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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149415
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】潤滑剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B31B 50/00 20170101AFI20220929BHJP
   B05C 1/02 20060101ALI20220929BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B31B50/00
B05C1/02 101
B05C1/02 104
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051559
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(74)【代理人】
【識別番号】100171848
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕美
(72)【発明者】
【氏名】志賀 好晃
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】圓谷 公一
(72)【発明者】
【氏名】小林 輝紀
(72)【発明者】
【氏名】山下 隆也
【テーマコード(参考)】
3E075
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
3E075AA05
3E075BA38
3E075DE22
3E075GA07
4F040AA15
4F040AA33
4F040AB20
4F040BA04
4F040CA01
4F040CA12
4F040CA15
4F040DA12
4F040DA13
4F040DB30
4F042AA11
4F042AA29
4F042AB00
4F042BA12
4F042CA01
4F042CB02
4F042CB08
4F042CB19
4F042DC03
4F042DD22
4F042DD38
4F042ED06
(57)【要約】
【課題】容器の形状に依存せずに潤滑剤を均一に塗布することができる潤滑剤塗布装置を提供すること。
【解決手段】潤滑剤塗布装置100は、潤滑剤を供給する潤滑剤供給部10と、潤滑剤供給部10から供給された潤滑剤を浸透させ、容器200に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部30とを備え、潤滑剤塗布部30は、層状に配置した複数の枠状の第1及び第2多孔質部材31a,32aを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤を供給する潤滑剤供給部と、
前記潤滑剤供給部から供給された前記潤滑剤を浸透させ、容器に前記潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部と、
を備え、
前記潤滑剤塗布部は、層状に配置した複数の枠状の多孔質部材を有する潤滑剤塗布装置。
【請求項2】
前記多孔質部材は、前記容器軸心方向の塗布対象範囲幅より狭く、
前記潤滑剤塗布部は、前記枠状の多孔質部材を支持する支持部材を有する、請求項1に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項3】
前記潤滑剤塗布部の外縁部の形状は、多角形又は楕円形である、請求項1及び2のいずれか一項に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項4】
前記潤滑剤塗布部は、略鉛直方向に沿って配置され、前記潤滑剤塗布部の上部中央に前記潤滑剤供給部からの潤滑剤を供給する第1供給口を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項5】
前記潤滑剤塗布部は、前記第1供給口を挟んで、上部両側に第2供給部と第3供給部とを有する、請求項4に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項6】
前記潤滑剤塗布部は、前記潤滑剤供給部からの潤滑剤を供給する供給口を複数個有する、請求項1~3に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項7】
