(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149620
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】植物の生産方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20220929BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051855
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593171592
【氏名又は名称】学校法人玉川学園
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】平井 裕二
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 泰平
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 博之
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA02
2B314NA03
2B314NA24
2B314NC06
2B314NC43
2B314PB13
2B314PC09
2B314PC15
2B314PC16
2B314PC22
2B314PC24
2B314PC39
2B314PC40
(57)【要約】
【課題】延長方向が揃えられた繊維の束からなる培地を用いた植物の生産方法において、歩留まりを従来よりも向上させる。
【解決手段】植物の生産方法は、延長方向が揃えられた繊維の束からなる培地1に、水又は培養液を含浸させる含浸工程と、種子Sに所定時間吸水させる吸水工程と、容器2の中に、含浸工程において水又は培養液を含浸させた培地1を、繊維の延長方向が鉛直方向となるように収容し、培地の上面1aに、吸水工程において吸水させた種子Sを蒔く播種工程と、培地1の上面1aに蒔いた種子Sに、少なくとも種子Sが発芽するまでの間、上から圧力をかける加圧工程と、種子Sへ圧力をかけるのを止めた後、培地1及び種子Sを保湿する保湿工程と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延長方向が揃えられた繊維の束からなる培地に、水又は培養液を含浸させる含浸工程と、
種子に所定時間吸水させる吸水工程と、
容器の中に、前記含浸工程において水又は培養液を含浸させた前記培地を、前記繊維の延長方向が鉛直方向となるように収容し、前記培地の上面に、前記吸水工程において吸水させた種子を蒔く播種工程と、
前記培地の上面に蒔いた種子に、少なくとも種子Sが発芽するまでの間、上から圧力をかける加圧工程と、
前記種子へ圧力をかけるのを止めた後、前記培地及び前記種子を保湿する保湿工程と、を有することを特徴とする植物の生産方法。
【請求項2】
前記容器として、前記培地を、水平方向に複数並べて収容可能なものを用い、
前記播種工程において、前記容器に複数の前記培地を水平方向に並べて収容し、各培地の上面に前記種子をそれぞれ蒔くことを特徴とする請求項1に記載の植物の生産方法。
【請求項3】
前記加圧工程において、前記種子の上に押圧板を置き、当該押圧板の上におもりを置くことにより、各種子へそれぞれ圧力をかけることを特徴とする請求項2に記載の植物の生産方法。
【請求項4】
前記押圧板として、透明なものを用いることを特徴とする請求項3に記載の植物の生産方法。
【請求項5】
前記保湿工程において、前記容器を入れたトレイの上に透明部材を被せ、前記容器に収容された前記培地及び前記種子を前記トレイ及び前記透明部材で覆うことにより、前記培地及び前記種子を保湿することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の植物の生産方法。
【請求項6】
前記植物は、ホウレンソウであり、
前記吸水工程において、前記種子を0.5~1.0時間の範囲内の時間吸水させることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の植物の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウレンソウをはじめとする植物の発芽・育苗には、従来、ロックウールやウレタンスポンジが培地として用いられてきた。
しかし、ロックウールには、成型に手間がかかる、成形の仕方によって硬さがばらつきやすい、細かな破片が飛散しやすい等の問題があった。一方、ウレタンスポンジにも、培地中の水分量の管理が困難、一次根が貫入しにくい等の問題があった。
そこで、近年、ビニロン繊維に代表される、延長方向が一方向に揃えられた繊維の束からなる材料を培地に用いることが行われるようになった(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
こうした繊維で形成された培地の上面(繊維の延長方向と直交する切断面)に種子を蒔くことで、一次根の培地への貫入率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】藤代岳雄,「神奈川県農業総合研究所研究報告 葉根菜類試験成績書No.21」,神奈川県農業総合研究所,1990年3月,p65-66
