(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149676
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】位置推定装置、位置推定方法及び位置推定システム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/28 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01C21/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051936
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】仲田 昌司
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB26
2F129BB33
2F129BB49
2F129BB66
2F129EE78
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF36
2F129FF62
(57)【要約】
【課題】車両の走行位置の推定精度を向上させる。
【解決手段】位置推定装置1は、車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを取得する車両データ取得部151と、道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、前記道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得する基準データ取得部152と、前記複数の基準データのうち、前記検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定する特定部と153と、前記類似基準データに関連付けられた前記位置情報が示す位置を前記車両の推定位置として出力する出力部154と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを取得する車両データ取得部と、
道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、前記道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得する基準データ取得部と、
前記複数の基準データのうち、前記検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定する特定部と、
前記類似基準データに関連付けられた前記位置情報が示す位置を前記車両の推定位置として出力する出力部と、
を有する位置推定装置。
【請求項2】
前記車両データ取得部は、測位衛星から受信した電波に基づいて特定された前記車両の位置を示す測位データを取得し、
前記基準データ取得部は、前記測位データが示す位置に対して前記車両の進行方向側の複数の位置に対応する前記複数の基準データを取得する、
請求項1に記載の位置推定装置。
【請求項3】
前記車両データ取得部は、前記車両の走行速度を示す速度データを取得し、
前記基準データ取得部は、最新の前記測位データが取得された時刻からの経過時間と前記速度データが示す前記走行速度とを乗算して算出される距離だけ前記測位データが示す位置から離れた位置に対応する前記複数の基準データを取得する、
請求項2に記載の位置推定装置。
【請求項4】
前記車両データ取得部は、前記複数の検出加速度を所定の時間間隔で検出し、前記車両の走行速度を示す速度データを取得し、
前記特定部は、前記基準データに含まれる複数の前記基準加速度のうち、前記速度データが示す前記走行速度と前記時間間隔とを乗算して算出される距離間隔ごとに選択した複数の前記基準加速度の変化パターンと、前記複数の検出加速度の変化パターンとの相関度に基づいて、前記類似基準データを特定する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置推定装置。
【請求項5】
前記基準データ取得部は、前記車両の車種に対応する前記複数の基準データを取得する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の位置推定装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する、
車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを取得するステップと、
道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、前記道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得するステップと、
前記複数の基準データのうち、前記検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定するステップと、
前記類似基準データに関連付けられた前記位置情報が示す位置を前記車両の推定位置として出力するステップと、
を有する位置推定方法。
【請求項7】
車両に設けられた電子機器と、前記電子機器との間でデータを送受信するデータ処理装置と、を備え、
