が小さな筒形状を含むように構成している。内側部25bには、第2取り付け部25eを設けるように構成している。
【0038】
連結部25cは、外側部25aと内側部25bとを一体にするように設けられる。連結部25cは、本実施形態において周方向の全周において外側部25aと内側部25bとを連結する形状を設けている。ただし、外側部と内側部とを連結できれば、必ずしも全周に外側部25aと内側部25bとを連結する形状が設けられていなくてもよい。
【0039】
第1取り付け部25dは、外側部25aの筒形状における内側に設けられる。第1取り付け部25dは、本実施形態においてカテーテル本体21のねじ形状と螺合可能なねじ形状を含むように構成している。
【0040】
第2取り付け部25eは、接続部材25を送達用カテーテル40と接続する部位として構成している。第2取り付け部25eは、本実施形態においていわゆるスナップフィットのように送達用カテーテル40の凹部を含む係合部43bと係合可能であって径方向外方に突出する弾性変形可能な凸形状を含むように構成している。
【0041】
当接部25fは、第1弁部材24との当接の有無により第1弁部材24の内側に開口部P1を形成したり、開口部P1を閉じたりするように構成している。当接部25fは、接続部材25の内側部25bの基端側に設けるように構成している。当接部25fを第1弁部材24に当接させて第1弁部材24を軸方向に圧縮させるように押し込むことによって、
図3の左側に示すように第1弁部材24の内側部25bを径方向内方に変位させて開口部P1を閉じることができる。反対に、第1弁部材24の内側部24bが径方向内方に変位しないように当接部25fを軸方向に離間させることによって、
図3の右側に示すように第1弁部材24の内側部24bに開口部P1を形成することができる。
【0042】
基端ハブ26は、装填用ルーメン22の基端と連通する挿通路26aを含み、送達用プッシャー30を挿入可能に構成している。基端ハブ26には第2弁部材27を設けるように構成している。
【0043】
基端ハブ26の構成材料としては、硬質樹脂のような硬質材料であれば、特に限定されない。基端ハブ26の構成材料の一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレンなどを好適に用いることができる。
【0044】
第2弁部材27は、
図1等に示すように基端ハブ26に設けられ、塞栓物装填済みカテーテル20の基端側において装填用ルーメン22を外部と隔離する。第2弁部材27は、
図4A,
図4Bに示すように弁体27aと、回転軸27bと、を備える。弁体27aは、回転軸27bによって外力が付与されない状態では塞栓物装填済みカテーテル20の基端側の開口部を閉じるように付勢されている。反対に、弁体27aは、基端側から後述する送達用プッシャー30のプッシャー本体31により押圧されることによって回転軸27bの周りに回転してプッシャー本体31を装填用ルーメン22に進入可能にする。このように、第2弁部材27は、本実施形態においてプッシャー本体31が装填用ルーメン22に進入するまで塞栓物装填済みカテーテル20の基端側外部から空気等が装填用ルーメン22に侵入し、炭酸ガスが外部に漏出することを防止する。
【0045】
第1弁部材24を構成する材料は特に限定されないが、一例として弾性部材であるシリコーンゴム、ラテックスゴム、ブチルゴム、イソプレンゴムなどを用いることができる。第2弁部材27は、樹脂材料や金属材料を用いることができる。
【0046】
〈送達用プッシャー〉
送達用プッシャー30は、基端ハブ26に挿通されてカテーテル本体21に収容された塞栓物10を押し出し、送達用カテーテル40のシースルーメン42を介して瘤内へと送達させるための長尺な棒状部材である。送達用プッシャー30は、棒状のプッシャー本体31と、プッシャー本体31の基端側に設けられて塞栓物10を瘤内に送達する際に術者が把持するハンドル部32を備えている。
【0047】
プッシャー本体31は、塞栓物装填済みカテーテル20の基端ハブ26の挿通路26aを介して装填用ルーメン22に挿入できるように長尺状に構成している。送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40に装着した状態において、術者によりハンドル部32が把持された状態で操作されると、装填用ルーメン22に装填された塞栓物10を、送達用カテーテル40のシースルーメン42を介して瘤内へと押し出す。具体的に、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20および送達用カテーテル40の軸方向に沿って押し出し操作されることにより、塞栓物装填済みカテーテル20に装填された塞栓物10を外部(瘤内)へと押し出す。
【0048】
送達用プッシャー30のプッシャー本体31の本体長は、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着された装着状態において、基端ハブ26の挿通路26aの基端から、送達用カテーテル40のシース41の先端開口部41a(シースルーメン42と連通する先端側の開口部)に至るまでの距離よりも長い。そのため、塞栓物装填済みカテーテル20を送達用カテーテル40に装着させた状態で送達用プッシャー30を基端ハブ26から挿入させれば、一度の押し出し操作によって、装填用ルーメン22内に装填された塞栓物10を、挿通路26a→シースハブ43→シースルーメン42の順で通過させて瘤内に押し出すことができる。
【0049】
図4Aに示すように、ハンドル部32は、先端側に大径傘部32aを有し、大径傘部32aの基端側に延在する小径柄部32bを有する略キノコ型の形状をなしており、ハンドル部32の最大外径となる大径傘部32aの外径寸法は、基端ハブ26の挿通路26aの内径寸法よりも大きく設計されている。これにより、
