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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149588
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】バッテリパックの冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/617 20140101AFI20220929BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220929BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20220929BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20220929BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20220929BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220929BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220929BHJP
   H01M 10/6562 20140101ALI20220929BHJP
   H01M 50/224 20210101ALI20220929BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20220929BHJP
   H01M 10/652 20140101ALI20220929BHJP
   H01M 10/6565 20140101ALI20220929BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01M10/617
H01M10/613
H01M50/202 401H
H01M50/249
H01M10/6563
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6562
H01M50/224
H01M10/653
H01M10/652
H01M10/6565
B60K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051810
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 綱一郎
(72)【発明者】
【氏名】綾目 英夫
(72)【発明者】
【氏名】山梨 哲平
【テーマコード(参考)】
3D038
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
3D038AA06
3D038AB01
3D038AC04
3D038AC12
3D038AC22
5H031AA09
5H031EE01
5H031HH08
5H031KK08
5H040AA28
5H040AS04
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY08
5H040AY10
5H040CC05
5H040CC38
5H040LL01
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】密閉型バッテリパック内部の空気循環効率を改善することにより構造の簡素化とバッテリパック内部の温度分布の均一化および所期の冷却効果を達成する。
【解決手段】内部に複数のバッテリモジュール(31,32)を備え、バッテリケースは、車長方向の後部に対して前方側の幅が狭くなるように平面視において傾斜した側面(151,261)を備え、バッテリケース内部の空気を吸入口(50)から吸入し、送風ダクト(4)を通じて吹出口(45)に圧送する送風ファン(5)を備え、吸入口(50)は、バッテリケース後部の幅方向の中間部で第1のバッテリモジュール群(31)の上方に開口され、吹出口(45)は、バッテリケース後部の側面に隣接して配置されかつ前方に配向され、バッテリケースの傾斜した側面(151,261)に沿って前方に向かう吹出空気流(Fa)が形成される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に密閉されたバッテリケースの内部に複数のバッテリモジュールを備えたバッテリパックの冷却構造であって、
前記バッテリケースは、車長方向の後部に対して前方側の幅が狭くなるように、平面視において傾斜した側面を備え、実質的に熱伝導性材料で形成されることより放熱部材としての機能を有しており、前記バッテリケースの内部の空気を吸入口から吸入し、送風ダクトを通じて吹出口に圧送するための送風ファンを備え、
