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  • 特開-車室床面のノンステップ構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149627
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】車室床面のノンステップ構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20220929BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220929BHJP
【FI】
B62D25/20 A
B60K1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051863
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 尚志
(74)【代理人】
【識別番号】100181434
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 正明
(72)【発明者】
【氏名】真銅 雄史
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA19
3D203AA31
3D203BA03
3D203BB06
3D203DA51
3D203DB05
3D203DB07
3D235AA05
3D235BB17
3D235CC14
3D235CC42
3D235FF12
3D235FF37
3D235GA08
3D235GA13
3D235GB22
(57)【要約】
【課題】ホイールベースの変更を要することなく、車室床面の後側全域の低床化及びノンステップ化が可能な車室床面のノンステップ構造の提供。
【解決手段】アクスル回転軸の軸心16よりも車両前側から後部座席30Rのシートクッション31の前端下方に至るフロアパネル4の後側領域4Rは、左右のインホイールモータユニット12の間で車両後方に向かって上方に傾斜する傾斜面部19を有する。傾斜面部19は、モータマウント11の中間部及びアクスル関連部品のうち最も上方に位置するアクスル上端の上方を通る。フロアパネル4の後側領域4Rは、傾斜面部19を含む車両前後方向の全域において、段差が存在せずに連続する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びる板状のモータマウントと、前記モータマウントの車幅方向の両端部に載置され固定される左右のインホイールモータユニットとによって構成され、前記左右のインホイールモータユニットの間の前記モータマウントの中間部の上面がアクスル回転軸の軸心よりも下方に位置し、前記モータマウントの前記中間部にアクスル関連部品が取付けられるリヤアクスルと、
前記リヤアクスルにサスペンションを介して弾性支持される車体側で車室床面を形成するフロアパネルと、
車室の最後部に配置される後部座席と、を備え、
前記アクスル回転軸よりも車両前側から前記後部座席のシートクッションの前端下方に至る前記フロアパネルの後側領域は、前記左右のインホイールモータユニットの間で車両後方に向かって上方に傾斜する傾斜面部を有し、
前記傾斜面部は、前記モータマウントの前記中間部及び前記アクスル関連部品のうち最も上方に位置するアクスル上端の上方を通り、
前記フロアパネルの前記後側領域は、前記傾斜面部を含む車両前後方向の全域において、段差が存在せずに連続する
ことを特徴とする車室床面のノンステップ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のノンステップ構造であって、
前記リヤアクスルに対して前記車体側が静止した状態での前記アクスル上端と前記傾斜面部との間隔は、前記サスペンションによる前記車体側の上下動の振幅よりも大きい
ことを特徴とする車室床面のノンステップ構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のノンステップ構造であって、
前記後部座席の前記シートクッションの下方にはバッテリが配置される
ことを特徴とする車室床面のノンステップ構造、
【請求項4】
請求項3に記載のノンステップ構造であって、
前記バッテリの下端は、前記リヤアクスルと前記バッテリの後端との間でデパーチャアングルを規定する前記車体側の後部下端よりも上方に位置する
ことを特徴とする車室床面のノンステップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バス等の車両の車室床面のノンステップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両全長を変更することなくホイールベースを長く設定し、ホイールベース間に、乗降口の前扉及び後扉を配置すると共に、段差の少ない客室床面を形成した低床バスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-322819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造では、車両設計の基本要素であるホイールベースを長く設定するため、大幅な設計変更を伴う。
【0005】
