(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149610
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】インクジェット塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05C 5/00 20060101AFI20220929BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051839
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩田 智広
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一夫
【テーマコード(参考)】
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4F041AA02
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA38
4F042AA02
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA27
4F042DF09
(57)【要約】
【課題】塗布スジの発生を抑制する。
【解決手段】インクジェット塗布装置は、基材7を載せるステージ15と、基材7に対して液滴を吐出するノズル23を多数有するヘッドユニット20と、ステージ15とヘッドユニット20とを主走査方向に沿って相対的に移動させる移動機構13とを備える。ヘッドユニット20は、副走査方向に沿って設けられたヘッドモジュール21を有し、ヘッドモジュール21は、主走査方向に並ぶ複数のヘッドを有する。ヘッドそれぞれは副走査方向に並んで複数設けられているノズル23を有する。ヘッドモジュール21が有する複数のヘッドに、ノズル23から液滴を吐出させない不吐出領域を副走査方向の一方側の端部に有する第一ヘッド22A-1と、ノズル23から液滴を吐出させない不吐出領域を副走査方向の他方側の端部に有する第二ヘッド22A-2とが含まれる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を載せるステージと、
前記基材に対して液滴を吐出するノズルを多数有するヘッドユニットと、
前記ステージと前記ヘッドユニットとを主走査方向に沿って相対的に移動させる移動機構と、
を備え、
前記ヘッドユニットは、前記主走査方向に直交する副走査方向に沿って設けられたヘッドモジュールを有し、
前記ヘッドモジュールは、前記主走査方向に並ぶ複数のヘッドを有し、
前記ヘッドそれぞれは前記副走査方向に並んで複数設けられている前記ノズルを有し、
前記ヘッドモジュールが有する前記複数のヘッドに、
前記ノズルから液滴を吐出させない不吐出領域を前記副走査方向の一方側の端部に有する第一ヘッドと、
前記ノズルから液滴を吐出させない不吐出領域を前記副走査方向の他方側の端部に有する第二ヘッドと、
が含まれる、
インクジェット塗布装置。
【請求項2】
前記ヘッドモジュールが重複して通過する前記基材上の重複塗布領域に対して、一つの前記ヘッドと他の前記ヘッドとで分担して液滴を前記ノズルから吐出させるオーバーラップ処理を実行可能である、請求項1に記載のインクジェット塗布装置。
【請求項3】
前記ヘッドユニットは、前記ヘッドモジュールとして、
前記副走査方向に間隔をあけて配列された複数の第一ヘッドモジュールと、
前記副走査方向に間隔をあけて配列された複数の第二ヘッドモジュールと、を有し、
前記第一ヘッドモジュールと前記第二ヘッドモジュールとが、前記副走査方向の端部同士で前記主走査方向に重なって配置されていて、
前記第一ヘッドモジュールが有する前記複数のヘッドに、
前記不吐出領域を前記副走査方向の一方側の端部に有する第一ヘッドと、
前記不吐出領域を前記副走査方向の他方側の端部に有する第二ヘッドと、
が含まれていて、
前記第二ヘッドモジュールが有する前記複数のヘッドに、
前記不吐出領域を前記副走査方向の一方側の端部に有する第三ヘッドと、
前記不吐出領域を前記副走査方向の他方側の端部に有する第四ヘッドと、
が含まれている、請求項1または請求項2に記載のインクジェット塗布装置。
【請求項4】
前記第二ヘッドの前記一方側の端部における前記不吐出領域と、前記第三ヘッドの前記他方側の端部における前記不吐出領域とは、前記副走査方向について異なる位置に配置されている、請求項3に記載のインクジェット塗布装置。
【請求項5】
前記第二ヘッドの前記一方側の端部における前記不吐出領域の一部と、前記第三ヘッドの前記他方側の端部における前記不吐出領域の一部とは、前記主走査方向に並んで配置されている、請求項3に記載のインクジェット塗布装置。
【請求項6】
前記移動機構は、前記ステージとの間で相対的に、
前記ヘッドユニットを前記主走査方向に移動させて塗布を行う第一動作と、
前記第一動作の後に前記ヘッドユニットを前記副走査方向に移動させる第二動作と、
前記第二動作の後に前記ヘッドユニットを前記第一動作での移動方向と平行となる方向に移動させて塗布を行う第三動作と、を行い、
