(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149422
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20220929BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051568
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 康夫
(72)【発明者】
【氏名】栗本 智行
(72)【発明者】
【氏名】松代 広正
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DB02
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性を確立することができる車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シートは、クッションパッド59で乗員を支える部位に向き合わせられる内向き面48aを有するフレーム48と、少なくとも部分的に内向き面48aより(乗員を支える)部位に近く配置されるモーター56aと、フレーム48に取り付けられて、内向き面48aよりも(乗員を支える)部位に近い位置に、モーター56aに接する空間に貫通孔72経由で接続される共鳴空間73を区画する消音部材57とを備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションパッドで乗員を支える部位に向き合わせられる内向き面を有するフレームと、
少なくとも部分的に前記内向き面より前記部位に近く配置されるモーターと、
前記フレームに取り付けられて、前記内向き面よりも前記部位に近い位置に、前記モーターに接する空間に貫通孔経由で接続される共鳴空間を区画する消音部材と
を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記フレームは、前記クッションパッドで前記乗員の腰を支える部位に向き合わせられる前記内向き面を有するシートバックサイドフレームと、前記シートバックサイドフレームに連結されて、前記消音部材を支持するランバーサポート部材とを有することを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記消音部材は少なくても部分的に前記ランバーサポート部材に一体化されることを特徴とする車両用シート。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、弾性体で形成され、シートクッションフレームに取り付けられて下方からシートクッションパッドを受け止め、前記モーターに向き合う位置に前記消音部材を支持する受圧部材をさらに備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用シートにおいて、前記消音部材は、前記受圧部材の平板片の縁に回転自在にヒンジで連結され、前記平板片から遠ざかる開放位置、および、前記モーターに向き合わせられながら前記平板片との間に前記共鳴空間を区画する組み付け位置の間で変位し、前記貫通孔を有する変位体を有することを特徴とする車両用シート。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用シートにおいて、前記変位体には、前記組み付け位置で、前記貫通孔を囲みながら前記平板片に向かって延びるリブが形成されることを特徴とする車両用シート。
【請求項7】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記フレームは、前記クッションパッドのうちシートクッションパッドを支持する左右のシートクッションサイドフレームと、前記シートクッションサイドフレームを相互に連結し、前記シートクッションパッドに向き合わせられる前記内向き面を有する保持フレームとを備え、
前記保持フレームは、前記モーターを受け入れる開口を有する板片と、前記板片から連続し、前記開口の縁から直立し、前記モーターに向き合う位置で前記貫通孔を有する第1壁片と、前記板片の縁から連続し、前記第1壁片に並行に広がって前記共鳴空間を形成する第2壁片とを備える
ことを特徴とする車両用シート。
【請求項8】
請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記フレームは、前記クッションパッドのうちシートクッションパッドを支持する左右のシートクッションサイドフレームと、前記シートクッションサイドフレームを相互に連結し、前記シートクッションパッドに向き合わせられる前記内向き面を有する保持フレームとを備え、
