(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149570
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】画像記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
B41J2/175 305
B41J2/175 301
B41J2/175 113
B41J2/175 315
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051787
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】中澤 史朗
(72)【発明者】
【氏名】刑部 吉記
(72)【発明者】
【氏名】白野 太一
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 草介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB11
2C056EB20
2C056EB38
2C056EB45
2C056EB50
2C056EB52
2C056EC26
2C056KC21
(57)【要約】
【課題】貯留部における液体の泡立ちの影響を受け難い残量判定を実現する画像記録装置を提供する。
【解決手段】複合機10のコントローラ130は、印刷コマンドを受け付けたことに応じて、前回の印刷からの経過時間Tを取得し、経過時間Tが閾値Th_tを超過していることを条件として、キャリッジ40を移動する前に液面センサ95が出力する信号に基づいて液面が所定位置以下であるかを判定し、経過時間Tが閾値Th_tを超過していないことを条件として、インク99の減少量に対応する第1カウント値に基づいて液面が所定位置以下であるかを判定し、液面が所定位置以下であると判定したことを条件として、操作部17においてインク99の残量が少ないことを示す報知を実行する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に移動可能なキャリッジと、
上記キャリッジに搭載されており、液体を吐出する複数のノズルを有するヘッドと、
上記キャリッジに搭載されており、貯留された液体を上記ヘッドへ供給する貯留部と、
上記貯留部に貯留された液体の液面を検知するセンサと、
上記第1方向と交差する第2方向へ被記録媒体を搬送する搬送機構と、
報知部と、
閾値を記憶するメモリと、
コントローラと、を備えており、
上記コントローラは、
上記複数のノズルから排出した液体の液量を含む、上記貯留部に貯留された液体の減少量に対応する第1カウント値をカウントして上記メモリに記憶させ、
コマンドを受け付けたことに応じて、上記キャリッジを上記第1方向へ移動し、
コマンドを受け付けたことに応じて、直前の上記キャリッジの移動が終了してからの経過時間を取得し、
取得した上記経過時間が上記閾値を超過していることを条件として、上記キャリッジを移動する前に上記センサが出力する信号に基づいて上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかを判定し、
取得した上記経過時間が上記閾値を超過していないことを条件として、上記メモリに記憶された第1カウント値に基づいて上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかを判定し、
上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であると判定したことを条件として、上記報知部において液体の残量が少ないことを示す報知を実行する画像記録装置。
【請求項2】
上記メモリは、値が異なる複数の閾値を記憶しており、
上記コントローラは、
上記コマンドによる上記キャリッジの移動量を上記メモリに記憶させ、
直前の上記キャリッジの移動量に基づいて、複数の上記閾値から一の閾値を選択する請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記メモリは、値が異なる複数の閾値を記憶しており、
上記コントローラは、
上記貯留部に貯留されている液体の種別を示す液体情報を取得し、
取得した上記液体情報に基づいて、複数の上記閾値から一の閾値を選択する請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記メモリは、判定フラグの値とエンプティ閾値とを記憶し、
上記コントローラは、
上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であると判定したことに応じて、判定フラグを第1値から第2値に更新し、
上記判定フラグが上記第2値であることを条件として、上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかの判定を実行せずに、上記複数のノズルから排出した液体の液量を含む、上記貯留部に貯留された液体の減少量に対応する第2カウント値をカウントして上記メモリに記憶させ、
上記第2カウント値が上記エンプティ閾値に到達したことを条件として、上記複数のノズルからの液体の排出を実行しない請求項1から3のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記コントローラは、上記第2カウント値が上記エンプティ閾値に到達したことを条件として、上記報知部においてエラーの報知を実行する請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記コントローラは、
上記コマンドを受け付けたことに応じて、上記キャリッジの上記第1方向への移動として、上記キャリッジを第1方向へ移動しつつ上記複数のノズルから液体を吐出する画像記録を実行し、
上記コマンドを受け付けたことに応じて、直前の上記キャリッジの移動が終了してからの経過時間として、直前の画像記録が終了してからの経過時間を取得し、
取得した上記経過時間が上記閾値を超過していることを条件として、上記キャリッジを移動する前のタイミングとして、画像記録を開始する前に上記センサが出力する信号に基づいて上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかを判定する請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置。
【請求項7】
上記コントローラは、
取得した上記経過時間が上記閾値を超過していることを条件として、上記画像記録を開始する前のタイミングとして、画像記録のために上記複数のノズルから液体を吐出する前に上記センサが出力する信号に基づいて上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかを判定する請求項6に記載の画像記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留部から供給された液体を吐出するヘッドを有する画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリッジにヘッド及びインクカートリッジが搭載された所謂オンキャリッジ型の画像記録装置が知られている。インクカートリッジに貯留されているインクの残量は、例えば、インクカートリッジへ向けて出射された光の反射光を受光する光学センサが出力する信号に基づいて判定される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャリッジと共にインクカートリッジが移動することにより、インクカートリッジ内においてインクが泡立つことがある。インクカートリッジにおいて、残量検知のために光が照射される部分にインクの泡が付着することによって、実際には当該部分までインクが満たされていないにも拘わらず、インクが満たされている状態と同様の光の反射が生じ得る。この反射光を受光した光学センサの信号に基づいて、インクの残量が判定されると、実際のインク残量と異なる判定結果となり得る。