(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149667
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】動作停止制御装置、鞍乗型車両用電装システムおよびスイッチ判別方法
(51)【国際特許分類】
F02N 11/08 20060101AFI20220929BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220929BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
F02N11/08 L
B60R16/02 645A
F02N11/08 X
F02D45/00 345
F02D45/00 376
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051926
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】木下 晋宏
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA27
3G384BA39
3G384CA23
3G384DA33
(57)【要約】
【課題】イグニッションスイッチおよびキルスイッチが制御装置の共通の端子に直列に接続されている場合であっても、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別し、イグニッションスイッチがオンの状態でキルスイッチがオフになったときには制御装置の動作を停止させないようにする。
【解決手段】鞍乗型車両用電装システム1における動作停止制御装置9は、制御装置3の通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されているか否かを判断する通常電源電圧判断部10と、電気機器4から状態信号が出力されているか否かを判断する状態信号判断部11と、制御装置3の動作を終了させる動作終了処理を行う動作終了処理部12とを備え、動作終了処理部12は、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつ電気機器4から状態信号が出力されている場合には動作終了処理を行わない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常電源電圧および常時電源電圧を出力する電源装置と、
前記通常電源電圧が供給される通常電源端子および前記常時電源電圧が供給される常時電源端子を有し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されていない間には前記常時電源電圧を用いて動作することができる制御装置と、
前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源電圧が供給されていない間には停止し、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧が供給されている状態であることを示す状態信号を前記制御装置に出力する電気機器と、
前記電源装置にそれぞれ並列に接続された第1の経路および第2の経路を有し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第1の経路を介して前記制御装置の前記通常電源端子に供給し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第2の経路を介して前記電気機器に供給する通常電源電圧供給回路と、
前記電源装置に接続され、前記電源装置から出力された前記常時電源電圧を前記制御装置の前記常時電源端子に供給する常時電源電圧供給回路と、
前記電源装置と前記通常電源電圧供給回路との間に設けられ、前記電源装置から前記通常電源電圧供給回路への前記通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるイグニッションスイッチと、
前記第1の経路に設けられ、非常時に鞍乗型車両のエンジンを停止させるために、前記第1の経路を切断することによって前記電源装置から前記制御装置の前記通常電源端子への前記通常電源電圧の供給をオフにするキルスイッチとを備えた鞍乗型車両用電装システムにおける前記制御装置に設けられ、前記制御装置の動作を停止させる動作停止制御装置であって、
前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されているか否かを判断する通常電源電圧判断部と、
前記電気機器から前記状態信号が出力されているか否かを判断する状態信号判断部と、
前記制御装置の動作を終了させる動作終了処理を行う動作終了処理部とを備え、
前記動作終了処理部は、前記通常電源電圧判断部および前記状態信号判断部による判断結果に基づき、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されていない場合には前記動作終了処理を行い、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されている場合には前記動作終了処理を行わないことを特徴とする動作停止制御装置。
【請求項2】
前記鞍乗型車両は2個以上の前記電気機器を備え、
前記状態信号判断部は、前記2個以上の電気機器のうち少なくとも1個の電気機器から前記状態信号が出力されているか否かを判断し、
前記動作終了処理部は、前記通常電源電圧判断部および前記状態信号判断部による判断結果に基づき、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記2個以上の電気機器のいずれからも前記状態信号が出力されていない場合には前記動作終了処理を行い、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記2個以上の電気機器のうち少なくとも1個の電気機器から前記状態信号が出力されている場合には前記動作終了処理を行わないことを特徴とする請求項1に記載の動作停止制御装置。
【請求項3】
前記動作終了処理部は、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されていないと前記通常電源電圧判断部により判断され、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されていると前記状態信号判断部により判断された時点から所定時間経過後に前記動作終了処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の動作停止制御装置。
【請求項4】
通常電源電圧および常時電源電圧を出力する電源装置と、
前記通常電源電圧が供給される通常電源端子および前記常時電源電圧が供給される常時電源端子を有し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されていない間には前記常時電源電圧を用いて動作することができる制御装置と、
前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源電圧が供給されていない間には停止し、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧が供給されている状態であることを示す状態信号を前記制御装置に出力する電気機器と、
前記電源装置にそれぞれ並列に接続された第1の経路および第2の経路を有し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第1の経路を介して前記制御装置の前記通常電源端子に供給し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第2の経路を介して前記電気機器に供給する通常電源電圧供給回路と、
前記電源装置に接続され、前記電源装置から出力された前記常時電源電圧を前記制御装置の前記常時電源端子に供給する常時電源電圧供給回路と、
前記電源装置と前記通常電源電圧供給回路との間に設けられ、前記電源装置から前記通常電源電圧供給回路への前記通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるイグニッションスイッチと、
前記第1の経路に設けられ、非常時に鞍乗型車両のエンジンを停止させるために、前記第1の経路を切断することによって前記電源装置から前記制御装置の前記通常電源端子への前記通常電源電圧の供給をオフにするキルスイッチとを備えた鞍乗型車両用電装システムであって、
前記制御装置は、
前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されているか否かを判断する通常電源電圧判断部と、
前記電気機器から前記状態信号が出力されているか否かを判断する状態信号判断部と、
前記制御装置の動作を終了させる動作終了処理を行う動作終了処理部とを備え、
前記動作終了処理部は、前記通常電源電圧判断部および前記状態信号判断部による判断結果に基づき、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されていない場合には前記動作終了処理を行い、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されている場合には前記動作終了処理を行わないことを特徴とする鞍乗型車両用電装システム。