前記複数の枠状の多孔質部材は、直接的又は間接的に前記供給口をそれぞれ有し、前記多孔質部材の厚さに応じて前記供給口の数が異なる、請求項6のいずれか一項に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項8】
前記潤滑剤供給部は、前記複数の供給口に供給するタイミングを切り替える切替バルブを有する、請求項6及び7のいずれか一項に記載の潤滑剤塗布装置。
【請求項9】
前記潤滑剤塗布部は、前記容器の外縁部の内側の形状と略同一の形状を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の潤滑剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の外縁部に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布装置に関し、特に、容器の形状に依存せずに潤滑剤を均一に塗布することができる潤滑剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の外周縁をカール成形するために、容器に潤滑剤を塗布する方法として、略円錐台形のカップに潤滑剤塗布ノズルの周囲に設けられた環状のフェルトを用いて潤滑剤を塗布することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の方法では、潤滑剤塗布装置の中央に配置された潤滑剤塗布ノズルから円環状のフェルトに潤滑剤を浸透させ、フェルトを略水平にした状態で口部を上向きに縦に置いたカップに潤滑剤を塗布している。しかしながら、特許文献1の方法では、カップを縦に置いた状態で、カップの上部からフェルトの径方向に潤滑剤を塗布しており、円錐台形以外のカップに潤滑剤を均一に塗布することが難しい。なお、フェルトを回転させながら遠心力を利用して潤滑剤を均一に塗布する方法も考えられるが、円錐台形以外のカップに適用することは困難である。
【0003】
また、容器に潤滑剤を塗布する別の方法として、容器を絞り加工する際に、容器を形成するブランクを潤滑剤供給部材と、潤滑剤供給部材より供給され、表面に潤滑剤が塗布されたしわ押さえ板との間に挟むことで、被加工部の外周縁部領域の両面に潤滑剤を塗布することが開示されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の方法では、容器を絞り加工する際に潤滑剤を塗布する方法について開示するのみであり、成形後の容器に潤滑剤を塗布することについては言及していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-16846号公報
【特許文献2】特開2014-195955号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、容器の形状に依存せずに潤滑剤を均一に塗布することができる潤滑剤塗布装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る潤滑剤塗布装置は、潤滑剤を供給する潤滑剤供給部と、潤滑剤供給部から供給された潤滑剤を浸透させ、容器に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布部とを備え、潤滑剤塗布部は、層状に配置した複数の枠状の多孔質部材を有する。
【0007】
上記潤滑剤塗布装置によれば、潤滑剤塗布部の多孔質部材を枠状とし、層状に複数設けることにより、多孔質部材と容器との接触面積を確保しつつ、多孔質部材の体積を実質的に減らすことができる。これにより、潤滑剤塗布部に供給する潤滑剤の量を少なくし、多孔質部材における潤滑剤の浸透量を制御しやすくなり、容器の形状に依存せずに潤滑剤を均一に効率良く塗布することができる。
【0008】
また、本発明の具体的な態様において、潤滑剤塗布装置において、多孔質部材は、容器軸心方向の塗布対象範囲幅より狭く、潤滑剤塗布部は、枠状の多孔質部材を支持する支持部材を有する。この場合、多孔質部材の体積を減らして多孔質部材に浸透させる潤滑剤の量を減少させつつ、多孔質部材の形状を維持することができる。
【0009】
また、本発明の別の態様において、潤滑剤塗布部の外縁部の形状は、多角形又は楕円形である。
【0010】
