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特開2022-149401状態判定装置、状態判定方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149401
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】状態判定装置、状態判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20220929BHJP
   G06T 7/194 20170101ALI20220929BHJP
   C02F 11/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G06T7/00 350B
G06T7/194 ZAB
C02F11/00 Z
C02F11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051533
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】504193837
【氏名又は名称】国立大学法人室蘭工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 伸弘
(72)【発明者】
【氏名】榊原 健太郎
【テーマコード(参考)】
4D059
5L096
【Fターム(参考)】
4D059AA00
4D059CA30
4D059CB06
4D059EA20
5L096AA02
5L096AA06
5L096CA04
5L096DA01
5L096DA02
5L096FA06
5L096HA04
5L096HA09
5L096HA11
5L096KA04
5L096MA07
(57)【要約】
【課題】設備運転の運転人員の負荷軽減や省力化を図ることが可能な状態判定装置、状態判定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】前段の設備から後段の設備へ対象物を搬送する搬送設備において、前記対象物が搬送される様子を撮像可能に設けられた撮像装置から、前記対象物が撮像された画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の搬送量を取得する搬送量取得部と、前記画像取得部によって取得された異なる時間に撮像された複数の前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の運動量を取得する運動量取得部と、前記搬送量取得部によって取得された前記対象物の搬送量及び前記運動量取得部によって取得された前記対象物の運動量に基づき、前記対象物の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する状態判定部と、を備える、状態判定装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前段の設備から後段の設備へ対象物を搬送する搬送設備において、前記対象物が搬送される様子を撮像可能に設けられた撮像装置から、前記対象物が撮像された画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の搬送量を取得する搬送量取得部と、
前記画像取得部によって取得された異なる時間に撮像された複数の前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の運動量を取得する運動量取得部と、
前記搬送量取得部によって取得された前記対象物の搬送量及び前記運動量取得部によって取得された前記対象物の運動量に基づき、前記対象物の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する状態判定部と、
を備える、状態判定装置。
【請求項2】
前記画像取得部は、前記撮像装置が所定の期間に一定の時間間隔で撮像した複数の画像を取得し、
前記搬送量取得部は、前記所定の期間に取得された前記複数の画像ごとに得られる前記対象物の搬送量の移動平均値を算出し、
前記運動量取得部は、前記所定の期間に取得された前記複数の画像ごとに得られる前記対象物の運動量の移動平均値を算出し、
前記状態判定部は、前記所定の期間における前記対象物の搬送量の移動平均値及び前記対象物の運動量の移動平均値に基づき、前記対象物の状態を判定する、
請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項3】
前記状態判定部は、前記対象物の搬送量と、前記対象物の運動量と、前記対象物の状態との対応関係を学習した機械学習モデルを用いて、前記対象物の状態を判定する、
請求項1又は請求項2に記載の状態判定装置。
【請求項4】
前記状態判定部が用いる機械学習モデルは、サポートベクターマシンによって機械学習を行ったモデルである、
請求項3に記載の状態判定装置。
【請求項5】
前記搬送量取得部は、前記画像の領域を前記画像に含まれる要素ごとに分類し、前記要素が対象物である領域に含まれる画素数に基づき、前記対象物の搬送量を算出する、
請求項1又は請求項2に記載の状態判定装置。
【請求項6】
前記搬送量取得部は、前記対象物の画像の各画素と、各画素が示す前記要素との対応関係を学習した機械学習モデルを用いて、前記対象物の搬送量を算出する、
請求項5に記載の状態判定装置。
【請求項7】
前記搬送量取得部が用いる機械学習モデルは、セマンティックセグメンテーションによって機械学習を行ったモデルである、
請求項6に記載の状態判定装置。
【請求項8】
前記運動量取得部は、前記画像取得部によって取得された第1の画像と、前記第1の画像よりも前に取得された第2の画像とを比較した際の特徴点の移動方向及び移動量に基づき、前記対象物の運動量を算出する、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の状態判定装置。
【請求項9】
前記運動量取得部は、オプティカルフローを用いて前記対象物の運動量を取得する、