前記第三動作では、前記第一動作における前記ヘッドユニットの移動軌跡の前記副走査方向の端部と重複する範囲を通過するようにして、前記ヘッドユニットを移動させる、請求項1または2に記載のインクジェット塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インクジェット塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスまたはフィルム等の基材上にインクジェット法により液滴を吐出し、様々な形状の塗布膜(膜パターンともいう)を形成するインクジェット塗布装置が知られている。インクジェット塗布装置は、基材を載せるステージと、基材に対して液滴を吐出するノズルを多数有するヘッドユニットと、前記ステージと前記ヘッドユニットとを主走査方向に沿って相対的に移動させる移動機構とを備える(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9は、インクジェット塗布装置が基材7に対して液滴を吐出して行う塗布動作の説明図である。ここでは、ステージ上の基材7に対して、ヘッドユニット90が主走査方向(X軸方向)に沿って移動しながら、ヘッドユニット90が多数有するノズル93から液滴を吐出する場合を説明する。基材7の被塗布面に沿った方向であって主走査方向に直交する方向を副走査方向(Y軸方向)とする。インクジェット塗布装置は、塗布の連続性を確保するために、つまり、副走査方向に連続する塗布膜を形成するために、次のように構成されている。
【0005】
すなわち、ヘッドユニット90は、副走査方向に沿って複数設けられている第一ヘッドモジュール91Aと、副走査方向に沿って複数設けられている第二ヘッドモジュール91Bとを有する。第一ヘッドモジュール91Aそれぞれは、主走査方向に並ぶ二つのヘッド92A-1,92A-2を有する。ヘッド92A-1,92A-2それぞれは、副走査方向に並んで複数設けられているノズル93を有する。第二ヘッドモジュール91Bそれぞれは、主走査方向に並ぶ二つのヘッド92B-1,92B-2を有する。ヘッド92B-1,92B-2それぞれは、副走査方向に並んで複数設けられているノズル93を有する。そして、第一ヘッドモジュール91Aと第二ヘッドモジュール91Bとは、副走査方向の端部同士で、主走査方向に重なって配置されている。
【0006】
図9においてクロスハッチが付されている各領域は、塗布動作を進めると、第一ヘッドモジュール91Aと第二ヘッドモジュール91Bとが重複して通過する基材7上の重複塗布領域Qである。この重複塗布領域Qに対して、第一ヘッドモジュール91Aのノズル93から液滴が吐出されると共に、第二ヘッドモジュール91Bのノズル93から液滴が吐出されると、その重複塗布領域Qに、二つのヘッドモジュール91A,91Bによる塗布が重なる塗布接続部が形成される。その塗布接続部では、それ以外の領域と比較すると膜厚が大きくなり、塗布接続部の境界が塗布スジとなって現れる。
【0007】
図10は、別の塗布動作の説明図である。
図10に示すインクジェット塗布装置の場合、ヘッドユニット90の副走査方向の寸法が、基材7の副走査方向の寸法よりも小さい。このため、ヘッドユニット90は、例えば、主走査方向に移動しながら塗布を行い(往路)、その後、副走査方向に塗布を行わないで移動し、主走査方向を後退しながら塗布を行う(復路)。前記復路では、前記往路におけるヘッドユニット90の移動軌跡の端部99と重複する範囲を通過するようにして、そのヘッドユニット90は主走査方向を後退する。この場合、往路と復路とで重複する範囲も、前記重複塗布領域Qに該当し、その範囲の塗布接続部の境界も塗布スジとなって現れる。
【0008】
なお、ヘッドユニット90が、第一ヘッドモジュール91Aのみを有していて、第二ヘッドモジュール91Bを有していないインクジェット塗布装置が、
図10に示す塗布動作を行う際に、往路と復路とで重複する範囲が存在する場合においても、塗布接続部の境界が塗布スジとなって現れる。
塗布スジは、顕著に発生すると、塗布膜が形成された基材の品質を低下させる可能性がある。
【0009】
そこで、本開示では、塗布スジの発生を抑制することが可能となるインクジェット塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本開示のインクジェット塗布装置は、基材を載せるステージと、前記基材に対して液滴を吐出するノズルを多数有するヘッドユニットと、前記ステージと前記ヘッドユニットとを主走査方向に沿って相対的に移動させる移動機構と、を備え、前記ヘッドユニットは、前記主走査方向に直交する副走査方向に沿って設けられたヘッドモジュールを有し、前記ヘッドモジュールは、前記主走査方向に並ぶ複数のヘッドを有し、前記ヘッドそれぞれは前記副走査方向に並んで複数設けられている前記ノズルを有し、前記ヘッドモジュールが有する前記複数のヘッドに、前記ノズルから液滴を吐出させない不吐出領域を前記副走査方向の一方側の端部に有する第一ヘッドと、前記ノズルから液滴を吐出させない不吐出領域を前記副走査方向の他方側の端部に有する第二ヘッドと、が含まれる。
【0011】
前記インクジェット塗布装置によれば、ヘッドモジュールが重複して通過する基材上の重複塗布領域に対して、液滴を吐出させないノズルが存在する。このため、前記重複塗布領域に液滴が塗布されて形成される塗布接続部の境界が分散され、従来と比較して、塗布スジの発生を抑制することが可能となる。
