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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149629
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20220929BHJP
   F16H 59/66 20060101ALI20220929BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20220929BHJP
   F16H 59/14 20060101ALI20220929BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20220929BHJP
   F16H 63/50 20060101ALI20220929BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20220929BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20220929BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20220929BHJP
   B60W 10/11 20120101ALI20220929BHJP
【FI】
B60W10/00 106
F16H59/66
F16H59/54
F16H59/14
F16H61/02
F16H63/50
B60T7/12 B
F02D29/00 C
B60W10/06
B60W10/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051865
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由多
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
3G093
3J552
【Fターム(参考)】
3D241AA51
3D241AC01
3D241AC15
3D241AD31
3D241AE07
3D241AE31
3D246BA08
3D246DA03
3D246EA02
3D246EA03
3D246EA04
3D246EA11
3D246GA09
3D246GC16
3D246HA25A
3D246HA34A
3D246HA94A
3D246HB08A
3D246JA03
3D246JB11
3G093BA03
3G093CB08
3G093EA05
3G093EB03
3J552NA01
3J552NB01
3J552PA21
3J552PA35
3J552PA36
3J552PA56
3J552RB22
3J552RB23
3J552SB02
3J552TA10
3J552UA05
3J552UA08
3J552VA74Z
3J552VB04Z
3J552VB09Z
3J552VB16Z
3J552VC02W
3J552VE04W
3J552VE07Z
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の自動変速において乗員の乗り心地を改善する。
【解決手段】経路の勾配と走行位置との関係を示す勾配関数を取得する取得部221と、車両100の加減速度と目標加減速度との偏差に関する第1評価指数、車両100のエンジントルクの時間当たりの変化量に関する第2評価指数、及び、車両100の補助ブレーキの動作状態の変化の有無に関する第3評価指数を含む評価関数の総和を最小にしたときの偏差、エンジントルクの時間当たりの変化量、及び補助ブレーキの動作状態の変化の有無に車両100がなるように、エンジントルクを指示する第1制御入力値、変速段を指示する第2制御入力値、及び補助ブレーキの動作状態を指示する第3制御入力値を算出する最適化部222と、算出した第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値に基づいて、車両100の走行を制御する走行制御部223と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する経路の勾配と走行位置との関係を示す勾配関数を取得する取得部と、
前記勾配関数が示す勾配の道路を走行しているときの前記車両の加減速度と目標加減速度との偏差に関する第1評価指数、前記車両のエンジントルクの時間当たりの変化量に関する第2評価指数、及び、前記車両の補助ブレーキの動作状態の変化の有無に関する第3評価指数を含む評価関数の総和を最小又は最大にしたときの前記偏差、前記エンジントルクの時間当たりの変化量、及び、前記補助ブレーキの動作状態の変化の有無に前記車両がなるように、前記車両のエンジントルクを指示する第1制御入力値、前記車両の変速段を指示する第2制御入力値、及び前記車両の補助ブレーキの動作状態を指示する第3制御入力値を算出する最適化部と、
