(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149521
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】照明器具および照明制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/18 20200101AFI20220929BHJP
H05B 47/105 20200101ALI20220929BHJP
【FI】
H05B47/18
H05B47/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051725
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】若林 祐太
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA05
3K273QA39
3K273RA16
3K273TA15
3K273TA41
3K273TA52
3K273TA53
3K273TA54
3K273TA62
3K273TA66
3K273UA18
3K273UA22
3K273UA23
3K273UA27
(57)【要約】
【課題】照明器具の接続作業を簡便にできる照明器具を提供する。
【解決手段】照明器具14は、光源27、電力入力部29、電力線搬送通信子機32、信号変換部33および電源部34を備える。電力入力部29は、照明用バトン13に電気的に接続される電源ケーブル28により電力を入力する。電力線搬送通信子機32は、電力入力部29に入力される電力の波形に重畳されている信号を取り出す。信号変換部33は、電力線搬送通信子機32により取り出された信号を所定の信号に変換する。電源部34は、信号変換部33により変換された信号に応じて、電力入力部29に入力される電力により光源27を点灯制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と;
照明用バトンに電気的に接続される電源ケーブルにより電力を入力する電力入力部と;
前記電力入力部に入力される電力の波形に重畳されている信号を取り出す電力線搬送通信子機と;
前記電力線搬送通信子機により取り出された信号を所定の信号に変換する信号変換部と;
前記信号変換部により変換された信号に応じて、前記電力入力部に入力される電力により前記光源を点灯制御する電源部と;
を備えることを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記電力入力部に入力される電力を外部に分岐出力する電力出力部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の照明器具。
【請求項3】
前記電源部の電力の入力側に、電力の波形に含まれる高周波成分を減衰させるフィルタ部を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の照明器具。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の照明器具と;
前記電源ケーブルにより前記照明器具の前記電力入力部が電気的に接続され、前記照明器具に電力を供給する電力供給部と、上位機と通信するとともに、電力線搬送通信方式により前記照明器具の前記電力線搬送通信子機と通信する電力線搬送通信親機とを有する照明用バトンと;
を備えることを特徴とする照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、信号に応じて点灯制御する照明器具、およびこの照明器具を用いた照明制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、テレビスタジオや舞台などでは、複数の照明用バトンが設置され、これら照明用バトンに複数の照明器具が吊り下げられている。照明用バトンには、照明器具に対して電力供給するコンセントおよび通信用のレセプタクルが設けられている。照明器具は、電源ケーブルによりコンセントに接続されるとともに、通信ケーブルによりレセプタクルに接続される。照明用バトンは例えば調光操作卓などの上位機と通信し、この照明用バトンを通じて上位機と照明器具とが通信し、上位機により照明器具が制御される。
【0003】
