(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149472
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】衛星航法システムにおける測位誤差の補正方法、測位誤差を補正する情報処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01S 19/41 20100101AFI20220929BHJP
G01S 19/07 20100101ALI20220929BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G01S19/41
G01S19/07
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051650
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】坂井 丈泰
【テーマコード(参考)】
2F129
5J062
【Fターム(参考)】
2F129BB03
2F129BB10
2F129BB33
5J062CC07
5J062DD23
5J062EE04
(57)【要約】
【課題】ユーザ局が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、測位信号の誤差の補正が開始されるまでの時間を極力短くする。
【解決手段】マスタ局は、測位信号を補正するための補正情報、及び、補正情報に対応する航法衛星に関する衛星情報を、それぞれ繰り返し送信する。このとき、少なくとも1回の補正情報の送信と、少なくとも1回の衛星情報の送信とを交互に行う。ユーザ局において衛星情報を補正情報よりも先に受信した場合には(S101:YES)、この衛星情報に基づいて、その後最初に受信した補正情報をデコードする(S103:YES、S104)。ユーザ局において補正情報を衛星情報よりも先に受信した場合には(S101:NO、S102:YES)、当該補正情報を保持しておき(S105)、この後最初に受信した衛星情報に基づいて、保持しておいた補正情報をデコードする(S106:YES、S107)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位信号を送信する複数の航法衛星と、
地球上の絶対位置に関する位置情報が既に与えられている既知点に設置され、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号を受信するモニタ局と、
(I)前記モニタ局が受信した前記測位信号が示す位置と、前記モニタ局に与えられている前記既知点の位置情報が示す絶対位置との差に基づいて、前記測位信号を補正するための補正情報を生成し、(II)前記モニタ局が受信した前記測位信号に基づいて、前記補正情報に対応する前記航法衛星に関する情報である衛星情報を生成し、(III)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信し、(IV)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信する際に、少なくとも1回の前記補正情報の送信と、少なくとも1回の前記衛星情報の送信とを交互に行うマスタ局と、
前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号、並びに、前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報を受信するユーザ局と、を備える衛星航法システムのうち、
前記ユーザ局が受信した前記衛星情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記補正情報をデコードし、
デコードされた前記補正情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記測位信号を補正する前記衛星航法システムの前記ユーザ局において、
前記ユーザ局が前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報の受信を開始したときに、
前記ユーザ局が前記衛星情報を前記補正情報より先に受信した場合には、当該衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した前記補正情報をデコードし、
前記ユーザ局が前記補正情報を前記衛星情報より先に受信した場合には、当該補正情報を保持しておき、当該補正情報の受信後、最初に受信した前記衛星情報に基づいて、保持しておいた前記補正情報をデコードすることを特徴とする衛星航法システムにおける測位誤差の補正方法。
【請求項2】
前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報を中継して前記ユーザ局に送信する中継用衛星、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の衛星航法システムにおける測位誤差の補正方法。
【請求項3】
前記衛星情報は、前記補正情報に対応する前記航法衛星のリストの情報であるマスク情報を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の衛星航法システムにおける測位誤差の補正方法。
【請求項4】
前記衛星情報は、前記航法衛星の軌道情報の識別番号リストの情報を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の衛星航法システムにおける位置情報取得方法。
【請求項5】
測位信号を送信する複数の航法衛星と、
地球上の絶対位置に関する位置情報が既に与えられている既知点に設置され、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号を受信するモニタ局と、
(I)前記モニタ局が受信した前記測位信号が示す位置と、前記モニタ局に与えられている前記既知点の位置情報が示す絶対位置との差に基づいて、前記測位信号を補正するための補正情報を生成し、(II)前記モニタ局が受信した前記測位信号に基づいて、前記補正情報に対応する前記航法衛星に関する情報である衛星情報を生成し、(III)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信し、(IV)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信する際に、少なくとも1回の前記補正情報の送信と、少なくとも1回の前記衛星情報の送信とを交互に行うマスタ局と、
前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号、並びに、前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報を受信するユーザ局と、を備え、
前記ユーザ局が受信した前記衛星情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記補正情報をデコードし、
デコードされた前記補正情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記測位信号を補正する衛星航法システムにおいて、
前記ユーザ局が前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報の受信を開始したときに、