前記最適化部が算出した前記第1制御入力値、前記第2制御入力値及び前記第3制御入力値に基づいて、前記車両の走行を制御する走行制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記最適化部は、前記第1評価指数、前記第2評価指数、前記第3評価指数、及び、前記車両の変速の有無に関する第4評価指数を含む前記評価関数の総和を最小又は最大にしたときの前記第1制御入力値、前記第2制御入力値及び前記第3制御入力値を算出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記最適化部は、前記評価関数を最小又は最大にしたときの前記第2制御入力値及び前記第3制御入力値として整数値を混合整数非線形計画法により算出する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記最適化部は、所定の拘束条件を満たすという条件下で前記評価関数の総和を最小又は最大にしたときの前記第1制御入力値、前記第2制御入力値及び前記第3制御入力値を算出する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行を制御する制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モデルを用いたシミュレーションにより車両を制御する技術が提案されている(例えば、特許文献1)。例えば、特許文献1には、車両を制御する別のコンピュータが指示した離散的なトルクダウン量と車両のトルクダウン量との誤差を小さくすること等を評価指標とした最適化手法を用いたシミュレーション結果に基づいて、車両を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-14086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、車両を自動変速する際に、走行中の車両において補助ブレーキのオンオフが頻繁に切り替えられることがあった。このため、特許文献1に記載の技術では、車両の乗員の乗り心地が良好でないという問題があった。
【0005】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両の自動変速において車両の乗員の乗り心地を改善することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の制御装置は、車両が走行する経路の勾配と走行位置との関係を示す勾配関数を取得する取得部と、前記勾配関数が示す勾配の道路を走行しているときの前記車両の加減速度と目標加減速度との偏差に関する第1評価指数、前記車両のエンジントルクの時間当たりの変化量に関する第2評価指数、及び、前記車両の補助ブレーキの動作状態の変化の有無に関する第3評価指数を含む評価関数の総和を最小又は最大にしたときの前記偏差、前記エンジントルクの時間当たりの変化量、及び、前記補助ブレーキの動作状態の変化の有無に前記車両がなるように、前記車両のエンジントルクを指示する第1制御入力値、前記車両の変速段を指示する第2制御入力値、及び前記車両の補助ブレーキの動作状態を指示する第3制御入力値を算出する最適化部と、前記最適化部が算出した前記第1制御入力値、前記第2制御入力値及び前記第3制御入力値に基づいて、前記車両の走行を制御する走行制御部と、を備える。
【0007】
前記最適化部は、前記第1評価指数、前記第2評価指数、前記第3評価指数、及び、前記車両の変速の有無に関する第4評価指数を含む前記評価関数の総和を最小又は最大にしたときの前記第1制御入力値、前記第2制御入力値及び前記第3制御入力値を算出してもよい。
【0008】
前記最適化部は、前記評価関数を最小又は最大にしたときの前記第2制御入力値及び前記第3制御入力値として整数値を混合整数非線形計画法により算出してもよい。前記最適化部は、所定の拘束条件を満たすという条件下で前記評価関数の総和を最小又は最大にしたときの前記第1制御入力値、前記第2制御入力値及び前記第3制御入力値を算出してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両の自動変速において車両の乗員の乗り心地を改善するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の第1制御装置及び第2制御装置を搭載する車両の概要を示す図である。
図2】車両の構成を示す図である。
図3】制御装置による車速の自動制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[車両の概要]
図1は、本実施形態の第1制御装置1及び第2制御装置2を搭載する車両100の概要を示す図である。図1は、車両100の走行中の様子を示す。車両100に搭載された第1制御装置1及び第2制御装置2を破線で示す。車両100は、例えば、トラック等の商用車である。外部装置200は、車両100との間で通信可能なサーバである。外部装置200は、走行位置と、この走行位置における道路の勾配との関係を示す勾配関数を記憶している。また、外部装置200は、走行位置と、この走行位置における道路の曲率との関係を示す曲率関数を記憶している。