図4Bに示すように、送達用プッシャー30を塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した際に、大径傘部32aが基端ハブ26の挿通路26aに挿入されないため、送達用プッシャー30の挿入長を制限することができる。また、ハンドル部32は、大径傘部32aによって基端ハブ26に入り込むことがないため、送達用プッシャー30により塞栓物10の押し出し操作が終了した際に、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作に連れて挿入状態のまま同時に引き抜き易く、離脱操作が簡便となる。なお、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作前に、塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いてもよい。
【0050】
なお、ハンドル部32は、塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した際に、大径傘部32aが基端ハブ26の基端側と嵌合可能な構成とすることもできる。このような構成とすることにより、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱の際に、送達用プッシャー30が塞栓物装填済みカテーテル20から外れることなく確実に引き抜くことができる。
【0051】
プッシャー本体31の構成材料は、塞栓物10が搬送可能な適度な硬さと可撓性が得られる材料であれば、特に限定されない。プッシャー本体31の構成材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ETFEなどのフッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料またはこれらの混合物のような樹脂材料、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンのような金属材料を好適に用いることができる。
【0052】
<デリバリーシステム>
次に、本実施形態に係るデリバリーシステム200について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るデリバリーシステム200は、医療器具セット100に加えて、生体管腔内に留置された状態で塞栓物装填済みカテーテル20が着脱される送達用カテーテル40を備えている。
【0053】
送達用カテーテル40は、例えば生体管腔内に留置可能な既存のカテーテルを利用することもできる。そのため、本実施形態に係るデリバリーシステム200において、医療器具セット100および送達用カテーテル40をセット販売して市場に供給することもできるが、医療器具セット100のみを販売して市場に供給したとしても、既存のカテーテルを送達用カテーテル40として利用することにより、デリバリーシステム200として機能させることができる。
【0054】
〈送達用カテーテル〉
送達用カテーテル40は、例えば軸方向に沿って先端側の開口部から基端側の開口部にかけて連通する孔(シースルーメン42)が形成された長尺な管状部材からなるシース41を備え、生体管腔内に留置されて塞栓物10を瘤内まで送達させるための導入路として機能する。シース41は、その全長に亘って後述する挿通補助部材50の本体51が挿通可能である。従って、シース41の軸方向の長さは、少なくとも挿通補助部材50の本体51よりも短く設定される。
【0055】
シースルーメン42の内径は、装填用ルーメン22の内径と略同等に設計されている。これにより、塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の接続状態において装填用ルーメン22からシースルーメン42へと塞栓物10をスムーズに移動させることができる。
【0056】
シース41の構成材料は、蛇行や湾曲といった生体管腔の曲がり形状に追従できる程度の可撓性および剛性を有する材料であれば、特に限定されない。シース41の構成材料の一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、またはこれら二種以上の混合物など)、ポリオレフィンエラストマー、ポリオレフィンの架橋体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、フッ素系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルケトンなどの高分子材料、またはこれらの混合物のような樹脂材料を好適に用いることができる。
【0057】
また、送達用カテーテル40は、シース41の基端側に連結されるシースハブ43と、一端がシースハブ43の基端側と接続されて他端が三方活栓などの活栓45と接続される可撓性を有するチューブ44を備える。
【0058】
シースハブ43は、シースルーメン42とチューブ44との間、および装填用ルーメン22とシースルーメン42との間を連通させる連通路43aを備え、活栓45から流入する流体(プライミング用の生理食塩水など)を、チューブ44を介してシース41に流通させると共に、塞栓物装填済みカテーテル20から押し出された塞栓物10をシースルーメン42内に導くための中間部材である。シースハブ43は、送達用カテーテル40を生体管腔内に留置させる際に挿通補助部材50が挿通される。また、シースハブ43には、上述のように送達用カテーテル40を塞栓物装填済みカテーテル20と接続するために接続部材25の第2取り付け部25eと係合可能な係合部43bを設けている(
図3参照)。
【0059】
