IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社北川鉄工所の特許一覧

特開2022-149460ワーク加工装置及びワーク加工システム並びにワーク加工方法
<>
  • 特開-ワーク加工装置及びワーク加工システム並びにワーク加工方法 図1
  • 特開-ワーク加工装置及びワーク加工システム並びにワーク加工方法 図2
  • 特開-ワーク加工装置及びワーク加工システム並びにワーク加工方法 図3
  • 特開-ワーク加工装置及びワーク加工システム並びにワーク加工方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149460
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ワーク加工装置及びワーク加工システム並びにワーク加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20220929BHJP
   B23Q 7/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23Q7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051632
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】三島 淳司
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂
【テーマコード(参考)】
3C011
3C033
【Fターム(参考)】
3C011BB03
3C033HH05
3C033HH22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ティーチング等を要することなく、ワークの切粉を効率よく回収することができるワーク加工装置を提供する。
【解決手段】ワーク加工装置10を、ワークWを加工するワーク加工部11と、ワーク加工部11をワーク加工用の経路データに従って三次元的に移動させるワーク加工用移動手段12と、ワークWの加工により発生する切粉を吸引により回収する切粉吸引部13と、切粉吸引部13を切粉吸引用の経路データに従って三次元的に移動させる切粉吸引用移動手段14とを備えたものとし、切粉吸引用の経路データとして、ワーク加工用の経路データを所定の距離だけオフセットしたものを用い、ワークWの加工時に切粉吸引部13がワーク加工部11に追従しながら切粉を吸引するようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工するワーク加工部と、
ワーク加工部をワーク加工用の経路データに従って三次元的に移動させるワーク加工用移動手段と、
ワークの加工により発生する切粉を吸引する切粉吸引部と、
切粉吸引部を切粉吸引用の経路データに従って三次元的に移動させる切粉吸引用移動手段と
を備え、
切粉吸引用の経路データとして、ワーク加工用の経路データを所定の距離だけオフセットしたものが用いられ、
ワークの加工時に切粉吸引部がワーク加工部に追従しながら切粉を吸引するようにした
ことを特徴とするワーク加工装置。
【請求項2】
切粉吸引用移動手段が、多関節ロボット又はガントリーローダーとされた
請求項1記載のワーク加工装置。
【請求項3】
切粉吸引用移動手段が、それに取り付けられた切粉吸引部を、ワークを把持可能なワーク把持部に切り替え可能なものとされ、
切粉吸引部から切り替えたワーク把持部にワークを把持させて切粉吸引用移動手段を動作させることにより、ワークの向きを変える、又は、ワークの搬入若しくは搬出をすることができるようにした
請求項1又は2記載のワーク加工装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか記載のワーク加工装置と、
ワーク加工装置が利用するワーク加工用の経路データと切粉吸引用の経路データとを、ワークの三次元形状データに基づいて生成するCAM装置と
を備えたワーク加工システム。
【請求項5】