【0012】
第1制御装置1は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)により構成される。第1制御装置1は、外部装置200と無線通信により通信する。第1制御装置1は、車両100が走行する予定の経路を示す経路情報を外部装置200へ送信する。第1制御装置1は、経路情報の送信後、車両100が走行する予定の経路上の走行位置と、この走行位置における道路の勾配との関係を示す勾配関数を外部装置200から取得する。また、第1制御装置1は、経路情報の送信後、車両100が走行する予定の経路上の走行位置と、この走行位置における道路の曲率と、の関係を示す曲率関数を外部装置200から取得する。
【0013】
第1制御装置1は、車両100の走行を制御する。例えば、第1制御装置1は、車両100の走行時の車速の目標値を指定する運転者の操作を受け付ける。第1制御装置1は、受け付けた車速の目標値と、外部装置200から取得した勾配関数と、取得した曲率関数とに基づいて、車両100の前後方向及び横方向の目標加減速度を所定期間ごとに決定する。所定期間は、例えば、第1制御装置1が目標加減速度を算出するのに要する時間に応じて定まる。第1制御装置1は、決定した目標加減速度を示す情報を第2制御装置2に逐次入力する。第1制御装置1は、受け付けた車速の目標値を示す情報を第2制御装置2に入力する。
【0014】
第2制御装置2は、例えば、第1制御装置1とは異なるECUにより構成される。第2制御装置2は、車両100が走行する予定の経路上の走行位置と、この走行位置における道路の勾配との関係を示す勾配関数を第1制御装置1から取得する。また、第2制御装置2は、車両100が走行する予定の経路上の走行位置と、この走行位置における道路の曲率と、の関係を示す曲率関数を第1制御装置1から取得する。
【0015】
また、車両100は、地図ECU(不図示)を別途搭載していてもよい。地図ECUは、車両100が走行する予定の経路の勾配を示す前方勾配情報を地図ECUに内蔵された記憶部から読み出し、読み出した前方勾配情報を勾配関数に変換してもよい。
【0016】
同様にして、地図ECUは、車両100が走行する予定の経路の曲率を示す前方曲率情報を地図ECUに内蔵された記憶部から読み出し、読み出した前方曲率情報を曲率関数に変換してもよい。第2制御装置2は、地図ECUが変換した前方勾配情報から変換した勾配関数と、前方曲率情報から変換した曲率関数とを取得してもよい。
【0017】
第2制御装置2は、車両100が走行する車速を自動制御する。第2制御装置2は、前後方向及び横方向の目標加減速度を第1制御装置1から取得する。第2制御装置2は、車両100の前後方向の加減速度と第1制御装置1から取得した前後方向の目標加減速度との偏差に関する第1評価指数、車両100のエンジントルクの時間当たりの変化量に関する第2評価指数、及び、車両100の補助ブレーキの動作状態の変化の有無に関する第3評価指数を含む評価関数を含む評価関数を記憶部から読み出す。
【0018】
評価関数に含まれるこれらの評価指数は、評価関数を用いて算出される第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を定めるための変数である。第1制御入力値は、車両100のエンジントルクを指示する変数である。第2制御入力値は、車両100の変速段を指示する変数である。第3制御入力値は、車両100の補助ブレーキの動作状態を指示する変数である。補助ブレーキは、例えば、燃料噴射装置5がシリンダ内へ燃料を噴射することを停止させるエンジンブレーキ、バルブの開閉タイミングを操作することで動作させる圧縮開放ブレーキ、及び、トランスミッションの出力側に取り付けられている永久磁石式リターダである。
【0019】
一例としては、第3制御入力値は、車両100に搭載されたエンジンブレーキ、圧縮開放ブレーキ及び永久磁石式リターダの各補助ブレーキのうち、動作している補助ブレーキの数を示す。例えば、エンジンブレーキ及び圧縮開放ブレーキが動作中であり、永久磁石式リターダが動作していない場合には、第3制御入力値は2である。一方、エンジンブレーキ、圧縮開放ブレーキ及び永久磁石式リターダがいずれも動作している場合には、第3制御入力値は3である。
【0020】
第2制御装置2は、車両100の加減速度と第1制御装置1から取得した目標加減速度との偏差に関する第1評価指数、車両100のエンジントルクの時間当たりの変化量に関する第2評価指数、及び、車両100の補助ブレーキの動作状態の変化の有無に関する第3評価指数を変数として含む評価関数を最小にする第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値をそれぞれ算出する。
【0021】
第2評価指数に対応するエンジントルクの時間当たりの変化量は、第1制御入力値に基づいて定まる。第3評価指数に対応する車両100の補助ブレーキの動作状態の変化の有無は、第3制御入力値に基づいて定まる。一方、第1評価指数に対応する加減速度は、上述する第1制御入力値と、第2制御入力値と、第3制御入力値とのみから定まるものではなく、車両100が走行する道路の勾配に応じて変化する。第2制御装置2は、勾配関数に基づいて、車両100の走行位置における道路の勾配を特定する。第2制御装置2は、特定した勾配の道路を車両100が走行しているという条件において、第1評価指数を含む評価関数の総和を最小にする第1制御入力値等を算出する。
