IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-導電性構造体の製造方法 図1
  • 特開-導電性構造体の製造方法 図2
  • 特開-導電性構造体の製造方法 図3
  • 特開-導電性構造体の製造方法 図4
  • 特開-導電性構造体の製造方法 図5
  • 特開-導電性構造体の製造方法 図6
  • 特開-導電性構造体の製造方法 図7
  • 特開-導電性構造体の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149437
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】導電性構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/16 20060101AFI20220929BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20220929BHJP
   H05B 3/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H05B3/16
H05B3/10 C ZNM
H05B3/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051599
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092QB02
3K092QB14
3K092QB26
3K092QB43
3K092QB60
3K092QB77
3K092RF02
3K092RF13
3K092RF19
3K092RF22
3K092TT27
3K092VV40
(57)【要約】
【課題】導電性線状体を有する導電性構造体について、高い製造効率でありながら、微細な形状であっても、高いパターン精度で導電性線状体を形成することができる、導電性構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)積層体110を準備する工程と、(2)粘着層112の表面上に、導電性材料120aをノズル20から射出することによって、導電性線状体120を粘着層112の表面上に形成させる工程と、を含み、ノズル20は、射出孔22とエアー噴出孔23とを備え、ノズル20は、搬送される積層体110から所定の距離Lだけ離して配置されており、(2)工程は、搬送されている積層体110に向けて、射出孔22から導電性材料120aを射出するとともに、エアー噴出孔23からエアーを吹き出すことにより、導電性線状体120を粘着層112の表面上に形成させる、導電性構造体の製造方法を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に積層された粘着層と、前記粘着層の表面上に配置された導電性線状体とを含む、導電性構造体の製造方法であって、
(1)前記基材と、前記粘着層とを含む積層体を準備する工程と、
(2)前記積層体を搬送しながら、前記積層体の前記粘着層の表面上に、前記導電性線状体となる導電性材料をノズルから射出することによって、前記導電性線状体を前記粘着層の表面上に形成させる工程と、
を含み、
前記ノズルは、前記導電性材料を射出する射出孔と、前記射出孔の近傍に配置され、エアーを噴出するエアー噴出孔とを備え、
前記ノズルは、搬送される前記積層体から所定の距離だけ離して配置されており、
前記(2)工程は、搬送されている前記積層体に向けて、前記導電性材料を前記射出孔から射出するとともに、前記エアー噴出孔からエアーを吹き出すことにより、前記導電性線状体を前記粘着層の表面上に形成させる、
導電性構造体の製造方法。
【請求項2】
前記(2)工程は、前記ノズルを前記積層体の幅方向に沿って移動させながら、前記積層体の前記粘着層の表面上に向けて、前記導電性材料を前記射出孔から射出することによって、前記粘着層の表面上に波形状の前記導電性線状体を形成させる工程である、
請求項1に記載の導電性構造体の製造方法。
【請求項3】
前記粘着層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項1又は2に記載の導電性構造体の製造方法。
【請求項4】
前記粘着層の弾性率は、0.001MPa以上10MPa以下である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性構造体の製造方法。
【請求項5】
前記導電性線状体は、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金、及び金属を2種以上含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性構造体の製造方法。
【請求項6】
前記ノズルは、前記搬送される前記積層体の表面から0.01mm以上20mm以下だけ離して配置されている、
請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性構造体の製造方法。
【請求項7】
前記ノズルの先端直径は、前記導電性線状体の断面視における直径の1.5倍以上10倍以下である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性構造体の製造方法。
【請求項8】
前記エアー噴出孔から噴出されるエアーの吐出圧は、0.1MPa以上10MPa以下である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性構造体の製造方法。
【請求項9】
前記導電性構造体は、導電部材、ヒーター、及びセンサーからなる群より選ばれる少なくとも1つである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の導電性構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の導電性線状体が間隔をもって配列された導電性構造体は、発熱装置の発熱体、発熱するテキスタイルの材料、ディスプレイ用保護フィルム(粉砕防止フィルム)等、種々の物品に利用できる可能性がある。このような導電性構造体は、例えば、基材及び粘着層から構成される積層体の上に導電性線状体を配置した導電性シートやシート状導電部材等として使用される。あるいは、導電性線状体を発熱体として用いるシート状ヒーター等としても使用される。
【0003】
このような導電性構造体に関するものとして、例えば、特許文献1には、一方向に延びた複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体であって、導電性線状体が、波長λ1及び振幅A1を有する波形状の第一部位と、第一部位の波長λ1及び振幅A1の少なくとも一方と異なる波長λ2及び振幅A2を有する波形状の第二部位と、を持つ線状体である疑似シート構造体と、疑似シート構造体の一方の表面上に設けられた樹脂保護層と、を有する三次元成形用導電性シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/097323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した導電性構造体の製造方法としては、上述した基材及び粘着層から構成される長尺の積層体(シート)を準備し、これを高速搬送しながら、粘着層の表面に導電性線状体となる導電性材料をノズルから射出する方法が採用されている(例えば、後述する図7及び図8参照)。このような製造方法は、積層体を高速搬送しながら導電性線状体を形成できるため、製造効率が上がることが期待される。
【0006】