【請求項5】
通常電源電圧および常時電源電圧を出力する電源装置と、
前記通常電源電圧が供給される通常電源端子および前記常時電源電圧が供給される常時電源端子を有し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されていない間には前記常時電源電圧を用いて動作することができる制御装置と、
前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源電圧が供給されていない間には停止し、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧が供給されている状態であることを示す状態信号を前記制御装置に出力する電気機器と、
前記電源装置にそれぞれ並列に接続された第1の経路および第2の経路を有し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第1の経路を介して前記制御装置の前記通常電源端子に供給し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第2の経路を介して前記電気機器に供給する通常電源電圧供給回路と、
前記電源装置に接続され、前記電源装置から出力された前記常時電源電圧を前記制御装置の前記常時電源端子に供給する常時電源電圧供給回路と、
前記電源装置と前記通常電源電圧供給回路との間に設けられ、前記電源装置から前記通常電源電圧供給回路への前記通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるイグニッションスイッチと、
前記第1の経路に設けられ、非常時に鞍乗型車両のエンジンを停止させるために、前記第1の経路を切断することによって前記電源装置から前記制御装置の前記通常電源端子への前記通常電源電圧の供給をオフにするキルスイッチとを備えた鞍乗型車両用電装システムにおいて、前記イグニッションスイッチのオフと前記キルスイッチのオフとを判別するスイッチ判別方法であって、
前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されているか否かを判断する通常電源電圧判断工程と、
前記電気機器から前記状態信号が出力されているか否かを判断する状態信号判断工程とを備え、
前記通常電源電圧判断工程および前記状態信号判断工程における判断結果に基づき、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されていない場合には前記イグニッションスイッチがオフになったと判断し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されている場合には前記イグニッションスイッチがオンの状態で前記キルスイッチがオフになったと判断することを特徴とするスイッチ判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に係る制御を行う制御装置の動作を停止させる機能を有する動作停止制御装置および鞍乗型車両用電装システム、並びにイグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別するスイッチ判別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両には、鞍乗型車両に係る制御を行う制御装置としてECM(エンジンコントロールモジュールまたはエレクトロニックコントロールモジュール)が設けられている。また、ECMは通常電源端子および常時電源端子を有している。通常電源端子にはバッテリから通常電源電圧が供給される。常時電源端子にはバッテリから常時電源電圧が供給される。
【0003】
また、鞍乗型車両にはイグニッションスイッチが設けられている。イグニッションスイッチは、バッテリからECMへの通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるスイッチである。通常電源電圧はECMに、イグニッションスイッチがオンのときに供給され、イグニッションスイッチがオフのときには供給されない。一方、常時電源電圧はECMに常時供給される。
【0004】
ECMは、イグニッションスイッチがオンのときに、通常電源電圧を用いて動作する。また、ECMは、イグニッションスイッチがオフのときには、常時電源電圧を用いて動作することができる。例えば、ECMは、イグニッションスイッチがオフになった後に、常時電源電圧を用いて、エンジンを停止させる処理、およびECM自身の動作を終了させる動作終了処理を行うことができる。
【0005】
また、鞍乗型車両にはキルスイッチが設けられている。キルスイッチは、非常時にエンジンを停止させるためのスイッチである。鞍乗型車両の利用者(例えば操縦者)は、エンジンが稼働している間にキルスイッチを操作することにより、エンジンを停止させることができる。一般に、バッテリとECMとを接続する経路にキルスイッチが設けられている。エンジンが稼働している間はキルスイッチがオンになっており、オン状態のキルスイッチを介してバッテリからECMに電圧が供給されている。そして、キルスイッチがオフになったとき、バッテリとECMとを接続する経路が、オフになったキルスイッチによって切断され、バッテリからECMへの電圧の供給が停止し、それに応じて、ECMがエンジンを停止させる。なお、エンジンが稼働している間にはキルスイッチがオフになっており、エンジンを停止させるときにキルスイッチをオンにするというのが利用者の一般的な感覚であるが、キルスイッチの電気的な動作(キルスイッチの接点の状態)においては、キルスイッチのオンとオフとが利用者の一般的な感覚とは逆であるので注意されたい。
【0006】
イグニッションスイッチおよびキルスイッチのECMへの接続構成には次の2種類の構成がある。第1の接続構成は、バッテリとECMの通常電源端子との間にイグニッションスイッチおよびキルスイッチが直列に接続されている構成である。この第1の接続構成においては、キルスイッチがオンの状態でイグニッションスイッチがオンになったときに、バッテリからECMの通常電源端子に通常電源電圧が供給される。ECMは、通常電源端子に通常電源電圧が供給されたときに動作を開始する。また、第1の接続構成においては、イグニッションスイッチおよびキルスイッチのいずれかがオフになったときに、バッテリからECMの通常電源端子に通常電源電圧が供給されなくなる。従来のECMは、通常電源端子に通常電源電圧が供給されなくなったとき、エンジンが稼働している場合にはエンジンを停止させ、続いて、上記動作終了処理を行う。動作終了処理の終了後、ECMは停止する。
【0007】
第2の接続構成は、バッテリとECMの通常電源端子との間にイグニッションスイッチが接続されており、キルスイッチは、通常電源端子とは別の端子、例えばキルスイッチのオン、オフを認識するための専用の端子に接続されている構成である。この第2の接続構成においては、キルスイッチのオン、オフに拘わらず、イグニッションスイッチがオンになったときにバッテリからECMの通常電源端子に通常電源電圧が供給され、ECMが動作を開始する。また、第2の接続構成においては、キルスイッチのオン、オフに拘わらず、イグニッションスイッチがオフになったときにバッテリからECMの電源端子に電源電圧が供給されなくなる。ECMは、通常電源端子に通常電源電圧が供給されなくなったとき、エンジンが稼働している場合にはエンジンを停止させ、続いて、上記動作終了処理を行った後、停止する。また、第2の接続構成において、ECMは、キルスイッチのオン、オフを認識する機能を有している。ECMは、キルスイッチがオフになったことを認識したときエンジンを停止させる。また、ECMは、キルスイッチがオフである間は、利用者によりエンジンを始動させる操作が行われた場合でもエンジンが停止した状態を維持するようにする。
【0008】
一方、ECMには、故障診断機能(OBD:オン・ボード・ダイアグノーシス)が設けられており、この故障診断機能には、ECMが故障の診断を自ら行う自己診断機能が含まれている。また、この自己診断機能には、鞍乗型車両の走行回数および自己診断の実行回数をそれぞれカウントして記録する機能が含まれている。上記自己診断機能は、ECMの動作開始またはECMの停止の回数を走行回数としてカウントする。走行回数および自己診断実行回数を用いて、故障診断率(走行回数と自己診断実行回数との比率)を算出することができる。故障診断率は車両の安全性の評価に用いることができる。
【0009】
下記の特許文献1には、キルスイッチのオン、オフを検出するキルスイッチ状態検出手段を備えた内燃機関の異常検出装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、第1の接続構成を有するECMにおいては、イグニッションスイッチとキルスイッチとがECMの1つの端子(通常電源端子)に直列に接続されている構造上、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別することが難しい。第1の接続構成を有する従来のECMは、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別しておらず、イグニッションスイッチがオフになったときでも、キルスイッチがオフになったときでも停止するように構成されている。この第1の接続構成を有する従来のECMは、イグニッションスイッチのオフによるだけでなく、キルスイッチのオフによっても停止するので、上記自己診断機能において、キルスイッチのオフが走行回数としてカウントされる。その結果、以下の問題が生じる。