前記ユーザ局が前記衛星情報を前記補正情報よりも先に受信した場合には、当該衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した前記補正情報をデコードし、
前記ユーザ局が前記補正情報を前記衛星情報よりも先に受信した場合には、当該補正情報を保持しておき、当該補正情報の受信後、最初に受信した前記衛星情報に基づいて、保持しておいた前記補正情報をデコードすることを特徴とする、前記ユーザ局に設けられた衛星航法システムにおける測位誤差を補正する情報処理装置。
【請求項6】
測位信号を送信する複数の航法衛星と、
地球上の絶対位置に関する位置情報が既に与えられている既知点に設置され、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号を受信するモニタ局と、
(I)前記モニタ局が受信した前記測位信号が示す位置と、前記モニタ局に与えられている前記既知点の位置情報が示す絶対位置との差に基づいて、前記測位信号を補正するための補正情報を生成し、(II)前記モニタ局が受信した前記測位信号に基づいて、前記補正情報に対応する前記航法衛星に関する情報である衛星情報を生成し、(III)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信し、(IV)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信する際に、少なくとも1回の前記補正情報の送信と、少なくとも1回の前記衛星情報の送信とを交互に行うマスタ局と、
前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号、並びに、前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報を受信するユーザ局と、を備えた衛星航法システムにおいて、
前記ユーザ局に設けられた情報処理装置に、
前記ユーザ局が受信した前記衛星情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記補正情報をデコードさせ、
デコードされた前記補正情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記測位信号を補正させるプログラムであって、
前記情報処理装置に、
前記ユーザ局が前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報の受信を開始したときに、
前記ユーザ局が前記衛星情報を前記補正情報よりも先に受信した場合には、当該衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した前記補正情報をデコードさせ、
前記ユーザ局が前記補正情報を前記衛星情報よりも先に受信した場合には、当該補正情報を保持させておき、当該補正情報の受信後、最初に受信した前記衛星情報に基づいて、保持させておいた前記補正情報をデコードさせることを特徴とする衛星航法システムにおける測位誤差を補正するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星航法システムにおける測位誤差の補正方法、測位誤差を補正する情報処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、人工衛星などの天体から送られる信号は、地上に到達するまでに、電離層及び対流層を通過する。そのため、上記信号が電離層及び対流層を通過する際には、それぞれ、上記信号に、電離層遅延及び対流層遅延と呼ばれる遅延が生じる。したがって、上記信号を、測位信号を送受信するための信号として使用する場合、電離層遅延及び対流層遅延が測位信号の誤差(以下、測位誤差と称する)の要因となっている。
【0003】
これに対して、ユーザが有する測位信号の受信機であるユーザ局に、電離層遅延、対流層遅延などにより生じる測位信号の誤差に対する補正情報を提供し、ユーザ局において受信した測位信号を補正情報に基づいて補正することが行われている。この方式は広域ディファレンシャルGPS(Wide-Area Differential GPS:以下、WADGPSと称する)補正方式と呼ばれている。また、WADGPS補正方式の実例として、静止衛星型航法補強システム(Satellite Based Augmentation System:以下、SBASと称する)、サブメータ級測位補強(Sub-meter level augmentation signals:以下、SLASと称する)等がある。
【0004】
従来、このようなWADGPS補正方式で補正を行うシステムとして、特許文献1に記載の衛星航法システムがある。特許文献1の衛星航法システムでは、
図4に示すように、複数のモニタ局12が、複数の航法衛星11からの測位信号を受信し、これらの測位信号に基づいて、補正情報を求める。また、マスタ局13が、複数のモニタ局12からの上記補正情報に基づいて、各IGP(Ionospheric Grid Point)における電離層遅延量の補正情報を求めて中継用衛星101に送信する。中継用衛星101は、マスタ局13から受信した補正情報をユーザ局14に送信する。ユーザ局14は、航法衛星11から送信された測位信号を受信し、中継用衛星101を中継してマスタ局13から送信された補正情報を受信する。そして、ユーザ局14が受信した測位信号を、補正情報に基づいて補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に記載されているような従来の衛星航法システムにおいて、測位信号を補正情報に基づいて補正するためには、補正情報に対応する航法衛星に関する衛星情報が必要となる。衛星情報とは、例えば、補正情報に対応する航法衛星のリストを示すマスク情報、航法衛星軌道情報の識別番号の情報等である。一方で、特許文献1に記載されているような従来の衛星航法システムにおいては、マスタ局から送信する信号の伝送容量が限られている。そのため、信号の伝送容量を小さくするために、補正情報に衛星情報を直接付随させた形で繰り返し送信するのではなく、補正情報及び衛星情報を別々に繰り返し送信している。補正情報及び衛星情報を繰り返し送信する際に、少なくとも1回の前記補正情報の送信と、少なくとも1回の前記衛星情報の送信とを交互に行うことがある。例えば、補正情報を所定回数送信する毎に衛星情報を1回送信することがある。
【0007】
そして、このようにマスタ局が補正情報及び衛星情報を送信する場合、従来の衛星航法システムでは、ユーザ局が衛星情報を受信したときに、当該衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した補正情報をデコードし、デコードされた補正情報に基づいて測位信号を補正していた。
【0008】
しかしながら、マスタ局が補正情報及び衛星情報をこのように送信する場合、ユーザ局がマスタ局からの補正情報及び衛星情報の受信を開始するタイミングによって、ユーザ局が補正情報及び衛星情報のうちどちらの情報を先に受信するかが変わる。そして、ユーザ局が補正情報を衛星情報よりも先に受信した場合には、当該補正情報は使用されず、当該補正情報の受信後、最初に受信した衛星情報に基づいて、さらにその後、最初に受信した補正情報をデコードし、デコードされた補正情報に基づいて測位信号を補正することになる。
【0009】
