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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149581
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】マスク保護部材及びシャツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220929BHJP
   A41D 27/20 20060101ALI20220929BHJP
   A41B 1/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D27/20 P
A41D27/20 H
A41D27/20 B
A41B1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051802
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】591160811
【氏名又は名称】山喜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】山内 知子
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 和良
(72)【発明者】
【氏名】土岐 保
【テーマコード(参考)】
3B035
【Fターム(参考)】
3B035AA02
3B035AA17
3B035AB08
3B035AB09
3B035AB11
3B035AB14
3B035AB18
3B035AC24
(57)【要約】
【課題】本発明は、マスクを載置するスペースがなくても、マスクを衛生的に保つことができるマスク保護部材及びシャツを提供する。
【解決手段】被服のポケットに対して取り付け可能なマスク保護部材であって、ポケットは、固定用貫通孔が形成されており、所定の方向に板状又はシート状に延びた保護本体部と、保護本体部の所定の方向の一方の端部から張り出した帯状部を有し、保護本体部は、第1覆部と第2覆部と本体側接続部を有し、第1覆部と第2覆部によってマスクの大部分を挟むことが可能であり、本体側接続部は、保護本体部の所定の方向の他方の端部側に設けられており、帯状部は、本体側接続部と接続可能な帯側接続部を有し、ポケットに取り付ける際には、帯状部を固定用貫通孔に通過させて帯側接続部を本体側接続部に接続する構成とする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被服のポケットに対して取り付け可能なマスク保護部材であって、
前記ポケットは、固定用貫通孔が形成されており、
所定の方向に板状又はシート状に延びた保護本体部と、前記保護本体部の前記所定の方向の一方の端部から張り出した帯状部を有し、
前記保護本体部は、第1覆部と第2覆部と本体側接続部を有し、前記第1覆部と前記第2覆部によってマスクの大部分を挟むことが可能であり、
前記本体側接続部は、前記保護本体部の前記所定の方向の他方の端部側に設けられており、
前記帯状部は、前記本体側接続部と接続可能な帯側接続部を有し、
前記ポケットに取り付ける際には、前記帯状部を前記固定用貫通孔に通過させて前記帯側接続部を前記本体側接続部に接続する、マスク保護部材。
【請求項2】
前記本体側接続部と前記帯側接続部のうち一方の接続部は、接続用ボタンであり、
前記本体側接続部と前記帯側接続部のうち他方の接続部は、前記接続用ボタンと係合可能な接続用ボタン穴である、請求項1に記載のマスク保護部材。
【請求項3】
前記保護本体部は、布又はシートであって、中間部で折り返されて前記第1覆部と前記第2覆部が形成される、請求項1又は2に記載のマスク保護部材。
【請求項4】
前記第1覆部及び/又は前記第2覆部は、前記マスクを挟んだ状態において、少なくとも前記マスク側の面に抗ウイルス加工が施されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク保護部材。
【請求項5】
前記マスクは、マスク本体部と、耳掛け部を有するものであり、
前記ポケットに取り付ける際には、前記帯状部を前記耳掛け部内に通過させて前記帯側接続部を前記本体側接続部に接続する、請求項1~4のいずれか1項に記載のマスク保護部材。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のマスク保護部材と、前記ポケットを有するシャツであって、
