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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014940
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】内視鏡用電気焼灼処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220114BHJP
   A61B 17/295 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B17/295
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117464
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】503468972
【氏名又は名称】小林 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160370
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 鈴
(72)【発明者】
【氏名】小林 真
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160GG21
4C160KK03
4C160KK06
4C160KK15
4C160NN01
4C160NN09
4C160NN21
(57)【要約】
【課題】内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより、先端処置片の先端処置部支持部材寄りの近傍位置を形状認識でき、先端処置部支持部材が生体組織に進入する直前の段階を認識できること。
【解決手段】シース11内に進退可能に配置された操作ワイヤ12を進退操作するとともに、シース11の先端部に設けられた先端処置部支持部材14に支持され所要の電圧を印加される一対の先端処置片15,16により生体組織の患部を処置する構成であり、先端処置部は、各先端処置片の先端側部分15c,16cの腕部14b寄りの位置を囲む塊状であって、絶縁材料よりなるかまたは外周面が絶縁されて絶縁機能を有するとともに、先端側部分を患部内方へ侵入させ患部を処置する際に先端処置部支持部材14の手前で当接停止しかつ停止位置を確認するための目印となる停止・目印機能を有するストッパ部材25,26を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡のチャネルに挿脱される可撓性を有するコイルシースと、
前記コイルシース内に進退可能に配置された導電性を有する操作ワイヤと、
前記コイルシースおよび前記操作ワイヤの各後端側に連結され前記操作ワイヤを進退操作する操作部と、
前記コイルシースの先端部に設けられた筒部と前記筒部より先端側に延在する対向一対の腕部とを有する処置部支持手段と、
導電性材料より成形された一対の先端処置片を有し、一対の前記先端処置片が前記処置部支持手段の一対の前記腕部間に軸支されかつ前記操作ワイヤの進退と連動して開閉し、一対の前記先端処置片が所要の電圧を印加され生体組織の患部を処置する先端処置部とを備え、
前記先端処置部は、各前記先端処置片の先端側部分の前記腕部寄りの位置を囲む塊状であって、絶縁材料よりなるかまたは外周面が絶縁されて絶縁機能を有するとともに、前記先端側部分を患部内方へ侵入させ患部を処置する際に前記処置部支持手段の手前で当接停止しかつ停止位置を確認するための目印となる停止・目印機能を有するストッパ部材を備えている
ことを特徴とする内視鏡用電気焼灼処置具。
【請求項2】
前記先端処置部は、各前記先端処置片の先端側部分が対向面部を有するロッド状に形成されており、前記対向面部と反対側の外側面先端部に引掻き係止用の外側突起が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用電気焼灼処置具。
【請求項3】
前記先端処置部は、一対の前記先端処置片の各前記先端側部分の先端部に互いに当接して閉じ合う半球体部を有し、各前記先端側部分の前記半球体部よりも前記腕部寄りの部分を棒状部として形成し前記棒状部に前記ストッパ部材を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用電気焼灼処置具。
【請求項4】
前記先端処置部は、閉じた状態ではすれ違い状に重なる一対の前記先端処置片がL形板状に形成され、かつ閉じた状態では一方の前記先端処置片の先端部が他方の前記先端処置片の先端部よりもすれ違い方向に突出する側方突出部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡用電気焼灼処置具。
【請求項5】