ところで、例えばテレビスタジオなどでは、番組毎に使用する照明器具が変更されるため、照明用バトンに対して複数の照明器具を吊り変える吊変え作業が行われている。この吊変え作業では、複数の照明器具の電源ケーブルと通信ケーブルの両方を照明用バトンに対してそれぞれ着脱しなければならず、吊変え作業に手間と時間がかかるため、照明器具の接続作業を簡便にすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、照明器具の接続作業を簡便にできる照明器具および照明制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の照明器具は、光源、電力入力部、電力線搬送通信子機、信号変換部および電源部を備える。電力入力部は、照明用バトンに電気的に接続される電源ケーブルにより電力を入力する。電力線搬送通信子機は、電力入力部に入力される電力の波形に重畳されている信号を取り出す。信号変換部は、電力線搬送通信子機により取り出された信号を所定の信号に変換する。電源部は、信号変換部により変換された信号に応じて、電力入力部に入力される電力により光源を点灯制御する。
【発明の効果】
【0007】
実施形態の照明器具によれば、照明器具の接続作業を簡便にすることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態を示す照明器具を備えた照明制御システムのブロック図である。
【
図3】第2の実施形態を示す照明器具を備えた照明制御システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、第1の実施形態を、
図1および
図2を参照して説明する。
【0010】
図1に照明制御システム10を示す。照明制御システム10は、例えばテレビスタジオや舞台などの照明に適用される。
【0011】
照明制御システム10は、上位機11と、電力供給部12と、照明用バトン13と、この照明用バトン13に配置される照明器具14とを備えている。
【0012】
上位機11は、例えば調光操作卓や、管理装置であるパソコンなどで構成されている。上位機11では、予め、テレビスタジオや舞台などにおいて、どの照明用バトン13のどの位置にどの照明器具14を配置するかという仕込み図が作成される。この仕込み図に従って、照明用バトン13に照明器具14が吊り下げられるとともに電気的に接続される仕込み作業が行われる。
【0013】
上位機11は、固有のIPアドレスを有する。上位機11は、照明用バトン13と通信可能に接続されている。上位機11と照明用バトン13との間は、DMX(Digital Multiplex)規格やRDM(Remote Device Management)規格などの通信プロトコルの信号を例えばArt-net、イーサネット(登録商標)、LANなどの通信方式の信号S1として有線または無線によって双方向に通信可能とされている。
【0014】
また、電力供給部12は、例えば分電盤などであり、例えば商用交流電源からの100Vの交流電力を照明用バトン13に供給する。
【0015】
また、照明用バトン13は、テレビスタジオや舞台などの天井側から吊り下げられるように配置され、昇降装置によって昇降可能に構成される。照明用バトン13には、複数の照明器具14が吊り下げられるとともに電気的に接続される。
【0016】
照明用バトン13には、電力供給部12との間を電気的に接続する電源ケーブル18が電気的に接続される電力入力部19、上位機11との間を電気的に接続する通信ケーブル20が電気的に接続される信号伝送部21、および照明器具14に電力を供給する電力供給部22を有している。なお、一般に、照明用バトン13は、照明器具14に電力を供給するための電力供給部22とともに、照明器具14と通信するためのバトン側信号伝送部を有している。電力入力部19および電力供給部22は例えばコンセントで構成され、信号伝送部21は例えばレセプタクルで構成されている。
【0017】
照明用バトン13は、電力入力部19と電力供給部22との間の電力供給経路に電気的に接続されるとともに信号伝送部21と電気的に接続される電力線搬送通信親機23を有している。電力線搬送通信親機23は、電力線搬送通信方式のマスター側であり、固有のIPアドレスを有し、電力線搬送通信方式により照明器具14が有する電力線搬送通信子機と双方向に通信可能とする。電力線搬送通信親機23は、電力入力部19から電力供給部22に送られる例えば交流電力の波形に信号伝送部21から入力される信号S1を重畳して、100V+信号S1を生成する。また、電力線搬送通信親機23は、照明器具14が有する電力線搬送通信子機から交流電力の波形に重畳されて送られてくる信号S1を取り出して受信し、上位機11に送信する。
【0018】
なお、電力入力部19と電力供給経路における電力線搬送通信親機23の接続点との間には、交流電力の波形に重畳される信号S1が電力供給部12側に出力されるのを防止するフィルタが介在されている。
【0019】
また、照明器具14は、筐体26と、この筐体26内に配置される光源27と、電源ケーブル28が電気的に接続される電力入力部29と、この電力入力部29に接続された電力供給経路30に接続された電力出力部31、電力線搬送通信子機32、信号変換部33および電源部34とを備えている。