前記固定用貫通孔は、溝状であって、前記ポケットのポケット口に沿って延びている、シャツ。
【請求項7】
前記ポケットは、身頃の表面にポケット形成布が縫製されて形成されており、
前記ポケット形成布は、ポケット本体部と、前記ポケット本体部の端部から前記ポケットの外側に向かって折り返されたポケット側折り返し部を有し、
前記ポケット側折り返し部に前記固定用貫通孔を有する、請求項6に記載のシャツ。
【請求項8】
前記身頃は、前記ポケット本体部と重なる位置に第1係合部を有し、
前記ポケット本体部は、前記第1係合部と対向する位置に前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有する、請求項7に記載のシャツ。
【請求項9】
前記第1係合部は、保持用ボタンであり、
前記第2係合部は、前記保持用ボタンと対をなし、前記固定用貫通孔と対向する保持用ボタン穴であり、
前記帯状部は、前記保持用ボタン穴と前記固定用貫通孔とに跨って通過可能である、請求項8に記載のシャツ。
【請求項10】
前記ポケットは、身頃の表面にポケット形成布が縫製されて形成されており、
前記ポケットは、前記第1覆部と前記第2覆部で前記マスクを挟んだ状態で、前記マスク保護部材の大部分を収納可能である、請求項6~9のいずれか1項に記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを保護するマスク保護部材及びマスク保護部材を備えたドレスシャツ(ワイシャツ)、カジュアルシャツ等のシャツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新型コロナウイルス等の感染症の対策として、外出時にはマスクの着用が求められている。そのため、飲食店等で飲食を行う際には、マスクを一時的に外し、マスクをテーブル上に載置し、飲食を行うことが多い。
しかしながら、テーブル上にマスクを直接載置すると、マスクの外側面が直接テーブルに接触するだけでなく、テーブル上のマスクの装着面たる内側面が露出するため、衛生的に好ましくない。
【0003】
そこで、一部の飲食店では、例えば、特許文献1のような紙製のマスクケースが配布され、テーブルにマスクを置く際に、マスクケースでマスクを挟んでテーブルに載置することを推奨している。
特許文献1のマスクホルダーでは、台紙が二つ折り加工され、右半分の台紙の上方角部付近に係止用の切り抜きが形成され、左半分の台紙の上方角部付近に差し込み片の輪郭を画定する切り込みが形成されている。そして、特許文献1のマスクホルダーは、台紙を二つ折りして右半分の台紙と左半分の台紙でマスクを挟み、右半分の台紙の切り抜きに左半分の台紙の差し込み片を挿入することで、マスクを台紙の内側に収納し、マスクが飛び出したり落ちたりすることを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3230550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のマスクホルダーは、マスクを折り畳んで収納するため、全体的な大きさをマスクの半分程度に小さくできるものの、テーブルに置く際には寝かせて載置することになる。そのため、テーブル上のスペースが小さい場合、マスクホルダーで挟んだマスクをテーブルに載置できない問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、マスクを載置するスペースがなくても、マスクを衛生的に保つことができるマスク保護部材及びシャツを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、被服のポケットに対して取り付け可能なマスク保護部材であって、前記ポケットは、固定用貫通孔が形成されており、所定の方向に板状又はシート状に延びた保護本体部と、前記保護本体部の前記所定の方向の一方の端部から張り出した帯状部を有し、前記保護本体部は、第1覆部と第2覆部と本体側接続部を有し、前記第1覆部と前記第2覆部によってマスクの大部分を挟むことが可能であり、前記本体側接続部は、前記保護本体部の前記所定の方向の他方の端部側に設けられており、前記帯状部は、前記本体側接続部と接続可能な帯側接続部を有し、前記ポケットに取り付ける際には、前記帯状部を前記固定用貫通孔に通過させて前記帯側接続部を前記本体側接続部に接続する、マスク保護部材である。
【0008】
ここでいう「被服」には、身体に着用するものをいい、シャツやジャケット、ズボン等の衣服や履物、被り物を含む。
ここでいう「大部分」とは、全体の80%以上を占める部分をいう。
