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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149439
(43)【公開日】2022-10-06
(54)【発明の名称】テールストック
(51)【国際特許分類】
   B23B 23/00 20060101AFI20220929BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B23B23/00 A
B23Q17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051601
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 潤
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 哲也
【テーマコード(参考)】
3C029
3C045
【Fターム(参考)】
3C029BB05
3C045FE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】正確なワーク長を測定することができるテールストックを提供する。
【解決手段】本発明に係るテールストックは、工作機械の主軸に把持されたワークの一端を支持するテールストックであって、テールストック本体10に装着されたシリンダ11と、シリンダ内に往復移動可能に嵌挿されたピストン12と、ピストンに連結されたピストンロッド13A、13Bと、ピストンロッド13A、13Bの端部に連結され、ワークを支持するセンタ14とを備え、ピストンロッド13A、13Bの軸上に、測長ゲージ16、及び測長ゲージ16の目盛りを読み取る検出器18が装着されており、測長ゲージ16及び検出器18の一方が、ピストンロッド13A、13Bの軸方向Jに、ピストンロッド13A、13Bと一体に往復移動し、測長ゲージ16及び検出器18の他方が、テールストック本体10に固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の主軸に把持されたワークの一端を支持するテールストックであって、
テールストック本体に装着されたシリンダと、
前記シリンダ内に往復移動可能に嵌挿されたピストンと、
前記ピストンに連結されたピストンロッドと、
前記ピストンロッドの端部に連結され、前記ワークを支持するセンタと
を備え、
前記ピストンロッドの軸上に、測長ゲージ、及び該測長ゲージの目盛りを読み取る検出器が装着されており、
前記測長ゲージ及び前記検出器の一方が、前記ピストンロッドの軸方向に、前記ピストンロッドと一体に往復移動し、前記測長ゲージ及び前記検出器の他方が、前記テールストック本体に固定されている、テールストック。
【請求項2】
前記測長ゲージは、前記ピストンロッドに装着され、
前記検出器は、前記テールストック本体に装着された固定部に固定されている、請求項1に記載のテールストック。
【請求項3】
前記ピストンロッドは、前記ピストンの前記ワーク側に連結された前方ロッドと、前記ピストンの前記ワーク側と反対側に連結された後方ロッドとからなり、
前記測長ゲージは、前記後方ロッドの端部に装着されている、請求項2に記載のテールストック。
【請求項4】
前記ピストン及び前記ピストンロッドは、該ピストンロッドの軸上に、前記ピストンを貫通し、前記ピストンロッド内部に延びる溝が形成されており、
前記測長ゲージは、前記溝内において、前記ピストンロッドに装着されており、
前記固定部は、前記溝内に挿入された軸部を有し、
前記軸部には、前記測長ゲージが往復移動可能な貫通孔が形成されており、
前記検出器は、前記軸部における前記センタ側に位置する部位に固定されている、請求項2に記載のテールストック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸に把持されたワークの一端を支持するテールストックに関する。
【背景技術】
【0002】
テールストック(心押台)は、例えば、図4に示すように、ワークの一端を支持するセンタ(心押軸)140と、センタ140を工作機械の主軸方向に移動制御するシリンダ110とを備えている。シリンダ110内のピストン120には、ピストンロッド130が連結され、ピストンロッド130の端部にセンタ140が連結されている。ピストン120を工作機械の主軸方向に移動させることによって、センタ140も主軸方向に移動し、センタ140がワークの一端を押圧することにより、ワークが支持される。
【0003】
特許文献1には、テールストックにおいて、ワークを支持したときのセンタの停止位置を検出する検出機構が記載されている。
【0004】
特許文献1に記載された検出機構では、図4に示すように、テールストック本体100が固定された基台150の側面に、軸受け190、190を介して駆動ロッド161が取り付けられている。駆動ロッド161は、取付板160を介して、センタ140に連結されている。駆動ロッド161には、支持ステー162が連結されており、支持ステー162の端部には、検出器170が固定されている。
【0005】
駆動ロッド161は、センタ140と一体に軸方向に移動し、これに連動して、駆動ロッド161に固定された検出器170も軸方向に移動する。一方、テールストック本体100を載置するテーブル(不図示)上には、スケール180がセンタ140の移動方向に沿って設置されている。これにより、取付板160、駆動ロッド161、及び支持ステー162を介してセンタ140に連結された検出器170は、スケール180に沿って移動し、検出器170で、スケールの目盛りを読み取ることによって、ワークを支持したときのセンタ140の停止位置が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-114703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