また、ヘッドユニットにおけるヘッドの取り付け位置を変更することなく、液滴を吐出させないノズルをソフトウエアの設定によって選択することで、前記不吐出領域が得られる。
【0012】
(2)また、好ましくは、前記インクジェット塗布装置は、前記ヘッドモジュールが重複して通過する前記基材上の重複塗布領域に対して、一つの前記ヘッドと他の前記ヘッドとで分担して液滴を前記ノズルから吐出させるオーバーラップ処理を実行可能である。
前記インクジェット塗布装置によれば、前記重複塗布領域に形成される前記塗布接続部の膜厚が、オーバーラップ処理を実行しない場合と比較して、厚くなるのを抑えることができる。そして、前記不吐出領域による作用と併せることで、塗布スジの発生を更に抑制することができる。
【0013】
(3)また、好ましくは、前記ヘッドユニットは、前記ヘッドモジュールとして、前記副走査方向に間隔をあけて配列された複数の第一ヘッドモジュールと、前記副走査方向に間隔をあけて配列された複数の第二ヘッドモジュールと、を有し、前記第一ヘッドモジュールと前記第二ヘッドモジュールとが、前記副走査方向の端部同士で前記主走査方向に重なって配置されていて、前記第一ヘッドモジュールが有する前記複数のヘッドに、前記不吐出領域を前記副走査方向の一方側の端部に有する第一ヘッドと、前記不吐出領域を前記副走査方向の他方側の端部に有する第二ヘッドと、が含まれていて、前記第二ヘッドモジュールが有する前記複数のヘッドに、前記不吐出領域を前記副走査方向の一方側の端部に有する第三ヘッドと、前記不吐出領域を前記副走査方向の他方側の端部に有する第四ヘッドと、が含まれている。
【0014】
前記インクジェット塗布装置によれば、第一ヘッドモジュールと第二ヘッドモジュールとが重複して通過する基材上の重複塗布領域が存在するが、その重複塗布領域に対して、液滴を吐出させないノズルが存在する。このため、前記重複塗布領域に液滴が塗布されて形成される塗布接続部の境界が分散され、従来と比較して、塗布スジの発生を抑制することが可能となる。
【0015】
(4)また、好ましくは、前記第二ヘッドの前記不吐出領域と、前記第三ヘッドの前記不吐出領域とは、前記副走査方向について異なる位置に配置されている。この場合、前記塗布接続部を一部重複させることが可能となる。
(5)または、好ましくは、前記第二ヘッドの前記不吐出領域の一部と、前記第三ヘッドの前記不吐出領域の一部とは、前記主走査方向に並んで配置されている。この場合、前記塗布接続部を分離させることが可能となる。
【0016】
(6)また、好ましくは、前記移動機構は、前記ステージとの間で相対的に、前記ヘッドユニットを前記主走査方向に移動させて塗布を行う第一動作と、前記第一動作の後に前記ヘッドユニットを前記副走査方向に移動させる第二動作と、前記第二動作の後に前記ヘッドユニットを前記第一動作での移動方向と平行となる方向に移動させて塗布を行う第三動作と、を行い、前記第三動作では、前記第一動作における前記ヘッドユニットの移動軌跡の前記副走査方向の端部と重複する範囲を通過するようにして、前記ヘッドユニットを移動させる。
【0017】
前記インクジェット塗布装置によれば、前記第一動作と前記第三動作とで、ヘッドモジュールが重複して通過する基材上の重複塗布領域が存在するが、その重複塗布領域に対して、ヘッドから液滴を吐出させないノズルが存在する。このため、前記重複塗布領域に液滴が塗布されて形成される塗布接続部の境界が分散され、従来と比較して、塗布スジの発生を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の発明によれば、塗布スジの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】インクジェット塗布装置の一例を示す側面図である。
【
図2】
図1に示すインクジェット塗布装置の平面図である。
【
図3】ヘッドユニットをZ軸方向に見たイメージ図である。
【
図4】塗布動作に含まれるオーバーラップ処理の説明図である。
【
図5】塗布動作に含まれる選択処理の説明図である。
【
図6】オーバーラップ処理及び選択処理が実行されて行われる塗布動作の一つの例を示すヘッドユニットの説明図である。
【
図7】オーバーラップ処理及び選択処理が実行されて行われる塗布動作の他の例を示すヘッドユニットの説明図である。
【
図9】インクジェット塗布装置が基材に対して液滴を吐出して行う塗布動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔インクジェット塗布装置の全体構成について〕
図1は、インクジェット塗布装置の一例を示す側面図である。
図2は、
図1に示すインクジェット塗布装置の平面図である。インクジェット塗布装置10は、基材7を載せるステージ15と、ヘッドユニット20とを有する。ヘッドユニット20は、基材7に塗布材料を塗布するために、塗布材料を液滴として吐出するノズル23を多数有する。ヘッドユニット20とステージ15とが相対的に移動しつつ、ヘッドユニット20が多数の液滴を吐出することにより、基材7上に塗布膜が形成される。本実施形態は、後述する移動機構13によって、ステージ15に対してヘッドユニット20が移動する場合について説明する。なお、移動機構13は、ヘッドユニット20に対してステージ15が移動するように構成されていてもよい。