前記先端処置片は、前記ストッパ部材を取り付けるためのくびれ部を有する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の内視鏡用電気焼灼処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡のチャネル内に挿脱され、内視鏡の挿入部とともに体腔内に挿入され生体組織の病変部の切開処置を行う先端処置部を有する内視鏡用電気焼灼処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡用電気焼灼処置具は、シースの先端部に先端処置部(刃部)を有し、シースを内視鏡のチャネル内に挿脱可能に収容され、内視鏡の挿入部とともに体腔内に挿入され、内視鏡の視野内で内視鏡の挿入部の先端より延出する先端処置部により、体腔内の病変部の治療(生体組織の患部の除去、サンプル採取、切除、止血等)を低侵襲で行うために使用される。
【0003】
以下の特許文献1-3の内視鏡用処置具に関する説明で使用する符号は、各特許文献中で使用している符号である。
【0004】
先行文献1に開示された内視鏡用処置具は、コイルシース40と、コイルシース40内に進退可能に配置された操作ワイヤ30と、操作ワイヤ30を進退操作する操作部50と、コイルシース40の先端に固定連結された保持枠20(先端処置部支持部材)と、保持枠20に回転軸39で回動可能に支持される先端処置部としての一対の把持片12,22とを備える。この構成により、内視鏡用処置具は、コイルシース40を前方へ移動することにより一対の把持片12,22を生体組織に表面から内方へ進出することができ、かつ、操作ワイヤ30をコイルシース40に対し、前進することにより把持片12,22を開くことができ、また、後退することにより把持片12,22を閉じることができる。
【0005】
先行文献2に開示された内視鏡用処置具は、棒状の高周波ナイフ2と、ストッパ(接続筒)7により高周波ナイフ2と接続されたワイヤ3と、ワイヤ3の外周を被覆する内部シース4と、内部シース4の外周を被覆する外部シース5とを備え、全体移動を外部シース5で行い、外部シース5に対しワイヤ3または/および内部シース4を進退操作するように構成され、さらに、外部シース5の先端に設けられた絶縁体である第1当接部材9の中心孔に高周波ナイフ2が挿通され、内部シース4の先端に設けられ外部シース5内面を摺動する突出長調整部材8の筒部8B内にストッパ7が摺動可能に支持される構成である。
【0006】
先行文献3に開示された内視鏡用処置具は、先端処置部である一対の鉗子カップ13と、一方の鉗子カップ13に設けられた針状部12と、コイルシース11の先端部に設けられ一対の鉗子カップ13を開閉可能に支持する先端処置部支持部材15と、先端が連結部材20と一対の開閉リンク18とを介して一対の鉗子カップ13と連結された操作ワイヤ14と、操作ワイヤ14の外周を被覆するコイルシース11と、コイルシース11の外周を被覆する外部シース10と、操作ワイヤ14及びコイルシース11を操作するためのスライダ(第1の操作部)56と備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-112063号公報
【特許文献2】特開2008-272204号公報
【特許文献3】特開2007-289673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された内視鏡用処置具によれば、例えば、生体組織の病変部の切開きの処置に際し、内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより先端部の先方を監視する映像では、一対の把持片12,22が生体組織の内方のどの位置まで進入しているか不明確であり、保持枠20まで生体組織内に深く進入してしまうこともある。保持枠20まで生体組織内に進入してしまうと、保持枠20は、外側コーティングしているが内側はコーティングしておらず、また、コーティングが使っているうちに剥げてくることもあるため、この保持枠20が患部に入りこんでしまうと、処置を行いたい部分以外の部分も保持枠20により焼けてしまう。このため、把持片12,22よりも後端側の保持枠20は患部に触れないようにしたいとう課題がある。
【0009】
そこで、特許文献1に記載された内視鏡用処置具について、特許文献2に記載された内視鏡用処置具の工夫に倣い改良できること、すなわち、高周波ナイフ2が第1当接部材9内に引退した位置から2段階の長さに突出する状態にすることができることにより、生体組織の病変部の切開の深さを2段階に調整でき、絶縁体である第1当接部材9は、端面部が生体組織の表面に接触して移動することで高周波ナイフ2を一定の深さで安定した移動を保障できる構成に倣い改良できることが望まれるが、特許文献1に記載された内視鏡用処置具にあっては、先端処置部と先端処置部支持部材とを有する構成であるので、特許文献2と同様の機能を有するような改良はできない。
【0010】
特許文献3に記載された内視鏡用処置具は、絶縁体である外部シース10の先端を生体組織の病変部に近接させ、針状部12から支持部材15の中程までが外部シース10の先端内から突出することにより、針状部12が先頭になって生体組織の病変部の切開き先端処置部支持部材4まで生体組織内に進入して一対の鉗子カップ13が病変部を切り取ることができる。