【0022】
このようにして、第2制御装置2は、第1制御装置1が決定した目標加減速度への追従性を向上させる第1制御入力値等を算出することができる。第2制御装置2は、車両100の前後方向加減速度の時間当たりの変化量である躍度を低減させ、且つ、車両100の補助ブレーキの動作状態をなるべく変化させないように第1制御入力値等を算出することにより、車両100の乗員の乗り心地を改善することができる。
【0023】
[車両の構成]
図2は、車両100の構成を示す図である。車両100は、第1制御装置1、第2制御装置2、タッチパネル3、通信部4及び燃料噴射装置5を備える。第2制御装置2は、記憶部21及び制御部22を備える。
【0024】
タッチパネル3は、ディスプレイ(不図示)に重畳して形成されたタッチセンサによりユーザの操作を検出する。通信部4は、外部装置200と通信するための通信モジュールである。燃料噴射装置5は、車両100のエンジンのシリンダ内へ燃料を噴射する。
【0025】
第1制御装置1は、通信部4を介して、外部装置200と無線通信により通信する。第1制御装置1は、タッチパネル3を介して、ユーザの操作を受け付ける。
【0026】
記憶部21は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部21は、制御部22を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。制御部22は、記憶部21に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部221、最適化部222及び走行制御部223として機能する。
【0027】
取得部221は、車両100が走行する経路の勾配と走行位置との関係を示す勾配関数を取得する。例えば、取得部221は、勾配関数を第1制御装置1から取得する。このとき、取得部221は、勾配関数に加えて、車両100が走行する経路の曲率と走行位置との関係を示す曲率関数とを第1制御装置1から取得する。取得部221は、勾配関数及び曲率関数を外部装置200から取得してもよい。
【0028】
また、車両100に別途搭載された地図ECUが、車両100が走行する予定の経路の勾配を示す前方勾配情報と、車両100が走行する予定の経路の曲率を示す前方曲率情報とを地図ECUに内蔵された記憶部から取得してもよい。地図ECUは、取得した前方勾配情報が示す道路の勾配と、走行位置との関係を近似する勾配関数を生成する。例えば、地図ECUは、道路の勾配と、走行位置との関係を多項式近似する勾配関数を生成する。地図ECUは、取得した前方曲率情報が示す道路の曲率と、走行位置との関係を近似する曲率関数を生成する。取得部221は、地図ECUが生成した勾配関数及び曲率関数を取得してもよい。
【0029】
取得部221は、第1制御装置1が決定した目標加減速度を第1制御装置1から取得する。取得部221は、第1制御装置1が前後方向の目標加減速度を決定する度に、この目標加減速度を取得する。取得部221は、車速の目標値を第1制御装置1から取得する。取得部221は、取得した勾配関数、曲率関数、前後方向の目標加減速度、及び車速の目標値を最適化部222へ通知する。
【0030】
[評価関数の最適化]
最適化部222は、勾配関数が示す勾配の道路を走行しているときの車両100の加減速度と目標加減速度との偏差、車両100のエンジントルクの時間当たりの変化量、及び、車両100の補助ブレーキの動作状態の変化の有無が、複数の評価指数を含む評価関数を最小にしたときの加減速度と目標加減速度との偏差、エンジントルクの時間当たりの変化量、及び、補助ブレーキの動作状態の変化の有無になるように、第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出する。このとき、最適化部222は、後述する所定の拘束条件を満たすという条件下で複数の評価指数を変数として含む評価関数の総和を最小にしたときの第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出する。評価関数Lは、例えば、以下の式(1)で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
式(1)中、第1項は、勾配関数が示す勾配の道路を走行しているときの車両100の加減速度と、取得部221が取得した目標加減速度との偏差に関する第1評価指数を示す。車両100の前後方向の加減速度と、前後方向の目標加減速度との偏差が大きくなるほど、第1指数は大きくなる。第2項は、エンジントルクの時間当たりの変化量に関する第2評価指数を示す。エンジントルクの時間当たりの変化量が大きくなるほど、第2評価指数は大きくなる。
【0033】