請求項8に記載の状態判定装置。
【請求項10】
前記状態判定部による判定の結果を、前記判定の結果に基づき設備の運転を制御可能な外部装置へ出力する出力処理部、
をさらに備える、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の状態判定装置。
【請求項11】
画像取得部が、前段の設備から後段の設備へ対象物を搬送する搬送設備において、前記対象物が搬送される様子を撮像可能に設けられた撮像装置から、前記対象物が撮像された画像を取得する過程と、
搬送量取得部が、前記画像取得部によって取得された前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の搬送量を取得する過程と、
運動量取得部が、前記画像取得部によって取得された異なる時間に撮像された複数の前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の運動量を取得する過程と、
状態判定部が、前記搬送量取得部によって取得された前記対象物の搬送量及び前記運動量取得部によって取得された前記対象物の運動量に基づき、前記対象物の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する過程と、
を含む、状態判定方法。
【請求項12】
コンピュータを、
前段の設備から後段の設備へ対象物を搬送する搬送設備において、前記対象物が搬送される様子を撮像可能に設けられた撮像装置から、前記対象物が撮像された画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の搬送量を取得する搬送量取得手段と、
前記画像取得手段によって取得された異なる時間に撮像された複数の前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の運動量を取得する運動量取得手段と、
前記搬送量取得手段によって取得された前記対象物の搬送量及び前記運動量取得手段によって取得された前記対象物の運動量に基づき、前記対象物の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する状態判定手段と、
として機能させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態判定装置、状態判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物が搬送される工程が含まれる設備において、当該対象物の状態を把握することは、設備の運転状態を制御するために重要である。
例えば、下水処理場において、下水中の固形分は、脱水設備にて脱水処理されて脱水汚泥(対象物の一例)となり、当該脱水汚泥に対して焼却設備にて焼却処理が行われたり、乾燥設備にて乾燥処理が行われたりする。脱水汚泥は、ベルトコンベアやスクリューコンベア等の搬送設備によって、脱水設備から焼却設備や乾燥設備へ搬送される。
脱水汚泥の搬送時、作業員は、脱水汚泥の状態が後工程の処理に適した状態であるか否かを目視によって判定し、判定結果に応じて脱水汚泥を後工程の設備へ供給して良いか否かを決定している場合がある。作業員の目視による判定では、作業員の経験によって判定の精度にばらつきが生じる恐れがある。
そこで、対象物の状態を作業員による目視以外の方法で判定することにより、判定の精度を高めるための技術が各種提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、脱水機の排出口から排出されたスラリー状汚泥(対象物の一例)を連続して採取し、押し固めた後にマイクロ波によって含水率を測定する技術が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、水処理槽の汚泥水を搬送流路へ流し、搬送流路を通って搬送される汚泥水を撮像し、得られた画像に対して画像処理を行うことで、汚泥水に含まれる活性汚泥(対象物の一例)の状態を評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-1019号公報
【特許文献2】国際公開第2017/030138号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、スラリー状汚泥を採取するための設備や押し固めるための設備など、対象物の状態を把握するために多くの設備を設ける必要がある。また、特許文献1の技術では、スラリー状汚泥を押し固めて測定する必要があり、測定後の汚泥が塊となって後工程の設備へ搬送され、後工程の設備の運転に影響を及ぼす恐れがある。特許文献2の技術では、評価対象が活性汚泥であり、スラリー状汚泥の状態を判定することは困難であった。このように、設備面、コスト面、評価対象の相違等により、運転人員が目視によってスラリー状汚泥の状態の判定を行わざるを得ない場合があった。この場合、目視によるスラリー状汚泥の状態を判定する運転員を用意する必要があるほか、運転経験の違いにより判定結果が異なることがあった。
【0007】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、設備運転の運転人員の負荷軽減や省力化を図ることが可能な状態判定装置、状態判定方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る状態判定装置は、前段の設備から後段の設備へ対象物を搬送する搬送設備において、前記対象物が搬送される様子を撮像可能に設けられた撮像装置から、前記対象物が撮像された画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の搬送量を取得する搬送量取得部と、前記画像取得部によって取得された異なる時間に撮像された複数の前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の運動量を取得する運動量取得部と、前記搬送量取得部によって取得された前記対象物の搬送量及び前記運動量取得部によって取