しかし、このような製造方法では、微細な導電性線状体を正確に積層体上に配置することが難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、導電性線状体を有する導電性構造体について、高い製造効率でありながら、微細な形状であっても、高いパターン精度で導電性線状体を形成することができる、導電性構造体の製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、基材と、基材の表面に積層された粘着層と、粘着層の表面上に配置された導電性線状体とを含む、導電性構造体の製造方法であって、(1)基材と、粘着層とを含む積層体を準備する工程と、(2)積層体を搬送しながら、積層体の粘着層の表面上に、導電性線状体となる導電性材料をノズルから射出することによって、導電性線状体を粘着層の表面上に形成させる工程と、を含み、ノズルは、導電性材料を射出する射出孔と、射出孔の近傍に配置され、エアーを噴出するエアー噴出孔とを備え、ノズルは、搬送される積層体から所定の距離だけ離して配置されており、(2)工程は、搬送されている積層体に向けて、射出孔から導電性材料を射出するとともに、エアー噴出孔からエアーを吹き出すことにより、導電性線状体を粘着層の表面上に形成させる導電性構造体の製造方法とすることに知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0010】
<1>
基材と、前記基材の表面に積層された粘着層と、前記粘着層の表面上に配置された導電性線状体とを含む、導電性構造体の製造方法であって、
(1)前記基材と、前記粘着層とを含む積層体を準備する工程と、(2)前記積層体を搬送しながら、前記積層体の前記粘着層の表面上に、前記導電性線状体となる導電性材料をノズルから射出することによって、前記導電性線状体を前記粘着層の表面上に形成させる工程と、を含み、前記ノズルは、前記導電性材料を射出する射出孔と、前記射出孔の近傍に配置され、エアーを噴出するエアー噴出孔とを備え、前記ノズルは、搬送される前記積層体から所定の距離だけ離して配置されており、前記(2)工程は、搬送されている前記積層体に向けて、前記導電性材料を前記射出孔から射出するとともに、前記エアー噴出孔からエアーを吹き出すことにより、前記導電性線状体を前記粘着層の表面上に形成させる、導電性構造体の製造方法である。
<2>
前記(2)工程は、前記ノズルを前記積層体の幅方向に沿って移動させながら、前記積層体の前記粘着層の表面上に向けて、前記導電性材料を前記射出孔から射出することによって、前記粘着層の表面上に波形状の前記導電性線状体を形成させる工程である、<1>に記載の導電性構造体の製造方法である。
<3>
前記粘着層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、<1>又は<2>に記載の導電性構造体の製造方法である。
<4>
前記粘着層の弾性率は、0.001MPa以上10MPa以下である、<1>~<3>のいずれかに記載の導電性構造体の製造方法である。
<5>
前記導電性線状体は、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金、及び金属を2種以上含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、<1>~<4>のいずれかに記載の導電性構造体の製造方法である。
<6>
前記ノズルは、前記搬送される前記積層体の表面から0.01mm以上20mm以下だけ離して配置されている、<1>~<5>のいずれかに記載の導電性構造体の製造方法である。
<7>
前記ノズルの先端直径は、前記導電性線状体の断面視における直径の1.5倍以上10倍以下である、<1>~<6>のいずれかに記載の導電性構造体の製造方法である。
<8>
前記エアー噴出孔から噴出されるエアーの吐出圧は、0.1MPa以上10MPa以下である、<1>~<7>のいずれかに記載の導電性構造体の製造方法である。
<9>
前記導電性構造体は、導電部材、ヒーター、及びセンサーからなる群より選ばれる少なくとも1つである、<1>~<8>のいずれかに記載の導電性構造体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性線状体を有する導電性構造体について、高い製造効率でありながら、微細な形状であっても、高いパターン精度で導電性線状体を形成することができる、導電性構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態における導電性構造体の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1のA-A線における断面図である。
図3図3は、本実施形態における製造方法の一例を示す概略図である。
図4図4は、本実施形態における製造方法の一例を示す部分上面図である。
図5図5は、本実施形態における製造方法のノズル付近の一例を示す断面図である。
図6図6は、本実施形態における導電性構造体を用いたヒーターの一例を示す斜視図である。
図7図7は、従来技術の製造方法の一例を示す概略図である。
図8図8は、従来技術の製造方法のノズル付近の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0014】
そして、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0015】
また、本明細書中、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」はメタクリル及びアクリルを包含するものとする。例えば、(メタ)アクリルは、メタクリル、アクリル、又はその両方を意味するものである。「(メタ)アクリレート」等、その他の類義語についても同様である。
【0016】
<導電性構造体>
【0017】
まず、本実施形態に係る製造方法によって得られる導電性構造体について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態における導電性構造体の一例を示す斜視図であり、図2は、図1のA-A線における断面図である。
【0019】
導電性構造体100は、基材111と、基材111の表面に積層された粘着層112と、粘着層112の表面上に配置された導電性線状体120とを含む。導電性構造体100は、基材111と粘着層112とから構成される積層体110の表面上に、導電性線状体120が配置されている。
【0020】
導電性構造体100は、複数の導電性線状体120が、互いに所定の配置間隔Pをもって配列された構造とすることができる。図1では、4本の導電性線状体120が配列された場合を例示している。導電性線状体120は、それぞれが、導電性構造体100の長手方向Y(すなわち、後述する搬送方向)に沿って配列されている。そして、導電性構造体100の幅方向X(すなわち、長手方向Yと直交する方向)において、導電性線状体120は、所定の配置間隔Pで複数本配列されている(図2参照)。
【0021】
また、導電性線状体120の配列形状(パターニング)は、特に限定されず、曲線や直線であってもよい。例えば、図1に示すように、上面視において波形状であってもよい。本実施形態に係る製造方法は、曲線部分を複雑に有する波形状の導電性線状体120であっても、高い寸法精度で配列(パターニング)することができる。
【0022】
(積層体)
【0023】
積層体110は、基材111及び粘着層112を含むものであり、長尺のシート状とすることができる。シート状の積層体110であることにより、後述するように、搬送装置上を搬送しながら導電性構造体100を配置することが容易である。
【0024】
積層体110の層構造は、導電性線状体120を粘着層112の表面上に配置する観点から、少なくともその最表面が粘着層112であればよく、2層に限定されものではない。例えば、3層以上であってもよい。例えば、基材111が複数層からなるものであってもよいし、基材111と粘着層112との間に、各種機能層を中間層として有していてもよい。
【0025】
(基材)
【0026】