【0012】
第2の接続構成を有するECMにおいては、イグニッションスイッチおよびキルスイッチがそれぞれECMの異なる端子に接続されているので、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別することが容易である。第2の接続構成を有するECMは、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別し、イグニッションスイッチがオフになったときには停止し、キルスイッチがオフになったときには、自身は停止せずにエンジンを停止させる制御を行うように構成されているものが多い。このような構成を有するECMはキルスイッチのオフにより停止しないので、上記自己診断機能において、キルスイッチのオフが走行回数としてカウントされない。その結果、第1の接続構成を有する従来のECMにおける走行回数のカウント値が、キルスイッチのオフにより停止しない第2の接続構成を有するECMにおける走行回数のカウント値よりも、キルスイッチのオフの回数分、大きくなる。それゆえ、利用者がキルスイッチをオフにする操作を行うことによって、第1の接続構成を有する従来のECMと、キルスイッチのオフにより停止しない第2の接続構成を有するECMとの間において、走行回数のカウント値に相違が生じ、その結果、故障診断率に相違が生じる。これは、利用者によるキルスイッチのオフ操作によって、接続構成の異なる2つのECM間に故障診断率のばらつきが生じることを意味する。このような故障診断率のばらつきは、故障診断率を用いた鞍乗型車両の安全性評価の正確性または信頼性を低下させるおそれがあり、好ましくない。
【0013】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、イグニッションスイッチおよびキルスイッチが制御装置の共通の端子に直列に接続されている場合であっても、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別することができ、イグニッションスイッチがオンの状態でキルスイッチがオフになったときには制御装置の動作を停止させないようにすることができる動作停止制御装置および鞍乗型車両用電装システムを提供することにある。
【0014】
本発明の第2の課題は、イグニッションスイッチおよびキルスイッチが制御装置の共通の端子に直列に接続されている場合であっても、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別することができるスイッチ判別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記第1の課題を解決するために、本発明の動作停止制御装置は、通常電源電圧および常時電源電圧を出力する電源装置と、前記通常電源電圧が供給される通常電源端子および前記常時電源電圧が供給される常時電源端子を有し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されていない間には前記常時電源電圧を用いて動作することができる制御装置と、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源電圧が供給されていない間には停止し、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧が供給されている状態であることを示す状態信号を前記制御装置に出力する電気機器と、前記電源装置にそれぞれ並列に接続された第1の経路および第2の経路を有し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第1の経路を介して前記制御装置の前記通常電源端子に供給し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第2の経路を介して前記電気機器に供給する通常電源電圧供給回路と、前記電源装置に接続され、前記電源装置から出力された前記常時電源電圧を前記制御装置の前記常時電源端子に供給する常時電源電圧供給回路と、前記電源装置と前記通常電源電圧供給回路との間に設けられ、前記電源装置から前記通常電源電圧供給回路への前記通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるイグニッションスイッチと、前記第1の経路に設けられ、非常時に鞍乗型車両のエンジンを停止させるために、前記第1の経路を切断することによって前記電源装置から前記制御装置の前記通常電源端子への前記通常電源電圧の供給をオフにするキルスイッチとを備えた鞍乗型車両用電装システムにおける前記制御装置に設けられ、前記制御装置の動作を停止させる動作停止制御装置であって、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されているか否かを判断する通常電源電圧判断部と、前記電気機器から前記状態信号が出力されているか否かを判断する状態信号判断部と、前記制御装置の動作を終了させる動作終了処理を行う動作終了処理部とを備え、前記動作終了処理部は、前記通常電源電圧判断部および前記状態信号判断部による判断結果に基づき、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されていない場合には前記動作終了処理を行い、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されている場合には前記動作終了処理を行わないことを特徴とする。
【0016】
上記第1の課題を解決するために、本発明の鞍乗型車両用電装システムは、通常電源電圧および常時電源電圧を出力する電源装置と、前記通常電源電圧が供給される通常電源端子および前記常時電源電圧が供給される常時電源端子を有し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されていない間には前記常時電源電圧を用いて動作することができる制御装置と、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源電圧が供給されていない間には停止し、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧が供給されている状態であることを示す状態信号を前記制御装置に出力する電気機器と、前記電源装置にそれぞれ並列に接続された第1の経路および第2の経路を有し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第1の経路を介して前記制御装置の前記通常電源端子に供給し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第2の経路を介して前記電気機器に供給する通常電源電圧供給回路と、前記電源装置に接続され、前記電源装置から出力された前記常時電源電圧を前記制御装置の前記常時電源端子に供給する常時電源電圧供給回路と、前記電源装置と前記通常電源電圧供給回路との間に設けられ、前記電源装置から前記通常電源電圧供給回路への前記通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるイグニッションスイッチと、前記第1の経路に設けられ、非常時に鞍乗型車両のエンジンを停止させるために、前記第1の経路を切断することによって前記電源装置から前記制御装置の前記通常電源端子への前記通常電源電圧の供給をオフにするキルスイッチとを備えた鞍乗型車両用電装システムであって、前記制御装置は、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されているか否かを判断する通常電源電圧判断部と、前記電気機器から前記状態信号が出力されているか否かを判断する状態信号判断部と、前記制御装置の動作を終了させる動作終了処理を行う動作終了処理部とを備え、前記動作終了処理部は、前記通常電源電圧判断部および前記状態信号判断部による判断結果に基づき、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されていない場合には前記動作終了処理を行い、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されている場合には前記動作終了処理を行わないことを特徴とする。
【0017】