得された前記対象物の運動量に基づき、前記対象物の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する状態判定部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る状態判定方法は、画像取得部が、前段の設備から後段の設備へ対象物を搬送する搬送設備において、前記対象物が搬送される様子を撮像可能に設けられた撮像装置から、前記対象物が撮像された画像を取得する過程と、搬送量取得部が、前記画像取得部によって取得された前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の搬送量を取得する過程と、運動量取得部が、前記画像取得部によって取得された異なる時間に撮像された複数の前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の運動量を取得する過程と、状態判定部が、前記搬送量取得部によって取得された前記対象物の搬送量及び前記運動量取得部によって取得された前記対象物の運動量に基づき、前記対象物の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する過程と、を含む。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、前段の設備から後段の設備へ対象物を搬送する搬送設備において、前記対象物が搬送される様子を撮像可能に設けられた撮像装置から、前記対象物が撮像された画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段によって取得された前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の搬送量を取得する搬送量取得手段と、前記画像取得手段によって取得された異なる時間に撮像された複数の前記画像に基づき、前記画像内の前記対象物の運動量を取得する運動量取得手段と、前記搬送量取得手段によって取得された前記対象物の搬送量及び前記運動量取得手段によって取得された前記対象物の運動量に基づき、前記対象物の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する状態判定手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、設備運転の運転人員の負荷軽減や省力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る状態判定システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る状態判定装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る脱水汚泥画像の一例を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る分類画像の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る状態判定システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施例に係る判定結果のF値を示す図である。
図7】本発明の実施例に係る判定結果の混同行列を示す図である。
図8】本発明の実施例に係る移動平均値を用いた場合の判定結果のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0014】
<1.概要>
本発明は、所定の装置対象物を搬送する搬送設備において、対象物の状態が搬送先の装置で要求される条件を満たすか否かを判定する状態判定システムに関する。対象物の一例として、一定の粘性を有する物質であればよく、樹脂材料、化粧品クリーム、食品、汚泥、高分子ポリマー、ゲル状の電解液などであるである。なお、前述した物質に限定されるものではない。
【0015】
また、本発明における搬送先の装置とは、対象物に何らかの処理を行う装置、または貯留する装置であれば良く、対象物の用途に応じて適宜選定される。一例として、乾燥装置、攪拌装置、分離装置、ろ過装置、焼却炉、焙焼炉などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0016】
対象物の状態が要求される条件は、例えば、対象物の性状が後工程の処理に適した状態であるか否かである。適した状態であるか否かの判定条件は、具体的に、対象物の含水率が適しているか否か、対象物の大きさが適しているか否か(大きな塊の有無)等である。
対象物の状態が要求される条件を満たすか否かは、後工程の処理に影響し得る。そのため、対象物の状態が要求される条件を満たすか否かの判定が必要となる。設備の管理者や作業者は、例えば、対象物の状態の判定結果に応じて対象物を後段の設備へ供給するか否かを判定し、各設備の運転を制御することができる。
【0017】
以下では、本実施形態に係る状態判定システムを、水処理プラントに適用する例について説明する。具体的に、状態判定システムは、水処理プラントにおいて脱水機(前段の設備の一例)から乾燥機(後段の設備の一例)へ脱水汚泥(対象物の一例)が搬送される工程に適用される。当該工程において状態判定システムは、スクリューコンベア(搬送設備の一例)によって脱水機から乾燥機へ搬送される脱水汚泥の状態を判定する。
なお、状態判定システムの適用対象、前段の設備、後段の設備、搬送設備、及び対象物は、かかる例に限定されない。
【0018】
<2.状態判定システムの構成>
以上、本発明の概要について説明した。続いて、図1を参照して、本発明の実施形態に係る状態判定システムの構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る状態判定システム1の構成を示す図である。
図1に示すように、状態判定システム1は、撮像装置10、状態判定装置20、及び出力装置30を備える。脱水機2から排出される脱水汚泥は、スクリューコンベア3によって乾燥機4へ搬送される。
