(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014956
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】産卵鶏用配合飼料
(51)【国際特許分類】
A23K 50/75 20160101AFI20220114BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20220114BHJP
【FI】
A23K50/75
A23K10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117490
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000232612
【氏名又は名称】日本農産工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(72)【発明者】
【氏名】権藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正志
(72)【発明者】
【氏名】金子 政弘
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005DA02
2B150AA05
2B150AB01
2B150CE01
2B150CE09
2B150CJ08
(57)【要約】
【課題】卵の生産性のみならず飼料の食下量や糞量の低下など、総合的な観点から飼料効率を上げるために、約3000kcal/kg以上の代謝エネルギーを有し、かつ従来の飼料に対して産卵率及び卵重が同等以上の新規配合飼料を提供すること。
【解決手段】穀類、大豆粕及び油脂を含み、代謝エネルギーが2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類、大豆粕及び油脂を含み、代謝エネルギーが2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料。
【請求項2】
前記大豆粕の配合割合が15~30質量%である請求項1に記載の産卵鶏用配合飼料。
【請求項3】
前記油脂の配合割合が、3.5~6質量%である請求項1又は2に記載の産卵鶏用配合飼料。
【請求項4】
粗蛋白質含量が18.5質量%未満、リジン含量が0.75質量%以上、かつメチオニン及びシスチンの合計含量が0.65質量%以上である請求項1~3の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
【請求項5】
粗繊維含量が、2.5%未満である請求項1~4の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
【請求項6】
穀類、大豆粕及び油脂を含み、
前記大豆粕の配合割合が15~30質量%であり、
前記油脂の配合割合が、3.5~6質量%であり、
粗蛋白質含量が18.5質量%未満、リジン含量が0.75質量%以上、かつメチオニン及びシスチンの合計含量が0.65質量%以上であり、
粗繊維含量が、2.5%未満、かつ代謝エネルギーが2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料。
【請求項7】
産卵鶏に飼料を自由摂取させたときの飼料要求率(飼料摂取量/鶏卵生産量)を、18~51週齢における通期で2.0以下に低減するための請求項1~6の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
【請求項8】
糞量低減のための請求項1~7の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
【請求項9】
汚卵発生率低減のための請求項1~8の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産卵鶏用の配合飼料に関し、より詳細には、食下量の低下と産卵成績維持の両立を図る高代謝エネルギーを有する配合飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
養鶏には、採卵鶏(レイヤー)と肉用鶏(ブロイラー)とがあり、それぞれ発育段階に合った飼料を供与しながら生育させる。従来技術では、採卵鶏用飼料1kg当たりの代謝エネルギー(ME)は、2850kcal/kgが一般的であり、3000kcal/kgを超えると、卵の生産量や卵重量が低下する事例も報告されており、このような高代謝エネルギーを有する配合飼料は通常使用されていない。
