(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149488
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】加熱制御方法及び装置並びに熱延鋼板の製造方法、搬送予測モデル生成方法
(51)【国際特許分類】
B21B 37/74 20060101AFI20220929BHJP
B21B 45/00 20060101ALI20220929BHJP
B21B 37/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B21B37/74 A
B21B45/00 N
B21B37/00 261Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051682
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】式守 崇
【テーマコード(参考)】
4E124
【Fターム(参考)】
4E124AA01
4E124BB03
4E124BB06
4E124BB07
4E124BB09
4E124BB18
4E124CC01
4E124CC02
4E124CC03
4E124CC07
4E124EE01
4E124EE15
4E124FF01
4E124FF10
(57)【要約】
【課題】誘導加熱装置での電力の浪費を抑えるとともに製品寿命を延ばす。
【解決手段】被圧延材の加熱制御方法は、粗圧延機5から誘導加熱装置20へ搬送される後行材S1fを検出する検出ステップと、検出した後行材S1fが誘導加熱装置20まで搬送され加熱開始されるまでの搬送時間Tを、機械学習された搬送予測モデルMに加熱先行材の仕上げ圧延に関する情報を含む圧延操業データを入力し、加熱搬送予測モデルMから出力させる搬送予測ステップと、出力した搬送時間に基づき、誘導加熱装置20の発振開始タイミングを設定する設定ステップと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗圧延機で粗圧延された被圧延材を誘導加熱装置により加熱し、加熱した前記被圧延材を搬送装置により搬送して仕上げ圧延機により仕上げ圧延することを、先行する被圧延材である先行材及び前記先行材の直後に仕上げ圧延する後行材に対し行う際に、前記誘導加熱装置を制御する被圧延材の加熱制御方法であって、
前記粗圧延機から前記誘導加熱装置へ搬送される前記後行材を検出する検出ステップと、
検出した前記後行材が前記誘導加熱装置まで搬送され加熱開始されるまでの搬送時間を、機械学習された搬送予測モデルに前記先行材の仕上げ圧延に関する情報を含む圧延操業データを入力し、前記搬送予測モデルから出力させる搬送予測ステップと、
出力した前記搬送時間に基づき、前記誘導加熱装置の発振開始タイミングを設定する設定ステップと、
を有する被圧延材の加熱制御方法。
【請求項2】
前記設定ステップにおいて、予測した前記搬送時間よりも前記誘導加熱装置での整定時間分だけ早く発振開始タイミングを設定する請求項1に記載の被圧延材の加熱制御方法。
【請求項3】
前記圧延操業データは、前記先行材の前記仕上げ圧延機での圧延条件、もしくは仕上げ圧延前の前記先行材に関する情報を含む請求項1又は2に記載の被圧延材の加熱制御方法。
【請求項4】
前記圧延操業データは、前記後行材の前記仕上げ圧延機での圧延条件、もしくは仕上げ圧延前の前記後行材に関する情報を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の被圧延材の加熱制御方法。
【請求項5】
前記誘導加熱装置は複数台直列に設置されており、
前記搬送予測ステップにおいて、前記誘導加熱装置毎に前記搬送時間を予測する請求項1~4のいずれか1項に記載の被圧延材の加熱制御方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の被圧延材の加熱制御方法を用いて前記被圧延材の仕上げ圧延を行う熱延鋼板の製造方法。
【請求項7】
粗圧延された被圧延材を誘導加熱装置により加熱し、加熱した前記被圧延材を搬送装置により搬送して仕上げ圧延機により仕上げ圧延することを、先行する被圧延材である先行材及び前記先行材の直後に仕上げ圧延する後行材に対し行う際に、前記被圧延材への加熱を制御する被圧延材の誘導加熱制御装置であって、
前記後行材を前記誘導加熱装置へ搬送するとき、前記先行材の仕上げ圧延に関する情報を含む圧延操業データを機械学習された搬送予測モデルに入力し、前記後行材が前記誘導加熱装置まで搬送され加熱開始されるまでの搬送時間を前記搬送予測モデルの出力として取得する搬送時間予測部と、
前記搬送時間予測部において予測された前記搬送時間で前記誘導加熱装置へ前記被圧延材を搬送するように前記搬送装置を制御する搬送制御部と、
前記搬送時間予測部において予測された前記搬送時間に基づき、前記後行材に対する前記誘導加熱装置の発振開始タイミングを設定する加熱制御部と、