【0021】
本開示のインクジェット塗布装置10における方向について定義する。塗布のために液滴を吐出しながらヘッドユニット20が移動する方向を「主走査方向」と定義する。
図2において、上から下に向かう方向が、ヘッドユニット20が主走査方向に「前進」する方向であり、各図において、この方向を「X軸方向」として示す。これに対して、
図2において下から上に向かう方向が、ヘッドユニット20が主走査方向に「後退」する方向である。
【0022】
基材7の被塗布面(上面)に沿った方向であって前記主走査方向に直交する方向を「副走査方向」と定義する。各図において、副走査方向の一方側から他方側に向かう方向、つまり、
図2において左から右に向かう方向を「Y軸方向」として示す。
各図において、X軸方向およびY軸方向の双方に直交する方向であって、インクジェット塗布装置10の下から上に向かう方向を「Z軸方向」として示す。
【0023】
インクジェット塗布装置10は、更に、基台11、及びコンピュータ装置から成る制御装置12を備える。基台11上にステージ15及びガントリ16が設けられている。ガントリ16にヘッドユニット20が搭載されている。ステージ15は、基材7の上面を水平な姿勢として、その基材7を載置する。ステージ15の表面に、吸引孔が複数形成されていて、その吸引孔に真空ポンプが接続されている。真空ポンプが動作することにより、吸引孔に吸引力が発生し、基材7がステージ15の表面に吸着保持される。
【0024】
ガントリ16は、ステージ15の副走査方向の一方側及び他方側それぞれに配置される脚部16aと、これら脚部16aを連結するビーム部材16bとを有する。ビーム部材16bにヘッドユニット20が取り付けられている。ガントリ16は、ステージ15を副走査方向に跨いだ状態で、主走査方向に沿って前進及び後退する。
図2では、ガントリ16がストロークエンドまで前進した状態を、二点鎖線で示している。
【0025】
本実施形態では、図示しないが、基台11の副走査方向の一方側及び他方側それぞれに主走査方向に延びるレールが設置されている。そのレールに沿って脚部16aが移動可能となる。脚部16aにリニアモータが設けられている。そのリニアモータに、エンコーダが設けられており、そのエンコーダからの信号に基づいてヘッドユニット20の主走査方向の位置が制御装置12によって制御される。制御装置12がリニアモータを駆動制御することにより、ガントリ16が主走査方向に移動し、任意の位置で停止する。
このように、インクジェット塗布装置10は、ステージ15とヘッドユニット20とを主走査方向に沿って相対的に移動させる移動機構13として、ガントリ16を備える。
【0026】
ヘッドユニット20は、ステージ15を副走査方向に跨ぐようにしてガントリ16に設けられている(
図2参照)。ヘッドユニット20は、副走査方向に沿って多数設けられているノズル23を有する。各ノズル23は液滴を吐出したり、吐出を停止したりする。ノズル23は、インクジェット塗布技術において一般的に用いられるノズルである。つまり、各ノズル23にピエゾ素子が設けられていて、そのピエゾ素子に駆動電圧が印加されると、塗布液を液滴として吐出する。駆動電圧を印加する対象とするノズル23は、制御装置12によって選択される。つまり、制御装置12に設定されているコンピュータプログラムに応じて、各ノズル23は液滴を吐出したり、吐出を停止したりする。ノズル23が吐出した液滴は、基材7の上面に着弾する。後にも説明するが、多数のノズル23には、液滴を吐出させるノズル23と、吐出させないノズル23とが含まれる。
【0027】
〔ヘッドユニット20について〕
図3は、ヘッドユニット20をZ軸方向に見たイメージ図である。ヘッドユニット20は、フレーム29と、フレーム29に取り付けられているヘッドモジュール21とを有する。ヘッドモジュール21は、副走査方向(Y軸方向)に沿って設けられている。
図3に示す形態では、ヘッドユニット20は、ヘッドモジュール21として、副走査方向に間隔をあけて配列された複数の第一ヘッドモジュール21Aと、副走査方向に間隔をあけて配列された複数の第二ヘッドモジュール21Bとを有する。一つの第一ヘッドモジュール21Aと一つの第二ヘッドモジュール21Bとは主走査方向について隣接して設けられている。一つの第一ヘッドモジュール21Aと一つの第二ヘッドモジュール21Bとが、副走査方向の端部同士で主走査方向に重なって配置されている。なお、各ヘッドモジュール21の数は変更可能であり、本実施形態では説明のために実際よりも少なく示している。
【0028】
各第一ヘッドモジュール21Aは、主走査方向に並ぶ二つのヘッド22A-1,22A-2を有する。なお、一つの第一ヘッドモジュール21Aに含まれるヘッドの数は複数であればよい。ヘッド22A-1,22A-2それぞれは、副走査方向に並んで複数設けられているノズル23を有する。各第二ヘッドモジュール21Bは、主走査方向に並ぶ二つのヘッド22B-1,22B-2を有する。なお、一つの第二ヘッドモジュール21Bに含まれるヘッドの数は複数であればよい。ヘッド22B-1,22B-2それぞれは副走査方向に並んで複数設けられているノズル23を有する。ヘッド22A-1,22A-2,22B-1,22B-2は、同じ構成を有する。