そのため、ユーザ局がマスタ局から補正情報及び衛星情報の受信を開始したタイミングが、ユーザ局が補正情報を衛星情報よりも先に受信するようなタイミングである場合には、ユーザ局がマスタ局から補正情報及び衛星情報の受信を開始したタイミングが、ユーザ局が衛星情報を補正情報よりも先に受信するようなタイミングである場合と比較して、マスタ局からの補正情報及び衛星情報の受信の開始後、測位誤差の補正が開始されるまでの時間が長くなってしまう。
【0010】
本発明の目的は、ユーザ局が補正情報及び衛星情報の受信を開始したタイミングによらず、補正情報及び衛星情報の受信の開始後、測位誤差の補正が開始されるまでの時間を極力短くすることが可能な衛星航法システムにおける測位誤差の補正方法、衛星航法システムにおける測位誤差を補正する情報処理装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の衛星航法システムにおける測位誤差の補正方法は、測位信号を送信する複数の航法衛星と、地球上の絶対位置に関する位置情報が既に与えられている既知点に設置され、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号を受信するモニタ局と、(I)前記モニタ局が受信した前記測位信号が示す位置と、前記モニタ局に与えられている前記既知点の位置情報が示す絶対位置との差に基づいて、前記測位信号を補正するための補正情報を生成し、(II)前記モニタ局が受信した前記測位信号に基づいて、前記補正情報に対応する前記航法衛星に関する情報である衛星情報を生成し、(III)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信し、(IV)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信する際に、少なくとも1回の前記補正情報の送信と、少なくとも1回の前記衛星情報の送信とを交互に行うマスタ局と、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号、並びに、前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報を受信するユーザ局と、を備える衛星航法システムのうち、前記ユーザ局が受信した前記衛星情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記補正情報をデコードし、デコードされた前記補正情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記測位信号を補正する前記衛星航法システムの前記ユーザ局において、前記ユーザ局が前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報の受信を開始したときに、前記ユーザ局が前記衛星情報を前記補正情報より先に受信した場合には、当該衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した前記補正情報をデコードし、前記ユーザ局が前記補正情報を前記衛星情報より先に受信した場合には、当該補正情報を保持しておき、当該補正情報の受信後、最初に受信した前記衛星情報に基づいて、保持しておいた前記補正情報をデコードする。
【0012】
本発明の衛星航法システムにおける測位誤差を補正する情報処理装置は、測位信号を送信する複数の航法衛星と、地球上の絶対位置に関する位置情報が既に与えられている既知点に設置され、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号を受信するモニタ局と、(I)前記モニタ局が受信した前記測位信号が示す位置と、前記モニタ局に与えられている前記既知点の位置情報が示す絶対位置との差に基づいて、前記測位信号を補正するための補正情報を生成し、(II)前記モニタ局が受信した前記測位信号に基づいて、前記補正情報に対応する前記航法衛星に関する情報である衛星情報を生成し、(III)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信し、(IV)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信する際に、少なくとも1回の前記補正情報の送信と、少なくとも1回の前記衛星情報の送信とを交互に行うマスタ局と、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号、並びに、前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報を受信するユーザ局と、を備え、前記ユーザ局が受信した前記衛星情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記補正情報をデコードし、デコードされた前記補正情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記測位信号を補正する衛星航法システムにおいて、前記ユーザ局が前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報の受信を開始したときに、前記ユーザ局が前記衛星情報を前記補正情報よりも先に受信した場合には、当該衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した前記補正情報をデコードし、前記ユーザ局が前記補正情報を前記衛星情報よりも先に受信した場合には、当該補正情報を保持しておき、当該補正情報の受信後、最初に受信した前記衛星情報に基づいて、保持しておいた前記補正情報をデコードする。
【0013】
本発明の衛星航法システムにおける測位誤差を補正するプログラムは、測位信号を送信する複数の航法衛星と、地球上の絶対位置に関する位置情報が既に与えられている既知点に設置され、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号を受信するモニタ局と、(I)前記モニタ局が受信した前記測位信号が示す位置と、前記モニタ局に与えられている前記既知点の位置情報が示す絶対位置との差に基づいて、前記測位信号を補正するための補正情報を生成し、(II)前記モニタ局が受信した前記測位信号に基づいて、前記補正情報に対応する前記航法衛星に関する情報である衛星情報を生成し、(III)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信し、(IV)前記補正情報及び前記衛星情報を繰り返し送信する際に、少なくとも1回の前記補正情報の送信と、少なくとも1回の前記衛星情報の送信とを交互に行うマスタ局と、前記複数の航法衛星から送信された前記測位信号、並びに、前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報を受信するユーザ局と、を備えた衛星航法システムにおいて、前記ユーザ局に設けられた情報処理装置に、前記ユーザ局が受信した前記衛星情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記補正情報をデコードさせ、デコードされた前記補正情報に基づいて、前記ユーザ局が受信した前記測位信号を補正させるプログラムであって、前記情報処理装置に、前記ユーザ局が前記マスタ局から送信された前記補正情報及び前記衛星情報の受信を開始したときに、前記ユーザ局が前記衛星情報を前記補正情報よりも先に受信した場合には、当該衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した前記補正情報をデコードさせ、前記ユーザ局が前記補正情報を前記衛星情報よりも先に受信した場合には、当該補正情報を保持させておき、当該補正情報の受信後、最初に受信した前記衛星情報に基づいて、保持させておいた前記補正情報をデコードさせることを特徴とする衛星航法システムにおける測位誤差を補正する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ユーザ局が前記マスタ局から送信された補正情報及び衛星情報の受信を開始したときに、衛星情報を補正情報より先に受信した場合には、衛星情報に基づいて、この衛星情報の受信後、最初に受信した補正情報をデコードする。一方で、ユーザ局が前記マスタ局から送信された補正情報及び衛星情報の受信を開始したときに、補正情報を衛星情報より先に受信した場合には、当該補正情報を保持しておき、当該補正情報の受信後、最初に受信した衛星情報に基づいて、保持しておいた補正情報をデコードする。