を有する被圧延材の誘導加熱制御装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の搬送予測モデルを生成する搬送予測モデル生成装置であって、
既に仕上げ圧延が行われた前記先行材の圧延操業データと、前記先行材の直後の前記後行材の搬送時間を含む搬送実績データとを取得し、
取得した前記圧延操業データと前記搬送実績データとを用いて前記搬送予測モデルを機械学習し、前記搬送予測モデルを生成する搬送予測モデル生成方法。
【請求項9】
前記搬送予測モデルは、ニューラルネットワーク、決定木学習、ランダムフォレスト、及びサポートベクター回帰から選択した機械学習により学習される請求項8に記載した搬送予測モデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗圧延された被圧延材を仕上げ圧延する前に誘導加熱するときの加熱制御方法及び装置並びに熱延鋼板の製造方法、搬送予測モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板の熱間圧延設備において、加熱炉により鋼片素材であるスラブが1200℃程度に加熱された後、サイジングプレスを用いてスラブの板幅が調整される。その後、スラブは粗圧延機群により熱間圧延され、おおよそ30~50mm程度の板厚の粗バーと呼ばれる半製品の被圧延材が製造される。次に、被圧延材の先端部がクロップシャーにより切断された後、被圧延材が5~7スタンドの仕上げ圧延機により仕上げ圧延され、板厚1.2~25mmの熱延鋼板が製造される。熱延鋼板はランアウトテーブルの冷却装置によって冷却された後、巻取装置によって巻き取られる。
【0003】
近年の熱間圧延設備では、生産性向上を図るため、スラブを長尺化する傾向がある。このため、粗圧延された被圧延材が仕上げ圧延機に搬送されるまでに、鋼板の長手方向において圧延温度が低下する場合がある。このため、従来から、誘導加熱により被圧延材を加熱して仕上げ圧延における鋼板温度の低下を抑制することが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1には、仕上げ圧延機の出側の鋼板温度が長手方向で一定になるように、誘導加熱装置を用いて鋼板を全体的に加熱する方法が提案されている。特許文献2には、粗圧延された粗バーの板幅両端部に対向するC型鉄心を含む誘導加熱装置を用いて、粗バーの両端を加熱する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-353512号公報
【特許文献2】特開平11-144853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2は、1つの被圧延材に対して誘導加熱装置による加熱が行われる場合に関するものである。一方、熱間圧延設備においては、複数の被圧延材が搬送され順次圧延されていき、先行する被圧延材である先行材を仕上げ圧延している最中に、後行する被圧延材である後行材の粗圧延及び誘導加熱が行われる。この際、先行する被圧延材の仕上げ圧延が完了して次の被圧延材の圧延準備が整うまで後行材を待機させる場合があり、待機時間は先行する被圧延材の圧延状態等によって変わる。誘導加熱装置が待機時間の期間も誘導加熱装置を加熱可能な状態で待機させた場合、誘導加熱装置で電力が浪費されるとともに、誘導加熱装置の劣化が進んでしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、誘導加熱装置での電力の浪費を抑えるとともに装置寿命を延ばすことができる被圧延材の加熱制御方法及び装置並びに熱延鋼板の製造方法、搬送予測モデル生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 粗圧延された被圧延材を誘導加熱装置により加熱し、加熱した前記被圧延材を搬送装置により搬送して仕上げ圧延機により仕上げ圧延することを、先行する被圧延材である先行材及び前記先行材の直後に仕上げ圧延する後行材に対し行う際に、前記誘導加熱装置を制御する被圧延材の加熱制御方法であって、
前記粗圧延機から前記誘導加熱装置へ搬送される前記後行材を検出する検出ステップと、
検出した前記後行材が前記誘導加熱装置まで搬送され加熱開始されるまでの搬送時間を、機械学習された搬送予測モデルに前記先行材の仕上げ圧延に関する情報を含む圧延操業データを入力し、前記搬送予測モデルから出力させる搬送予測ステップと、
出力した前記搬送時間に基づき、前記誘導加熱装置の発振開始タイミングを設定する設定ステップと、
を有する被圧延材の加熱制御方法。
[2] 前記設定ステップにおいて、予測した前記搬送時間よりも前記誘導加熱装置での整定時間分だけ早く発振開始タイミングを設定する[1]に記載の被圧延材の加熱制御方法。
[3] 前記圧延操業データは、前記先行材の前記仕上げ圧延機での圧延条件、もしくは仕上げ圧延前の前記先行材に関する情報を含む[1]又は[2]に記載の被圧延材の加熱制御方法。
