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特開2022-149529未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149529
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/355 20190101AFI20220929BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20220929BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20220929BHJP
   B29C 71/00 20060101ALI20220929BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20220929BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
B29C48/355
B29C48/88
B29C48/92
B29C71/00
B29K21:00
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051735
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】北原 翼
(72)【発明者】
【氏名】三田村 高志
(72)【発明者】
【氏名】伊東 義和
【テーマコード(参考)】
4F201
4F207
【Fターム(参考)】
4F201AA45
4F201AG01
4F201AJ02
4F201AJ03
4F201BA07
4F201BC02
4F201BC13
4F201BD05
4F201BQ12
4F201BQ22
4F201BQ31
4F201BR02
4F201BR06
4F201BR21
4F207AA45
4F207AG01
4F207AH20
4F207AJ01
4F207AJ02
4F207AJ08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK51
4F207KM16
4F207KW26
4F207KW50
(57)【要約】
【課題】未加硫ゴム部材の経時変形を効果的に抑制できる簡便で高い汎用性を有する未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置および方法を提供する。
【解決手段】カレンダ装置10から押し出された未加硫ゴム部材Rを載置した載置部2を、筒状体4と、この筒状体4に挿入されて筒状体4を回転可能かつ筒状体4の半径方向に遊動可能に支持する軸芯材3とを有する構成にして、未加硫ゴム部材Rを筒状体4の外周面に当接させて載置して、加振機6により加振して生じる振動を軸芯材3を介して間接的に筒状体4に伝達することで、筒状体4によって未加硫ゴム部材Rに振動を付与し、付与した振動により未加硫ゴム部材Rの経時変形を短時間で促進させ、その後の経時変形を抑制する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し出された未加硫ゴム部材が載置される載置部と、前記載置部を加振する加振機とを有する未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置において、
前記載置部が、筒状体と、この筒状体に挿入されて前記筒状体を回転可能かつ前記筒状体の半径方向に遊動可能に支持する軸芯材とを有し、前記未加硫ゴム部材が前記筒状体の外周面に当接して載置され、前記加振機により加振されて生じる振動が前記軸芯材を介して前記筒状体に伝達される構成にしたことを特徴とする未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置。
【請求項2】
前記筒状体と前記軸芯材のいずれか一方が金属製、いずれか他方が非金属製である請求項1に記載の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置。
【請求項3】