上記第2の課題を解決するために、本発明のスイッチ判別方法は、通常電源電圧および常時電源電圧を出力する電源装置と、前記通常電源電圧が供給される通常電源端子および前記常時電源電圧が供給される常時電源端子を有し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されていない間には前記常時電源電圧を用いて動作することができる制御装置と、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧を用いて動作し、前記通常電源電圧が供給されていない間には停止し、前記通常電源電圧が供給されている間には前記通常電源電圧が供給されている状態であることを示す状態信号を前記制御装置に出力する電気機器と、前記電源装置にそれぞれ並列に接続された第1の経路および第2の経路を有し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第1の経路を介して前記制御装置の前記通常電源端子に供給し、前記電源装置から出力された前記通常電源電圧を前記第2の経路を介して前記電気機器に供給する通常電源電圧供給回路と、前記電源装置に接続され、前記電源装置から出力された前記常時電源電圧を前記制御装置の前記常時電源端子に供給する常時電源電圧供給回路と、前記電源装置と前記通常電源電圧供給回路との間に設けられ、前記電源装置から前記通常電源電圧供給回路への前記通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるイグニッションスイッチと、前記第1の経路に設けられ、非常時に鞍乗型車両のエンジンを停止させるために、前記第1の経路を切断することによって前記電源装置から前記制御装置の前記通常電源端子への前記通常電源電圧の供給をオフにするキルスイッチとを備えた鞍乗型車両用電装システムにおいて、前記イグニッションスイッチのオフと前記キルスイッチのオフとを判別するスイッチ判別方法であって、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されているか否かを判断する通常電源電圧判断工程と、前記電気機器から前記状態信号が出力されているか否かを判断する状態信号判断工程とを備え、前記通常電源電圧判断工程および前記状態信号判断工程における判断結果に基づき、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されていない場合には前記イグニッションスイッチがオフになったと判断し、前記通常電源端子に前記通常電源電圧が供給されておらず、かつ前記電気機器から前記状態信号が出力されている場合には前記イグニッションスイッチがオンの状態で前記キルスイッチがオフになったと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の動作停止制御装置および鞍乗型車両用電装システムによれば、イグニッションスイッチおよびキルスイッチが制御装置の共通の端子に直列に接続されている場合であっても、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別し、イグニッションスイッチがオンの状態でキルスイッチがオフになったときには制御装置の動作を停止させないようにすることができる。また、本発明のスイッチ判別方法によれば、イグニッションスイッチおよびキルスイッチが制御装置の共通の端子に直列に接続されている場合であっても、イグニッションスイッチのオフとキルスイッチのオフとを判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の動作停止制御装置を含む本発明の実施形態の鞍乗型車両用電装システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施例の動作停止制御装置を含む本発明の実施例の鞍乗型車両用電装システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】イグニッションスイッチおよびキルスイッチ等を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施例の動作停止制御装置における動作停止制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施形態の動作停止制御装置9を含む本発明の実施形態の鞍乗型車両用電装システム1の構成を示している。鞍乗型車両用電装システム1は鞍乗型車両に設けられている。鞍乗型車両用電装システム1は、
図1に示すように、電源装置2、制御装置3、電気機器4、通常電源電圧供給回路5、常時電源電圧供給回路6、イグニッションスイッチ7およびキルスイッチ8を備えている。また、制御装置3には動作停止制御装置9が設けられている。
【0021】
電源装置2は通常電源電圧および常時電源電圧を出力する。
【0022】
制御装置3は鞍乗型車両に係る制御を行う装置である。制御装置3は、通常電源電圧が供給される通常電源端子3A、および常時電源電圧が供給される常時電源端子3Bを有している。また、制御装置3は、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されている間には通常電源電圧を用いて動作し、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されていない間には常時電源電圧を用いて動作することができる。
【0023】
電気機器4には通常電源電圧が供給される。電気機器4は、通常電源電圧が供給されている間には、通常電源電圧を用いて動作し、通常電源電圧が供給されていない間には停止する。また、電気機器4は、通常電源電圧が供給されている間、通常電源電圧が供給されている状態であることを示す状態信号を制御装置3に出力する。
【0024】
通常電源電圧供給回路5は、電源装置2にそれぞれ並列に接続された第1の経路5Aおよび第2の経路5Bを有し、電源装置2から出力された通常電源電圧を第1の経路5Aを介して制御装置3の通常電源端子3Aに供給し、電源装置2から出力された通常電源電圧を第2の経路5Bを介して電気機器4に供給する回路である。
【0025】
常時電源電圧供給回路6は、電源装置2に接続され、電源装置2から出力された常時電源電圧を制御装置3の常時電源端子3Bに供給する回路である。
【0026】
イグニッションスイッチ7は、電源装置2と通常電源電圧供給回路5との間に設けられ、電源装置2から通常電源電圧供給回路5への通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるスイッチである。
【0027】
キルスイッチ8は、第1の経路5Aに設けられ、非常時に鞍乗型車両のエンジンを停止させるために、第1の経路5Aを切断することによって電源装置2から制御装置3の通常電源端子3Aへの通常電源電圧の供給をオフにするスイッチである。
【0028】
動作停止制御装置9は、イグニッションスイッチ7がオフになった場合に制御装置3を停止させる装置である。動作停止制御装置9は、通常電源電圧判断部10、状態信号判断部11および動作終了処理部12を備えている。通常電源電圧判断部10は、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されているか否かを判断する。状態信号判断部11は、電気機器4から状態信号が出力されているか否かを判断する。動作終了処理部12は、通常電源電圧判断部10および状態信号判断部11による判断結果に基づき、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつ電気機器4から状態信号が出力されていない場合には動作終了処理を行い、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつ電気機器4から状態信号が出力されている場合には動作終了処理を行わない。動作終了処理とは、制御装置3の動作を終了させる処理である。
【0029】
このような構成を有する本実施形態の鞍乗型車両用電装システム1において、キルスイッチ8がオンの状態で、鞍乗型車両の利用者がイグニッションスイッチ7をオフからオンにすると、電源装置2から出力された通常電源電圧が、通常電源電圧供給回路5の第1の経路5Aを介して、制御装置3の通常電源端子3Aに供給される。通常電源電圧が通常電源端子3Aに供給されたとき、制御装置3は、通常電源電圧を用いて動作を開始する。これと同時に、電源装置2から出力された通常電源電圧が、通常電源電圧供給回路5の第2の経路5Bを介して、電気機器4に供給される。通常電源電圧が電気機器4に供給されたとき、電気機器4は動作を開始する。また、電気機器4は、動作を開始したとき、状態信号を制御装置3に出力する。
【0030】
また、イグニッションスイッチ7およびキルスイッチ8の双方がオンの状態で、利用者がイグニッションスイッチ7をオフにすると、電源装置2と通常電源電圧供給回路5とがイグニッションスイッチ7により切断される。その結果、通常電源電圧が制御装置3の通常電源端子3Aおよび電気機器4に供給されなくなる。通常電源電圧が通常電源端子3Aに供給されなくなったとき、制御装置3は常時電源電圧を用いて動作を継続する。また、通常電源電圧が電気機器4に供給されなくなったとき、電気機器4は停止する。電気機器4の停止により電気機器4から制御装置3へ状態信号が出力されなくなる。
【0031】
制御装置3の動作中、動作停止制御装置9の通常電源電圧判断部10は通常電源端子3Aの電圧を監視している。イグニッションスイッチ7のオフにより通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されなくなったとき、通常電源電圧判断部10は、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されていないと判断する。続いて、動作停止制御装置9の状態信号判断部11は、電気機器4から状態信号が出力されているか否かを判断する。イグニッションスイッチ7のオフにより通常電源電圧が電気機器4に供給されなくなり、電気機器4から状態信号が出力されない状態となる。この場合、状態信号判断部11は、電気機器4から状態信号が出力されていないと判断する。通常電源電圧判断部10および状態信号判断部11がこのように判断した場合、動作停止制御装置9の動作終了処理部12は上記動作終了処理を行う。動作終了処理の終了後、制御装置3は停止する。
