(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149703
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】床下止水構造
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20220929BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04B1/64 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051970
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】市村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】菅 将憲
(72)【発明者】
【氏名】奥澤 麻利子
(72)【発明者】
【氏名】東 智明
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DA00
2E001FA21
2E001HE01
2E001MA08
2E001ND01
2E139AA07
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】布基礎のベース部の下側から土間コンクリートの下側へと入り込んだ水が上記ベース部と上記土間コンクリートとの境界を通って土間コンクリート上へと浸入するのを抑制することができる床下止水構造を提供する。
【解決手段】この床下止水構造100は、建物の布基礎1のベース部11の上面側に、当該建物の床下の鉄筋入りの土間コンクリート2の周囲部が重なって接触しており、この重なり箇所における上記ベース部11の上面と上記土間コンクリート2の周囲部の下面との間に止水材3を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の布基礎のベース部の上面側に、当該建物の床下の土間コンクリートの周囲部が重なって接触しており、この重なり箇所における上記ベース部の上面と上記土間コンクリートの周囲部の下面との間に止水材を備えることを特徴とする床下止水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の床下止水構造において、上記止水材は、水分の吸収で膨張する粘土質材料からなることを特徴とする床下止水構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の床下止水構造において、上記土間コンクリートは鉄筋入りであることを特徴とする床下止水構造。
【請求項4】
請求項3に記載の床下止水構造において、上記布基礎のベース部からは連結部材が突出されており、上記連結部材に上記鉄筋が継がれて上記土間コンクリートが上記布基礎のベース部に一体化されていることを特徴とする床下止水構造。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の床下止水構造において、上記土間コンクリートには屋内方向に凹む凹箇所が形成されており、この凹箇所の近傍に位置する上記布基礎の立上部に、配管を挿通するための開口部が形成されており、上記開口部に、当該開口部からの浸水を抑制する配管止水材を備えることを特徴とする床下止水構造。
【請求項6】
請求項5に記載の床下止水構造において、上記布基礎のベース部には、上記土間コンクリートの上記凹箇所の周囲領域と重なるように、屋内方向に突出する凸箇所が形成されていることを特徴とする床下止水構造。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の床下止水構造において、防湿シートが上記土間コンクリートの下側に敷かれている一方、当該防湿シートは上記止水材の位置する箇所には敷かれないことを特徴とする床下止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の床下への浸水を抑制する床下止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物における外壁パネルの外側の下端側に、当該外壁パネルと対向して土台水切が配設され、この土台水切の下端部と布基礎との間の隙間が封止部材によって封止された構造が開示されている。このような構造であると、水位が布基礎の立上部を越えることによる床下浸水を防止することができる。また、水が布基礎の下側地盤から回り込んでくることによる床下浸水に関しては、床下の地盤の全面を土間コンクリートで覆うことで防止できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構造は、単に土間コンクリートを施した構造であり、土間コンクリート下での水圧によって布基礎のベースと土間コンクリートとの境界から水が浸入するおそれがある。特に、土間コンクリートが経年変化で痩せてくると、上記浸水のおそれが高くなる。
【0005】
この発明は、布基礎のベース部の下側から土間コンクリートの下側へと入り込んだ水が上記ベース部と上記土間コンクリートとの境界を通って土間コンクリート上へと浸入するのを抑制することができる床下止水構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の床下止水構造は、建物の布基礎のベース部の上面側に、当該建物の床下の土間コンクリートの周囲部が重なって接触しており、この重なり箇所における上記ベース部の上面と上記土間コンクリートの周囲部の下面との間に止水材を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成であれば、布基礎のベース部の下側を通って土間コンクリートの下側へと浸入した水は、上記止水材によって、上記ベース部と上記土間コンクリートとの境界を通ることができず、上記土間コンクリート上への浸水を抑制することができる。