前記未加硫ゴム部材を別工程へ搬送する搬送経路に、前記載置部が搬送方向に間隔をあけて複数設置されている請求項1または2に記載の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置。
【請求項4】
搬送方向に間隔をあけて複数設置されているそれぞれの前記載置部は、すべて同じ仕様に設定されている請求項3に記載の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置。
【請求項5】
搬送方向に間隔をあけて複数設置されているそれぞれの前記載置部には、異なる仕様に設定されているものがある請求項3に記載の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置。
【請求項6】
前記軸芯材の横断面の形状または大きさの少なくとも一方が長手方向で変化している請求項1~4のいずれかに記載の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置。
【請求項7】
前記載置部に載置される前記未加硫ゴム部材を加温する加温手段を有する請求項1~6のいずれかに記載の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置。
【請求項8】
押し出された未加硫ゴム部材を載置した載置部を加振することにより、前記未加硫ゴム部材に振動を付与する未加硫ゴム部材の経時変形抑制方法において、
前記載置部を、筒状体と、この筒状体に挿入されて前記筒状体を回転可能かつ前記筒状体の半径方向に遊動可能に支持する軸芯材とを有する構成にして、前記未加硫ゴム部材を前記筒状体の外周面に当接させて載置し、加振機により加振して生じる振動を前記軸芯材を介して間接的に前記筒状体に伝達することを特徴とする未加硫ゴム部材の経時変形抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置および方法に関し、さらに詳しくは、未加硫ゴム部材の経時変形を効果的に抑制できる簡便で高い汎用性を有する未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する工程では、カレンダ装置やゴム押出機によって長尺の未加硫ゴム部材が押出され、この未加硫ゴム部材は必要な長さや形状に加工して使用されている。このような未加硫ゴム部材は残留応力などに起因して経時的に変形することが知られている。未加硫ゴム部材の経時変形(例えば長さ方向の収縮)が過大であると、その未加硫ゴム部材を用いて成形した未加硫のゴム成形品が設計どおりの形状にならない、或いは、未加硫ゴム部材どうしの間に不要な隙間が生じるなどの不具合が生じる。
【0003】
そこで、未加硫ゴム部材の長さ方向の収縮を抑制するために、搬送コンベヤを加振することで、搬送コンベヤで搬送されている未加硫ゴム部材に振動を付与することが提案されている(特許文献1参照)。未加硫ゴム部材は付与された振動によってその収縮が緩和されるが、付与する振動周波数に応じて収縮程度(収縮率)には差異が生じる(特許文献1の段落0028、図8参照)。詳述すると、未加硫ゴム部材の収縮を効果的に抑制できる振動周波数は、未加硫ゴム部材の仕様(大きさ、形状、ゴム種、押出条件など)に依存する。したがって、収縮を短時間で抑制するには、未加硫ゴム部材の仕様毎に適切な振動周波数に設定する必要がある。それ故、様々な仕様の未加硫ゴム部材に対して、簡便に経時変形を効果的に抑制するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-244090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、未加硫ゴム部材の経時変形を効果的に抑制できる簡便で高い汎用性を有する未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置は、押し出された未加硫ゴム部材が載置される載置部と、前記載置部を加振する加振機とを有する未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置において、前記載置部が、筒状体と、この筒状体に挿入されて前記筒状体を回転可能かつ前記筒状体の半径方向に遊動可能に支持する軸芯材とを有し、前記未加硫ゴム部材が前記