【0019】
撮像装置10は、脱水汚泥が搬送される様子(搬送状態)を撮像した画像(静止画又は動画)を取得するカメラである。本実施形態に係る撮像装置10は、一例として、脱水汚泥が搬送される様子を動画で撮像する。当該動画のフレームレートは、例えば30fps(frames per second)であるが、かかる例に限定されない。
撮像装置10は、脱水機2から乾燥機4へ脱水汚泥を搬送するスクリューコンベア3において、脱水汚泥が搬送される様子を撮像可能に設けられる。撮像装置10が設けられる位置は、脱水汚泥が搬送される様子を撮像可能であれば任意の位置であってよい。例えば、撮像装置10は、スクリューコンベア3とは独立して設けられてもよいし、スクリューコンベア3に対して備え付けられてもよい。撮像装置10をスクリューコンベア3に対して備え付ける場合、撮像装置10は、スクリューコンベアの内部に備え付けられてもよいし、外部に備え付けられてもよい。
撮像装置10は、状態判定装置20と通信可能に接続されている。撮像装置10は、撮像した脱水汚泥の画像(以下、「脱水汚泥画像」とも称される)を状態判定装置20へ送信する。
【0020】
状態判定装置20は、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する装置である。状態判定装置20は、例えば、PC(Personal Computer)、サーバ等の端末である。
状態判定装置20は、撮像装置10が撮像した脱水汚泥画像を撮像装置10から受信する。本実施形態に係る状態判定装置20は、一例として、撮像装置10から受信した脱水汚泥画像に基づき、脱水汚泥の状態を判定する。
状態判定装置20は、出力装置30と通信可能に接続されている。状態判定装置20は、出力情報を出力装置30へ送信する。本実施形態に係る状態判定装置20は、一例として、脱水汚泥の状態の判定結果を示す判定結果情報を出力情報として、出力装置30へ送信する。
【0021】
出力装置30は、状態判定装置20から受信する出力情報を出力する装置である。出力装置30は、例えば、PC、スマートフォン、タブレット端末、各設備に設けられた端末等の端末である。出力装置30は、当該端末が備えるディスプレイ等の表示装置やスピーカ等の音声出力装置によって出力情報を出力する。本実施形態に係る出力装置30は、一例として、状態判定装置20から受信する判定結果情報を表示装置に表示させる。
【0022】
<3.状態判定装置の機能構成>
以上、状態判定システム1の構成について説明した。続いて、図2から図4を参照して、状態判定装置20の機能構成について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る状態判定装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、状態判定装置20は、通信部200、制御部210、及び記憶部220を備える。
【0023】
(1)通信部200
通信部200は、外部装置と通信を行う機能を有する。通信部200は、外部装置から受信する情報を制御部210へ出力する。外部装置は、状態判定装置20の外部に設けられた装置である。外部装置には、例えば、撮像装置10、出力装置30、及び制御対象となる装置等が含まれる。
【0024】
通信部200は、外部装置から受信する情報を制御部210へ出力する。例えば、通信部200は、撮像装置10が撮像した脱水汚泥画像を撮像装置10から受信し、制御部210の画像取得部211へ出力する。
【0025】
また、通信部200は、制御部210から入力される情報を外部装置へ送信する。例えば、通信部200は、制御部210の出力処理部215から入力される出力情報を出力装置30へ送信する。
【0026】
なお、通信部200による通信は、有線通信又は無線通信のいずれによって実現されてもよい。
【0027】
(2)制御部210
制御部210は、状態判定装置20全般の動作を制御する機能を有する。制御部210は、例えば、状態判定装置20がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図2に示すように、制御部210は、画像取得部211、搬送量取得部212、運動量取得部213、状態判定部214、及び出力処理部215を備える。
【0028】
(2-1)画像取得部211
画像取得部211は、スクリューコンベア3において搬送されている脱水汚泥が撮像された脱水汚泥画像を取得する機能を有する。例えば、画像取得部211は、通信部200を介して、撮像装置10から当該脱水汚泥画像を取得する。具体的に、画像取得部211は、撮像装置10によって所定の期間に一定の時間間隔で撮像された複数の脱水汚泥画像を取得する。本実施形態における複数の脱水汚泥画像は、撮像装置10によって撮像される動画を構成する1枚1枚の静止画である。画像取得部211は、取得した脱水汚泥画像を搬送量取得部212及び運動量取得部213へ出力する。
【0029】
ここで、図3を参照して、本発明の実施形態に係る脱水汚泥画像について説明する。図3は、本実施形態に係る脱水汚泥画像の一例を示す図である。
図3には、撮像装置10が撮像した動画を構成する複数のフレームの内の1フレームが脱水汚泥画像50として示されている。脱水汚泥画像50には、脱水汚泥51、ブレード52、ブレード53、非対象物54、及び背景55が含まれている。脱水汚泥51は、スクリューコンベア3によって搬送されている汚泥である。ブレード52及びブレード53は、スクリューコンベア3のスクリューの一部である。非対象物54は、搬送されている脱水汚泥51、ブレード52、及びブレード53のいずれでもない物体である。例えば、非対象物54は、スクリューコンベア3の内壁に付着した脱水汚泥等である。背景55は、脱水汚泥51、ブレード52、ブレード53、及び非対象物54のいずれにも該当しない領域である。例えば、脱水汚泥画像50において物体が写っていない領域等である。
【0030】
(2-2)搬送量取得部212