前記電子機器は、
車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを前記データ処理装置に送信するデータ送信部と、
前記データ処理装置から受信した前記車両の推定位置を示す推定位置データを受信するデータ受信部と、
前記推定位置を表示する表示部と、
を有し、
前記データ処理装置は、
前記電子機器から前記検出データを取得する車両データ受信部と、
道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、前記道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得する基準データ取得部と、
前記複数の基準データのうち、前記検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定する特定部と、
前記類似基準データに関連付けられた前記位置情報が示す位置を前記車両の推定位置として示す前記推定位置データを前記電子機器に送信する出力部と、
を有する位置推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の位置を特定する位置推定装置、位置推定方法及び位置推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
測位衛星の緯度経度情報を用いて車両の位置を特定する場合において、測位衛星からの電波を受信できない場所においては、慣性センサを用いて自車両の走行位置を推定する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
慣性センサを用いて自車両の位置を推定する方法においては、誤差が蓄積することにより、車両走行位置の推定精度が低下するという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車両の走行位置を特定する精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の位置推定装置においては、車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを取得する車両データ取得部と、道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、前記道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得する基準データ取得部と、前記複数の基準データのうち、前記検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定する特定部と、前記類似基準データに関連付けられた前記位置情報が示す位置を前記車両の推定位置として出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記車両データ取得部は、測位衛星から受信した電波に基づいて特定された前記車両の位置を示す測位データを取得し、前記基準データ取得部は、前記測位データが示す位置に対して前記車両の進行方向側の複数の位置に対応する前記複数の基準データを取得してもよい。
【0008】
前記車両データ取得部は、前記車両の走行速度を示す速度データを取得し、前記基準データ取得部は、最新の前記測位データが取得された時刻からの経過時間と前記速度データが示す前記走行速度とを乗算して算出される距離だけ前記測位データが示す位置から離れた位置に対応する前記複数の基準データを取得してもよい。
【0009】
前記車両データ取得部は、前記複数の検出加速度を所定の時間間隔で検出し、前記車両の走行速度を示す速度データを取得し、前記特定部は、前記基準データに含まれる複数の前記基準加速度のうち、前記速度データが示す前記走行速度と前記時間間隔とを乗算して算出される距離間隔ごとに選択した複数の前記基準加速度の前記変化パターンと、前記複数の検出加速度の変化パターンとの相関度とに基づいて、前記類似基準データを特定してもよい。
【0010】
前記基準データ取得部は、前記車両の車種に対応する前記複数の基準データを取得してもよい。
【0011】
本発明の第2の態様の位置推定方法においては、コンピュータが実行する、車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを取得するステップと、道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、前記道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得するステップと、前記複数の基準データのうち、前記検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定するステップと、前記類似基準データに関連付けられた前記位置情報が示す位置を前記車両の推定位置として出力するステップと、を有する。
【0012】