なお、シースハブ43の構成材料は、上述した基端ハブ26の構成材料として例示した材料と同様のものを用いることができる。
【0060】
塞栓物装填済みカテーテル20と送達用カテーテル40の装着状態において、装填用ルーメン22の先端は、シースハブ43の基端側の開口部と隣接するように挿入される。これにより、塞栓物10は、塞栓物装填済みカテーテル20から送達用カテーテル40に押し出された際に、外部に露出されることなく装填用ルーメン22からシースルーメン42へと送出することができる。
【0061】
チューブ44は、一端がシースハブ43の基端側と連結され、他端が活栓45のポート46と連結される。チューブ44は、ポート46に連結される図示しないプライミング用シリンジから流出される生理食塩水などの液体が流通する管路である。なお、チューブ44の構成材料は、上述したチューブの構成材料として例示した材料と同様のものを用いることができる。
【0062】
活栓45は、シースハブ43の連通路43aと、チューブ44を介してシース41のシースルーメン42と連通する。活栓45のポート46には、チューブ44の基端側が接続される他、シース41のシースルーメン42をプライミングするためのプライミング用シリンジ、造影剤または薬剤などを注入する液剤投入用シリンジを接続することもできる。
【0063】
ここで、本実施形態に係るデリバリーシステム200を構成する各デバイスの寸法例について説明する。なお、以下に示される数値は一例であって、これらに限定されるものではない。
【0064】
本実施形態に係るデリバリーシステム200において、送達用カテーテル40を外径5Frサイズ(内径1.5mm)のカテーテルとし、適用される術式を腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術とした場合、塞栓物10の外径を0.4~1.5mm(好ましくは1.3mm程度)、塞栓物装填済みカテーテル20の内径を送達用カテーテル40の内径と同等の1.0~1.8mm(好ましくは1.5mm程度)とすることができる。また、塞栓物装填済みカテーテル20のカテーテル本体21の本体長は30~105cm(好ましくは42cm程度)、送達用カテーテル40のシース41の本体長は39~90cm(好ましくは70cm程度)、送達用プッシャー30のプッシャー本体31の本体長は79~205cm(好ましくは119cm程度)とすることができる。また、塞栓物10の全長は、瘤サイズによって適宜決定されるが、塞栓物装填済みカテーテル20への装填容易性と手技時間短縮の観点から10~100cmの範囲(好ましくは40cm程度)とすることができる。
【0065】
<塞栓物デリバリー医療システム>
次に、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300の構成について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300は、デリバリーシステム200に加えて、生体管腔内に送達用カテーテル40を送達させる挿通補助部材50を備えている。
【0066】
〈挿通補助部材〉
挿通補助部材50は、本体51の軸方向に沿って先端側から基端側にかけて挿通するガイドワイヤルーメン52が形成され、事前に生体管腔内に挿通されたガイドワイヤに沿って送達用カテーテル40を瘤内まで送達させる際の挿入を補助するための補助具である。
【0067】
挿通補助部材50は、生体管腔内に送達用カテーテル40を挿入する際の折れ曲がりなどを防ぐため、送達用カテーテル40に挿入して組み付けられる。また、ガイドワイヤルーメン52は、送達用カテーテル40のシースルーメン42よりも内径が小さい。このため、送達用カテーテル40を瘤内に送達させる際に、送達用カテーテル40のガイドワイヤに対する軸ずれを小さくでき、より送達が容易になる。
【0068】
挿通補助部材50の構成材料は、送達用カテーテル40よりも硬質で可撓性を有する材料であれば、特に限定されない。挿通補助部材50の構成材料の一例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFEなどのフッ素系樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドのような樹脂材料、形状記憶合金、ステンレス、タンタル、チタン、プラチナ、金、タングステンのような金属材料を好適に用いることができる。
【0069】
[動作]
次に、
図5A~
図5Gを適宜参照しながら、本実施形態に係る塞栓物デリバリー医療システム300の動作について説明する。ここでは、塞栓物デリバリー医療システム300を、腹部大動脈瘤(AAA)のステントグラフト内挿術に対するエンドリーク塞栓術に適用した際の動作例について説明する。また、各図において、瘤内を「A」、血管内を「V」、体外を「O」とし、塞栓物デリバリー医療システム300の各デバイスの配置位置が体系的に把握可能なように表現した。
【0070】
まず、術前の準備工程として、術者は、
図5Aに示すように、挿通補助部材50を挿入した送達用カテーテル40のシース41を、穿刺部位となる患者の肢体からイントロデューサー(例えば
図5Cの二点鎖線で示された部材)を介して経皮的に生体管腔へと挿入し、送達用カテーテル40の先端開口部41aを腹部大動脈瘤まで送達させる。先端開口部41aが瘤内まで送達されると、挿通補助部材50を抜去する。なお、送達用カテーテル40は、挿通補助部材50を使用せず、予め動脈瘤内に挿入したガイドワイヤを用いて動脈瘤患部まで送達させてもよい。また、送達用カテーテル40については生体管腔への導入前にプライミングを行う。
【0071】
次に、術者は、