【0009】
本発明の構成によれば、被服のポケットに設けられた固定用貫通孔に帯状部を通過させて帯側接続部と本体側接続部を接続し、ポケットに取り付けることが可能であるため、マスクを載置するスペースがなくても、マスクを衛生的に保つことができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記本体側接続部と前記帯側接続部のうち一方の接続部は、接続用ボタンであり、前記本体側接続部と前記帯側接続部のうち他方の接続部は、前記接続用ボタンと係合可能な接続用ボタン穴である、請求項1に記載のマスク保護部材である。
【0011】
本発明の構成によれば、接続用ボタンを接続用ボタン穴に留めることで、簡単に帯状部を保護本体部に接続できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記保護本体部は、布又はシートであって、中間部で折り返されて前記第1覆部と前記第2覆部が形成される、請求項1又は2に記載のマスク保護部材である。
【0013】
ここでいう「中間部」とは、一方向における両端部以外の部分であって当該両端部の間の部分をいう。以下、同様とする。
【0014】
本発明の構成によれば、保護本体部の第1覆部と第2覆部が連続した布又はシートで構成されているため、第1覆部と第2覆部が分離せず、第1覆部と第2覆部でマスクを挟みやすい。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記第1覆部及び/又は前記第2覆部は、前記マスクを挟んだ状態において、少なくとも前記マスク側の面に抗ウイルス加工が施されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク保護部材である。
【0016】
本発明の構成によれば、第1覆部及び/又は第2覆部のマスク側の面に抗ウイルス加工が施されているため、マスクに付着したウイルスの数を減少させることができ、マスクを清潔に保つことができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、前記マスクは、マスク本体部と、耳掛け部を有するものであり、前記ポケットに取り付ける際には、前記帯状部を前記耳掛け部内に通過させて前記帯側接続部を前記本体側接続部に接続する、請求項1~4のいずれか1項に記載のマスク保護部材である。
【0018】
本発明の構成によれば、帯状部を耳掛け部内に挿通して帯側接続部を本体側接続部に接続しているため、マスクの耳掛け部が帯状部の長さ方向の中間部で係止され、第1覆部と第2覆部の間から落ちることを防止できる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載のマスク保護部材と、前記ポケットを有するシャツであって、前記固定用貫通孔は、溝状であって、前記ポケットのポケット口に沿って延びている、シャツである。
【0020】
本発明の構成によれば、固定用貫通孔がポケット口に沿って延びているため、固定用貫通孔を幅方向に開きやすく、固定用貫通孔に帯状部を通過させやすい。
【0021】
請求項7に記載の発明は、前記ポケットは、身頃の表面にポケット形成布が縫製されて形成されており、前記ポケット形成布は、ポケット本体部と、前記ポケット本体部の端部から前記ポケットの外側に向かって折り返されたポケット側折り返し部を有し、前記ポケット側折り返し部に前記固定用貫通孔を有する、請求項6に記載のシャツである。
【0022】
本発明の構成によれば、着用者からみて固定用貫通孔の位置を離れた位置に設けることができ、着用者が帯状部を固定用貫通孔に通過させる動作を行いやすい。
【0023】
請求項8に記載の発明は、前記身頃は、前記ポケット本体部と重なる位置に第1係合部を有し、前記ポケット本体部は、前記第1係合部と対向する位置に前記第1係合部と係合可能な第2係合部を有する、請求項7に記載のシャツである。
【0024】
本発明の構成によれば、第1係合部と第2係合部を係合させることで、マスクの重量によってポケット口が広がることを抑制できる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、前記第1係合部は、保持用ボタンであり、前記第2係合部は、前記保持用ボタンと対をなし、前記固定用貫通孔と対向する保持用ボタン穴であり、前記帯状部は、前記保持用ボタン穴と前記固定用貫通孔とに跨って通過可能である、請求項8に記載のシャツである。
【0026】