前記消音部材は、弾性変形に基づき前記保持フレームに係り合って前記保持フレームに前記消音部材を位置決めするフック片を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項9】
請求項8に記載の車両用シートにおいて、前記消音部材は、前記モーターから離れた位置で前記モーターに向き合わせられる本体と、前記本体に結合されて前記本体および前記モーターの間に配置され、前記本体との間に前記共鳴空間を形成し、前記モーターに向き合う位置に前記貫通孔を有する補助体とを備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項10】
シートクッションで乗員を支える部位に向き合わせられる内向き面を有するフレームと、
少なくとも部分的に前記内向き面より前記部位に近く配置されるモーターと、
前記フレームに取り付けられて、前記内向き面よりも前記部位に近い位置で開口する貫通孔を有して前記貫通孔に接続される空間を区画する消音部材と
を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項11】
請求項10に記載の車両用シートにおいて、前記フレームは、個々に、前記シートクッションで前記乗員の腰を支える部位に向き合わせられる前記内向き面を有する左右のシートバックサイドフレームと、左右の前記シートバックサイドフレームを連結し、前記貫通孔を区画するシートバックロワーフレームとを有し、前記シートバックサイドフレームには、後方から前記貫通孔に向き合わせられて前記シートバックロワーフレームとの間に前記空間を区画するバックカバーが支持されることを特徴とする車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションで乗員を支える部位に向き合わせられる内向き面を有するフレームと、少なくとも部分的に内向き面より当該部位に近く配置されるモーターとを備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両用シートのシートバックに組み込まれる防音パネルを開示する。防音パネルは送風機の背後に配置される。防音パネルの前面には、送風機から発せられる作動音を乱反射させる凹凸面が形成される。乱反射に基づき送風機の作動音は減衰する。こうして室内空間で耳障りな音の抑制は図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、防音パネルは、凹凸面の働きで耳障りな音は減衰されるものの、シートバックに背を凭れる乗員に向かって作動音を反射する。したがって、車両用シートに着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性を確立することができなかった。
【0005】
本発明は、着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性を確立することができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、クッションパッドで乗員を支える部位に向き合わせられる内向き面を有するフレームと、少なくとも部分的に前記内向き面より前記部位に近く配置されるモーターと、前記フレームに取り付けられて、前記内向き面よりも前記部位に近い位置に、前記モーターに接する空間に貫通孔経由で接続される共鳴空間を区画する消音部材とを備える車両用シートが提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記フレームは、前記クッションパッドで前記乗員の腰を支える部位に向き合わせられる前記内向き面を有するシートバックサイドフレームと、前記シートバックサイドフレームに連結されて、前記消音部材を支持するランバーサポート部材とを有する。
【0008】
第3側面によれば、第2側面の構成に加えて、前記消音部材は少なくても部分的に前記ランバーサポート部材に一体化される。
【0009】
第4側面によれば、第1側面の構成に加えて、車両用シートは、弾性体で形成され、シートクッションフレームに取り付けられて下方からシートクッションパッドを受け止め、前記モーターに向き合う位置に前記消音部材を支持する受圧部材をさらに備える。
【0010】
第5側面によれば、第4側面の構成に加えて、前記消音部材は、前記受圧部材の平板片の縁に回転自在にヒンジで連結され、前記平板片から遠ざかる開放位置、および、前記モーターに向き合わせられながら前記平板片との間に前記共鳴空間を区画する組み付け位置の間で変位し、前記貫通孔を有する変位体を有する。
【0011】
第6側面によれば、第5側面の構成に加えて、前記変位体には、前記組み付け位置で、前記貫通孔を囲みながら前記平板片に向かって延びるリブが形成される。