図5Bに示すように、イントロデューサーを介してステントグラフトSGを圧縮挿入したカテーテル(ステントグラフトデバイス)を生体管腔内に挿入し、予め動脈瘤内に挿入したガイドワイヤを用いて動脈瘤患部まで移動させる。その後、患部にてカテーテルからステントグラフトSGを展開し留置する。これにより、
図5Bに示すように、送達用カテーテル40は、ステントグラフトSGの脚部と血管壁との間を介して、送達用カテーテル40の先端部がステントグラフトSGと動脈瘤の血管壁との間、すなわち動脈瘤内に挿入され、先端開口部41aが瘤内に位置した状態で生体管腔内に留置される。
【0072】
また、術者は、
図5Cに示すように、塞栓物10が装填された塞栓物装填済みカテーテル20を準備する。
図5Cには、塞栓物装填済みカテーテル20が、送達用カテーテル40に装着される前の状態が示されている。
【0073】
送達用カテーテル40が留置されると、術者は、
図5Dに示すように、送達用カテーテル40のシースハブ43の基端に塞栓物装填済みカテーテル20の接続部材25を装着させる。この際、
図3に示すように接続部材25の第2取り付け部25eは、シースハブ43の係合部43bに取り付けられる。これにより、装填用ルーメン22とシースルーメン42の軸が揃う。
【0074】
次に術者は、当接部25fによる第1弁部材24に対する圧縮力を緩めるように接続部材25をカテーテル本体21に対して回転させる。これにより、
図3の右側に示すように第1弁部材24の軸方向への圧縮力が減少して第1弁部材24が軸方向に伸長する分、径方向内方が外方に移動して第1弁部材24の中央付近に開口部P1が形成される。
【0075】
次に、術者は、
図5Eに示すように、ハンドル部32を把持した状態でプッシャー本体31の先端を基端ハブ26の基端側から挿入する。基端ハブ26から挿入された送達用プッシャー30の先端は、第2弁部材27の弁体27aを回転軸27bの周りに回転させて開口部が形成され、送達用プッシャー30は装填用ルーメン22に進入可能になる。送達用プッシャー30の先端は、装填用ルーメン22の基端側から装填用ルーメン22内に装填された塞栓物10の基端と当接する。術者は、送達用プッシャー30の押し出し操作によって塞栓物10を第1弁部材24の開口部P1を通じて送達用カテーテル40のシースルーメン42へと押し出すように移動させる。
【0076】
そして、術者は、
図5Fに示すように、基端ハブ26から挿入された送達用プッシャー30を押し出し操作してシースルーメン42から塞栓物10を瘤内へと押し出す。この際に、装填用ルーメン22には炭酸ガスが充填され、空気は混入していないため、塞栓物10が瘤内に配置される際に炭酸ガスは吐出されるものの、空気は吐出されない。また、炭酸ガスは生体内に吐出されても血液にすぐに吸収され、患者が息を吐けば体外に排出されるため、長時間体内に留まる可能性は極めて低い。
【0077】
その後、術者は、
図5Gに示すように、空になった塞栓物装填済みカテーテル20を送達用プッシャー30と共に、送達用カテーテル40から離脱させる。送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20に挿入した状態で送達用カテーテル40から離脱させることができる。これにより、瘤内に対する塞栓物10の1回目の挿入動作が完了する。なお、挿入動作において、送達用プッシャー30は、塞栓物装填済みカテーテル20の離脱操作前に、塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いてもよい。このような
図5Cから
図5Gに示す一連の塞栓物留置動作を、瘤内に塞栓物10が必要量だけ装填されるまで繰り返す。なお、必要量は、患者のCTデータを基に動脈瘤の体積を計算し、その値から当該動脈瘤に展開した場合のステントグラフトSGの体積分を引いた値として算出する。
【0078】
動脈瘤内に必要量の塞栓物10の留置が完了すると、術者は、送達用カテーテル40を瘤内及び生体管腔から引き抜く。この際、塞栓物装填済みカテーテル20が送達用カテーテル40に装着され、かつ、送達用プッシャー30が送達用カテーテル40に挿入された状態で、送達用カテーテル40を瘤内及び生体管腔から引き抜いてもよい。また、送達用カテーテル40を瘤内及び生体管腔から引き抜く前に、送達用カテーテル40から塞栓物装填済みカテーテル20を離脱させつつ、送達用プッシャー30を送達用カテーテル40から引き抜いてもよい。また、送達用カテーテル40を瘤内及び生体管腔から引き抜く前に、送達用プッシャー30を送達用カテーテル40および塞栓物装填済みカテーテル20から引き抜いた後に、送達用カテーテル40から塞栓物装填済みカテーテル20を離脱させてもよい。なお、いずれの場合でも、塞栓物10の留置後のバルーンによるステントグラフトSGの追加拡張や造影操作などのために、イントロデューサーは生体管腔内に留置したままにする。
【0079】
その後、動脈瘤内に留置された塞栓物10は、瘤内の血液などの液体と接触して徐々に膨潤し、完全に膨脹した塞栓物10が動脈瘤内面とステントグラフト外面との間の空間を埋めて瘤内が閉塞される。これにより、動脈瘤は、破裂が防止されることとなる。
【0080】
[変形例1]
なお、上述した実施形態は以下のような構成に改変することができる。
【0081】
図6は塞栓物装填済みカテーテル20aの先端側に設けられた変形例1に係る第1弁部材24cを示す図である。
図3では接続部材25をカテーテル本体21に対して回転させて当接部25fを第1弁部材24から離間させることによって第1弁部材24の内側部24bに開口部P1を形成すると説明した。ただし、第1弁部材による開口部の形成は以下のように構成することもできる。
【0082】