【0003】
例えば、非特許文献1には、暑熱環境下で飼育された商業用産卵鶏について、飼料の粗蛋白質(CP)及び代謝エネルギー(ME)の違いが、食下量、産卵率、卵重及び飼料要求率などに与える影響を調べた結果、MEが2700kcal/kgのときに最もよい成績を発揮したが、3100kcal/kgのときは全ての成績が低下傾向を示すことが記載されている。また、非特許文献2には、代謝エネルギー(AMEn)が2700、2775、2850、2925又は3000kcal/kgの異なる飼料を給餌すると、AMEnの増加とともに産卵率及び卵重ともに低下する(p≦0.05)ことが記載されている。
【0004】
特許文献1には、寒冷期における産卵鶏の生産性低下、例えば、生存率や日卵量の低下を防ぐために、油脂8~16重量部、植物性蛋白質12~20重量部及びメチオニン2~5重量部を含有し、4000kcal/kg以上の代謝エネルギーを有する産卵鶏用飼料添加剤が開示されている。しかしながら、この飼料添加物を用いて調製した配合飼料の代謝エネルギー値や食下量などの詳細については不明である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Almeida VR et al.,Crude protein and metabolizable energy levels for layers reared in hot climates. Brazilian Journal of Poultry Science,2012/v.14/n.3/159-232
【非特許文献2】Ribeiro PAP et al., Effect of dietary energy concentration on performance parameters and egg quality of white leghorn laying hens. Brazilian Journal of Poultry Science,2014/v.16/n.4/381-388
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、産卵鶏の生産性と飼料の代謝エネルギーについては種々の研究が行われているが、飼料の代謝エネルギーを増加させても必ずしも卵の生産性を上げることにはならず、どちらかといえば飼料中の粗蛋白質又はアミノ酸レベルが産卵鶏の成績に影響を与える最も重要な栄養素であると信じられてきた。
【0008】
本発明は、卵の生産性のみならず飼料の食下量や糞量の低下など、総合的な観点から飼料効率を上げるために、約3000kcal/kg以上の代謝エネルギーを有し、かつ一般的な配合飼料に対して産卵率及び卵重が同等以上の新規配合飼料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、配合飼料の成分として大豆粕の種類や配合量を調整し、必須アミノ酸を補充することでアミノ酸の利用効率を向上すると共に、油脂を添加して代謝エネルギー値を上げこととした。
【0010】
すなわち、本発明は以下の実施形態を含む。
(1)穀類、大豆粕及び油脂を含み、代謝エネルギーが2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料。
(2)大豆粕の配合割合が15~30質量%である(1)に記載の産卵鶏用配合飼料。
(3)油脂の配合割合が、3.5~6質量%である(1)又は(2)に記載の産卵鶏用配合飼料。
(4)粗蛋白質含量が18.5質量%未満、リジン含量が0.75質量%以上、かつメチオニン及びシスチンの合計含量が0.65質量%以上である(1)から(3)の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
(5)粗繊維含量が、2.5%未満である(1)から(4)の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
(6)穀類、大豆粕及び油脂を含み、大豆粕の配合割合が15~30質量%以上であり、油脂の配合割合が、3.5~6質量%であり、粗蛋白質含量が18.5質量%未満、リジン含量が0.75質量%以上、かつメチオニン及びシスチンの合計含量が0.65質量%以上であり、粗繊維含量が、2.5%未満、かつ代謝エネルギーが2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料。