搬送量取得部212は、スクリューコンベア3によって搬送されている脱水汚泥の量(搬送量)を取得する機能を有する。例えば、搬送量取得部212は、画像取得部211によって取得された脱水汚泥画像に基づき、画像内の脱水汚泥の量を搬送量として取得する。具体的に、まず、搬送量取得部212は、脱水汚泥画像の領域を画像に含まれる要素ごとに分類する。ここで、画像に含まれる要素は、例えば、図3に示した脱水汚泥画像50における脱水汚泥51、ブレード52、ブレード53、非対象物54、及び背景55である。なお、画像に含まれる要素は、かかる例に限定されない。搬送量取得部212が脱水汚泥画像の領域を要素ごとに分類した画像は、以下では「分類画像」とも称される。
【0031】
ここで、図4を参照して、本発明の実施形態に係る分類画像について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る分類画像の一例を示す図である。
図4には、図3に示した脱水汚泥画像50の領域が要素ごとに分類された分類画像60が示されている。分類画像60には、領域61、領域62、領域63、領域64、及び領域65の5つの領域が示されている。領域61は、図3の脱水汚泥画像50における脱水汚泥51の領域である。領域62は、図3の脱水汚泥画像50におけるブレード52の領域である。領域63は、図3の脱水汚泥画像50におけるブレード53の領域である。領域64は、図3の脱水汚泥画像50における非対象物54の領域である。領域65は、図3の脱水汚泥画像50における背景55の領域である。
【0032】
脱水汚泥画像の領域を要素ごとに分類後、搬送量取得部212は、要素が脱水汚泥である領域に含まれる画素数に基づき、脱水汚泥の搬送量を算出(定量化)する。具体的に、搬送量取得部212は、脱水汚泥画像の脱水汚泥の領域に含まれる画素の数を搬送量として算出する。また、搬送量取得部212は、脱水汚泥画像の全画素における脱水汚泥の領域の画素の割合を搬送量として算出してもよい。
【0033】
搬送量取得部212は、例えば、機械学習モデルを用いて、脱水汚泥の搬送量を取得する。当該機械学習モデルは、脱水汚泥画像の各画素と、各画素が示す要素との対応関係を学習したモデルである。機械学習モデルは、画像取得部211によって取得された脱水汚泥画像が入力されると、分類画像を出力する。搬送量取得部212は、機械学習モデルが出力した分類画像が示す脱水汚泥の領域の画素を数えることで、脱水汚泥の搬送量を算出することができる。
【0034】
搬送量取得部212が用いる機械学習モデルは、例えば、セマンティックセグメンテーション(SS)によって機械学習を行ったモデル(以下、「SSモデル」とも称される)である。セマンティックセグメンテーションは、画像内の全画素にラベルやカテゴリを関連付けるディープラーニング(Deep Learning)のアルゴリズムである。
【0035】
SSモデルは、学習時に脱水汚泥画像を学習用データとして用いる。学習済みのSSモデル(以下、「学習済みSSモデル」とも称される)は、脱水汚泥画像が入力データとして入力されると、入力された脱水汚泥画像に基づき類推した結果を、出力データとして出力する。本実施形態のSSモデルは、例えば、脱水汚泥画像を入力データとして、分類画像を出力データとして出力するように学習する。
【0036】
学習済みSSモデルの生成では、例えば、教師有り学習が行われる。教師有り学習では、学習モデルに学習用のデータセットを用いた学習を行わせる。データセットは、入力データ(説明変数)と、当該入力データと対応する教師データ(目的変数)のセットである。入力データは、学習時の入力となるデータである。本実施形態に係る入力データは、例えば、脱水汚泥画像である。教師データは、入力データに基づき出力される出力データの正解を示すデータである。本実施形態に係る教師データは、例えば、入力データである脱水汚泥画像の各画素に対して、各画素が示す要素の正解を示す情報を付与した画像である。教師データが示す正解は、例えば、脱水汚泥画像に対して各要素に応じた着色を行うことで示すことができる。
【0037】
なお、搬送量取得部212は、所定の期間に取得された複数の脱水汚泥画像ごとに得られる脱水汚泥の搬送量の移動平均値(MA:Moving Average)を算出し、算出した移動平均値を最終的に出力する搬送量としてもよい。
【0038】
(2-3)運動量取得部213
運動量取得部213は、スクリューコンベア3によって搬送されている脱水汚泥の運動量を取得する機能を有する。運動量取得部213は、例えば、オプティカルフローを用いて脱水汚泥の運動量を取得する。オプティカルフローは、2枚の画像間(例えば動画のフレーム間)における物体の動きを数値化するための技術である。本実施形態では、運動量取得部213は、オプティカルフローを用いて、脱水汚泥の動きの方向と変位を定量化し、定量化した方向と変位の平均及び偏差を算出する。オプティカルフローによる解析結果は、オプティカルフローのアルゴリズムによって決定し、画素ごとに算出される。
【0039】
具体的に、運動量取得部213は、画像取得部211によって取得された異なる時間に撮像された複数の脱水汚泥画像に基づき、画像内の脱水汚泥の運動量を取得する。より具体的に、運動量取得部213は、画像取得部211によって取得された第1の脱水汚泥画像と、第1の脱水汚泥画像よりも前に取得された第2の脱水汚泥画像とを比較し、特徴点の移動方向及び移動量を算出する。
運動量取得部213は、所定の期間に取得された複数の脱水汚泥画像において、第1の脱水汚泥画像及び第2の脱水汚泥画像の組み合わせが複数存在する場合、各組み合わせにおける脱水汚泥の移動方向及び移動量を算出する。そして、運動量取得部213は、得られた複数の移動方向及び移動量の平均及び偏差を、出力する運動量として算出する。
【0040】
なお、脱水汚泥画像に含まれる要素の中には、搬送されている脱水汚泥の他に、ブレードの運動量も変化し得る。本実施形態では、ブレードの回転数が一定に保たれているとする。この場合、ブレードの運動量は常に一定の値が算出される。そのため、脱水汚泥が搬送されていない状況においては、運動量取得部213は、一定のブレードの運動量のみを算出する。一方、脱水汚泥が搬送されている場合、運動量取得部213は、一定のブレードの運動量に対して脱水汚泥の運動量が加わった運動量を算出する。即ち、予めブレードの運動量が分かっていれば、脱水汚泥画像全体の運動量からブレードの運動量を除き、脱水汚泥の運動量を算出してもよい。これより、本実施形態では、運動量取得部213は、脱水汚泥の運動量とブレードの運動量を分離して個々に算出する必要はない。