【0012】
第7側面によれば、第1側面の構成に加えて、車両用シートは、前記フレームは、前記クッションパッドのうちシートクッションパッドを支持する左右のシートクッションサイドフレームと、前記シートクッションサイドフレームを相互に連結し、前記シートクッションパッドに向き合わせられる前記内向き面を有する保持フレームとを備え、前記保持フレームは、前記モーターを受け入れる開口を有する板片と、前記板片から連続し、前記開口の縁から直立し、前記モーターに向き合う位置で前記貫通孔を有する第1壁片と、前記板片の縁から連続し、前記第1壁片に並行に広がって前記共鳴空間を形成する第2壁片とを備える。
【0013】
第8側面によれば、第1側面の構成に加えて、車両用シートは、前記フレームは、前記クッションパッドのうちシートクッションパッドを支持する左右のシートクッションサイドフレームと、前記シートクッションサイドフレームを相互に連結し、前記シートクッションパッドに向き合わせられる前記内向き面を有する保持フレームとを備え、前記消音部材は、弾性変形に基づき前記保持フレームに係り合って前記保持フレームに前記消音部材を位置決めするフック片を備える。
【0014】
第9側面によれば、第8側面の構成に加えて、前記消音部材は、前記モーターから離れた位置で前記モーターに向き合わせられる本体と、前記本体に結合されて前記本体および前記モーターの間に配置され、前記本体との間に前記共鳴空間を形成し、前記モーターに向き合う位置に前記貫通孔を有する補助体とを備える。
【0015】
本発明の第10側面によれば、シートクッションで乗員を支える部位に向き合わせられる内向き面を有するフレームと、少なくとも部分的に前記内向き面より前記部位に近く配置されるモーターと、前記フレームに取り付けられて、前記内向き面よりも前記部位に近い位置で開口する貫通孔を有して前記貫通孔に接続される空間を区画する消音部材とを備える車両用シートが提供される。
【0016】
第11側面によれば、第10側面の構成に加えて、前記フレームは、個々に、前記シートクッションで前記乗員の腰を支える部位に向き合わせられる前記内向き面を有する左右のシートバックサイドフレームと、左右の前記シートバックサイドフレームを連結し、前記貫通孔を区画するシートバックロワーフレームとを有し、前記シートバックサイドフレームには、後方から前記貫通孔に向き合わせられて前記シートバックロワーフレームとの間に前記空間を区画するバックカバーが支持される。
【発明の効果】
【0017】
第1側面によれば、モーターの作動時にモーターの作動音はフレームで遮られて乗員を支える部位に向かって伝わる。モーターの作動音は貫通孔経由で共鳴空間に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。
【0018】
第2側面によれば、シートバックではモーターの作動時にモーターの作動音はシートバックサイドフレームで遮られて乗員を支える部位に向かって伝わる。モーターの作動音は貫通孔経由で共鳴空間に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。消音部材はランバーサポート部材経由でフレームに取り付けられるので、シートバックサイドフレームの前方から簡単な取り付け作業は実現されることができる。
【0019】
第3側面によれば、消音部材の取り付け作業は簡素化されることができる。
【0020】
第4側面によれば、シートクッションでは作動時にモーターの作動音はシートクッションフレームで遮られて乗員の大腿部を支える部位に向かって伝わる。モーターの作動音は貫通孔経由で共鳴空間に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。消音部材は受圧部材経由でシートクッションフレームに取り付けられるので、受圧部材に予め消音部材を組み付けることで簡単な取り付け作業は実現されることができる。
【0021】
第5側面によれば、既存の構成部品である受圧部材の一部が共鳴空間の形成にあたって利用されるので、消音部材の占有体積の増加や重量増は抑制されることができる。
【0022】
第6側面によれば、リブの働きで閉鎖空間は確立されることができる。平板片と変位体とはヒンジで連結されるので、貫通孔に対して閉鎖空間は簡単に位置決めされることができる。
【0023】
第7側面によれば、シートクッションでは作動時にモーターの作動音は保持フレームで遮られて乗員の大腿部を支える部位に向かって伝わる。モーターの作動音は貫通孔経由で共鳴空間に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。保持フレームの第1壁片および第2壁片は消音部材として機能するので、消音効果の実現にあたって部品点数の増加は回避されることができる。組立作業の工数増は回避されることができる。