本発明の構成によれば、帯状部を保持用ボタン穴と固定用貫通孔の双方に通過させて帯側接続部を本体側接続部に接続することで、マスク保護部材の一部又は全部をポケット内に挿入した場合でも、ポケットからマスク保護部材が落下することを防止できる。
【0027】
請求項10に記載の発明は、前記ポケットは、身頃の表面にポケット形成布が縫製されて形成されており、前記ポケットは、前記第1覆部と前記第2覆部で前記マスクを挟んだ状態で、前記マスク保護部材の大部分を収納可能である、請求項6~9のいずれか1項に記載のシャツである。
【0028】
本発明の構成によれば、第1覆部と第2覆部でマスクを挟んだ状態でマスク保護部材をポケットに入れることができるため、マスク保護部材が飲食等の際に邪魔になりにくい。
【発明の効果】
【0029】
本発明のマスク保護部材及びシャツによれば、マスクを載置するスペースがなくても、マスクを衛生的に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1実施形態に係るシャツの説明図であり、(a)は正面図であり、(b)は背面図である。
図2図1のシャツの説明図であり、(a)は収納姿勢を示す正面図であり、(b)は吊下姿勢を表す正面図である。
図3図1のシャツの要部の分解斜視図である。
図4図3のポケットの断面図である。
図5図3のシャツの構成部材の説明図であり、(a)はマスク保護部材を展開した展開図であり、(b)はマスクを展開した展開図である。
図6図1のシャツを収納姿勢にする際の手順の説明図であり、(a)は第1耳掛け部及び第2耳掛け部に帯状体を挿入した状態を示す斜視図であり、(b)は帯状体を固定用貫通孔及び保持用ボタン穴に挿入する途中の斜視図であり、(c)は接続用ボタンを接続ボタン穴に留める際の斜視図である。
図7図1のシャツを収納姿勢にする際の手順の説明図であり、(a)はマスクを挟んだマスク保護部材をポケットに収納する際の斜視図であり、(b)はマスクを挟んだマスク保護部材をポケットに収納した後の斜視図である。
図8図1のシャツを吊下姿勢にする際の手順の説明図であり、(a)は保持用ボタンを保持用ボタン穴に留める際の斜視図であり、(b)は帯状部を固定用貫通孔に挿入する際の斜視図であり、(c)接続用ボタンを接続ボタン穴に留める際の斜視図である。
図9図1のシャツの説明図であり、マスク保護部材を保持用ボタンに吊り下げたときの断面図である。
図10】本発明のマスク保護部材の説明図であり、(a)は本発明の他の実施形態のマスク保護部材の展開図であり、(b)は(a)とは異なる他の実施形態のマスク保護部材の外側からみた展開図であり、(c)は(b)のマスク保護部材を内側からみた展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0032】
本発明の第1実施形態のシャツ1は、ドレスシャツ(ワイシャツ)、カジュアルシャツなどの上衣であり、マスク100を保持可能となっている。
シャツ1は、通常のシャツと同様、図1のように、主要構成部位として、着用者の銅体を覆う身頃2と、着用者の肩部分を覆う肩ヨーク3と、着用者の腕を囲んで覆う袖部5a,5bを備え、これらの各部分が裁断した布状の生地を縫製することで形成されている。
【0033】
身頃2は、図1のように、着用者の胴体の前面側を覆う前身頃6a,6bと、着用者の胴体の後面側を覆う後身頃7で構成されている。
シャツ1は、前身頃6aにポケット10が設けられており、ポケット10にマスク保護部材11の大部分又は全部が収納されている。
【0034】
そして、本実施形態のシャツ1は、ポケット10とマスク保護部材11に主な特徴を有している。そこで、以下の説明においては、主にポケット10とマスク保護部材11について説明し、他の部分については従来と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
シャツ1は、図2(a)に示されるポケット10内にマスク保護部材11を収納した収納姿勢と、図2(b)に示されるポケット10外にマスク保護部材11を吊り下げた吊下姿勢にすることが可能となっている。
【0036】
ポケット10は、パッチポケットであり、図3のように、前身頃6aの表面にポケット形成布12が縫製されて形成されている。
ポケット10は、前身頃6aとポケット形成布12によって収納空間15が形成されており、収納空間15の上部に上方が開口したポケット口16が形成されている。すなわち、ポケット10は、ポケット口16を介してポケット10の内外が連通している。
【0037】
前身頃6aは、ポケット形成布12が重なる位置に保持用ボタン18(第1係合部)が設けられている。