なお、ブレードの運動量は常に一定の値が算出されることと、画像取得部211によって取得された異なる時間に撮像された複数の脱水汚泥画像それぞれにブレードの運動量が含まれることとから、前述の通り第1の脱水汚泥画像と、第1の脱水汚泥画像よりも前に取得された第2の脱水汚泥画像とを比較し、特徴点の移動方向及び移動量を算出できることは言うまでもない。
【0041】
また、運動量取得部213は、所定の期間に取得された複数の脱水汚泥画像ごとに得られる脱水汚泥の運動量の移動平均値を算出し、算出した移動平均値を最終的に出力する運動量としてもよい。
【0042】
(2-4)状態判定部214
状態判定部214は、脱水汚泥の状態を判定する機能を有する。例えば、状態判定部214は、搬送量取得部212によって取得された脱水汚泥の搬送量及び運動量取得部213によって取得された脱水汚泥の運動量に基づき、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する。そして、状態判定部214は、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たすか否かを示す判定結果情報を出力処理部215へ出力する。本実施形態では、状態判定部214は、一例として、OK、GRAY、NGの3種類の内のいずれかを判定結果情報として出力する。OKは、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たしていることを示す。GRAYは、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たすか否かが曖昧な状態であることを示す。NGは、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たしていないことを示す。
【0043】
具体的に、状態判定部214は、機械学習モデルを用いて、脱水汚泥の状態を判定する。当該機械学習モデルは、脱水汚泥の搬送量と、脱水汚泥の運動量と、脱水汚泥の状態との対応関係を学習したモデルである。機械学習モデルは、搬送量取得部212によって取得された脱水汚泥の搬送量及び運動量取得部213によって取得された脱水汚泥の運動量が入力されると、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たすか否かを示す情報を出力する。
【0044】
状態判定部214が用いる機械学習モデルは、例えば、サポートベクターマシン(SVM)によって機械学習を行ったモデル(以下、「SVMモデル」とも称される)である。
SVMモデルは、学習時に脱水汚泥の搬送量及び運動量を学習用データとして用いる。学習済みのSVMモデル(以下、「学習済みSVMモデル」とも称される)は、脱水汚泥の搬送量及び運動量が入力データとして入力されると、入力された脱水汚泥の搬送量及び運動量に基づき類推した結果を、出力データとして出力する。本実施形態のSVMモデルは、例えば、脱水汚泥の搬送量及び運動量を入力データとして、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たすか否かを示す情報を出力データとして出力するように学習する。
【0045】
学習済みSVMモデルの生成では、例えば、教師有り学習が行われる。教師有り学習では、学習モデルに学習用のデータセットを用いた学習を行わせる。データセットは、入力データ(説明変数)と、当該入力データと対応する教師データ(目的変数)のセットである。入力データは、学習時の入力となるデータである。本実施形態に係る入力データは、例えば、ある脱水汚泥画像における脱水汚泥の搬送量及び運動量である。教師データは、入力データに基づき出力される出力データの正解を示すデータである。本実施形態に係る教師データは、例えば、入力データである脱水汚泥の搬送量及び運動量の算出対象となった脱水汚泥画像における脱水汚泥の状態を、人が判定した結果(OK、GRAY、NGのいずれか)である。
【0046】
なお、状態判定部214は、所定の期間における脱水汚泥の搬送量の移動平均値及び脱水汚泥の運動量の移動平均値に基づき、脱水汚泥の状態を判定してもよい。人が目視によって脱水汚泥の状態を判定する場合、当該人は、脱水汚泥が搬送される様子を一定時間観察して判定する場合が多い。脱水汚泥の搬送量の移動平均値及び運動量の移動平均値は、所定の期間における脱水汚泥画像に基づき算出されている。即ち、状態判定部214は、脱水汚泥の搬送量の移動平均値及び運動量の移動平均値を用いることで、人が目視によって脱水汚泥の状態を判定する場合とより近い状態で脱水汚泥の状態を判定することができる。これにより、状態判定部214は、脱水汚泥の搬送量の移動平均値及び運動量の移動平均値を用いることで、脱水汚泥の状態の判定精度を向上することができる。
【0047】
(2-5)出力処理部215
出力処理部215は、出力情報を出力装置30へ出力する機能を有する。例えば、出力処理部215は、状態判定部214から出力される判定結果情報を出力装置30に出力させる。例えば、出力処理部215は、通信部200を介して、判定結果情報を出力装置30へ送信し、表示させる。
【0048】
(3)記憶部220
記憶部220は、各種情報を記憶する機能を有する。例えば、記憶部220は、各種モデルを記憶する。具体的に、記憶部220は、機械学習モデルを記憶する。
【0049】
記憶部220は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0050】
<4.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る状態判定装置20の機能構成について説明した。続いて、図5を参照して、本発明の実施形態に係る状態判定システム1における処理の流れについて説明する。図5は、本実施形態に係る状態判定システム1における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0051】