第1弁部材24cは、外側部24dと、スリット24eと、を備える。外側部24dは、カテーテル本体21aの先端側に設けられた凹部に対して係合可能な部位を備えるように構成している。これにより、第1弁部材24cが開口部P2を形成した際に第1弁部材24cの軸方向における位置がずれない、またはずれにくくなるように構成している。また、カテーテル本体21aについては外側部24dと係合する部位以外、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
スリット24eは、後述する接続部材25gによって外力が付与されない状態において閉じた状態が維持されるように構成している。スリット24eは、上記とは反対に接続部材25gによって軸方向に外力が付与されることによって拡開変形して、
図6の下の図に示すように開口部P2を形成する。スリット24eは、径方向における略中央部に設けている。ただし、外力を付与しない状態で装填用ルーメン22を外部と隔離し、外力を付与した際に開口部を形成できれば、スリットは径方向における中央に厳密に位置するように設けなくてもよい。
【0084】
また、スリット24eは、本実施形態において第1弁部材24cの軸方向における一方の側から他方の側まで貫通するように形成している。ただし、接続部材によって外力が付与された際に開口部を形成できれば、スリットの具体的態様は上記に限定されない。上記以外にもスリットは、外力が付与される以前には一方の側から他方の側まで貫通するように形成されておらず、接続部材によって外力が付与されることでスリットが一方の側から他方の側まで貫通して開口部を形成するように構成してもよい。さらに、
図6では第1取り付け部25dにおいて雄ねじ形状と雌ねじ形状との係合位置が変わることによってスリットに開口部が形成されたり、閉じたりすると説明した。ただし、スリットの変形によって開口部を形成したり、閉じたりできれば、雄ねじ形状と雌ねじ形状の係合以外にも例えばいわゆるスナップフィットのように凸形状と凹形状を係合させることによって開口部を形成したり、上記係合を解除することによって開口部を閉じたりしてもよい。
【0085】
接続部材25gは、
図6に示すように外側部25aと、内側部25bと、連結部25cと、第1取り付け部25dと、第2取り付け部25eと、拡開部25hと、を備える。外側部25a、内側部25b、連結部25c、第1取り付け部25d、および第2取り付け部25eは第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0086】
拡開部25hは、第1弁部材24cに当接して外力を付与するように構成している。これにより、上述のように第1弁部材24cのスリット24eを拡開変形させて開口部P2を形成する(
図6参照)。また、塞栓物10、塞栓物装填済みカテーテル20のその他の構成、送達用プッシャー30、送達用カテーテル40、および挿通補助部材50は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0087】
本変形例1に係る医療器具セットの動作は、塞栓物装填済みカテーテル20aにおいて先端側の第1弁部材24cに開口部P2を形成する動作が第1実施形態と異なる。術者は接続部材25gをカテーテル本体21に対して回転させることによって、接続部材25gの拡開部25hを第1弁部材24cに対して軸方向に押し込むように操作して第1弁部材24cに外力を付与する。これにより、拡開部25hが第1弁部材24cのスリット24eを変形させて開口部P2が形成され、送達用プッシャー30によって塞栓物10が送達用カテーテル40のシース41に流通可能な状態となる。その他は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
[変形例2]
第1実施形態では第2弁部材27が
図4Aなどに示すように弁体27aと回転軸27bとを備え、弁体27aがプッシャー本体31によって回転軸27bの周りに回転することによって塞栓物装填済みカテーテル20の基端部に開口部が形成されると説明した。ただし、送達用プッシャーを挿入するまで塞栓物装填済みカテーテルの基端部(または先端部)の外部から空気が装填用ルーメン22に侵入しないようにできれば、第2弁部材の構成は弁体27aと回転軸27bに限定されない。上記以外にも、第2弁部材はカテーテル本体21のようなガスバリア性のある材料によって形成された膜またはフィルムを含むように構成してもよい。なお、塞栓物10、第2弁部材以外の塞栓物装填済みカテーテルの構成、送達用プッシャー30、送達用カテーテル40、および挿通補助部材50は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
また、変形例2に係る医療器具セットの動作は、送達用プッシャー30のプッシャー本体31によって第2弁部材を押圧すると、フィルム状の部位が破れて開口部が形成され、送達用プッシャー30が装填用ルーメン22に進入できるようになる。その他は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
[変形例3]
図7は第1実施形態の変形例3に係る医療器具セット100cを示す図である。第1実施形態では医療器具セット100の塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に予め炭酸ガスがカテーテル毎に充填されて封入されていると説明した。ただし、患者の瘤内に塞栓物10を充填するまでに塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に炭酸ガスなどの血液に溶けやすいガスを充填できていれば、第2弁部材は以下のように構成することもできる。
【0091】
医療器具セット100cを構成する塞栓物装填済みカテーテル20cや送達用プッシャー30は収容袋Bに収納するように構成している。収容袋Bは第1実施形態のカテーテル本体21で上述したようなガスバリア性のある材料で構成することができ、塞栓物装填済みカテーテル20cを収容した内部空間を外部と隔離するように構成している。