筒状体の外周面に当接して載置され、前記加振機により加振されて生じる振動が前記軸芯材を介して前記筒状体に伝達される構成にしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の未加硫ゴム部材の経時変形抑制方法は、押し出された未加硫ゴム部材を載置した載置部を加振することにより、前記未加硫ゴム部材に振動を付与する未加硫ゴム部材の経時変形抑制方法において、前記載置部を、筒状体と、この筒状体に挿入されて前記筒状体を回転可能かつ前記筒状体の半径方向に遊動可能に支持する軸芯材とを有する構成にして、前記未加硫ゴム部材を前記筒状体の外周面に当接させて載置し、加振機により加振して生じる振動を前記軸芯材を介して間接的に前記筒状体に伝達することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加振機により加振して生じる振動を軸芯材を介して間接的に筒状体に伝達する。これにより、筒状体に当接させて載置されている未加硫ゴム部材に対して、加振機の加振によって単純に振動を付与する場合に比して、広範囲の周波数帯でより多数の有効なピーク振幅を有する振動が付与される。その結果、本発明は、様々な仕様の未加硫ゴム部材に対して経時変形を効果的に抑制することができ、簡便でありながらも高い汎用性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置が設置された搬送経路を側面視で例示する説明図である。
図2図1の経時変形抑制装置を拡大して側面視で例示する説明図である。
図3図2の経時変形抑制装置を平面視で例示する説明図である。
図4図2の軸芯材と筒状体を横断面視で例示する説明図である。
図5】加振機の加振による回転ローラでの振動波形を例示する説明図である。
図6】加振機の加振による筒状体での振動波形を例示する説明図である。
図7】軸芯材の外径が20mmの場合の筒状体での振動波形を例示する説明図である。
図8】軸芯材の外径が25mm場合の筒状体での振動波形を例示する説明図である。
図9】筒状体の内径が31mmの場合の筒状体での振動波形を例示する説明図である。
図10】筒状体の内径が35mmの場合の筒状体での振動波形を例示する説明図である。
図11】筒状体の材質を変化させた場合の筒状体での振動波形を例示する説明図である。
図12】搬送経路での経時変形抑制装置の別の設置例を側面視で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置および方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0011】
図1図4に例示する本発明の未加硫ゴム部材の経時変形抑制装置1(以下、抑制装置1という)は、長尺の未加硫ゴム部材Rの経時変形を促進させて早期に終結させる。これにより、その後に未加硫ゴム部材Rに大きな経時変形が生じることを抑制する。押し出された長尺の未加硫ゴム部材Rは、一般的に長手方向については経時的に収縮し、この収縮に伴って幅方向および厚さ方向については経時的に増大する変形が生じる。したがって、この抑制装置1は、未加硫ゴム部材Rの長手方向の経時的収縮とこれに伴う幅方向および厚さ方向の経時的増大を促進させて早期に終結させる。尚、以下の実施形態では、カレンダ装置10によって押し出された未加硫ゴム部材Rを例にして説明するが、ゴム押出機など他の設備によって押し出された未加硫ゴム部材Rについても本発明を同様に適用できる。
【0012】
抑制装置1は、押し出された未加硫ゴム部材Rが載置される載置部2と、載置部2を加振する加振機6とを備えている。さらに、この実施形態では抑制装置1は、載置部2に載置される未加硫ゴム部材Rを加温する加温手段7を有している。加温手段7は任意で設けることができる。
【0013】
この実施形態では、抑制装置1は、カレンダ装置10から押出された未加硫ゴム部材Rを別工程へ搬送する搬送経路に設置されている。この搬送経路には、多数の回転ローラ8aが間隔をあけて配置された搬送手段8が設置されていて、搬送経路の終端には巻取りドラム9が配置されている。多数の回転ローラ8aは、フリー回転するローラだけでなく回転駆動するローラを少なくとも1本含んでいる。この回転駆動する回転ローラ8aの駆動力によって未加硫ゴム部材Rは搬送経路を搬送される。搬送された未加硫ゴム部材Rは巻取りドラム9に巻き取られて、次工程で使用されるまで一時保管される。