センタ140でワークを突いた際、センタ140には、ワークから荷重モーメントが加わる。そのため、図5に示すように、荷重モーメントを受けたセンタ140を支持するテールストック本体100が撓むことにより、ピストンロッド130及びセンタ140の軸方向J(以下、単に「ピストンロッド130の軸方向J」という)が、テールストック本体100を載置するテーブル上に設置されたスケール180に対して傾くおそれがある。また、センタ140の突き出し量によって、センタ140の剛性が変わるため、ピストンロッド130の軸方向Jの傾き量も変化する。このような荷重モーメントの影響は、テールストック本体100がテーブルに固定されている場合に特に受けやすくなる。
【0008】
図5に示すように、ピストンロッド130の軸方向Jが傾くと、取付板160を介してセンタ140に固定されている駆動ロッド161も同じように傾き、さらに、検出器170が固定された支持ステー162も同じように傾くことになる。
【0009】
図6は、荷重モーメントの影響を受けて、ピストンロッド130の軸方向Jが傾いた場合と、傾かなかった場合との違いを示した図である。図6において、符号140、162、170で示した位置が、ピストンロッド130の軸方向Jが傾いた場合のセンタ、支持ステー、及び検出器の位置を示し、符号140’、162’、170’で示した位置が、ピストンロッド130軸方向Jが傾いていない場合のセンタ、支持ステー、及び検出器の位置を示す。
【0010】
図6に示すように、ピストンロッド130の軸方向Jが傾いた場合、検出器170が固定された支持ステー162も傾いているため、スケール180に対する検出器170の位置は、ピストンロッド130の軸方向Jが傾かなかった場合の検出器170’の位置と、距離Dだけずれている。そのため、センタ140でワークを突いたときのセンタ140の停止位置を検出器170で測定したとき、ピストンロッド130の軸方向Jが傾いた場合と、傾いていない場合とで、測定結果が異なるという問題が生じる。
【0011】
その結果、正確なワーク長を測定することができず、精度よくワーク長の正誤判断を行うことができなくなる。また、センタ140の突き出し量によって、ピストンロッド130の軸方向Jの傾き量も変わるため、異なる長さのワークに対して、ワーク長の測定誤差が生じることになる。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、その主な目的は、荷重モーメントの影響を受けることなく、正確なワーク長を測定することができるテールストックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るテールストックは、工作機械の主軸に把持されたワークの一端を支持するテールストックであって、テールストック本体に装着されたシリンダと、シリンダ内に往復移動可能に嵌挿されたピストンと、ピストンに連結されたピストンロッドと、ピストンロッドの端部に連結され、ワークを支持するセンタとを備え、ピストンロッドの軸上に、測長ゲージ、及び測長ゲージの目盛りを読み取る検出器が装着されており、測長ゲージ及び検出器の一方が、ピストンロッドの軸方向に、ピストンロッドと一体に往復移動し、測長ゲージ及び検出器の他方が、テールストック本体に固定されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、荷重モーメントの影響を受けることなく、正確なワーク長を測定することができるテールストックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態におけるテールストックの構成を模式的に示した断面図である。
図2】ピストンがワーク方向に移動してセンタでワークを突いた際に、ワークから荷重モーメントを受けて、ピストンロッドの軸方向が傾いた状態を示した図である。
図3】本発明の変形例におけるテールストックの構成を模式的に示した断面図である。
図4】従来のセンタの停止位置を検出する検出機構を備えたテールストックの構成を示した図である。
図5】荷重モーメントを受けた際、ピストンロッドの軸方向がスケールに対して傾いた状態を示した図である。
図6】荷重モーメントの影響を受けて、ピストンロッドの軸方向が傾いた場合と、傾かなかった場合との違いを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態におけるテールストックの構成を模式的に示した断面図である。本実施形態におけるテールストックは、工作機械の主軸に把持されたワークの一端を支持するもので、工作機械を載置するテーブル30に、ボルト40等で固定された状態で使用される。
【0018】
図1に示すように、本実施形態におけるテールストックは、テールストック本体10にシリンダ11が装着され、シリンダ11内には、ピストンロッドが連結されたピストン12が、往復移動可能に嵌挿されている。
【0019】
本実施形態におけるピストンロッドは、ピストン12のワーク側(図1の右側)に連結された前方ロッド13Aと、ワーク側と反対側(図1の左側)に連結された後方ロッド13B(両ロッド)からなる。ここで、シリンダ11は、例えば、空圧または油圧シリンダを用いることができる。
【0020】
前方ロッド13Aの端部には、ワークを支持するセンタ14が連結されている。また、後方ロッド13Bの端部には、前方及び後方ロッド13A、13Bと一体に往復移動する測長ゲージ16が、前方及び後方ロッド13A、13Bの軸J上に装着されている。ここで、測長ゲージ16は、少なくともピストン12のストローク長以上の長さを有していればよい。
【0021】
テールストック本体10には、カバー(固定部)17が装着されており、カバー17の側面には、測長ゲージ16の目盛りを読み取る検出器18が、前方及び後方ロッド13A、13Bの軸J上に固定されている。
【0022】