図5に示すように、まず、撮像装置10は、スクリューコンベア3にて搬送されている脱水汚泥の様子を撮像する(ステップS101)。
【0052】
次いで、状態判定装置20の画像取得部211は、通信部200を介して、撮像装置10が撮像した脱水汚泥画像を撮像装置10から取得する(ステップS102)。画像取得部211は、取得した脱水汚泥画像を状態判定装置20の搬送量取得部212及び運動量取得部213へ出力する。
【0053】
次いで、搬送量取得部212は、脱水汚泥画像を学習済みSSモデルへ入力することで、脱水汚泥の搬送量を取得する(ステップS103)。
【0054】
また、運動量取得部213は、搬送量取得部212の処理と並行して、オプティカルフローによって脱水汚泥の運動量を取得する(ステップS104)。
【0055】
次いで、状態判定部214は、搬送量取得部212が取得した搬送量と運動量取得部213が取得した運動量とに基づき、脱水汚泥の状態を判定する(ステップS105)。判定後、状態判定部214は、判定結果情報を出力する。
【0056】
次いで、出力処理部215は、状態判定部214が出力した判定結果情報を通信部200から出力装置30へ送信する(ステップS106)。
【0057】
そして、出力装置30は、受信した判定結果情報を出力する(ステップS107)。
【0058】
<5.実施例>
以上、本実施形態に係る状態判定システム1における処理の流れについて説明した。続いて、図6から図8を参照して、本実施形態に係る状態判定システム1の実施例について説明する。図6は、本発明の実施例に係る判定結果のF値を示す図である。図7は、本発明の実施例に係る判定結果の混同行列を示す図である。図8は、本発明の実施例に係る移動平均値を用いた場合の判定結果のグラフを示す図である。
【0059】
図6には、状態判定部214が、脱水汚泥の状態がOK又はOK以外(GRAY or NG)のどちらであるかを判定した結果と、脱水汚泥の状態がNG以外(OK or GRAY)又はNGのどちらであるかを判定した結果が示されている。さらに、各結果には、搬送量取得部212が取得した搬送量と運動量取得部213が取得した運動量をそのまま学習済みSVMモデルに入力して得られた判定結果のF値(SVM)と、搬送量取得部212が取得した搬送量の移動平均値と運動量取得部213が取得した運動量の移動平均値を学習済みSVMモデルに入力して得られた判定結果のF値(SVM+MA)とが示されている。
【0060】
図6に示すように、脱水汚泥の状態がOK又はOK以外(GRAY or NG)のどちらであるかを判定した際の判定結果では、SVMのF値は0.46、SVM+MAのF値は0.88であった。また、脱水汚泥の状態がNG以外(OK or GRAY)又はNGのどちらであるかを判定した際の判定結果では、SVMのF値は0.52、SVM+MAのF値は0.66であった。
以上より、いずれの場合も移動平均値を用いた方が判定の精度が向上することが分かる。また、移動平均値を用いた判定の場合、OK又はOK以外(GRAY or NG)の判定結果の方が、NG以外(OK or GRAY)又はNGの判定結果よりも精度が高いことが分かる。これより、設備運転を安全に動作させることを優先する場合には、脱水汚泥の状態がOK又はOK以外(GRAY or NG)のどちらであるかを判定した方が、実用性があると考えられる。
【0061】
図7には、状態判定部214が、移動平均値を用いてOK又はOK以外(GRAY or NG)の判定(即ち、OK,GRAY or NGのSVM+MA)を行った際の混同行列が示されている。
図7に示すように、状態判定部214が、真値がOKの内でOKと判定した数、即ち真陽性(True Positive)と判定した数は1867であった。
状態判定部214が、真値がOKの内でGRAY or NGと判定した数、即ち偽陰性(False Negative)と判定した数は217であった。
状態判定部214が、真値がGRAY or NGの内でOKと判定した数、即ち偽陽性(False Positive)と判定した数は117であった。
状態判定部214が、真値がGRAY or NGの内でGRAY or NGと判定した数、即ち真陰性(True Negative)と判定した数は482であった。
図6に示す、脱水汚泥の状態がOK又はOK以外(GRAY or NG)のどちらであるかを判定した際のSVM+MAのF値0.88は、図7の混同行列に基づき算出された数値である。
【0062】
図8には、状態判定部214が移動平均値を用いて判定を行った際の判定結果、移動平均値、真値の時系列変化を示すグラフがそれぞれ示されている。
図8の縦軸は真値を示し、横軸は計測時間を示す。このうち縦軸の値1.0は脱水汚泥の状態がOKであることを示し、-1.0は脱水汚泥の状態がNGを示す。図8において、一点鎖線のグラフは、作業員が画像から実際に判定した結果を示す。実線のグラフは、状態判定部214が画像ごとに判定した結果を示す。破線のグラフは、状態判定部214による判定結果の移動平均値を示す。移動平均を算出することで、搬送物の搬送量にばらつきが生じた場合であっても、作業員による判定結果に類似する状態判定ができる。
【0063】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る状態判定装置20は、画像取得部211、搬送量取得部212、運動量取得部213、及び状態判定部214を備える。
画像取得部211は、脱水機2から乾燥機4へ脱水汚泥を搬送するスクリューコンベア3において、脱水汚泥が搬送される様子を撮像可能に設けられた撮像装置10から、脱水汚泥が撮像された脱水汚泥画像を取得する。
搬送量取得部212は、画像取得部211によって取得された脱水汚泥画像に基づき、画像内の脱水汚泥の搬送量を取得する。
運動量取得部213は、画像取得部211によって取得された異なる時間に撮像された複数の脱水汚泥画像に基づき、画像内の脱水汚泥の運動量を取得する。