本発明の第3の態様の位置推定システムにおいては、車両に設けられた電子機器と、前記電子機器との間でデータを送受信するデータ処理装置と、を備え、前記電子機器は、車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを前記データ処理装置に送信するデータ送信部と、前記データ処理装置から受信した前記車両の推定位置を示す推定位置データを受信するデータ受信部と、前記推定位置を表示する表示部と、を有し、前記データ処理装置は、前記電子機器から前記検出データを取得する車両データ受信部と、道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、前記道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得する基準データ取得部と、前記複数の基準データのうち、前記検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定する特定部と、前記類似基準データに関連付けられた前記位置情報が示す位置を前記車両の推定位置として示す前記推定位置データを前記電子機器に送信する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両の走行位置の推定精度が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図4】位置推定装置1にける処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】変形例の位置推定システムSの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
[位置推定装置の概要]
図1は、位置推定装置における位置推定方法の概要を説明するための図である。位置推定装置は、車両が道路を走行している間に検出された車両の上下方向の加速度が変化するパターンに基づいて車両の位置を推定するための装置である。一例として、位置推定装置は、車両に搭載された車載端末である。位置推定装置は、カーナビゲーションシステムの機能の一部として構成されてもよい。
【0016】
図1においては、位置推定装置が車両の位置の推定に用いる検出データD1と基準でデータD2とが示されている。検出データD1は、車両に搭載された加速度センサにより検出された上下方向の加速度(以下、「検出加速度」という)と時刻との関係を示すデータである。検出データD1は、車両が走行中の道路における複数の位置において加速度センサ(不図示)から取得された複数の加速度値を含む。
【0017】
基準データD2は、道路の複数の位置と、道路を走行中の基準車両に生じる上下方向の複数の加速度(以下、「基準加速度」という)との関係を示すデータである。
図1に示す基準データD2を示すグラフの横軸は、基準となる地点からの距離を示す。基準データD2における複数の位置の間隔は、車両において加速度を検出可能な時間間隔と、車両の速度として想定される最高速度とに基づいて決定されており、例えば10cmである。基準データD2に含まれるデータの数は一定であってもよく、それぞれの基準データD2のデータの数が異なっていてもよい。また、複数の基準データD2が同一の位置に対応する加速度値を含んでいてもよい。
【0018】
基準データD2の作成に使用される基準車両は、例えば、基準データD2を作成するために道路を走行した車両である。位置推定装置は、車種別又はシャーシ別等に予め作成された複数の基準データのうちいずれかの基準データを選択してもよい。なお、基準データは、基準車両が実際に道路を走行した際に検出された加速度ではなく、道路の凹凸及び勾配を示すデータと車両のモデルデータとに基づいて算出された加速度を示すデータであってもよい。
【0019】
位置推定装置は、検出データD1と基準データD2との相関度を分析することで、検出データD1との相関度が閾値以上である類似基準データR(
図1における破線で囲まれた領域内のデータ)を特定する。
図1に示す例の場合、位置推定装置1は、検出加速度の変化パターンと、基準データD2における基準加速度の変化パターンとの相関度が、他の領域における変化パターンとの相関度よりも大きいことを特定する。位置推定装置1は、類似基準データRに関連付けられた位置情報が示す位置を車両が現在走行している位置として出力する。類似基準データRに関連付けられた位置情報が示す位置は、例えば、類似基準データRにおいて、車両の進行方向における末尾のレコード(すなわち、
図1における最も右の位置)に対応する位置情報である。
【0020】
[位置推定装置1の構成]
図2は、位置推定装置1の構成を示す図である。位置推定装置1は、通信部11と、センサ12と、GPS受信機13と、記憶部14と、制御部15と、を有する。制御部15は、車両データ取得部151と、基準データ取得部152と、特定部153と、出力部154と、を有する。通信部11はサーバ装置との間で通信する通信モジュールである。
【0021】
センサ12は車両に設置された加速度センサである。センサ12は所定時間ごとに加速度を検出し、検出加速度を示す信号を出力する。所定時間は、例えば数十ミリ秒~数百ミリ秒である。センサ12は車速センサを有してもよい。
【0022】
GPS受信機13は、GPS(Global Positioning System)の信号を受信する。記憶部14は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部14は、制御部15が実行するプログラムを記憶する。記憶部14は車種の情報を記憶してもよい。
【0023】