[4] 前記圧延操業データは、前記後行材の前記仕上げ圧延機での圧延条件、もしくは仕上げ圧延前の前記後行材に関する情報を含む[1]~[3]のいずれかに記載の被圧延材の加熱制御方法。
[5] 前記誘導加熱装置は複数台直列に設置されており、
前記搬送予測ステップにおいて、前記誘導加熱装置毎に前記搬送時間を予測する[1]~[4]のいずれかに記載の被圧延材の加熱制御方法。
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の被圧延材の加熱制御方法を用いて前記被圧延材の仕上げ圧延を行う熱延鋼板の製造方法。
[7] 粗圧延された被圧延材を誘導加熱装置により加熱し、加熱した前記被圧延材を搬送装置により搬送して仕上げ圧延機により仕上げ圧延することを、先行する被圧延材である先行材及び前記先行材の直後に仕上げ圧延する後行材に対し行う際に、前記被圧延材への加熱を制御する被圧延材の誘導加熱制御装置であって、
前記後行材を前記誘導加熱装置へ搬送するとき、前記先行材の仕上げ圧延に関する情報を含む圧延操業データを機械学習された搬送予測モデルに入力し、前記後行材が前記誘導加熱装置まで搬送され加熱開始されるまでの搬送時間を前記搬送予測モデルの出力として取得する搬送時間予測部と、
前記搬送時間予測部において予測された前記搬送時間で前記誘導加熱装置へ前記被圧延材を搬送するように前記搬送装置を制御する搬送制御部と、
前記搬送時間予測部において予測された前記搬送時間に基づき、前記後行材に対する前記誘導加熱装置の発振開始タイミングを設定する加熱制御部と、
を有する被圧延材の誘導加熱制御装置。
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の搬送予測モデルを生成する搬送予測モデル生成装置であって、
既に仕上げ圧延が行われた前記先行材の圧延操業データと、前記先行材の直後の前記後行材における搬送時間を含む搬送実績データとを取得し、
取得した前記圧延操業データと前記搬送実績データとを用いて前記搬送予測モデルを機械学習し、前記搬送予測モデルを生成する搬送予測モデル生成方法。
[9] 前記搬送予測モデルは、ニューラルネットワーク、決定木学習、ランダムフォレスト、及びサポートベクター回帰から選択した機械学習により学習される請求項8に記載した搬送予測モデル生成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る加熱制御方法及び装置並びに熱延鋼板の製造方法、搬送予測モデル生成方法によれば、機械学習された搬送時間予測部において先行材の圧延操業データに基づいて搬送時間を予測する。これにより、誘導加熱装置の無駄な駆動による不要なコストの増加を抑え、誘導加熱装置の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の誘導加熱制御装置が適用される熱間圧延設備の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の誘導加熱制御装置の好ましい実施形態を示す機能ブロック図である。
【
図3】本発明の被圧延材の加熱制御方法の好ましい実施形態を示すタイミングチャートである。
【
図4】本実施形態の搬送予測モデル生成装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図5】従来の被圧延材の加熱制御方法の一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】本発明の誘導加熱制御装置が適用される誘導加熱装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<熱間圧延設備の構成>
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の誘導加熱制御装置が適用される熱間圧延設備の一例を示す模式図である。
図1の熱間圧延設備1は、加熱炉2、デスケーリング装置3、幅圧下装置4、粗圧延機5、仕上げ圧延機6、冷却装置7及び巻取装置8を備える。また、熱間圧延設備1は、仕上げ圧延機6の入側に設置され、粗圧延機5によって粗圧延された粗バーと呼ばれる被圧延材Sを加熱する誘導加熱装置20と、粗圧延機5から誘導加熱装置20へ被圧延材S1を搬送する搬送装置9とを有する。
【0011】
搬送装置9は、例えば搬送ロールからなり、搬送ロール上に載置された被圧延材を誘導加熱装置20から仕上げ圧延機6へ搬送する。誘導加熱装置20は、誘導加熱によって被圧延材S1を加熱する。誘導加熱方式は、特に限定されず種々の手法を用いることができ、ソレノイド型であってもよいしトランスバース型であってもよい。また、誘導加熱装置20は、被圧延材S1の幅方向及び長手方向の全体を加熱してもよいし、被圧延材S1の板幅端部を加熱するエッジヒータとして機能するものでもよい。
【0012】