(7)産卵鶏に飼料を自由摂取させたときの飼料要求率(飼料摂取量/鶏卵生産量)を、18~51週齢における通期で2.0以下に低減するための(1)~(6)の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
(8)糞量低減のための(1)から(7)の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
(9)汚卵発生率低減のための(1)~(8)の何れか一項に記載の産卵鶏用配合飼料。
【発明の効果】
【0011】
本発明の産卵鶏用配合飼料は、一般的な配合飼料に対して産卵率及び卵重が同等以上でありながら、飼料の食下量や糞量の低下など、総合的な観点から飼料効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、対照区、実施例1区及び実施例2区で給餌した産卵鶏(ジュリアライト)の各週の食下量を示すグラフである。
【
図2】
図2は、対照区、実施例1区及び実施例2区で給餌した産卵鶏(ジュリアライト)の各週の飼料要求率(FCR:Feed Conversion Ratio)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(定義)
本明細書において、「産卵鶏」とは、食用に供するために出荷する卵を産卵している鶏(ニワトリ)をいう。採卵用に飼育される商業鶏(コマーシャル鶏)銘柄にはジュリアライトやボリスブラウンなどがある。雌のひなは120日齢頃まで育雛用のケージで群飼され、その後採卵用の成鶏ケージに移動される。産卵鶏は150日齢頃から産卵をはじめ、32~36週齢(224~252日齢)で最も多く産卵し、その後徐々に産卵率が低下して80~85週齢(560~595日齢)まで生産に供される(田先威和夫著,「養鶏ハンドブック」,養賢堂,1993,第244頁)。
【0014】
本明細書において、「食下量」とは、食べる餌の量のことであり、「飼料摂取量」と同義である。「配合飼料」とは、2種類以上の飼料原料を目的の家畜に対して十分な栄養を供給できるように、一定の処方で混合、調整したものをいう。「大豆粕」とは、約20%の油分を含む大豆を搾った後の粕である。大豆の粕を粉砕して作られた粉末は大豆ミールともいう。大豆粕は、約44%~48%の粗蛋白を含み、アミノ酸バランスにも優れている。
【0015】
また、本明細書で使用される「代謝エネルギー」は、見かけの代謝エネルギーを指し、摂取飼料の総エネルギーから糞便、尿、およびガス状消化産物に含まれる総エネルギーを引いたものを意味する。代謝エネルギーは、各飼料組成物について一般的なエネルギー量の測定法を用いて実際に測定して求めることが可能である。さらに、鶏用飼料の代謝エネルギー値については、例えば、日本標準飼料成分表(2009年版、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構編)の成分表に記載されたME値等を基に算出する方法が一般的であるので、この様な算出方法を利用することも可能である。
【0016】
(産卵鶏用配合飼料)
本発明の1つの実施形態において、穀類、大豆粕及び油脂を含み、代謝エネルギーが約2960~3100kcal/kgである産卵鶏用配合飼料が提供される。好ましい実施形態では、この配合飼料の代謝エネルギーは約3000~3100kcal/kgである。本実施形態の飼料に含まれる大豆粕成分は、粗蛋白質成分が約44%のいわゆる「ロープロ大豆粕」と約48%のいわゆる「ハイプロ大豆粕」のいずれを用いてもよい。通常の大豆粕に含まれる粗蛋白質の含量は約44%であり、ロープロ大豆粕と称されるのに対して、脱皮させたものはハイプロ大豆粕と称される。この脱皮大豆粕に含まれる粗蛋白質の含量は約48%と通常の大豆粕より1割程度高いことが特徴である。本実施形態では、大豆粕の少なくとも一部に脱皮大豆粕を含むことが好ましく、実質的に全て脱皮大豆粕を使用することがさらに好ましい。脱皮大豆粕の種類は特に制限はなく、市販されている任意のものを使用することが出来る。例えば、昭和産業の銘柄名「ハイプロ大豆(粕)」を例として挙げることが出来る。ここで、「実質的に全て」とは、以下に示すような効果が得られる限り、意図せずに通常の大豆粕が少量混入しているような場合等も許容するということである。
【0017】