前記複数のバッテリモジュールは、前記バッテリケースの内部の前記後部に相互間に間隙を有して固定配置された第1のバッテリモジュール群と、前記第1のバッテリモジュール群より車長方向前方に相互間に間隙を有して固定配置された第2のバッテリモジュール群と、を含み、前記第2のバッテリモジュール群は、それらの長手方向を車長方向に一致させて並設されており、
前記吸入口は、前記バッテリケースの前記後部の幅方向の中間部で前記第1のバッテリモジュール群の上方に開口され、かつ、
前記吹出口は、前記バッテリケースの前記後部の側面に隣接して配置されかつ前方に配向された左右の吹出口を含み、前記バッテリケースの前記傾斜した側面に沿って前方に向かう吹出空気流が形成されるように構成されている、バッテリパックの冷却構造。
【請求項2】
前記第2のバッテリモジュール群は、前記バッテリケースの車長方向の前部に並設された前部バッテリモジュール群と、前記前部バッテリモジュール群の後方に整列して並設された中間部バッテリモジュール群と、を含み、
前記バッテリケースの前記傾斜した側面は、前記中間部バッテリモジュール群の側方に延在している第1傾斜側面を含む、請求項1に記載のバッテリパックの冷却構造。
【請求項3】
前記第1のバッテリモジュール群は、それらの長手方向を車幅方向に一致させて並設され、かつ、相互に整列された左側バッテリモジュール群と右側バッテリモジュール群とを含み、前記吸入口は、前記左側バッテリモジュール群と前記右側バッテリモジュール群のそれぞれの間に車幅方向に延びる間隙と、前記左側バッテリモジュール群と前記右側バッテリモジュール群のそれぞれの端面の間に車長方向に延びる間隙との交差部の上方に開口されている、請求項2に記載のバッテリパックの冷却構造。
【請求項4】
前記バッテリケースの側面は、前記前部バッテリモジュール群の側方において、前記第1傾斜側面の前側に連続する平面視で実質的に非傾斜の中間側面と、その前側に連続する第2傾斜側面とを含み、前記第2傾斜側面はその前方で前記バッテリケースの前端面に連続している、請求項2に記載のバッテリパックの冷却構造。
【請求項5】
前記バッテリケースの上面の車長方向の後部には、上方に膨出した膨出部が形成され、前記膨出部の内部には、前記第1のバッテリモジュール群の上面に沿って延在する支持プレートが設けられ、前記送風ファンは、前記吸入口を下に向けて前記支持プレート上に固定配置され、前記支持プレートは、前記交差部の上方で、前記吸入口が臨む領域に開口部が形成されている、請求項3に記載のバッテリパックの冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるバッテリパックの冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるバッテリパック、例えば、電動車両のバッテリパックは、車両室内空間や荷室空間を確保しつつ大容量化するために、複数の二次電池で構成された複数のモジュールを扁平なケース内部に配列し、車体フロア部やフロア下に配置される。二次電池は充放電時に発熱するので、バッテリパックは冷却構造を備えている。
【0003】
バッテリパックの冷却構造としては、外気導入する開放型やヒートポンプを利用する密閉型などがあるが、前者は雨水や塵埃の侵入に対する課題があり、後者はバッテリパックの外部に圧縮機や放熱器が必要であり(特許文献1参照)、バッテリパック単体で冷却システムを完結できず、システムが複雑化するうえ、内部のエバポレータで生じる凝縮水などの課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-11632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、密閉型のバッテリパック内部に送風ファンを設け、バッテリパック内部の温度分布を均一化させつつ、放熱部材としてのバッテリケースから外部への放熱を効率化する方式が再検討されている。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、バッテリパック内部の空気循環効率を改善し構造の簡素化とバッテリパック内部の温度分布の均一化および所期の冷却効果を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
実質的に密閉されたバッテリケースの内部に複数のバッテリモジュールを備えたバッテリパックの冷却構造であって、
前記バッテリケースは、車長方向の後部に対して前方側の幅が狭くなるように、平面視において傾斜した側面を備え、実質的に熱伝導性材料で形成されることより放熱部材としての機能を有しており、前記バッテリケースの内部の空気を吸入口から吸入し、送風ダクトを通じて吹出口に圧送するための送風ファンを備え、
前記複数のバッテリモジュールは、前記バッテリケースの内部の前記後部に相互間に間隙を有して固定配置された第1のバッテリモジュール群と、前記第1のバッテリモジュール群より車長方向前方に相互間に間隙を有して固定配置された第2のバッテリモジュール群と、を含み、前記第2のバッテリモジュール群は、それらの長手方向を車長方向に一致させて並設されており、