【0008】
上記止水材は、水分の吸収で膨張する粘土質材料からなってもよい。これによれば、土間コンクリートが経年変化で痩せても、上記止水材が洪水時等の水の吸収で膨張し、隙間が生じ難くなるので、浸水の抑制性能を高めることができる。
【0009】
上記土間コンクリートは鉄筋入りでもよい。これによれば、上記止水材の存在によって土間コンクリート下で上昇する水圧の逃げ場が無くなることになっても、上記鉄筋入りの土間コンクリートは大きな力に耐えるので、これが破損する事態を防止することができる。なお、地盤の硬さの点から土間コンクリートに鉄筋は不要とされる場合も、水圧上昇による土間コンクリートの破壊防止の観点から鉄筋が施される。
【0010】
上記布基礎のベース部から連結部材が突出されており、上記連結部材に上記鉄筋が継がれて上記土間コンクリートが上記布基礎のベース部に一体化されてもよい。これによれば、上記土間コンクリートが水圧の上昇で破壊されずに全体として浮き上がろうとしても、この力を上記布基礎で受け止めることで、このような土間コンクリートの浮き上がりが防止される。すなわち、上記土間コンクリートにかかる水圧上昇によって土間コンクリートが浮き上がって上記ベース部と上記土間コンクリートとの間に隙間が生じる事態を抑制することができる。
【0011】
上記土間コンクリートには屋内方向に凹む凹箇所が形成されており、この凹箇所の近傍に位置する上記布基礎の立上部に、配管を挿通するための開口部が形成されており、上記開口部に、当該開口部からの浸水を抑制する配管止水材を備えてもよい。これによれば、上記布基礎の立上部に配管を挿通し、且つこの配管回りから床下への浸水も抑制することができる。
【0012】
上記布基礎のベース部には、上記土間コンクリートの上記凹箇所の周囲領域と重なるように、屋内方向に突出する凸箇所が形成されていてもよい。これによれば、上記凸箇所において上記止水材を適切に配置することができる。
【0013】
防湿シートが上記土間コンクリートの下側に敷かれている一方、当該防湿シートは上記止水材の位置する箇所には敷かれないのがよい。これによれば、上記止水材の止水機能が上記防湿シートの介在で低下するのを回避できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明であれば、土間コンクリートの下側での水圧上昇によって布基礎のベースと土間コンクリートとの間から水が土間コンクリート上へ浸入してくるのを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の床下止水構造を示した説明図である。
【
図2】実施形態における床下浸水抑制の説明図である。
【
図3】
図1の床下止水構造の概略の作製工程例を示した説明図である。
【
図5】他の実施形態の床下止水構造を示した説明図である。
【
図6】他の実施形態の床下止水構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、この発明の一態様に係る実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1および
図2に示すように、実施形態にかかる床下止水構造100は、建物の布基礎1のベース部11の上面側に、当該建物の床下の土間コンクリート2の周囲部が重なって接触しており、この重なり箇所(打ち継ぎ箇所)における上記ベース部11の上面と上記土間コンクリート2の周囲部の下面との間に止水材3を備えている。さらに述べると、建物外周の布基礎1で囲われる閉じた領域内に上記土間コンクリート2が施されており、上記止水材3は、上記閉じた領域内において途切れずに環状に存在する。
【0017】
布基礎1の立上部12の高さは、例えば、告示で定められた300mmより450mm高い750mmとされており、布基礎1を越えて水が床下に浸入するのを極力防止できるようになっている。布基礎1の立上部12の高さは、上記の750mmに限定されない。
【0018】
上記止水材3は、ゴム等の弾性材からなるものでもよいが、この実施形態では、水分の吸収で膨張する粘土質材料(例えば、商品名クニシール等)からなり、例えば、帯状に加工されている。上記止水材3は、布基礎1のベース部11の縁から例えば40mm以上100mm以下の範囲で離れた上面部に帯状に付着される。この実施形態では、上記止水材3は、布基礎1のベース部11の縁から50mm離れて付着される。なお、後述する連結部材11aを設置しない場合、ベース部11と立上部12の隅に止水材3を配置する場合がある。
【0019】
上記土間コンクリート2は鉄筋入りである。上記土間コンクリート2下では、土が上記ベース部11の略上面位置まで戻されており、この土の上で上記鉄筋が組まれてコンクリートが打設され、土間コンクリート2が作製される。この土間コンクリートの厚さは、例えば、120mm以上300mm以下(一般土間は60mm厚程度)とされる。
【0020】
また、この実施形態では、上記布基礎1のベース部11からは複数の連結部材11aが所定の間隔で突出されており、上記連結部材11aに土間コンクリート2の鉄筋が継がれている。これにより、打設された土間用のコンクリートが連結部材11aを覆うように位置し、このコンクリートの硬化によって土間コンクリート2が上記布基礎1のベース部11に一体化される。
【0021】
上記連結部材11aは、例えば、略Z字形状の鉄筋からなる。連結部材11aは、Z字形状における鉛直棒状部の上側略半分を上記ベース部11上に突出させ、上側の上部水平棒状部の先端を屋内側に向けて配置される。なお、連結部材11aの下側の下部水平棒状部は、ベース部11内の鉄筋に継がれて当該ベース部11に固定されている。また、Z字形状の鉛直棒状部および下部水平棒状部は、ベース部11の側縁に位置する止水材3よりも屋外側に位置し、連結部材11aの上部水平棒状部は、止水材3の上方に位置する。