【0015】
ユーザ局がマスタ局から送信された補正情報及び衛星情報の受信を開始するタイミングによって、補正情報及び衛星情報のうちどちらを先に受信するかが変わる。本発明では、上記のようにして衛星情報に基づいて補正情報をデコードするため、従来のように、常に、衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した補正情報をデコードする場合と比較して、ユーザ局が中継用衛星から送信された補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、ユーザ局が受信した測位信号が、デコードされた補正情報に基づいて補正されるまでの時間を短くすることができる。なお、ユーザ局は、少なくとも、補正情報の受信後に最初に衛星情報を受信するまで、当該補正情報を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係る衛星航法システムの構成を示す図である。
【
図2】補正情報のデコードを行う手順を示すフローチャートである。
【
図3】(a)が、従来の衛星航法システムを用いた場合の、ユーザ局において補正情報及び衛星情報の受信を開始してから補正情報のデコードが開始されるまでの時間を説明するための図であり、(a)が、第1実施形態に係る衛星航法システムを用いた場合の、ユーザ局において補正情報及び衛星情報の受信を開始してから補正情報のデコードが開始されるまでの時間を説明するための図である。
【
図4】第2実施形態に係る衛星航法システムの構成を示す図である。
【
図5】第3実施形態に係る衛星航法システムの構成を示す図である。
【
図6】(a)は従来の衛星航法システムを用いた場合における
図3(a)に対応する図であり、(b)は第4実施形態に係る衛星航法システムを用いた場合における
図3(b)に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る衛星航法システム1について説明する。
【0018】
<衛星航法システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る衛星航法システム1の構成を示す図である。衛星航法システム1は、SBAS、SLAS等のWADGPS補正方式によって測位信号を補正するシステムである。
図1に示すように、衛星航法システム1は、複数の航法衛星11と、複数のモニタ局12と、マスタ局13と、ユーザ局14とを備えている。
【0019】
複数の航法衛星11は、測位信号を送信する。複数のモニタ局12は、地球上の絶対位置に関する位置情報が既に与えられている既知点であって、互いに異なる既知点に配置されている。各モニタ局12は、複数の航法衛星11からの測位信号を受信する。なお、第1実施形態では、衛星航法システム1がモニタ局12を複数備えているが、モニタ局12の数は1つだけであってもよい。
【0020】
マスタ局13は、複数のモニタ局12の各々が受信した複数の航法衛星11からの測位信号が示す位置と、複数のモニタ局12の各々に与えられている既知点の位置情報が示す絶対位置との差に基づいて、測位信号を補正するための補正情報を生成する。また、マスタ局13は、複数のモニタ局12が受信した測位信号に基づいて、補正情報に対応する航法衛星の情報である衛星情報を生成する。そして、マスタ局13は、生成した補正情報及び衛星情報を繰り返し送信する。また、マスタ局13は、補正情報及び衛星情報を繰り返し送信する際に、少なくとも1回の補正情報の送信と、少なくとも1回の衛星情報の送信とを交互に行う。例えば、マスタ局13は、補正情報を一定回数(例えば30~60回程度)送信する毎に衛星情報を1回送信する。ここで、上記の「少なくとも1回の補正情報の送信」において補正情報を送信する回数は、毎回一定であってもよいし、一定でなくてもよい。また、上記の「少なくとも1回の衛星情報の送信」において衛星情報を送信する回数は、毎回一定であってもよいし、一定でなくてもよい。なお、補正情報及び衛星情報は、時間間隔を空けずに連続して送信してもよいし、所定の時間間隔を空けて送信してもよい。
【0021】
ユーザ局14は、マスタ局13から送信された補正情報及び衛星情報を受信し、衛星情報に基づいて補正情報をデコードする。ユーザ局14は、マスタ局13から送信された補正情報及び衛星情報を、マスタ局13から直接受信してもよいし、中継用衛星等を中継して間接的に受信してもよい。そして、ユーザ局14は、複数の航法衛星11から受信した測位信号を、デコードした補正情報に基づいて補正することによって、ユーザ局14の位置の情報を取得する。
【0022】
<補正情報のデコード>
次に、ユーザ局14において補正情報及び衛星情報を受信したときに、補正情報をデコードする処理の流れについて説明する。第1実施形態では、例えば、ユーザ局14に設けられた情報処理装置が、
図2のフローに沿って処理を行うことによって、補正情報をデコードする。情報処理装置は、例えば、コンピュータ等である。
図2のフローは、ユーザ局14が第1実施形態に係る衛星航法システム1における測位誤差の補正を行うときに開始される。
【0023】
図2のフローについて詳細に説明すると、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報のいずれかを受信するまで待機している(S101:NO、S102:NO)。そして、ユーザ局14が補正情報を受信するよりも前に衛星情報を受信したときに(S101:YES)、補正情報を受信するまで待機する(S103:NO)。そして、ユーザ局14が補正情報を受信したときに(S103:YES)、受信した衛星情報に基づいて、受信した補正情報をデコードする(S104)。
【0024】
一方、ユーザ局14が衛星情報を受信するよりも前に補正情報を受信したときに(S101:NO、S102:YES)、受信した補正情報を保持し(S105)、衛星情報を受信するまで待機する(S106:NO)。そして、ユーザ局14が衛星情報を受信したときに(S106:YES)、受信した衛星情報に基づいて、保持しておいた補正情報をデコードする(S107)。なお、受信した補正情報は、情報処理装置が有する記憶装置に記憶する。ここで、ユーザ局14は、少なくとも、補正情報の受信後に最初に衛星情報を受信するまで、当該補正情報を保持すればよいため、記憶装置は一時記憶メモリであってもよい。
【0025】
<効果>