保持用ボタン18は、後述するポケット形成布12の保持用ボタン穴25と係合可能な部位であり、保持用ボタン穴25と係合することでポケット口16の広がりを抑制する部位である。
【0038】
ポケット形成布12は、図2図3のように、ポケット本体部20と、ポケット側折り返し部21を備えている。
【0039】
ポケット本体部20は、前身頃6aとともに収納空間15を構成する部位である。
ポケット本体部20は、略四角形状の布状の部分であり、図2のように、上辺22aがポケット口16の一部を構成し、残りの3辺22b~22dに沿って縫製されている。
ポケット本体部20は、図4のように、前身頃6aに設けられた保持用ボタン18と対応する位置に保持用ボタン穴25(第2係合部)を備えている。
保持用ボタン穴25は、保持用ボタン18と対をなし、保持用ボタン18と係合可能な係合穴であり、ポケット本体部20の厚み方向の内側から深さをもった有底穴又は貫通孔である。
本実施形態の保持用ボタン穴25は、ポケット口16に沿ってスリット状に延びたスリット溝であり、ポケット本体部20を厚み方向に貫通した貫通溝である。
また、保持用ボタン穴25は、マスク保護部材11の帯状部51を挿通可能な挿通孔でもある。
【0040】
ポケット側折り返し部21は、図3図4のように、ポケット本体部20の上端部から折り返された部分であり、ポケット本体部20とともに挿入空間30を構成する部位である。
挿入空間30は、マスク保護部材11の一部を挿入可能な空間であり、正面視したときに上方及び左右が閉塞され下方に向かって開放した空間である。
すなわち、ポケット側折り返し部21は、横長長方形状の布状の部分であり、図2のように、上辺31aがポケット本体部20の上辺22aと共通であり、右辺31c及び左辺31dに沿って縫製されている。
ポケット側折り返し部21は、図3のように、ポケット口16(上辺31a)の近傍に固定用貫通孔32を備えている。
固定用貫通孔32は、マスク保護部材11の帯状部51を挿通可能な挿通孔であり、ポケット側折り返し部21を厚み方向に貫通した貫通孔である。
固定用貫通孔32は、ポケット口16の近傍に設けられ、ポケット口16に沿ってスリット状に延びたスリット溝である。
【0041】
収納空間15は、図2(b)のように折り畳んだ状態のマスク保護部材11を収納可能な空間であり、正面視したときに左右が閉塞され上方に向かって開放した空間である。
【0042】
ここで、ポケット10の各部位の位置関係について説明する。
【0043】
前身頃6aとポケット本体部20は、図4のように、収納空間15を挟んで対向しており、ポケット本体部20とポケット側折り返し部21は、挿入空間30を挟んで対向している。
保持用ボタン18と保持用ボタン穴25と固定用貫通孔32は、正面視したときに重畳する位置に配されている。
【0044】
マスク保護部材11は、マスク100を挟んで折り畳み、マスク100を保護する部材である。
マスク保護部材11は、図5のように、保護本体部50と、帯状部51を備えている。
保護本体部50は、所定の方向(以下、横方向Xともいう)に延びた板状体又はシート状体であり、一方の端部側に接続用ボタン52(本体側接続部)を備えている。
保護本体部50は、図5のように展開したときに、延び方向(横方向X)の中間部において折り返し線53で折り返されており、折り返し線53を境に第1覆部55と第2覆部56を備えている。
保護本体部50は、抗ウイルス布又は抗ウイルスシートで形成されており、少なくとも内側面(折り返し線53で折り返したときに第1覆部55と第2覆部56が対向する側の面)に抗ウイルス加工が施されている。
なお、保護本体部50は、抗ウイルス加工の他にも、抗菌加工や防臭加工、消臭加工等の加工が施されていてもよい。
【0045】
接続用ボタン52は、図5のように、横方向Xにおいて第2覆部56の外側端部(折り返し線53とは反対側の端部)近傍であって、縦方向Y(横方向Xに対する直交方向)において中央部に設けられている。
【0046】
帯状部51は、横方向X(長さ方向)において、第1覆部55の外側端部(折り返し線53とは反対側の端部)に設けられ、第1覆部55の縁部から外側に張り出した帯状の部位である。
帯状部51は、縦方向Y(幅方向)において中央部に設けられ、第1覆部55によって片持ち状に支持されており、その先端部が自由端となっている。
帯状部51は、図5のように、張出方向において、接続用ボタン穴60(帯側接続部)と、固定用ボタン穴61を備えている。
接続用ボタン穴60は、接続用ボタン52と対をなし、接続用ボタン52と係合可能な係合穴であり、帯状部51の厚み方向に深さをもった有底穴又は貫通孔である。