図1を参照して熱間圧延設備1の動作例について説明する。まず、スラブが加熱炉2に装入された後、所定の設定温度まで加熱される。加熱炉2から抽出されたスラブは、デスケーリング装置3によって表面に形成された1次スケールが除去された後、幅圧下装置4によって所定の設定幅まで幅圧下される。幅圧下されたスラブは、粗圧延機5において所定厚さまで圧延されることで、おおよそ30~50mm程度の板厚の粗バーと呼ばれる半製品の被圧延材S1が製造される。被圧延材S1は誘導加熱装置20により加熱された後仕上げ圧延機6に搬送される。その後、例えば5~7スタンドの連続式圧延機を有する仕上げ圧延機6により、被圧延材S1は製品厚さまで圧延された鋼板が製造される。鋼板は、仕上げ圧延機6の下流に設置された冷却装置7で所定の温度まで冷却された後、巻取装置8によってコイル状に巻き取られる。
【0013】
熱間圧延設備1は、粗圧延機5の出側に設置された粗出側温度センサ11と、仕上げ圧延機6の入側に設置された仕上入側温度センサ12とを有する。
図1において、粗出側温度センサ11及び仕上入側温度センサ12は、例えば放射温度計からなり、粗出側温度センサ11は粗圧延後の被圧延材S1の表面温度を測定し、仕上入側温度センサ12は、誘導加熱後であって仕上げ圧延前の被圧延材S1の表面温度を測定する。なお、仕上入側温度センサ12が誘導加熱装置20と仕上げ圧延機6との間に配置されている場合について例示しているが、誘導加熱装置20の上流側に配置してもよい。また、仕上入側温度センサ12は誘導加熱装置20と仕上げ圧延機6との間に複数の位置に配置していてもよい。
【0014】
図2は、本発明の誘導加熱制御装置の好ましい実施形態を示す機能ブロック図である。誘導加熱制御装置30は、搬送装置9及び誘導加熱装置20の動作を制御するものであって、仕上げ圧延機6の動作を制御する圧延制御装置40及び熱間圧延設備1全体を制御する設備制御装置(制御用計算機)50と情報伝送可能に接続されている。なお、
図2の誘導加熱制御装置30、圧延制御装置40及び設備制御装置50の構成は、コンピュータ等のハードウェアからなっており、互いに有線もしくは無線によるネットワークによって接続されている。圧延制御装置40は、圧延荷重、圧延トルク、スタンド間張力、ロールギャップ、ワークロールの周速度等の圧延条件に基づき仕上げ圧延機6を制御する。設備制御装置50は、例えば、上述した粗出側温度センサ11及び仕上入側温度センサ12により検出された温度を取得し、取得した温度や被圧延材S1の板厚等の情報を用いて、仕上げ圧延機6の圧延条件の設定計算を行い、設定した圧延条件を圧延制御装置40へ出力する。
【0015】
誘導加熱制御装置30は、誘導加熱装置20へ搬送される被圧延材S1を検出する搬入検出センサ13と、粗圧延された被圧延材S1を誘導加熱装置20へ搬送する際に搬送装置9の動作を制御する搬送制御部31と、誘導加熱装置20を制御する加熱制御部32とを有する。搬入検出センサ13は、例えば被圧延材S1の温度を測定する放射温度計からなり、温度900~1100℃の被圧延材S1の検出位置Pの温度変化に基づいて被圧延材S1の先端部を検出する。なお、搬入検出センサ13は、被圧延材S1の先端部を検出できるものであれば検出原理を問わず、例えば、放射温度計、距離計、板厚計、板幅計もしくはビデオカメラなど、被圧延材S1の先端部を検出可能な任意のセンサを用いることができる。
【0016】
搬送制御部31は、搬送時間Tを後述する搬送時間予測部33から取得し、搬入検出センサ13において被圧延材S1が検出されてから誘導加熱装置20までの期間が搬送時間Tになるように搬送装置9を制御する。搬送時間Tは、被圧延材S1が搬入検出センサ13の検出位置Pから誘導加熱装置20の加熱開始位置HSへ搬送されるまでの期間をいう。この搬送時間Tは、加熱開始位置HSの手前で被圧延材S1を待機させる待機時間Twと、被圧延材S1を誘導加熱装置20へ移動させる移動時間Ttとを加算した期間で表される。
【0017】
搬送制御部31は、被圧延材S1を移動させる際、被圧延材S1の搬送速度Vが設定搬送速度Vrefとなるように搬送装置9を制御する。よって、被圧延材S1の移動時間Ttは、例えば、搬送装置9には、搬送ロールの回転数を計測する回転センサ(図示せず)が取り付けられており、搬送制御部31は回転センサからの信号に基づいて搬送速度Vを測定する。なお、搬入検出センサ13の検出位置Pからの搬送距離を測定するメジャーリングロール(図示せず)が配置され、搬送距離に基づいて搬送速度Vを計測してもよい。
【0018】
設定搬送速度Vrefは、例えば60~80m/minに設定される。被圧延材S1の重量は15~25トンであり、大きな慣性力を持つ。このため、搬送装置9の回転数は搬送過程において必ずしも一定ではない。そこで、搬送制御部31は、搬送装置9の加減速を含めた平均の搬送速度Vを求め、この搬送速度Vが設定搬送速度Vrefになるように制御する。なお、搬送制御部31が設定搬送速度Vrefで搬送されるように制御する場合について例示しているが、待機時間Twと移動時間Ttとの合計が搬送時間Tになればよく、例えば待機時間Twを短くし搬送速度Vを低くして移動時間Ttが長くなるように、搬送速度Vを変更するようにしてもよい。