【0032】
また、イグニッションスイッチ7およびキルスイッチ8の双方がオンの状態で、利用者がキルスイッチ8をオフにすると、電源装置2と制御装置3の通常電源端子3Aとがキルスイッチ8により切断される。その結果、制御装置3の通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されなくなる。通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されなくなったとき、制御装置3は常時電源電圧を用いて動作を継続する。一方、キルスイッチ8がオフになっても、イグニッションスイッチ7がオンの状態であるので、通常電源電圧の電気機器4への供給は継続される。したがって、電気機器4は動作を継続し、電気機器4から制御装置3への状態信号の出力も継続される。
【0033】
キルスイッチ8のオフにより通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されなくなったとき、通常電源電圧判断部10は、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されていないと判断する。続いて、状態信号判断部11は、電気機器4から状態信号が出力されているか否かを判断する。キルスイッチ8がオフになっても、イグニッションスイッチ7がオンの状態である場合には電気機器4から状態信号が出力されているので、状態信号判断部11は、電気機器4から状態信号が出力されていると判断する。通常電源電圧判断部10および状態信号判断部11がこのように判断した場合、動作終了処理部12は上記動作終了処理を行わない。動作終了処理が行われない結果、制御装置3は停止せず、動作を継続する。例えば、制御装置3は、キルスイッチ8がオフになった後に、キルスイッチ8の状態を監視する処理等を行う。
【0034】
以上説明した通り、鞍乗型車両用電装システム1においては、イグニッションスイッチ7がオフになったとき、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されなくなり、かつ電気機器4から状態信号が出力されなくなる。そして、動作停止制御装置9は、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつ電気機器4から状態信号が出力されていない場合に、動作終了処理を行って制御装置3を停止させる。すなわち、動作停止制御装置9は、イグニッションスイッチ7がオフになったときに制御装置3を停止させる。また、イグニッションスイッチ7がオンの状態でキルスイッチ8がオフになったとき、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されなくなるが、電気機器4からの状態信号の出力は継続される。そして、動作停止制御装置9は、通常電源端子3Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつ電気機器4から状態信号が出力されている場合には、動作終了処理を行わず、制御装置3を停止させない。すなわち、動作停止制御装置9は、イグニッションスイッチ7がオンの状態でキルスイッチ8がオフになったときには、制御装置3を停止させない。このように、動作停止制御装置9によれば、イグニッションスイッチ7のオフとキルスイッチ8のオフとを判別することができ、イグニッションスイッチ7がオフになったときに制御装置3を停止させ、イグニッションスイッチ7がオンの状態でキルスイッチ8がオフになったときには制御装置3の動作を停止させないようにすることができる。
【0035】
図1に示すように、本実施形態の鞍乗型車両用電装システム1においては、電源装置2と制御装置3の通常電源端子3Aとの間に、イグニッションスイッチ7およびキルスイッチ8が直列に接続されている。すなわち、イグニッションスイッチ7およびキルスイッチ8が制御装置3の共通の端子に直列に接続されている。本実施形態の鞍乗型車両用電装システム1または動作停止制御装置9によれば、このように、イグニッションスイッチ7およびキルスイッチ8が制御装置3の共通の端子に直列に接続されている構成であっても、通常電源電圧判断部10、状態信号判断部11および動作終了処理部12により、イグニッションスイッチ7のオフとキルスイッチ8のオフとを判別することができ、イグニッションスイッチ7がオフになったときに制御装置3を停止させ、イグニッションスイッチ7がオンの状態でキルスイッチ8がオフになったときには制御装置3の動作を停止させないようにすることができる。
【実施例0036】
(鞍乗型車両用電装システムの構成)
図2は、本発明の実施例の動作停止制御装置30を含む本発明の実施例の鞍乗型車両用電装システム21の構成を示している。
図3は、鞍乗型車両用電装システム21が設けられた鞍乗型車両51の前部のハンドル52の周辺を示している。鞍乗型車両用電装システム21は、
図2に示すように、電源装置としてのバッテリ22、制御装置としてのECM23、電気機器としてのリレー24、他の電気機器としてのヒータ25、通常電源電圧供給回路26、常時電源電圧供給回路27、イグニッションスイッチ28およびキルスイッチ29を備えている。動作停止制御装置30はECM23に設けられている。
【0037】
バッテリ22は直流の電源電圧を出力する。具体的には、バッテリ22は、ECM23の通常電源端子23A、リレー24およびヒータ25に通常電源電圧を供給し、ECM23の常時電源端子23Bに常時電源電圧を供給する。
【0038】
ECM23は鞍乗型車両51に係る制御を行う装置であり、CPU(中央演算処理装置)およびメモリ等を備えている。ECM23は、主に鞍乗型車両51のエンジンの動作に係る制御、例えば、スロットルバルブの開閉制御、燃料噴射装置の燃料噴射制御等を行う。また、ECM23は、通常電源電圧が供給される通常電源端子23A、および常時電源電圧が供給される常時電源端子23Bを有している。また、ECM23は、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されている間には通常電源電圧を用いて動作し、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていない間には常時電源電圧を用いて動作することができる。また、ECM23は、リレー24およびヒータ25の状態を検出するための状態検出端子23C、23Dを有している。
【0039】
リレー24は、例えば、鞍乗型車両51に設けられたラジエータの冷却ファンの作動、停止を切り替えるリレーである。ヒータ25は、例えば、エンジンの排気中の酸素濃度を測定する酸素センサに設けられたジルコニア等のセンサ素子を加熱するためのヒータである。リレー24およびヒータ25には通常電源電圧がそれぞれ供給される。リレー24およびヒータ25は、通常電源電圧が供給されている間には、通常電源電圧を用いて動作し、通常電源電圧が供給されていない間には停止する。また、リレー24は、自身に通常電源電圧が供給されている間、通常電源電圧が自身に供給されている状態であることを示す状態信号をECM23の状態検出端子23Cに出力する。同様に、ヒータ25は、自身に通常電源電圧が供給されている間、通常電源電圧が自身に供給されている状態であることを示す状態信号をECM23の状態検出端子23Dに出力する。ECM23がリレー24およびヒータ25のそれぞれの故障検出を行うために、リレー24およびヒータ25からECM23にそれぞれ出力される故障検出用の信号を状態信号として用いることができる。
【0040】
通常電源電圧供給回路26は、バッテリ22から、ECM23の通常電源端子23A、リレー24、およびヒータ25に通常電源電圧を供給する回路である。通常電源電圧供給回路26は、バッテリ22にそれぞれ並列に接続された第1の経路26A、第2の経路26Bおよび第3の経路26Cを有している。本実施例において、第1の経路26Aは、バッテリ22に接続された分岐点PとECM23の通常電源端子23Aとの間を接続する経路である。バッテリ22から出力された通常電源電圧は第1の経路26Aを介してECM23の通常電源端子23Aに供給される。第2の経路26Bは、バッテリ22に接続された分岐点Pとリレー24との間を接続する経路である。バッテリ22から出力された通常電源電圧は第2の経路26Bを介してリレー24に供給される。第3の経路26Cは、バッテリ22に接続された分岐点Pとヒータ25との間を接続する経路である。バッテリ22から出力された通常電源電圧は第3の経路26Cを介してヒータ25に供給される。
【0041】
常時電源電圧供給回路27は、バッテリ22とECM23の常時電源端子23Bとの間を接続し、バッテリ22からECM23の常時電源端子23Bに常時電源電圧を供給する回路である。
【0042】
イグニッションスイッチ28は、バッテリ22から通常電源電圧供給回路26への通常電源電圧の供給のオン、オフを切り替えるスイッチである。イグニッションスイッチ28は、バッテリ22と通常電源電圧供給回路26との間に設けられている。具体的には、イグニッションスイッチ28は、バッテリ22と分岐点Pとの間に設けられている。
【0043】