前記吸入口は、前記バッテリケースの前記後部の幅方向の中間部で前記第1のバッテリモジュール群の上方に開口され、かつ、
前記吹出口は、前記バッテリケースの前記後部の側面に隣接して配置されかつ前方に配向された左右の吹出口を含み、前記バッテリケースの前記傾斜した側面に沿って前方に向かう吹出空気流が形成されるように構成されている、バッテリパックの冷却構造にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るバッテリパックの冷却構造は、上記構成により、ケース内後部のバッテリモジュール群の中間部から吸入された空気(バッテリモジュール群との熱交換により昇温した空気)が、送風ファンにより、バッテリケース後部の側面に隣接して配置されかつ前方に配向された左右の吹出口に圧送され、バッテリケースの傾斜した側面に沿って前方に向かう吹出空気流が形成され、バッテリケース側面との熱交換により外部に放熱され、温度降下した吹出空気がバッテリケース内部に循環され、バッテリモジュール群の間隙(主として長手方向間隙)を通って送風ファンの吸入口に吸引回収される過程で、バッテリモジュールが冷却され、バッテリケース上面との熱交換による外部への放熱が促進される。
【0009】
すなわち、車体への取付け構造を介した熱伝導や外気との接触による放熱領域となるバッテリケース側部ないし周辺部と、熱がこもりやすいバッテリモジュール群の中間部との間での空気循環および熱移動が誘導され、バッテリモジュールの温度上昇が抑制されるとともに、温度分布が均一化される。
【0010】
しかも、バッテリケース後部の側面に隣接して配置されかつ前方に配向された吹出口から空気が吹出される構成により、バッテリケース側部の空間が熱交換領域を兼ねた送風経路として機能し、最小限の送風ダクトでバッテリケース内の広範囲に冷却用空気を循環させることが可能となり、ダクトの小型化と装置の簡素化、コスト削減に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】バッテリパックの外観を示す斜視図である。
図2】バッテリパックの内部を示す斜視図である。
図3】バッテリパックの内部を示す平面図である。
図4図1のA-A断面図である。
図5】バッテリパックの内部の空気の流れを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(バッテリパックの概要)
本発明の実施形態に係るバッテリパック1は、図1に示されるように、車両のフロア下への搭載を前提として、後部の膨出部12を除き全体的に扁平な形状をなしている。なお、以下の説明において、特に記載のない場合、「前後」は、車長方向FRにおける前後各側を意味し、「左右」は車長方向前方Fに向かって車幅方向Wにおける左右各側を意味し、「上下」は車高方向Hにおける上下各側に対応している。
【0014】
図1図4に示されるように、バッテリパック1は、アッパケース10とロアケース20からなるバッテリケースの内部に、複数のバッテリモジュール31、32を備える。各バッテリモジュール31、32は、相互に直列接続された複数の二次電池セル(リチウムイオン二次電池など)が、ボックス状または枠状のインナーケース内に積層状態に保持されることでモジュール化されたものである。
【0015】
アッパケース10およびロアケース20は、鋼、ステンレス、アルミニウム合金など熱伝導性の良好な金属のプレス成形品などによりシェル状ないしはトレー状に形成されており、それら自体が外部への放熱部材としての機能を有している。
【0016】
バッテリパック1の上側部分を構成するアッパケース10は、図1に示されるように、その車長方向前部から後部にかけての上面11に、車幅方向Wの中央に車長方向FRに延びる畝部13が形成され、その左右各側に車長方向FRに平行に延びる3条の小畝部(補強ビード)が形成されている。また、膨出部12の前側の傾斜面122における畝部13との会合部14は、膨出部12に向けて上昇しかつ拡開した漏斗状に形成されている。
【0017】
アッパケース10の上面11は、上記の畝部13および小畝部を有するものの、全体としては概ね平坦に形成されているのに対し、アッパケース10の後部には、車両の後部座席下のキックアップ部の下部空間に収容されるべく上方に膨出した膨出部12が形成されている。この膨出部12によって上方に拡張された内部空間は、冷却システムを構成する送風ダクト4や送風ファン5などの設置スペースであると同時に、後述のようにバッテリモジュール31、32から離隔された放熱空間ともなっている。
【0018】
バッテリパック1は、バッテリモジュール31、32とその制御機器をロアケース20に収容し、冷却システムを構成する送風ダクト4や送風ファン5などの構成部品を配設して必要な配線を完了した状態で、ロアケース20の周囲のフランジ部20fと、アッパケース10のフランジ部10fを、シール材20cを介してボルトなどで接合して一体化することにより、防水性、気密性が確保されるように構成されている。