基材111としては、例えば、合成樹脂フィルム、紙、金属箔、不織布、布、及びガラスフィルム等が挙げられる。この基材111により、導電性構造体100を、直接的又は間接的に支持できる。また、基材111は、伸縮性基材であることが好ましい。なお、「フィルム」は「シート」等と呼ばれることもある。
【0027】
伸縮性基材としては、合成樹脂フィルム、紙、不織布、及び布等を用いることができる。また、これらの伸縮性基材の中でも、合成樹脂フィルム、又は布が好ましく、合成樹脂フィルムがより好ましい。
【0028】
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。その他、伸縮性基材としては、これらの架橋フィルム及び積層フィルム等が挙げられる。
【0029】
紙としては、例えば、上質紙、再生紙、及びクラフト紙等が挙げられる。
【0030】
不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブロー不織布、及びスパンレース不織布等が挙げられる。
【0031】
布としては、例えば、織物、及び編物等が挙げられる。
【0032】
伸縮性基材としての不織布、及び布はこれらに限定されない。
【0033】
(粘着層)
粘着層112は、粘着性を有する層であり、後述する導電性線状体120を固着できるものであればよい。例えば、粘着層112は、樹脂を含む層である。この粘着層112により、導電性構造体100を、直接的又は間接的に支持できる。
【0034】
粘着層112は、接着剤を含む層であることが好ましい。粘着層112が接着剤を含むことにより、導電性線状体120を粘着層112へ貼り付けることができ、導電性線状体120をよりしっかりと固着させることができる。また、粘着層112が接着剤を含むことにより、粘着層112を介して基材111と導電性線状体120を容易に貼り付けることができる。
【0035】
粘着層112は、乾燥又は硬化可能な樹脂からなる層であってもよい。また、硬化又は乾燥後の粘着層112は、耐衝撃性を有し、衝撃による基材111の変形も抑制できる。
【0036】
粘着層112は、短時間で簡便に硬化することができる観点から、紫外線、可視エネルギー線、赤外線、電子線等のエネルギー線硬化性を有することが好ましい。なお、「エネルギー線硬化」には、エネルギー線を用いた加熱による熱硬化も含まれる。
【0037】
粘着層112の接着剤は、熱により硬化する熱硬化性のもの、熱により接着するいわゆるヒートシールタイプのもの、湿潤させて貼付性を発現させる接着剤等も挙げられる。ただし、適用の簡便さからは、粘着層112が、エネルギー線硬化性であることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
【0038】
アクリレート系化合物としては、例えば、鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート(トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等)、環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート(ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート、及びイタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0039】
エネルギー線硬化性樹脂の重量平均分子量(M)は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0040】
接着剤組成物が含有するエネルギー線硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。さらに、後述する熱可塑性樹脂と組み合わせてもよく、組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0041】
粘着層112は、粘着剤(感圧性接着剤等)から形成される粘着層であってもよい。粘着層112の粘着剤は、特に限定されない。例えば、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びゴム系粘着剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0042】
アクリル系粘着剤としては、例えば、直鎖のアルキル基又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体(つまり、アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(つまり、環状構造を有する(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)等が挙げられる。
【0043】
アクリル系重合体が共重合体である場合、共重合の形態としては、特に限定されない。アクリル系共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0044】
アクリル系共重合体は架橋剤により架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、公知のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、及び金属キレート系架橋剤等が挙げられる。アクリル系共重合体を架橋する場合には、アクリル系重合体の単量体成分に由来する官能基として、これらの架橋剤と反応する水酸基やカルボキシル基等をアクリル系共重合体に導入することができる。
【0045】
粘着層112が粘着剤から形成される場合、粘着層112は、粘着剤の他に、さらに上述したエネルギー線硬化性樹脂を含有していてもよい。また、粘着剤としてアクリル系粘着剤を適用する場合、エネルギー線硬化性の成分として、アクリル系共重合体における単量体成分に由来する官能基と反応する官能基と、エネルギー線重合性の官能基の両方を一分子中に有する化合物を用いてもよい。当該化合物の官能基と、アクリル系共重合体における単量体成分に由来する官能基との反応により、アクリル系共重合体の側鎖がエネルギー線照射により重合可能となる。粘着剤がアクリル系粘着剤以外の場合においても、アクリル系重合体以外の重合体成分として、同様に側鎖がエネルギー線重合性である成分を用いてもよい。
【0046】
粘着層112に用いられる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、具体的には、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ベンゾオキサジン系樹脂、フェノキシ系樹脂、アミン系化合物、及び酸無水物系化合物等が挙げられる。例えば、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレート系重合体や(メタ)アクリレート系共重合体等、(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
粘着層112に用いられる湿気硬化性樹脂としては、特に限定されず、湿気でイソシアネート基が生成してくる樹脂であるウレタン系樹脂、変性シリコーン系樹脂等が挙げられる。
【0048】
エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いる場合、光重合開始剤や熱重合開始剤等を用いることが好ましい。光重合開始剤や熱重合開始剤等を用いることで、架橋構造が形成され、導電性構造体100を、より強固に保護することができる。
【0049】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、2-クロロアントラキノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0050】