ここで、従来衛星航法のシステムでは、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始した後、衛星情報を補正情報より先に受信した場合には、第1実施形態に係る衛星航法システム1と同様、当該衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した補正情報をデコードしていた。
【0026】
一方で、従来の衛星航法システムでは、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始した後、補正情報を衛星情報より先に受信した場合には、当該補正情報の受信の時点では、衛星情報に基づく補正情報のデコードを行うことができない。そのため、従来の衛星航法システムでは、第1実施形態に係る衛星航法システムと異なり、補正情報の受信の後、最初に受信した衛星情報に基づいて、さらにその後、最初に受信した補正情報をデコードしていた。
【0027】
ここで、従来の衛星航法システムを用いた場合と第1実施形態に係る衛星航法システム1を用いた場合のそれぞれについて、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を対比して説明する。なお、実際の衛星航法システムでは、マスタ局13からユーザ局14に、補正情報が30~60回程度送信される毎に、衛星情報が1回送信されるが、
図3(a)及び
図3(b)では、便宜上、マスタ局13からユーザ局14に、補正情報が2回送信される毎に、衛星情報が1回送信される場合を例として説明する。この場合、マスタ局13は、補正情報を繰り返し送信するとともに、補正情報を2回送信した後、次に補正情報を送信する前に、衛星情報を送信することになる。
【0028】
図3(a)及び
図3(b)では、時刻Ta
N(N=1,2,3,・・・)が、補正情報の最初のデータがユーザ局14に到達する時刻を示している。なお、以下では、時刻Ta
Nに最初のデータがユーザ局14に到達する補正情報のことを補正情報H
Nと称することがある。また、以下では、便宜上、補正情報H
Nと補正情報H
[N+1]、補正情報H
[N+2]と補正情報H
[N+3]などが連続して送信され、補正情報H
[N+1]と補正情報H
[N+2]との間、補正情報H
[N+3]と補正情報H
[N+4]との間などに、衛星情報Iが送信されるとして説明を行う。
【0029】
図3(a)に基づいて、上述の従来の衛星航法システムを用いた場合の衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間について説明する。
図3(a)に示すように、上述の従来の衛星航法システムを用いた場合において、例えば、時刻Ta
[N+1]よりも後で、且つ、補正情報H
[N+1]の最後のデータがユーザ局14に到達する時刻Tb
[N+1]までの時刻T11に、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始したときには、ユーザ局14は、衛星情報Iを補正情報H
[N+2]よりも先に受信する。そして、この場合には、ユーザ局14が、衛星情報Iの受信と、補正情報H
[N+2]の受信とが完了する時刻Ta
[N+3]に、衛星情報Iに基づく補正情報H
[N+2]のデコードが開始される。そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間は、時刻T11から時刻Ta
[N+3]までの時間R11となる。
【0030】
また、上述の従来の衛星航法システムを用いた場合において、例えば、補正情報H[N-1]の最後のデータがユーザ局14に到達する時刻Tb[N-1]よりも後で、且つ、時刻Ta[N+1]までの時刻T12に、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始したときには、ユーザ局14は、補正情報HN、H[N+1]のうち少なくとも補正情報H[N+1]を衛星情報Iよりも先に受信する。より詳細には、時刻T12が、時刻Tb[N-1]よりも後で、且つ、時刻TaNまでの時刻である場合には、補正情報HN、H[N+1]の両方を受信する。また、時刻T12が、時刻TaNよりも後で、且つ、時刻Ta[N+1]までの時刻である場合には、補正情報HN、H[N+1]のうち補正情報H[N+1]のみを受信する。この場合、補正情報HN、H[N+1]の受信が完了する時点において、ユーザ局14が衛星情報Iの受信を完了していないため、補正情報HN、H[N+1]のデコードを行うことができない。
【0031】
そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報H[N+1]の受信後、最初の衛星情報Iを受信し、さらにその後、最初の補正情報H[N+2]の受信が完了する時刻Ta[N+3]に、衛星情報Iに基づく補正情報H[N+2]のデコードが開始される。そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間は、時刻T12から時刻Ta[N+3]までの時間R12となる。
【0032】
これに対して、
図3(b)に基づいて、第1実施形態に係る衛星航法システム1を用いた場合の衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間について説明する。第1実施形態に係る衛星航法システム1では、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始した後、衛星情報を補正情報より先に受信した場合には、上記従来の衛星航法システムを用いた場合と同様、衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した補正情報をデコードする。
【0033】
したがって、
図3(b)に示すように、第1実施形態に係る衛星航法システム1を用いた場合でも、時刻T11に、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始したときには、時刻Ta
[N+3]に衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始される。したがって、この場合にも、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間は、時間R11となる。
【0034】
一方で、第1実施形態に係る衛星航法システム1では、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始した後、補正情報を衛星情報より先に受信した場合には、上記従来の衛星航法システムを用いた場合とは異なり、当該補正情報を保持しておく。そして、当該補正情報の後、最初に受信した衛星情報に基づいて、保持しておいた補正情報をデコードする。
【0035】
したがって、第1実施形態に係る衛星航法システム1を用いた場合には、時刻T12に、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始したときには、ユーザ局14が補正情報HN、H[N+1]のうち少なくとも補正情報H[N+1]を衛星情報Iよりも先に受信し、補正情報HN、H[N+1]のうち少なくとも補正情報H[N+1]が保持される。時刻T12が、時刻Tb[N-1]よりも後で、且つ、時刻TaNまでの時刻である場合には、補正情報HN、H[N+1]の両方を受信し、補正情報HN、H[N+1]が保持される。このとき、例えば、補正情報HNの受信が完了した時点で、補正情報HNが保持され、その後、補正情報H[N+1]の受信が完了した時点で、保持される情報を補正情報H[N+1]に更新するようにしてもよい。また、時刻T12が、時刻TaNよりも後で、且つ、時刻Ta[N+1]までの時刻である場合には、補正情報HN、H[N+1]のうち補正情報H[N+1]のみを受信し、補正情報H[N+1]が保持される。