キルスイッチ29は、非常時に鞍乗型車両51のエンジンを停止させるために、第1の経路26Aを切断することによってバッテリ22からECM23の通常電源端子23Aへの通常電源電圧の供給をオフにするスイッチである。キルスイッチ29は、第1の経路26Aに設けられている。すなわち、キルスイッチ29は分岐点Pと通常電源端子23Aとの間に設けられている。
【0044】
図2を見るとわかる通り、イグニッションスイッチ28およびキルスイッチ29は、バッテリ22と通常電源端子23Aとの間を接続する経路に直列に接続されている。また、キルスイッチ29は、バッテリ22と通常電源端子23Aとの間を接続する経路においてイグニッションスイッチ28の下流側に接続されており、イグニッションスイッチ28とキルスイッチ29との間の分岐点Pが位置している。
【0045】
また、
図3に示すように、イグニッションスイッチ28は、鞍乗型車両51の前部の左右方向中央部であってメータ53の後方辺りに配置されている。また、キルスイッチ29は、ハンドル52の左右方向外側の端側部分であってグリップ54の近傍に配置されている。
【0046】
(動作停止制御装置の構成)
動作停止制御装置30は、イグニッションスイッチ28がオフになったときにECM23の動作を停止させる装置である。動作停止制御装置30は、上述したように、ECM23に設けられている。動作停止制御装置30は、
図2に示すように、通常電源電圧判断部31、状態信号判断部32および動作終了処理部33を備えている。さらに、ECM23には、エンジン停止制御部34および故障判定部35が設けられている。動作停止制御装置30の通常電源電圧判断部31、状態信号判断部32および動作終了処理部33、並びにエンジン停止制御部34および故障判定部35は、例えば、ECM23のCPUが、ECM23のメモリに記憶されているコンピュータプログラムを読み取って実行することにより、ECM23の機能として具現化されるものである。
【0047】
動作停止制御装置30は、後述の動作停止制御処理を行う。動作停止制御処理において、通常電源電圧判断部31は、ECM23の通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されているか否かを判断する。状態信号判断部32は、リレー24から状態信号が出力されているか否かの判断、およびヒータ25から状態信号が出力されているか否かの判断を行う。動作終了処理部33は、ECM23の動作を終了させる動作終了処理を行う。エンジン停止制御部34は鞍乗型車両51のエンジンを停止させる。故障判定部35はリレー24およびヒータ25のそれぞれの故障判定を行う。
【0048】
(鞍乗型車両用電装システムの動作)
鞍乗型車両用電装システム21の動作は次の通りである。キルスイッチ29がオンの状態で、鞍乗型車両51の利用者がイグニッションスイッチ28をオフからオンにすると、バッテリ22から出力された通常電源電圧が、通常電源電圧供給回路26の第1の経路26Aを介して、ECM23の通常電源端子23Aに供給される。通常電源電圧が通常電源端子23Aに供給されたとき、ECM23は、通常電源電圧を用いて動作を開始する。これと同時に、バッテリ22から出力された通常電源電圧が、通常電源電圧供給回路26の第2の経路26Bおよび第3の経路26Cを介して、リレー24およびヒータ25にそれぞれ供給される。通常電源電圧がリレー24およびヒータ25に供給されたとき、リレー24およびヒータ25はそれぞれ動作を開始する。また、リレー24は、動作を開始したとき、状態信号をECM23の状態検出端子23Cに出力する。また、ヒータ25は、動作を開始したとき、状態信号をECM23の状態検出端子23Dに出力する。
【0049】
また、イグニッションスイッチ28およびキルスイッチ29の双方がオンの状態で、利用者がイグニッションスイッチ28をオフにすると、バッテリ22と通常電源電圧供給回路26とがイグニッションスイッチ28により切断される。その結果、通常電源電圧がECM23の通常電源端子23A、リレー24およびヒータ25のそれぞれに供給されなくなる。通常電源電圧が通常電源端子23Aに供給されなくなったとき、ECM23は常時電源電圧を用いて動作を継続する。また、通常電源電圧がリレー24に供給されなくなったとき、リレー24は停止する。リレー24の停止によりリレー24からECM23の状態検出端子23Cに状態信号が出力されなくなる。また、通常電源電圧がヒータ25に供給されなくなったとき、ヒータ25は停止する。ヒータ25の停止によりヒータ25からECM23の状態検出端子23Dに状態信号が出力されなくなる。また、動作停止制御装置30は、後述する動作停止制御処理において、イグニッションスイッチ28がオフになったときのこのような状態を認識し、ECM23を停止させる。
【0050】
また、イグニッションスイッチ28およびキルスイッチ29の双方がオンの状態で、利用者がキルスイッチ29をオフにすると、バッテリ22とECM23の通常電源端子23Aとがキルスイッチ29により切断される。その結果、通常電源電圧がECM23の通常電源端子23Aに供給されなくなる。通常電源電圧が通常電源端子23Aに供給されなくなったとき、ECM23は常時電源電圧を用いて動作を継続する。一方、キルスイッチ29がオフになっても、イグニッションスイッチ28がオンの状態であるので、通常電源電圧のリレー24およびヒータ25への供給は継続される。したがって、リレー24およびヒータ25はそれぞれ動作を継続する。また、リレー24からECM23の状態検出端子23Cへの状態信号の出力、およびヒータ25からECM23の状態検出端子23Dへの状態信号の出力はそれぞれ継続される。また、動作停止制御装置30は、後述する動作停止制御処理において、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときのこのような状態を認識し、ECM23を停止させずに、ECM23の動作を継続させる。
【0051】
(動作停止制御処理)
図4は動作停止制御装置30における動作停止制御処理の内容を示している。動作停止制御処理はECM23の動作中に実行される。以下、
図4を用いて、(1)キルスイッチ29がオンの状態でイグニッションスイッチ28がオフになったときの動作停止制御処理の流れ、(2)リレー24およびヒータ25がそれぞれ故障していない場合に、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときの動作停止制御処理の流れ、および(3)リレー24およびヒータ25のいずれかが故障している場合に、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときの動作停止制御処理の流れを説明する。
【0052】
[(1)の場合]
キルスイッチ29がオンの状態でイグニッションスイッチ28がオフになったときの動作停止制御処理の流れは次の通りである。動作停止制御処理において、通常電源電圧判断部31は、ECM23の動作中、通常電源端子23Aの電圧を監視している(ステップS1)。具体的には、通常電源電圧判断部31は、ECM23の動作中、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されているか否かを短い間隔で繰り返し判断している。例えば、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されているときには通常電源端子23Aの電圧がハイレベルであり、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないときには通常電源端子23Aの電圧がローレベルである。通常電源電圧判断部31は通常電源端子23Aの電圧のレベルに基づいて通常電源電圧が供給されているか否かを判断することができる。
【0053】
キルスイッチ29がオンの状態でイグニッションスイッチ28がオフになったときには、通常電源電圧が通常電源端子23Aに供給されなくなる。この場合、通常電源電圧判断部31は、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと判断する(ステップS1:NO)。
【0054】
通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと通常電源電圧判断部31により判断されたとき、続いて、状態信号判断部32が、ヒータ25から状態信号が出力されているか否かを判断する(ステップS2)。例えば、状態検出端子23Dにヒータ25から状態信号が出力されているときには状態検出端子23Dの電圧がハイレベルであり、状態検出端子23Dにヒータ25から状態信号が出力されていないときには状態検出端子23Dの電圧がローレベルである。状態信号判断部32は状態検出端子23Dの電圧のレベルに基づいてヒータ25から状態信号が出力されているか否かを判断することができる。
【0055】
キルスイッチ29がオンの状態でイグニッションスイッチ28がオフになったときには、ヒータ25から状態検出端子23Dに状態信号が出力されなくなる。この場合、状態信号判断部32は、ヒータ25から状態信号が出力されていないと判断する(ステップS2:NO)。
【0056】
ヒータ25から状態信号が出力されていないと状態信号判断部32により判断されたとき、続いて、状態信号判断部32は、リレー24から状態信号が出力されているか否かを判断する(ステップS3)。ヒータ25から状態信号が出力されているか否かの判断方法と同様に、状態信号判断部32は状態検出端子23Cの電圧がハイレベルかローレベルかに基づいてリレー24から状態信号が出力されているか否かを判断することができる。