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、貯留部における液体の泡立ちの影響を受け難い残量判定を実現する手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る画像記録装置は、第1方向に移動可能なキャリッジと、上記キャリッジに搭載されており、液体を吐出する複数のノズルを有するヘッドと、上記キャリッジに搭載されており、貯留された液体を上記ヘッドへ供給する貯留部と、上記貯留部に貯留された液体の液面を検知するセンサと、上記第1方向と交差する第2方向へ被記録媒体を搬送する搬送機構と、報知部と、閾値を記憶するメモリと、コントローラと、を備えている。上記コントローラは、上記複数のノズルから排出した液体の液量を含む、上記貯留部に貯留された液体の減少量に対応する第1カウント値をカウントして上記メモリに記憶させ、コマンドを受け付けたことに応じて、上記キャリッジを上記第1方向へ移動し、コマンドを受け付けたことに応じて、直前の上記キャリッジの移動が終了してからの経過時間を取得し、取得した上記経過時間が上記閾値を超過していることを条件として、上記キャリッジを移動する前に上記センサが出力する信号に基づいて上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかを判定し、取得した上記経過時間が上記閾値を超過していないことを条件として、上記メモリに記憶された第1カウント値に基づいて上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかを判定し、上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であると判定したことを条件として、上記報知部において液体の残量が少ないことを示す報知を実行する。
【0007】
上記画像記録装置では、コントローラは、経過時間が閾値を経過しているときには、キャリッジを移動する前にセンサが出力する信号に基づいて、貯留部に貯留された液体の液面を判定する。これにより、貯留部において液体の泡立ちが生じていない状態のセンサの出力による液面の判定が実現できる。コントローラは、経過時間が閾値を経過していないときには、第1カウント値に基づいて、貯留部に貯留された液体の液面を判定する。これにより、貯留部において液体の泡立ちが生じている状態のセンサの出力によらずに液面の判定が実現できる。
【0008】
(2) 好ましくは、上記メモリは、値が異なる複数の閾値を記憶しており、上記コントローラは、上記コマンドによる上記キャリッジの移動量を上記メモリに記憶させ、直前の上記キャリッジの移動量に基づいて、複数の上記閾値から一の閾値を選択する。
【0009】
この構成によれば、キャリッジの移動量が多いほど、貯留部において泡立ちが生じやすいので、貯留部において泡立ちが消失するに要する時間に対応する閾値が選択され得る。
【0010】
(3) 好ましくは、上記メモリは、値が異なる複数の閾値を記憶しており、上記コントローラは、上記貯留部に貯留されている液体の種別を示す液体情報を取得し、取得した上記液体情報に基づいて、複数の上記閾値から一の閾値を選択する。
【0011】
この構成によれば、液体の種別によって貯留部における泡立ちの生じやすさが異なるので、貯留部において泡立ちが消失するに要する時間に対応する閾値が選択され得る。
【0012】
(4) 好ましくは、上記メモリは、判定フラグの値とエンプティ閾値とを記憶し、上記コントローラは、上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であると判定したことに応じて、判定フラグを第1値から第2値に更新し、上記判定フラグが上記第2値であることを条件として、上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかの判定を実行せずに、上記複数のノズルから排出した液体の液量を含む、上記貯留部に貯留された液体の減少量に対応する第2カウント値をカウントして上記メモリに記憶させ、上記第2カウント値が上記エンプティ閾値に到達したことを条件として、上記複数のノズルからの液体の排出を実行しない。
【0013】
この構成によれば、貯留部からノズルへ空気が進入することが抑制される。
【0014】
(5) 好ましくは、上記コントローラは、上記第2カウント値が上記エンプティ閾値に到達したことを条件として、上記報知部においてエラーの報知を実行する。
【0015】
この構成によれば、エラーの報知に基づいて、ノズルからの液体の排出が停止されていることをユーザが認識し得る。
【0016】
(6) 好ましくは、上記コントローラは、上記コマンドを受け付けたことに応じて、上記キャリッジの上記第1方向への移動として、上記キャリッジを第1方向へ移動しつつ上記複数のノズルから液体を吐出する画像記録を実行し、上記コマンドを受け付けたことに応じて、直前の上記キャリッジの移動が終了してからの経過時間として、直前の画像記録が終了してからの経過時間を取得し、取得した上記経過時間が上記閾値を超過していることを条件として、上記キャリッジを移動する前のタイミングとして、画像記録を開始する前に上記センサが出力する信号に基づいて上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかを判定する。
【0017】
(7) 好ましくは、上記コントローラは、取得した上記経過時間が上記閾値を超過していることを条件として、上記画像記録を開始する前のタイミングとして、画像記録のために上記複数のノズルから液体を吐出する前に上記センサが出力する信号に基づいて上記貯留部に貯留された液体の液面が所定位置以下であるかを判定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貯留部における液体の泡立ちの影響を受け難い残量判定が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10の斜視図である。
【
図2】
図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図であり、キャリッジ40が待機位置に位置し且つキャップ70が被覆位置に位置する状態が示されている。
【
図4】
図4は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図であり、キャリッジ40が待機位置に位置し且つキャップ70が離間位置に位置する状態が示されている。
【
図5】
図5は、プラテン42及び記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図であり、キャリッジ40が媒体通過領域36の上方に位置し且つキャップ70が離間位置に位置する状態が示されている。
【
図6】
図6は、複合機10の機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、複合機10による画像記録制御を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図8は、メモリ140に複数の閾値が記憶されている様子を示す図であり、
図8(A)は、キャリッジ40の移動量に応じて複数の閾値を格納したテーブルを示す図であり、
図8(B)は、キャリッジ40の移動量とインク99の種別とに応じて複数の閾値を格納したテーブルを示す図である。
【
図9】
図9は、変形例に係る記録部24を前後方向8と直交する面で切った断面を示す縦断面図である。
【
図10】
図10は、別の変形例に係る記録部24を左右方向9と直交する面で切った断面を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。また、以下の説明では、矢印の起点から終点に向かう進みが向きと表現され、矢印の起点と終点とを結ぶ線上の往来が方向と表現される。また、以下の説明では、複合機10が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向7が定義され、開口13が設けられている面を前面23として前後方向8が定義され、複合機10を前方から視て左右方向9が定義される。上下方向7、前後方向8、及び左右方向9は互いに直交している。
【0021】
[複合機10の全体構造]