また、本発明のさらに別の態様において、潤滑剤塗布部は、略鉛直方向に沿って配置され、潤滑剤塗布部の上部中央に潤滑剤供給部からの潤滑剤を供給する第1供給口を有する。この場合、潤滑剤塗布部の上部中央から潤滑剤を供給し、重力を利用して多孔質部材全体に潤滑剤を浸透させることができる。
【0011】
また、本発明のさらに別の態様において、潤滑剤塗布部は、第1供給口を挟んで、上部両側に第2供給口と第3供給口とを有する。この場合、潤滑剤塗布部が若干傾いていても、多孔質部材に均一に潤滑剤を浸透させることができる。
【0012】
また、本発明のさらに別の態様において、潤滑剤塗布部は、潤滑剤供給部からの潤滑剤を供給する供給口を複数個有する。
【0013】
また、本発明のさらに別の態様において、複数の枠状の多孔質部材は、直接的又は間接的に供給口をそれぞれ有し、多孔質部材の厚さに応じて供給口の数が異なる。この場合、多孔質部材の厚さに応じて潤滑剤の供給量を調整することができる。
【0014】
また、本発明のさらに別の態様において、潤滑剤供給部は、複数の供給口に供給するタイミングを切り替える切替バルブを有する。この場合、潤滑剤供給部の配管抵抗に応じて供給口に供給される潤滑剤の量を調整することができる。
【0015】
また、本発明のさらに別の態様において、潤滑剤塗布部は、容器の外縁部の内側の形状と略同一の形状を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)及び(B)は、潤滑剤塗布装置を説明する概念的な断面図及び底面図である。
図2図1に示す潤滑剤塗布装置の斜視図である。
図3】(A)~(C)は、カール成形後の容器を説明する平面図、側面図、及び斜視図である。
図4】(A)及び(B)は、潤滑剤塗布装置の潤滑剤塗布部のうち第1多孔質部材を説明する平面図及び断面図であり、(C)及び(D)は、第2多孔質部材を説明する平面図及び断面図である。
図5】(A)及び(B)は、潤滑剤塗布部の多孔質部材の形状と潤滑剤の流れとの関係について説明する概念図である。
図6】(A)及び(B)は、潤滑剤塗布部の供給口の数及び配置と潤滑剤の流れとの関係について説明する概念図である。
図7図1の潤滑剤塗布装置を組み込んだ容器加工装置を説明する図である。
図8図1の潤滑剤塗布装置の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る潤滑剤塗布装置について、図を参照しつつ説明する。
【0018】
図1(A)、1(B)、及び図2に示すように、潤滑剤塗布装置100は、潤滑剤供給部10と、背板20と、潤滑剤塗布部30と、固定板40とを備える。潤滑剤塗布装置100は、潤滑剤塗布装置100を水平方向(矢印A方向)に動かすことにより、容器200の内側(具体的には、容器200の外縁部200aの内側)の塗布対象範囲ARに潤滑剤を塗布する。潤滑剤は、容器200の外縁部200aをカール成形する際に摩擦を防止するために塗布する。潤滑剤としては、例えばシリコンエマルジョン、合成油や天然油脂ベースの油等が挙げられる。図3に示すように、容器200は、例えば紙製の角型の容器であり、その外縁部200aの形状は、多角形(角を丸めた多角形)、図示の例では平面視において四隅に丸みを有する矩形となっている。容器200は、カール成形することにより、口元部200bにカール部200cが形成される。
【0019】
図1(A)等に示すように、潤滑剤塗布装置100は、潤滑剤塗布部30を背板20と固定板40とによって挟んだ状態でこれらの中央(軸心OA)をボルト50によって固定している。背板20、潤滑剤塗布部30、及び固定板40には、軸心OAを中心とする円周に沿って配置した複数の空気孔20a,30a,40aが設けられている。潤滑剤塗布後、複数の空気孔20a,30a,40aを介して容器200側に空気を送りこむことによって、潤滑剤塗布装置100から容器200を容易に外すことができる。
【0020】
背板20及び固定板40は、例えば金属製の板状部材であり、潤滑剤塗布部30を両側から挟んでいる。背板20は、潤滑剤塗布部30と略同じ厚さであり、背板20の一方の面で潤滑剤塗布部30全体を支持する。なお、背板20の厚さは潤滑剤塗布部30を支持可能であれば適宜変更することができる。背板20には、潤滑剤供給部10を取り付ける複数の貫通孔21が設けられている。固定板40は、潤滑剤塗布部30を背板20側に押さえつけるための固定具である。図示を省略するが、固定板40には、位置決めのための位置決めピンが設けられている。