図7では一例として収容袋Bに2本の塞栓物装填済みカテーテル20cを収容しているが、収容する塞栓物装填済みカテーテル20cの数は
図7以外の数であってもよい。
【0092】
また、塞栓物装填済みカテーテル20cには、例えば基端側の第2弁部材27cが三方活栓などの活栓を含むように構成している。このように構成することによって、第2弁部材27cは、装填用ルーメン22を外部と連通した状態と装填用ルーメン22を外部と隔離した状態とを切り替え可能に構成している。収容袋Bの内部に炭酸ガスなどの血液に溶けやすいガスを封入しており、第2弁部材27cに係る活栓を開くことで収容袋Bに収容されたガスを塞栓物装填済みカテーテル20cの装填用ルーメン22に充填(装填)させることができる。なお、第2弁部材27cに係る活栓を予め開いた状態にしておくことで、収容袋Bの内部にガスを封入する際に、同時に塞栓物装填済みカテーテル20cの装填用ルーメン22にガスを充填(装填)させることができる。次に、製造段階等の時点で活栓を閉じることで、装填用ルーメン22の内部にガスが充填された状態を維持することができる。なお、塞栓物10、第2弁部材27c以外の塞栓物装填済みカテーテル20cの構成、送達用プッシャー30、送達用カテーテル40、および挿通補助部材50は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
変形例3に係る医療器具セット100cの動作例では塞栓物装填済みカテーテル20cの装填用ルーメン22に炭酸ガスを封入する動作および第2弁部材27cに開口部を形成する動作が第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態と同様である。収容袋Bは、製造段階等の時点において第2弁部材27cに係る活栓を一度開くことによって炭酸ガスの少なくとも一部が収容袋B内から装填用ルーメン22に装填される。収容袋B内への炭酸ガス封入時に第2弁部材27cに係る活栓が予め開いている場合、収容袋B内に炭酸ガスを封入するタイミングと同じタイミングで装填用ルーメン22に炭酸ガスが装填される。そして、第2弁部材27cに係る活栓を閉じる操作で炭酸ガスが装填用ルーメン22に収容された状態が維持される。
【0094】
術者は医療器具セット100cを使用するにあたり、収容袋Bを開封し、塞栓物装填済みカテーテル20cを収容袋Bから取り出す。
【0095】
そして、術者は塞栓物装填済みカテーテル20cを送達用カテーテル40に接続する。そして、術者は接続部材25を操作して第1弁部材24に開口部P1を形成する。次に、術者は第2弁部材27cの活栓を開き、第2弁部材27cに開口部を形成する。そして、術者は送達用プッシャー30を塞栓物装填済みカテーテル20cの基端側から装填用ルーメン22に挿入し、塞栓物10を移動させて送達用カテーテル40のシース41を通じて瘤内に留置する。なお、第2弁部材27cに係る活栓の弁体本体に、送達用プッシャー30を挿入可能なスリットを設けても良い。これにより、活栓を開いて開口部を形成する代わりに、活栓を閉じた状態で送達用プッシャー30を挿入できるため、装填用ルーメンに充填された炭酸ガスが活栓を開くことで外部の空気と置換されてしまうことを防止できる。以降の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
[変形例4]
図8は第1実施形態の変形例4に係る医療器具セット100dを示す図である。収容袋Bを用いた装填済みカテーテルは変形例3以外にも以下のように構成することができる。なお、医療器具セット100dを構成する塞栓物10、送達用プッシャー30、送達用カテーテル40および挿通補助部材50は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
医療器具セット100dを構成する塞栓物装填済みカテーテル20dや送達用プッシャー30は、変形例3と同様に収容袋Bに収納するように構成している。収容袋Bは第1実施形態のカテーテル本体21で上述したようなガスバリア性のある材料で構成することができ、塞栓物装填済みカテーテル20dを収容した内部空間を外部と隔離するように構成している。
図8では一例として収容袋Bに2本の塞栓物装填済みカテーテル20dを収容しているが、変形例3と同様に収容する塞栓物装填済みカテーテル20dの数は
図8以外の数であってもよい。
【0098】
また、塞栓物装填済みカテーテル20dは、カテーテル本体21と、基端ハブ26dと、先端接続部23と、第1弁部材24と、接続部材25と、第2弁部材27と、チューブ28と、第3弁部材29と、を備える。カテーテル本体21、先端接続部23、第1弁部材24、接続部材25、および第2弁部材27は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
装填用ルーメン22dは、チューブ28の内部空間を含む分岐ルーメン28aと連通するように構成している。
【0100】
基端ハブ26dは、基端ハブ26と同様に装填用ルーメン22dの基端と連通する挿通路26aを含み、送達用プッシャー30を挿入可能に構成している。また、基端ハブ26dは、チューブ28と接続可能に構成している。
【0101】
チューブ28は、装填用ルーメン22dと連通する分岐ルーメン28aを備える。チューブ28は、一端がカテーテル本体21の長手方向において基端ハブ26dの端部で基端ハブ26dと接続し、他端が第3弁部材29のポートと連結している。チューブ28は、カテーテル本体21と同様の材料を含むように構成できる。
【0102】