図1に示されるように、複合機10(画像記録装置の一例)は、概ね直方体形状の筐体14を有する。筐体14の下部に、プリンタ部11が設けられている。複合機10は、ファクシミリ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。複合機10は、プリント機能として、インクジェット方式で用紙12(
図2参照。被記録媒体の一例)の片面に画像記録する機能を有している。なお、複合機10は、用紙12の両面に画像記録するものであってもよい。筐体14の上部に、操作部17(報知部の一例)が設けられている。操作部17は、画像記録の指示や各種設定のために操作されるボタンや、各種情報が表示される液晶ディスプレイなどによって構成されている。本実施形態において、操作部17は、ボタン及び液晶ディスプレイの双方の機能を有するタッチパネルによって構成されている。
【0022】
図2に示されるように、プリンタ部11は、給送トレイ20、給送部16、外ガイド部材18、内ガイド部材19、搬送ローラ対59、排出ローラ対44、プラテン42、記録部24、エンコーダ35(
図6参照)、ロータリエンコーダ75(
図6参照)、コントローラ130(
図6参照)、及びメモリ140(
図6参照)を備えている。これらは、筐体14の内部に配置されている。筐体14の内部には、複合機10の状態を検知して、検知結果に応じた信号を出力する様々な状態センサ(不図示)が配置されている。
【0023】
[給送トレイ20]
図1に示されるように、プリンタ部11の前面23に、開口13が形成されている。給送トレイ20は、前後方向8へ移動することによって、開口13を介して筐体14に対して挿入及び抜去可能である。給送トレイ20は、筐体14に装着された給送位置(
図1及び
図2に示される位置)と、筐体14から抜き出された非給送位置とに移動可能である。給送トレイ20は、筐体14に対して後方へ挿入されることによって給送位置へ移動し、筐体14に対して前方へ引き出されることによって非給送位置へ移動する。
【0024】
給送トレイ20は、上方が開放された箱形状の部材であり、用紙12を収容する。
図2に示されるように、給送トレイ20の底板22に、用紙12が重ねられた状態で支持される。給送トレイ20の前部の上方に、排出トレイ21が配置されている。記録部24によって画像記録されて排出された用紙12が、排出トレイ21の上面に支持される。給送トレイ20が給送位置にあるとき、給送トレイ20に支持された用紙12が搬送路65へ給送可能である。
【0025】
[給送部16]
図2に示されるように、給送部16は、記録部24の下方且つ給送トレイ20の底板22の上方に配置されている。給送部16は、給送ローラ25、給送アーム26、駆動伝達機構27、及び軸28を備えている。給送ローラ25は、給送アーム26の先端部で回転可能に支持されている。給送アーム26は、基端部に設けられた軸28を中心として、矢印29の方向へ回動する。これにより、給送ローラ25は、給送トレイ20または給送トレイ20に支持された用紙12に対して、当接及び離間が可能である。
【0026】
給送ローラ25は、複数のギヤが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給送用モータ102(
図6参照)の駆動力が伝達されて回転する。これにより、給送位置の給送トレイ20の底板22に支持された用紙12のうち、給送ローラ25と当接している最上の用紙12が、搬送路65へ給送される。なお、駆動伝達機構27は、複数のギヤが噛合されている形態に限らず、例えば軸28と給送ローラ25の軸とに架け渡されたベルトであってもよい。
【0027】
[搬送路65]
図2に示されるように、給送トレイ20の後端部から搬送路65が延出されている。搬送路65は、湾曲部33と直線部34とを備える。湾曲部33は、上方へ向かいつつ後方から前方へUターンするように延びている。直線部34は、概ね前後方向8に沿って延びている。
【0028】
湾曲部33は、所定の間隔を隔てて互いに対向する外ガイド部材18と内ガイド部材19とによって形成されている。外ガイド部材18及び内ガイド部材19は、左右方向9へ延設されている。直線部34は、記録部24が配置されている位置では所定の間隔を隔てて互いに対向する記録部24とプラテン42とによって形成されている。
【0029】
給送トレイ20に支持された用紙12は、給送ローラ25によって湾曲部33を搬送されて、搬送ローラ対59に到達する。搬送ローラ対59に挟持された用紙12は、直線部34を記録部24へ向けて前方へ搬送される。記録部24の直下に到達した用紙12は、記録部24により画像記録される。画像記録された用紙12は、直線部34を前方へ搬送されて排出トレイ21に排出される。以上より、用紙12は、
図2に一点鎖線の矢印で示される搬送向き15に沿って搬送される。
【0030】
[搬送ローラ対59及び排出ローラ対44]
図2に示されるように、直線部34に、搬送ローラ対59が配置されている。直線部34における搬送ローラ対59よりも搬送向き15の下流に、排出ローラ対44が配置されている。
【0031】
搬送ローラ対59は、搬送ローラ60と、搬送ローラ60の下方に搬送ローラ60と対向して配置されたピンチローラ61とを備えている。ピンチローラ61は、コイルバネなどの弾性部材(不図示)によって搬送ローラ60に押圧されている。搬送ローラ対59は、用紙12を挟持可能である。
【0032】
排出ローラ対44は、排出ローラ62と、排出ローラ62の上方に排出ローラ62と対向して配置された拍車ローラ63とを備えている。拍車ローラ63は、コイルバネなどの弾性部材(不図示)によって排出ローラ62へ向けて押圧されている。排出ローラ対44は、用紙12を挟持可能である。
【0033】
搬送ローラ60及び排出ローラ62は、搬送用モータ101(
図6参照)から駆動力を付与されて回転する。搬送ローラ対59に用紙12が挟持されている状態で搬送ローラ60が回転すると、当該用紙12は、搬送ローラ対59によって搬送向き15へ搬送され、プラテン42上に搬送される。排出ローラ対44に用紙12が挟持されている状態で排出ローラ62が回転すると、当該用紙12は、排出ローラ対44によって搬送向き15へ搬送され、排出トレイ21上に排出される。なお、搬送用モータ101と給送用モータ102として、共通のモータが用いられてもよい。この場合、当該共通のモータから各ローラへの駆動伝達経路が切替可能に構成される。
【0034】
本実施形態では、搬送用モータ101、搬送ローラ対59、及び排出ローラ対44は、左右方向9(第1方向の一例)と交差する方向(第2方向の一例)へ用紙12を搬送する搬送機構を構成する。なお、用紙12を搬送させるものは、上述したようなローラ対に限らない。例えば、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44の代わりに、搬送ベルトが配置されていてもよい。
【0035】
[プラテン42]
図2に示されるように、プラテン42は、搬送路65の直線部34に配置されている。プラテン42は、上下方向7において記録部24に対向している。プラテン42は、搬送路65を搬送される用紙12を下方から支持する。搬送路65を搬送される用紙12は、左右方向9において、プラテン42の右端及び左端の間の媒体通過領域36(
図3参照)を通過する。
【0036】
[記録部24]
図2に示されるように、記録部24は、プラテン42の上方にプラテン42と対向して配置されている。記録部24は、キャリッジ40と、ヘッド38と、貯留部80とを備えている。
【0037】
キャリッジ40は、前後方向8に間隔を空けて配置された2つのガイドレール56、57によって搬送向き15と直交する左右方向9に沿って移動可能に支持されている。キャリッジ40は、左右方向9において、媒体通過領域36よりも右方から媒体通過領域36よりも左方に亘って移動可能である。なお、キャリッジ40の移動方向は、左右方向9に限らず、搬送向き15と交差する方向であればよい。
【0038】
ガイドレール56は、ヘッド38よりも搬送向き15の上流に配置されている。ガイドレール57は、ヘッド38よりも搬送向き15の下流に配置されている。ガイドレール56、57は、左右方向9において搬送路65の直線部34の外方に配置された一対のサイドフレーム(不図示)によって支持されている。キャリッジ40は、キャリッジ駆動用モータ103(
図6参照)から駆動力を付与されることによって移動する。