請求項1~3いずれか記載のワーク加工装置を用いてワークを加工するワークの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに切削等の加工を施すワーク加工装置と、これを用いたワーク加工システムとワーク加工方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
マシニングセンタ等のワーク加工装置では、ワークを加工する際に、ワークの切粉が生ずる。この切粉がワークやその周辺に堆積すると、ワークの加工精度が低下するだけでなく、ワーク加工装置の故障を招くおそれがある。加えて、木製のワークは、クーラントを用いない環境で加工(ドライ加工)されるため、その加工時に切粉が舞いやすく、周辺環境の悪化を招くおそれもある。このような実状に鑑みて、これまでには、ワークの切粉を回収するための機構をワーク加工装置に組み込むことが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、工作機械に組み込み可能な切粉清掃装置(同文献の請求項2)であって、切粉を吸引するためのノズルを先端に有する清掃ロボット(同文献の請求項1)を備えたものが開示されている。特許文献1の切粉清掃装置において、清掃ロボットは、清掃動作情報記憶部に記憶された清掃動作情報に基づいて制御される。特許文献1には、上記の清掃動作情報として、ティーチング手段を使用して求めたティーチングデータや、画像処理によって得られた画像処理データを用いること(同文献の段落0033)が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、ワークを固定する加工テーブル上に堆積した切粉を回収するための切粉回収ハンドを備えたロボットと、加工テーブル上に堆積する切粉の堆積量及び堆積領域を取得するための視覚センサとを備えた加工機システム(同文献の請求項1及び請求項3)が開示されている。特許文献2の加工機システムでは、取得された切粉の堆積量から、切粉の回収が必要であると判定された場合に、切粉回収ハンドを動作させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-322049号公報
【特許文献2】特開2016-168661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の切粉清掃装置では、清掃ロボットを制御する清掃動作情報を生成するために、ティーチングや画像処理を行う必要がある。このため、その清掃動作情報の生成に時間を要し、生産性を高めにくいという欠点がある。
【0007】
また、特許文献2のワーク加工機システムでは、切粉の回収効率を高めようとすると、精度の高い視覚センサを用いる必要や、複数台の視覚センサを用いる必要がある。このため、コストが高くなるという欠点がある。加えて、特許文献2のワーク加工機システムにおいて、切粉は、切粉回収ハンドに把持動作や掬い上げ動作をさせることによって回収(同文献の段落0029)される。このため、細かい切粉の回収をしにくいという欠点もある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、ティーチング等を要することなく、ワークの切粉を効率よく回収することができるワーク加工装置を提供するものである。また、高価な視覚センサを用いなくても切粉を回収することができるワーク加工装置を提供することも本発明の目的である。さらに、細かい切粉を効率的に回収することができるワーク加工装置を提供することも本発明の目的である。加えて、このワーク加工装置を用いたワーク加工システムやワーク加工方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、
ワークを加工するワーク加工部と、
ワーク加工部をワーク加工用の経路データに従って三次元的に移動させるワーク加工用移動手段と、
ワークの加工により発生する切粉を吸引する切粉吸引部と、
切粉吸引部を切粉吸引用の経路データに従って三次元的に移動させる切粉吸引用移動手段と
を備え、
切粉吸引用の経路データとして、ワーク加工用の経路データを所定の距離だけオフセットしたものが用いられ、
ワークの加工時に切粉吸引部がワーク加工部に追従しながら切粉を吸引するようにした
ことを特徴とするワーク加工装置
を提供することによって解決される。
【0010】