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載されたような培地を用いるだけでは、歩留まりが依然として低いままであった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、延長方向が揃えられた繊維の束からなる培地を用いた植物の生産方法において、歩留まりを従来よりも向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、
延長方向が揃えられた繊維の束からなる培地に、水又は培養液を含浸させる含浸工程と、
種子に所定時間吸水させる吸水工程と、
容器の中に、前記含浸工程において水又は培養液を含浸させた前記培地を、前記繊維の延長方向が鉛直方向となるように収容し、前記培地の上面に、前記吸水工程において吸水させた種子を蒔く播種工程と、
前記培地の上に蒔いた種子に、少なくとも種子Sが発芽するまでの間、上から圧力をかける加圧工程と、
前記種子へ圧力をかけるのを止めた後、前記培地及び前記種子を保湿する保湿工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の植物の生産方法において、
前記容器として、前記培地を、水平方向に複数並べて収容可能なものを用い、
前記播種工程において、前記容器に複数の前記培地を水平方向に並べて収容し、各培地の上面に前記種子をそれぞれ蒔くことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、
請求項2に記載の植物の生産方法において、
前記加圧工程において、前記種子の上に押圧板を置き、当該押圧板の上におもりを置くことにより、各種子へそれぞれ圧力をかけることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、
請求項3に記載の植物の生産方法において、
前記押圧板として、透明なものを用いることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の植物の生産方法において、
前記保湿工程において、前記容器を入れたトレイの上に透明部材を被せ、前記容器に収容された前記培地及び前記種子を前記トレイ及び前記透明部材で覆うことにより、前記培地及び前記種子を保湿することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明は、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の植物の生産方法において、
前記植物は、ホウレンソウであり、
前記吸水工程において、前記種子を0.5~1.0時間の範囲内の時間吸水させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、延長方向が揃えられた繊維の束からなる培地を用いた植物の生産方法において、歩留まりを従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る植物の生産方法で用いられる培地を示す斜視図である。
【
図2】ホウレンソウの種子の吸水時間と発芽率との関係を示すグラフである。
【
図3】同実施形態に係る植物の生産方法で用いられる容器を示す斜視図である。
【
図4】同実施形態に係る植物の生産方法の播種工程後における容器、培地及び種子を示す斜視図である。
【
図5】同実施形態に係る植物の生産方法の加圧工程における容器、培地及び種子を示す斜視図である。
【
図6】同実施形態に係る植物の生産方法の加圧工程における容器、培地及び種子を示す斜視図である。
【
図7】同実施形態に係る植物の生産方法の加圧工程における容器、培地及び種子を示す斜視図である。
【
図8】同実施形態に係る植物の生産方法の保湿工程における容器、培地及び種子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
ただし、本発明の技術的範囲は、下記実施形態や図面に例示したものに限定されるものではない。
【0016】
この植物の生産方法において生産対象となる植物は、例えば、ホウレンソウ、ハクサイ、コマツナ、ネギ、クレソン、スイートバジル、コリアンダー等である。
この植物の生産方法は、含浸工程と、吸水工程と、播種工程と、加圧工程と、保湿工程と、を有する。
【0017】
(含浸工程)
初めの含浸工程では、培地1に、水又は培養液を含浸させる。
本実施形態に係る含浸工程では、複数の培地1に水又は培養液を含浸させる。
培地1は、延長方向が揃えられた繊維の束からなる。
本実施形態に係る生産方法で用いられる培地1は、
図1に示すように、例えば、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維等で円柱状に形成されたもの(例えば、ファイバーロッド(アサヒ繊維工業株式会社製))となっている。
このように構成された培地1は、従来用いられてきたウレタンスポンジに比べて高い保水力を有するため、培地1内の水分量の管理を容易に行うことができる。
特に、ファイバーロッドは、初めから円柱状に形成された製品であるため、ファイバーロッドを培地1として用いれば、従来用いられてきた粒状ロックウールを培地とする場合と異なり、事前に培地の形に成型する工程が不要となる。