この内視鏡用処置具は、特許文献1に記載された内視鏡用処置具と同様に、生体組織の病変部の切開きの処置に際し、内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより先端部の先方を監視する映像では、一対の鉗子カップ8,8が生体組織の内方のどの位置まで進入しているか不明確であり、先端処置部支持部材4まで生体組織内に過度に深い位置まで進入してしまうこともある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより、先端処置部の先端処置片の先端処置部支持部材寄りの近傍位置を形状認識でき、先端処置部支持部材が生体組織に進入する直前の段階を認識できる内視鏡用電気焼灼処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様に係る内視鏡用電気焼灼処置具は、上記目的を達成するため、内視鏡のチャネルに挿脱される可撓性を有するコイルシースと、前記コイルシース内に進退可能に配置された導電性を有する操作ワイヤと、前記コイルシースおよび前記操作ワイヤの各後端側に連結され前記操作ワイヤを進退操作する操作部と、前記コイルシースの先端部に設けられた筒部と前記筒部より先端側に延在する対向一対の腕部とを有する処置部支持手段と、導電性材料より成形された一対の先端処置片を有し、一対の前記先端処置片が前記処置部支持手段の一対の前記腕部間に軸支されかつ前記操作ワイヤの進退と連動して開閉し、一対の前記先端処置片が所要の電圧を印加され生体組織の患部を処置する先端処置部とを備え、前記先端処置部は、各前記先端処置片の先端側部分の前記腕部寄りの位置を囲む塊状であって、絶縁材料よりなるかまたは外周面が絶縁されて絶縁機能を有するとともに、前記先端側部分を患部内方へ侵入させ患部を処置する際に前記処置部支持手段の手前で当接停止しかつ停止位置を確認するための目印となる停止・目印機能を有するストッパ部材を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様に係る内視鏡用電気焼灼処置具は、第1の態様の構成に加え、前記先端処置部は、各前記先端処置片の先端側部分が対向面部を有するロッド状に形成されており、前記対向面部と反対側の外側面先端部に引掻き係止用の外側突起が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の態様に係る内視鏡用電気焼灼処置具は、第1の態様の構成に加え、前記先端処置部は、一対の前記先端処置片の各前記先端側部分の先端部に互いに当接して閉じ合う半球体部を有し、各前記先端側部分の前記半球体部よりも前記腕部寄りの部分を棒状部として形成し前記棒状部に前記ストッパ部材を備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第4の態様に係る内視鏡用電気焼灼処置具は、第1の態様の構成に加え、前記先端処置部は、閉じた状態ではすれ違い状に重なる一対の前記先端処置片がL形板状に形成され、かつ閉じた状態では一方の前記先端処置片の先端部が他方の前記先端処置片の先端部よりもすれ違い方向に突出する先端側部分を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の第5の態様による内視鏡用電気焼灼処置具は、前述の態様に加え、前記先端処置片は、前記ストッパ部材を取り付けるためのくびれ部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより、先端処置部の先端処置片の先端処置部支持部材寄りの近傍位置を形状認識でき、先端処置部支持部材が生体組織に進入する直前の段階を認識できる内視鏡用電気焼灼処置具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る内視鏡用電気焼灼処置具を含む内視鏡システムを説明するための図である。
図2】本発明の実施形態1に係る内視鏡用電気焼灼処置具の全体図である。
図3】本発明の実施形態1の内視鏡用電気焼灼処置具に係り、図3(A)は先端処置部が閉じた状態の処置部先端部を示す正面図、図3(B)は先端処置部が閉じた状態の処置部先端部を示す縦断正面図、図3(C)は先端処置部が開いた状態の処置部先端部を示す縦断正面図、図3(D)は図3(A)におけるIIId-IIId矢視縦断図である。
図4図4(A)-(F)は本発明の実施形態1に係る内視鏡用電気焼灼切開具を用いて行うESDの一連の手技の工程図である。
図5】本発明の実施形態2の内視鏡用電気焼灼処置具に係り、図5(A)は先端処置部が閉じた状態の処置具先端部を示す正面図、図5(B)は先端処置部が閉じた状態の処置具先端部を示す縦断正面図、図5(C)は先端処置部が開いた状態の処置具先端部を示す縦断正面図、図5(D)は図5(A)におけるYd-Yd矢視縦断図である。
図6】本発明の実施形態3の内視鏡用電気焼灼処置具に係り、図6(A)は先端処置部が閉じた状態の処置具先端部を示す正面図、図6(B)は先端処置部が閉じた状態の処置具先端部を示す縦断正面図、図6(C)は先端処置部が開いた状態の処置具先端部を示す縦断正面図、図6(D)は図6(A)におけるYId-YId矢視縦断図、図6(E)は図6(A)におけるYIe矢視縦断図、図6(F)は図6(A)におけるYIf矢視縦断図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る内視鏡用電気焼灼処置具に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、先端処置部が位置する側を先端側、操作部が位置する側を基端側と呼ぶ。
【0020】
[実施形態1]
[内視鏡システム]