【0024】
第8側面によれば、シートクッションでは作動時にモーターの作動音は保持フレームで遮られて乗員の大腿部を支える部位に向かって伝わる。モーターの作動音は貫通孔経由で共鳴空間に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。消音部材はフック片の働きで保持フレームに弾性的に係り合うことから、工具を使用しなくても簡単に消音部材は保持フレームに取り付けられることができる。簡単な取り付け作業は実現されることができる。
【0025】
第9側面によれば、本体に補助体が結合されることで消音部材に貫通孔および共鳴空間は確立されることができる。貫通孔および共鳴空間の位置関係は予め確立されることができる。消音部材の取り付けにあたって簡単な取り付け作業は実現されることができる。
【0026】
第10側面によれば、モーターの作動時にモーターの作動音はフレームで遮られて乗員を支える部位に向かって伝わる。モーターの作動音は貫通孔経由で共鳴空間に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。
【0027】
第11側面によれば、シートバックではモーターの作動時にモーターの作動音はシートバックサイドフレームで遮られて乗員を支える部位に向かって伝わる。モーターの作動音は貫通孔経由で共鳴空間に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。既存の構成部品であるシートバックロワーフレームおよびバックカバーに基づき共鳴空間は形成されるので、消音効果の実現にあたって部品点数の増加は回避されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る車両用シートの全体構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】シートフレームの構造を概略的に示す斜視図である。
【
図3】シートクッションパッドおよびシートバックパッドの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図6】ランバーサポートに少なくとも部分的に一体化された消音部材の構成を示す概念図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る車両用シートに組み込まれる保持フレームを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、前後、左右および上下は通常の着座姿勢(例えば運転時の基本姿勢)で車両用シートに着座した乗員から見た方向をいう。
【0030】
図1は本発明の第1実施形態に係る車両用シートの全体構成を概略的に示す。車両用シート11は、例えば車両のモノコック構造の1構成要素として機能するフロアパネル12に結合されるスライドレール13と、前後方向に移動可能にスライドレール13に支持されて、乗員の臀部および大腿を受け止めるシートクッション14と、揺動軸線SX回りで前後方向に揺動可能にシートクッション14に連結されて、乗員の背中を受け止めるシートバック15と、シートバック15の上端に支持されて、乗員の頭を受け止めるヘッドレスト16とを備える。シートバック15には、左右から乗員の腰部を支持するランバーサポート17が形成される。車両用シート11は左座席用に構成される。車両用シート11が右座席用に用いられる場合には、車両用シート11で左右が入れ替えられればよい。
【0031】
シートクッション14、シートバック15およびヘッドレスト16は個別に内部のパッドを包み込む表皮材14a、15a、16aを有する。表皮材15a、16aは、吊り込み糸18の働きでパッドの窪みに倣ってパッドの外面に密着する。パッドの詳細は後述される。
【0032】
シートクッション14はサイドカバー19を備える。サイドカバー19には第1スイッチ21aおよび第2スイッチ21bが取り付けられる。第1スイッチ21aは、前後方向に長い摘まみで形成される。第1スイッチ21aが前方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は前方に移動する。第1スイッチ21aが後方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は後方に移動する。第1スイッチ21aが上方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は上方に移動する。第1スイッチ21aが下方に操作されると、シートクッション14およびシートバック15は下方に移動する。第2スイッチ21bは、上下方向に長い摘まみで形成される。第2スイッチ21bが前方に操作されると、シートバック15は揺動軸線SX回りで前方に揺動する。第2スイッチ21bが後方に操作されると、シートバック15は揺動軸線SX回りで後方に揺動する。