【0020】
照明器具14は、例えば
図2に示すスポットライトなどが含まれる。照明器具14の筐体26には、照明用バトン13に吊り下げるためのアーム35が取り付けられている。筐体26の背面側には、電源ケーブル28が電気的に接続される電力入力部29、および電力出力部31が設けられている。電源ケーブル28は、照明用バトン13の電力供給部22あるいは他の照明器具14の電力出力部31に電気的に接続される。電力出力部31は、電力入力部29に入力された電力を分岐出力する例えば電力スルーコンセントで構成されている。
【0021】
光源27は、例えばLEDまたは有機ELなどの半導体発光素子や、ランプなどが用いられる。
【0022】
電力線搬送通信子機32は、電力線搬送通信方式のターミナル側であり、固有のIPアドレスを有し、電力線搬送通信方式により照明用バトン13の電力線搬送通信親機23と双方向に通信可能とする。電力線搬送通信子機32は、照明用バトン13から電力入力部29に入力される交流電力の波形に重畳されてくる信号S1を取り出して受信するとともに信号変換部33に送信し、また、電源部34から送信されるとともに信号変換部33で変換された信号S1を入力し、交流電力の波形に重畳して照明用バトン13に送信する。電力線搬送通信子機32と照明用バトン13の電力線搬送通信親機23との間は、上位機11と照明用バトン13の電力線搬送通信親機23との間の通信方式と同じ通信方式によって双方向に通信可能とされている。
【0023】
信号変換部33は、DMXノードであり、電力線搬送通信子機32および電源部34とそれぞれ双方向に通信可能とする。信号変換部33は、電力線搬送通信子機32から送られてくる信号S1をDMX方式やRDM方式の信号S2に変換して電源部34に送信し、また、電源部34から送信されるRDM方式の信号S2を電力線搬送通信子機32で通信可能な通信方式の信号S1に変換して電力線搬送通信子機32に送信する。
【0024】
電源部34は、固有のIPアドレスを有し、信号変換部33に対してDMX方式やRDM方式の信号S2を双方向に送受信する。電源部34は、信号変換部33から送信されるDMX方式やRDM方式の信号S2のうち自己のIPアドレスに関連付けられている信号S2を入力し、この信号S2に応じて電力入力部29から入力される電力を所定の点灯電力に変換して光源27に供給し、光源27を点灯制御する。また、電源部34は、固有の器具ID、器具種類、メーカー、製品名および製造番号などの固有情報や、入力された信号S2に応じた動作状況などを含む動作情報を、自己のIPアドレスに関連付けられたRDM方式の信号S2として信号変換部33に送信可能とする。
【0025】
電源部34の電力入力側には、電力の波形に含まれる高周波成分を減衰させるフィルタ部36が設けられている。フィルタ部36は、電源部34内の電力入力部に設けられていてもよいし、電源部34と電力供給経路30に電力線搬送通信子機32が接続される接続点との間に設けられていてもよい。
【0026】
また、
図1において、照明用バトン13に電源ケーブル28で電気的に接続される1番目の照明器具14に対して、照明用バトン13に吊り下げられる2番目以降の1つまたは複数の照明器具14の電力系統がそれぞれ電源ケーブル28にて順次直列に接続されてもよい。この場合、1番目の照明器具14の電力出力部31に2番目の照明器具14の電源ケーブル28が電気的に接続され、さらに2番目の照明器具14の電力出力部31に3番目の照明器具14(
図1には図示されない)の電源ケーブル28が電気的に接続されるというように、複数の照明器具14の電力系統が順次直列に接続される。
【0027】
そして、照明器具14の仕込み作業においては、仕込み図に従って、照明用バトン13の位置に所定の照明器具14を吊り下げるとともに電気的に接続する。この際、照明用バトン13に対しては1番目の照明器具14の電源ケーブル28を接続すれば、2番目以降の照明器具14は同じ照明用バトン13に吊り下げられる隣接する照明器具14の電力出力部31に電源ケーブル28を接続すればよい。
【0028】
また、上位機11は、照明用バトン13を介して照明器具14と通信し、照明器具14を個別に制御する。
【0029】
上位機11は照明器具14を制御する信号S1を所定の通信方式によって照明用バトン13に送信し、照明用バトン13の電力線搬送通信親機23により電力供給部12から供給される交流電力の波形に上位機11から入力される信号S1を重畳する。上位機11から送信する信号S1には、各照明器具14の固有のIPアドレスと制御内容とが関連付けられている。
【0030】
照明用バトン13から電源ケーブル28を通じて1番目の照明器具14に供給される100V+信号S1は、2番目以降の照明器具14電源ケーブル28を介して2番目以降の照明器具14にも順次供給される。