【0019】
ロアケース20の下面には、バッテリパック1の支持枠となるサポートフレーム25が固定されている。サポートフレーム25は、詳細な図示を省略するが、左右一対のサイドフレーム250とそれらの間に車幅方向Wに延在しかつ剛結合された複数のクロスフレーム255(図4)によりラダー状に構成されている。
【0020】
バッテリパック1には、車体への取付け部として、左右各側に4つの取付けブラケット21,22,23,24が設けられている。これらのうち、最前部を除く取付けブラケット22,23,24は、バッテリパック1のアッパケース10のフランジ部10fに接合されたアッパブラケットと、ロアケース20のフランジ部20fに接合されたロアブラケットとで構成されている。バッテリパック1は、各取付けブラケット21,22,23,24のボルト孔に下方から挿通されたボルトを、車体側取付け部のウエルドナットに締結することにより、車体に固定される。
【0021】
なお、バッテリパック1は、ロアケース20の前端面に車両の駆動用モータへの電力入出力用の高電圧コネクタ33が配設され、アッパケース10(膨出部12)の後面には充電用の高電圧コネクタ36が配設されている。また、アッパケース10の上面11には、点検時や非常時にバッテリモジュール31,32の電力を遮断するためのサービスプラグ34が配設され、アッパケース10の膨出部12の上面121には、制御用コネクタ35が配設されている。バッテリモジュール31,32は、上記各高電圧コネクタ33、36が接続されるジャンクションボックスおよびサービスプラグ34と共に、図3に一部が符号39で示されるバスバーで直列接続されている。
【0022】
(バッテリモジュールの配置)
バッテリパック1の内部には、図2および図3に示されるように、最前部に4つのバッテリモジュール32(32a,32j)が、それぞれの長手方向を車長方向FRに一致させかつ相互間に間隙320を有して横並びに配置されている。それらの後方となるバッテリパック1の中間部には、前記4つのバッテリモジュール32(32a,32j)に対して車幅方向に延びる間隙322を有して離間して同様の配列で4つのバッテリモジュール32(32b)が配置されている。すなわち、中間部の4つのバッテリモジュール32(32b)が、それぞれの長手方向を車長方向FRに一致させかつ相互間に間隙320を有して横並びに配置されている。
【0023】
図示例では、最前部の右から2番目のモジュール32jは、高電圧コネクタ33への電力の供給/遮断を行うリレー回路などを備えたジャンクションボックスとなっているが、例えば、この機能を膨出部12のジャンクションボックス38に集約して、バッテリモジュールとすることもでき、便宜的にバッテリモジュール32として説明する。
【0024】
バッテリパック1の内部の後部には、図3に破線で示されるように、中間部のバッテリモジュール32bに対して間隙330を有して、4つのバッテリモジュール31(31c,31d)が、それぞれの長手方向を車幅方向Wに一致させかつ相互間に間隙310,312を有して並設されている。これらのうち、左側の2つのバッテリモジュール31dは、他のバッテリモジュールよりも二次電池セルの組数が少なく、モジュールの長手方向の長さが短いハーフサイズのモジュールとなっている。
【0025】
各バッテリモジュール31、32は、ロアケース20の内底部に配設された補強フレーム27a,27b,27c,28a,28bに固定されている。すなわち、最前部および中間部のバッテリモジュール32は、図3に示されるように、ロアケース20の内底部の最前部から中間部にかけて前後に離間して3箇所配設された車幅方向Wに延びる補強フレーム27a,27b,27cに長手方向の前後両端部においてボルトで固定されている。また、後部の4つのバッテリモジュール31は、図4に示されるように、ロアケース20の内底部の後部の両側部と中間部に離間して配設された車長方向FRに延びる補強フレーム28a,28bに長手方向の左右両端部においてボルトで固定されている。
【0026】
なお、以下の説明において、バッテリパック1の後部の4つのバッテリモジュール31(31c,31d)を第1バッテリモジュール群31と総称し、先述したバッテリパック1の最前部および中間部の8つのバッテリモジュール32(32a,32b)を第2バッテリモジュール群32と総称する場合がある。
【0027】
(バッテリパックの側部形状)
以上述べたように、バッテリパック1は、車体下部に搭載されることを前提として、車幅方向Wの幅よりも車長方向FRに長い平面形状を有しているが、図3および図5に示されるように、車長方向の後部に対して前方側の幅が狭くなるように、平面視において傾斜した側面(151,261,153,263)を備えることで、先細形状(テーパ形状)をなしている。