図1は実施形態1に係る内視鏡用電気焼灼処置具が適用される内視鏡システム1を示す。内視鏡システム1は、生体の体腔内に挿入するための挿入部2と、基端部に設けられ挿入部2の先端を上下左右方向に湾曲操作するためのダイヤルを有する内視鏡操作部3と、挿入部2と内視鏡操作部3との間を接続するように配置された処置具導入部4とを備え、処置具導入部4から挿入部2の先端に向かって長手方向に形成された内視鏡チャネル5が形成され、内視鏡チャネル5内に、後述する内視鏡用電気焼灼処置具10の生体患部の処置を行う先端処置部としての一対の先端処置片15,16およびシース11を挿通し操作部13より操作するように構成されている。
【0021】
[内視鏡用電気焼灼処置具の基本的構成]
図2は実施形態1に係る内視鏡用電気焼灼処置具10を示す。内視鏡用電気焼灼処置具10は、一対の先端処置片15,16で体腔内の生体組織を挟みつつ所要の電流を通電し生体組織を電気焼灼し止血しつつ処置するものである。一対の先端処置片15,16に備えるストッパ部材25,26は特徴的構成である。
【0022】
内視鏡用電気焼灼処置具10は、内視鏡チャネル5に挿脱される可撓性を有する細長いシース11と、シース11内に進退可能に配置された操作ワイヤ12と、操作ワイヤ12を進退操作する操作部13と、シース11の先端に固定連結された処置部支持手段である先端処置部支持部材14と、先端処置部支持部材14に支持軸18で回動可能に支持される先端処置部としての一対の先端処置片15,16とを備える。
【0023】
シース11は、長さが500~2000mm程度の、可撓性を有しかつ適度の腰の強さ(屈曲耐性)を有する細長筒状体である。本実施形態のシース11は、コイルシース11aと、コイルシース11aの外面に被さる樹脂製外被11bとで構成されている。樹脂製外被11bは、PTFE、PEEK、PPS、ポリエチレン、またはポリイミド、等よりなり可撓性・電気絶縁性を有する。コイルシース11aは、例えば断面形状が矩形であるステンレス線等の金属材を密着巻きしてなるコイルシースが用いられることが好ましい。
【0024】
内視鏡用電気焼灼処置具10は、コイルシース11aの内面と、先端処置部支持部材14の外面に電気絶縁被膜が形成されている。樹脂製外被11bが設けられない構成では、コイルシース11aの内外面に電気絶縁被膜が形成されていてもよい。
【0025】
操作ワイヤ12は、シース11内に進退可能に緩く配置され、導電性であって回転追従性が大きなトルクワイヤからなる。操作ワイヤ12は、例えば、全長がステンレス製であるか、またはステンレス製の基端側部分とナイチノール(ニッケルチタン合金)製の先端側部分とをステンレスパイプで接続してなるものであっても良い。
【0026】
操作部13は操作部本体13aとスライダ13bとを有する。操作部本体13aはコイルシース11aの基端に先端部が連結されている。スライダ13bは、操作部本体13aの側面部に設けられたスリットに対応する範囲で操作部本体13aに被嵌してスライドするように設けられ、操作部本体13aの先端面から内部に導入された操作ワイヤ12の基端と連結されている。
【0027】
操作部13は、操作部本体13aとスライダ13bとを相対的にスライド操作(進退操作)することによって、操作ワイヤ12をコイルシース11aに相対移動させることができ、スライダ13bを図中の左方向(先端側)に移動させることにより操作ワイヤ12を先端側にコイルシース11aに相対移動させ一対の先端処置片15,16を開くことができ、また、スライダ13bを図中の右方向(基端側)に移動させることにより操作ワイヤ12を基端側にコイルシース11aに相対移動させ一対の先端処置片15,16を閉じることができるように構成されている。もって、操作部13は、操作ワイヤ12をコイルシース11aに相対的に進退操作することができ、さらに、操作ワイヤ12の進退操作を介して一対の先端処置片15,16を開閉することができるよう構成されている。
【0028】
図3(A)に示すように、先端処置部支持部材14は、コイルシース11aの先端部に被嵌・連結された筒部14aと、筒部14aより先端側に延在する対向一対の腕部14bとを有する。一対の先端処置片15,16は先端処置部支持部材14に開閉可能に支持される。一対の先端処置片15,16は、中程部分(交差部分)15a,16aと基端側部分15b,16bと先端側部分15c,16cとに区分される形状を有する。先端側部分15c,16cは先端外側に角状の突出部がある形状である。先端側部分15c,16cを閉じた状態で針状メスやマーカーとして使用でき、開閉すると鋏として使用できる。
【0029】
図3(B),(C),(D)に示すように、一対の先端処置片15,16は、機能的に先端側部分15c,16cと中程部分15a,16aと基端側部分15b,16bとに区分される。
【0030】
一対の先端処置片15,16の各中程部分(交差部分)15a,16aには軸孔を有し、2つの軸孔を合わせて先端処置部支持部材14の一対の腕部14b,14bの先端部間に位置され、かつ一対の腕部14b,14bの先端部に設けられた一対の軸受用孔に一軸上に合わせ、一方の軸受用孔より他方の軸受用孔まで支持軸18が通されている。
【0031】
支持軸18は、一対の腕部14b,14bの軸受用孔に強制嵌着されてなるか、嵌着後にレーザー溶接により固着されており、一対の先端処置片15,16の中程部分(交差部分)15a,16aの軸孔に対しては緩く嵌着されている。したがって、一対の先端処置片15,16は、中程部分(交差部分)15a,16aが先端処置部支持部材14の一対の腕部14b,14b間に軸支され、先端側部分15c,16cが開閉可能である。