【0019】
また、搬送制御部31による搬送時間の制御は、待機時間Twと移動時間Tt(=L/Vref)を加算する方法によるものを例示しているが、上述したメジャーリングロールによって計測された被圧延材S1の搬送距離が、距離Lに一致するまでの時間が搬送時間Tになるように制御してもよい。さらに、搬送装置9が回転数を計測するセンサを備え、被圧延材S1が搬入検出センサ13の検出位置Pに到達してから、搬送装置9の回転数を時間積分して搬送距離を算出し、その値が距離Lに一致するまでの時間が搬送時間Tとなるように制御してもよい。
【0020】
加熱制御部32は、被圧延材S1を加熱するときに誘導加熱装置20をON状態にし、加熱が完了したときに誘導加熱装置20をOFF状態に制御する。加熱制御部32は、被圧延材S1が加熱開始位置HSまで搬送される搬送時間Tを後述する搬送時間予測部33から取得し、搬送時間Tに基づいて発振開始タイミングを設定する。
【0021】
ここで、被圧延材S1の加熱を確実に行うためには、被圧延材S1が誘導加熱される加熱開始位置HSに搬送されたときには誘導加熱装置20が作動している必要がある。一方、誘導加熱装置20において発振開始から出力が安定するまで例えば2~5秒の整定時間τが必要になる。このため、被圧延材S1が誘導加熱装置20の加熱開始位置HSに到達してから加熱制御部32が誘導加熱装置20の発振を開始させた場合、被圧延材S1の先端側への加熱が十分に行うことができない。そこで、加熱制御部32は、被圧延材S1が誘導加熱装置20の加熱開始位置HSに到達する前に発振を開始するように制御する。つまり、加熱制御部32は、誘導加熱装置20の発振開始タイミングを(搬送時間T―整定時間τ)に設定する。
【0022】
熱間圧延設備1において、生産効率の向上のために、先行する被圧延材である先行材S1pに対し仕上げ圧延をしている間に、後行する被圧延材である後行材S1fの粗圧延及び誘導加熱が行われる。先行材S1pの仕上げ圧延が完了し、後行材S1fの仕上げ圧延の準備が完了するまで、後行材S1fを待機させる必要がある。仕上げ圧延機6の圧延準備が整わないうちに後行材S1fを搬送すると、操業上の問題が生じるからである。例えば、後行材S1fの仕上げ圧延条件が先行材S1pと異なり、仕上げ圧延機6での条件変更に時間を要する場合、又は先行材S1pの仕上げ圧延が予定よりも時間が掛かった場合等が挙げられる。
【0023】
後行材S1fの待機時間を考慮せずに誘導加熱装置20を作動させた場合、誘導加熱装置20の発振開始タイミングが早すぎて、電力が無駄に消費され誘導加熱装置20の装置寿命が短くなる場合がある。一方で、上述の通り、後行材S1fの待機時間は先行材S1pの仕上げ圧延条件等によって変動するため一律に設定することが難しい。そこで、誘導加熱制御装置30は、先行材S1pに応じた搬送時間Tを予測する搬送時間予測部33を有する。
【0024】
搬送時間予測部33は、搬入検出センサ13が後行材S1fを検出したとき、機械学習された搬送予測モデルMに先行材S1pの仕上げ圧延に関する情報を含む圧延操業データを入力し、搬送時間Tを搬送予測モデルMの出力として取得する。搬送時間予測部33は、取得した搬送時間Tを搬送制御部31及び加熱制御部32に出力する。すると、上述のように、搬送制御部31は、予測した搬送時間Tになるように誘導加熱装置20への後行材S1fの搬送を制御し、加熱制御部32は、搬送時間Tに基づいて誘導加熱装置20の発振開始タイミングを制御する。
【0025】
搬送時間予測部33は、圧延制御装置40及び設備制御装置50から圧延操業データを取得する。圧延操業データは、例えば、粗バー板厚、製品板厚、板幅、仕上げ入側温度、仕上げ出側温度等の先行材S1p自体に関する情報、又は各圧延スタンドでの板厚、圧延荷重、圧延トルク、スタンド間張力、ロールギャップ、ワークロールの周速度等の先行材S1pの仕上げ圧延機6での圧延条件等を含む。さらに、圧延操業データは、仕上げ圧延前の先行材S1pの長さや重量を含んでいても良い。先行材の長さや重量は、後行材S1fの仕上げ圧延開始から圧延終了までに要する時間に影響を与えるものであり、これらが変わると先行材S1pの尾端部が仕上げ圧延機6の最終スタンドを抜けるタイミングが変わるからである。この先行材S1pに関する情報及び仕上げ圧延機6に関する情報等は、先行材S1pの先端部、定常部、尾端部の圧延時に取得されるこれらのデータのいずれのものを用いてもよい。このように、先行材S1pの圧延操業データを用いるのは、被圧延材S1が搬入検出センサ13の検出位置Pに到達して、誘導加熱装置の加熱開始位置HSに搬送されまでの待機時間は、先行材S1pの仕上げ圧延に要する時間が変動することによるためである。
【0026】
