(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149704
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】横補剛構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
E04B5/40 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051972
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】牛米 歩
(72)【発明者】
【氏名】赤丸 一朗
(72)【発明者】
【氏名】石丸 亮
(57)【要約】
【課題】重量を低減すると共に床下空間を広く確保することができる横補剛構造を提供する。
【解決手段】横補剛構造100は、梁材2とデッキプレート3との間に配置された方杖部材6を備えている。方杖部材6は、デッキプレート3を介した床スラブ10全体への応力伝達を行うことができるため、梁材2に対する横補剛材として機能することができる。ここで、方杖部材6の下端部6aは梁材2に連結され、方杖部材6の上端部6bはデッキプレート3に連結される。従って、方杖部材6の上端部6bを他の梁材まで延ばさなくとも、連結対象の梁材2付近のデッキプレート3に連結することで、方杖部材6のスパンを短くすることができる。従って、横補剛材の重量を軽くすることができる。また、方杖部材6のスパンを短くすることで、床下空間SP(
図1参照)を広く確保することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梁材と、
前記梁材上に配置されたデッキプレートと、
前記梁材と前記デッキプレートとの間に配置された方杖部材と、を備え、
前記方杖部材の下端部は前記梁材に連結され、前記方杖部材の上端部は前記デッキプレートに連結される、横補剛構造。
【請求項2】
前記デッキプレートは、所定の方向に延びる山部及び谷部を有する、請求項1に記載の横補剛構造。
【請求項3】
前記方杖部材の前記上端部は、上側連結金物を介して前記デッキプレートに連結され、
前記上側連結金物は、ボルトによって前記デッキプレートに固定される、請求項1又は2に記載の横補剛構造。
【請求項4】
前記方杖部材の前記上端部は、上側連結金物を介して前記デッキプレートに連結され、
前記上側連結金物は、前記デッキプレートの断面形状に沿った形状を有することで、当該デッキプレートに嵌め込まれることによって固定される、請求項1又は2に記載の横補剛構造。
【請求項5】
前記方杖部材の前記上端部は、前記デッキプレートに挿入されたボルトを介して、前記デッキプレートに連結される、請求項1又は2に記載の横補剛構造。
【請求項6】
前記方杖部材の前記下端部は、下側連結金物を介して前記梁材に連結される、請求項1~5の何れか一項に記載の横補剛構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横補剛構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横方向に延びる梁材と、梁材上に配置されたデッキプレートと、を有する床構造として、特許文献1に記載されたものが知られている。この構造では、大梁に対して、小梁が設けられている。更に、大梁と小梁との間に孫梁を架け渡すことによって、梁材の横座屈などを抑制するための横補剛構造を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、一対の梁材間に孫梁のような横補剛材を架け渡した場合、当該横補剛材のスパンが長くなってしまうことにより、床構造全体の重量が大きくなるという問題が生じる。また、このような横補剛材は、床下空間において一対の梁材間に橋渡し形式で設けられる。従って、床下空間を通る配管やダクトの配置に制約が生じる場合もある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、重量を低減すると共に床下空間を広く確保することができる横補剛構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る横補剛構造は、梁材と、梁材上に配置されたデッキプレートと、梁材とデッキプレートとの間に配置された方杖部材と、を備え、方杖部材の下端部は梁材に連結され、方杖部材の上端部はデッキプレートに連結される。
【0007】
本発明に係る横補剛構造は、梁材とデッキプレートとの間に配置された方杖部材を備えている。方杖部材は、デッキプレートを介した床スラブ全体への応力伝達を行うことができるため、梁材に対する横補剛材として機能することができる。ここで、方杖部材の下端部は梁材に連結され、方杖部材の上端部はデッキプレートに連結される。従って、方杖部材の上端部を他の梁材まで延ばさなくとも、連結対象の梁材付近のデッキプレートに連結することで、方杖部材のスパンを短くすることができる。従って、横補剛材の重量を軽くすることができる。また、方杖部材のスパンを短くすることで、床下空間を広く確保することができる。以上より、横補剛構造の重量を低減すると共に床下空間を広く確保することができる。
【0008】
デッキプレートは、所定の方向に延びる山部及び谷部を有してよい。この場合、デッキプレートの山部及び谷部の形状を有効に利用して、方杖部材の上端部を連結することが可能となる。また、デッキプレートを含めた床スラブ全体の強度を向上することで、方杖部材の横補剛材としての性能を高めることもできる。