本実施形態の飼料においては、大豆粕成分の少なくとも一部に、又は実質的に全てに脱皮大豆粕を使用することによって、同程度の蛋白質量含量を確保する為に必要な大豆粕の量を約1割程度まで減らすことが出来る。その結果、本実施形態の飼料においては、大豆粕の含有量は、飼料の全量に対して約15~30質量%であればよく、好ましくは、約18~25質量%の範囲である。
【0018】
産卵初期の鶏は、大雛期に引き続き成長を続けるとともに、産卵が開始されると急激な産卵率の上昇と卵重の増加をともなって産卵量が増加するので、産卵期の飼料における蛋白質、アミノ酸含量の重要性が指摘されている。特に、卵重は飼料の粗蛋白質(メチオニン)摂取量によって大きな影響を受けるといわれている。一方、飼料中の粗蛋白質レベルを増加すると、他のどれかの原料をその代償として減少させなければならない。そこで、本実施形態の配合飼料では、粗蛋白質含量が18.5質量%未満であっても、リジン含量を0.75質量%以上とし、かつメチオニン及びシスチンの合計含量を0.65質量%以上とすることにより最適なアミノ酸バランスを維持し、配合飼料の設計自由度を高めることにした。
【0019】
好ましい実施形態の飼料においては、このように大豆粕の含有量を減らした分だけ飼料の主原料である穀類(とうもろこし、マイロなど)や油脂の含有量を従来のものに比べて多くすることができ、具体的には、穀類の配合量を約60質量%程度まで、また、油脂の配合量を3.5~6質量%程度まで増やすことができる。
【0020】
エネルギーは産卵にとって重要な栄養素である。一般的には、エネルギー量を上げるには、脂肪を添加することが行われる。ところが、脂肪の消化吸収率はデンプン等に比べて低いため、高脂肪の飼料では、腸内滞留時間が長い為に胃腸に負担がかかるともいわれている。本実施形態の配合飼料では、油脂の配合量を3.5~6質量%とすることにより、胃腸への負担を抑えながら、飼料の代謝エネルギー量を上げることとした。なお、本実施形態の飼料に原料として使用される油脂は、植物性油脂又は動物性油脂の何れであってもよいが、コスト的な観点から動物性油脂が好ましい。「植物性油脂」とは、大豆油、なたね油、ごま油、パーム油、オリーブ油、サフラワー油などの、植物の種子等に由来する油脂をいう。「動物性油脂」とは、動物から得られる油脂の総称であり、例えば豚、牛、鶏などの動物由来の中鎖脂肪酸トリグリセライド、タロー、イエローグリース(YG)、ラード、ヘッド等が含まれる。
【0021】
本実施形態の配合飼料に配合される大豆粕及び動物性油脂以外の原料は、当業分野で公知のものを特に制限なく使用可能である。そのような原料の例には、米、玄米、ライ麦、小麦、大麦、トウモロコシ、マイロ、大豆などの穀類;コーングルテンミール、コーンジャームミール、コーングルテンフィード、コーンスチープリカーなどの製造粕類;あまに油粕、ヤシ油粕などの植物性油粕類;大豆油脂、米油などの植物性油脂類;硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化カリウム、硫酸コバルト、炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、塩化コリンなどの無機塩類;リジン、メチオニンなどのアミノ酸類;ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD3、ビタミンE、パントテン酸カルシウム、ニコチン酸アミド、葉酸などのビタミン類;魚粉、脱脂粉乳、乾燥ホエーなどの動物質飼料;生草;乾草などが挙げられる。
【0022】
本発明の産卵鶏用配合飼料は、上記組成の範囲内において、産卵鶏の週齢に合わせて各成分の配合量を適宜増減させてもよい。例えば、産卵前期(17~39週齢頃)は、鶏の成長と同時に産卵率も上昇するので粗蛋白質量を増やしてもよく、産卵中期(40~50週齢頃)及び産卵後期(50週齢以降)には、鶏の日齢の増加に伴って卵殻強度が低下するため卵殻の原料であるカルシウム等の添加量を増やしてもよい。
【0023】
本発明の他の側面では、産卵鶏に飼料を自由摂取させたときの飼料要求率(飼料摂取量/鶏卵生産量)を低減するための産卵鶏用配合飼料を提供する。後述する実施例で示されるように、この飼料要求率は、18~51週齢における通期で2.0以下であることが好ましい。あるいは産卵ピーク時(例えば、30~40週齢頃)の飼料要求率は1.8以下であることが好ましい。この効果は、卵の生産性を維持しながら食下量を低減することで得られると考えられる。したがって、典型的な産卵鶏であるジュリアライトに飼料を自由摂取させたときの食下量は、17~51週齢における平均値で、約100(g/日/羽)以下であり、産卵ピーク時(例えば、30~40週齢頃)でも約110(g/日/羽)以下である。産卵鶏の食下量を低減することによって、鶏糞量を削減するという効果も得られる。鶏糞は主に堆肥に加工されるが、加工中に臭気や害虫等が発生して周辺地域の環境問題になる事例や、堆肥の価格が安く加工コストが回収できない事例がしばしばみられる。鶏糞量の削減は、鶏卵の生産現場における大きな課題解決手段となりうる。