また、圧延操業データは、先行材S1pに関する情報に加え、例えば後行材S1fを圧延する際の仕上げ圧延機6での圧延条件等の後行材S1fに関する情報を含んでいても良い。仕上げ圧延機6でのロールギャップおよびロール周速度の設定変更量は、先行材S1pと後行材S1fとの関係で決まる。そこで、圧延操業データとして、後行材S1fについての情報も搬送予測モデルMに入力して搬送時間Tを出力させることにより、搬送時間Tの予測を精度よく行うことができる。さらに、圧延操業データとして、後行材S1fについての情報を用いる場合には、後行材S1fの粗圧延機出側から誘導加熱装置の加熱開始位置HSとの間で測定される温度を用いるのが好ましい。具体的には粗出側温度センサ11により測定される後行材S1fの温度や、仕上入側温度センサ12が誘導加熱装置20の上流側に設置されている場合には仕上入側温度センサ12により測定される後行材S1fの温度である。また、搬入検出センサ13として放射温度計を用いる場合には、搬入検出センサ13により測定される後行材S1fの温度を用いてもよい。
【0027】
なお、先行材S1pの情報だけでなく後行材S1fの情報を圧延操業データとする場合、先行材の圧延操業データと後行材S1fの圧延操業データとは、同じ種類の圧延操業データを組み合わせて用いるのが好ましい。例えば、先行材S1pについてロールギャップを圧延操業データとするのであれば、後行材S1fについてもロールギャップを圧延操業データとするのが好ましい。すると、先行材から後行材S1fへの圧延条件の変化量(差分量)を用いることに相当し、仕上げ圧延機の各機器の設定変更時間と関連付けることができる。
【0028】
搬送時間予測部33は、例えば後行材S1fの先端部が搬入検出センサ13の検出位置Pに到達するタイミングで搬送時間Tを予測する。被圧延材S1の先端部が搬入検出センサ13の検出位置Pに到達するタイミングでは、既に先行材の仕上げ圧延が開始された後であり、先行材の圧延操業データの実績値を取得することができる。また、搬送予測モデルMの入力として、被圧延材S1(後行材)の圧延操業データを用いる場合には、被圧延材S1の仕上げ圧延を実行するための設定計算値が設備制御装置50から取得される。ただし、設備制御装置50による被圧延材S1に対する設定計算が完了していない場合には、圧延材の寸法等の製造諸元に基づいて予め設定されるテーブル値を用いて被圧延材S1の圧延操業データを取得してもよい。
【0029】
なお、搬送時間予測部33は、必ずしも搬入検出センサ13の検出位置Pに到達するタイミングで搬送時間Tの予測を行う必要はなく、検出位置Pを通過する前であっても通過した後であってもよい。搬入検出センサ13の検出位置Pに到達する前であっても、先行材S1pの仕上げ圧延が開始していれば、少なくとも先行材S1pの圧延操業データの実績値を取得できる。また、被圧延材S1の先端部が搬入検出センサ13の検出位置Pを通過した後であっても、被圧延材S1の先端部が搬入検出センサ13の検出位置Pを通過してからの経過時間を考慮して誘導加熱装置20の発振開始タイミングを調整できるからである。
【0030】
さらに、圧延制御装置40は、被圧延材S1の仕上げ圧延機6への進入に不都合がある場合に、後行材S1fの仕上げ圧延機6への進入を許可しない進入不可信号を誘導加熱制御装置30に送信する。進入に不都合がある場合とは、例えば被圧延材S1の仕上げ圧延を開始する際に被圧延材S1に対する設定計算が終了していない場合、被圧延材S1の仕上げ圧延を行うための仕上げ圧延機6のロールギャップやロール周速度の設定変更が完了していない場合などが挙げられる。さらには、予測した搬送時間Tと実際の仕上げ圧延機6で圧延可能な状態になるまでの期間との間にずれが生じる場合がある。この場合には、予測した搬送時間Tに基づく制御よりも、実際の仕上げ圧延機6の状態を優先させる。
【0031】
誘導加熱制御装置30が進入不可信号を受信したとき、搬送制御部31は後行材S1fの先端部が誘導加熱装置20の加熱開始位置HSよりも上流側で被圧延材S1を待機させるように制御する。これにより、被圧延材S1が圧延準備の整っていない仕上げ圧延機6に進入することによる操業トラブルを引き起こすリスクを回避することができる。また、後行材S1fの一部が誘導加熱装置20の下流側で待機している場合、通過した部分は待機中に温度が低下してしまい、加熱エネルギーの無駄が生じる。誘導加熱装置20内で後行材S1fが待機した場合、誘導加熱装置20内に位置する部分が過加熱の状態となり、仕上げ圧延機6での操業トラブルや品質欠陥を引き起こす場合がある。一方、後行材S1fの先端が誘導加熱装置20の開始位置HSよりも上流側で待機している場合、仕上げ圧延機6に進入する被圧延材S1の温度管理を確実に行うことができる。
【0032】
図3は、本発明の被圧延材の加熱制御方法の好ましい実施形態を示すタイミングチャートであり、
図1~
図3を参照して本発明の被圧延材の加熱制御方法について説明する。粗圧延された後行材S1fが搬入検出センサ13により検出されたとき、搬送時間予測部33に先行材S1pの圧延操業テータが入力され、圧延操業データに基づいて予測された後行材S1fの搬送時間Tが出力される。すると、搬送制御部31の制御により、後行材S1fは搬送時間T後に誘導加熱装置20の加熱開始位置HSに搬送されるように、待機時間Twだけ誘導加熱装置20の手前で待機する。