【0036】
そして、ユーザ局14は、補正情報H[N+1]の受信後、最初に衛星情報Iの受信が完了する時刻Ta[N+2]に、衛星情報Iに基づく、保持しておいた補正情報H[N+1]のデコードを開始させる。そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間は、時刻T12から時刻Ta[N+2]までの時間R13となる。時刻Ta[N+2]は時刻Ta[N+3]よりも前の時刻であるため、時間R13は、上述の従来の衛星航法システムを用いた場合の時間R12よりも短い。
【0037】
以上のことから、第1実施形態に係る衛星航法システム1では、ユーザ局14が補正情報を衛星情報よりも先に受信する場合において、上記従来の衛星航法システムを用いた場合と比較して、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0038】
なお、
図3(a)及び
図3(b)では、補正情報が2回送信される毎に、衛星情報が1回送信される場合を例として説明したが、補正情報が1回又は3回以上の所定回数送信される毎に、衛星情報が1回送信される場合でも同様である。また、各衛星情報の送信と、その次の衛星情報との間に補正情報が送信される回数が一定でない場合でも同様である。
【0039】
また、
図3(a)及び
図3(b)では、連続して送信された補正情報及び衛星情報が受信されている。これに対して、補正情報及び衛星情報が所定間隔空けて送信される場合は、補正情報及び衛星情報が所定間隔空けて受信される。そして、この場合でも、上述したのと同様、第1実施形態に係る衛星航法システム1では、ユーザ局14が補正情報を衛星情報よりも先に受信する場合において、上記従来の衛星航法システムを用いた場合と比較して、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る衛星航法システム100について説明する。第2実施形態に係る衛星航法システム100も、WADGPS補正方式によって測位信号を補正するシステムである。
図4に示すように、第2実施形態に係る衛星航法システム100は、第1実施形態に係る衛星航法システム1と同様の構成に加えて、中継用衛星101を備えている。
【0041】
衛星航法システム100では、マスタ局13が、中継用衛星101に向けて補正情報及び衛星情報を繰り返し送信する。さらに、マスタ局13は、中継用衛星101に向けて補正情報及び衛星情報を繰り返し送信する際に、中継用衛星101に向けた少なくとも1回の補正情報の送信と、中継用衛星101に向けた少なくとも1回の衛星情報の送信とを交互に行う。中継用衛星101は、マスタ局13からの補正情報及び衛星情報を中継して、ユーザ局14に送信する。すなわち、中継用衛星101が、ユーザ局14に向けて補正情報を繰り返し送信する。さらに、中継用衛星101は、ユーザ局14に向けて補正情報及び衛星情報を繰り返し送信する際に、ユーザ局14に向けた少なくとも1回の補正情報の送信と、ユーザ局14に向けた少なくとも1回の衛星情報の送信とを交互に行う。
【0042】
ここで、中継用衛星101は、衛星航法システム100がSBASを用いたものである場合には静止衛星であり、衛星航法システム100がSLASを用いたものである場合には準天頂衛星である。
【0043】
<効果>
第2実施形態に係る衛星航法システム100では、マスタ局13から送信された補正情報及び衛星情報が、中継用衛星101を中継してユーザ局14で受信される。第2実施形態に係る衛星航法システム100では、第1実施形態に係る衛星航法システム1と同様に、ユーザ局14において、
図2のフローに沿って処理を行うことによって、衛星情報に基づいて補正情報をデコードする。これにより、第1実施形態で説明したのと同様、ユーザ局14が補正情報を衛星情報よりも先に受信する場合において、上記従来の衛星航法システムを用いる場合と比較して、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0044】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る衛星航法システム200について説明する。第3実施形態に係る衛星航法システム200も、WADGPS補正方式によって測位信号を補正するシステムである。
図5に示すように、第3実施形態に係る衛星航法システム200は、第1実施形態に係る衛星航法システム1と同様の構成に加えて、地上通信網201を備えている。地上通信網201は、例えばインターネット等、衛星を介さず地上に張り巡らされた通信網である。
【0045】
そして、衛星航法システム200では、マスタ局13が、地上通信網201を経由して、ユーザ局14に向けて補正情報及び衛星情報を繰り返し送信する。さらに、マスタ局13は、補正情報及び衛星情報を繰り返し送信する際に、地上通信網201を経由するユーザ局に向けた少なくとも1回の補正情報の送信と、地上通信網201を経由するユーザ局に向けた少なくとも1回の衛星情報の送信とを交互に行う。
【0046】
<効果>
第3実施形態に係る衛星航法システム200では、マスタ局13から送信された補正情報及び衛星情報が、地上通信網201を介してユーザ局14で受信される。第3実施形態に係る衛星航法システム200において、第1実施形態に係る衛星航法システムと同様に、ユーザ局14において、
図2のフローに沿って処理を行うことによって、衛星情報に基づいて補正情報をデコードする。これにより、第1実施形態で説明したのと同様、ユーザ局14が補正情報を衛星情報よりも先に受信する場合において、上記従来の衛星航法システムを用いる場合と比較して、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0047】
[第4実施形態]
次に、本発明の好適な第4実施形態に係る衛星航法システムについて説明する。第4実施形態に係る衛星航法システムでは、第1~第3実施形態に係る衛星航法システムにおいて、マスタ局13が送信する衛星情報が、マスク情報と識別番号情報を含む。マスタ局13は、衛星情報を送信する際に、マスク情報、識別番号情報の順に送信する。あるいは、マスタ局13は、衛星情報を送信する際に、識別番号情報、マスク情報の順に送信してもよい。マスク情報とは、モニタ局12が受信した測位信号に対応する航法衛星11(補正情報に対応する航法衛星11)のリストの情報である。識別番号情報とは、航法衛星11の軌道の識別番号リストの情報である。なお、第1~第3実施形態に係る衛星航法システムと同様に、第4実施形態に係る衛星航法システムにおいて、補正情報及び衛星情報は、時間間隔を空けずに連続して送信してもよいし、所定の時間間隔を空けて送信してもよい。
【0048】
そして、第4実施形態に係る衛星航法システムでは、ユーザ局14は、マスク情報と識別番号情報とに基づいて補正情報をデコードし、デコードされた補正情報に基づいて、ユーザ局14が航法衛星11から受信した測位信号を補正することによって、ユーザ局14の位置情報を取得する。すなわち、第4実施形態では、補正情報をデコードするために、マスク情報と識別番号情報とが必要である。