本発明のワーク加工装置では、ワーク加工用の経路データをオフセットすることで切粉吸引用の経路データを得るようにしている。このオフセット処理は、ティーチング等の操作を要さず、コンピュータで自動的に行うことができる。また、切粉吸引部がワーク加工部に追従しながら切粉を吸引するため、高価な視覚センサ等を用いなくても、切粉を効率よく回収することができる。さらに、吸引により切粉を回収するため、細かな切粉でも効率的に回収することができる。
【0011】
本発明のワーク加工装置において、切粉吸引用移動手段は、切粉吸引部を三次元的に移動できるものであれば、その種類を特に限定されない。このような切粉吸引用移動手段としては、多関節ロボットやガントリーローダーが例示される。
【0012】
本発明のワーク加工装置においては、切粉吸引用移動手段が、それに取り付けられた切粉吸引部を、ワークを把持可能なワーク把持部に切り替え可能なものとされ、切粉吸引部から切り替えたワーク把持部にワークを把持させて切粉吸引用移動手段を動作させることにより、ワークの向きを変える、又は、ワークの搬入若しくは搬出をできるようにすることも好ましい。これにより、切粉吸引用移動手段を、ワークの向きを変える手段(ワーク変向用移動手段)としても利用することができる。
【0013】
また、上記課題は、上記のワーク加工装置と、このワーク加工装置が利用するワーク加工用の経路データと切粉吸引用の経路データとを、ワークの三次元形状データに基づいて生成するCAM装置とを備えたワーク加工システムを提供することによっても解決される。さらに、上記課題は、上記のワーク加工装置を用いてワークを加工するワークの加工方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、ティーチング等を要することなく、ワークの切粉を効率よく回収することができるワーク加工装置を提供することが可能になる。また、高価な視覚センサを用いなくても切粉を回収することができるワーク加工装置を提供することも可能になる。さらに、細かい切粉を効率的に回収することができるワーク加工装置を提供することも可能になる。加えて、このワーク加工装置を用いたワーク加工システムやワーク加工方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のワーク加工装置の正面図である。
図2】本発明のワーク加工装置の側面図である。
図3】ワーク加工時のワーク加工部と切粉吸引部とを、(a)上側から見た状態と、(b)側方から見た状態とをそれぞれ示した図である。
図4】本発明のワーク加工装置を用いたワーク加工システムを示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のワーク加工装置について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる構成は、飽くまで好適な実施形態に過ぎず、本発明のワーク加工装置の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明のワーク加工装置には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0017】
図1は、本発明のワーク加工装置10の正面図であり、図2は、本発明のワーク加工装置10の側面図である。図1及び図2には、x軸、y軸及びz軸からなる直交座標を表わしている。これらの直交座標の向きは、図1図2、及び、後掲する図3で共通している。以下においては、説明の便宜上、x軸方向正側を「右」側と呼び、x軸方向負側を「左」側と呼び、y軸方向正側を「後」側と呼び、y軸方向負側を「前」側と呼び、z軸方向正側を「上」側と呼び、z軸方向負側を「下」側と呼ぶことがある。
【0018】
本発明のワーク加工装置10は、図1及び図2に示すように、ワークWを加工するためのワーク加工部11と、ワーク加工部11を三次元的(x軸方向、y軸方向及びz軸方向)に移動させるワーク加工用移動手段12と、ワークWの加工により発生する切粉を吸引により回収する切粉吸引部13と、切粉吸引部13を三次元的(x軸方向、y軸方向及びz軸方向)に移動させる切粉吸引用移動手段14とを備えている。
【0019】