【0029】
ヘッドモジュール21A,21Bは、塗布可能範囲が端部で重複するように、位置ズレして配置されている。ヘッド22A-1,22A-2,22B-1,22B-2それぞれに設けられているノズル23の数は変更可能であり、本実施形態では説明のために実際よりも少なく示している。ノズル23は、所定のピッチ(一定のピッチ)で整列した状態となって設けられている。主走査方向からヘッドユニット20を見た場合に、副走査方向に沿ってノズル23が設けられている範囲S(配列範囲S)の全範囲にわたって、多数のノズル23が副走査方向に所定のピッチ(一定のピッチ)で配列されている。
【0030】
図3に示す形態では、前記配列範囲Sは、基材7の副走査方向の寸法よりも大きい。このため、ヘッドユニット20が主走査方向に移動することにより、基材7上の膜形成対象領域すべてを液滴の着弾可能領域とすることができる。なお、基材7への塗布は、ヘッドユニット20が、液滴を吐出しながら主走査方向に前進し(往路)、その後、更に液滴を吐出しながら主走査方向に沿って後退する(復路)ことで行われてもよく、往路のみで行われてもよい。
【0031】
一つの第一ヘッドモジュール21Aに含まれるヘッド22A-1,22A-2に着目した場合、一方のヘッド22A-1に設けられている複数のノズル23と、他方のヘッド22A-2に設けられている複数のノズル23とは、主走査方向に重なって配列されている。
【0032】
主走査方向に隣接する一つの第一ヘッドモジュール21Aと一つの第二ヘッドモジュール21Bとに着目した場合に、当該一つの第一ヘッドモジュール21Aの副走査方向の端部に設けられている複数のノズル23と、当該一つの第二ヘッドモジュール21Bの副走査方向の端部に設けられている複数のノズル23とが、主走査方向に重なっている。なお、
図3では、説明を容易にするため、一つのノズル23しか主走査方向に重なっていないが、実際では、複数のノズル23が主走査方向に重なっている。
【0033】
〔インクジェット塗布装置10による塗布動作について〕
インクジェット塗布装置10が行う塗布動作について説明する。
図4は、その塗布動作に含まれるオーバーラップ処理の説明図である。
図4中の(A)は、一つの第一ヘッドモジュール21Aと、これに主走査方向に隣接する一つ第二ヘッドモジュール21Bとを示す。第一ヘッドモジュール21Aのヘッド22A-1、ヘッド22A-2、第二ヘッドモジュール21Bのヘッド22B-1、ヘッド22B-2が、主走査方向(X軸方向)に、この順で並んで配置されている。説明のために、ヘッド22A-1を「第一ヘッド22A-1」、ヘッド22A-2を「第二ヘッド22A-2」、ヘッド22B-1を「第三ヘッド22B-1」、ヘッド22B-2を「第四ヘッド22B-2」と称する。
【0034】
前記説明のとおり、本実施形態では、第一ヘッドモジュール21Aの副走査方向の端部に設けられている複数のノズル23から成るノズル群の一部と、第二ヘッドモジュール21Bの副走査方向の端部に設けられている複数のノズル23から成るノズル群の一部とが、主走査方向に重なっている。
このため、主走査方向に沿って塗布動作を進めると、第一ヘッドモジュール21Aの端部と、第二ヘッドモジュール21Bの端部とが、基材7上において重複して通過する。このように、第一ヘッドモジュール21Aと、第二ヘッドモジュール21Bとが重複して通過する基材7上の領域を「重複塗布領域Q」と定義する。なお、
図3では、重複塗布領域Qがクロスハッチで示されている。重複塗布領域Qに、二つのヘッドモジュール21A、21Bによる塗布が重なる部分(塗膜の部分)として、塗布接続部が形成される。前記塗布接続部が形成されることで、副走査方向に連続する塗布膜が基材7上に形成される。
【0035】
図4中の(B)及び(C)それぞれに示す一つのマス目は、基材7に対する一つのノズル23からの液滴の着弾位置に相当する。つまり、一つのマス目は、一つのノズル23に相当するとも言える。なお、
図4中の(B)に示す各領域と、
図4中の(C)に示す各領域とは、同じ領域であり、説明のために分けて記載している。
【0036】
〔オーバーラップ処理について〕
インクジェット塗布装置10は、次に説明するオーバーラップ処理を実行可能である。オーバーラップ処理は、重複塗布領域Qに対して、一つのヘッドと他のヘッドとで分担して液滴をノズル23から吐出させる処理である。つまり、オーバーラップ処理は、一つのヘッドと他のヘッドとが組みとなって塗布を行う処理である。
【0037】
具体的に説明すると、重複塗布領域Qに対して、第一ヘッド22A-1と第三ヘッド22B-1とで分担して液滴をノズル23から吐出させる。つまり、第一ヘッド22A-1と第三ヘッド22B-1とが組みとなって塗布を行う。これを
図4により説明すると、
図4中の(B)で示す重複塗布領域Qに対して、第一ヘッド22A-1が液滴を着弾させるマス目に○(白丸)を付していて、第三ヘッド22B-1が液滴を着弾させるマス目に△(白三角)を付している。このように、第一ヘッド22A-1が千鳥状に液滴を着弾させ、その第一ヘッド22A-1が着弾させない残りの領域に対して、第三ヘッド22B-1が千鳥状に液滴を着弾させる。
【0038】
また、重複塗布領域Qに対して、第二ヘッド22A-2と第四ヘッド22B-2とで分担して液滴をノズル23から吐出させる。つまり、第二ヘッド22A-2と第四ヘッド22B-2とが組みとなって塗布を行う。これを