【0028】
すなわち、図1または図5に示すように、バッテリパック1のアッパケース10の側面は、実質的に車長方向に平行に延在する平面視で非傾斜の後部側面150、その前側に連続する第1傾斜側面151、その前側に連続する平面視で非傾斜の中間側面152、およびその前側に連続する第2傾斜側面153を含み、車長方向の後方から前方に向けて、アッパケース10の幅が漸次段階的に減少している。
【0029】
同様に、ロアケース20の側面も、実質的に車長方向に平行に延在する平面視で非傾斜の後部側面260、その前側に連続する第1傾斜側面261、その前側に連続する平面視で非傾斜の中間側面262、およびその前側に連続する第2傾斜側面263を含み、車長方向の後方から前方に向けて、ロアケース20の幅が漸次段階的に減少している。
【0030】
上記のような側部形状により、バッテリパック1は、図3および図5に示されるように、第2バッテリモジュール群32における最側部のバッテリモジュール32(32a,32b)と、バッテリパック1の側面(150~153、260~263)との間に、車長方向の後方から前方に向けて漸次段階的に狭くなる側部スペース321,323が形成されている。この構成を前提として、以下に述べる冷却システムが構成されている。
【0031】
(バッテリモジュールの冷却システム)
図2図4に示されるように、バッテリパック1の後部に配置された4つのバッテリモジュール31の上側には、冷却システムを構成する送風ダクト4や送風ファン5を配設するための支持プレート17が設けられている。
【0032】
支持プレート17は、その車幅方向両側において脚部18を介して補強フレーム28aに固定されている。脚部18は、支持プレート17の下面に沿って車幅方向Wに延びる枠材の両端を下方に折曲した逆U字状の部材で形成されており、それぞれの下端部(フランジ部)で補強フレーム28aにボルトで固定されている。
【0033】
支持プレート17は、バッテリモジュール31の上面との間に間隔を有して、アッパケース10の上面11と略等しい高さに延設されており、アッパケース10の膨出部12の内部空間を、略中央の開口部170および周辺部を除き、下部のバッテリモジュール31側に対して仕切るように設けられており、膨出部12の側面150や後面155との間には間隔を有している。
【0034】
支持プレート17の開口部170は、図3および図4,5に示すように、バッテリパック1の後部の第1バッテリモジュール群31の中間に車幅方向Wに延びる間隙310と、第1バッテリモジュール群31の左右のバッテリモジュール31c,31dの端面の間に車長方向に延びる間隙312との交差部の上方に開口されている。
【0035】
支持プレート17の車幅方向Wの略中央部には送風ファン5が配設されている。送風ファン5としては、遠心ファン(シロッコファンまたはターボファン)を好適に用いることができ、回転軸方向を車高方向Hに一致させかつファンケース下部の吸入口50を、支持プレート17の開口部170に臨ませて、支持プレート17上にボルト等で固定されている。図示例では、ファンハブの内側にモータが配置されたシロッコファンとすることで、上方へのモータハウジングの突出が少なくなるようにしている。
【0036】
なお、送風ファン5の右側にはバッテリの充放電管理やセルバランス制御などを行うための制御装置37が配設され、送風ファン5の左側には高電圧コネクタ36のためのジャンクションボックス38が配設されており、それらの前側となる支持プレート17の前縁部に沿って送風ダクト4(分岐ダクト部42)が配設されている。
【0037】
送風ダクト4は、図2図4に示されるように、送風ファン5の吐出ポート54から前方(斜前方)に延びる基部41と、基部41の前端部で分岐して左右両側に延びる分岐ダクト部42と、バッテリケース1の後部側面150,260に隣接した屈曲部43から下方に延びる下降部44を含み、その下部から前方に延びかつ前方に開口する吹出口45に連通している。
【0038】
分岐ダクト部42は、膨出部12の傾斜面122に沿うように、前上部に傾斜面を含む略五角形状ないしは台形状の流路断面を有するのに対し、下降部44では、車幅方向には扁平に形成される一方で車長方向の幅が後方に拡大することで、分岐ダクト部42に準じた流路断面が確保されるようにしており、吹出口45は、車幅方向に扁平な縦長のノズル形状をなしている。
【0039】
(バッテリパック内部の空気循環と冷却作用)
以上のように構成された冷却システムは、送風ファン5が作動することにより、バッテリパック1の後部の各バッテリモジュール31c,31dとの熱交換により加温された空気が、開口部170を介して吸入口50に吸引回収され、送風ダクト4の基部41から分岐ダクト部42を通じて下降部44に圧送され、図3に矢印Faで示されるように、左右各側の吹出口45から前方に吹出される。
【0040】