【0039】
ガイドレール56またはガイドレール57には、エンコーダ35(
図6参照)が配置されている。エンコーダ35は、左右方向9に延びたエンコーダストリップと、キャリッジ40におけるエンコーダストリップに対向する箇所に設けられた光学センサとを備えている。エンコーダストリップには、光を透過させる透光部と光を遮断する遮光部とが、左右方向9に等ピッチで交互に配置されたパターンが記されている。光学センサによって透光部及び遮断部を検出されることによってパルス信号が検出される。パルス信号は、キャリッジ40の左右方向9の位置に応じた信号である。パルス信号は、コントローラ130(
図6参照)に出力される。
【0040】
ヘッド38は、キャリッジ40に支持されている。ヘッド38の下面68は、下方へ露出しており、プラテン42と対向している。ヘッド38は、複数のノズル39と、インク流路37と、圧電素子45(
図6参照)とを備えている。
【0041】
複数のノズル39は、ヘッド38の下面68に開口されている。インク流路37は、貯留部80と複数のノズル39とを繋ぐ。圧電素子45は、インク流路37の一部を変形させることでノズル39から下方へインク滴を吐出させる。圧電素子45は、コントローラ130により給電されることで動作する。このようにヘッド38は、キャリッジ40に搭載されており、インク(液体の一例)を吐出する複数のノズル39を有する。
【0042】
貯留部80は、キャリッジ40に据え付けられた状態でキャリッジ40に支持されている。貯留部80は、内部空間81を有している。内部空間81には、インク99が貯留される。本実施形態では、記録部24は、一つの貯留部80を備えている。この一つの貯留部80には、黒色のインク99が貯留されている。なお、貯留部80に貯留されるインク99の色は黒色に限らない。
【0043】
貯留部80は、ヘッド38より上方に位置している。なお、本実施形態では、貯留部80の全てがヘッド38より上方に位置しているが、貯留部80の一部がヘッド38より上方に位置しており、貯留部80の当該一部以外の部分がヘッド38以下の高さに位置していてもよい。貯留部80の内部空間81は、インク流路37を介して複数のノズル39と連通している。これにより、内部空間81からノズル39へインク99が供給される。このように貯留部80は、キャリッジ40に搭載されており、貯留されたインク99をヘッド38へ供給する。
【0044】
貯留部80の上壁82には、内部空間81へインク99を注入するための注入口83が設けられている。注入口83は、上壁82を厚み方向に貫通して、内部空間81を貯留部80の外部に連通させる。上壁82の上面における注入口83の周囲に、突壁84が設けられている(
図3参照)。蓋85が突壁84に嵌合されることによって、注入口83が閉じられる。蓋85が突壁84から外されると、注入口83が外部に露出する。この状態で、ボトル(不図示)が注入口83に挿入され、ボトルから注入口83を介して内部空間81へインクが注入される。なお、注入口83は、内部空間81の上部と外部とを連通する位置であれば、上壁82以外に設けられていてもよい。
【0045】
[回動部材90]
図3から
図5に示されるように、貯留部80の内部空間81には、回動部材90が配置されている。回動部材90は、フロート91と、軸92と、アーム93と、被検知部94とを備えている。フロート91は、回動部材90の下部に位置する。フロート91は、貯留部80に貯留されたインクよりも比重が小さい材料によって形成されている。軸92は、フロート91の前面及び後面から前後方向8に沿って突出している。軸92は、貯留部80の前壁88(
図2参照)及び後壁89(
図2参照)に形成された孔(不図示)に挿入されている。これにより、回動部材90は、軸92を中心として回動可能に支持される。
【0046】
アーム93は、フロート91から略上方へ突出している。被検知部94は、アーム93の先端部に形成されている。被検知部94は、上下方向7及び左右方向9に延びた板状に構成されている。被検知部94は、後述する液面センサ95の発光部から出力された光を遮光する材料によって形成されている。
【0047】
図3から
図5には、インク99の液面が上下方向7において所定位置(以下、ニアエンプティ位置と称される)以下であるときの回動部材90が記載されている。インク99の液面が上下方向7にニアエンプティ位置より上方であるとき、回動部材90は、フロート91に作用する浮力によって、アーム93が略直立する位置に位置する(不図示)。一方、貯留部80に貯留されたインク99が消費されてインク99の液面が下がり、インク99の液面が上下方向7においてニアエンプティ位置になると、回動部材90は、液面に追随して軸92を中心として回動し、アーム93が上下方向7から傾いた位置に位置する(
図3から
図5参照)。
【0048】
[液面センサ95]
液面センサ95(センサの一例)は、回動部材90の状態変化を検知するものである。液面センサ95は、発光部及び受光部を備え、貯留部80の外部に設けられる。例えば、発光部は貯留部80の前壁88(
図2参照)に設けられ、受光部は貯留部の後壁89(
図2参照)に設けられる。発光部及び受光部の上下方向7及び左右方向9の位置は、アーム93が略直立したときの被検知部94の上下方向7及び左右方向の位置とそれぞれ同じである。換言すれば、アーム93が略直立したとき(すなわち、インク99の液面が上下方向7においてニアエンプティ位置より上方であるとき)、液面センサ95の発光部と受光部との間には、回動部材90の被検知部94が介在する。
【0049】
液面センサ95は、発光部から出力された光が受光部で受光されたか否かに応じて異なるレベルの信号を出力する。例えば、液面センサ95は、発光部から出力された光が受光部で受光できない(すなわち、受光強度が所定の強度未満である)ときには、ローレベル信号(「信号レベルが閾値レベル未満の信号」を指す。)をコントローラ130へ出力する。一方、液面センサ95は、発光部から出力された光が受光部で受光できた(すなわち、受光強度が所定の強度以上である)ときには、ハイレベル信号(「信号レベルが閾値レベル以上の信号」を指す。)をコントローラ130へ出力する。
【0050】
アーム93が略直立しているとき、液面センサ95の発光部と受光部との間には被検知部94が介在する。このため、インク99の液面が上下方向7においてニアエンプティ位置より上方であるとき、発光部から出力された光が受光部で受光できないので、液面センサ95はローレベル信号をコントローラ130へ出力する。このとき、液面センサ95はオフである。
【0051】
一方、アーム93が上下方向7から傾いているとき、被検知部94は、液面センサ95の発光部と受光部との間から退避した位置にある(
図3から
図5参照)。このため、インク99の液面が上下方向7においてニアエンプティ位置以下であるとき、発光部から出力された光が受光部で受光できるので、液面センサ95はハイレベル信号をコントローラ130へ出力する。このとき、液面センサ95はオンする。
【0052】
[キャップ70]
図3~
図5に示されるように、左右方向9におけるプラテン42の外(本実施形態ではプラテン42の右方)に、キャップ70が設けられている。つまり、キャップ70は、左右方向9において、媒体通過領域36の外に位置している。キャリッジ40が媒体通過領域36よりも右方の待機位置(
図3及び
図4に示される位置)に位置しているとき、キャップ70は、キャリッジ40の下方に位置しており、キャリッジ40(詳細には、ヘッド38のノズル39)と対向している。
【0053】
キャップ70は、上方が開放された箱形状の部材である。キャップ70は、ゴムなどの弾性材料からなる。キャップ70は、公知の可動機構71を介してフレーム46に支持されており、キャップ駆動用モータ104(
図6参照)から駆動力を付与された可動機構71によって上下動可能である。フレーム46は、プラテン42より右方に位置しており、前後方向8及び左右方向9に拡がった板状の部材である。可動機構71は、例えばボールネジを用いた機構や、カムを用いた機構などである。キャップ70は、
図3に示される被覆位置と、
図4に示される離間位置とに上下動可能である。