【0033】
ヘッドレスト16は、シートバック15の上端から上方に延びるヘッドレストピラー22に固定される。ヘッドレストピラー22は、上下方向に軸方向に変位自在にシートバック15に支持される。ヘッドレストピラー22の変位に応じてヘッドレスト16の高さは調整されることができる。
【0034】
図2に示されるように、車両用シート11は、パッドを支持するシートフレーム23を備える。シートフレーム23は、シートクッション14のパッドを支持するシートクッションフレーム24と、揺動軸線SX回りに揺動可能にシートクッションフレーム24に連結されて、シートバック15のパッドを支持するシートバックフレーム25とを備える。シートクッションフレーム24は、ベースフレーム26にリンク機構27によって連結され、ベースフレーム26上でシートクッション14のパッドを支持する上下動フレーム28を含むシートクッションサイドフレーム29と、シートクッション14の前端でシートクッションサイドフレーム29同士を接続するパンフレーム32と、シートクッション14の後端でシートクッションサイドフレーム29同士を連結する連結パイプ33と、連結パイプ33の前方でシートクッションサイドフレーム29同士を接続する保持フレーム34とを備える。なお、シートクッションサイドフレーム29ではベースフレーム26に上下動フレーム28が一体化されてリンク機構27は省略されてもよい。
【0035】
ベースフレーム26は、スライドレール13に並列に延びて、長手方向に前後移動自在にスライドレール13に案内される。保持フレーム34は揺動軸線SXに並列に延びて左右のベースフレーム26を相互に接続する。上下動フレーム28はベースフレーム26の上方でベースフレーム26に並列に延びる。パンフレーム32は左右の上下動フレーム28を相互に接続し表面でシートクッション14のパッドを受け止める。連結パイプ33は左右の上下動フレーム28を相互に接続し上下動フレーム28およびパンフレーム32と協働で乗員の重量を支持する枠体を形成する。
【0036】
リンク機構27は、左右方向に延びる水平軸線FH回りで回転自在にベースフレーム26に結合される一端と、水平軸線FHに平行に左右方向に延びる水平軸線SH回りで回転自在に上下動フレーム28に結合される他端とを有するリンク部材35を備える。リンク部材35は水平軸線FH回りでベースフレーム26に対して上下動フレーム28の上下動を案内する。
【0037】
シートクッションフレーム24には、弾性体で形成され、下方からシートクッション14のパッドを受け止める受圧部材36が取り付けられる。受圧部材36は、パンフレーム32と連結パイプ33との間に渡される複数のSばね37と、Sばね37に取り付けられて、Sばね37の弾性変形を規制する平板片38とを備える。個々のSばね37はジグザグ形状で前後に延びる。ジグザグ形状は、前後方向に延びる線材と、左右方向に延びる線材とが交互に組み合わせられて形成される。
【0038】
ベースフレーム26には電動式前後移動装置39が取り付けられる。電動式前後移動装置39は保持フレーム34に支持される電動モーター41を備える。電動モーター41は電力の供給に応じて動力を生成する。電力は第1スイッチ21aの操作に基づき供給される。電動モーター41の動力はスライドレール13に沿ってベースフレーム26の前後移動を引き起こす。
【0039】
シートクッションフレーム24のシートクッションサイドフレーム29には電動式上下移動装置42が取り付けられる。電動式上下移動装置42は、上下動フレーム28に支持されて、リンク機構27に連結されるアクチュエーター43を備える。アクチュエーター43は、上下動フレーム28の外側に配置されて、電力の供給に応じて動力を生成する電動モーター44と、上下動フレーム28に固定されながら取付面で電動モーター44を受け止めて、動力の伝達機構を収容するギアボックス45とを含む。伝達機構は、例えば、電動モーター44の駆動軸に固定されるウオームと、ウオームに協働してウオームギアを形成するウオームホイールと、水平軸線SH回りでリンク部材35に固定される被動ギアと、順番に相互に噛み合ってウオームホイールから被動ギアに動力を伝達するギア群とを含むことができる。電動モーター44の動力に応じて、水平軸線SH回りに上下動フレーム28に対してリンク部材35の回転は引き起こされる。電力は第1スイッチ21aの操作に基づき供給される。電動モーター44の動力は水平軸線FH回りで上下動フレーム28の上下移動を引き起こす。なお、前述のリンク機構27が省略される場合には電動式上下移動装置42は省略される。
【0040】