熱重合開始剤としては、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩(例えば、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、及びペルオキソ二硫酸カリウム等)、アゾ系化合物(例えば、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、及び有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、及びクメンヒドロパーオキサイド等)等が挙げられる。
【0051】
これらの重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
これらの重合開始剤を用いて架橋構造を形成する場合、その使用量は、エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、1質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上10質量部以下であることが更に好ましい。
【0053】
粘着層112は、硬化性でなく、例えば、熱可塑性樹脂組成物からなる層であってもよい。そして、熱可塑性樹脂組成物中に溶剤を含有させることで、熱可塑性樹脂層を軟化させることができる。これにより、粘着層112の表面に導電性線状体120を形成する際に、導電性線状体120の粘着層112への貼り付けが容易となる。一方で、熱可塑性樹脂組成物中の溶剤を揮発させることで、熱可塑性樹脂層を乾燥させ、固化させることができる。
【0054】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、及びアクリル系樹脂等が挙げられる。例えば、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリレート系重合体や(メタ)アクリレート系共重合体等、(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体等が挙げられる。
【0055】
溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化アルキル系溶剤、及び水等が挙げられる。
【0056】
粘着層112は、無機充填材を含有していてもよい。無機充填材を含有することで、硬化後の粘着層112の硬度をより向上させることができる。また、粘着層112の熱伝導性が向上する。
【0057】
無機充填材としては、例えば、無機粉末(例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、及び窒化ホウ素等の粉末)、無機粉末を球形化したビーズ、単結晶繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材としては、シリカフィラー及びアルミナフィラーが好ましい。無機充填材は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
粘着層112の材料としては、上述したものを用途等に応じて、種々用いることができるが、本実施形態に係る製造方法では、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、及びエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。このような材料を用いることによって、より均一に目的の厚さの層を形成することができる。
【0059】
粘着層112には、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶剤、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、及び濡れ性調整剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0060】
粘着層112は、上述した樹脂や添加剤等を溶剤に溶かした塗布液を、ダイ塗工、スプレー塗工、コンマ塗工、グラビア塗工等の公知の塗工方法によって塗布し、必要によって加熱乾燥することによって形成させることができる。
【0061】
粘着層112の厚さは、導電性構造体100の用途に応じて適宜決定される。例えば、接着性の観点から、粘着層112の厚さは、3μm以上150μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0062】
粘着層112の弾性率は、0.001MPa以上10MPa以下であることが好ましく、0.01MPa以上2MPa以下であることがより好ましく、0.05MPa以上1MPa以下であることが更に好ましい。このような弾性率とすることによって、後述する製造方法において、粘着層112に配置された導電性線状体120をしっかりと固着することができる。
【0063】
(導電性線状体)
【0064】
導電性線状体120の断面の形状(図2参照)は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形、矩形、扁平形等であってもよいが、後述するように、ノズルを用いて製造することから、円形、楕円形であることが好ましく、円形であることがより好ましい。
【0065】
導電性線状体120の断面の形状が円形である場合、導電性線状体120の断面視における直径D(図2参照)は、5μm以上3mm以下であることが好ましい。導電性構造体100の抵抗の上昇抑制と、これを発熱体として用いた場合の発熱効率及び耐絶縁破壊特性の向上との観点から、直径Dは、8μm以上60μm以下であることがより好ましく、12μm以上40μm以下であることが更に好ましい。
【0066】
この直径Dは、デジタル顕微鏡を用いて、導電性構造体100の導電性線状体120を観察し、無作為に選んだ5箇所で導電性線状体120の直径を測定し、その算術平均値を採用することができる。
【0067】
導電性線状体120の断面が楕円形である場合、長径が上記の直径Dと同様の範囲にあることが好ましい。
【0068】
導電性線状体120の配置間隔P(図2参照)は、1mm以上400mm以下であることが好ましく、2mm以上200mm以下であることがより好ましく、3mm以上100mm以下であることが更に好ましい。
【0069】
この配置間隔Pを上記範囲とすれば、導電性線状体120がある程度密集したパターニング形状となるため、導電性構造体100を発熱体として用いる場合には、その温度上昇の分布を均一にする(昇温の偏りがない)等といった種々の機能をより向上させることができる。
【0070】
導電性線状体120の配置間隔Pは、目視又はデジタル顕微鏡を用いて、導電性構造体100の導電性線状体120を観察し、隣り合う2つの導電性線状体120の間隔を測定することによって得ることができる。なお、隣り合う2つの導電性線状体120の配置間隔Pとは、導電性線状体120を配列させていった方向(幅方向X、図1及び図2参照)に沿った長さであって、2つの導電性線状体120の対向する部分間の長さである(図2参照)。配置間隔Pは、導電性線状体120の配列が不等間隔である場合には、全ての隣り合う導電性線状体120同士の間隔の算術平均値を採用することができる。
【0071】
導電性線状体120の材料等については、特に限定されないが、金属ワイヤーを含む線状体(「金属ワイヤー線状体」等と呼ばれることもある。)であることが好ましい。金属ワイヤーは、高い熱伝導性、高い電気伝導性、高いハンドリング性、及び汎用性を有する。そのため、導電性線状体120として金属ワイヤー線状体を適用すると、導電性構造体100の抵抗値を低減しつつ、光線透過性が向上しやすくなる。例えば、導電性線状体120の導電性が高いほど、線の太さを細く(直径Dを小さく)することもできるため、その結果、シート内を透過する光の透過面積を増やすことができ、光線透過性を向上させることができる。また、導電性構造体100を発熱体等として適用した場合には、速やかな発熱が実現されやすくなる。さらに、直径Dが小さい、細径の線状体を得られやすい。