ワーク加工装置10は、床面に設置されるベース15を有しており、このベース15には、ワークWを保持するためのワーク保持手段16が設けられている。ワーク保持手段16は、ワークWの加工時にワークWを安定して保持できるものであれば、その構造を特に限定されない。本実施形態においては、図2に示すように、ワーク保持手段16として、下爪16aと上爪16bとでワークWを挟持するクランプ装置を採用している。このクランプ装置(ワーク保持手段16)は、図1に示すように、左右方向(x軸方向)に所定間隔を隔てた複数個所(同図の例では3箇所)に設けられている。
【0020】
ワークWの種類は、加工対象の製品の種類等に応じて適宜決定される。ワークWとしては、木材や、金属材や、樹脂材等が例示される。後述するように、本発明のワーク加工装置10は、ワークWを加工した際の切粉の回収方法に特徴を有するものであるところ、木材を加工(切削等)する際には、細かくて軽い切粉が大量に発生するため、切粉が飛散しやすい。このため、本発明のワーク加工装置10は、木材を加工するものとして好適である。本実施形態において、ワークWは、板状の木材(木板)となっており、ワーク加工装置10は、この板の縁部を所定の曲線状に加工するものとなっている。
【0021】
ワーク加工部11は、ワークWに所定の加工を行うことができるものであればよい。ワーク加工部11としては、エンドミルやドリルや回転鋸刃等の切削工具が例示される。本実施形態においては、ワーク加工部11として、エンドミルを用いている。ワーク加工部11は、ワーク加工用移動手段12の作動端に対して着脱可能な状態で装着される。このため、ワークWの種類や加工態様等に応じて、ワーク加工部11の種類を切り替えることが可能である。
【0022】
ワーク加工用移動手段12は、ワーク加工部11を、ワークWに対して相対的にx軸方向、y軸方向及びz軸方向に移動できるものであればよい。本実施形態においては、ワーク加工用移動手段12を門型マシニングセンタとしている。
【0023】
具体的には、図2に示すように、ワーク加工用移動手段12を、ワークWの走行台12aと、門型構造材の梁部分に設けられたスライダー12bと、スライダー12bに取り付けられた上下動機構12cと、上下動機構12cに取り付けられた回動機構12dとで構成している。走行台12aは、ワークWを左右方向(x軸方向)に移動させるものとなっており、スライダー12bは、走行台12aの梁部分に対して前後方向(y軸方向)に移動可能となっており、上下動機構12cは、上下方向(z軸方向)に伸縮可能となっている。回動機構12dは、図1に示す鉛直軸L及び水平軸Lを中心として回動可能となっている。このため、ワーク加工部11をワークWに対して相対的にx軸方向、y軸方向及びz軸方向に移動できだけでなく、ワーク加工部11の向きを制御することも可能となっている。
【0024】
切粉吸引部13は、通常、ノズルとされる。このノズル(切粉吸引部13)は、可撓管(コルゲートチューブ等)からなるダクト(図示省略)を介して吸引ポンプ(図示省略)と回収タンク(図示省略)に接続される。ノズル(切粉吸引部13)に吸引された切粉は、ダクト内を通って回収タンクに移送される。本実施形態において、切粉吸引部13は、切粉吸引用移動手段14の作動端に対して着脱可能な状態で装着されている。このため、ワークWの加工態様等に応じて、切粉吸引部13の種類を切り替えることができる。
【0025】
切粉吸引用移動手段14は、切粉吸引部13を、x軸方向、y軸方向及びz軸方向に移動できるものであればよい。切粉吸引用移動手段14としては、ガントリーローダーを用いることもできる。しかし、切粉吸引用移動手段14をガントリーローダーとすると、ワーク加工用移動手段12と切粉吸引用移動手段14の干渉を避けにくくなる。このため、本実施形態においては、切粉吸引用移動手段14を多関節ロボットとしている。多関節ロボットは、ガントリーローダーよりも小回りが利きやすいため、ワーク加工用移動手段12との干渉を避けながら、切粉吸引部13を適切な場所に移動させることができる。
【0026】