【0018】
(吸水工程)
培地1に水又は培養液を含浸させた後は、吸水工程に移る。
この吸水工程では、種子Sに所定時間吸水させる。
例えば生産対象がホウレンソウである場合、この吸水工程において、種子Sを0.5~1.0時間の範囲内の時間吸水させる。
本実施形態に係る生産方法では、この後の播種工程において、予め水又は培養液を含浸させた培地1の上面1aに種子Sを蒔くため、この工程で種子Sに吸水させる時間は短時間で済む(従来のように丸一日浸しておく必要が無い)。
特に、ホウレンソウは、
図2に示すように、吸水時間が短過ぎても長過ぎても発芽しにくいという特長を有するが、上記のような吸水時間とすることにより、ホウレンソウの発芽率を従来よりも向上させることができる。
【0019】
なお、吸水工程の前、又は吸水工程と後述する播種工程との間に、種子Sに発芽促進処理を施す工程を挟んでもよい。
このようにすれば、種子Sの吸水時間を更に短縮することができる。
【0020】
(播種工程)
種子Sに所定時間吸水させた後は、播種工程に移る。
この播種工程では、まず、容器2の中に、含浸工程において水又は培養液を含浸させた培地1を収容する。
本実施形態に係る播種工程では、容器2として、培地1を、水平方向に複数並べて収容可能なものを用いる。より具体的には、
図3に示すような、上に向かって開口する凹部2aを複数有するもの(例えば、セルトレイ)を用いる。
このため、本実施形態に係る播種工程では、培地1を複数用意し、
図4に示すように、容器2に複数の培地1を水平方向に並べて(各凹部2aに収納されるように)収容する。こうすることで、種子Sが培地1から床等に落下してしまうのを防ぐことができる。また、培地1及び種子Sをまとめて動かせるため、以降の工程における作業を効率的に行うことができる。
【0021】
また、この播種工程では、培地1を、繊維の延長方向が鉛直方向となるように収容する。
そして、
図4に示したように、各培地1の上面1aに、上記吸水工程において吸水させた種子Sをそれぞれ蒔く。
培地1の上面1aは、繊維の束の断面であり、根(一次根)が培地1の中へ入り込みやすくなっている。このため、培地1及び種子Sをこのような配置とすることで、根の培地1への活着率が向上する。
また、本実施形態に係る生産方法では、この播種工程以降、培地1を収容した容器2を、トレイ3に入れて管理する。
【0022】
(加圧工程)
培地1の上面1aに種子Sを蒔いた後は、加圧工程に移る。
この加圧工程では、培地1の上面1aに蒔いた種子Sに、少なくとも種子Sが発芽するまでの間、上から圧力をかける。
圧力の大きさは、例えば、22~55kg/m
2の範囲内とするのが好ましい。
こうすることで、出てきたばかりの根が培地1の上面1aに押し付けられるため、根が培地1の中へより一層入り込みやすくなる。その結果、根の培地1への活着率がより一層向上する。
本実施形態に係る加圧工程では、
図5に示すように、種子Sの上に押圧板4を置き、当該押圧板4の上に重り5を置くことにより、各種子Sへそれぞれ圧力をかける。こうすることで、押圧板4が種子Sへの重さを均一に分散させるため、複数の種子Sに均一に圧力をかけることができる。
本実施形態に係る押圧板4は、容器2の平面視の輪郭と略等しい矩形をしている(トレイより一回り小さい)ため、容器2がトレイ3に入っていても、種子Sの上に置くことができる。
【0023】
また、本実施形態に係る加圧工程では、重り5として、水の入ったボトルを用いる。こうすることで、重り5を簡単に用意することができるし、重り5の重量の調節を容易に行うことができる。
なお、重り5は、押圧板4の上に載せることができ、且つ種子Sに適度な圧力をかけることのできる重量を有するものであれば何でもよい。
また、重り5を用いずに、例えば、相応の重量を有する(重り5を兼ねる)押圧板4を用いる、水を入れたトレイ3を上に重ねる等の方法で、種子Sに圧力をかけるようにしてもよい。
また、本実施形態に係る加圧工程では、押圧板4として、透明なもの(例えば、アクリル板)を用いる。こうすることにより、種子Sを観察する際に押圧板4を外す必要がなくなるため、種子Sの状況を容易に把握することができる。
【0024】
なお、
図6に示すように、押圧板4の上に空の(容器2を収容していない)トレイ3を載せ、その上に重り5を置くようにしてもよい。こうすることで、圧力をより均一に分散させることができる。
また、
図7に示すように、播種された培地1を収容した容器2が入ったトレイ3を複数段重ね、その上に空のトレイ3を載せ、その上に重り5を置くようにしてもよい。このようにすれば、場所を取らずに、且つ重り5の数を増やさずに、多くの種子Sに圧力をかけることができる。
また、底面が平面となったトレイ3を用いる場合には、押圧板4を用いずに、トレイ3を種子Sの上に直接載せるようにしてもよい。
【0025】
(保湿工程)
種子Sへ圧力をかけるのを止めた後は、保湿工程に移る。
この保湿工程では、培地1及び種子Sを保湿する。
本実施形態に係る保湿工程では、
図8に示すように、容器2を入れたトレイ3の上に透明部材6を被せ、培地1及び種子Sをトレイ3及び透明部材6で容器2ごと覆う。こうすることで、種子S及び培地1が保湿される(種子S及び培地1の乾燥が防止される)。発芽し押圧板4が外された後は、種子S及び培地1から水分が多く蒸発し始め、種子S及び培地1が乾燥していく。乾燥が過度に進行すると植物が枯死してしまうことがあるが、こうすることで枯死率を低下させることができる。