そこで本開示は、ホイールベースの変更を要することなく、車室床面の後側全域の低床化及びノンステップ化が可能な車室床面のノンステップ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本開示の第1の態様の車室床面のノンステップ構造は、リヤアクスルと、フロアパネルと、後部座席とを備える。リヤアクスルは、車幅方向に延びる板状のモータマウントと、モータマウントの車幅方向の両端部に載置され固定される左右のインホイールモータユニットとによって構成される。左右のインホイールモータユニットの間のモータマウントの中間部の上面は、アクスル回転軸の軸心よりも下方に位置し、モータマウントの中間部には、アクスル関連部品が取付けられる。フロアパネルは、リヤアクスルにサスペンションを介して弾性支持される車体側で車室床面を形成する。後部座席は、車室の最後部に配置される。
【0007】
アクスル回転軸よりも車両前側から後部座席のシートクッションの前端下方に至るフロアパネルの後側領域は、左右のインホイールモータユニットの間で車両後方に向かって上方に傾斜する傾斜面部を有する。傾斜面部は、モータマウントの中間部及びアクスル関連部品のうち最も上方に位置するアクスル上端の上方を通る。フロアパネルの後側領域は、傾斜面部を含む車両前後方向の全域において、段差が存在せずに連続する。
【0008】
上記構成では、フロアパネルの後側領域に、左右のインホイールモータユニットの間で車両後方に向かって上方に傾斜してアクスル上端の上方を通る傾斜面部を設けているので、傾斜面部を含むフロアパネルの後側領域の全域を、低位置で且つ段差が存在しない連続面とすることができる。すなわち、ホイールベースの変更を要することなく、車室床面の後側全域の低床化及びノンステップ化を実現することができる。
【0009】
本開示の第2の態様は、第1の態様のノンステップ構造であって、リヤアクスルに対して車体側が静止した状態でのアクスル上端と傾斜面部との間隔は、サスペンションによる車体側の上下動の振幅よりも大きい。
【0010】
上記構成では、車両走行時のフロアパネル(傾斜面部)とリヤアクスル(アクスル上端)との干渉を確実に防止することができる。
【0011】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様のノンステップ構造であって、後部座席のシートクッションの下方にはバッテリが配置される。
【0012】
上記構成では、後部座席のシートクッションの下方をバッテリの配置空間として有効に活用することができる。
【0013】
本開示の第4の態様は、第3の態様のノンステップ構造であって、バッテリの下端は、リヤアクスルとバッテリの後端との間でデパーチャアングルを規定する車体側の後部下端よりも上方に位置する。
【0014】
上記構成では、デパーチャアングルを規定する車体側の後部下端よりも上方にバッテリの下端が位置するので、路面とバッテリとの干渉を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、ホイールベースの変更を要することなく、車室床面の後側全域の低床化及びノンステップ化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の車室内の後部を模式的に示す側面図である。
図2図1の後部座席の周囲を拡大した側面図である。
図3】リヤアクスルの斜視図である。
図4】リヤアクスルの平面図である。
図5】フロアパネル及びアクスル上端の高さ位置を示す図4のV-V断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、前後方向は車両の前後方向を意味し、左右方向は車両前方を向いた状態での左右方向を意味する。また、図中の矢印FRは車両の前方を、UPは上方を、INは車幅方向内側をそれぞれ示す。
【0018】
本実施形態に係る車両1は、低床型のEVバス(電気バス)である。図1に示すように、車両1の車体側面(図示の例では左側面)には、前輪(図示外)よりも前方側に前乗降口(図示外)が設けられ、前輪と後輪2との間に中乗降口3が設けられる。車室5の床面(車室床面)を形成するフロアパネル4は、前乗降口の開口下縁及び中乗降口3の開口下縁と略同高さに設定される。車室5には、最後部の後部座席30Rを含む複数の座席30が配置され、後部座席30Rのシートクッション31の下方には、バッテリ20が配置される。
【0019】
図4に示すように、車両1の車体下部の構造体である車体フレーム7は、車両前後方向に延びる左右のサイドメンバ8と、車幅方向に延びて左右のサイドメンバ8を連結する複数のクロスメンバ6とから主に構成される。フロアパネル4、座席30及びバッテリ20(図1参照)は、車体フレーム7に対して固定的に支持される。複数のクロスメンバ6は、後輪2のアクスル(リヤアクスル)10の前後に配置されるクロスメンバ6A,6Bを含み、リヤアクスル10の前後のクロスメンバ6A,6Bは、左右のサイドメンバ8よりも車幅方向外側に張り出す。左右の後輪2(図1参照)の前後には、ホイールアーチ前板部32とホイールアーチ後板部33とが設けられる。左右のホイールアーチ前板部32は、クロスメンバ6Aの左右の張出部分とサイドメンバ8とに固定され、左右のホイールアーチ後板部33は、クロスメンバ6Bの左右の張出部分とサイドメンバ8とに固定される。左右のホイールアーチ前板部32と左右のホイールアーチ後板部33とは、リヤ側のサスペンション(図示の例ではエアサスペンション)9を介してリヤアクスル10に下方から弾性支持される。すなわち、フロアパネル4は、リヤアクスル10にサスペンション9を介して弾性支持される車体側で車室床面を形成する。なお、サスペンション9は、エアサスペンション以外(例えばリーフサスペンション等)であってもよい。
【0020】
図3及び図4に示すように、リヤアクスル10は、車幅方向に延びる板状のモータマウント11と、モータマウント11の車幅方向の両端部に載置され固定される左右のインホイールモータユニット12とによって構成される。インホイールモータユニット12では、モータ13がハブ14と一体化されて同軸で繋がり、ハブ14に取付けられた後輪2(図1参照)がモータ13によって回転する。