【0072】
なお、導電性線状体120としては、金属ワイヤー線状体の他に、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体が挙げられる。
【0073】
金属ワイヤー線状体は、1本の金属ワイヤーからなる線状体であってもよいし、複数本の金属ワイヤーを撚った線状体であってもよい。
【0074】
金属ワイヤーとしては、例えば、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム-銅合金、ベリリウム-銅合金、鉄-ニッケル合金、ニクロム、ニッケル-チタン合金、鉄-クロム-アルミ合金、ニッケル-モリブテン-クロム合金、及びレニウム-タングステン合金等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケル-クロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料又はポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。
【0075】
特に、低い体積抵抗率の導電性線状体120とする観点からは、タングステン及びモリブデン並びにこれらを含む合金から選ばれる少なくとも1種の金属を含むワイヤーであることが好ましい。
【0076】
金属ワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属ワイヤーも挙げられる。金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、金属光沢が低減し、金属ワイヤーの存在を目立たなくすることが容易となる。また、金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると金属腐食も抑制される。
【0077】
金属ワイヤーを被覆する炭素材料としては、非晶質炭素(例えば、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、及びカーボンファイバー等)、グラファイト、フラーレン、グラフェン、及びカーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0078】
カーボンナノチューブを含む線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基材に対して垂直方向に配向するよう、基材上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」等と呼ばれることもある。)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。
【0079】
上述した製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブが捻られた構造を有しない線状体である。
【0080】
あるいは、カーボンナノチューブの分散液から紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、公知の方法により行うことができる。
【0081】
カーボンナノチューブ線状体の直径をより均一にする観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが好ましく、カーボンナノチューブ線状体の純度をより高くする観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。
【0082】
カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が編まれた線状体であってもよい。また、カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと他の導電性材料が複合された線状体(「複合線状体」等と呼ばれることもある。)であってもよい。
【0083】
複合線状体としては、例えば、(i)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シート若しくは束、又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、湿式めっき等により担持させた複合線状体、(ii)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と共に、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体、(iii)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを編んだ複合線状体等が挙げられる。
【0084】
なお、(ii)の複合線状体においては、カーボンナノチューブの束を撚る際に、(i)の複合線状体と同様にカーボンナノチューブに対して金属を担持させてもよい。
【0085】
また、(iii)の複合線状体は、2本の線状体を編んだ場合の複合線状体であるが、少なくとも1本の金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体が含まれていれば、カーボンナノチューブ線状体又は金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体若しくは複合線状体の3本以上を編み合わせてあってもよい。
【0086】
複合線状体の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、及び亜鉛等の金属単体、及び、これら金属単体の少なくとも1種を含む合金(銅-ニッケル-リン合金、及び、銅-鉄-リン-亜鉛合金等)が挙げられる。
【0087】
導電性線状体120は、糸に導電性被覆が施された線状体であってもよい。糸としては、ナイロン、ポリエステル等の樹脂から紡糸した糸等が挙げられる。導電性被覆としては、金属、導電性高分子、及び炭素材料等の被膜等が挙げられる。導電性被覆は、メッキ又は蒸着法等により形成することができる。糸に導電性被覆が施された線状体は、糸の柔軟性を維持しつつ、線状体の導電性を向上させることができる。つまり、導電性構造体100の抵抗を低下させることが容易となる。
【0088】
導電性線状体120の材料としては、上述したものを用途等に応じて、種々用いることができるが、本実施形態に係る製造方法では、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金、及び金属を2種以上含む合金からなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。合金としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム-銅合金、ベリリウム-銅合金、鉄-ニッケル合金、ニッケル-クロム合金、ニッケル-チタン合金、鉄-クロム-アルミニウム合金、ニッケル-クロム-モリブデン合金、及びレニウム-タングステン合金等が挙げられる。このような材料を用いることによって、通電時に効率よく発熱させることができる。
【0089】
<導電性構造体の製造方法>
【0090】
上述した導電性構造体は、従来では、例えば、以下のような製造方法によって製造することが試みられていた。
【0091】
図7は、従来技術の製造方法の一例を示す概略図である。図8は、従来技術の製造方法のノズル付近の一例を示す断面図である。
【0092】