【0024】
鶏糞量は、飼料中の粗繊維含量を低減することによっても低減することができる。繊維質の多い糟糠類や植物性油粕の代わりに繊維質が比較的少ない穀類や蛋白質原料を用いることにより、配合飼料の粗繊維含量を低下させることができる。本実施形態の配合飼料は、消化性の低いそうこう類を使用せず、粗繊維の含有量を2.5%未満、好ましくは2.0%未満とすることにより鶏卵の生産に伴う鶏糞量を低減することができる。
【0025】
さらに、食下量の低減により、暑熱環境下における産卵鶏の食欲低下時にも十分な栄養を供給でき、飼料の運送費の削減や、鶏糞量削減による汚卵削減により商品率の改善という二次的効果も得られる。
【0026】
(給餌時期及び方法)
本実施形態の配合飼料の給餌時期は、産卵鶏の育成期及び成鶏期のいずれの時期でもよいが、卵の生産性を上げる観点から成鶏期に給餌することが好ましい。給餌方法についても特に限定されず、不断給餌又は制限給餌等が挙げられるが、いつでも好きなだけ餌が食べられる状態で自由に摂取させる不断給餌が好ましい。また、飼料の形態についても、マッシュ飼料、ペレット飼料及びクランブル飼料の何れでもよい。
【実施例0027】
<材料および方法>
供試鶏としてジュリアライトを用い、1試験区あたり100羽にて、以下のような試験区設定及び飼料設計を行った。試験区は表1の通り計3試験区を設けた。大雛導入した17週から39週齢までをフェーズ1、40週から51週までをフェーズ2とした。対照区には、一般的な採卵鶏飼料である対照CP18(フェーズ1)および対照CP17(フェーズ2)(共に株式会社ジャパンフィード製)を用いた。試験区には、MEを3000kcal/kgとし、食下量の5%低減が期待される実施例1区、MEを3,050kcal/kgとし、食下量の7%低減が期待される実施例2区を設けた。試験飼料の配合率および栄養設計値は表2-1及び表2-2の通りとした。試験区の原料は、消化性の低いそうこう類(米ぬか、コーングルテンフィード、DDGS)は不使用とし、とうもろこし、大豆粕および動物性油脂(YG)を主体に構成した。なお、飼料の流動性を考慮してYGの添加量は5.2%を上限とした。アミノ酸設計は、日本飼料標準家禽(2011年版)および過去の試験からマニュアル程度の卵重を満たすことが可能と想定されるアミノ酸設計とした。飼養管理は、ジュリアライトマニュアル第3版((株)ゲン・コーポレーション)に準じた。給餌は、自由摂取とした。
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
(測定項目)
産卵率および卵重の測定は毎日実施し、週毎の平均値を算出した。食下量(g/羽/日)は、2週または3週毎に残餌量を測定し、給餌量からの差し引きから求めた。体重測定(n=20)は、17週から25週までは毎週、26週から37週は2週間毎、38週以降は3週間毎に実施した。鶏糞重量の測定は、27、34および51週齢時に実施した。3日分(n=50)の生糞重量および乾物重量を求めた。34週齢から51週齢まで汚卵の発生率を測定した。付着している鶏糞の量に関わらず、卵に鶏糞が付着している場合は全て汚卵と判定とした。
【0032】
<結果および考察>
試験期間における生産成績を表3、
図1及び
図2に示した。試験期間における産卵率は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ89.8、89.4および89.1%と同程度の数値となり、マニュアル値82.6%に対しても良好な結果となった。試験期間における卵重は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ59.7、59.4および59.5gと同程度の結果となり、マニュアル値59.4gに対しても同程度の数値となった。試験期間における食下量は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ108.0、101.5および99.2g/日/羽となり、対照区に対して実施例1区および実施例2区は、それぞれ6%および8%の食下量低減がみられた。食下量の週単位の変化を示した