【0032】
一対の先端処置片15,16の各基端部は、一対の開閉作動用リンク19,20の各先端部とピン軸22,23で連結され、さらに一対の開閉作動用リンク19,20の各基端部は進退伝動リンク21の先端部とピン軸24で連結され、進退伝動リンク21は操作ワイヤ12と連結されている。
【0033】
詳細には、一方の先端処置片15の基端側部分15bに設けられたピン軸孔と一方の開閉作動用リンク19の先端部に設けられたピン軸孔とにピン軸22が通され止着されることにより、一方の先端処置片15と一方の開閉作動用リンク19とが連結されている。他方の先端処置片16の基端側部分16bに設けられたピン軸孔と他方の開閉作動用リンク20の先端部に設けられたピン軸孔とが重ね合され、これらピン軸孔にピン軸23が通され止着されている。これにより、他方の先端処置片16と他方の開閉作動用リンク20とが連結されている。したがって、先端処置片15,16の基端側部分15b,16bと開閉作動用リンク19,20は菱形に連鎖している。
【0034】
さらに、一対の開閉作動用リンク19,20の各基端部に設けられたピン軸孔が進退伝動リンク21の先端部に設けられたピン軸孔の両側に重ね合され、これら軸孔にピン軸24が通され止着されることにより、一対の開閉作動用リンク19,20と開閉作動用リンク19とが連結されている。
【0035】
進退伝動リンク21は、外形がロッド状であり、基端面より軸方向に内方にワイヤ受け入れ穴を有し、ワイヤ受け入れ穴に操作ワイヤ12の先端部が嵌入され進退伝動リンク21の側面より締め付けねじをねじ込むか、あるいは銀ロウ付け、ハンダ付け、カシメ、等により連結固定され、もって、進退伝動リンク21と操作ワイヤ12とが連結されている。
【0036】
したがって、操作ワイヤ12がシース11に対して基端方向に相対移動されると、開閉作動用リンク19,20の交差角が小さくなると、一対の先端処置片15,16の基端側部分15b,16bの交差角も小さくなり、これにより、一対の先端処置片15,16の先端側部分15c,16cが閉じていき(図3(B))、また、開閉作動用リンク19,20の交差角が大きくなると、一対の先端処置片15,16の基端側部分15b,16bも交差角が大きくなり、これにより、一対の先端処置片15,16の先端側部分15c,16cが扇状に開いていく(図3(A))。もって、操作ワイヤ12がシース11に対して相対移動されると、一対の先端処置片15,16の先端側部分15c,16cが扇状に開閉するようになっている。
【0037】
各腕部14bの対向面部の先端部に支持軸18を取り巻くように設けられた一対の環状突出座14c,14cが一対の先端処置片15,16の中程部分15a,16aに当接している。これにより、一対の先端処置片15,16が横振れ・横ずれがなく円滑に回動することを保障されている。
【0038】
その他の基本的構成を説明する。先端処置部支持部材14と一対の先端処置片15,16は、ステンレス製またはナイチノール(ニッケルチタン合金)製であり、先端処置部支持部材14と、シース11の樹脂製外被11bとに親水性被膜が形成され、もって、一対の先端切開片15,16からシース11までが体腔内に引き攣りなく円滑に導入できるようになっている。
【0039】
先端処置部支持部材14の筒部14aとコイルシース11aの先端部とが溶接、ロウ付け、またはハンダ付けにより連結されている。なお、コイルシース11aの先端部の外形を研削して小径部を設け、この小径部に筒部14aを被嵌し固定連結してもよい。
【0040】
したがって、操作ワイヤ12を進退操作することにより、一対の先端処置片15,16の先端側部分15c,16cを扇状に開閉することができ、かつ閉じるときに、高周波電流を通電して体腔内の生体組織を電気焼灼し止血しつつ切開する等の処置を行うようことができる。
【0041】
[内視鏡用電気焼灼処置具の特徴的構成]
一対の先端切開片15,16は、導電性材料より成形される。各先端側部分15c,16cは、対向面部15d,16dを有する長さ方向に垂直な断面が矩形であるロッド状に形成されている。一対の先端切開片15,16は、操作ワイヤ12を介して給電されて電極面となり、対向面部15d,16dのみでなく、各先端側部分15c,16cの全長・全周面において生体組織に対して電気焼灼が行われる。
【0042】
各先端側部分15c,16cは、対向面部15d,16dと反対側の外側面先端部に引掻き係止用兼マーキング用の外側突起15e,16eが形成されている。外側突起15e,16eは、先端切開片15,16を閉じた状態で側方に移動させてメスとして切開処置を行うときに、粘膜に対して滑らずに引っ掛かる機能を有する。
【0043】
また、各先端側部分15c,16cは、対向面部15d,16dの先端部に間隔保持用の内側突起15f,16fを有する。各基端側部分15b,16bは、開閉作動用リンク19,20と進退伝動リンク21を介し操作ワイヤ12と連結されている。
【0044】
各先端側部分15c,16cは、操作ワイヤ12の進退動作力を受けて開閉し、かつ操作ワイヤ12が最引退状態のときに、閉じた状態になり、各対向面部15d,16dが平行状態でかつ近接した状態に保持される。