【0021】
リヤアクスル10には、車両1の車幅方向を横断する軸部材は存在せず、左右のインホイールモータユニット12の間には、下方へ凹む凹状空間15が形成される。左右のインホイールモータユニット12の間のモータマウント11の中間部11Mの上面は、アクスル回転軸(ハブ14の回転軸)の軸心16よりも下方に位置して、凹状空間15の下方を区画する。
【0022】
モータマウント11の中間部11Mに取付けられるアクスル関連部品には、左右のラジアスロット17が含まれる。左右のラジアスロッド17は、モータマウント12の前方に配置され、車両前方に向かって車幅方向外側へ斜めに延びる。ラジアスロッド17の前端部17Fは車体フレーム7に対して連結され、後端部17Rはモータマウント11の中間部11Mに連結される。図5に示すように、ラジアスロッド17の後端部17Rの上端は、モータマウント11の中間部11Mの上面よりも上方へ突出し、モータマウント11の中間部11M及びアクスル関連部品のうち最も上方に位置するアクスル上端18となる。なお、中間部11Mの上面が最も上方に位置する場合には、中間部11Mの上面がアクスル上端となり、他のアクスル関連部品の上端が最も上方に位置する場合には、そのアクセル関連部品の上端がアクスル上端となる。
【0023】
左右の車体側面の後端下部にはサイドスカート21が取付けられる。図1及び図2に示すように、サイドスカート21の下縁部22は、略水平に延びるスカート前側下縁部22Fと、スカート前側下縁部22Fの後端から後上方へ傾斜して延びるスカート後側下縁部22Rとを有する。スカート前側下縁部22Fとスカート後側下縁部22Rとの境界の角部は、リヤアクスル10とバッテリ20の後端との間で車両後方のデパーチャアングルθを規定する車体側の後部下端23となる。バッテリ20の下端は、デパーチャアングルθを規定する車体側の後部下端23よりも上方に位置する。
【0024】
図1に示すように、アクスル回転軸の軸心16よりも車両前側から後部座席30Rのシートクッション31の前端下方に至るフロアパネル4の後側領域4Rは、左右のインホイールモータユニット12の間(凹状空間15内)でアクスル上端18の上方を通り(図4及び図5参照)、車両後方に向かって上方に傾斜する傾斜面部19を有する。フロアパネル4の後側領域4Rは、傾斜面部19を含む車両前後方向の全域において、段差が存在せずに連続する。また、リヤアクスル10に対して車体側(車体フレーム7)が静止した状態でのアクスル上端18と傾斜面部19との間隔D(図5参照)は、サスペンション9による車体側の上下動の振幅よりも大きい。
【0025】
本実施形態のフロアパネル4は、中乗降口3と後輪2との間に設定したフロア中間位置24を境に、前方の前側領域4Fと後方の後側領域4Rとに分かれる。前側領域4Fは、略水平な水平面部によって構成される。後側領域4Rは、後部座席30Rのシートクッション31の前端下方のフロア後端位置25を含み、フロア中間位置24とフロア後端位置25とを結ぶ略全域で、車両後方に向かって上方に傾斜する。すなわち、後側領域4Rの略全域が傾斜面部19として構成される。なお、後側領域4Rの略全域を傾斜面部19とせず、例えばリヤアクスル10の後方を略水平な水平面部によって構成してもよい。また、傾斜面部19の傾斜角度(水平方向に対する角度)は3°以下が好適である。
【0026】
本実施形態によれば、フロアパネル4の後側領域4Rに、左右のインホイールモータユニット12の間で車両後方に向かって上方に傾斜してアクスル上端18の上方を通る傾斜面部19を設けているので、フロアパネル4の後側領域4Rの全域を、低位置で且つ段差が存在しない連続面とすることができる。すなわち、ホイールベースの変更を要することなく、車室床面の後側全域の低床化及びノンステップ化を実現することができる。
【0027】
リヤアクスル10に対して車体側が静止した状態でのアクスル上端18と傾斜面部19との間隔Dは、サスペンション9による車体側の上下動の振幅よりも大きいので、車両走行時のフロアパネル4(傾斜面部19)とリヤアクスル10(アクスル上端18)との干渉を確実に防止することができる。
【0028】
後部座席30Rのシートクッション31の下方にバッテリ20を配置するので、後部座席30Rのシートクッション31の下方の空間を有効に活用することができる。また、デパーチャアングルθを規定する車体側の後部下端23よりも上方にバッテリ20の下端が位置するので、路面とバッテリ20との干渉を防止することができる。
【0029】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、バス等の車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1:車両
2:後輪
3:中乗降口
4:フロアパネル
4F:フロアパネルの前側領域
4R:フロアパネルの後側領域
5:車室
6,6A,6B:クロスメンバ
7:車体フレーム
8:サイドメンバ
9:サスペンション
10:リヤアクスル
11:モータマウント
11M:モータマウントの中間部
12:インホイールモータユニット
13:モータ
14:ハブ
15:凹状空間
16:アクスル回転軸の軸心
17:ラジアスロッド
17F:ラジアスロッドの前端部
17R:ラジアスロッドの後端部
18:アクスル上端
19:傾斜面部
20:バッテリ
21:サイドスカート
22:サイドスカートの下縁部
22F:スカート前側下縁部
22R:スカート後側下縁部
23:車体側の後部下端
24:フロア中間位置
25:フロア後端位置
30:座席
30R:後部座席
31:シートクッション
32:ホイールアーチ前板部
33:ホイールアーチ後板部
図1
図2
図3
図4
図5