図3に示されるように、被覆位置のキャップ70は、その上端が下方からヘッド38の下面68に圧接される。これにより、キャップ70は、下面68に開口された複数のノズル39を下方から覆った状態となる。離間位置は、被覆位置より下方の位置である。離間位置のキャップ70は、ヘッド38の下面68から離間している。
【0054】
キャップ70の底面70Aに、貫通孔72が設けられている。チューブ73の一端が貫通孔72に接続されている。チューブ73の他端は、ポンプ(不図示)を介して廃インクタンク(不図示)に接続されている。チューブ73は、可撓性を有する樹脂チューブである。キャップ70が被覆位置に位置してノズル39を覆った状態において、ポンプが駆動されることにより、ノズル39内のインクや異物が、吸引されて、キャップ70へ吐出される。キャップ70は、当該インクや異物を受ける。キャップ70が受けたインクや異物は、チューブ73へ吸引され、チューブ73を通って廃インクタンクへ排出される。
【0055】
貯留部80の内部空間81を密閉状態にして上記の操作を行うことにより、インクや異物を複数のノズル39から排出させる吸引パージを行うことができる。また、貯留部80に接続されたインク供給路が大気開放口(不図示)を有する場合には、大気開放口を開放状態とし、キャップ70が大気開放口を覆った状態において、ポンプが駆動されることにより、インク供給路に存在する不要な空気を排気する排気パージを行うことができる。排気パージでは、空気に加えてインクや異物も大気開放口から排出される。
【0056】
[ロータリエンコーダ75]
図6に示されるロータリエンコーダ75は、搬送用モータ101(
図6参照)の軸に設けられて搬送用モータ101と共に回転するエンコーダディスクと光学センサとからなる。エンコーダディスクには、光が透過される透過部と光が透過されない非透過部とが円周方向に等ピッチで交互に配置されたパターンが形成されている。エンコーダディスクが回転すると、光学センサによって透過部と非透過部とが検出される毎にパルス信号が生成される。生成されたパルス信号は、コントローラ130(
図6参照)に出力される。コントローラ130は、当該パルス信号に基づいて、搬送用モータ101の回転量を算出する。なお、ロータリエンコーダ75は、搬送用モータ101以外、例えば給送用モータ102や搬送ローラ60に設けられていてもよい。
【0057】
[コントローラ130及びメモリ140]
以下、
図6が参照されて、コントローラ130及びメモリ140の構成が説明される。コントローラ130は、複合機10の全体動作を制御するものである。コントローラ130は、CPU131及びASIC135を備えている。メモリ140は、ROM132、RAM133、及びEEPROM134を備えている。CPU131、ASIC135、ROM132、RAM133、及びEEPROM134は、内部バス137によって接続されている。
【0058】
ROM132には、CPU131が各種動作を制御するためのプログラムなどが格納されている。RAM133は、CPU131が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号などを一時的に記録する記憶領域、或いはデータ処理の作業領域として使用される。EEPROM134には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグなどが格納される。EEPROM134には、前回の印刷からの経過時間に関する閾値、第1カウント値、第1カウント値に関する複数の閾値を格納したテーブル、第2カウント値、第2カウント値に関する閾値、ニアエンプティフラグ、及び印刷停止フラグなどが記憶されている(詳細は後述)。前回の印刷からの経過時間に関する閾値、第1カウント値に関する複数の閾値を格納したテーブル、及び第2カウント値に関する閾値は、ROM132に記憶されていてもよい。
【0059】
ASIC135には、搬送用モータ101、給送用モータ102、キャリッジ駆動用モータ103、及びキャップ駆動用モータ104が接続されている。ASIC135には、各モータを制御する駆動回路が組み込まれている。CPU131は、各モータを回転させるための駆動信号を各モータに対応する駆動回路に出力する。駆動回路は、CPU131から取得した駆動信号に応じた駆動電流を対応するモータへ出力する。これにより、対応するモータが回転する。つまり、コントローラ130は、給送用モータ102を制御して、給送部16に用紙12を給送させる。また、コントローラ130は、搬送用モータ101を制御して、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に用紙12を搬送させる。また、コントローラ130は、キャリッジ駆動用モータ103を制御して、キャリッジ40を移動させる。また、コントローラ130は、キャップ駆動用モータ104を制御して、キャップ70を上下方向7に移動させる。
【0060】
また、ASIC135には、ロータリエンコーダ75の光学センサが接続されている。コントローラ130は、ロータリエンコーダ75の光学センサから受け取った電気信号に基づいて、搬送用モータ101の回転量を算出する。また、ASIC135には、エンコーダ35が接続されている。コントローラ130は、エンコーダ35から受け取ったパルス信号に基づいて、キャリッジ40の位置や移動の有無を認識する。
【0061】
また、ASIC135には、圧電素子45が接続されている。圧電素子45は、不図示のドライブ回路を介してコントローラ130により給電されることで動作する。コントローラ130は、圧電素子45への給電を制御し、複数のノズル39から選択的にインク滴を吐出させる。また、ASIC135には、液面センサ95などの状態センサが接続されている。コントローラ130は、状態センサから受け取った信号に基づいて、以下に示す画像記録制御や異常処理などを行う。
【0062】
また、ASIC135には、操作部17が接続されている。ASIC135は、操作部17からボタンが押されたことを示す信号を受け取る。ASIC135は、操作部17に対してディスプレイに表示すべき内容を示す表示データを出力する。
【0063】
コントローラ130は、用紙12に画像記録する際、搬送処理と印刷処理とを交互に実行する。搬送処理は、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に所定の改行量だけ用紙12を搬送させる処理である。コントローラ130は、搬送用モータ101を制御することによって、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に搬送処理を実行させる。印刷処理は、キャリッジ40を左右方向9に沿って移動させながら、圧電素子45への給電を制御して、ヘッド38にノズル39からインク滴を吐出させる処理である。印刷処理の間、キャリッジ40は、媒体通過領域36に位置しており、プラテン42と対向している。
【0064】
コントローラ130は、今回の搬送処理と次回の搬送処理との間、用紙12を一定期間停止させる。そして、用紙12が停止している間に印刷処理を実行する。つまり、コントローラ130は、印刷処理において、キャリッジ40を右向きまたは左向きに移動させながら、ノズル39からインク滴を吐出させる1回のパスを実行する。これにより、用紙12に対して1パス分の画像記録が実行される。コントローラ130は、搬送処理と印刷処理とを交互に繰り返し実行することによって、用紙12の画像記録可能な全領域に、画像記録することが可能である。つまり、コントローラ130は、複数回のパスで1枚の用紙12に画像記録させる。
【0065】
なお、コントローラ130は、上記に限らず、CPU131のみが各種処理を行うものであってもよいし、ASIC135のみが各種処理を行うものであってもよいし、CPU131とASIC135とが協働して各種処理を行うものであってもよい。また、コントローラ130は、1つのCPU131が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のCPU131が処理を分担して行うものであってもよい。また、コントローラ130は、1つのASIC135が単独で処理を行うものであってもよいし、複数のASIC135が処理を分担して行うものであってもよい。
【0066】
[コントローラ130による画像記録制御]
以下、