左右各側の吹出口45から吹出された空気は、図3(および図5)に示されるように、後部側面150,260に沿って前方に流れ(Fa)、第1傾斜側面151,261において内方に偏向され(Fb)、バッテリモジュール32bとの間の側部スペース321を前進する。
【0041】
この際、バッテリパック1の後部側面150,260ないし第1傾斜側面151,261との接触(熱交換)により吹出空気が冷却され、冷却された空気は、側部スペース323をさらに前進し(Fc)、中間側面152,262ないし第2傾斜側面153,263との接触(熱交換)によりさらに冷却され、最前部のスペース324に流入する。
【0042】
一方、第1傾斜側面151,261において内方に偏向され、側部スペース321を前進する空気流の一部は、偏向方向(Fb)の延長上において、側部スペース323から内方に分岐するバッテリモジュール32a,32bの間隙322にも流入する。
【0043】
上記のような左右各側吹出口45から前方への吹出空気によって、バッテリパック1の内部は、第2バッテリモジュール群32(32a,32b)の周辺部(321,323,324)は相対的に陽圧区域となる。一方、送風ファン5による吸入口50への吸引(Fr)を生じている第1バッテリモジュール群31(31c,31d)の間隙310,312およびそれらの周辺は相対的に陰圧区域となる。
【0044】
これに伴い、相対的な陽圧区域(321,323,324)と陰圧区域(310,312)の中間にある、第2バッテリモジュール群32(32a,32b)の車長方向の3列の間隙320では、図5に示されるように後方に向かう空気流を生じ、車幅方向の間隙330を経由して陰圧区域(310,312)に還流する。
【0045】
したがって、以上をまとめると、
(i)第1バッテリモジュール群31との熱交換で昇温した空気が送風ファン5の吸入口50から吸引回収されることにより、第1バッテリモジュール群31が冷却され、
(ii)吸引回収された昇温空気が送風ダクト4を通じて圧送され、吹出口45から前方に吹出され、バッテリパック1の側面(150,260,151,261,152,262)との熱交換により冷却され、
(iii)冷却された空気が間隙320,322,330,312を通じてバッテリパック後部に循環される過程での熱交換により第2バッテリモジュール群32が冷却され、
(iv)上記と並行してバッテリパック1の側面(150,260,151,261,152,262)を含むアッパケース10およびロアケース20を介して外気および車体構造への放熱が促進されることになる。
【0046】
特に、バッテリパック後部の略中央に配置された送風ファン5で吸引した空気を、バッテリパック後部の両側部に配置された吹出口45から吹出す構成により、バッテリパック1のサイズに比較して小型の送風ダクト4を用いながら、バッテリパックの側部スペース(321,323)、最前部スペース(324)、および、バッテリモジュール31,32の間隙(320,322,330,310,312)を通じた、バッテリパック内部での全体的な空気循環を生じさせることができ、バッテリモジュール31,32の冷却と温度分布の均一化、および、バッテリパック1の側面(150,260,151,261,152,262)を利用した熱交換による空気冷却と外部への放熱を達成できる。
【0047】
さらに、第2のバッテリモジュール群32は、バッテリケース(10,20)の車長方向の前部に並設された前部バッテリモジュール群32aと、その後方に整列して第1のバッテリモジュール群との間に並設された中間部バッテリモジュール群32bとを含み、それらのうち最側部のバッテリモジュール32bの側方に第1傾斜側面151,261が延在している構成により、既に述べたように、左右各側の吹出口45から前方に吹出された空気は、第1傾斜側面151,261で案内されて内方に偏向され(Fb)、最側部のバッテリモジュール32bとの間の側部スペース321を前進する。
【0048】
この際、より厳密には、高速の吹出空気流が第1傾斜側面151,261に沿って流れることで、その車幅方向内側では誘引空気流が惹起され、この誘引空気流がバッテリモジュール32bの側面に沿って流れることで、バッテリモジュール32bの熱が誘引空気流に回収される。
【0049】
そして、第1傾斜側面151,261との熱交換により冷却された吹出空気流と合流してさらに前方に流れるが、第1傾斜側面151,261の前方に向かうに従って側部スペース321の流路断面積が減少することで流速の低下が抑制され、流速が維持された状態で間隙322との分岐部に到達する。
【0050】
ここで、一部の空気は間隙322に流入するが、流速が維持されていることで残余の空気は側図スペース323へと流れ、この過程でも最側部のバッテリモジュール32aの熱回収と、中間側面152,262および第2傾斜側面153,263との熱交換による外部への放熱がなされる。
【0051】