図4により説明すると、
図4中の(C)で示す重複塗布領域Qに対して、第二ヘッド22A-2が液滴を着弾させるマス目に●(黒丸)を付していて、第四ヘッド22B-2が液滴を着弾させるマス目に▲(黒三角)を付している。このように、第二ヘッド22A-2が千鳥状に液滴を着弾させ、その第二ヘッド22A-2が着弾させない残りの領域に対して、第四ヘッド22B-2が千鳥状に液滴を着弾させる。
【0039】
オーバーラップ処理を実行しない場合、重複塗布領域Qでは液滴が、他の領域よりも多く着弾し、基材7上に形成される前記塗布接続部の膜厚が厚くなる。これに対して、
図4に示すように、オーバーラップ処理を実行することで、重複塗布領域Qに形成される前記塗布接続部の膜厚が厚くなるのを抑えることができる。これにより、塗布接続部(重複塗布領域Q)と、それ以外の領域との間で、膜厚差による塗膜のスジが発生することを抑制することが可能となる。
【0040】
〔不吐出領域を設定して行う塗布処理について〕
インクジェット塗布装置10は、前記オーバーラップ処理を実行可能であると共に、次に説明する不吐出領域を設定して行う塗布処理(以下、「選択処理」という。)についても実行可能である。選択処理を実行するために、インクジェット塗布装置10のヘッドユニット20は、次に説明するように構成されている。
図5は、塗布動作に含まれる選択処理の説明図である。
図5中の(A)は、一つの第一ヘッドモジュール21Aと、これに主走査方向に隣接する一つ第二ヘッドモジュール21Bとを示す説明図である。
図5は、
図3において左から2番目の第一ヘッドモジュール21A及び第二ヘッドモジュール21Bを示している。
【0041】
第一ヘッドモジュール21Aに、第一ヘッド22A-1と第二ヘッド22A-2とが含まれている。第一ヘッド22A-1は、下記に定義する不吐出領域W1を副走査方向の一方側(
図5中の(A)の図で左側)の端部に有する。第二ヘッド22A-2は、下記に定義する不吐出領域W2を副走査方向の他方側(
図5中の(A)の図で右側)の端部に有する。
第二ヘッドモジュール21Bに、第三ヘッド22B-1と第四ヘッド22B-2とが含まれている。第三ヘッド22B-1は、下記に定義する不吐出領域W3を前記副走査方向の一方側(
図5中の(A)の図で左側)の端部に有する。第四ヘッド22B-2は、下記に定義する不吐出領域W4を前記副走査方向の他方側(
図5中の(A)の図で右側)の端部に有する。
【0042】
不吐出領域Wn(ただし、n=1,2・・・):ノズル23から液滴を吐出させない領域。
不吐出領域Wnには、複数のノズル23が含まれる。つまり、不吐出領域Wnのノズル23からは、液滴が吐出されない。液滴を吐出させないノズル23、及び液滴を吐出させるノズル23は、制御装置12に設定されているコンピュータプログラムにより選択される。
【0043】
前記オーバーラップ処理と共に前記選択処理を実行して行う塗布動作について説明する。前記のとおり、オーバーラップ処理は、第一ヘッド22A-1と第三ヘッド22B-1とが組みとなって実行され、第二ヘッド22A-2と第四ヘッド22B-2とが組みとなって実行される。
【0044】
ここで、オーバーラップ処理を説明する
図4、及び、選択処理を説明する
図5によれば、ノズル23(着弾位置)の位置を、行と列とによるマトリックスとして説明することができる。つまり、ノズル23(基材7上の着弾位置)の位置を、1行、2行、3行・・・及びA列、B列、C列・・・として説明することができる。
図4中の(B)及び(C)及び
図5中の(B)及び(C)に示すように、例えば、B列、C列、D列、E列、F列(以下、「B~F列」とする。)、G列、H列、I列、J列、K列(以下、「G~K列」とする。)、及び、L列、M列、N列、O列、P列(以下、「L~P列」とする。)は、重複塗布領域Qに含まれる。なお、
図5中の(B)に示す各領域と、
図5中の(C)に示す各領域とは、同じ領域であり、説明のために分けて記載している。
【0045】
図5中の(C)に示すように、B~F列の塗布対象領域に対して、第二ヘッド22A-2と第四ヘッド22B-2とが組みとなって、オーバーラップ処理を実行する。つまり、第二ヘッド22A-2が千鳥状に液滴を着弾させ、その第二ヘッド22A-2が着弾させない残りの領域に対して、第四ヘッド22B-2が千鳥状に液滴を着弾させる。
図5中の(B)に示すように、B~F列の塗布対象領域に対して、第一ヘッド22A-1と第三ヘッド22B-1とが組みとなって、オーバーラップ処理を実行する代わりに、前記選択処理を実行する。つまり、B~F列は、第三ヘッド22B-1において不吐出領域W3に該当するため、B~F列に対して液滴を吐出させず、第一ヘッド22A-1が、千鳥状ではなく全体に対して液滴を吐出する。
【0046】
このように、重複塗布領域Qの副走査方向の一方側に対して、オーバーラップ処理と共に選択処理が実行されることで、
図5(C)において、前記塗布接続部の境界(二点鎖線X1)は、A列とB列との間となり、
図5(B)において、前記塗布接続部の境界(二点鎖線X2)は、F列とG列との間となる。前記塗布接続部の境界は、塗布の態様が異なる領域の境界となるが、重複塗布領域Qの副走査方向の一方側において、その境界が、二点鎖線X1と二点鎖線X2とで分散される。