【0057】
キルスイッチ29がオンの状態でイグニッションスイッチ28がオフになったときには、リレー24から状態信号が出力されなくなる。この場合、状態信号判断部32は、リレー24から状態信号が出力されていないと判断する(ステップS3:NO)。
【0058】
このように、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつヒータ25およびリレー24の双方から状態信号が出力されていないとき、このときに鞍乗型車両51のエンジンが稼働している場合にはエンジン停止制御部34がエンジンを停止させ(ステップS4)、続いて、動作終了処理部33が動作終了処理を実行する(ステップS5)。動作終了処理が終了した後、ECM23は停止する。ECM23の停止により、ECMは全く動作していない状態、または電力の消費をできる限り抑える省力動作状態になる。また、動作終了処理の終了により、動作停止制御処理は終了する。
【0059】
動作終了処理部33が行う動作終了処理は、ECMが動作している状態から、ECMが全く動作していない状態または省力動作状態に移行するために必要な処理であり、例えば、故障判定部35による故障判定の結果をECM23のメモリ(不揮発メモリ)に記憶する等の処理である。
【0060】
[(2)の場合]
リレー24およびヒータ25がそれぞれ故障していない場合に、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときの動作停止制御処理の流れは次の通りである。イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときには、キルスイッチ29がオンの状態でイグニッションスイッチ28がオフになったときと同様に、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されなくなる。この場合、通常電源電圧判断部31は、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと判断する(ステップS1:NO)。
【0061】
また、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときには、ヒータ25から状態検出端子23Dに状態信号が出力されているので、状態信号判断部32は、ヒータ25から状態信号が出力されていると判断する(ステップS2:YES)。
【0062】
さらに、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときには、リレー24から状態検出端子23Cに状態信号が出力されているので、状態信号判断部32は、リレー24から状態信号が出力されていると判断する(ステップS6:YES)。
【0063】
このように、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつヒータ25およびリレー24の双方から状態信号が出力されているとき、エンジン停止制御部34がエンジンを停止させる(ステップS7)。また、動作終了処理部33はこの時点では動作終了処理を行わない。動作終了処理部33は、ECM23に設けられたタイマを用いて時間の計測を開始する。
【0064】
続いて、通常電源電圧判断部31は、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されているか否かを判断する(ステップS8)。現時点では、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになっているため、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていない状態である。その後、利用者がイグニッションスイッチ28をオフにせずにキルスイッチ29をオンにしたときには、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されるようになる。この場合、通常電源電圧判断部31は通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていると判断し(ステップS8:YES)、動作停止制御処理をステップS1に戻す。その結果、動作終了処理部33により動作終了処理が実行されず、それゆえECM23が停止することなく、動作停止制御処理がステップS1に戻ることとなる。
【0065】
一方、ステップS8において、通常電源電圧判断部31が通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと判断したときには(ステップS8:NO)、続いて、動作終了処理部33が、上記タイマに基づいて、ステップS1で通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと通常電源電圧判断部31により判断され、かつステップS2、S3またはS6でヒータ25またはリレー24から状態信号が出力されていると状態信号判断部32により判断された時点(厳密にはタイマにより時間の計測を開始した時点)から所定の待機時間を経過したか否かを判断する(ステップS9)。ステップS1で通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと通常電源電圧判断部31により判断され、かつステップS2、S3またはS6でヒータ25またはリレー24から状態信号が出力されていると状態信号判断部32により判断された時点から上記待機時間を経過した場合には(ステップS9:YES)、動作終了処理部33は動作終了処理を実行する(ステップS5)。このように、利用者がキルスイッチ29をオフにしてから、イグニッションスイッチ28をオフにしないまま上記待機時間を経過した場合には、動作終了処理が実行され、ECM23が停止する。上記待機時間は、例えば10分~60分に設定することが好ましい。なお、ステップS1で通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと通常電源電圧判断部31により判断され、かつステップS2、S3またはS6でヒータ25またはリレー24から状態信号が出力されていると状態信号判断部32により判断された時点から上記待機時間が経過するまでの間に、利用者がイグニッションスイッチ28をオフにした場合には、動作終了処理部33は動作終了処理を実行してECM23を停止させる。
【0066】
[(3)の場合]
リレー24およびヒータ25のいずれかが故障している場合に、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときの動作停止制御処理の流れは次の通りである。リレー24およびヒータ25がそれぞれ故障していない場合には、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときに、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されておらず、ヒータ25から状態検出端子23Dに状態信号が出力されており、かつリレー24から状態検出端子23Cに状態信号が出力されている状態となる。しかしながら、リレー24の故障または第2の経路26Bの断線等により、リレー24から状態検出端子23Cに状態信号が出力されなくなることがある。この場合には、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときに、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されておらず、ヒータ25から状態検出端子23Dに状態信号が出力されており、かつリレー24から状態検出端子23Cに状態信号が出力されていない状態となる。このような状態においては、通常電源電圧判断部31が、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと判断し(ステップS1:NO)、続いて、状態信号判断部32が、ヒータ25から状態信号が出力されていると判断し(ステップS2:YES)、続いて、状態信号判断部32が、リレー24から状態信号が出力されていないと判断する(ステップS6:NO)。この場合、故障判定部35は、リレー24が故障したと判定する(ステップS10)。その後、処理はステップS7に移行する。
【0067】
また、ヒータ25の故障または第3の経路26Cの断線等により、ヒータ25から状態検出端子23Dに状態信号が出力されなくなることがある。この場合には、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときに、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されておらず、ヒータ25から状態検出端子23Dに状態信号が出力されておらず、かつリレー24から状態検出端子23Cに状態信号が出力されている状態となる。このような状態においては、通常電源電圧判断部31が、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと判断し(ステップS1:NO)、続いて、状態信号判断部32が、ヒータ25から状態信号が出力されていないと判断し(ステップS2:NO)、続いて、状態信号判断部32が、リレー24から状態信号が出力されていると判断する(ステップS3:YES)。この場合、故障判定部35は、ヒータ25が故障したと判定する(ステップS11)。その後、処理はステップS7に移行する。