図7に示されるフローチャートを参照しつつ、コントローラ130による画像記録制御が説明される。以下、インクの残量が少ないことはニアエンプティ(図面にはNEと記載)と称され、インクの残量がないことはエンプティと称される。ただし、インクの残量がないとは、インクの残量が完全にゼロであることを意味するのではなく、インクの残量が正常な印刷を行えない程度に少ないことを意味する。
【0067】
図7に示される画像記録制御では、前回の印刷からの経過時間、第1カウント値、第2カウント値、ニアエンプティフラグ、及び印刷停止フラグが使用される。コントローラ130は、第1カウント値及び第2カウント値をカウントして、メモリ140に記憶させる。第1カウント値は、インク99が最大量であるとき(あるいは、インク99が最大量になったとユーザが判断したとき)に初期値にリセットされ、その後にカウントアップまたはカウントダウンされる、貯留部80に貯留されたインク99の減少量に対応するカウント値である。第2カウント値は、インク99がニアエンプティになったと判断されたときに初期値にリセットされ、その後にカウントアップまたはカウントダウンされる、貯留部80に貯留されたインク99の減少量に対応するカウント値である。
【0068】
第1カウント値及び第2カウント値には、複数のノズル39から排出したインクの液量が含まれる。第1カウント値及び第2カウント値には、複数のノズル39以外から排出したインクの液量も含まれる。例えば、第1カウント値及び第2カウント値には、排気パージが行われるときに大気開放口から排出したインクの液量も含まれる。コントローラ130は、1枚の用紙12に画像記録が行われるときに、印刷データに基づき複数のノズル39から排出したインクの量を求め、求めた量を第1カウント値に(必要な場合には第2カウント値にも)加算する。コントローラ130は、各種のメンテナンス動作を行うときに、各メンテナンス動作を行ったときのインク99の減少量を第1カウント値に(必要な場合には第2カウント値にも)加算する。
【0069】
ニアエンプティフラグ(判定フラグの一例)は、貯留部80に貯留されたインク99の液面の上下方向7の位置がニアエンプティ位置より上方であるときにはオフし、インク99の液面の上下方向7の位置がニアエンプティ位置以下であるときにはオンするフラグである。ニアエンプティフラグのオフは、判定フラグの第1値の一例である。ニアエンプティフラグのオンは、判定フラグの第2値の一例である。印刷停止フラグは、印刷(複数のノズル39からのインク99の排出)を実行しないときにはオンし、印刷を実行するときにはオンするフラグである。印刷停止フラグは、インク99がエンプティであるときにはオンし、インク99がエンプティでないときにはオフする。
【0070】
画像記録制御が実行されていないとき、記録部24及びキャップ70は、
図3に示される状態にある。つまり、キャリッジ40は待機位置に位置しており、キャップ70は被覆位置に位置している。コントローラ130は、印刷コマンド(コマンドの一例)を受け付けたときに、
図7に示される画像記録制御を行う。印刷コマンドは、複合機10の操作部17(
図1参照)や複合機10と接続された外部機器などからコントローラ130へ送られたものである。印刷コマンドは、画像記録制御を開始する旨のコマンドと、用紙12のサイズに関する情報と、用紙12へ画像記録される印刷データとを含んでいる。
【0071】
図7に示される画像記録制御において、コントローラ130は、まずニアエンプティフラグがオンであるかを判定する(S110)。なお、ニアエンプティフラグは、後述するS220でオンに設定され、後述するS270でオフに設定される。S110においてニアエンプティフラグがオンであることを条件として(S110:ON)、コントローラ130はS210へ進む。
【0072】
S110においてニアエンプティフラグがオフであることを条件として(S110:OFF)、コントローラ130は、前回の印刷からの経過時間Tを取得する(S120)。経過時間Tを取得するために、コントローラ130は、時計を有しており、時計を用いて求めた前回の印刷の終了時刻をメモリ140に記憶させ、メモリ140に記憶された終了時刻と、時計を用いて求めたS120の実行時刻との差を経過時間Tとして取得してもよい。あるいは、コントローラ130は、タイマーを有しており、印刷が終了したときにタイマーを起動し、S120ではタイマーで測定された時間を経過時間Tとして取得してもよい。あるいは、コントローラ130は、時計を有する外部装置との間で通信を行い、外部装置の時計を用いて求めた前回の印刷の終了時刻をメモリ140に記憶させ、メモリ140に記憶された終了時刻と、外部装置の時計を用いて求めたS120の実行時刻との差を、経過時間Tとして取得してもよい。前回の印刷からの経過時間Tは、直前のキャリッジ40の移動が終了してからの経過時間の一例である。次に、コントローラ130は、メモリ140から経過時間Tに関する閾値Th_tを読み出す(S130)。
【0073】
図8に示されるように、メモリ140は、値が異なる複数の閾値を記憶している。閾値は、例えば、ROM132またはEEPROM134に記憶されている。
図8(A)に示される例では、メモリ140は、キャリッジ40の移動量に応じて、値が異なる(n+1)個の閾値Th_t0、Th_t1などを格納したテーブルを記憶している。キャリッジ40の移動量が大きいときには、貯留部80の内部空間81では泡立ちが発生しやすく、発生した泡は長時間に亘って残りやすい。一方、キャリッジ40の移動量が小さいときには、貯留部80の内部空間81では泡立ちが発生しにくく、発生した泡は短時間で消滅しやすい。そこで、メモリ140には、キャリッジ40の移動量が大きいほど大きく、キャリッジ40の移動量が小さいほど小さい閾値が記憶される。
【0074】
この場合、コントローラ130は、コマンド(例えば、印刷コマンド)を受け付けたことに応じてキャリッジ40を移動したときには、キャリッジ40の移動量を求め、求めた移動量をメモリ140に記憶させる。コントローラ130は、S130において、直前のキャリッジ40の移動量に基づいて、
図8(A)に示されるテーブルを参照することにより、メモリ140に記憶された複数の閾値から一の閾値を選択する。コントローラ130は、選択した閾値を経過時間Tに関する閾値Th_tとして使用する。
【0075】
図8(B)に示される例では、メモリ140は、キャリッジ40の移動量とインク99の種別とに応じて、値が異なる複数の閾値を記憶している。この例では、インク99の種別は、タイプA、タイプB、及びタイプCである。メモリ140は、インク99の種別がタイプAのときに使用される(n+1)個の閾値Th_tA0、Th_tA1などと、インク99の種別がタイプBのときに使用される(n+1)個の閾値Th_tB0、Th_tB1などと、インク99の種別がタイプCのときに使用される(n+1)個の閾値Th_tC0、Th_tC1などとを格納したテーブルを記憶している。例えば、インクの粘性が小さいときには、貯留部80の内部空間81では泡立ちが発生しやすく、発生した泡は長時間に亘って残りやすい。一方、インクの粘性が大きいときには、貯留部80の内部空間81では泡立ちが発生しにくく、発生した泡は短時間で消滅しやすい。そこで、メモリ140には、インクの粘性が小さいほど大きく、インクの粘性が大きいほど小さい閾値が記憶される。
【0076】
この場合、コントローラ130は、上記と同様の方法でキャリッジ40の移動量をメモリ140に記憶させる共に、貯留部80に貯留されているインク99の種別を示すインク情報(液体情報の一例)を取得する。コントローラ130は、例えば、操作部17を用いて入力されたインク情報を取得する。コントローラ130は、S130において、直前のキャリッジ40の移動量と、取得したインク情報とに基づいて、
図8(B)に示されるテーブルを参照することにより、メモリ140に記憶された複数の閾値から一の閾値を選択する。コントローラ130は、選択した閾値を経過時間Tに関する閾値Th_tとして使用する。
【0077】
なお、メモリ140は、インク99の種別に応じて値が異なる複数の閾値を記憶していることとしてもよい。この場合、コントローラ130は、貯留部80に貯留されているインク99の種別を示すインク情報を取得し、S130において、取得したインク情報に基づいて、メモリ140に記憶された複数の閾値から一の閾値を選択し、選択した閾値を経過時間Tに関する閾値Th_tして使用してもよい。