本実施形態の接続用ボタン穴60は、帯状部51の張出方向に沿ってスリット状に延びたスリット溝であり、帯状部51を厚み方向に貫通した貫通溝である。
【0047】
固定用ボタン穴61は、保持用ボタン18(図3参照)と対をなし、保持用ボタン18と係合可能な係合穴であり、帯状部51の厚み方向に深さをもった有底穴又は貫通孔である。
本実施形態の固定用ボタン穴61は、帯状部51の延び方向に沿ってスリット状に延びたスリット溝であり、帯状部51を厚み方向に貫通した貫通溝である。
すなわち、接続用ボタン穴60は、固定用ボタン穴61と同一方向に延びて固定用ボタン穴61とともに一列に並んでおり、張出方向において固定用ボタン穴61よりも先端部側(第1覆部55とは反対側)に設けられている。
【0048】
マスク100は、図5(b)のように、マスク本体部101と、第1耳掛け部102と、第2耳掛け部103を備えている。
マスク本体部101は、展開時において長方形状の部分であり、長手方向に対向する第1縁部105と第2縁部106を有している。
第1耳掛け部102は、着用者の右耳に引っ掛ける部位であり、第1縁部105に対して半円状に延びた紐状部である。
第2耳掛け部103は、着用者の左耳に引っ掛ける部位であり、第2縁部106に対して半円状に延びた紐状部である。
耳掛け部102,103は、ともに延び方向に伸縮可能となっている。
【0049】
続いて、本実施形態のシャツ1を収納姿勢にする際の手順を各構成部材の位置関係とともに説明する。
【0050】
まず、図6(a)のように第1覆部55の帯状部51をマスク100の第1耳掛け部102内(第1耳掛け部102と第1縁部105に囲まれる領域)及び第2耳掛け部103内(第2耳掛け部103と第2縁部106に囲まれる領域)に通過させる。
【0051】
このとき、マスク100の耳掛け部102,103は、第1覆部55の縁部に係止される。
【0052】
続いて、図6(b)のように第1覆部55の帯状部51をポケット10のポケット側折り返し部21の外側から固定用貫通孔32内及び保持用ボタン穴25内を通過させて折り返す。
【0053】
このとき、マスク保護部材11の帯状部51が保持用ボタン穴25から収納空間15に挿入され、ポケット口16から外部に張り出す。
【0054】
そして、図6(c)のように接続用ボタン52を接続用ボタン穴60に留めて接続用ボタン52と接続用ボタン穴60を係合させる。
【0055】
このとき、マスク保護部材11は、折り返し線53でマスク100が内側になるように折り畳まれ、保護本体部50上にマスク100のマスク本体部101が重なり、第1覆部55と第2覆部56でマスク100の大部分(本実施形態ではマスク本体部101の全体)が挟まれる。
また、帯状部51は、接続用ボタン52と接続用ボタン穴60が係合することで環状となり、マスク保護部材11及びマスク100はポケット10によって係止される。
【0056】
続いて、図7(a)のようにマスク保護部材11を帯状部51の環状に沿って回転させて、図7(b)のようにマスク保護部材11を折り返し線53側(折り畳み部分)からポケット10の収納空間15内に収納し、シャツ1は収納姿勢となる。
【0057】
このとき、マスク保護部材11は、第1覆部55と第2覆部56でマスク100を挟んだ状態でポケット10の収納空間15内に挿入される。
【0058】
続いて、本実施形態のシャツ1を吊下姿勢にする際の手順を各構成部材の位置関係とともに説明する。
【0059】
まず、図8(a)のように前身頃6aに設けられた保持用ボタン18をポケット本体部20に設けられた保持用ボタン穴25に留めて係合させる。
【0060】
このとき、ポケット10は、保持用ボタン18と保持用ボタン穴25の係合によって、ポケット形成布12のポケット口16が開く方向への移動が規制される。
【0061】
続いて、収納姿勢にする場合と同様、第1覆部55の帯状部51をマスク100の第1耳掛け部102内及び第2耳掛け部103内に通過させる。
【0062】
続いて、図8(b)のように帯状部51を挿入空間30内から固定用貫通孔32を通過させて折り返す。
【0063】
このとき、マスク保護部材11の帯状部51は、ポケット本体部20とポケット側折り返し部21の隙間から挿入空間30に挿入され、固定用貫通孔32から外部に張り出す。
【0064】
そして、図8(c)のように接続用ボタン52を接続用ボタン穴60で留めて接続用ボタン52と接続用ボタン穴60を係合させる。
【0065】