また、バッテリケース(10,20)の側面15,26に隣接しない中央寄りのバッテリモジュール32の熱は、先述した相対的な陽圧区域(321,323,324)と陰圧区域(310,312)の圧力勾配により生じる、間隙320に沿って後方に向かう空気流によって回収され、間隙330および間隙312を経由して、第1バッテリモジュール群31の熱とともに送風ファン5の吸入口50に吸入される。
【0052】
換言すれば、バッテリケース(10,20)の側面15,26や前端面154,264での熱交換で冷却された空気によって間隙320内の空気が置換され、中央寄りのバッテリモジュール32が冷却される。
【0053】
以上述べたように、本発明に係る冷却システムは基本的にバッテリケース(10,20)の内部で昇温した空気を、バッテリパック後部の略中央に位置した送風ファン5の吸入口50から吸引回収し、送風ダクト4を通じて車幅方向両側部に圧送し吹出口45から前方に吹出すのみであるが、その延長上にある側部スペース321、323を、バッテリケース(10,20)の側面15,26による外気および車体構造への放熱区域、吹出空気の冷却区域を兼ねた送風経路として利用するすることで、バッテリモジュール31,32の冷却効果および温度分布の均一化が見込める。
【0054】
既に述べたように、バッテリケース(10,20)の側面15,26には、バッテリパック1の車体への取付け部となる取付けブラケット21,22,23,24が設けられており、側部スペース321、323への空気吹出しは、外気への放熱のみならず、車体構造への放熱という点でも有利である。
【0055】
なお、上記実施形態では、第1バッテリモジュール群31として車幅方向に配向された4つのバッテリモジュール31c,31dを備え、第2バッテリモジュール群32として車長方向に配向された4つの前部バッテリモジュール32aと4つの中間部バッテリモジュール32bを備える場合について述べたが、それぞれの配列方向が維持されていれば、バッテリモジュール数は上記以外であっても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、送風ダクト4および送風ファン5が、吸入口50の下方に開口部170を有する支持プレート17に設置される場合について述べたが、フレーム状の支持構造に設置することもできる。但し、間隙310,312の上部が膨出部12内に解放されていると、間隙310,312を吸引ダクトとして機能させることができなくなるため、少なくとも、吸入口50の周囲から間隙310,312の上部にかけてはプレート上の部材などで(完全でなくてよいが)遮蔽されている必要がある。
【0057】
また、上記実施形態では、送風ファン5(ファンケース)の吸入口50を支持プレート17の開口部170に臨ませて配置することで、ファンケースと支持プレート17が離隔されている場合を示した。この構成は、送風ファン5の振動が支持プレート17に伝達されるのを防止する上で有利であるが、吸入口50と開口部170の周囲の間隙を弾性シール部材など振動絶縁性の部材で遮蔽してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、送風ファン5の吸入口50および開口部170が、第1バッテリモジュール群31の車幅方向間隙310と車長方向間隙312の交差部の上方に配設される場合について述べたが、交差部の前方または後方にずれた位置における車長方向間隙312の上方に吸入口50および開口部170が配設されてもよい。吸入口50および開口部170が交差部の前方に配設される場合などでは送風ファン5の車長方向後方から送風ダクト4が分岐するように構成することもできる。
【0059】
また、上記実施形態では、バッテリケース(10,20)の側面15,26に、平面視で傾斜した第1傾斜側面151,261および第2傾斜側面153,263と、その中間に平面視で非傾斜の中間側面152,262を含む場合について述べたが、第2バッテリモジュール群32の配置にもよるが、第1傾斜側面151,261の区間を含む1つの傾斜側面のみを備えることもできる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内でさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0061】
1 バッテリパック
4 送風ダクト
5 送風ファン
10 アッパケース
11 上面
12 膨出部
15,26 側面
17 支持プレート
18 脚部
20 ロアケース
31,31c,31d バッテリモジュール(第1バッテリモジュール群)
32,32a,32b バッテリモジュール(第2バッテリモジュール群)
41 基部
42 分岐ダクト部
43 屈曲部
44 下降部
45 吹出口
50 吸入口
51 モータ
54 吐出ポート
150,260 後部側面
151,261 第1傾斜側面
152,262 中間側面
153,263 第2傾斜側面
154,264 前端面
155,265 後面
170 開口部
310,312,320,322,330 間隙
321,323 側部スペース
324 前部スペース
図1
図2
図3
図4
図5