制御部15は、例えばCPU(Central Processing Unit)を有しており、各種の処理を実行する。制御部15は、記憶部14に記憶されたプログラムを実行することにより、車両データ取得部151、基準データ取得部152、特定部153及び出力部154として機能する。
【0024】
車両データ取得部151は、車両に設置されたセンサ12及びGPS受信機13から車両に関するデータを取得する。車両データ取得部151は、センサ12から入力された検出加速度信号に基づいて、車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを取得する。検出データは所定の時間間隔で検出された検出加速度の時系列データである。車両データ取得部151は、取得した検出データを特定部153に入力する。
【0025】
車両データ取得部151は、センサ12から、車両の走行速度を示す速度データを取得してもよい。車両データ取得部151は、取得した速度データに基づいて特定される車両の走行速度を、加速度が検出された時間間隔に乗算することにより、取得した検出データを、所定の距離間隔に対応する複数の検出加速度を含むデータに変換してもよい。この場合、車両データ取得部151は、変換後のデータを特定部153に入力する。車両データ取得部151は、取得した検出データに検出加速度が含まれない時刻がある場合に、当該時刻に対応する検出可読度を補間し、補間後のデータを特定部153に入力してもよい。
【0026】
車両データ取得部151は、GPS受信機13から、測位衛星から受信した電波に基づいて特定された車両の位置を示す測位データを取得してもよい。車両データ取得部151は、取得した測位データを特定部153に入力する。以下の説明では、測位データに基づいて特定される車両の位置を、車両の概略位置という場合がある。
【0027】
基準データ取得部152は、通信部11を介して、例えばサーバ2に記憶された基準データを取得する。基準データ取得部152は、道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得する。
【0028】
ところで、基準データは膨大な量となるため、位置推定装置1は、車両の位置を推定するための所要時間を短縮するために、相関度分析の対象となる基準データを絞り込んで取得できることが望ましい。そこで、基準データ取得部152は、車両データ取得部151から取得した測位データが示す位置に対して車両の進行方向側の複数の位置に対応する複数の基準データを取得してもよい。具体的には、サーバ2に車両の進行方向と、位置情報を含む基準データ要求を送信し、基準データ要求に含まれる位置情報が示す位置に対応する基準データをサーバ2から取得する。このように基準データ取得部152が構成されていることで、位置推定装置1は、車両の位置を推定するまでに要する時間を短縮することができる。
【0029】
さらに、トンネル内のように測位データに基づいて概略位置を特定できないエリアにおいて、基準データ取得部152が基準データを取得する場合も生じる。そこで、基準データ取得部152は、最新の測位データが取得された時刻からの経過時間と速度データが示す走行速度とを乗算して算出される距離だけ測位データが示す位置から離れた位置に対応する複数の基準データを取得してもよい。最新の測位データは、例えばトンネルに入る直前に取得された測位データである。このように基準データ取得部152が構成されていることで、測位データに基づいて概略位置を特定できない状況であっても、位置推定装置1は、車両の位置を推定するまでに要する時間を短縮することができる。
【0030】
基準データ取得部152は、記憶部14に記憶された車種データを取得し、車種データが示す車種に対応する複数の基準データをサーバ2から取得してもよい。車種は、例えば、上下方向の加速度に影響する車両のサスペンションの種別又は車両の重量等により分類されている。このように基準データ取得部152が構成されていることで、車種に応じて加速度パターンが異なる場合でも、位置推定装置1による車両の位置の推定精度が向上する。
【0031】
特定部153は、複数の基準データのうち、検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定する。特定部153は、例えば、複数の基準データそれぞれと検出データとの相互相関値を算出し、相互相関値が閾値以上の基準データを類似基準データとして選択する。閾値以上の基準データが複数存在する場合、特定部153は、例えば相関度が最も高い基準データを類似基準データとして特定する。
【0032】
ところで、基準データにおける距離間隔が、検出データに含まれる複数の時刻において検出加速度が検出された複数の位置の間隔と一致していないことも想定される。そこで、特定部153は、基準データに含まれる複数の基準加速度のうち、速度データが示す走行速度と時間間隔とを乗算して算出される距離間隔ごとに選択した複数の基準加速度の変化パターンと、複数の検出加速度の変化パターンとの相関度に基づいて、類似基準データを特定してもよい。
【0033】