【0068】
(スイッチ判別方法)
動作停止制御装置30には、本発明の実施例のスイッチ判別方法が適用されている。このスイッチ判別方法は、イグニッションスイッチ28のオフとキルスイッチ29のオフとを判別する方法である。本実施例のスイッチ判別方法は、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されているか否かを判断する通常電源電圧判断工程と、リレー24およびヒータ25のうちの少なくともいずれか一方から状態信号が出力されているか否かを判断する状態信号判断工程とを備え、通常電源電圧判断工程および状態信号判断工程における判断結果に基づき、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつリレー24およびヒータ25の双方から状態信号が出力されていない場合にはイグニッションスイッチ28がオフになったと判断し、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつリレー24およびヒータ25のうちの少なくともいずれか一方から状態信号が出力されている場合にはイグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったと判断するというものである。
【0069】
図4において、ステップS1は通常電源電圧判断工程に当たり、ステップS2、S3およびS6は状態信号判断工程に当たる。また、ステップS4およびS5は、イグニッションスイッチ28がオフになったとの判断に応じて実行される処理と考えることができる。また、ステップS7~S9の処理は、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったとの判断に応じて実行される処理と考えることができる。
【0070】
以上説明した通り、本実施例の鞍乗型車両用電装システム21において、本実施例の動作停止制御装置30は、キルスイッチ29がオンの状態でイグニッションスイッチ28がオフになり、その結果、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されなくなり、かつリレー24およびヒータ25の双方から状態信号が出力されなくなった状態となったときに、この状態を、通常電源電圧判断部31および状態信号判断部32により認識し、動作終了処理部33により動作終了処理を実行して、ECM23を停止させる。また、動作停止制御装置30は、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになり、その結果、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されなくなり、かつリレー24およびヒータ25のうちの少なくとも一方から状態信号が出力されている状態となったときには、この状態を、通常電源電圧判断部31および状態信号判断部32により認識し、動作終了処理の実行を所定の待機時間、待機させる。そして、この待機時間が経過する前にキルスイッチ29がオンになったときには、ECM23を停止させない。このように、本実施例の鞍乗型車両用電装システム21または動作停止制御装置30によれば、イグニッションスイッチ28のオフとキルスイッチ29のオフとを判別することができ、イグニッションスイッチ28がオフになったときにECM23を停止させ、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときにはECM23の動作をすぐには停止させず、その後、待機時間内にキルスイッチ29がオンになった場合にはECM23を停止させないようにすることができる。したがって、ECM23に、故障診断機能(OBD)が設けられており、この故障診断機能に、ECM23が故障の診断を自ら行う自己診断機能が含まれており、この自己診断機能に、鞍乗型車両51の走行回数および自己診断の実行回数をそれぞれカウントして記録する機能が含まれている場合には、この自己診断機能において、キルスイッチ29のオフが走行回数としてカウントされることを防止することができる。よって、故障診断率のばらつきのために、故障診断率を用いた鞍乗型車両の安全性評価の正確性または信頼性が低下するといった上記問題を解決することができる。
【0071】
図2に示すように、鞍乗型車両用電装システム21においては、イグニッションスイッチ28およびキルスイッチ29がECM23の通常電源端子23Aに直列に接続されている。本実施例の鞍乗型車両用電装システム21または動作停止制御装置30によれば、このように、イグニッションスイッチ28およびキルスイッチ29がECM23の共通の端子に直列に接続されている構成であっても、動作停止制御装置30における動作停止制御処理により、イグニッションスイッチ28のオフとキルスイッチ29のオフとを判別することができ、イグニッションスイッチ28がオフになったときにECM23を停止させ、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったときにはECM23の動作をすぐには停止させず、その後、待機時間内にキルスイッチ29がオンになった場合には、ECM23を停止させないようにすることができる。
【0072】
また、動作停止制御装置30は、
図2中のステップS1で通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと通常電源電圧判断部31により判断され、かつステップS2、S3またはS6でヒータ25またはリレー24から状態信号が出力されていると状態信号判断部32により判断された時点から所定の待機時間を経過した場合には、動作終了処理を実行して、ECM23を停止させる。これにより、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになった時点から所定の待機時間を経過した場合にECM23を停止させることができる。利用者は、非常時に、エンジンを迅速に停止させるために、イグニッションスイッチ28をオフにしないで、キルスイッチ29をオフにする。利用者は、キルスイッチ29をオフにした後、非常時の種々の処理に追われてイグニッションスイッチ28をオフにすることができないことがあり、また、非常時の不安定な精神状態のためにイグニッションスイッチ28をオフにすることを失念することがある。このような場合には、所定の待機時間の経過後にECM23を停止させることで、バッテリ22の電力の消費を抑えることができる。
【0073】
また、動作停止制御装置30は、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されておらず、かつリレー24およびヒータ25のうちのいずれか一方から状態信号が出力されている場合には、ECM23をすぐには停止させず、その後、待機時間内にキルスイッチ29がオンになった場合には、ECM23を停止させないようにする。この構成により、リレー24およびヒータ25のいずれかが故障している場合でも、イグニッションスイッチ28がオフになったことと、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになったこととを判別することができ、イグニッションスイッチ28がオンの状態でキルスイッチ29がオフになった場合には、ECM23の動作をすぐには停止させないようにすることができる。
【0074】
なお、上記実施例では、電気機器として、リレー24およびヒータ25を例にあげたが、電気機器は、電力を用いて動作する他の機器でもよく、例えば、センサ、電動モータ、電動アクチュエータ、計器類、灯火類、集積回路(他のECMを含む)等でもよい。また、本発明は、イグニッションスイッチおよびキルスイッチが直列に接続されたECMおよび1個の電気機器を有する鞍乗型車両用電装システムにも適用することができ、またはイグニッションスイッチおよびキルスイッチが直列に接続されたECMおよび3個以上の電気機器を有する鞍乗型車両用電装システムにも適用することができる。
【0075】
また、上記実施例では、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと通常電源電圧判断部31により判断され、かつヒータ25またはリレー24から状態信号が出力されていると状態信号判断部32により判断された時点から所定の待機時間を経過した場合に動作終了処理を実行してECM23を停止させる場合を例にあげたが、通常電源端子23Aに通常電源電圧が供給されていないと通常電源電圧判断部31により判断され、かつヒータ25またはリレー24から状態信号が出力されていると状態信号判断部32により判断された場合には、その後、イグニッションスイッチがオフにされるまで、動作終了処理を実行せず、ECM23の動作を継続させるようにしてもよい。
【0076】
また、本発明は、自動二輪車、自動三輪車、スクータ、バギー車等、種々の鞍乗型車両に適用することができる。本発明を適用することができる鞍乗型車両は、
図3に示したようなものに限らない。また、鞍乗型車両におけるイグニッションスイッチおよびキルスイッチのそれぞれの配置は、
図3に示したものに限らない。
【0077】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う動作停止制御装置、鞍乗型車両用電装システムおよびスイッチ判別方法もまた本発明の技術思想に含まれる。