状態判定部214は、搬送量取得部212によって取得された脱水汚泥の搬送量及び運動量取得部213によって取得された脱水汚泥の運動量に基づき、脱水汚泥の状態が要求される条件を満たすか否かを判定する。
【0064】
かかる構成により、スクリューコンベア3にて搬送されている脱水汚泥の状態が状態判定装置20によって判定される。これにより、人が目視によって脱水汚泥の状態を判定する必要がなくなる。即ち、目視によって脱水汚泥の状態を判定する人員を用意する必要がなくなる。
【0065】
よって、本発明の実施形態に係る状態判定装置20は、設備運転の運転人員の負荷軽減や省力化を図ることを可能とする。
【0066】
<5.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明した。続いて、本発明の実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で本発明の実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで本発明の実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、本発明の実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、本発明の実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0067】
(1)第1の変形例
上述の実施形態では、状態判定システム1が水処理プラントに適用され、対象物が脱水汚泥である例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、具体的な対象物は、対象物が搬送される工程に応じたものであってよい。また、状態判定システム1は、例えば食品プラントに適用されてもよい。この場合、対象物の一例として、練り物が挙げられる。
【0068】
(2)第2の変形例
上述の実施形態では、搬送設備がスクリューコンベア3である例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、対象物の搬送中に少なくとも対象物の運動量が変化する構成(例えば切替ダンパー)を有する設備であれば、搬送設備はベルトコンベア等であってもよい。
【0069】
(3)第3の変形例
上述の実施形態では、撮像装置10によって撮像される脱水汚泥画像が動画である例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、撮像装置10は、スクリューコンベア3において搬送されている脱水汚泥を静止画で撮像してもよい。この場合、撮像装置10は、一定の時間間隔で静止画を撮像することで複数の脱水汚泥画像を撮像する。これにより、画像取得部211は、撮像装置10が静止画を撮像する場合であっても、所定の期間に一定の時間間隔で撮像された複数の脱水汚泥画像を取得することができる。
【0070】
(4)第4の変形例
上述の実施形態では、状態判定部214がSVMモデルを機械学習モデルとして用いる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、状態判定部214は、決定木によって機械学習を行ったモデルを用いてもよい。
【0071】
(5)第5の変形例
上述の実施形態では、判定結果情報を出力可能な出力装置30に対して、出力処理部215が当該判定結果情報を出力する例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、出力処理部215は、判定結果情報に基づき設備の運転を制御可能な外部装置に対して、判定結果情報を出力してもよい。これにより、当該外部装置は、状態判定装置20から受信する判定結果情報に基づき、設備の制御を行うことができる。
また、出力処理部215は、判定結果情報に基づき、制御対象となる設備に応じた制御信号を生成し、生成した制御信号を設備の運転を制御可能な外部装置に対して出力してもよい。これにより、当該外部装置は、状態判定装置20から受信する制御信号に基づき、設備の制御を行うことができる。
以上より、人が判定結果情報に基づき設備の制御を行う手間を省くことができる。これより、設備運転の自動化及び運転人員の省力化を図ることが可能となる。
【0072】
以上、本発明の変形例について説明した。なお、上述した実施形態における状態判定装置20が備える構成の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0073】
また、上述した実施形態における状態判定装置20又は状態判定装置20の制御部210の機能を少なくとも実現する制御装置は、制御対象の産業機械が設置されているプラント等に設けられる。なお、状態判定装置20又は制御装置が設けられる場所はかかる例に限定されず、クラウド上に設けられてもよい。例えば、状態判定装置20又は制御装置がサーバ装置である場合、状態判定装置20又は制御装置はプラントに設けられたサーバ装置であってもよいし、クラウド上に設けられたサーバ装置(即ちクラウドサーバ)であってもよい。
また、状態判定装置20又は制御装置を構成する各部の機能は、全ての機能がプラントに設けられた装置によって実現されてもよいし、クラウド上に設けられた装置によって実現されてもよい。また、状態判定装置20又は制御装置を構成する各部の機能は、一部の機能がプラントに設けられた装置によって実現され、残りの機能がクラウド上に設けられた装置によって実現されてもよい。
【0074】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 状態判定システム
2 脱水機
3 スクリューコンベア
4 乾燥機
10 撮像装置
20 状態判定装置
30 出力装置
200 通信部
210 制御部
211 画像取得部
212 搬送量取得部
213 運動量取得部
214 状態判定部
215 出力処理部
220 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8