図1によれば、全期間を通じて対照区よりも実施例1区及び実施例2区の方が低下しているが、産卵ピーク時を含む30~40週の期間は対照区が110g/日/羽を超えるのに対し、実施例1区及び実施例2区ではこれ以下である。ME摂取量は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ308、304及び302kcal/日/羽となり、CP摂取量は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ19.1、16.4および16.5g/日/羽となった。
【0033】
【0034】
上記の結果から、非特許文献2の試験結果と同様にレイヤーの食下量は、CPではなくME摂取量によって調整されていることが示唆された。飼料要求率(FCR)は、18~51週の通期で対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ2.01、1.91及び1.87となり、対照区に対して実施例1区及び実施例2区がそれぞれ0.10及び0.14改善する結果となった。また、
図2に示したように、産卵ピーク時(例えば、30~40週齢頃)のFCRは、対照区では1.88に対し、実施例1区及び実施例2区ではそれぞれ、1.77及び1.74であった。この要因は、日卵量は同程度でありながら食下量が低減したことによる。生存率は、各区共に99%と高い数値で推移した。
【0035】
本試験と同様にME3000kcal/kg以上の飼料を用いた試験について、Ribeiroらの報告(非特許文献2)では、飼料中のMEを増加することで食下量の低減はみられているが、同時に日卵量が減少する結果となっている。これは、各飼料のアミノ酸値は一定であったことから、食下量の減少に伴いアミノ酸をはじめとする各栄養素の摂取量が減少したことによると推察される。
【0036】
本試験では、各アミノ酸をバランス良く設計することに加えて、消化性の良い原料を使用することによって、ME3000kcal/kg以上の飼料を使用しても、高い産卵成績の維持と5%以上の食下量低減を実現したと考える。
【0037】
試験期間における体重推移を表4に示した。試験期間を通じて、実施例1区および実施例2区が対照区よりも大きな体重で推移した。これは、対照区に対して栄養素の吸収を阻害する水溶性繊維の摂取量が少ないことに加え、余分な摂取タンパク質量が少ないことにより、タンパク質排出にかかるエネルギーを節約していることによると考えられた。
【0038】
【0039】
27、34及び51週齢時に測定した鶏糞重量を表5に示した。27週齢、34週齢および51週齢時の平均生糞重量(50羽、3日分)は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ15.5、12.5および12.0kgとなり、対照区に対して実施例1区および実施例2区はそれぞれ80%および77%となった。同様に、平均乾燥糞重量(50羽、3日分)は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ4.4、3.1および3.2kgとなり、対照区に対して実施例1区および実施例2区はそれぞれ70%および72%となった。両試験区の鶏糞重量減少の要因は、食下量が減少していることに加えて、鶏が消化吸収出来ない繊維の摂取量が減少したことによると考えられた。
【0040】
【0041】
汚卵の発生率を表6に示した。34週から51週齢までの平均汚卵発生率は、対照区、実施例1区および実施例2区がそれぞれ12.1、9.7および8.9%となり、対照区に対して試験区の汚卵発生率が減少する結果となった。これは、排出される鶏糞量が少ないことによると考えられた。
【0042】
【0043】
本試験からは、一般的な対照飼料(ME2850kcal/kg)に対して、ME3000kcal/kg又は3050kcal/kgの本発明の配合飼料を用いても、高い産卵成績の維持と想定した食下量低減が認められた。加えて、対照飼料に対して鶏糞重量および汚卵発生の低減が確認された。以上より、本発明の配合飼料を用いることで飼料費、配送費、鶏糞処理費および汚卵の削減により鶏卵生産コストの改善が期待される結果となった。
本発明の配合飼料は、従来用いられている一般的な配合飼料と比較して、食下量を5%以上削減、飼料要求量(FC)も0.1低下する。養鶏産業において、使用する飼料が減るため、運送費も削減され、鶏糞量削減、及び汚卵削減により商品率の改善等が期待される。