【0021】
潤滑剤供給部10は、背板20の上部に複数個設けられている。潤滑剤供給部10は、複数の配管11と、切替バルブ12とを有する。潤滑剤供給部10は、背板20の潤滑剤塗布部30とは反対側の面から配管11を貫通孔21に挿入することによって背板20に取り付けられている。また、潤滑剤供給部10の配管11は、潤滑剤塗布部30に設けた貫通孔30bに挿入されており、潤滑剤塗布部30に潤滑剤を供給する。配管11は、切替バルブ12等を介して後述する流量調整部600や潤滑剤貯蔵部500に接続されており(図7参照)、潤滑剤貯蔵部500から所定量の潤滑剤が供給される。切替バルブ12は、潤滑剤塗布部30の複数の供給口30cに供給するタイミングを切り替える。切替バルブ12は、後述する制御部800に接続されており(図7参照)、制御部800によって切替バルブ12の開閉動作が制御される。切替バルブ12により、各配管11の配管抵抗に応じて、例えば供給口30c単位又は後述する第1及び第2塗布部材31,32単位でこれらに供給される潤滑剤の量を調整することができる。
【0022】
潤滑剤塗布部30は、潤滑剤供給部10から供給された潤滑剤を浸透させ、容器200に潤滑剤を塗布する。潤滑剤塗布部30は、略鉛直方向、つまり略鉛直面に沿って配置されている。ここで、鉛直面とは、水平方向に垂直な軸を含む面である。潤滑剤塗布部30は、容器200の外縁部200aの内側の形状と略同一の形状を有する。潤滑剤塗布部30の外縁部の形状は、容器200の形状に対応しており、本実施形態では、多角形(角を丸めた多角形)、具体的には四隅に丸みを有する矩形である。
【0023】
潤滑剤塗布部30は、第1塗布部材31と、第2塗布部材32と、第1スペーサ33と、第2スペーサ34とを有する。第1及び第2塗布部材31,32は、容器200の軸心OA方向の塗布対象範囲幅d1よりも狭く、つまり狭い範囲に延在し、第1及び第2塗布部材31,32の側面と容器200の内側とを接触させた状態で、水平方向(矢印A方向)に移動させることによって潤滑剤を塗布する。第1スペーサ33は、第1塗布部材31と背板20との間に挟まれており、第2スペーサ34は、第1塗布部材31と第2塗布部材32との間に挟まれている。第1及び第2スペーサ33,34は、潤滑剤塗布部30を容器200に挿入した際に、容器200の塗布対象範囲AR全体への接触が可能になるように高さ調整されている。
【0024】
第1塗布部材31は、第1多孔質部材31aと第1支持部材31bとを有する。第1多孔質部材31aは、多孔質材料で形成された枠状(外周を囲んだ形状)の部材である。多孔質材料としては、例えば、フェルト、スポンジ、セラミック、金属、樹脂等、容器200にフィットする弾力性のある多孔質構造を有するものが挙げられる。第1支持部材31bは、例えば金属製であり、第1多孔質部材31aの内側の穴31cに嵌め込むことによって第1多孔質部材31aを支持している。これにより、第1多孔質部材31aの体積を減らして第1多孔質部材31aに浸透させる潤滑剤の量を減少させつつ、第1多孔質部材31aの形状を維持することができる。
【0025】
第2塗布部材32は、第1塗布部材31と同様に、第2多孔質部材32aと第2支持部材32bとを有する。第2多孔質部材32aは、多孔質材料で形成された枠状(外周を囲んだ形状)の部材である。第2支持部材32bは、例えば金属製であり、第2多孔質部材32aの内側の穴32cに嵌め込むことによって第2多孔質部材32aを支持している。第2支持部材32bには、潤滑剤塗布部30に設けられた潤滑剤の供給口30cの配置に応じて潤滑剤供給のための溝Wが設けられていてもよい。
【0026】
潤滑剤塗布部30全体から見れば、第1多孔質部材31a及び第2多孔質部材32aは、層状に配置されている。第1多孔質部材31aの厚さは、第2多孔質部材32aの厚さよりも薄くなっている。本実施形態では、第1多孔質部材31aは例えば5mm、第2多孔質部材32aは例えば3mmである。なお、第1多孔質部材31aは、容器200にフィットする形状を維持できれば、第2多孔質部材32aと同じ厚さでもよく、第2多孔質部材32aより厚くてもよい。
【0027】