第3項は、車両100の補助ブレーキの動作状態の変化の有無に関する第3評価指数を示す。車両100に搭載された補助ブレーキのうち、オンオフの動作状態を変化させる補助ブレーキの数が多くなるほど、第3評価指数は大きくなる。補助ブレーキは、オンとオフとの2段階で制御されるため、補助ブレーキの動作時には比較的強い制動力が一気に発生する。このため、補助ブレーキのオンオフの動作状態を頻繁に変化させると、車両100の乗員の乗り心地を損なう可能性がある。最適化部222は、補助ブレーキの動作状態をなるべく変化させないように評価関数Lを最適化することにより、車両100の乗員の乗り心地を改善することができる。
【0034】
式(1)に示す評価関数Lには、車両100のメインブレーキを動作させるか否かを示す変数は含まれていないが、本明細書の例では、第2制御装置2は、補助ブレーキをメインブレーキよりも優先して動作させるものとする。このため、最適化部222は、車両100に搭載された全ての補助ブレーキをオンにした後にのみ、メインブレーキを動作させるという条件において評価関数を最適化するものとする。
【0035】
本明細書の例では、評価関数は、第1評価指数、第2評価指数及び第3評価指数に加えて、車両100のギヤ段の変速の有無に関する第4評価指数を変数として含む。第4評価指数は、車両100のギヤ段を変速した場合に、車両100のギヤ段を変速しない場合よりも大きくなる。最適化部222は、車両100をなるべく変速させないように評価関数Lを最適化することにより、車両100の乗員の乗り心地を改善することができる。
【0036】
定数W、定数W、定数W、定数W及び定数Wは、それぞれの評価指数に対する重みを示す重み係数である。最適化部222は、重み係数が大きいほど、この重み係数が割り当てられた評価指数を優先した第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出する。
【0037】
例えば、最適化部222は、第1項の重み係数Wが他の重み係数WからWに比べて大きい場合、エンジントルクの時間当たりの変化量を小さくすることや、車両100の補助ブレーキの動作状態をなるべく変化させないことに比べて、車両100の加減速度と目標加減速度との偏差を小さくすることを優先した第1制御入力値から第3制御入力値を算出する。このようにして、最適化部222は、評価関数Lの総和を最小にすることにより、複数の評価指数に割り当てられた重み係数に応じたバランスでそれぞれの評価指数をなるべく小さくするように第1制御入力値から第3制御入力値を算出することができる。
【0038】
式(1)中の変数Accdevは、前後方向の加減速度と、前後方向の目標加減速度との偏差である。最適化部222は、車両100のエンジントルクを指示する第1制御入力値と、車両の変速段を指示する第2制御入力値と、車両の補助ブレーキの動作状態を指示する第3制御入力値とがいずれかの値であると仮定し、取得部221が取得した勾配関数が示す路面の勾配を走行する車両100の前後方向の加減速度及び車速を算出する。最適化部222は、算出した前後方向の加減速度と、取得部221が取得した前後方向の目標加減速度との偏差Accdevを算出する。偏差Accdevは、式(1)の第1評価指数に対応するものである。
【0039】
最適化部222は、車両100のエンジントルクを指示する第1制御入力値と、この第1制御入力値の一つ前の計算時に算出した第1制御入力値との差に基づいて、エンジントルク時間当たりの変化を示す変数EngTrqDiffを算出する。エンジントルク時間当たりの変化を示す変数EngTrqDiffは、式(1)の第2評価指数に対応するものである。式(1)において車両100の補助ブレーキの動作状態の変化の有無に関する第3評価指数に対応する変数uchangeは、補助ブレーキの動作状態を示す第3制御入力値が変化したときに1を示し、第3制御入力値が変化していないときに0を示す。式(1)において車両100の変速の有無に関する第4評価指数に対応する変数Gearchangeは、車両の変速段を指示する第2制御入力値が変化したときに1を示し、この第2制御入力値が変化していないときに0を示す。
【0040】
以上のように、最適化部222は、第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値がいずれかの値であると仮定することにより、式(1)の変数Accdev、変数EngTrqDiff、変数uchange、変数Gearchangeをそれぞれ算出するので、評価関数Lを算出することが可能である。
【0041】
評価関数Lは、第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値により決定される関数であるということができる。このため、最適化部222は、数理最適化手法を用いて、評価関数Lの総和を最小にしたときの第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出することができる。
【0042】