一例として、基準データには10cm間隔の複数の位置に対応する基準加速度が含まれており、検出データには100ミリ秒間隔で検出された車両の加速度が含まれており、車両の速度が時速36kmであるとする。この場合、車両は100ミリ秒の間に100cm進むので、検出データに含まれる加速度値は、距離間隔が100cmの基準データに対応する。そこで、特定部153は、基準データにおける10個の位置ごとに加速度値を選択し、選択した加速度値を時系列に並べたデータと検出データとの相関度に基づいて類似基準データを特定する。特定部153がこのように動作することで、検出データが取得された時間間隔が基準データにおいて基準加速度が含まれている距離間隔と一致していない場合であっても、特定部153は、検出データに類似する変化パターンを有する基準データを特定することができる。
【0034】
出力部154は、類似基準データに関連付けられた位置情報が示す位置を車両の推定位置として出力する。出力部154は、例えば、類似基準データに基準加速度が含まれている複数の位置のうち、車両の進行方向における末尾の基準加速度に対応する位置を推定位置として出力する。出力部154は、例えば、出力された推定位置は図示しないカーナビゲーション装置の表示部に車両の現在位置として表示される。
【0035】
出力部154は、類似基準データに関連付けられた位置情報が示す位置に、車両の走行速度と加速度の検出から類似基準データの特定に通常要する時間を乗算して得られる距離を加算して出力してもよい。このように出力部154が構成されていることで、出力部154は、検出データが取得された時刻から、出力部154が推定位置を出力可能になるまでに経過した時間に車両が進んだ距離が考慮された位置を出力することができるので、より精度の高い走行位置を出力することが可能となる。
【0036】
[サーバ2の構成]
図3は、サーバ2の構成を示す図である。サーバ2は基準データを記憶しており、位置推定装置1からの要求に応じて基準データを送信する。サーバ2は、通信部21と、記憶部22と、制御部23と、を有する。制御部23は、基準データ生成部231と、基準データ送信部232と、を有する。通信部21は位置推定装置1との間で通信するための通信インターフェースである。
【0037】
記憶部22は、ROM、RAM及びSSD等の記憶媒体を有する。記憶部22は、制御部23が実行するプログラムを記憶する。記憶部22は基準データを記憶する。
【0038】
制御部23は、例えばCPUを有しており、各種の処理を実行する。制御部23は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することにより、基準データ生成部231及び基準データ送信部232として機能する。
【0039】
基準データ生成部231は、道路を走行した基準車両から取得した複数の上下方向の加速度値と、加速度値が取得された時点における車両の位置を示す位置情報とを取得し、それらを関連付けた基準データを生成し、生成した基準データを記憶部22に記憶させる。基準データ生成部231は、例えば、車種を示す情報に関連付けて、生成した基準データを記憶部22に記憶させる。基準データ生成部231は、同一ルートを走行した複数の車両において取得された複数の加速度値が存在する場合は、複数の加速度値の統計値(例えば、平均値、中央値又は最頻値)に基づいて基準データを生成してもよい。
【0040】
基準データ送信部232は、位置推定装置1から基準データ要求を受ける。基準データ要求には、例えば車両の概略位置又は車種を特定するための情報が含まれている。基準データ送信部232は、基準データ要求を受けると、基準データを要求した位置推定装置1が搭載されている車両の概略位置又は車種に対応する基準データを記憶部22から取得する。基準データ送信部232は、通信部21を介して、取得した基準データを位置推定装置1へ送信する。基準データ送信部232は、基準データ要求に車両の進行方向が含まれる場合は、当該進行方向に関連付けられた基準データを送信してもよい。
【0041】
[位置推定装置1にける処理の流れ]
図4は、位置推定装置1にける処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、位置推定装置1が、車両の概略位置を含む基準データ要求をサーバ2に送信した時点から開始している。基準データ取得部152は、サーバ2の基準データ送信部232から、車両の概略位置に対応する基準データを取得する(S01)。
【0042】
車両データ取得部151は、センサ12から検出加速度を取得する(S02)。車両データ取得部151は、検出加速度を取得すると、検出加速度を取得する前の検出データに最新の検出加速度を追加して、検出データを更新する(S03)。
【0043】
特定部153は、検出データと複数の基準データとの相関度を分析する。特定部153は、求められた相関度が閾値以上となる基準データから選択した類似基準データを特定する。(S04)。
【0044】
特定部153は、類似基準データが特定されたか否かを判定する(S05)。類似基準データが特定された場合は、ステップS06に進み、特定されない場合は、ステップS07に進む。
【0045】
特定部153は、類似基準データを特定した場合(S05においてYES)、類似基準データに関連付けられた位置情報が示す位置を車両の推定位置として出力部154に出力する。出力部154は、特定部153から取得した位置情報を車両の推定位置として出力する(S06)。特定部153が類似基準データを特定できなかった場合(S05においてNO)、出力部154は推定位置を出力しない。
【0046】