【0033】
一方、加熱制御部32において、被圧延材S1の先端部が搬入検出センサ13の検出位置Pを通過してからの経過時間がカウントされ、予測した搬送時間Tに基づき誘導加熱装置20の発振開始タイミングを設定する。誘導加熱装置20は、誘導加熱制御装置30の制御により、予測された搬送時間Tから整定時間τを減じた時間経過時に発振を開始する。すると、後行材S1fは、搬送時間Tの経過後、誘導加熱装置20へ進入し、これと同時に加熱される。その後、誘導加熱装置20により加熱された後行材S1fは、仕上げ圧延機6に進入し、仕上げ圧延される。なお、誘導加熱装置20の発振開始タイミングを設定する際に、搬送予測モデルMによる搬送時間Tの誤差を考慮して、搬送予測モデルMにより算出される搬送時間Tよりも0~2秒間程度の余裕代を予め設定し、搬送予測モデルMにより算出される搬送時間Tよりも、余裕代分だけ早めに誘導加熱装置20の発振開始タイミングを設定してもよい。これにより、搬送時間Tの誤差が生じても確実に後行材S1fの先端から加熱を開始することができる。
【0034】
<搬送予測モデル生成装置60>
図4は、本実施形態の搬送予測モデル生成装置の一例を示す機能ブロック図である。なお、
図4の搬送予測モデル生成装置の構成は、コンピュータ等のハードウェアで構成されている。搬送予測モデル生成装置60は、搬送時間予測部33の搬送予測モデルMを生成するものであって、搬送予測モデルMを作成する機械学習部61と、被圧延材S1に対し仕上げ圧延機6による圧延が行われた際の過去の圧延操業データ及び搬送実績データを記憶したデータベースDBとを備える。
【0035】
データベースDBには、既に実施された過去の仕上げ圧延時に圧延制御装置40又は各種センサで取得された圧延操業データが記憶されている。圧延操業データの種類は、搬送時間予測部33で使用されるデータと同一であり、先行材S1pに関する圧延実績情報、さらには後行材S1fの圧延実績情報を含む。搬送実績データは後行材S1fを実際に搬送したときの搬送時間Tを意味する。搬送実績データは、搬送制御部31による被圧延材S1への搬送制御に応じて、被圧延材S1の搬送速度Vの実績値や、メジャーリングロール等により計測された被圧延材S1の搬送距離が距離Lに一致するまでの時間の実績値により特定することができる。
【0036】
圧延操業データは被圧延材S1の製造番号やコイル番号など、仕上げ圧延機6による圧延順を識別可能な情報と共にデータベースDBに蓄積される。上述の通り、熱間圧延設備1において被圧延材S1が順次搬送される。先行材S1pは直前に仕上げ圧延された被圧延材S1に対する後行材S1fになり、後行材S1fは直後に仕上げ圧延される被圧延材S1に対する先行材S1pになる。よって、製造番号等による被圧延材S1の仕上げ圧延の順番が分かれば、先行材S1pと後行材S1fとの関係を識別でき、搬送実績データとの対応付けを行うことができる。
【0037】
圧延操業データ及び搬送実績データは、誘導加熱制御装置30において収集されてもよいし、設備制御装置50において収集されてもよいし、搬送情報を収集する専用の装置を用いて収集してもよい。収集された圧延操業データの実績データ及び搬送実績データはデータベースDBに蓄積される。
【0038】
データベースDBに蓄積される実績データ数は、少なくとも10個以上、好ましくは100個以上、より好ましくは1000個以上が好ましい。機械学習モデルの基礎となるデータ数が多いほど、搬送時間Tの予測精度が向上する。
【0039】
機械学習部61は、データベースDBの圧延操業データを学習用の入力データとし、搬送実績データを学習用の出力データとした機械学習により、搬送予測モデルMを生成する。搬送予測モデルMの機械学習の方法は公知の種々の学習方法を適用することができる。機械学習は、例えば、ディープラーニング、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)などを含むニューラルネットワークによる公知の機械学習手法を用いることができる。他の手法としては、決定木学習、ランダムフォレスト、サポートベクター回帰、ガウス過程などが例示できる。また、複数のモデルを組み合わせたアンサンブルモデルを用いてもよい。
【0040】
なお、データベースDBには、仕上げ圧延が行われる度に、圧延操業データが逐次蓄積されていくようにしてもよい。この際、機械学習部61は、例えば1か月に一度等のように定期的に搬送予測モデルMを更新するようにしてもよい。これにより、搬送予測モデルMの予測精度を向上させることができる。
【0041】
上記実施の形態によれば、機械学習された搬送時間予測部33において先行材S1pの圧延操業データに基づいて搬送時間Tを予測する。これにより、予め後行材S1f寸法等に応じたテーブル値などにより搬送時間を設定しておくよりも、搬送時間の予測精度が向上するため、誘導加熱装置の無駄な駆動による不要なコストの増加を抑え、誘導加熱装置の劣化を抑制できる。