【0045】
各先端側部分15c,16cが閉じた状態では、内側突起15f,16f同士が当接して対向面部15d,16d間の隙間cが例えば0.2-1.0mmの微小寸法が保持されるように近接している。
【0046】
内側突起15f,16fは、対向面部15d,16dの先端部ではなく、基端部または中途部に設けられても良い。また、外側突起15e,16eはいずれか一方が設けられていればよい。また、内側突起15f,16fはいずれか一方が設けられていればよい。
【0047】
内側突起15f,16fは、対向面部15d,16dの先端部に設けられている場合、隙間間隔を保持する機能に加え、一対の先端処置片15,16が扇状に開いた状態から閉じていくときに、粘膜引き止め機能を有する。粘膜引き止め機能とは、一対の先端処置片15,16が扇状に開いた状態から閉じていく際に、対向面部15d,16d間に挟み込まれた位置にある病変部が対向面部15d,16dからの圧迫を受けて対向面部15d,16d間の先端方向に逃げてしまわないように病変部の粘膜に引っ掛かり引き留める機能である。
【0048】
内側突起15f,16fは、粘膜剥離処理の際に、操作ワイヤ12を基端側に手加減することなく引くと、操作ワイヤ12が最引退状態となり、先端側部分15c,16cが閉じ内側突起15f,16f同士が当接することで、各対向面部15d,16dが略平行に近接した状態に保持される。
【0049】
先端処置部である先端処置片15,16は、各先端側部分15c,16cの腕部14b寄りの一部が他部よりも断面積が僅かに小さいくびれ部15g,16gとなっており、この15g,16gに串刺し状にストッパ部材25,26を備えている。くびれ部15g,16gは、ストッパ部材25,26を設ける位置を規定しているとともに、ストッパ部材25,26を移動不能に停止させる機能を有する。
【0050】
ストッパ部材25,26は、腕部14b寄りのくびれ部15g,16gを囲む塊状であって、絶縁材料よりなるかまたは外周面が絶縁されて絶縁機能を有するとともに、先端側部分15c,16cを患部内方へ侵入させ患部を処置する際に処置部支持部材14の手前で当接停止しかつ停止位置を確認するための目印となる停止・目印機能を有する。
【0051】
ストッパ部材25,26は、例えば熱収縮性を有するチューブをリング状に切断し先端処置片15,16の先端側部分15c,16cの先端より挿通し当該リング状の部材を先端側部分15c,16cの処置部支持手段14の手前位置に移動して加熱することにより熱収縮させて固定してなるか、あるいはエポキシ系接着剤を先端側部分15c,16cの処置部支持手段14の手前位置に一巻きにした団子状に形成してなるか、更には紫外線硬化樹脂を先端側部分15c,16cの処置部支持部材14の手前位置に一巻きに塗布し紫外線を照射して固化してなる。
【0052】
[先端処置片15,16からなる先端処置部の機能]
先端処置片15,16からなる先端処置部は、ストッパ部材25,26を有するので、内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより、先端処置部の先端処置片の先端処置部支持部材寄りの近傍位置を形状認識でき、先端処置部支持部材が生体組織に進入する直前の段階を認識できる。また、先端処置片15,16からなる先端処置部は、先端処置部支持部材が生体組織に進入する位置に当接するとストッパ部材25,26が挿入抵抗を増し、挿入抵抗を増す感触が操作者の手に伝わるので、この点からも先端処置部支持部材が生体組織に進入しようとする瞬間が分かり、先端処置部支持部材が生体組織に進入することを防止できる。
【0053】
さらに、先端処置部支持部材14が生体組織に進入するのを未然に防げることにより、先端処置部支持部材14の内側が絶縁コーティングされておらず、外側の絶縁コーティングが使っているうちに剥げてくることもあって、この先端処置部支持部材14が患部に入りこんでしまうと、処置を行いたい部分以外の部分も先端処置部支持部材14により焼けてしまうという恐れが解消される。
【0054】
先端処置片15,16からなる先端処置部は、各先端処置片15,16の先端側部分15c,16cが対向面部を有するロッド状に形成されており、対向面部と反対側の外側面先端部に引掻き係止用兼マーキング用の外側突起15e,16eが形成されており、その上、ストッパ部材25,26を有するので、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD;Endoscopic Submucosal Dissection)の手技において、電気焼灼によるマーキング機能と切開機能と閉じ合せ止血機能と血管切断回避機能とを有し、操作性に優れる。
【0055】
[マーキング機能]