【0078】
次に、コントローラ130は、S120において取得した経過時間Tが、S130において読み出した閾値Th_tを超過しているか否かを判定する(S140)。S140において経過時間Tが閾値Th_tを超過していることを条件として(S140:Yes)、コントローラ130は、液面センサ95がオンであるかを判定する(S150)。S150では、キャリッジ40はまだ停止状態にある。コントローラ130は、液面センサ95がオンであることを条件として(S150:ON)、S310へ進む。このとき、インク99はニアエンプティである。コントローラ130は、液面センサ95がオフであることを条件として(S150:OFF)、S210へ進む。このとき、インク99はニアエンプティではない。
【0079】
S140において経過時間Tが閾値Th_tを超過していないことを条件として(S140:No)、コントローラ130は、第1カウント値が第1カウント値に関する閾値Th_c1以上であるかを判定する(S160)。閾値Th_c1は、第1カウント値を用いて、インク99がニアエンプティであるかを判定するときに使用される閾値である。コントローラ130は、第1カウント値が閾値Th_c1以上であることを条件として(S160:Yes)、S310へ進む。このとき、インク99はニアエンプティである。コントローラ130は、第1カウント値が閾値Th_c1未満であることを条件として(S160:No)、S210へ進む。このとき、インク99はニアエンプティではない。
【0080】
なお、S150は、取得した経過時間Tが閾値Th_tを超過していることを条件として実行される、キャリッジ40を移動する前に液面センサ95が出力信号に基づいて貯留部80に記憶されたインク99の液面が所定位置以下であるかを判定する処理の一例である。S160は、取得した経過時間Tが閾値Th_tを超過していないことを条件として実行される、メモリ140に記憶された第1カウント値に基づいて貯留部80に貯留されたインク99の液面が所定位置以下であるかを判定する処理の一例である。
【0081】
S150において液面センサ95がオンであるとき、又はS160において第1カウント値が閾値Th_c1以上であるとき、コントローラ130は、インク99がニアエンプティであることを報知する(S210)。S210において、コントローラ130は、操作部17においてインクの残量が少ないことを示す報知を実行する。コントローラ130は、例えば、インクの残量が少ないことを示す文字や記号を操作部17に表示する。
【0082】
なお、コントローラ130は、S210において、操作部17以外の要素を用いて、インクの残量が少ないことを示す報知を実行してもよい。例えば、コントローラ130は、操作部17の外部に設けられたランプ(不図示)を点灯又は点滅させることにより、インクの残量が少ないことを示す報知を実行してもよい。S210は、貯留部80に貯留されたインク99の液面が所定位置以下であると判定したことを条件として実行される、操作部17においてインク99の残量が少ないことを示す報知を実行する処理の一例である。
【0083】
次に、コントローラ130は、ニアエンプティフラグをオンし、第2カウント値を初期値にリセットする(S220)。第2カウント値の初期値は、例えば0である。S220は、貯留部80に貯留されたインク99の液面が所定位置以下であると判定したことに応じて実行される、判定フラグを第1値から第2値に更新する処理の一例である。
【0084】
次に、コントローラ130は、第2カウント値が第2カウント値に関する閾値Th_c2(エンプティ閾値の一例)以上であるかを判定する(S230)。なお、S230は、第2カウント値がエンプティ閾値に到達したかを判定する処理の一例である。S230は、S220の直後だけでなく、S110においてニアエンプティフラグがオンであると判定された後にも実行される。コントローラ130は、第2カウント値が閾値Th_c2以上であることを条件として(S230:Yes)、S240へ進む。このとき、インク99はエンプティである。コントローラ130は、第2カウント値が閾値Th_c2未満であることを条件として(S230:No)、S210へ進む。このとき、インク99はニアエンプティである。
【0085】
S230において第2カウント値が閾値Th_c2以上であることを条件として、コントローラ130は、インク99がエンプティであることを報知する(S240)。S240において、コントローラ130は、操作部17においてインクの残量がないことを示す報知を実行する。コントローラ130は、例えば、インクの残量がないことを示す文字や記号を操作部17に表示する。
【0086】
なお、コントローラ130は、S240において、操作部17以外の要素を用いて、インクの残量がないことを示す報知を実行してもよい。例えば、コントローラ130は、操作部17の外部に設けられたランプ(不図示)を点灯又は点滅させることにより、インクの残量がないことを示す報知を実行してもよい。
【0087】
次に、コントローラ130は、印刷停止フラグをオンする(S250)。印刷停止フラグがオンしている間、コントローラ130は、インク99の排出を実行しない。S250において、コントローラ130は、キャリッジ駆動用モータ103を制御して、キャリッジ40をインク補充位置に移動させる。なお、インク補充位置は、待機位置と同じでもよく、待機位置と異なっていてもよい。キャリッジ40がインク補充位置にある間に、インクが補充される(S260)。S260では、蓋85が突壁84から外され、ボトル(不図示)から注入口83を介して内部空間81へインク99が注入される。インク99は、最大量まで注入される。
【0088】
S260において、コントローラ130は、インク99が最大量まで注入されたことをユーザに確認する処理を行う。例えば、コントローラ130は、インクが最大量まで注入されたことを確認するためのメッセージ(例えば「INK FULL?」)を操作部17に表示し、所定のボタンが押されたことを確認したときに、S260を終了してS270へ進む。
【0089】
次に、コントローラ130は、ニアエンプティフラグをオフし、第1カウント値を初期値にリセットする(S270)。第1カウント値の初期値は、例えば0である。次に、コントローラ130は、S310へ進む。
【0090】
S150において液面センサ95がオフであるとき、S160において第1カウント値が閾値Th_c1未満であるとき、S230において第2カウント値が閾値Th_c2未満であるとき、及びS270の直後に、コントローラ130は、印刷停止フラグをオフする(S310)。
【0091】
次に、コントローラ130は、ノズル39のフラッシングと、用紙12の給送とを行う(S320)。ノズル39のフラッシングは、コントローラ130が、キャリッジ駆動用モータ103を制御してキャリッジ40を待機位置に移動させた後に、圧電素子45を制御することによって行われる。用紙12の給送は、コントローラ130が給送用モータ102を制御することによって行われる。ノズル39のフラッシングと、用紙12の給送とは、並行して実行される。
【0092】
フラッシングが行われるときに、複数のノズル39からインク99が排出される。コントローラ130は、このときに複数のノズル39から排出したインク99の量を第1カウント値に(必要な場合には第2カウント値にも)加算する。なお、フラッシングが行われるときに複数のノズル39から排出したインク99の量は、印刷データとは無関係に予め決定されている。
【0093】
次に、コントローラ130は、1枚の用紙12に対する印刷(画像記録)を行う(S330)。S330において、コントローラ130は、搬送処理と印刷処理とを交互に繰り返し実行することにより、用紙12の画像記録可能な全領域に画像を記録する。コントローラ130は、1枚の用紙12に画像記録を行うときにノズル39から排出したインクの量を印刷データに基づいて算出する。コントローラ130は、算出したインクの量を第1カウント値に(必要な場合には第2カウント値にも)加算する。
【0094】
次に、コントローラ130は、用紙12の排紙を行う(S340)。S340において、コントローラ130は、搬送ローラ対59及び排出ローラ対44に、用紙12を搬送向き15へ搬送させて、排出トレイ21へ排出させる。