【0022】
また、土間コンクリート2には屋内方向に凹む凹箇所21が形成されている。この凹箇所21の近傍に位置する上記布基礎1の立上部12の下部(グランドレベルよりも下側)には、配管4を挿通するための開口部12aが形成されている。そして、上記開口部12aと当該開口部12aに通された配管4の外周との間に配管止水材5を備える。配管止水材5としては、上記した水分の吸収で膨張する粘土質材料、シーリング材、或いは、ゴム等からなるパッキンが用いられる。上記開口部12aの形成においては、設備配管用紙ボイドを用いることができる。また、パッキンを用いた配管止水において、商品名エコスリーブDAMを用いることができる。
【0023】
また、布基礎のベース部11には、土間コンクリート2の上記凹箇所21の周囲領域のうちの屋内側領域と重なるように、屋内方向に突出する凸箇所11bが形成されており、この凸箇所11bの上面に止水材3が付着されている。すなわち、土間コンクリート2の凹箇所21を迂回するようにベース部11と土間コンクリート2との重なり接触を確保し、この接触箇所に止水材3を付着させている。
【0024】
また、土間コンクリート2の下側に図示しない防湿シートが敷かれている。ただし、この防湿シートは上記止水材3の位置する箇所には敷かれていない。すなわち、止水材3と土間コンクリート2との間および止水材3とベース部11との境界には、上記防湿シートは存在していない。
【0025】
上記の実施形態にかかる床下止水構造100の施工の一例を以下に説明する。
図3に示すように、建物の施工地において、布基礎1を作製する。このとき、パイプ部材を布基礎1の立上部12の鉄筋にクリップ等で固定しておくことで、布基礎型枠内へのコンクリート投入によって、開口部12aが作製される。また、連結部材11aの下側をベース部11の鉄筋に止めておく。
【0026】
布基礎1が完成したら、止水材3を、土間コンクリート2の打設前に、布基礎1のベース部11の縁の上面部に押し付けて付着する。さらに、
図4に示すように、土間コンクリート2の凹箇所21の作製のための型枠Fをベース部11上に設置する。また、ベース部11横の土上で土間コンクリート2の鉄筋を組み上げ、この鉄筋に連結部材11aのZ字形状における上部水平棒状部を止める。そして、上記鉄筋およびベース部11を覆うように土間用コンクリートを打設し、土間コンクリート2を作製する。
【0027】
上記の構成であれば、布基礎1のベース部11の下側を通って土間コンクリート2の下側へと浸入した水は、止水材3によって、ベース部11と土間コンクリート2との境界を通ることができず、土間コンクリート2上への浸水を抑制することができる。
【0028】
上記止水材3が、水分の吸収で膨張する粘土質材料からなっていると、土間コンクリート2が経年変化で痩せても、上記止水材3が洪水等に際して水の吸収で膨張し、隙間が封止されるので、浸水の抑制性能を高めることができる。なお、止水材3は、上記粘土質材料からなるものに限らない。
【0029】
上記土間コンクリート2が鉄筋入りであると、止水材3の存在によって土間コンクリート2下で上昇する水圧の逃げ場が無くなることになっても、上記鉄筋入りの土間コンクリート2は大きな力に耐えるので、この土間コンクリート2が破損する事態を抑制することができる。なお、地盤の硬さの点から土間コンクリートに鉄筋は不要とされる場合も、水圧上昇による土間コンクリート2の破壊防止の観点から上記鉄筋が施される。
【0030】
上記布基礎1のベース部11から突出された連結部材11aに土間コンクリート2の鉄筋が継がれることで、当該土間コンクリート2が布基礎1のベース部11に一体化されていると、土間コンクリート2が水圧の上昇で破壊されずに全体として浮き上がろうとしても、この力を布基礎1が受け止めるので、このような土間コンクリート2の浮き上がりが防止される。すなわち、土間コンクリート2にかかる水圧の上昇によって当該土間コンクリート2が浮き上がってベース部11と土間コンクリート2との間に隙間が生じる事態を抑制することができる。
【0031】
また、立上部12に形成した開口部12aに配管止水材5を備えることで、配管回りからの浸水も抑制される。
【0032】
また、布基礎のベース部11に土間コンクリート2の凹箇所21の周囲領域と重なる位置に凸箇所11bが形成されていると、上記凸箇所11b上で止水材3を適切に位置させることができる。
【0033】
上記防湿シートが上記止水材3の位置する箇所に敷かないでおくと、上記止水材3の止水機能が上記防湿シートによって低下するのを回避できる。
【0034】
なお、
図5に示すように、連結部材11aを備えずに、土間コンクリート2を厚くし、この土間コンクリート2の単位面積当たりの重量を増大させて、当該土間コンクリート2が水圧で浮かない構造とすることができる。すなわち、土間コンクリート2が布基礎1のベース部11に一体化しない構造としてもよい。なお、土間コンクリート2の厚さが、布基礎のベース部11の上面からの浸水高さの1/2.3程度以上あれば、土間コンクリート2は土間下の水圧上昇では浮き上がらないと考えられる。
【0035】
また、上記凸箇所11bを有する構造に限らず、
図6に示すように、凹箇所21の屋内側への入り込み長さに対して上記ベース部11の屋内側への入り込み幅が十分広い場合には、上記凸箇所11bを設けない構造とすることができる。
【0036】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 :布基礎
2 :土間コンクリート
3 :止水材
4 :配管
5 :配管止水材
11 :ベース部
11a :連結部材
11b :凸箇所
12 :立上部
12a :開口部
21 :凹箇所
100 :床下止水構造