シートクッションフレーム24には、連結パイプ33の後上方で揺動軸線SXに同軸に支軸47が組み込まれる。支軸47は例えば中空の金属管から成形される。金属管は軸方向に高い剛性を有する。支軸47は左右の上下動フレーム28に挟まれる。支軸47にシートバックフレーム25は支持される。
【0041】
シートバックフレーム25は、支軸47で個々の上下動フレーム28の内側に連結されるシートバックサイドフレーム48と、シートバックサイドフレーム48の上端を相互に接続するアッパーフレーム49と、シートバックサイドフレーム48の下端を相互に接続するロワーフレーム51とを備える。シートバックサイドフレーム48には、ランバーサポート17のパッドを支持するランバーサポート部材52が結合される。アッパーフレーム49には上下方向にスライド可能にヘッドレストピラー22を支持するヘッドレストピラーガイド53が固定される。
【0042】
シートバックフレーム25のシートバックサイドフレーム48には電動式リクライニング装置54が取り付けられる。電動式リクライニング装置54は、揺動軸線SX周りでシートバックサイドフレーム48に取り付けられるアクチュエーター55を備える。アクチュエーター55は、シートバックサイドフレーム48の内側に配置されて、電力の供給に応じて動力を生成する電動モーター56aと、シートバックサイドフレーム48に固定されながら取付面で電動モーター56aを受け止める台座56bとを含む。電動モーター56aの動力は伝達機構の働きで揺動軸線SX回りの駆動力に変換される。伝達機構は、例えば、電動モーター56aの駆動軸に固定されるウオームと、ウオームに協働してウオームギアを形成し、揺動軸線SX回りで支軸47に固定されるウオームホイールとを含むことができる。電力は第2スイッチ21bの操作に基づき供給される。電動モーター56aの動力はシートクッションフレーム24に対して揺動軸線SX回りでシートバックフレーム25の前後揺動を引き起こす。アクチュエーター55はランバーサポート部材52に支持される消音部材57で覆われる。
【0043】
図3に示されるように、シートクッション14は、シートクッションフレーム24に支持されて、表皮材14aに包み込まれるシートクッションパッド58をさらに備える。シートバック15は、シートバックフレーム25に支持されて、表皮材15aに包み込まれるシートバックパッド59をさらに備える。シートクッションパッド58およびシートバックパッド59は例えば発泡ウレタンといった弾力性を有する素材から形成される。ここでは、ランバーサポート部材52には、シートバックパッド59から分離されながら表皮材15aに包み込まれるランバーサポートパッドが支持されてもよい。
【0044】
図4に示されるように、保持フレーム34は、乗員の大腿部を支えるシートクッションパッド58に下方から向き合わせられる内向き面34aを有する。内向き面34aは、電動モーター41を受け入れる開口61を区画する板片62に規定される。電動モーター41は、少なくとも部分的に内向き面34aよりシートクッションパッド58に近く配置される。
【0045】
受圧部材36には、電動モーター41に向き合う位置で消音部材63は支持される。消音部材63は受圧部材36経由でシートクッションフレーム24に取り付けられる。消音部材63は、内向き面34aよりもシートクッションパッド58に近い位置に共鳴空間64を区画する。共鳴空間64は、電動モーター41に接する空間に貫通孔65経由で接続される。消音部材63は、平板片38の縁に回転自在にリビングヒンジ66で連結される変位体67を有する。変位体67は、平板片38から遠ざかる開放位置、および、電動モーター41に向き合わせられながら平板片38との間に共鳴空間64を区画する組み付け位置の間で変位する。変位体67には複数の貫通孔65が形成される。貫通孔65は電動モーター41に向き合わせられる。変位体67には、組み付け位置で、貫通孔65を囲みながら平板片38に向かって延びるリブ68が形成される。ここでは、リブ68は貫通孔65ごとに共鳴空間64を区画する。
【0046】
図5に示されるように、シートバックサイドフレーム48は、シートバックパッド59で乗員の腰部を支える部位に向き合わせられる内向き面48aを有する。内向き面48aは、揺動軸線SXに直交する姿勢で保持される板片71に規定される。板片71の前縁には、板片71から連続し、乗員の腰部を支える部位に向かって広がり、ランバーサポート部材52を支持する前片71aが形成される。板片71の後縁には、板片71から連続し、乗員の腰部を支える部位に向かって広がる後片71bが形成される。後片71bの解放端には、後片71bから連続し、前片71aに向かって広がる規制片71cが形成される。電動モーター56aは、前片71aおよび後片71bに挟まれる空間で、内向き面48aよりも乗員の腰部を支える部位に近く配置される。
【0047】