基材111と粘着層112とを有する積層体110を、上流側のガイドローラー11、抑えローラー10、及び下流側のガイドローラー12等の上を搬送させながら(矢印F1参照)、粘着層112の表面に向けて、導電性線状体130となる導電性材料130aをノズル40から射出することによって、導電性線状体130を粘着層112の表面上に形成する。そして、図8に示すように、ノズル40には、導電性線状体130となる導電性材料130aを射出するための射出孔42を有している。
【0093】
導電性材料130aをノズル40から粘着層112に向けて射出する際に、ノズル40が粘着層112と非接触であると、ノズルの先端41から導電性材料130aが射出されず目詰まりを起こしたり、粘着層112の射出目標に正確に射出できなかったりするために、導電性材料130aをノズル40から射出する際には、ノズル40の先端41を積層体110の表面に接触させた状態で射出を行う(図8参照)。
【0094】
しかし、従来の製造方法におけるノズル40付近の挙動を詳しく調べたところ、ノズル40の先端41が、導電性線条体130を介して粘着層112に接触している状態であるため、ノズル40を左右に往復運動又は摺動運動させる際のノズル40の移動速度は、積層体110の搬送速度との関係から制限を受けてしまうことが多い。その結果、従来の製造方法では、微細な形状を賦形することができず、導電性線状体130のパターン精度について制約があるといった問題がある。
【0095】
例えば、導電性構造体を各種導電部材やヒーター等に用いる場合、製品及び部品の小型化等の要求から、その配線パターンを更に微細化する必要がある。例えば、1本の導電性線状体130の直径Dを小さくすることはもちろんのこと、導電性線状体130を複数本配列する際の配置間隔Pを小ピッチにするといったことも試みられるであろう。その際、従来の製造方法ではこのような微細かつ小ピッチの配線とするという要求に十分に応えることができていない。
【0096】
しかしながら、本実施形態に係る製造方法によれば、上述した問題が起きることなく、導電性線状体130の形状が微細な形状であっても、高いパターン精度で、導電性構造体100を製造することができる。
【0097】
図3は、本実施形態における製造方法の一例を示す概略図であり、図4は、本実施形態における製造方法の一例を示す部分上面図であり、図5は、本実施形態における製造方法のノズル付近の一例を示す断面図である。
【0098】
本実施形態に係る導電性構造体100の製造方法は、基材111と、基材111の表面に積層された粘着層112と、粘着層112の表面上に配置された導電性線状体120とを含む、導電性構造体100の製造方法であって、
(1)基材111と、粘着層112とを含む積層体110を準備する工程と、
(2)積層体110を搬送しながら、積層体110の粘着層112の表面上に、導電性線状体120となる導電性材料120aをノズル20から射出することによって、導電性線状体120を粘着層112の表面上に形成させる工程と、
を含み、
ノズル20は、導電性材料120aを射出する射出孔22と、射出孔22の近傍に配置され、エアーを噴出するエアー噴出孔23とを備え、
ノズル20は、搬送される積層体110から所定の距離Lだけ離して配置されており、
(2)工程は、搬送されている積層体110に向けて、導電性材料120aを射出孔22から射出するとともに、エアー噴出孔23からエアーを吹き出すことにより、導電性線状体120を粘着層112の表面上に形成させる、
導電性構造体100の製造方法である。
【0099】
(1)積層体110を準備する工程について説明する。
【0100】
例えば、基材111の表面に、粘着層形成用組成物を塗布することによって、粘着層112を形成することができる。粘着層形成用組成物を塗布した後、必要に応じてその塗膜を乾燥させる工程を行ってもよい。また、基材111の表面に粘着層112が形成されたシートとして、市販品を用いてもよい。
【0101】
粘着層形成用組成物は、上述した粘着層112として使用可能な成分と、溶剤とを含む溶液を用いることができる。ここで使用可能な溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化アルキル系溶剤、及び水等が挙げられる。
【0102】
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、ブタノール、イソブタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、t-ブタノール、1,3-ブタンジオール、及び1,4-ブタンジオール等が挙げられる。
【0103】
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、及びシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0104】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸n-プロピル、及び酢酸メトキシブチル等が挙げられる。
【0105】
エーテル系溶剤としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセルソルブ、及び1,4-ジオキサン等が挙げられる。
【0106】
グリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びプロピレングリコール等が挙げられる。
【0107】
グリコールエステル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0108】
炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、n-ヘキサン、イソヘキサン、及びシクロヘキサン等が挙げられる。
【0109】
ハロゲン化アルキル系溶剤としては、例えば、メチレンクロライド、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、及びクロロホルム等が挙げられる。
【0110】
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0111】
乾燥を行う場合、乾燥条件は、60℃以上200℃以下で、5秒以上120秒以下であることが好ましい。乾燥温度は、80℃以上150℃以下であることがより好ましく、90℃以上130℃以下であることが更に好ましい。乾燥時間は、10秒以上100秒以下であることがより好ましく、20秒以上80秒以下であることが更に好ましい。乾燥を行う方法は、特に限定されず、例えば、ヒーターやドライヤー等の加熱装置を用いることができる。
【0112】
このような方法によって準備された積層体110を、ローラー等を備えた搬送装置を用いて、搬送しながら、(2)工程を行うことによって、粘着層112の表面上に導電性線状体120を形成することができる。
【0113】
なお、本実施形態では、図3及び図4に示すように、抑えローラー10を用いた場合を例示しているが、抑えプレート上に配線部30を配置し、プレート上で搬送されている積層体110に対して導電性材料120aをノズル20から射出する構成としてもよい。
【0114】
ガイドローラー11,12のローラー径(直径)は、特に限定されないが、4cm以上15cm以下であることが好ましく、5cm以上12cm以下であることがより好ましく、8cm以上10cm以下であることが更に好ましい。
【0115】
抑えローラー10のローラー径(直径)は、特に限定されないが、10cm以上100cm以下であることが好ましく、15cm以上80cm以下であることがより好ましく、20cm以上50cm以下であることが更に好ましい。
【0116】
搬送速度は、特に限定されないが、0.5m/分以上10m/分以下であることが好ましく、1m/分以上8m/分以下であることがより好ましく、2m/分以上5m/分以下であることが更に好ましい。本実施形態によれば、このような比較的高速な搬送速度であっても、微細な形状であっても、高いパターン精度で導電性線状体120を粘着層112の表面上に形成することができる。