本実施形態において、測長ゲージ16及び検出器18は、前方及び後方ロッド13A、13Bの同軸上に配置されている。そして、測長ゲージ16は、前方及び後方ロッド13A、13Bと一体に軸方向Jに移動するのに対し、検出器18は、カバー17を介してテールストック本体10に固定されている。
【0023】
図2は、ピストン12がワーク方向(図2の右方向)に移動して、センタ14でワークを突いた際に、ワークから荷重モーメントを受けて、前方及び後方ロッド13A、13Bの軸方向Jが傾いた状態を示した図である。なお、テールストックは、テールストック本体10の一部である基台15を、工作機械を載置するテーブル30に固定した状態で使用されるため、ワークからの荷重モーメントの影響を受けやすい構造になっている。
【0024】
図2に示すように、測長ゲージ16及び検出器18は、前方及び後方ロッド13A、13Bの同軸上に配置されているため、測長ゲージ16に対する検出器18の位置は、前方及び後方ロッド13A、13Bの軸方向Jが傾いた場合と、傾いていない場合とで変わらない。そのため、センタ14でワークを突いたときのセンタ14の停止位置を検出器18で測定したとき、前方及び後方ロッド13A、13Bの軸方向Jが傾いた場合と、傾いていない場合とで、測定結果が異なることはない。その結果、荷重モーメントの影響を受けることなく、正確なワーク長を測定することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、測長ゲージ16及び検出器18は、前方及び後方ロッド13A、13Bの同軸上に配置されるが、前方及び後方ロッド13A、13Bの軸方向Jが傾いた場合でも、測長ゲージ16に対する検出器18の位置がずれない範囲であれば、測長ゲージ16及び検出器18は、必ずしも一直線上に配置されていなくてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、検出器18を、テールストック本体10に装着されたカバー17に固定したが、検出器18を固定する固定部としてはこれに限らず、テールストック本体10自体、あるいは、テールストック本体10に装着された部材であれば、どのような形態のものであってもよい。
【0027】
(変形例)
図3は、本発明の変形例におけるテールストックの構成を模式的に示した断面図である。
【0028】
図3に示すように、本変形例におけるテールストックは、テールストック本体10にシリンダ11が装着され、シリンダ11内には、ピストンロッド13が連結されたピストン12が、往復移動可能に嵌挿されている。本変形例では、ピストンロッド13は、ピストン12のワーク側(図3の右側)にのみ連結(片ロッド)されている。ピストンロッド13の端部には、ワークを支持するセンタ14が連結されている。
【0029】
ピストン12及びピストンロッド13は、ピストンロッド13の軸J上に、ピストン12を貫通し、ピストンロッド13の内部に延びる溝20が形成されている。測長ゲージ16は、溝20内において、ピストンロッド13に装着されている。
【0030】
シリンダ11には、カバー(固定部)17が装着されており、カバー17は、溝20内に挿入された軸部17aを有している。また、軸部17aには、測長ゲージ16が往復移動可能な貫通孔が形成されている。検出器18は、軸部17aにおけるセンタ14側に位置する部位に固定されている。なお、カバー17には、検出器18からの信号線を取り出すための孔が形成されている。
【0031】
本変形例において、測長ゲージ16及び検出器18は、ピストンロッド13の同軸上に配置されている。そして、測長ゲージ16は、ピストンロッド13と一体に軸方向Jに移動するのに対し、検出器18は、カバー17及びシリンダ11を介してテールストック本体10に固定されている。
【0032】
本変形例においても、測長ゲージ16及び検出器18は、ピストンロッド13の同軸上に配置されているため、測長ゲージ16に対する検出器18の位置は、ピストンロッド13の軸方向Jが傾いた場合と、傾いていない場合とで変わらない。そのため、センタ14でワークを突いたときのセンタ14の停止位置を検出器18で測定したとき、ピストンロッド13の軸方向Jが傾いた場合と、傾いていない場合とで、測定結果が異なることはない。その結果、荷重モーメントの影響を受けることなく、正確なワーク長を測定することができる。
【0033】
また、本変形例では、ピストンロッド13が、ピストン12のワーク側にのみ連結(片ロッド)されているので、上記実施形態における両ロッドに比べて、テールストックの軸方向Jの長さを短縮することができる。
【0034】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、後方ロッド13Bの端部に、測長ゲージ16を装着したが、上記変形例と同様に、後方ロッド13Bの内部に溝を形成し、溝内において、測長ゲージ16を後方ロッド13に装着してもよい。この場合、カバー17にも、上記変形例と同様に、溝内に挿入される軸部を形成し、検出器18を、軸部におけるセンタ14側に位置する部位に固定すればよい。
【0035】
また、上記実施形態では、測長ゲージ16をピストンロッド13に装着して、ピストンロッド13と一体に往復移動するようにし、検出器18を、テールストック本体10に装着されたカバー(固定部)17に固定したが、検出器18を、ピストンロッド13に装着して、ピストンロッド13と一体に往復移動するようにし、測長ゲージ16を、テールストック本体10に装着されたカバー(固定部)17に固定してもよい。この場合、ピストンロッド13内に、ピストン12のストローク長以上の長さの溝を形成し、測長ゲージ16を、この溝内に挿入された状態で、テールストック本体10に固定しておけばよい。
【符号の説明】
【0036】
10 テールストック本体
11 シリンダ
12 ピストン
13 ピストンロッド
13A 前方ロッド
13B 後方ロッド
14 センタ
16 測長ゲージ
17 カバー (固定部)
17a 軸部
18 検出器
20 溝
30 テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6