【0014】
載置部2は、筒状体4と、筒状体4に挿入される軸芯材3とを有している。軸芯材3の両端はフレーム5に接合されていて、軸芯材3は回転不能にフレーム5に固定されている。尚、軸芯材3を回転可能にフレーム5に軸支することもできる。軸芯材3は中実または中空の棒状体であり、この実施形態では横断面形状が長手方向で一定の中実円柱になっている。
【0015】
軸芯材3の横断面形状は円形に限らず、楕円形または三角形、四角形以上の多角形にすることもできるが、円形外形にすることが好ましい。また、横断面が長手方向で非一定の軸芯材3を採用することもできる。例えば、軸芯材3の長手方向一端部と他端部と中央部との3領域のうちの少なくとも1領域を、他の領域とは、横断面の形状または大きさの少なくとも一方を異ならせることもできる。
【0016】
軸芯材3は、一般炭素鋼、ステンレス鋼やアルミニウム合金など種々の金属または非金属で形成されている。非金属としては、種々の硬質樹脂を使用することができる。
【0017】
筒状体4は横断面形状が長手方向で実質的に一定の円筒体である。筒状体4の内周面、外周面の少なくとも一方には凹凸を設けることもできる。
【0018】
筒状体4は、一般炭素鋼、ステンレス鋼やアルミニウム合金など種々の金属または非金属で形成されている。非金属としては、種々の硬質樹脂を使用することができる。筒状体4と軸芯材3とは同じ材質にすることもできるが、異なる材質にすることもできる。したがって、金属製の筒状体4と非金属製の軸心材3の組合せ、非金属製の筒状体4と金属製の軸心材3の組合せ、金属製の筒状体4と金属製の軸心材3の組合せ、或いは、非金属製の筒状体4と非金属製の軸心材3の組合せを採用することができる。
【0019】
加振機6としては、公知の種々の加振機6を用いることができる。加振機6はフレーム5に接続されている。加振機6が作動するとフレーム5が加振され、これに伴い、軸芯材3が加振されて振動する。この振動は軸芯材3を介して筒状体4に伝達される。加振機6による加振方向は軸芯材3(筒状体4)の半径方向である。加振機6を軸芯材3に接続して、軸芯材3を直接加振して振動させてもよい。
【0020】
加温手段7としては、公知の各種ヒータ類を用いることができる。例えば、筒状体4を加温するヒータや未加硫ゴム部材Rを直接加温する温風ヒータなどを用いることができる。
【0021】
軸芯材3の外径(最大外径)は、筒状体4の内径(最小内径)よりも大きく設定されていて、軸芯材3の外周面と筒状体4の内周面との間には隙間gが形成される。これにより、軸芯材3は、筒状体4を回転可能に支持し、かつ筒状体4を筒状体4の半径方向に遊動可能に支持する。筒状体4は軸芯材3を軸にして回転するが、軸芯材3は筒状体4の筒軸中心に固定されていない。即ち、筒状体4は軸芯材3を偏芯させた状態で回転するので、隙間gの大きさは変動し、軸芯材3の周方向位置によって隙間gの大きさは異なる。
【0022】
また、軸芯材3は筒状体4よりも若干(例えば、数mm~数cm程度)長くなっている。これにより、筒状体4は軸芯材3に対して長手方向にも若干移動可能になっている。
【0023】
筒状体4は軸芯材3に対して固定されずに外挿されているだけなので、軸芯材3と筒状体4との間で振動が伝達されることで、特徴的な振動波形になる。即ち、図5に例示するように、加振機6によって同じ加振条件で、フリー回転する回転ローラ8aを加振した場合の振動波形VRと、図6に例示するように、軸芯材3を介して筒状体4に伝達された振動波形Vd(筒状体4での振動波形Vd)とは大きく異なる。図5に例示する振動波形VRは中空円筒状の鉄鋼製の外径61mmの回転ローラ8aの場合のデータである。図6に例示する振動波形Vdは、中軸円柱状の鉄鋼製の外径20mmの軸芯材3に内径31mmの筒状体4を外挿した場合のデータである。図6に例示する振動波形Vdは図5に例示する振動波形VRに比して、広範囲の周波数帯でより多数の有効なピーク振幅を有している。有効なピーク振幅は例えば0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。本発明はこの振動波形Vdの振動を巧みに利用して未加硫ゴム部材Rの経時的変化を効果的に抑制する。尚、図5図6および後述する図7図11に例示するデータの振幅の方向は筒状体4の半径方向(上下方向)である。