多関節ロボットとしては、主に、4~7軸のものが知られているが、切粉吸引用移動手段14としては、6軸以上のものが好適である。6軸の多関節ロボットとしては、それを人間の身体に例えた場合に、腰の回転動作に相当する「S軸」回りの回転と、上体を前後に動かす動作に相当する「L軸」回りの回転と、腕を上下に動かす動作に相当する「U軸」回りの回転と、腕の回転動作に相当する「R軸」回りの回転と、腕の先を上下に動かす動作に相当する「B軸」回りの回転と、腕先の回転動作に相当する「T軸」回りの回転とを行うものが例示される。また、7軸の多関節ロボットとしては、上記の6軸(S軸、L軸、U軸、R軸、B軸及びT軸)に加えて、腕を捩じる動作に相当する「E軸」回りの回転を追加したものが例示される。多関節ロボットの軸数を増やすことによって、多関節ロボットがより高い自由度で動作できるようになる。
【0027】
この切粉吸引用移動手段14を制御することによって、図3に示すように、ワークWの加工時において、切粉吸引部13がワーク加工部11に追従しながら切粉Cを吸引する。図3は、ワーク加工時におけるワーク加工部11と切粉吸引部13とを示した図であって、図3(a)は、ワーク加工部11及び切粉吸引部13を上側(z軸方向正側)から見た状態を、図3(b)は、ワーク加工部11及び切粉吸引部13を側方(y軸方向正側)から見た状態を、それぞれ示している。
【0028】
図3に示すように、切粉吸引部13は、ワーク加工部12の進行方向後側に所定の間隔を隔てた箇所に位置される。換言すると、ワーク加工部12が位置する点P(その座標を(x,y,z)とする。)から、所定の距離(x軸方向に距離δx、y軸方向に距離δy、z軸方向に距離δz)だけオフセットした点P(x-δx,y-δy,z-δz)に、切粉吸引部13が位置するように制御を行っている。切粉吸引部13の吸引口は、常にワーク加工部12に向けられている。これにより、ワーク加工部12による加工で生じたワークWの切粉Cを切粉吸引部13でそのまま吸引し、切粉CがワークWの周辺に堆積しないようにすることができる。
【0029】
このように、本発明のワーク加工装置10では、切粉吸引部13をワーク加工部11に追従させながら切粉Cを吸引するところ、以下のような制御を行うことで、その追従動作を実現している。すなわち、本発明のワーク加工装置10では、図4に示すように、ワーク加工用移動手段12を、ワーク加工用の経路データDに基づいて制御し、切粉吸引用移動手段14を、切粉吸引用の経路データDに基づいて制御するとともに、切粉吸引用の経路データDとして、ワーク加工用の経路データDを所定の距離だけオフセットしたものを用いている。図4は、本発明のワーク加工装置10を用いたワーク加工システムを示したブロック図である。
【0030】
ワーク加工用の経路データDや、切粉吸引用の経路データDの生成方法は、特に限定されない。本実施形態においては、図4に示すように、ワーク加工装置10の前段にCAM装置20を設けており、このCAM措置20によって、ワーク加工用の経路データD及び切粉吸引用の経路データDをコンピュータ上で自動的に生成するようにしている。これにより、ワーク加工用の経路データDや切粉吸引用の経路データDを生成する手間を軽減することができる。CAM装置20は、ワーク加工用経路データ生成手段21と、ワーク加工用プログラム生成手段22と、切粉吸引用経路データ生成手段23と、切粉吸引用プログラム生成手段24とを備えている。これらの生成手段21,22,23,24は、通常、CAM装置20(コンピュータ)にプログラムとして実装される。
【0031】
ワーク加工用経路データ生成手段21は、ワークWの三次元形状データDを受け取り、三次元形状データDで定義されるワークWの形状と、ワーク加工部11の形状とを照らし合わせるとともに、その三次元形状データDで定義される形状のようにワークWを加工するためには、ワークWに対してワーク加工部11をどのように移動させればよいのか(ワーク加工部11の経路)について自動的に演算する。このため、ワーク加工用経路データ生成手段21には、ワーク加工部11の形状等に関するデータも予め記憶されている。
【0032】
上記の演算結果は、ワーク加工用の経路データDとして、ワーク加工用経路データ生成手段21から出力される。ワーク加工部11のとり得る経路として複数パターンが存在する場合には、そのうち最も効率的にワークWを加工することができる経路(例えば、ワーク加工部11の移動距離が最短となる経路)が、ワーク加工用経路データ生成手段21によって自動的に選択される。
【0033】