最適化部222は、評価関数を最小にするときの第2制御入力値及び第3制御入力値として整数値を算出する。整数値を含む制御入力値を算出するための数理最適化手法としては、例えば、混合整数非線形計画法等の公知の手法を用いることができる。最適化部222は、混合整数非線形計画法において例えば、分枝限定法を適用して命題を複数の部分問題に分解し、これらの部分問題をそれぞれ求解することにより、評価関数Lの総和を最小にする第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出することができる。
【0043】
評価関数の総和を最小にしたときとは、一例としては、評価関数の総和が極値又は最小値であるときである。最適化部222は、評価関数を最小にしたときの第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出する例に限定されず、評価関数を最大にしたときの第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出してもよい。例えば、最適化部222は、評価関数がLの逆数L’=1/Lである場合には、評価関数L’を最大にしたときの第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出してもよい。
【0044】
[車速と目標値との偏差に関する拘束条件]
本明細書の例では、最適化部222は、車速v(t)と、取得部221が取得した車速の目標値vとの偏差に関する拘束条件を満たすように評価関数Lの総和を最小にする第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出する。車速v(t)と車速の目標値との偏差に関する拘束条件は、以下の不等式(2)で表される。
【0045】
【数2】
式(2)中、定数Vmaxは、車速v(t)が目標値vより大きい場合に、車速v(t)と車速の目標値vとの偏差の絶対値として許容される最大値である。定数Vminは、車速v(t)が車速の目標値vより小さい場合に、車速v(t)と車速の目標値vとの偏差の絶対値として許容される最大値である。
【0046】
走行制御部223は、最適化部222が算出した第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値に基づいて、車両100の走行を制御する。例えば、走行制御部223は、最適化部222が算出した第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値に対応する燃料噴射量の燃料をエンジンのシリンダ内へ噴射することを燃料噴射装置5に指示する。
【0047】
[制御装置による車速の自動制御の処理手順]
図3は、第1制御装置1による車速の自動制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両100が走行する予定の経路上の車両の走行位置と、この走行位置における勾配との関係を示す勾配関数を第1制御装置1が外部装置200から取得したときに開始する。
【0048】
取得部221は、経路情報が示す経路上の車両の走行位置と、この走行位置における勾配との関係を示す勾配関数を第1制御装置1から取得する(S101)。取得部221は、目標加減速度を第1制御装置1から取得する(S102)。
【0049】
最適化部222は、複数の評価指数を含む評価関数を最小にしたときの加減速度と目標加減速度との偏差、エンジントルクの時間当たりの変化量、及び、補助ブレーキの動作状態の変化の有無に車両100がなるように、第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値を算出する(S103)。
【0050】
最適化部222は、算出した第1制御入力値、第2制御入力値及び第3制御入力値に対応する車速を算出する。最適化部222は、算出した車速と目標値との偏差に関する拘束条件が満たされるか否かを判定する(S104)。走行制御部223は、S104の判定において拘束条件が満たされると最適化部222が判定した場合に(S104のYES)、最適化部222が算出した第1制御入力値等に対応する分量の燃料をエンジンのシリンダ内へ噴射することを燃料噴射装置5に指示し(S105)、処理を終了する。最適化部222は、S104の判定において拘束条件を満たされないと判定した場合(S105のNO)に、S103の処理に戻り、拘束条件を満たすように第1制御入力値等を再度算出する。
【0051】
[本実施形態の制御装置による効果]
本実施形態によれば、最適化部222は、第1制御装置1が決定した目標加減速度への追従性を向上させる第2制御入力値等を算出することができる。最適化部222は、車両100の前後方向加減速度の時間当たりの変化量である躍度を低減させ、且つ、車両100の補助ブレーキの動作状態をなるべく変化させないように第1制御入力値等を算出することにより、車両100の乗員の乗り心地を改善することができる。
【0052】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0053】
1 第1制御装置
2 第2制御装置
3 タッチパネル
4 通信部
5 燃料噴射装置
21 記憶部
22 制御部
100 車両
200 外部装置
221 取得部
222 最適化部
223 走行制御部
図1
図2
図3