【0049】
第4実施形態に係る衛星航法システムでも、第1~第3実施形態に係る衛星航法システムと同様、ユーザ局14において、
図2のフローに沿って処理を行うことによって、補正情報をデコードする。ただし、第4実施形態に係る衛星航法システムの場合には、S101,S106の「衛星情報」とは、「マスク情報」と「識別番号情報」の両方を含む情報である。
【0050】
<効果>
ここで、従来の衛星航法システムでは、ユーザ局14が衛星情報(マスク情報及び識別番号情報)並びに補正情報の受信を開始した後、衛星情報を補正情報より先に受信した場合には、第4実施形態に係る衛星航法システムと同様、衛星情報に基づいて、当該衛星情報の受信後、最初に受信した補正情報をデコードしていた。
【0051】
一方で、従来の衛星航法システムでは、ユーザ局14が衛星情報(マスク情報及び識別番号情報)並びに補正情報の受信を開始した後、補正情報を衛星情報より先に受信した場合には、当該補正情報の受信の時点では、衛星情報に基づく補正情報のデコードを行うことができない。そのため、第4実施形態に係る衛星航法システムと異なり、当該補正情報の受信後、最初に受信した衛星情報に基づいて、さらにその後、最初に受信した補正情報をデコードしていた。
【0052】
ここで、従来の衛星航法システムを用いた場合と第4実施形態に係る衛星航法システムを用いた場合のそれぞれについて、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を対比して説明する。なお、実際の衛星航法システムでは、マスタ局13からユーザ局14に、補正情報が30~60回程度送信される毎に、衛星情報が1回送信されるが、
図6(a)及び
図6(b)では、便宜上、マスタ局13からユーザ局14に、補正情報が2回送信される毎に、衛星情報(マスク情報及び識別番号情報)が1回送信される場合を例として説明する。この場合、マスタ局13は、補正情報を繰り返し送信するとともに、補正情報を2回送信した後、次に補正情報を送信する前に、衛星情報(マスク情報及び識別番号情報)を送信することになる。
【0053】
図6(a)及び
図6(b)では、時刻Tc
N(N=1,2,3,・・・)が、補正情報の最初のデータがユーザ局14に到達する時刻を示している。なお、以下では、時刻Tc
Nに最初のデータがユーザ局14に到達する補正情報のことを補正情報H
Nと称することがある。また、以下では、便宜上、補正情報H
Nと補正情報H
[N+1]、補正情報H
[N+2]と補正情報H
[N+3]などが連続して送信され、補正情報H
[N+1]と補正情報H
[N+2]との間、補正情報H
[N+3]と補正情報H
[N+4]との間などに、衛星情報I(マスク情報M及び識別番号情報B)が送信されるとして説明を行う。
【0054】
図6(a)に基づいて、上述の従来の衛星航法システムを用いた場合の衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間について説明する。
図6(a)に示すように、上述の従来の衛星航法システムを用いた場合において、例えば、時刻Tc
[N+1]よりも後で、且つ、補正情報H
[N+1]の最後のデータがユーザ局14に到達する時刻Td
[N+1]よりも前の時刻T21に、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始したときには、ユーザ局14は、衛星情報I(マスク情報M及び識別番号情報B)を、補正情報H
[N+2]よりも先に受信する。そして、この場合には、ユーザ局14が、衛星情報Iの受信後、最初の補正情報H
[N+2]の受信が完了する時刻Tc
[N+3]に、衛星情報I(マスク情報M及び識別番号情報B)に基づく補正情報のデコードが開始される。そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間は、時刻T21から時刻Tc
[N+3]までの時間R21となる。
【0055】
また、上述の従来の衛星航法システムを用いた場合において、例えば、補正情報H[N-1]の最後のデータがユーザ局14に到達する時刻Td[N-1]よりも後で、且つ、時刻Tc[N+1]までの時刻T22に、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始したときには、ユーザ局14は、補正情報HN、H[N+1]のうち少なくともH[N+1]を衛星情報Iよりも先に受信する。より詳細には、時刻T12が、時刻Tb[N-1]よりも後で、且つ、時刻TaNまでの時刻である場合には、補正情報HN、H[N+1]の両方を受信する。また、時刻T12が、時刻TaNよりも後で、且つ、時刻Ta[N+1]までの時刻である場合には、補正情報HN、H[N+1]のうち補正情報H[N+1]のみを受信する。この場合、補正情報HN、H[N+1]の受信が完了する時点において、ユーザ局14が衛星情報Iの受信(マスク情報Mと識別番号情報Bの両方の受信、又は、マスク情報Mの受信)を完了していない。そのため、補正情報HN、H[N+1]のデコードを行うことができない。
【0056】
そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報HNの受信後、最初の衛星情報I(マスク情報M及び識別番号情報B)を受信し、さらにその後最初の補正情報H[N+2]の受信が完了する時刻Tc[N+3]に、衛星情報I(マスク情報M及び識別番号情報B)に基づく補正情報H[N+2]のデコードが開始される。そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間は、時刻T22から時刻Tc[N+3]までの時間R22となる。
【0057】
これに対して、
図6(b)に基づいて、第4実施形態に係る衛星航法システムを用いた場合の衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間について説明する。第4実施形態に係る衛星航法システムでは、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始した後、衛星情報を補正情報より先に受信した場合には、上記従来の衛星航法システムを用いた場合と同様、当該衛星情報の受信後、最初に補正情報を受信したときに、当該衛星情報に基づいて当該補正情報のデコードを開始する。
【0058】
したがって、
図6(b)に示すように、第4実施形態に係る衛星航法システムを用いた場合でも、時刻T21に、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始したときには、上記従来の衛星航法システムを用いた場合と同様、時刻Tc
[N+3]に衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始される。そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間は、時間R21となる。
【0059】
一方で、第4実施形態に係る衛星航法システムでは、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始した後、補正情報を衛星情報より先に受信した場合には、上記従来の衛星航法システムを用いた場合とは異なり、当該補正情報を保持しておく。そして、当該補正情報の受信後、最初に受信した衛星情報に基づいて、保持しておいた補正情報をデコードする。
【0060】