ESDの手技における最初の処置は、図4(A)に示すように、病変部A周辺に切開範囲を決めるための点状のマーク(マーキング痕)mを周配置に適数個(例えば6~12個)付すことである。このため、内視鏡システム1の挿入部2を患者の体腔内に挿入し、内視鏡画像によって病変部Aの位置を確認し、内視鏡チャネル5に挿通されたシース11の先端部の先端処置部(一対の先端処置片15,16)を内視鏡先端部から突出し、例えば外側突起15eまたは16eを病変部Aの周辺の粘膜に押し当て、先端処置部に高周波電流を通電する。これにより、外側突起15eまたは16eにより病変部Aの周辺の粘膜の押し当て位置が僅かに差し込まれ、外側突起15eまたは16eが粘膜表面で滑らないため狙った位置に電気焼灼されてマーキング痕mが形成される。その後、高周波電流を遮電し外側突起15eまたは16eを粘膜から離れさせ、外側突起15eまたは16eを、病変部Aの周辺の粘膜の次の押し当て位置へ移動して押し当てマーキング痕mを形成することを繰り返し、点状のマーキング痕mを周配置に適数個を形成し、マーキング処置を終了する。続いて、図5(B)に示すように、病変部の粘膜下層にヒアルロン酸等の液体を局所注射する。内視鏡用電気焼灼切開具10をヒアルロン酸等の液体を給送できる内視鏡用注射具Gと交換し病変部Aの粘膜下層に向けてマーキング痕mの外側位置に位置させて刺し込み、薬液を注入すると病変部の粘膜を浮き上がらせることができる。
【0056】
[切開機能]
病変部Aの粘膜を浮き上がらせた後は、図4(C)に示すように、マーキング痕mの外周位置の粘膜に環状凹部Rを処置する。このため、再び、内視鏡用電気焼灼処置具10と交換し、外側突起15eおよび/または16eを病変部Aの周辺の粘膜に押し当て、先端処置部に高周波電流を通電し、マーキング痕mの外周を一回りさせる。これにより、外側突起15eおよび/または16eにより病変部Aの周辺の粘膜の押し当て位置が僅かに差し込まれ、外側突起15eまたは16eが粘膜表面で滑らないため狙った位置に電気焼灼されて環状凹部Rを処置することができる。
【0057】
[剥離機能]
環状凹部Rを切開した後は、続いて、図4(D)に示すように、病変部Aを少しずつ剥ぎ取る。このため、内視鏡用電気焼灼処置具10の一対の先端処置片15,16を開閉することにより患部を挟んで通電することにより切開を行う。
【0058】
剥離機能としては、一対の先端切開片15,16に別の動作を与える方法であっても良く、例えば一対の先端処置片15,16を閉じて外側突起15e,16eの両方を環状凹部Rに合わせ、病変部Aの粘膜下層に向けて高周波電流を通電させて電気焼灼により若干寸法刺し込む毎に、一対の先端処置片15,16を小さな角度開いて切り開き幅を大きくし閉じることを繰り返してもよく、一対の先端切開片15,16を閉じて環状凹部Rの一端から直径方向の他端まで電気焼灼により病変部Aの粘膜下層に突き刺してから一対の先端切開片15,16の開き、開いたまま差し込み位置まで引く動作とする場合でもよい。
【0059】
[閉じ合せ止血機能]
病変部Aを取り除いた後は、続いて、図4(E),(F)に示すように、病変部Aを取り除いた生体表面を止血する。このため、一対の先端処置片15,16を適度の扇状に開いて病変部Aを挟み込む状態になるよう生体表面に押し当て、高周波電流を供給し電気焼灼を行いつつ、操作ワイヤ12を基端側に引くと、操作ワイヤ12が最引退状態となり、一対の先端処置片15,16を緩速度で閉じて病変部Aを取り除いた表面を挟み込む所定秒数電気焼灼を維持して止血する。
【0060】
対向面部15d,16d間の間隔cが0.2-1.0mmであると、対向面部15d,16d間でのジュール熱が高密度に発生し、対向面部15d,16dに挟まれる病変部組織の粘膜がジュール熱により多量の泡に変わり、この泡が対向面部15d,16d間の熱を奪い取るように切除方向へ流れるので対向面部15d,16dを良好に放熱させることになる。これにより、給電される対向面部15d,16d間にジュール熱が発生し対向面部15d,16dに振れる粘膜が多量の泡を発生させて分解し、多量の泡を熱とともに切除方向へ流れさせることになり、病変部を健全な生体組織から安全に分離するよう処置することができる。
【0061】
[実施形態2]
実施形態2の内視鏡用電気焼灼処置具は、図5に示すように、シース11と、操作ワイヤ12と、操作部13と、処置部支持部材14と、図2図3に示す一対の先端処置片15,16に替えて、一対の先端処置片15A,16Aよりなる先端処置部とを備えている。図5に示す各構成要素について、図3に示す対応している各構成要素と同一のものは説明を省略し、併せて、符号についても同一の符号を流用する。
【0062】
[先端処置片15A,16Aからなる先端処置部の構成]
先端処置部である先端処置片15A,16Aの各先端側部分は、先端部に互いに当接して閉じ合う半球体部15h,16hを有し、各前記先端側部分の半球体部15h,16hよりも腕部14b寄りの部分が対向面を有する棒状部15i,16iとからなり、さらに棒状部15i,16iの腕部14b寄りの一部分がくびれ部15j,16jとなっていて、このくびれ部15j,16jに図3と同一のストッパ部材25,26を備えている。
【0063】
[先端処置片15A,16Aがストッパ部材25,26を有することによる機能]
先端処置片15A,16Aからなる先端処置部は、実施形態1と同様に、ストッパ部材25,26を有するので、実施形態1において説明した先端処置片15,16と同様に、内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより、先端処置部の先端処置片の先端処置部支持部材寄りの近傍位置を形状認識でき、先端処置部支持部材が生体組織に進入する直前の段階を認識でき、これにより、カメラにより半球体部15h,16hの侵入位置を把握し易く、切開処置がし易くなる。
【0064】