消音部材57は、内向き面48aよりも乗員の腰部を支える部位に近い位置に、電動モーター56aに接する空間に貫通孔72経由で接続される共鳴空間73を区画する。消音部材57は、電動モーター56aに向き合わせられて、電動モーター56aに対して貫通孔72を位置決めする第1壁片74aと、第1壁片74aから延びて、前方から規制片71cに係り合ってシートバックサイドフレーム48の後片71bに第1壁片74aを連結する係り合い片74bと、第1壁片74aから延びて、ランバーサポート部材52に重ねられて締結部材75でランバーサポート部材52に結合される締結片74cとを有する。第1壁片74aには、第1壁片74aに向き合わせられる壁体を有して第1壁片74aとの間に共鳴空間73を形成する第2壁片74dが固定される。締結部材75には例えばねじが用いられる。
【0048】
シートバックサイドフレーム48には補助的に消音部材76が取り付けられる。消音部材76は、内向き面48aよりも乗員の腰部を支える部位に近い位置で開口する貫通孔77を有して貫通孔77に接続される空間78を区画する。ここでは、消音部材76には、シートバックフレーム25のロワーフレーム51と、後方からロワーフレーム51を覆うバックカバー79とが利用される。バックカバー79は例えば樹脂成形体から形成されることができる。バックカバー79は、左右のシートバックサイドフレーム48に外から覆い被さるシートバックサイドカバー81に後方から取り付けられて、ロワーフレーム51との間に空間78を形成する。ロワーフレーム51には貫通孔77が形成される。貫通孔77は空間78に接続される。
【0049】
シートバックサイドカバー81はシートバックサイドフレーム48との間に空間82を形成することができる。空間82は、シートバックサイドフレーム48に区画される貫通孔83経由で、電動モーター56aに接する空間に接続されることができる。貫通孔83は、シートバックサイドフレーム48の板片71で電動モーター56aに向き合う位置に配置されればよい。
【0050】
第1スイッチ21aが前方または後方に操作されると、電動モーター41に電力は供給される。電動モーター41は作動する。電動モーター41の駆動軸から駆動力は取り出される。駆動力に基づきシートクッション14およびシートバック15の前後動は実現されることができる。
【0051】
このとき、電動モーター41の作動音はシートクッションフレーム24の保持フレーム34で遮られて乗員の大腿部を支える部位に向かって伝わる。電動モーター41の作動音は貫通孔65経由で共鳴空間64に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。
【0052】
消音部材63の取り付けに先立って、
図4(B)に示されるように、Sばね37に平板片38は固定される。平板片38が固定されると、リビングヒンジ66の働きで変位体67は開放位置から組み付け位置に動かされることができる。平板片38に変位体67が重ねられると、平板片38と変位体67との間に共鳴空間64は形成されることができる。こうして受圧部材36は形成される。消音部材63は受圧部材36経由でシートクッションフレーム24に取り付けられるので、受圧部材36に予め消音部材63を組み付けることで簡単な取り付け作業は実現されることができる。しかも、既存の構成部品である受圧部材36の一部が共鳴空間64の形成にあたって利用されるので、消音部材63の占有体積の増加や重量増は抑制されることができる。
【0053】
変位体67には、組み付け位置で、貫通孔65を囲みながら平板片38に向かって延びるリブ68が形成される。リブ68の働きで閉鎖空間は確立されることができる。平板片38と変位体67とはヒンジで連結されるので、貫通孔65に対して閉鎖空間は簡単に位置決めされることができる。
【0054】
第2スイッチ21bが前方または後方に操作されると、電動モーター56aに電力は供給される。電動モーター56aは作動する。電動モーター56aの駆動軸から駆動力は取り出される。駆動力に基づきシートバック15の前後動は実現されることができる。
【0055】
このとき、電動モーター56aの作動音はシートバックサイドフレーム48で遮られて乗員を支える部位に向かって伝わる。電動モーター56aの作動音は貫通孔72経由で共鳴空間73に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。消音部材63はランバーサポート部材52経由でシートフレーム23に取り付けられるので、シートバックサイドフレーム48の前方から簡単な取り付け作業は実現されることができる。
【0056】