ワーク加工用経路データ生成手段21が生成するワーク加工用の経路データDは、ワーク加工部11の位置(図3における点Pの三次元座標)の時系列パラメータのほか、ワーク加工部11の回転速度や向き等のパラメータも含んでいる。このワーク加工用の経路データDは、コンピュータが扱えるデジタルデータとして表現されている。ワーク加工用の経路データDは、例えば、「JIS 6315-2」で規格化されているGコードやMコード等の形で表現される。
【0034】
また、ワーク加工用経路データ生成手段21に入力されるワークWの三次元形状データDも、CAM装置20等のコンピュータが扱えるように、デジタルデータとして表現されたものが用いられる。本実施形態においては、三次元形状データDとして、三次元CADから出力されたParasоlidデータを、三次元形状データDとして用いている。
【0035】
ワーク加工用経路データ生成手段21から出力されたワーク加工用の経路データDは、ワーク加工用プログラム生成手段22に入力される。このワーク加工用プログラム生成手段22によって、ワーク加工用の経路データDがワーク加工用のプログラムPに変換される。ワーク加工用プログラム生成手段22から出力されたワーク加工用のプログラムPは、ワーク加工装置10におけるワーク加工用移動手段12の制御部に入力される。ワーク加工用移動手段12は、このワーク加工用のプログラムPに基づいて、ワーク加工部11を所定の経路に従って移動させる。これにより、ワークWが目的の三次元形状へと加工される。
【0036】
ワーク加工用経路データ生成手段21から出力されたワーク加工用の経路データDは、ワーク加工用プログラム生成手段22だけでなく、切粉吸引用経路データ生成手段23にも入力される。切粉吸引用経路データ生成手段23は、受け取ったワーク加工用の経路データDを構成する座標パラメータを所定の距離(上記の距離δx,δy,δz)だけオフセットし、これを切粉吸引用の経路データDとして出力する。ワーク加工用の経路データDを単純にオフセットしただけでは、切粉吸引部13がワークW等に干渉する場合には、それが干渉しないように、オフセットする距離δx,δy,δzを自動的に調整する。このため、切粉吸引用経路データ生成手段23には、切粉吸引部13の形状やワークWの形状に関するデータも予め記憶されている。
【0037】
切粉吸引用経路データ生成手段23が生成する切粉吸引用の経路データDは、切粉吸引部13の位置(図3における点Pの三次元座標)の時系列パラメータのほか、切粉吸引部13の向き等のパラメータも含んでいる。この切粉吸引用の経路データDは、上述したワーク加工用の経路データDと同様、デジタルデータとして表現され、例えば、「JIS 6315-2」で規格化されているGコードやMコード等の形で表現される。
【0038】
切粉吸引用経路データ生成手段23から出力された切粉吸引用の経路データDは、切粉吸引用プログラム生成手段24に入力される。この切粉吸引用プログラム生成手段24によって、切粉吸引用の経路データDが切粉吸引用のプログラムPに変換される。切粉吸引用プログラム生成手段24から出力された切粉吸引用のプログラムPは、ワーク加工装置10における切粉吸引用移動手段14の制御部に入力される。切粉吸引用移動手段14は、この切粉吸引用のプログラムPに基づいて、切粉吸引部13を所定の経路に従って移動させる。これにより、切粉吸引部13をワーク加工部11に追従させながら、ワークWの切粉Cを吸引することが可能になる。
【0039】
以上のように、本発明のワーク加工装置10では、ワーク加工用の経路データDをオフセットした切粉吸引用の経路データDに基づいて、切粉吸引用移動手段14を制御する。このため、切粉吸引用移動手段14を動作させるためにティーチング等を実行する必要がない。また、切粉Cを検知するために高価な視覚センサ等を用いる必要もない。加えて、切粉吸引用の経路データDは、ワークWの三次元形状データDをCAM装置20に入力すると自動的に生成される。このため、切粉吸引用の経路データDの生成に特別な手間を要しない。したがって、ワークWを用いた製品の生産性を高めることもできる。
【0040】
ところで、本実施形態においては、既に述べたように、ワーク加工部11としてエンドミルを用いたところ、このエンドミルのように、回転しながらワークWの切削を行うワーク加工部11を用いる場合には、ワークWをダウンカットすることが好ましい。すなわち、エンドミル等の回転切削具(ワーク加工部11)を用いた切削加工には、回転切削具(ワーク加工部11)の回転方向とワークWに対する回転切削具(ワーク加工部11)の進行方向とが同じ向きになる「アップカット」と、逆の向きになる「ダウンカット」とがあるところ、このうち、ダウンカットを採用するとよい。