【0047】
図5中の(B)に示すように、L~P列の塗布対象領域に対して、第一ヘッド22A-1と第三ヘッド22B-1とが組みとなって、オーバーラップ処理を実行する。つまり、第一ヘッド22A-1が千鳥状に液滴を着弾させ、その第一ヘッド22A-1が着弾させない残りの領域に対して、第三ヘッド22B-1が千鳥状に液滴を着弾させる。
図5中の(C)に示すように、L~P列の塗布対象領域に対して、第二ヘッド22A-2と第四ヘッド22B-2とが組みとなって、オーバーラップ処理を実行する代わりに、前記選択処理を実行する。つまり、L~P列は、第二ヘッド22A-2において不吐出領域W2に該当するため、L~P列に対して液滴を吐出させず、第四ヘッド22B-2が、千鳥状ではなく全体に対して液滴を吐出する。
【0048】
このように、重複塗布領域Qの副走査方向の他方側に対して、オーバーラップ処理と共に選択処理が実行されることで、
図5(C)において、前記塗布接続部の境界(二点鎖線X3)は、K列とL列との間となり、
図5(B)において、前記塗布接続部の境界(二点鎖線X4)は、P列とQ列との間となる。前記塗布接続部の境界は、塗布の態様が異なる領域の境界となるが、重複塗布領域Qの副走査方向の他方側において、その境界が、二点鎖線X3と二点鎖線X4とで分散される。
【0049】
そして、重複塗布領域Qのうち、残りとなるG~K列の塗布対象領域に対しては、第二ヘッド22A-2と第四ヘッド22B-2とが組みとなって、オーバーラップ処理を実行し、第一ヘッド22A-1と第三ヘッド22B-1とが組みとなって、オーバーラップ処理を実行する。
【0050】
〔本実施形態のインクジェット塗布装置10について〕
以上のように、本実施形態のインクジェット塗布装置10では、第一ヘッドモジュール21Aは、不吐出領域W1を副走査方向の一方側の端部に有する第一ヘッド22A-1と、不吐出領域W2を副走査方向の他方側の端部に有する第二ヘッド22A-2とを有する。第二ヘッドモジュール21Bは、不吐出領域W3を副走査方向の一方側の端部に有する第三ヘッド22B-1と、不吐出領域W4を副走査方向の他方側の端部に有する第四ヘッド22B-2とを有する。
【0051】
このインクジェット塗布装置10によれば、第一ヘッドモジュール21Aと第二ヘッドモジュール21Bとが重複して通過する基材7上の重複塗布領域Qに対して、第二ヘッド22A-2から液滴を吐出させない。また、前記重複塗布領域Qに対して、第三ヘッド22B-1から液滴を吐出させない。
このため、
図5に示すように、重複塗布領域Qに液滴が塗布されて形成される塗布接続部の境界が、二点鎖線で示すX1,X2,X3、X4に分散される。従来では、塗布接続部の境界がX1及びX4に集中する。以上より、本実施形態のインクジェット塗布装置10によれば、塗布スジの発生を抑制することが可能となる。特に、オーバーラップ処理も実行されており、不吐出領域による作用(選択処理の実行)と併せることで、塗布スジの発生をより効果的に抑制することができる。
【0052】
また、前記選択処理では、ヘッドユニット20におけるヘッドの取り付け位置を変更することなく、液滴を吐出させないノズル23をソフトウエアの設定によって選択することで、前記不吐出領域Wnが得られる。よって、ヘッドの構成を改造しなくても、容易に選択処理が可能となる。
【0053】
図6は、オーバーラップ処理及び選択処理が実行されて行われる塗布動作の一つの例を示すヘッドユニット20の説明図である。
図7は、オーバーラップ処理及び選択処理が実行されて行われる塗布動作の他の例を示すヘッドユニット20の説明図である。
【0054】
図6及び
図7それぞれにおいて、各ヘッドの不吐出領域を「黒」で示している。組となる第一ヘッド22A-1と第三ヘッド22B-1とで、オーバーラップ処理を行う対象となるノズル23を含む領域(ノズル領域)それぞれを「クロスハッチ」で示している。別の組となる第二ヘッド22A-2と第四ヘッド22B-2とで、オーバーラップ処理を行う対象となるノズル23を含む領域(ノズル領域)それぞれを「シングルハッチ」で示している。その他の領域は、通常とおり液滴の吐出を行うノズル領域である。
【0055】
図6に示す形態では、第二ヘッド22A-2の不吐出領域W2と、第三ヘッド22B-1の不吐出領域W3とは、副走査方向について異なる位置に配置されている。
図7に示す形態では、第二ヘッド22A-2の不吐出領域W2の一部と、第三ヘッド22B-1の不吐出領域W3の一部とは、主走査方向に並んで配置されている。
【0056】
図6及び
図7に示すように、不吐出領域Wnは、各ヘッドの副走査方向の最も端部に設けられているノズル23を含むように設定されていればよい。
図6に示す塗布動作によれば(
図5も参照)、二つのヘッドモジュール21A、21Bにより塗布が重なる塗布接続部を一部重複させることができる。
図7に示す塗布動作によれば、前記塗布接続部を分離させることができる。
【0057】
〔ヘッドユニット20の変形例(その1)〕
前記実施形態では(
図3参照)、主走査方向からヘッドユニット20を見た場合に、副走査方向に沿ってノズル23が設けられている範囲(配列範囲)Sは、基材7の副走査方向の寸法よりも大きい。