【0117】
また、搬送時の張力(搬送張力)は、10N/m以上300N/m以下であることが好ましく、20N/m以上200N/m以下であることがより好ましく、30N/m以上150N/m以下であることが更に好ましい。
【0118】
続いて、(2)導電性線状体120を粘着層112の表面上に形成する工程について説明する。
【0119】
(2)工程では、導電性材料120aを射出する射出孔22と、射出孔22の近傍に配置され、エアーを噴出するエアー噴出孔23とを備えるノズル20を用いる。そして、ノズル20の先端21を積層体110の表面から所定の距離Lだけ離した状態で、すなわち、ノズル20の先端21が積層体110の表面と非接触の状態で、導電性材料120aを射出孔22から射出することによって、導電性線状体120を粘着層112の表面上に形成する。
【0120】
ノズル20は、図5に示すように、導電性材料120aを繰り出す射出孔22が形成されており、そこから導電性材料120aを粘着層112の表面に向けて繰り出す(矢印F3参照)。そして、ノズル20には、射出孔22の近傍にエアー噴出孔23が設けられており、そこからエアーを噴出する(矢印F3参照)。これにより、積層体110の表面と非接触の状態で導電性材料120aを射出する場合でありながら、その噴射力によって粘着層112にしっかりと密着させることができるため、微細な形状である導電性線状体120であっても、粘着層112にしっかりと密着させることができる。
【0121】
そして、エアー噴出孔23は、射出孔22の近傍に設ければよいが、ノズル20を底面視した際において、射出孔22から100μm以上2mm以下の範囲に設けることが好ましく、200μm以上1mm以下の範囲に設けることがより好ましく、300μm以上600μm以下の範囲に設けることが更に好ましい。
【0122】
また、エアー噴出孔23の形状は、特に限定されないが、エアー噴出孔23は、ライン方向において、射出孔22よりも上流側(手前)に1か所配置されるとともに、射出孔22よりも下流側に1か所配置されるようにすることが好ましい(図5参照)。このように、上流側と下流側に独立してエアー噴出孔23を配置することで、それぞれの吐出圧を独立して制御できるため、パターン精度を一層向上させることができる。もちろん、エアー噴出孔23は、ノズル20を底面視した際において、射出孔22の外周を取り囲むように略円形に配置されていてもよい。
【0123】
射出孔22の直径は、導電性線状体120の直径Dに対応する寸法値であることが好ましく、例えば、5μm以上3mm以下であることが好ましく、8μm以上200μm以下であることがより好ましく、12μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
【0124】
さらに、本実施形態では、ノズル20を積層体110の表面から所定の距離Lだけ離して、導電性材料120aを射出する。これにより、ノズル20の動きに対する制約が緩和され、より微細かつ細かいパターン精度の導電性線状体120であっても正確に賦形できる。例えば、波形状の導電性線状体120とする場合、波形、振幅、及び波長を従来の製造方法よりも更に細かく設定することができる。
【0125】
このような観点から、ノズル20と積層体110の表面までの距離Lは、0.01mm以上20mm以下であることが好ましく、0.02mm以上10mm以下であることがより好ましく、0.05mm以上5mm以下であることが更に好ましい。また、距離Lは、非接触の状態を確保する観点から、導電性線条体120の直径Dよりも大きいことが好ましい。ノズル20を、搬送される積層体110の表面から上述した距離だけ離して配置することによって、より微細かつ細かいパターン精度の導電性線状体120であっても正確に賦形できる。例えば、波形状の導電性線状体120とする場合、波形、振幅、及び波長を従来の製造方法よりも更に細かく設定することができる。
【0126】
ノズル20の先端直径は、導電性線状体の断面視における直径Dの1.5倍以上10倍以下であることが好ましく、1.2倍以上10倍以下であることがより好ましく、1.3倍以上8倍以下であることが更に好ましく、1.4倍以上6倍以下であることがより更に好ましい。ここでいうノズル20の先端直径とは、ノズル20の先端の最大外径をいう。
【0127】
ノズル20の先端直径は、特に限定されないが、導電性線状体120の直径Dに対応する寸法値であることが好ましく、例えば、5μm以上3mm以下であることが好ましく、8μm以上200μm以下であることがより好ましく、12μm以上100μm以下であることが更に好ましい。
【0128】
導電性線状体120の断面視における直径Dに対して、ノズル20の先端直径の下限を上述した範囲に制御することによって、エアー噴出孔23からのエアーの噴出量を十分に確保できるため、より細径の導電性線状体120であっても、導電性材料120aを射出孔22から正確に射出することができ、かつ、粘着層112にしっかりと密着させることができる程度の十分な噴出力を発揮することができる。また、導電性線状体120の断面視における直径Dに対して、ノズル20の先端直径の上限を上述した範囲に制御することによって、エアー噴出孔23から噴出される際のエアーの乱流を効果的に抑制することができるため、粘着層112に射出された導電性線状体120が変形することなく、高い精度で賦形することができる。
【0129】
エアー噴出孔23から噴出されるエアーの吐出圧は、0.1MPa以上10MPa以下であることが好ましく、0.1MPa以上6MPa以下であることがより好ましく、0.1MPa以上5以下であることが更に好ましく、0.2MPa以上1.5MPa以下であることがより更に好ましく、0.3MPa以上1MPa以下であることが一層更に好ましい。エアーの吐出圧をこのような範囲にすることで、エアー噴出孔23からのエアーの噴出量を十分に確保できるため、より細径の導電性線状体120であっても、導電性材料120aを射出孔22から正確に射出することができ、かつ、粘着層112にしっかりと密着させることができる程度の十分な噴出力を発揮することができる。さらに、ノズル20が粘着層112と非接触の状態で導電性材料120aを射出しても、目詰まりや液だれ等が発生することなく、滑らかに導電性材料120aを粘着層112に連続的に繰り出すことができる。その結果、高速で搬送した場合であっても、歩留まり良く、より微細かつ細かいパターン精度の導電性線状体120であっても正確に賦形できる。
【0130】
また、抑えローラー10の回転速度、導電性線状体120の搬送速度、並びに配線部30の移動速度及び移動距離を適宜選択することにより、所望の波形、振幅、及び波長を有する導電性線状体120を粘着層112の表面に形成させることができる。
【0131】
よって、(2)工程は、ノズル20を積層体110の幅方向Xに沿って移動させながら、積層体110の粘着層112の表面上に向けて、導電性材料120aを射出孔22から射出することによって、粘着層112の表面上に波形状の導電性線状体120を形成させることが好ましい(図3図4参照)。ノズル20を積層体110の幅方向Xに往復又は摺動させることにより、波形状の導電性線状体120を粘着層112の表面上に形成することができる。本実施形態によれば、このような複雑な形状であっても、高い製造効率でありながら、微細な形状であっても、高いパターン精度で導電性線状体を形成することができるため、好適である。
【0132】
(2)工程では、例えば、基材111が内側に、粘着層112が外側になるように、抑えローラー10の外周面に積層体110を配置した状態で、抑えローラー10を回転させながら、粘着層112上に導電性材料120aを繰り出すことによって、導電性線状体120を形成する。このとき、配線部30を積層体110の長手方向Y(波の進行方向、搬送における搬送方向)に対して交差する方向(幅方向X参照)に小さい往復運動を繰り返しながら、また、全体として大きな往復運動になるように、所望の形状となるように移動させる。これにより、複合波形状を有する導電性線状体120とすることもできる。