【0095】
次に、コントローラ130は、印刷終了であるかを判定する(S350)。S350において、コントローラ130は、印刷コマンドに含まれる画像データをすべて用紙12に記録したか否かを判定する。
【0096】
S350において印刷終了でないと判定されたことを条件として(S350:No)、コントローラ130は、用紙12の給送を行う(S360)。S360の処理は、S320の給送と同じである。その後、コントローラ130は、S330へ進む。なお、後続の用紙12の給送は、先行の用紙12の排紙(S340)と並行して実行されてもよい。
【0097】
S350において印刷終了であると判定されたことを条件として(S350:Yes)、コントローラ130は、キャリッジ40を待機位置に移動させる(S370)。以上をもって、コントローラ130は、画像記録制御を終了する。
【0098】
S320、S330、及びS370において、コントローラ130は、キャリッジ40を左右方向9に移動する。S120において、コントローラ130は、直前のキャリッジ40の移動が終了してからの経過時間を取得する処理として、前回の印刷からの経過時間Tを取得する。キャリッジ40の移動、及び経過時間Tの取得は、印刷コマンドを受け付けたことに応じて行われる。
【0099】
また、コントローラ130は、ニアエンプティフラグがオンであることを条件として(S110:ON)、貯留部80に貯留されたインク99の液面がニアエンプティ位置以下であるかの判定(S150及びS160)を実行せずに、S320、S330、及びS370において、第2カウント値をカウントしてメモリ140に記憶させる。
【0100】
複合機10において、キャリッジ40の左右方向9への移動には、キャリッジ40を左右方向9へ移動しつつ複数のノズル39からインクを吐出する画像記録を実行することが含まれる。これ以外にも、キャリッジ40の左右方向9への移動には、各種のメンテナンス動作を実行することが含まれる。
図7に示される画像記録制御において、キャリッジ40を移動する前のタイミングとは、画像記録を開始する前であり、画像記録のために複数のノズル39からインクを吐出する前でもある。
【0101】
コントローラ130は、印刷コマンド以外のコマンドを受け付けたときにも、キャリッジ40を左右方向9に移動する。ヘッド38の複数のノズル39を好ましい状態に保つために、コントローラ130は、フラッシング、ワイプ、吸引パージ、排気パージなどのメンテナンス動作を行う。コントローラ130は、対応するコマンドを受け付けたときに、メンテナンス動作を行う。メンテナンス動作が行われたときに、ヘッド38の複数のノズル39、又はノズル39以外の要素から、貯留部80に貯留されたインク99が排出される。コントローラ130は、メンテナンス動作が行われるたびに、ヘッド38の複数のノズル39、又はノズル39以外の要素から排出されたインクの量を第1カウント値に(必要な場合には第2カウント値にも)加算する。
【0102】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、コントローラ130は、経過時間Tが閾値Th_tを経過しているときには、キャリッジ40を移動する前に液面センサ95が出力する信号に基づいて、貯留部80に貯留されたインク99の液面を判定する。これにより、貯留部80においてインクの泡立ちが生じていない状態の液面センサ95の出力による液面の判定が実現できる。
【0103】
コントローラ130は、経過時間Tが閾値Th_tを経過していないときには、第1カウント値に基づいて、貯留部80に貯留されたインク99の液面を判定する。これにより、貯留部80においてインク99の泡立ちが生じている状態の液面センサ95の出力によらずに液面の判定が実現できる。
【0104】
また、コントローラ130が、キャリッジ40の移動量に基づいて、経過時間Tに関する複数の閾値から一の閾値を選択する場合には、キャリッジ40の移動量が多いほど、貯留部80において泡立ちが生じやすいので、貯留部80において泡立ちが消失するに要する時間に対応する閾値が選択され得る。
【0105】
また、コントローラ130が、インク情報に基づいて、経過時間Tに関する複数の閾値から一の閾値を選択する場合には、インク99の種別によって貯留部80における泡立ちの生じやすさが異なるので、貯留部80において泡立ちが消失するに要する時間に対応する閾値が選択され得る。
【0106】
また、本実施形態によれば、コントローラ130は、第2カウント値が閾値Th_c2に到達したことを条件として、複数のノズル39からインク99の排出を実行しないので、貯留部80からノズル39へ空気が進入することが抑制される。
【0107】
また、本実施形態によれば、コントローラ130は、第2カウント値が閾値Th_c2に到達したことを条件として、操作部17においてエラーの報知を実行するので、エラーの報知に基づいて、ノズル39からのインク99の排出が停止されていることをユーザが認識し得る。
【0108】
[変形例]
上記実施形態では、フロート91を備える回動部材90と液面センサ95とを用いて、貯留部80に貯留されたインク99の液面を検知することとしたが、
図9に示されるように、プリズム96と液面センサ95とを用いて、貯留部80に貯留されたインク99の液面を検知してもよい。
図9に示される例では、貯留部80の内部空間81に、プリズム96が設けられている。液面センサ95は、発光部95Aと受光部95Bとを備えている。
【0109】
貯留部80に貯留されたインク99の液面の高さが上下方向7においてニアエンプティ位置より上方であるときには、発光部95Aから出射された光は、
図9に示される矢印97に沿って伝搬し、プリズム96において2回反射して、受光部95Bに入射する。貯留部80に貯留されたインク99の液面の高さが上下方向7においてニアエンプティ位置以下であるときには、プリズム96における光の反射量が減少し、受光部95Bに入射する光の量は減少する。したがって、プリズム96と液面センサ95とを用いて、貯留部80に貯留されたインク99の液面を検知することができる。
【0110】
上記実施形態では、貯留部80は一つのみ設けられていたが、複数の貯留部80が設けられていてもよい。例えば、
図10に示されるように、記録部24は、4つの貯留部80C、80M、80Y、80Bを備えていてもよい。貯留部80Cには、シアンのインクが貯留されている。貯留部80Mには、マゼンタのインクが貯留されている。貯留部80Yには、イエローのインクが貯留されている。貯留部80Bには、ブラックのインクが貯留されている。貯留部80C、80M、80Y、80Bは、前後方向8に並んで配置されている。なお、貯留部80C、80M、80Y、80Bは、前後方向8以外、例えば左右方向9に並んで配置されていてもよい。また、貯留部80C、80M、80Y、80Bの配列順序は、
図10に示された順序に限らない。また、各貯留部80C、80M、80Y、80Bの大きさは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0111】
上記実施形態では、貯留部80は、キャリッジ40に据え付けられており、注入口83からインクが注入されることによってインクが補充されていた。しかし、貯留部80は、このような構成に限らない。例えば、貯留部80は、キャリッジ40に着脱可能なカートリッジであってもよい。この場合、カートリッジに貯留されたインクが少なくなるまたはなくなると、新しいカートリッジと取り換えられる。
【0112】
上記実施形態では、複合機10は、貯留部80の内部空間81のうち空気が入った部分(以下、気体層と称される)と外部とを連通するバルブユニットを備えていないこととしたが、複合機10は、外部に開放する大気開放口を通じて貯留部80の気体層と外部とを連通する気体流路と、大気開放口または気体流路を開放または閉塞するバルブユニットとを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0113】
10・・・複合機(画像記録装置)
12・・・用紙(被記録媒体)
17・・・操作部(報知部)
38・・・ヘッド
39・・・ノズル
40・・・キャリッジ
80・・・貯留部
95・・・液面センサ(センサ)
99・・・インク(液体)
130・・・コントローラ
140・・・メモリ