【0024】
図7、8に例示するように、加振機6による加振条件および筒状体4の仕様を共通にして、軸芯材3の外径のみを異ならせると、それぞれの場合で筒状体4での振動波形Vd(Vd1、Vd2)は変化する。図7図8に例示する振動波形Vd1、Vd2はそれぞれ、鉄鋼製の筒状体4の内径を35mmにした共通条件下で、中実円柱状の鉄鋼製の軸芯材3の外径を20mm、25mmにした場合のデータである。
【0025】
図8図9に例示するように、加振機6による加振条件および軸芯材3の仕様を共通にして、筒状体4の周壁厚さが不変で内径のみを異ならせると、それぞれの場合で、筒状体4での振動波形Vd(Vd3、Vd4)は変化する。図8図9に例示する振動波形Vd3、Vd4はそれぞれ、中実円柱状の鉄鋼製の軸芯材3の外径を20mmにした共通条件下で、鉄鋼製の筒状体4の内径を31mm、35mmにした場合のデータである。
【0026】
図9に例示するように、加振機6による加振条件、軸芯材3および筒状体4の材質を除く仕様を共通にして、筒状体4の材質のみを異ならせると、それぞれの場合で、筒状体4での振動波形Vd(Vd5、Vd6)は変化する。図9では振動波形Vd5(黒色)と振動波形Vd6(グレイ色)とが重ねて記載されている。振動波形Vd5、Vd6はそれぞれ、中実円柱状の鉄鋼製の軸芯材3の外径を20mm、筒状体4の内径を31mmにした共通条件下で、筒状体4の材質を鉄鋼製、樹脂製にした場合のデータである。振動波形Vd5は振動波形Vd6よりもピーク振幅が大きくなっている。
【0027】
図7図11に例示するデータから、軸芯材3の外周面と筒状体4の内周面とのすき間gの大きさ、軸芯材3と筒状体4との材質の組合せ(軸芯材3と筒状体4との質量差)等を調整することで、所望の振動波形Vdを得ることが可能になる。そこで、広範囲の周波数帯でより多数の大きなピーク振幅(例えば0.05mm以上、より好ましくは0.1mm以上)を有する振動波形Vdになるように、これらを設定するとよい。尚、振動波形Vdの振幅は、加振機6による加振振幅を大きくするに連れて大きくすることが可能である。
【0028】
次に、本発明の未加硫ゴム部材の製造方法の手順の一例を説明する。
【0029】
カレンダ装置10は複数のカレンダロール11を有している。これらカレンダロール1の間に未加硫ゴムを通過させる。カレンダロール11の間から未加硫ゴムが押出されることにより、未加硫ゴムはシート状の未加硫ゴム部材Rに成形される。未加硫ゴム部材Rは後工程において、タイヤのトレッドゴムやサイドゴム等として使用される。カレンダ装置10は、同じ仕様の未加硫ゴム部材Rを複数ロット連続して製造することも、1つの仕様の未加硫ゴム部材Rを製造した後、異なる仕様の未加硫ゴム部材Rを製造することもある。
【0030】
カレンダ装置10から押し出された未加硫ゴム部材Rは、搬送経路に配置された搬送手段によって巻取りドラム9まで搬送される。図2に例示するように、搬送途中で未加硫ゴム部材Rは、筒状体4の外周面に当接して載置されて通過する。未加硫ゴム部材Rは軸芯材3には当接しない。
【0031】
未加硫ゴム部材Rの搬送中に加振機6によりフレーム5を加振する。必要に応じて加温手段7も作動させる。フレーム5を加振することに伴い、軸芯材3も加振されて振動する。軸芯材3の振動は軸芯材3を介して筒状体4に伝達される。筒状体4に伝達された振動波形は、図5に例示したように、広範囲の周波数帯でより多数の有効なピーク振幅を有する振動波形になる。
【0032】
その結果、この振動波形の振動は、様々な仕様の未加硫ゴム部材Rに対して経時変形を促進させて早期に経時変化を終結させるには有効に機能する。即ち、付与する振動周波数を未加硫ゴム部材Rの仕様毎に設定する必要がなく、未加硫ゴム部材Rの経時変形を効果的に抑制できるので高い汎用性を有している。また、軸芯材3を筒状体4に挿入して、筒状体4を回転可能かつ筒状体4の半径方向に遊動可能に支持して、軸芯材3を介して筒状体4に振動を伝達するという簡便な構成である。
【0033】