第3弁部材29は、分岐ルーメン28aを設けたチューブ28において装填用ルーメン22dに連通する挿通路26aとの接続部と反対側の端部に設けるように構成している。第3弁部材29は、三方活栓等の活栓を含むように構成している。
【0103】
このように構成することによって、第3弁部材29を含む塞栓物装填済みカテーテル20dは、装填用ルーメン22dを外部と連通した状態と装填用ルーメン22dを外部と隔離した状態とを切り替え可能に構成している。収容袋Bの内部には炭酸ガスなどの血液に溶けやすいガスを封入しており、活栓に係る第3弁部材29を開くことで収容袋Bに収容されたガスを塞栓物装填済みカテーテル20dの装填用ルーメン22dに充填(装填)させることができる。なお、第3弁部材29に係る活栓を予め開いた状態にしておくことで、収容袋Bの内部にガスを封入する際に、同時に塞栓物装填済みカテーテル20dの装填用ルーメン22dにガスを充填(装填)させることができる。次に、活栓に係る第3弁部材29を閉じることで、装填用ルーメン22dの内部にガスが充填された状態を維持することができる。この操作は変形例3と同様に製造段階等の時点で実施することができる。
【0104】
変形例4に係る医療器具セット100dの動作例では塞栓物装填済みカテーテル20dの装填用ルーメン22dに炭酸ガスを封入する動作が第1実施形態と異なり、その他は第1実施形態と同様である。収容袋Bは、製造段階等の時点において第3弁部材29に係る活栓を一度開くことによって炭酸ガスの少なくとも一部が収容袋B内から装填用ルーメン22dに装填される。収容袋B内への炭酸ガス封入時に第3弁部材29に係る活栓が予め開いている場合、収容袋B内に炭酸ガスを封入するタイミングと同じタイミングで装填用ルーメン22dに炭酸ガスが装填される。そして、第3弁部材29に係る活栓を閉じる操作で炭酸ガスが装填用ルーメン22dに収容された状態が維持される。
【0105】
術者は医療器具セット100dを使用するにあたり、収容袋Bを開封し、塞栓物装填済みカテーテル20dを収容袋Bから取り出す。
【0106】
そして、術者は塞栓物装填済みカテーテル20dを送達用カテーテル40に接続する。そして、術者は第2弁部材27を通じて送達用プッシャー30を塞栓物装填済みカテーテル20dの基端側から装填用ルーメン22dに挿入し、塞栓物10を移動させて送達用カテーテル40のシース41を通じて瘤内に留置する。以降の操作は第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0107】
以上説明したように第1実施形態に係る医療器具セット100を構成する塞栓物装填済みカテーテル20は、カテーテル本体21と、第1弁部材24と、第2弁部材27と、塞栓物10と、を備える。カテーテル本体21は、先端が開口した装填用ルーメン22を含む。基端ハブ26は、装填用ルーメン22の基端と連通した挿通路26aを含む。第1弁部材24は、カテーテル本体21の先端側に設けられ、装填用ルーメン22を外部と隔離する。第2弁部材27は、基端ハブ26に設けられ、装填用ルーメン22を外部と隔離する。塞栓物10は、血液に溶けやすいガスとともに装填用ルーメン22に装填されるように構成している。
【0108】
塞栓物を装填するカテーテルの管腔(ルーメン)に空気が含まれている場合、プライミングが必要となる一方で術者はプライミングを失念したり、プライミングを十分にできない場合がある。塞栓物の瘤内への留置には塞栓物を装填したカテーテルが複数必要な場合があり、カテーテルが増えれば増えるほど、プライミングの失念やプライミングが十分でなくなる可能性は上昇しうる。その結果、塞栓物を装填するカテーテルのルーメンに空気が残った状態で塞栓物が投与され、その結果エアーエンボリズムを生じさせる虞がある。
【0109】
これについて本実施形態に係る塞栓物装填済みカテーテル20に血液に溶けやすいガスを充填し、カテーテル本体21に第1弁部材24を設け、基端ハブ26に第2弁部材27を設けることによって、塞栓物10を瘤内に留置する手技を行う際にエアーエンボリズムが起こる危険性を低減できる。また、塞栓物を収容したカテーテルにプライミングを行う場合には、動脈瘤に塞栓物を収容したカテーテルの数が増えるほど、プライミングの作業は煩雑になる。これに対して本実施形態に係る医療器具セット100によれば、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に空気ではなく炭酸ガスのような血液に溶けやすいガスを装填するように構成している。そのため、プライミングのような作業が不要になり、その分、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に収容されたガスの取り扱いを容易にすることができる。また、塞栓物装填済みカテーテルに空気が充填されている場合に塞栓物を体内に投与しようとすると、プライミングの際に塞栓物が装填用ルーメンで膨潤し、塞栓物を装填するまでの手技に時間の制約が必要になる場合がある。これに対して、塞栓物装填済みカテーテル20を上記のように構成することによって、プライミングの作業を不要にできることによって上述した時間の制約がなくすことができ、塞栓物10を体内に運ぶ手技を容易にすることができる。
【0110】
また、第1弁部材24は、軸方向に外力を付与しない状態において開口部P1を形成し、外力を付与することによって開口部を閉じる弾性変形可能な弾性部材を備えるように構成している。このように第1弁部材24は外力を付与している状態から付与していない状態とする程度の比較的簡単な操作で開口部P1を形成して装填用ルーメン22に収容された塞栓物10を炭酸ガスのような血液に溶けやすいガスとともに送達用カテーテル40を用いて瘤内に留置することができる。
【0111】