【0042】
図5は、従来の加熱制御方法の一例を示すタイミングチャートである。
図5において、後行材S1fが搬入検出センサ13の検出位置Pに到達したタイミングを起点として、搬送距離L/搬送速度Vにより搬送時間Tが予測される。そして、予測した搬送時間Tよりも整定時間τだけ早く、誘導加熱装置20の発振が開始される。例えば、Lは12m、Vが1m/s、整定時間τが2sの場合、被圧延材S1が搬入検出センサ13の検出位置Pに到達してから、10秒後のタイミングで誘導加熱装置の発振が開始される。
【0043】
しかしながら、仕上げ圧延機6による先行材S1pの仕上げ圧延に遅れが生じている場合、後行材S1fは待機状態になる。待機時間中にも誘導加熱装置20の出力が維持された状態となるため、加熱エネルギーの無駄が生じる。さらに、仕上げ圧延機では鋼板の材質を制御するために、圧延中に速度変更を行い、仕上げ圧延機6の出側の鋼板温度を制御することから、被圧延材S1に応じて仕上げ圧延が終了するまでの時間は被圧延材毎に変動する。また、仕上げ圧延における板厚や板幅の変動によっても鋼板の長さに変化が生じ、結果として待機時間は先行材S1pによってばらつきが生じる。
【0044】
さらに、先行材に対する仕上げ圧延時には、各圧延スタンドのロールギャップおよびロール周速度は、先行材に対応した設定値に制御されている。後行材S1fの仕上げ圧延を開始する前には、各圧延スタンドのロールギャップおよびロール周速度を、後行材S1fに対する設定値に変更しておく必要がある。特に電動圧下式の圧延スタンドでは、ロールギャップの設定変更にも一定の時間を要する場合がある。この設定変更が完了するまで後行材S1fは待機状態になる。待機時間中にも誘導加熱装置20の出力が維持された状態となるため、加熱エネルギーの無駄が生じる。
【0045】
そこで、後行材S1fが誘導加熱装置20の入側で待機する待機時間を含む搬送時間Tを先行材S1pの圧延操業データに基づいて予測することにより、先行材S1pによって待機時間にばらつきが生じても精度よく搬送時間Tを予測し、誘導加熱装置20での電力消費を抑制することができる。
【0046】
図6は本発明の誘導加熱制御装置が適用される誘導加熱装置の別の一例を示す模式図である。なお、
図6において、
図2と同一の構成を有する部位には同一の符号を付してその説明を省略する。
図2において1台の誘導加熱装置20が設置されている場合について例示しているが、
図6のように、2台以上の誘導加熱装置20を直列に配置してもよい。
【0047】
図6において、熱間圧延設備100は、第1誘導加熱装置120aと、第1誘導加熱装置120aの後段に設置された第2誘導加熱装置120bとを有する。この場合、搬送時間予測部33は、被圧延材S1が搬入検出センサ13の検出位置Pから距離Laだけ移動して第1誘導加熱装置120aの加熱開始位置HSaに到達する第1搬送時間Taと、被圧延材S1が検出位置Pから距離Lbだけ移動して誘導加熱装置120bの加熱開始位置HSbに到達する第2搬送時間Tbとをそれぞれ予測する。そして、第2搬送時間Taは第1搬送時間よりも長くなり、第1誘導加熱装置120aと第2誘導加熱装置120bの発振開始タイミングは異なるものに設定される。なお、搬送予測モデルMは、搬送時間Ta、Tbの両者を予測してもよいし、搬送時間Ta、Tbをそれぞれ予測するための2つの搬送予測モデルを生成しておいてもよい。この場合も
図2と同様、誘導加熱装置20における無駄な加熱エネルギーを一層低減できる。
【0048】
本発明の実施形態は、上記実施形態に限定されず、種々の変更を加えることができる。例えば、
図1の熱間圧延設備1において、仕上げ圧延機6の入側に、被圧延材S1の表面に生成する2次スケールを除去するためのスケールブレーカーが配置されていてもよい。スケールブレーカーは、通常、誘導加熱装置20の出側に配置される。また、被圧延材S1の先端および尾端の非定常部を切断して除去する不図示のクロップシャーが配置される。通常は、誘導加熱装置20の上流側に配置されるが、誘導加熱装置20の下流側に配置してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1、100 熱間圧延設備
2 加熱炉
3 デスケーリング装置
4 幅圧下装置
5 粗圧延機
6 圧延機
7 冷却装置
8 巻取装置
9 搬送装置
11 粗出側温度センサ
12 仕上げ入側温度センサ
13 搬入検出センサ
20 誘導加熱装置
30 誘導加熱制御装置
31 搬送制御部
32 加熱制御部
33 搬送時間予測部
40 圧延制御装置
50 設備制御装置
60 搬送予測モデル生成装置
61 機械学習部
DB データベース
HS、HSa、HSb 加熱開始位置
M 搬送予測モデル
P 検出位置
S 加熱開始位置
S1 被圧延材
S1f 後行材
S1p 先行材
T、Ta、Tb搬送時間