筒状体4と軸芯材3の少なくも一方を非金属製にすると筒状体4と軸芯材3との干渉による騒音を低減するには有利になる。一方で、筒状体4と軸芯材3の両方が非金属製であると筒状体4での振動が吸収されて大きな振幅を確保し難くなる。これに伴い、押出物Rの経時変形を効果的に抑制するには不利になる。
【0034】
そこで、筒状体4と軸芯材3のいずれか一方を金属製、いずれか他方を非金属製にすると、筒状体4と軸芯材3との干渉による騒音を低減しつつ、筒状体4での振動の振幅を大きくするには有利になる。筒状体4は金属製よりも非金属製にすると軽量化し易くなり、軽量化に伴って筒状体4での振動の振幅を大きくするには有利になる。そのため、筒状体4を非金属製にして軸芯材3を金属製にするとよい。
【0035】
未加硫ゴム部材Rは横断面が長方形などの幅方向に均一な形状だけでなく、幅方向に不均一な形状の場合もある。このような形状の未加硫ゴム部材Rでは、経時変形の具合が幅方向で異なる。そこで、幅方向で異なる経時変形具合に対応させて、その経時変形を効果的に抑制するように、軸芯材3の横断面の形状または大きさの少なくとも一方が長手方向で変化している仕様にすることもできる。具体的には、未加硫ゴム部材Rの厚さが幅方向両端部よりも中央部で大きい場合は、円形外形の軸芯材3の外径を長手方向両端部よりも中央部で大きくする、または、小さくする。未加硫ゴム部材Rの厚さが幅方向一端部から他端部に向かって大きくなっている場合は、円形外形の軸芯材3の外径を長手方向一端部から他端部に向かって大きくする、または、小さくする。
【0036】
未加硫ゴム部材Rに対する加温手段7による加温温度は、未加硫ゴム部材Rの加硫が遅滞なく進行する温度よりも低くするが、適度な高温にする。例えば、加温手段7によって未加硫ゴム部材Rを70℃~90℃程度に加温する。この温度範囲に加温することで未加硫ゴム部材Rの加硫を実質的に進行させることなく、経時変形をより促進させるには有利になる。
【0037】
図12に例示する未加硫ゴム部材Rの搬送経路には、載置部2が搬送方向に間隔をあけて複数設置されている。搬送方向に間隔をあけて複数設置されているそれぞれの載置部2は、すべて同じ仕様に設定することができる。即ち、搬送方向に間隔をあけた複数の位置でそれぞれの載置部2によって未加硫ゴム部材Rに対して同様の振動を付与する。
【0038】
或いは、搬送方向に間隔をあけて複数設置されているそれぞれの載置部2には、異なる仕様に設定されているものを混在させることもできる。例えば、搬送方向に間隔をあけた複数の位置で、それぞれの載置部2によって未加硫ゴム部材Rに対して付与する振動の有効なピーク振幅の周波数分布を異ならせることもできる。
【実施例0039】
図1に例示した同様の搬送経路を用いて、搬送経路の途中で1本のフリー回転するローラを加振機で加振して振動させながら横断面四角形状の未加硫ゴム部材を搬送した場合(従来例)と、図2図4に例示する本発明の抑制装置を用いて1本の筒状体に振動を伝達しながら未加硫ゴム部材を搬送した場合(実施例)とで、搬送が完了して60分経過後にそれぞれの未加硫ゴム部材の変形具合を測定し、搬送直後と比較した。従来例と実施例との違いは未加硫ゴム部材に振動を付与するのが、上記のフリー回転するローラであるか上記の筒状体であるかのみであり、他の条件は共通である。従来例のフリー回転するローラの外径は61mm、実施例の鉄鋼製の中実円柱状の軸芯材の外径は20mm、鉄鋼製の筒状体の内径は31mmであった。その測定結果を表1に示す。
【0040】
表1では搬送が完了した直後の未加硫ゴム部材の寸法(長さ、幅、厚さ)を基準にして、搬送が完了して60分経過後に測定した測定値の増減率を示している。長さの増減率がマイナスになっているのは、経時変形により収縮したことを示している。幅、厚さの増減率がプラスになっているのは、経時変形により増大したことを示している。
【0041】
【表1】
【0042】
表1の結果から、実施例は従来例に比して、未加硫ゴム部材の経時変形を効果的に抑制できることが分かる。
【符号の説明】
【0043】
1 経時変形抑制装置
2 載置部
3 軸芯材
4 筒状体
5 フレーム
6 加振機
7 加温手段
8 搬送手段
8a 回転ローラ
9 巻取りドラム
10 カレンダ装置
11 カレンダロール
R 未加硫ゴム部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12