また、塞栓物装填済みカテーテル20のカテーテル本体21はガスの漏出を防ぐまたは困難な材料から構成するように構成している。そのため、装填用ルーメン22に空気が混入することを防止して塞栓物装填済みカテーテル20のプライミングを不要にすることができる。また、カテーテル本体21を上記のように構成することによって湿気に弱い塞栓物10を保護することができる。
【0112】
また、カテーテル本体21は、先端側に設けられ、塞栓物10を生体管腔に形成された瘤内に送達し塞栓物10が移動可能なシース41を備えた送達用カテーテル40と接続可能な接続部材25を備えるように構成している。このように構成することによって、装填用ルーメン22に装填された塞栓物10を送達用カテーテル40のシース41に流通させたうえで、瘤内に留置することができる。
【0113】
また、第1実施形態に係る医療器具セット100は、上述した塞栓物装填済みカテーテル20に加えて、塞栓物装填済みカテーテル20の基端ハブ26の挿通路26aを介して装填用ルーメン22に挿入可能なプッシャー本体31を有する送達用プッシャー30を有する。このように構成することによって、塞栓物装填済みカテーテル20の装填用ルーメン22に収容された塞栓物10を押し出す操作によって瘤内に留置することができる。
【0114】
また、変形例1に係る第1弁部材24cは、軸方向に外力を付与することによってスリット24eが拡開変形して開口部P2を形成し、外力を付与しない状態で開口部P2を閉じるように構成している。このように第1弁部材24cは軸方向に外力を付与する程度の比較的簡単な操作で開口部P2を形成して装填用ルーメン22に収容された塞栓物10を炭酸ガスとともに送達用カテーテル40を用いて瘤内に留置することができる。
【0115】
また、変形例3に係る医療器具セット100cは、第2弁部材27cが装填用ルーメン22を外部と連通した状態および装填用ルーメン22を外部と隔離した状態を切り替え可能な活栓を含む。また、医療器具セット100cは、ガスの漏出を防ぐまたは困難な材料から構成され、塞栓物装填済みカテーテル20bを収容した状態で内部空間を密封可能な収容袋Bを有するように構成している。このように構成することによって、炭酸ガスなどの血液に溶け易いガスを複数の塞栓物装填済みカテーテル20cに対して一度に封入することができ、塞栓物装填済みカテーテル20cの取り扱いをより一層容易にすることができる。
【0116】
また、変形例4に係る塞栓物装填済みカテーテル20dは、装填用ルーメン22dと連通した分岐ルーメン28aと、分岐ルーメン28aの端部の中でも装填用ルーメン22dと反対側の端部に設けられた第3弁部材29と、を備える。第3弁部材29は、分岐ルーメン28aを介して装填用ルーメン22dを外部と連通した状態および装填用ルーメン22dを外部と隔離した状態に切り替え可能に構成している。医療器具セット100dは、ガスの漏出を防ぐまたは漏出の困難な材料から構成され、塞栓物装填済みカテーテル20dを収容した状態で内部空間を密封可能な収容袋Bを有する。このように構成することによっても、炭酸ガスなどの血液に溶け易いガスを複数の塞栓物装填済みカテーテル20dに対して一度に封入することができ、塞栓物装填済みカテーテル20dの取り扱いをより一層容易にすることができる。
【0117】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。第1実施形態において塞栓物装填済みカテーテル20はカテーテル本体21がガスバリア性のある材料を含むと説明した。ここで、塞栓物装填済みカテーテルによって外部からの空気が装填用ルーメンに侵入することを防止する期間は、少なくとも塞栓物装填済みカテーテルを開封してから塞栓物を瘤内に留置する手技を行う間である。そのため、上記期間に第1弁部材と第2弁部材によって空気が装填用ルーメン22に侵入しないようにできれば、塞栓物装填済みカテーテルのカテーテル本体は必ずしもガスバリア性のある材料を含んでいなくてもよい。
【0118】
カテーテル本体がガスバリア性のある材料を含まない場合、塞栓物装填済みカテーテルは手技の直前まで変形例2で説明したようなガスバリア性のある収容袋Bに収容することが好ましい。また、第1弁部材と第2弁部材の具体的な構成は第1実施形態、変形例1、および変形例3の構成を適宜置換、組み替えたものも本発明の一実施形態に含まれる。
【0119】
また、第2弁部材27は、弁体27aが回転軸27bの周りに回転することによって送達用プッシャー30を装填用ルーメン22に挿入できるとともに、それ以外の場合には装填用ルーメン22が外部と隔離されると説明した。ただし、第2弁部材は上記以外にもゴム等を含む弁体を備え、弁体の中央付近にスリットを形成するように構成してもよい。このように構成することによって、送達用プッシャー30を弁体のスリットから装填用ルーメン22に挿入できるとともに、それ以外の場合には弁体のスリットが閉じた状態となることで装填用ルーメン22を外部と隔離することができる。
【0120】
また、変形例4では分岐ルーメン28aを形成するチューブ28が長手方向における基端ハブ26dの末端で基端ハブ26dと接続されると説明した。ただし、装填用ルーメンと分岐ルーメンを連通させることができれば、分岐ルーメンを形成するチューブの接続位置は基端ハブの末端に限定されず、カテーテル本体21の長手方向における途中位置(中間位置または端部ではない位置)等であってもよい。
【符号の説明】
【0121】
10 塞栓物、
20 塞栓物装填済みカテーテル、
21 カテーテル本体、
22 装填用ルーメン、
24、24c 第1弁部材、
24e スリット、
25 接続部材、
26 基端ハブ、
26a 挿通路、
27 第2弁部材、
28 チューブ、
28a 分岐ルーメン、
29 第3弁部材、
30 送達用プッシャー、
31 プッシャー本体、
40 送達用カテーテル、
42 シースルーメン、
100 医療器具セット、
B 収容袋。