図8は、ヘッドユニット20の変形例の説明図である。主走査方向からヘッドユニット20を見た場合に、副走査方向に沿ってノズル23が設けられている範囲(配列範囲)Sが、基材7の副走査方向の寸法よりも小さい。なお、ヘッドユニット20は、前記実施形態と比べて副走査方向の長さが異なるが、ヘッド等の各部の構成は、
図3、
図4及び
図5に示す形態と同じである。
【0058】
図8に示すヘッドユニット20を備えるインクジェット塗布装置10の場合、そのヘッドユニット20を主走査方向に移動させて塗布を行う第一動作と、その第一動作の後にヘッドユニット20を副走査方向に塗布を行わないで移動させる第二動作と、その第二動作の後の第三動作とを行う。第三動作では、ヘッドユニット20を第一動作での移動方向と平行となる方向に移動させて塗布を行う。更に、第三動作では、第一動作におけるヘッドユニット20の移動軌跡の副走査方向の端部と重複する範囲を通過するようにして、そのヘッドユニット20を移動させる。
【0059】
より具体的に説明すると、第一動作におけるヘッドユニット20の副走査方向の他方側(
図8において右側)の端に位置する第二ヘッドモジュール21Bの移動軌跡の副走査方向の端部と、重複する範囲を通過するようにして、第三動作では、ヘッドユニット20の副走査方向の一方側(
図8において左側)の端に位置する第一ヘッドモジュール21Aを移動させる。
【0060】
前記第一動作では、ヘッドユニット20が、主走査方向に前進しながら液滴を吐出し、その後、主走査方向に後退しながら液滴を吐出して塗布を行う。この場合、第二動作は、第一動作の開始位置またはその近傍位置にあるヘッドユニット20を、副走査方向に移動させる。そして、前記第三動作では、ヘッドユニット20が、主走査方向に前進しながら液滴を吐出し、その後、主走査方向に後退しながら液滴を吐出して塗布を行う。
なお、前記第一動作は、ヘッドユニット20が、主走査方向に前進しながら液滴を吐出する片道のみであってもよい。この場合、主走査方向に前進して到着した位置にあるヘッドユニット20を、前記第二動作として、副走査方向に移動させる。そして、前記第三動作では、主走査方向に後退しながら液滴を吐出して塗布を行う。
【0061】
図8に示す形態では、前記第一動作と前記第三動作とで、第二ヘッドモジュール21Bと、第一ヘッドモジュール21Aとが重複して通過する基材7上の重複塗布領域Q(
図8の中央のクロスハッチの領域)が存在する。
前記選択処理を実行しない場合、前記第一動作と第三動作とで塗布範囲が重複する重複塗布領域Qでは、塗布接続部の境界が塗布スジとなって現れる。
しかし、
図8に示す形態においても、第一ヘッドモジュール21A及び第二ヘッドモジュール21Bそれぞれは、不吐出領域Wnを有するヘッド22を有していて、前記選択処理を実行する。つまり、前記重複塗布領域Qに対して、ヘッド22から液滴を吐出させないノズル23が存在する。このため、
図5により説明した場合と同様、前記重複塗布領域Qに液滴が塗布されて形成される塗布接続部の境界が分散され、従来と比較して、塗布スジの発生を抑制することが可能となる。
【0062】
なお、説明するまでもないが、
図4及び
図5により説明した形態と同様に、前記第一動作及び前記第三動作それぞれの動作中に生じる重複塗布領域Qにおいても、前記選択処理及び前記オーバーラップ処理が実行される。よって、第一ヘッドモジュール21Aと第二ヘッドモジュール21Bとが、主走査方向に重なって配置されていることで生じる重複塗布領域Qにおいても、塗布接続部の境界が分散され、塗布スジの発生が抑制される。
【0063】
〔ヘッドユニット20の変形例(その2)〕
図8に示す形態では、ヘッドユニット20は、副走査方向に直線状に並ぶ第一ヘッドモジュール21Aと、副走査方向に直線状に並ぶ第二ヘッドモジュール21Bとを備える。つまり、ヘッドユニット20は、副走査方向に沿って設けられるヘッドモジュール21を二列有する形態である。
図8に示す形態の変形例として、ヘッドユニット20は、副走査方向に沿って設けられるヘッドモジュール21を一列のみ有する形態であってもよい。ただし、前記第一動作及び前記第三動作それぞれの間で、副走査方向についての塗布の連続性を確保するために、そのヘッドユニット20の一列のヘッドモジュール21は、複数のヘッド22が間隔をあけて配列された構成ではなく、副走査方向に長い単一のヘッド22を有する。
この場合においても、
図8に示す第一動作、第二動作、及び第三動作を行うことで、塗布範囲が重複する重複塗布領域Qが生じる。しかし、前記選択処理を実行することで、重複塗布領域Qに液滴が塗布されて形成される塗布接続部の境界が分散され、塗布スジの発生を抑制することが可能となる。
【0064】
〔その他〕
オーバーラップ処理は、液滴を千鳥状に吐出する場合について説明したが、これに限定されない。領域を分けて二つのヘッドが液滴を吐出すればよい。
【0065】
今回開示した各形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
7 基材
10 インクジェット塗布装置
13 移動機構
15 ステージ
20 ヘッドユニット
21 ヘッドモジュール
21A 第一ヘッドモジュール
21B 第二ヘッドモジュール
22A-1 第一ヘッド
22A-2 第二ヘッド
22B-1 第三ヘッド
22B-2 第四ヘッド
23 ノズル
Q 重複塗布領域
W1,W2,W3,W4 不吐出領域