潤滑剤塗布部30の上部には、潤滑剤供給部10からの潤滑剤を供給する複数の供給口30cを有する。これにより、潤滑剤塗布部30の上部から潤滑剤を供給し、重力を利用して第1及び第2多孔質部材31a,32a全体に潤滑剤を浸透させることができる。第1及び第2多孔質部材31a,32aは、第1及び第2多孔質部材31a,32aの厚さに応じて供給口30cの数が異なる。これにより、第1及び第2多孔質部材31a,32aの厚さに応じて潤滑剤の供給量を調整することができる。供給口30cは、第1及び第2多孔質部材31a,32aに直接的に設けてもよいし、第1及び第2支持部材31b,32bや第1及び第2スペーサ33,34に溝を形成して第1及び第2多孔質部材31a,32aに間接的に設けてもよい。
【0028】
図4(A)及び4(B)に示すように、本実施形態では、比較的厚い第1多孔質部材31aの場合には、第1塗布部材31の上部中央に潤滑剤供給部10からの潤滑剤を供給する第1供給口31dと、第1供給口31dを挟んで、上部両側に第2供給口31eと第3供給口31fとを有する。これにより、第1多孔質部材31aにより均一に潤滑剤を浸透させることができる。よって、比較的厚い第1多孔質部材31aであっても容器200と接触する第1多孔質部材31aの側面(第1多孔質部材31aの先端)まで潤滑剤を浸透させることができる。また、図4(C)及び4(D)に示すように、比較的薄い第2多孔質部材32aの場合には、第2塗布部材32の上部中央に第4供給口32dを有する。第1~第4供給口31d,31e,31f,32dの大きさは、同じでも異なっていてもよい。
【0029】
以下、潤滑剤塗布装置100の潤滑剤塗布部30での潤滑剤の流れについて説明する。まず、図5(A)及び5(B)を参照しつつ、多孔質部材の形状と潤滑剤の流れとの関係について説明する。図5(A)は、本実施形態の潤滑剤塗布部30において、枠状の多孔質部材3Aの上辺部中央に供給口30cを設けた例を示す。この場合、供給口30cから供給された潤滑剤が左右に分岐し、四角枠状の形状を有することによって横方向に延びた多孔質部材3Aの上辺部に沿って潤滑剤が上辺部両端に流れる(図5(A)の矢印B1参照)。その後、重力の影響で多孔質部材3Aの側辺部において下方に流れる。これにより、多孔質部材3A全体に潤滑剤が略均一に浸透する。一方、図5(B)は、比較例として矩形の多孔質部材3Bの上部中央に供給口30cを設けた例を示す。この場合、供給口30cから供給された潤滑剤が左右に広がりきらず、重力の影響で多孔質部材3Bの中央付近から大部分の潤滑剤が下方に流れ(図5(B)の矢印B2参照)、潤滑剤が多孔質部材3Bに不均一に浸透する。以上により、本実施形態のように枠状の多孔質部材3Aを組み込むことにより、潤滑剤の流れを均一にすることができる。
【0030】
次に、図6(A)及び6(B)を参照しつつ、多孔質部材の供給口の数及び配置と潤滑剤の流れとの関係について説明する。図6(A)は、本実施形態の潤滑剤塗布部30において、比較的厚い第1多孔質部材31aの上辺部中央に第1供給口31dを設け、上辺部両端に第2及び第3供給口31e,31fを設けた例を示す。この場合、第1多孔質部材31aが図示のように多少傾いても、第1多孔質部材31aの鉛直方向に沿った側辺の枠領域C1において潤滑剤が略均一に下方に流れる(図6(A)の矢印B3参照)。一方、図6(B)は、比較例として比較的厚い第1多孔質部材31aの上辺部中央のみに第1供給口31dを設けた例を示す。この場合、例えば第1多孔質部材31aが半時計方向に傾くと、半時計方向に流れる潤滑剤の量が時計方向に流れる潤滑剤の量よりも多くなり(図6(A)の矢印B4,B5参照)、第1多孔質部材31aの鉛直方向に沿った側辺の枠領域C1において潤滑剤が不均一に下方に流れる。以上により、多孔質部材の厚さが比較的厚い場合、供給口を複数個設けることが好ましい。なお、この現象は、比較的厚い第1多孔質部材31aにおいて顕著に起こり、比較的薄い第2多孔質部材32aにおいては潤滑剤の均一な浸透への影響が少ない。
【0031】
以下、図7を参照しつつ、本実施形態の潤滑剤塗布装置100を組み込んだ容器加工装置900について説明する。容器加工装置900は、潤滑剤塗布装置100と、容器ホルダ300と、駆動部400と、潤滑剤貯蔵部500と、流量調整部600と、カール成形部700と、制御部800とを備える。
【0032】
潤滑剤塗布装置100は、制御部800の制御下で駆動部400を動作させることにより、水平方向(矢印A方向)に移動しながら容器ホルダ300に保持された容器200に潤滑剤を塗布する。潤滑剤塗布装置100は、例えば容器200に対して1回の塗布で1往復させる。また、潤滑剤塗布装置100は、駆動部400を動作させることにより、潤滑剤塗布装置100から容器200を取り外す際に空気孔20a,30a,40aから空気を射出する。
【0033】