したがって、第4実施形態に係る衛星航法システムを用いた場合には、時刻T22に、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始したときには、ユーザ局14は、補正情報HN、H[N+1]のうち少なくとも補正情報H[N+1]を衛星情報Iよりも先に受信し、補正情報HN、H[N+1]のうち少なくとも補正情報H[N+1]が保持される。時刻T22が、時刻Td[N-1]よりも後で、且つ、時刻TcNまでの時刻である場合には、補正情報HN、H[N+1]の両方を受信し、補正情報HN、H[N+1]が保持される。このとき、例えば、補正情報HNの受信が完了した時点で、補正情報HNが保持され、その後、補正情報H[N+1]の受信が完了した時点で、保持される情報を補正情報H[N+1]に更新するようにしてもよい。また、時刻T22が、時刻TcNよりも後で、且つ、時刻Tc[N+1]までの時刻である場合には、補正情報HN、H[N+1]のうち補正情報H[N+1]のみを受信し、補正情報H[N+1]が保持される。
【0061】
そして、ユーザ局14は、補正情報H[N+1]の受信後、最初の衛星情報I(マスク情報M及び識別番号情報B)の受信が完了する時刻Tc[N+2]に、衛星情報Iに基づく、保持しておいた補正情報H[N+1]のデコードを開始させる。そして、この場合には、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間は、時刻T22から時刻Tc[N+2]までの時間R23となる。時刻Tc[N+2]は時刻Tc[N+3]よりも前の時刻であるため、時間R23は、上述の従来の衛星航法システムを用いた場合の時間R22よりも短い。
【0062】
以上のことから、第4実施形態に係る衛星航法システムでは、ユーザ局14が補正情報を衛星情報よりも先に受信する場合において、上記従来の衛星航法システムを用いた場合と比較して、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0063】
なお、
図6(a)及び
図6(b)では、補正情報が2回送信される毎に、衛星情報が1回送信される場合を例として説明したが、補正情報が1回又は3回以上の所定回数送信される毎に、衛星情報が1回送信される場合でも同様である。また、各衛星情報の送信と、その次の衛星情報との間に送信される補正情報の数は一定でない場合でも同様である。
【0064】
また、
図6(a)及び
図6(b)では、連続して送信された補正情報及び衛星情報が受信されている。これに対して、補正情報及び衛星情報が所定間隔空けて送信される場合は、補正情報及び衛星情報が所定間隔空けて受信される。そして、この場合でも、上述したのと同様、第4実施形態に係る衛星航法システムでは、ユーザ局14が補正情報を衛星情報よりも先に受信する場合において、上記従来の衛星航法システムを用いた場合と比較して、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0065】
また、補正情報は、航法衛星によって異なる。さらに、補正情報は、航法衛星の軌道によっても異なる。第4実施形態に係る衛星航法システムでは、上記の通り、衛星情報に含まれる、航法衛星のリストの情報であるマスク情報と、航法衛星の軌道の識別番号のリスト情報とに基づいて、補正情報をデコードすることができる。
【0066】
なお、第1~第3実施形態の衛星航法システム1,100,200、及び、第4実施形態の衛星航法システムが、本発明の「衛星航法システム」に相当する。
【0067】
また、第1~第4実施形態において、
図2のフローに沿って処理を行うことで、ユーザ局14において受信した衛星情報に基づいて、ユーザ局14において受信した補正情報をデコードする方法が、本発明の「衛星航法システムにおける測位誤差の補正方法」に相当する。
【0068】
また、第1~第4実施形態において、
図2のフローに沿って処理を行うことで、ユーザ局14において受信した衛星情報に基づいて、ユーザ局14において受信した補正情報をデコードする、ユーザ局14に設けられた情報処理装置が、本発明の「衛星航法システムにおける測位誤差を補正する装置」に相当する。
【0069】
また、第1~第4実施形態において、
図2のフローに沿って処理を行うことで、ユーザ局14において受信した衛星情報に基づいて、ユーザ局14において受信した補正情報をデコードする、ユーザ局14に設けられた情報処理装置にインストールされたプログラムが、本発明の「衛星航法システムにおける測位誤差を補正するプログラム」に相当する。
【0070】
[変形例]
以上、本発明の好適な第1~第4実施形態について説明したが、本発明は第1~第4実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて様々な変更が可能である。
【0071】
第4実施形態では、衛星情報としてのマスク情報と識別番号情報とを連続して送信したが、これには限られない。例えば、ある衛星情報の送信の機会に、衛星情報としてマスク情報を送信し、その次の衛星情報の送信の機会に、衛星情報として識別番号情報を送信してもよい。
【0072】
この場合には、ユーザ局14は、補正情報及び衛星情報の受信を開始するタイミングによらず、マスク情報及び識別番号情報の一方の受信が完了した後、補正情報の受信が完了してから、マスク情報及び識別番号情報の他方の受信が完了することになる。すなわち、ユーザ局14は、補正情報を衛星情報よりも先に受信することになる。したがって、この場合には、ユーザ局14は、補正情報及び衛星情報の受信を開始するタイミングによらず、上記従来の衛星航法システムを用いた場合と比較して、ユーザ局14が補正情報及び衛星情報の受信を開始してから、衛星情報に基づく補正情報のデコードが開始されるまでの時間を短くすることができる。
【0073】
第4実施形態では、マスタ局13から送信されてユーザ局14が受信する衛星情報が、マスク情報と識別番号情報とを含むものであったが、これには限られない。マスタ局13から送信されてユーザ局14が受信する衛星情報は、マスク情報及び識別番号情報のうち、一方の情報のみを含むものであってもよい。
【0074】
例えば、モニタ局12がある特定の航法衛星11から測位信号を受信することが予めわかっており、ユーザ局14が、モニタ局12が受信する測位信号に対応する航法衛星11の情報を予め保持している場合に、マスタ局13から送信されてユーザ局14が受信する衛星情報は、マスク情報及び識別番号情報のうち、識別番号情報のみを含むものであってもよい。
【0075】
あるいは、モニタ局12がある特定の軌道を移動する航法衛星11から測位信号を受信することが予めわかっており、ユーザ局14が、モニタ局12が受信する測位信号に対応する航法衛星11の軌道の情報を予め保持している場合に、マスタ局13から送信されてユーザ局14が受信する衛星情報は、マスク情報及び識別番号情報のうち、マスク情報のみを含むものであってもよい。
【0076】
さらには、マスタ局13から送信されてユーザ局14が受信する衛星情報は、モニタ局12が受信する測位信号に対応する航法衛星11に関する情報であって、補正情報をデコードすることができるものであれば、マスク情報及び識別番号情報以外の情報を含むものであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1、100、200:衛星航法システム、11:航法衛星、12:モニタ局、13:マスタ局、14:ユーザ局、101:中継用衛星、201:地上通信網