【0026】
また、透明部材6は、透明であるため、芽の生育状況や容器2内部の状況を容易に観察することができるし、芽に十分な日光を当てることができる。
本実施形態に係る保湿工程では、透明部材6として、トレイ3の平面視形状と同程度の大きさのアクリル板を用いる。こうすることで、トレイ3の縁に透明部材6を載せるだけで、種子S及び培地1を容易に覆うことができる。
また、この場合、使用するトレイ3を容器2の高さよりも深いものとしておけば、培地1の上面1aと透明部材6の下面との間が離間するため、芽の成長空間を確保することができる。
なお、透明部材6は、アクリル板のような硬質なものではなく、ビニール等であってもよい。
【実施例0027】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0028】
まず、直径が23mm、長さが30mmの円柱状のファイバーロッド(培地1)と、ウレタンスポンジで培地1と同寸法に形成された比較用培地と、をそれぞれ128個ずつ用意した。
そして、含浸工程において、複数の培地1及び複数の比較用培地に水を含浸させた。
そして、吸水工程において、ホウレンソウの種子Sに1時間吸水させた。
そして、播種工程において、実施例に係るセルトレイ(容器2)に複数の培地1を収容するとともに、比較用のセルトレイ(容器2)に複数の比較用培地を収容し、複数の培地1及び複数の比較用培地の上面にホウレンソウの種子Sをそれぞれ蒔いた。
そして、加圧工程において、複数の培地1の上面1aに蒔いた種子Sの上に押圧板4を置き、その上に重り5を載せたトレイ3を置くとともに、複数の比較用培地の上面に蒔いた種子Sの上に押圧板4を置き、その上に実施例と同重量の重り5を載せたトレイ3を置き、種子Sに4日間圧力をかけた。
【0029】
4日後、培地1が収容された実施例に係る容器2の上から押圧板4及び重り5を取り外すとともに、比較用培地が収容された比較用の容器2の上からも押圧板4及び重り5を取り外し、それぞれの種子Sの発芽の様子を確認したところ、培地1の上面1aに蒔かれた種子Sは全体の70%が発芽していた。
一方、比較用培地の上面に蒔かれた種子Sは全体の5%しか発芽していなかった。
また、発芽した種子Sの根の、培地1,比較用培地への貫入の様子を確認したところ、培地1の上面1aで発芽した種子Sのうちの71.4%が根を培地1に貫入させていた(活着していた)。
一方、比較用培地の上面で発芽した種子Sのうちの40%が根を比較用培地に貫入させていた。
【0030】
その後、保湿工程において、培地1を収容した容器2を入れたトレイ3の上にアクリル板(透明部材6)を載せるとともに、比較用培地を収容した容器2を入れたトレイ3の上にもアクリル板を載せ、種子S、培地1及び比較用培地をそれぞれ保湿した。
その結果、根が培地1,比較用培地に貫入した種子Sの芽は、全てが苗になるまで育った。
すなわち、培地1に蒔いた種子S全体の約50%(≒70%×71.4%×100%)が苗になり(培地1を用いた場合の歩留まりは50%であり)、比較用培地に蒔いた種子S全体の2%(≒5%×40%×100%)が苗になった(比較用培地を用いた場合の歩留まりは2%であった)。
【0031】
また、ホウレンソウ以外の植物(コマツナ、コリアンダー、ネギ、クレソン、スイートバジル、ハクサイの6種類)について、上記ホウレンソウと同様の方法で実験を行った。
その際、種子Sには、発芽促進処理が施されたものを用いた。
また、コリアンダーの種子Sの吸水時間は18時間、コマツナ、ネギ、クレソン、スイートバジル及びハクサイの種子Sの吸水時間は0.5~1時間の範囲内とした。
培地1(ファイバーロッド)を用いた場合の各植物の苗の歩留まりを100としたとき、比較用培地(ウレタンスポンジ)を用いた場合の各植物の苗の歩留まりは、以下の通りであった。
1.コマツナ:92
2.コリアンダー:63
3.ネギ:32
4.クレソン:58
5.スイートバジル:79
6.ハクサイ:25
すなわち、上記6種類の植物の場合も、歩留まりが従来よりも向上した。
【0032】
<効果>
以上説明してきた本実施形態に係る植物の生産方法は、培地1に水又は培養液を含浸させる含浸工程と、種子Sに所定時間吸水させる吸水工程と、容器2の中に、含浸工程において水又は培養液を含浸させた培地1を、繊維の延長方向が鉛直方向となるように収容し、培地1の上面1aに、吸水工程において吸水させた種子を蒔く播種工程と、培地1の上面1aに蒔いた種子Sに、少なくとも種子Sが発芽するまでの間、上から圧力をかける加圧工程と、種子Sへ圧力をかけるのを止めた後、培地1及び種子Sを保湿する保湿工程と、を有する。
【0033】
培地1は、延長方向が揃えられた繊維の束からなるものであり、水分量の管理が容易であるため、従来のウレタンスポンジ等を用いた場合に比べて発芽率が高い。
また、加圧工程において種子Sが培地1の上面1a(繊維の束の断面)に押し付けられるため、種子Sが単に上面1aに載っているだけの場合に比べて、根が培地1の中へ入り込みやすく、根の培地1への活着率が向上する。
また、保湿工程において培地1及び種子Sが透明部材6で覆われて保湿されるため、従来に比べて培地1及び種子Sが乾燥しにくく、枯死率が低下する。
このため、この生産方法によれば、歩留まりを従来よりも向上させることができる。