消音部材76では、電動モーター56aの作動音は貫通孔77経由で空間78に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して静寂性はさらに高められることができる。消音部材76では、既存の構成部品であるロワーフレーム51およびバックカバー79に基づき共鳴空間は形成されるので、消音効果の実現にあたって部品点数の増加は回避されることができる。
【0057】
図6に示されるように、消音部材57は少なくても部分的にランバーサポート部材52に一体化されてもよい。ここでは、例えば第1壁片74aはランバーサポート部材52から連続する。ランバーサポート部材52がシートバックサイドフレーム48に固定されると、第1壁片74aは電動モーター56aに貫通孔72を位置決めすることができる。第1壁片74aに第2壁片74dは取り付けられる。こうして消音部材57の取り付け作業は簡素化されることができる。
【0058】
図7は本発明の第2実施形態に係る車両用シート11aに組み込まれる保持フレーム91を示す。車両用シート11aでは前述の保持フレーム34に代えて保持フレーム91が用いられる。車両用シート11aの構成は前述の消音部材63を除き車両用シート11と同様である。
【0059】
保持フレーム91は、乗員の大腿部を支えるシートクッションパッド58に下方から向き合わせられる内向き面91aを有する。内向き面91aは、電動モーター41を受け入れる開口92を区画する板片93に規定される。電動モーター41は、少なくとも部分的に内向き面91aよりシートクッションパッド58に近く配置される。
【0060】
保持フレーム91は、板片93から連続し、開口92の縁から直立し、電動モーター41に向き合う位置で貫通孔94を有する第1壁片95と、板片93の縁から連続し、第1壁片95に並行に広がって共鳴空間96を形成する第2壁片97とを備える。シートクッション14では作動時に電動モーター41の作動音は保持フレーム91で遮られて乗員の大腿部を支える部位に向かって伝わる。電動モーター41の作動音は貫通孔94経由で共鳴空間96に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対して十分に効果的に静寂性は確立されることができる。保持フレーム91の第1壁片95および第2壁片97は消音部材として機能するので、消音効果の実現にあたって部品点数の増加は回避されることができる。組立作業の工数増は回避されることができる。
【0061】
保持フレーム91にはさらに消音部材98が取り付けられることができる。消音部材98は、内向き面91aよりも乗員の大腿部を支える部位に近い位置に、電動モーター41に接する空間に貫通孔99経由で接続される共鳴空間101を区画する。消音部材98は、弾性変形に基づき保持フレーム91に係り合って保持フレーム91に消音部材98を位置決めするフック片102を備える。電動モーター41の作動音は貫通孔99経由で共鳴空間101に進入する。ヘルムホルツ共鳴に基づき作動音は消音されることができる。こうして着座する乗員に対してさらに静寂性は高められることができる。消音部材98はフック片102の働きで保持フレーム91に弾性的に係り合うことから、工具を使用しなくても簡単に消音部材98は保持フレーム91に取り付けられることができる。簡単な取り付け作業は実現されることができる。
【0062】
ここでは、消音部材98は、電動モーター41から離れた位置で電動モーター41に向き合わせられる本体103と、本体103に結合されて本体103および電動モーター41の間に配置され、本体103との間に共鳴空間101を形成し、電動モーター41に向き合う位置に貫通孔99を有する補助体104とを備える。本体103に補助体104が結合されることで消音部材98に貫通孔99および共鳴空間101は確立されることができる。貫通孔99および共鳴空間101の位置関係は予め確立されることができる。消音部材98の取り付けにあたって簡単な取り付け作業は実現されることができる。
【符号の説明】
【0063】
11…車両用シート、11a…車両用シート、24…シートクッションフレーム、34…フレーム(保持フレーム)、34a…内向き面、36…受圧部材、38…平板片、41…モーター(電動モーター)、48…フレーム(シートバックサイドフレーム)、48a…内向き面、51…(シートバック)ロワーフレーム、52…ランバーサポート部材、56a…モーター(電動モーター)、57…消音部材、58…クッションパッド(シートクッションパッド)、59…クッションパッド(シートバックパッド)、63…消音部材、64…共鳴空間、65…貫通孔、66…ヒンジ(リビングヒンジ)、67…変位体、72…貫通孔、73…共鳴空間、76…消音部材、77…貫通孔、78…空間、79…バックカバー、92…開口、93…板片、94…貫通孔、95…第1壁片、96…共鳴空間、97…第2壁片、98…消音部材、99…貫通孔、101…共鳴空間、102…フック片、103…本体、104…補助体。