半球体部15h,16hは、先端処置片15A,16Aを閉じることにより球体状に重なる状態になり、この状態で電気焼灼を行いつつ生体組織に真っすぐに進入することができる。ストッパ部材25,26が生体組織に近接すると、この近接するタイミングを内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより認識することができる。また、電気焼灼を行なわないストッパ部材25,26が生体組織に当接した場合には、当接した感触が処置者の手に伝達されるから、先端処置片支持部材14を生体組織に進入するのを未然に防止できる。
【0065】
また、半球体部15h,16hが球体状に重なる状態(先端処置片15A,16Aを閉じた状態)で生体組織の所要深さに進入した状態から、先端塊15h、16hのいずれかを患部に引き掛けてスライドさせて切開することや、先端処置片15A,16Aを開閉することにより患部を挟んで電気焼灼を行いつつ生体組織を切り開いていくことができる。
【0066】
[実施形態3]
実施形態3の内視鏡用電気焼灼処置具は、図6に示すように、シース11と、操作ワイヤ12と、操作部13と、処置部支持手段14と、図2図3に示す一対の先端処置片15,16に替えて、一対の先端処置片15B,16Bよりなる先端処置部とを備えている。図6に示す各構成要素について、図3に示す対応している各構成要素と同一のものは説明を省略し、併せて、符号についても同一の符号を流用する。
【0067】
[先端処置片15B,16Bからなる先端処置部の構成]
先端処置部である先端処置片15B,16Bは、開いた状態では先端部が互いに接近する方向に折れ曲がったL形板状に形成されかつ閉じた状態ではすれ違い状に重なる先端側部分15k,16kを有する。
【0068】
先端側部分15k,16kは、L形であるから開いた状態(図6(C))で生体組織の病変部を挟むように進入し、電気焼灼によりナイフ機能を発揮し病変部の両側方の粘膜をその奥の正常な生体組織から切り剥がすことができ、先側部分15k1,16k1が互いに近接する状態に閉じると病変部を取り囲む状態になり、さらに、すれ違い完全に閉じていく過程では、電気焼灼によりナイフ機能を発揮し病変部とその奥の正常な生体組織との間を切り剥がすことができる。
【0069】
各先端側部分15k,16kのL形に折れ曲がった先側部分15k1,16k1は、取り囲んだ病変部を外側に逃がさず、内側に取り込む機能を有する。
各先端側部分15k,16kは、閉じた状態では一方の先端処置片の先端部が他方の先端処置片の先端部よりもすれ違い方向に突出する側方突出部15m,16mを有する。
【0070】
側方突出部15m,16mは、実施形態1および図3に示す外側突起15e,16eと同様に、粘膜に対して滑らずに引っ掛かる機能を有する。すなわち、図4(D)に示すように、病変部Aを少しずつ剥ぎ取るため、一対の先端処置片15B,16Bを閉じた状態で側方突出部15m,16mのいずれか一方を用いて病変部Aの周りの所要組織に引掛けて環状凹部Rを切り開くことができる。
【0071】
[先端処置片15B,16Bがストッパ部材25,26を有することによる機能]
先端処置片15B,16Bからなる先端処置部は、図3と同様に、ストッパ部材25,26を有するので、実施形態1において説明した先端処置片15,16と同様に、内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより、先端処置部である先端処置片15k,16kの先端処置部支持部材14寄りの近傍位置を形状認識でき、先端処置部支持部材14が生体組織に進入する直前の段階を認識できる。これにより、先端処置部支持部材14が生体組織に進入するのを未然に防げて先端処置片15,16による鉗子として行う処置を把握し易く、切開等の処置がし易くなる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、内視鏡の挿入部の先端部に備えるカメラにより、先端処置部の先端処置片の先端処置部支持部材寄りの近傍位置を形状認識でき、先端処置部支持部材が生体組織に進入する直前の段階を認識できるという効果を有し、操作性に優れる内視鏡用電気焼灼処置具を提供することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…内視鏡システム、
2…挿入部、
3…内視鏡操作部、
4…処置具導入部、
5…内視鏡チャネル、
10…内視鏡用電気焼灼処置具、
11…シース、
11a…コイルシース、
11b…樹脂製外被、
12…操作ワイヤ、
13…操作部、
13a…操作部本体、
13b…スライダ、
14…先端処置部支持部材、
14a…筒部、
14b…腕部、
14c…環状突出座、
15,16…先端処置片、
15A,16A…先端処置片、
15B,16B…先端処置片、
15a,16a…中程部分、
15b,16b…基端側部分、
15c,16c…先端側部分、
15d,16d…対向面部、
15e,16e…外側突起、
15f,16f…内側突起、
15g,16g…くびれ部、
15h,16h…半球体部、
15i,16i…棒状部、
15j,16j…くびれ部、
15k,16k…先端側部分、
15m,16m…側方突出部、
15n,16n…くびれ部、
18…支持軸、
19,20…開閉作動用リンク、
21…進退伝動リンク、
22,23,24…ピン軸、
25,26…ストッパ部材、
c…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6