【0031】
各照明器具14では、電力線搬送通信子機32により、交流電力の波形に重畳されてくる信号S1を取り出して受信し、信号変換部33に送信する。信号変換部33は、電力線搬送通信子機32から送信される信号S1をDMX方式やRDM方式の信号S2に変換して、信号S2を電源部34に送信する。なお、信号変換部33を動作させるための電力は、電力入力部29に入力された100V+信号S1をそのまま受け取って用いてもよいし、電力線搬送通信子機32から100V+信号S1をそのまま受け取って用いてもよい。また、電力線搬送通信子機32から100V+信号S1から信号S1を取り除いた交流電力を受け取って用いてもよい。
【0032】
各照明器具14の電源部34は、信号変換部33から送信されるDMX方式やRDM方式の信号S2のうち自己のIPアドレスに関連付けられている信号S2を受信し、この信号S2に応じて電力入力部29から入力される電力を所定の点灯電力に変換して光源27に供給し、光源27を点灯制御する。
【0033】
一方、各照明器具14の電源部34は、自己のIPアドレスが関連付けられた固有情報や動作情報を含むRDM方式の信号S2を信号変換部33に送信する。信号変換部33は、電源部34から送信されてくるRDM方式の信号S2を電力線搬送通信子機32で通信可能な通信方式の信号S1に変換して電力線搬送通信子機32に送信する。電力線搬送通信子機32は、信号変換部33から入力される信号S1を照明用バトン13から供給されている交流電力の波形に重畳して照明用バトン13に送信する。このとき、2番目以降の照明器具14からの信号は1番目の照明器具14を通じて照明用バトン13に送信される。
【0034】
照明用バトン13の電力線搬送通信親機23は、照明器具14から交流電力の波形に重畳されて送られてくる信号S1を取り出して受信し、上位機11に送信する。上位機11は、照明用バトン13から伝送される信号S1を受信し、各照明器具14の情報を取得する。
【0035】
このように、本実施形態の照明器具14では、照明用バトン13に対して電源ケーブル28のみを接続するだけで上位機11との通信が可能となり、照明用バトン13に対する照明器具14の接続作業を簡便にできる。なお、本実施形態の照明器具14では、照明用バトン13に対してだけでなく、電力線搬送通信方式が整備された環境への照明器具14の取付全般において、電源ケーブル28のみを接続するだけで調光信号などの信号を受信することが可能となるため、信号線などを接続する必要がなく、接続作業を簡便にできる。
【0036】
そのため、例えばテレビスタジオなどで、番組毎に使用する照明器具14が変更されるが、照明用バトン13に対して照明器具14を吊り変える吊変え作業を容易かつ短時間でできる。
【0037】
また、照明器具14は、電力入力部29に入力される電力を外部に分岐出力する電力出力部31を備えることにより、他の照明器具14を接続し、電力供給および通信可能にできる。
【0038】
また、電源部34の電力の入力側に、電力の波形に含まれる高周波成分を減衰させるフィルタ部36を備えているため、電源部34が有するスイッチング素子の動作で電力の波形に発生する雑音が電力線搬送通信子機32や電力線搬送通信親機23に影響を与えるのを低減できる。
【0039】
また、上位機11に対して複数の照明器具14の信号系統を直列に接続してDMX信号を伝送する場合、末端の照明器具14ではDMX信号の反射で波形が乱れるのを防止するために、スイッチ切換で終端抵抗を接続することが必要となっているが、電力線搬送通信方式を採用することにより、終端抵抗が不要となり、スイッチ切換も必要なく、人為的な切換ミスも生じなくなる。
【0040】
また、上位機11に対して複数の照明器具14の信号系統を直列に接続してDMX信号を伝送する場合、DMXノードの規格から照明器具14の接続台数が最大で32台に制限されるが、電力線搬送通信方式により、通信量が増加し、最大絶族台数を増加させることができる。
【0041】
【0042】
照明器具14は、電力出力部31を備えていない。この場合、各照明器具14は、それぞれ電源ケーブル28を照明用バトン13に接続することになる。さらに、照明用バトン13には、各照明器具14の吊り下げ位置に電力供給部22が設置される。複数の電力供給部22は並列に電気的に接続されている。
【0043】
この実施形態では、照明器具14の構成を簡素化および小形化できる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 照明制御システム
11 上位機
13 照明用バトン
14 照明器具
22 電力供給部
23 電力線搬送通信親機
27 光源
28 電源ケーブル
29 電力入力部
31 電力出力部
32 電力線搬送通信子機
33 信号変換部
34 電源部
36 フィルタ部