【0133】
その際、往復又は摺動させる周期を、不規則にしたり、小さくしたりしてもよい。このような往復運動又は摺動運動させることによって、導電性線状体120の形状はより複雑な形状となるが、そのような場合であっても、本実施形態によれば、高いパターン精度を維持することができる。
【0134】
導電性線状体120が波形状である場合、ノズル20を有する配線部30は、例えば、形成する導電性線状体120の波形状に合わせて、ノズル20を左右に往復又は摺動させながら、導電性線状体120を射出することが好ましい。その際、ノズルの振幅及び搬送速度は、それぞれ波形状の振幅及び波長に対応するように動かすことが好ましい。
【0135】
このようにして賦形される導電性線状体120の好適な形状としては、例えばサイン波又はそれに近い形状とすることができる。更に好適な形状としては、図1に例示したような、大きいサイン波の中に小さい波形状を有する複合波形状とすることができる。このように本実施形態によれば、微細な波形状であっても高いパターン精度を維持することができる。
【0136】
そして、図示はしないが、上述した(1)工程及び(2)工程の後に、下流側に配置された切断装置によって、導電性構造体100を所定の長さに切断することによって、所望の長手方向Yの長さの導電性構造体100とすることができる。
【0137】
以上説明してきたように、本実施形態に係る製造方法によれば、導電性線状体120を有する導電性構造体100について、高い製造効率でありながら、微細な形状であっても、高いパターン精度で導電性線状体120を形成することができる。
【0138】
このような観点から、導電性構造体100の好適な具体例としては、例えば、導電部材、ヒーター、及びセンサーからなる群より選ばれる少なくとも1つとして用いることが好ましい。例えば、導電性構造体100は、面抵抗が低い導電性線状体120を有するため、ヒーターとして適用することが好適である。ヒーターとして使用する場合、導電性線状体120を発熱体として使用することができる。
【0139】
上述した導電性構造体100をヒーター200として用いる場合を、以下に例示する。
【0140】
図6は、本実施形態における導電性構造体を用いたヒーターの一例を示す斜視図である。
【0141】
ヒーター200は、上述した導電性構造体100の対向する両端部に電極210を取り付けたものである。よって、以下では、電極210を中心に説明する。ヒーター200の寸法形状は特に限定されないが、例えば、シート状ヒーター等として好適に使用することができる。
【0142】
電極210は、導電性線状体120に電流を供給するために用いられる。電極210は、公知の電極材料を用いて形成できる。電極材料としては、導電性ペースト(銀ペースト等)、金属箔(銅箔等)、及び金属ワイヤー等が挙げられる。電極210は、導電性線状体120の両端部に電気的に接続されて配置される。
【0143】
金属箔又は金属ワイヤーの金属としては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等)が挙げられる。また、金属箔又は金属ワイヤーは、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよい。
【0144】
電極210と導電性線状体120の抵抗値の比(電極210の抵抗値/導電性線状体120の抵抗値)は、0.0001以上0.3以下であることが好ましく、0.0005以上0.1以下であることがより好ましい。この抵抗値の比は、「電極210の抵抗値/導電性線状体120の抵抗値」により求めることができる。抵抗値の比をこのような範囲内とすることで、発熱体として用いた場合に電極部分の異常発熱を効果的に抑制することができる。例えば、導電性線状体120のみを発熱させて、発熱効率の良好なヒーター200とすることができる。
【0145】
電極210の抵抗値及び導電性線状体120の抵抗値は、それぞれ、テスターを用いて測定することができる。まず電極210の抵抗値を測定し、電極210を貼付した導電性構造体100の抵抗値を測定する。その後、電極210を貼付した導電性構造体100の抵抗値から電極210の測定値を差し引くことで、電極210及び導電性構造体100それぞれの抵抗値を算出することができる。
【0146】
電極210の厚さは、導電性構造体100の寸法形状等を考慮して適宜好適な厚さとすることができるが、例えば、2μm以上200μm以下であることが好ましく、2μm以上120μm以下であることがより好ましく、10μm以上100μm以下であることが更に好ましい。電極210の厚さをこのような範囲内とすることで、電気伝導率がより高く、より低抵抗にすることができる。また、電極として十分な強度を付与することができる。
【実施例0147】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0148】
<実施例1>
【0149】
まず、基材111として厚さ100μm、幅(長さ)1000mのポリウレタンフィルム上に、アクリル系粘着剤(リンテック社製、商品名「PK」)を厚さ20μmに塗布して粘着層112(弾性率0.1MPa)を形成し、積層体110として粘着シートを作製した。
次に、図3図4に示す構成を有するワイヤー射出装置(リンテック社製)を用意した。なお、この配線部30は、図5に示すノズル20(ノズル20の先端直径=0.4mm、射出孔22の直径=0.1mm)を8体有している。
このワイヤー射出装置の上に、積層体110をセットし、これを搬送速度3m/分で搬送しながら、配線部30を、積層体110の幅方向(矢印F2参照)に沿って搬送時の張力(搬送張力)100N/mで移動させながら金属ワイヤー(材質:タングステン)を射出し、導電性線状体120として8本の金属ワイヤーが等間隔で配置間隔P(図2参照)=1mmとなるように配列した。なお、この際の、ノズル20の先端21から積層体110までの距離Lは0.5mmとした。そして、エアー噴出孔23から噴出されるエアーの吐出圧は、0.5MPaであった。
【0150】
そして、全てのノズル20を積層体110の搬送方向と直交する方向に移動させることによって、導電性構造体100として、シート状導電部材を得た。導電性線状体120である金属ワイヤーは、その断面形状は円形であり、その直径Dは80μmであった。つまり、ノズル20の先端直径は、直径Dの5倍(直径D=80μm、ノズル20の先端直径=0.4mm)であった。
【0151】
積層体110の表面に賦形しようとした目標のパターンの形状は、振幅は10mmに設定し、波長は20mmに設定した。これに対して、実際に得られた導電性線状体120のパターン形状をデジタル顕微鏡によって実測したところ、振幅は9.5mmであり、波長は19.9mmであった。以上のことから、実施例1のパターン精度は、振幅が95%(振幅の実測値/振幅の設定値)であり、波長が99.5%(波長の実測値/波長の設定値)であった。
【0152】
以上より、本実施例によれば、導電性線状体を有する導電性構造体について、高い製造効率でありながら、微細な形状であっても、高いパターン精度で導電性線状体を形成することができることが少なくとも確認された。
【符号の説明】
【0153】
10:抑えローラー
11,12:ガイドローラー
20:ノズル
21:先端
22:射出孔
23:エアー噴出孔
30:配線部
40:ノズル
41:先端
42:射出孔
100:導電性構造体
110:積層体
111:基材
112:粘着層
120:導電性線状体
120a:導電性材料
130:導電性線状体
130a:導電性材料
200:ヒーター
210:電極
X:幅方向、
Y:長手方向
L:距離
D:直径
P:配置間隔
F1,F2,F3:矢印
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8