このとき、帯状部51は、接続用ボタン52と接続用ボタン穴60が係合することで環状となり、マスク保護部材11及びマスク100はポケット10によって係止される。
【0066】
本実施形態のシャツ1によれば、ポケット10に設けられた固定用貫通孔32に帯状部51を通過させてポケット10にマスク保護部材11を取り付けており、ポケット10によってマスク保護部材11で挟まれたマスク100が支持される。そのため、テーブル等にマスク100を載置する必要がなく、マスク100を衛生的に保つことができる。
【0067】
本実施形態のシャツ1によれば、第2覆部56に設けられた接続用ボタン52を第1覆部55から延びた帯状部51の接続用ボタン穴60に留めることで、簡単に帯状部51の先端部側を第2覆部56に固定できる。
【0068】
本実施形態のシャツ1によれば、第2覆部56を第1覆部55に対して相対的に折り返すことでマスク100のマスク本体部101を挟むため、マスク本体部101が外部に晒されず、マスク100をより衛生的に保つことができる。
【0069】
本実施形態のシャツ1によれば、第1覆部55及び第2覆部56の少なくともマスク100側の面に抗ウイルス加工が施されている。そのため、マスク100が第1覆部55及び第2覆部56に接触することで、マスク100に付着したウイルスの数を減少させることができ、マスク100を清潔に保つことができる。
【0070】
本実施形態のシャツ1によれば、第1覆部55から延びた帯状部51が第1耳掛け部102内及び第2耳掛け部103内を通過して第2覆部56に接続される。そのため、第1覆部55と第2覆部56の間に隙間ができて当該隙間からマスク100が落下しても、帯状部51で係止され、マスク100が地面に落下することを防止できる。
【0071】
本実施形態のシャツ1によれば、固定用貫通孔32がポケット10のポケット口16に沿ったスリット溝であるため、固定用貫通孔32を上下方向に広げやすく、帯状部51を通過させやすい。
【0072】
本実施形態のシャツ1によれば、ポケット本体部20から収納空間15の外側に向かって折り返されたポケット側折り返し部21に固定用貫通孔32が設けられている。そのたため、着用者からみて固定用貫通孔32の位置を離れた位置にでき、着用者が帯状部51を固定用貫通孔32に通過させる動作を行いやすい。
【0073】
本実施形態のシャツ1によれば、吊下姿勢において、保持用ボタン18を保持用ボタン穴25に留めているため、マスク保護部材11及びマスク100の重量によってポケット口16が広がることを防止でき、ポケット10の型崩れが起こりにくい。
【0074】
本実施形態のシャツ1によれば、収納姿勢において、帯状部51を保持用ボタン穴25と固定用貫通孔32の双方に通過させて接続用ボタン52で留めて環状にし、収納空間15内にマスク保護部材11を収納する。そのため、ポケット10からマスク保護部材11が落下しても、ポケット10が帯状部51を係止し、マスク保護部材11が地面に落下することを防止できる。
【0075】
本実施形態のシャツ1によれば、収納姿勢において、ポケット10内にマスク保護部材11が収まるため、マスク保護部材11が飲食等の際に邪魔になりにくい。
【0076】
本実施形態のシャツ1の他のポケット10への取り付け方法としては、例えば、図9のように、前身頃6aに設けられた保持用ボタン18を帯状部51の基端側に位置する固定用ボタン穴61で留め、第2覆部56の接続用ボタン52を先端側に位置する接続用ボタン穴60で留めることが挙げられる。こうすることで、固定用貫通孔32を通過させずにマスク保護部材11を前身頃6aに対して固定することもできる。
【0077】
上記した実施形態では、接続用ボタン52を接続用ボタン穴60に留めることで第1覆部55から延びた帯状部51の先端側の部分を第2覆部56に接続していたが、本発明はこれに限定されるものではない。帯状部51の先端側の部分と第2覆部56の接続手段は特に限定されない。例えば、第2覆部56に接続用ボタン穴60を設けて帯状部51に接続用ボタン52を設けて接続してもよい。
また、接続手段は、例えばスナップボタンや面ファスナー、係止片等で構成されていてもよい。
【0078】
上記した実施形態では、第1耳掛け部102内及び第2耳掛け部103内に帯状部51を通過させていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1耳掛け部102と第2耳掛け部103のうち一方の耳掛け部にのみに帯状部51を通過させてもよいし、第1耳掛け部102と第2耳掛け部103の双方とも帯状部51を通過させなくてもよい。
【0079】