制御部15は処理を終了するか否かを判定する(S07)。制御部15は、車両のエンジンを停止させる操作が行われた場合、処理を終了する。制御部15が処理を終了しないと判定した場合、基準データ取得部152は、新たな基準データの取得が必要か否かを判定する(S08)。基準データ取得部152は、例えば、過去に取得していた基準データに対応する範囲に車両の概略位置が含まれなくなったと判定した場合に、新たな基準データの取得が必要であると判定する。基準データ取得部152が基準データの取得が必要であると判定した場合(S08においてYES)は、ステップS01に進む。基準データ取得部152が新たな基準データの取得が不要であると判定した場合(S08においてNO)、ステップS02に進む。以下、位置推定装置1は、終了条件を満たすまで同様の処理を繰り返す。
【0047】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る位置推定システムSの構成を示す図である。
図5に示す位置推定システムSは、車載装置1aとサーバ2aとを有する。車載装置1aは、車両に設けられた電子機器である。サーバ2aは、車載装置1aとの間でデータを送受信するデータ処理装置である。位置推定システムSは、車載装置1aとサーバ2aとが連携することで車両の位置を特定する。サーバ2aはオンプレミスのサーバとして実現されても、クラウドコンピューティングシステムのように複数のプロセッサ又はメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。以下、
図5に従って位置推定システムSの構成について説明する。
図2に示した位置推定装置1、及び
図3に示したサーバ2と同一の機能を有する部位には同一の符号を付け、説明を省略する。
【0048】
位置推定システムSの車載装置1aの制御部15は車両データ送信部155と、データ受信部156と、表示部157と、を備える。サーバ2aの制御部23は車両データ受信部233と、基準データ取得部234と、特定部235と、出力部236と、を備える。
【0049】
車両データ送信部155は、車両の上下方向の複数の検出加速度を示す検出データをサーバ2aに送信する。車両データ送信部155は、測位衛星から受信した電波に基づいて特定された車両の位置を示す測位データ、センサ12から取得した車両の走行速度を示す速度データ、又は車両の車種を示す車種データの少なくともいずれかをサーバ2aに送信してもよい。
【0050】
データ受信部156は、サーバ2aから受信した車両の推定位置を示す推定位置データを受信する。データ受信部156は、受信した推定位置を表示部157に出力する。表示部157は入力された推定位置を表示する。
【0051】
サーバ2aの車両データ受信部233は、車両データ送信部155から検出データを取得する。車両データ受信部233は、取得した検出データを特定部235に入力する。車両データ受信部233は、車両データ送信部155が送信した測位データ、速度データ又は車種データの少なくともいずれかを取得してもよい。
【0052】
基準データ取得部234は、記憶部22から道路における複数の位置において生じる上下方向の複数の基準加速度を示す複数の基準データを、道路における位置を示す位置情報に関連付けて取得する。基準データ取得部234は、車両データ送信部155から取得した測位データが示す位置に対して車両の進行方向側の複数の位置に対応する複数の基準データを取得してもよい。
【0053】
基準データ取得部234は、最新の測位データが取得された時刻からの経過時間と速度データが示す走行速度とを乗算して算出される距離だけ測位データが示す位置から離れた位置に対応する複数の基準データを取得してもよい。基準データ取得部234は、車両データ受信部233が受信した車種データを取得し、車種データが示す車種に対応する複数の基準データを記憶部22から取得してもよい。
【0054】
特定部235は、
図2に示した特定部153と同等の機能を有する。すなわち、特定部235は、複数の基準データのうち、検出データとの相関度が閾値以上の基準データから選択した類似基準データを特定する。出力部236は、類似基準データに関連付けられた位置情報が示す位置を車両の推定位置として示す推定位置データを車載装置1aに送信する。
【0055】
[位置推定装置1による効果]
以上説明したように、位置推定装置1においては、車両データ取得部151が上下方向の複数の検出加速度を示す検出データを取得し、基準データ取得部152が上下方向の複数の基準加速度と位置情報が関連付けられた基準データ取得する。特定部153は検出データと基準データから相関度が閾値以上の類似基準データを特定し、出力部154が類似基準データに関連付けられた位置情報を車両の推定位置として出力する。位置推定装置1がこのように構成されていることで、位置情報を取得できない状況においても、精度の高い位置を推定することが可能になる。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0057】
1 位置推定装置
2 サーバ
11 通信部
12 センサ
13 GPS受信機
14 記憶部
15 制御部
21 通信部
22 記憶部
23 制御部
151 車両データ取得部
152 基準データ取得部
153 特定部
154 出力部
155 車両データ送信部
156 データ受信部
157 表示部
231 基準データ生成部
232 基準データ送信部
233 車両データ受信部
234 基準データ取得部
235 特定部
236 出力部