【0041】
というのも、アップカットでは、ワークWの切粉Cが回転切削具(ワーク加工部11)の進行方向前方に飛散するため、回転切削具(ワーク加工部11)の進行方向後方を追従する切粉吸引部13では、その切粉Cを吸引しにくいのに対して、ダウンカットでは、図3に示すように、ワークWの切粉Cが回転切削具(ワーク加工部11)の進行方向後方に飛散するため、回転切削具(ワーク加工部11)の進行方向後方を追従する切粉吸引部13で、その切粉Cを吸引しやすくなるからである。
【0042】
また、図3(a)に示すように、ワークWの両側の側縁(x軸方向に略平行な方向に沿った一対の側縁)を曲線状に加工する場合等、ワークWの両側の側縁に加工を施す場合には、一方の側縁に加工を施した後、他方の側縁に加工を施すようになる。この場合には、ワークWの他方の側縁を保持していたワーク保持手段16を解除して、ワークWの向きを反転(ワークWを図3(a)のx軸に平行な軸回りに180°回転)し、既に加工を終えた方の側縁(前記一方の側縁)をワーク保持手段16で保持しなおせばよい。これにより、ワーク保持手段16の位置等を大きく変えることなく、ワークWの他方の側縁をワーク加工部11で加工することが可能な状態となる。
【0043】
ただし、ワークWの向きを反転する操作を人手により行うと、手間であるだけでなく、反転後のワークWが正確に位置決めされないおそれもある。このため、ワークWの向きを反転する操作は、ロボット等を用いて機械的に行うことが好ましい。しかし、ワークWの向きを反転させるためだけに、多関節ロボット等のロボットを別途設けることは、コスト的にも、スペース的にも不利である。このため、本実施形態においては、ワークWの加工箇所の切り替えに伴うワークWの向きを反転する操作を、切粉吸引用移動手段14を利用して行うようにしている。
【0044】
すなわち、本実施形態においては、既に述べたように、切粉吸引用移動手段14の作動端に対して切粉吸引部13を着脱可能な状態で装着しているところ、この切粉吸引部13を取り外して、ワークWを把持可能なワーク把持部(図示省略)に切り替えることで、そのワーク把持部でワークWを掴んで反転できるようにしている。このときの切粉吸引用移動手段14は、ワーク加工用移動手段12とは独立して制御される(ワーク加工用の経路データDをオフセットした切粉吸引用の経路データDに基づいては制御されない。)。ワーク把持部としては、チャック爪を備えたチャック装置(グリッパ等)や、複数の可動指を備えた多指ハンド装置等が例示される。
【0045】
ワークWの反転を終えると、ワーク保持手段16によってワークWの側縁(既に加工を終えた側の側縁(前記一方の側縁))を保持するとともに、切粉吸引用移動手段14の作動端に装着されているワーク把持部を取り外して切粉吸引部13に切り替える。これにより、ワークWの残りの側縁(前記他方の側縁)を加工することが可能な状態となる。切粉吸引部13からワーク把持部への切り替えや、ワーク把持部から切粉吸引部13への切り替えは、人手によって行ってもよいが、本実施形態においては、ワーク加工装置10に併設又は組み込んだロボットハンドチェンジャーを用いて自動的に行われるようにしている。
【0046】
このように、切粉吸引用移動手段14を、ワークWの向きを変える手段(ワーク変向用移動手段)として利用することによって、そのための機構をワーク加工装置10に別途設ける必要がなくなる。このため、ワーク加工装置10のコストを抑えることが可能になる。また、切粉吸引用移動手段14を移動させるスペースを十分に確保しやすくなる。加えて、ワーク把持部を装着したときの切粉吸引用移動手段14は、ワーク加工装置10にワークWを搬入又は搬出する際にも利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 ワーク加工装置
11 ワーク加工部
12 ワーク加工用移動手段
13 切粉吸引部
14 切粉吸引用移動手段
20 CAM装置
C 切粉
ワークの三次元形状データ
ワーク加工用の経路データ
切粉吸引用の経路データ
W ワーク
図1
図2
図3
図4