上記した実施形態では、第1覆部55及び第2覆部56の両方が抗ウイルス布又は抗ウイルスシートによって構成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1覆部55及び第2覆部56のうち一方の覆部が抗ウイルス布又は抗ウイルスシートによって構成されていてもよい。
【0080】
上記した実施形態では、マスク保護部材11の保護本体部50は、マスク本体部101全体を覆っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。マスク保護部材11の保護本体部50は、マスク本体部101の一部のみを覆っていてもよい。
【0081】
上記した実施形態では、第2覆部56に接続用ボタン52を設けていたが、本発明はこれに限定されるものではない。図10(a)のように第2覆部56に第2覆部56から張り出した張出部70を設けて張出部70に接続用ボタン52を設けてもよい。
【0082】
上記した実施形態では、第2覆部56の接続用ボタン52を帯状部51の接続用ボタン穴60に留めることで保護本体部50を折り畳んだ状態で維持していたが、本発明はこれに限定されるものではない。マスク保護部材11の保護本体部50に折り畳んだ状態を維持する維持手段を別途設けてもよい。
例えば、図10(b),図10(c)のように、横方向Xにおいて保護本体部50の第1覆部55側の端部に維持用ボタン穴81を設け、第2覆部56側の端部であって接続用ボタン52とは反対側の面に維持用ボタン80を設けてもよい。
また、この場合は、維持手段を維持用ボタン80と維持用ボタン穴81で構成しているが、維持手段は特に限定されるものではなく、例えばスナップボタンや面ファスナー、係止片等で構成されていてもよい。
【0083】
上記した実施形態では、マスク100をマスク保護部材11で二つ折にしてポケット10に収納したが、本発明はこれに限定されるものではない。マスク100を折り畳まずに、マスク保護部材11で挟んでもよいし、3つ折り以上で折り畳んでマスク保護部材11で挟んでもよい。
【0084】
上記した実施形態では、保持用ボタン18と保持用ボタン穴25と固定用貫通孔32は、正面視したときに重畳する位置に配されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。固定用貫通孔32は、正面視したときに、保持用ボタン18と保持用ボタン穴25の位置に対してずれた位置に設けられていてもよい。
【0085】
上記した実施形態では、マスク保護部材11の帯状部51は、縦方向Yにおいて中央部に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではない。マスク保護部材11の帯状部51は、縦方向Yの片方の端部側に寄って設けられていてもよい。
【0086】
上記した実施形態では、ポケット10はパッチポケットであったが、本発明はこれに限定されるものではない。ポケット10の種類は特に限定されない。ポケット10は、例えば、セットインポケットであってもよい。
【0087】
上記した実施形態では、シャツ1のポケット10は、前身頃6aの着用者の胸部付近に位置する胸ポケットであったが、本発明はこれに限定されるものではない。他の部分のポケットであってもよい。例えば、後身頃7の表面にポケット10を設けてもよい。
【0088】
上記した実施形態では、シャツ1のポケット10にマスク保護部材11を取り付けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の被服にマスク保護部材11を取り付けてもよい。例えば、ズボン等の下衣にポケット10を設けてマスク保護部材11を取り付けてもよいし、ジャケット等の他の上衣にポケット10を設けてマスク保護部材11を取り付けてもよい。
【0089】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0090】
1 シャツ(被服)
2 身頃
6a,6b 前身頃
10 ポケット
11 マスク保護部材
12 ポケット形成布
16 ポケット口
18 保持用ボタン(第1係合部)
20 ポケット本体部
21 ポケット側折り返し部
25 保持用ボタン穴(第2係合部)
32 固定用貫通孔
50 保護本体部
51 帯状部
52 接続用ボタン(本体側接続部)
55 第1覆部
56 第2覆部
60 接続用ボタン穴(帯側接続部)
100 マスク
101 マスク本体部
102 第1耳掛け部
103 第2耳掛け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10