潤滑剤貯蔵部500は、潤滑剤を貯蔵しており、流量調整部600によって潤滑剤の供給量が調整されている。流量調整部600は、ポンプとしての機能を有する。流量調整部600には、潤滑剤塗布装置100の切替バルブ12が接続されており、所定のタイミングで所定量の潤滑剤が潤滑剤塗布装置100に供給される。切替バルブ12による潤滑剤の供給タイミングと潤滑剤塗布装置100の移動タイミングとは制御部800の制御によって同期している。
【0034】
カール成形部700は、容器200の塗布対象範囲ARに潤滑剤が塗布された後、容器200の外縁部をカールさせる。
【0035】
以下、潤滑剤供給部10の切替バルブ12による潤滑剤の供給タイミングの一例について説明する。潤滑剤供給部10は、例えば、第1塗布部材31において、第1供給口31d、第2供給口31e、及び第3供給口31fの順に潤滑剤が供給されるように、制御部800によって各供給口31d,31e,31fに対応する潤滑剤供給部10の切替バルブ12を動作させる。各供給口31d,31e,31fに対応する切替バルブ12が開く時間は潤滑剤供給部10の配管抵抗に応じて適宜調整されており、同じでも異なっていてもよい。また、切替バルブ12の開閉タイミングは、第1多孔質部材31aに潤滑剤が均一に浸透するように調整される。なお、第2塗布部材32についても、切替バルブ12の開閉タイミングは、第2多孔質部材32aに潤滑剤が均一に浸透するように調整される。
【0036】
以上説明した潤滑剤塗布装置100によれば、潤滑剤塗布部30の第1及び第2多孔質部材31a,32aを枠状とし、層状に複数設けることにより、第1及び第2多孔質部材31a,32aと容器200との接触面積を確保しつつ、第1及び第2多孔質部材31a,32aの体積を実質的に減らすことができる。これにより、潤滑剤塗布部30に供給する潤滑剤の量を少なくし、第1及び第2多孔質部材31a,32aにおける潤滑剤の浸透量を制御しやすくなり、容器200の形状に依存せずに潤滑剤を均一に効率良く塗布することができる。
【0037】
以上では、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0038】
例えば、図8に示すように、第1及び第2塗布部材31,32の供給口30cを貫通させずに、第1及び第2塗布部材31,32と潤滑剤供給部10の配管11とが当接する部分に設けてもよい。
【0039】
上記実施形態において、潤滑剤塗布部30は2つの塗布部材を有するとしたが、3つ以上有していてもよい。
【0040】
上記実施形態において、容器200は、平面視で矩形に限らず、様々な多角形とできる。また、容器200は、楕円型や円型等でもよい。
【0041】
上記実施形態において、ボルト50を潤滑剤塗布装置100の軸心OAに沿って固定したが、背板20等の形状に応じてボルト50の軸を軸心OAからずらして固定してもよい。
【0042】
上記実施形態において、潤滑剤供給部10の複数の配管11を潤滑剤貯蔵部500側で1つの配管に統一させて、個別の切替バルブ12で供給タイミングを調整してもよいし、個々の配管11を潤滑剤貯蔵部500に接続し、切替バルブ12で供給タイミングを調整してもよい。また、潤滑剤供給部10に切替バルブ12を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0043】
AR…塗布対象範囲、 OA…軸心、 3A3B…多孔質部材、 10…潤滑剤供給部、 11…配管、 12…切替バルブ、 20…背板、 20a,30a,40a…空気孔、 21…貫通孔、 30…潤滑剤塗布部、 30b…貫通孔、 31…第1塗布部材、 31a…第1多孔質部材、 31b…第1支持部材、 31c…穴、 31d…第1供給口、 31e…第2供給口、 31f…第3供給口、 32…第2塗布部材、 32a…第2多孔質部材、 32a…第2多孔質部材、 32b…第2支持部材、 32c…穴、 32d…第4供給口、 33…第1スペーサ、 34…第2スペーサ、 40…固定板、 41…溝、 50…ボルト、 100…潤滑剤塗布装置、 200…容器、 200a…外縁部、 200b…口元部、 200c…カール部、 300…容器ホルダ、 400…駆動部、 500…潤滑剤貯蔵部、 600…流量調整部、 700…カール成形部、 800…制御部、 900…容器加工装置
図1
図2
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図5
図6
図7
図8