【0009】
方杖部材の上端部は、上側連結金物を介してデッキプレートに連結され、上側連結金物は、ボルトによってデッキプレートに固定されてよい。この場合、コンクリートの打設前には、デッキプレートに対して、上側連結金物のボルトをデッキ用インサートとして仕込んでおくことができる。これにより、コンクリートを打設することで、上側連結金物を床スラブと一体化させることができる。先に上側連結金物をデッキプレートに連結させておくことで、コンクリートの打設後に、床スラブの下側で作業が完結する形で、方杖部材をデッキプレートに連結することが可能となる。
【0010】
方杖部材の上端部は、上側連結金物を介してデッキプレートに連結され、上側連結金物は、デッキプレートの断面形状に沿った形状を有することで、当該デッキプレートに嵌め込まれることによって固定されてよい。この場合、デッキプレートに嵌め込むだけで容易に上側連結金物を連結することができる。また、コンクリートの打設後に上側連結金物をデッキプレートに連結することも可能となる。また、コンクリートの打設後に、床スラブの下側で作業が完結する形で、方杖部材をデッキプレートに連結することが可能となる。
【0011】
方杖部材の上端部は、デッキプレートに挿入されたボルトを介して、デッキプレートに連結されてよい。この場合、ボルトをデッキプレートに挿入した状態でコンクリートを打設することで床スラブと一体化させておくことができる。そして、後から方杖部材をボルトを介してデッキプレートに連結させることが可能である。先にボルトをデッキプレートに連結させておくことで、コンクリートの打設後に、床スラブの下側で作業が完結する形で、方杖部材をデッキプレートに連結することが可能となる。
【0012】
方杖部材の下端部は、下側連結金物を介して梁材に連結されてよい。この場合、梁材に対する方杖部材の下端部の連結位置の制約を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、重量を低減すると共に床下空間を広く確保することができる横補剛構造を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る横補剛構造の概略断面図である。
【
図4】方杖部材の上端部の他の連結構造を示す斜視図である。
【
図5】方杖部材の上端部の他の連結構造を示す正面図である。
【
図7】方杖部材の下端部の連結構造を示す斜視図である。
【
図8】変形例に係る横補剛構造の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る横補剛構造100の概略断面図である。
図2は、横補剛構造100の概略平面図である。
図2ではコンクリートが省略されている。
図1及び
図2に示すように、横補剛構造100は、梁材2と、デッキプレート3と、コンクリート4と、方杖部材6と、を備える。
【0017】
梁材2は、水平方向に延びる部材である。梁材2は、H型鋼によって構成されており、上端側に広がるフランジ部11と、下端側に広がるフランジ部12と、フランジ部11,12間で上下方向に延びるウェブ部13と、を備える。フランジ部11,12及びウェブ部13は長手方向に延びる。梁材2の長手方向の所定位置には、フランジ部11,12間に、ウェブ部13から垂直に延びる補強壁14が形成されている。
【0018】
水平方向における一の方向をX軸方向とし、水平方向においてX軸方向と直交する方向をY軸方向とする。この場合、
図2に示すように、横補剛構造100は、Y軸方向に延びる梁材2A,2Bと、X軸方向に延びる梁材2C,2Dと、を備える。梁材2A,2Bは、X軸方向に互いに離間した状態で対向するように配置される。梁材2AはX軸方向の負側に配置され、梁材2BはX軸方向の正側に配置される。梁材2C,2Dは、Y軸方向に互いに離間した状態で対向するように配置される。梁材2CはY軸方向の負側に配置され、梁材2DはY軸方向の正側に配置される。梁材2Aと梁材2Cとの間には柱材7Aが設けられる。梁材2Aと梁材2Dとの間には柱材7Bが設けられる。梁材2Bと梁材2Cとの間には柱材7Cが設けられる。梁材2Bと梁材2Dとの間には柱材7Dが設けられる。
【0019】
また、本実施形態では、X軸方向に対向する一対の梁材2A,2B間の中途位置に、Y軸方向に延びる補強用の梁材2E,2Fが設けられる。梁材2E,2Fは、X軸方向において他の梁材と離間した位置にて、梁材2C,2D間に架け渡されている。なお、梁材2C,2Dと梁材2Cとの接合部付近には、方杖部材8が設けられている。また、梁材2C,2Dと梁材2Dとの接合部付近には、方杖部材8が設けられている。方杖部材8は、上端部が梁材2E,2Fの下面に連結されている点以外は、後述の方杖部材6と同様な構造を有している。
【0020】
デッキプレート3は、梁材2上に配置される板状の部材である。
図1に示すように、デッキプレート3は、梁材2のフランジ部11の上面に配置される。
図2に示すように、デッキプレート3は、長方形をなしており、四方の辺部を梁材2A,2B,2C,2Dによって支持されている。
図5に示すように、デッキプレート3は、Y軸方向に山部3aと谷部3bとを交互に有している。山部3aは、谷部3bの底面から上方へ向かって突出するように設けられる。複数の山部3aは、互いにY軸方向に離間した状態で、X軸方向に互いに平行をなすように延びている。また、複数の谷部3bは、互いにY軸方向に離間した状態で互いに平行をなすように延びている。本実施形態では、デッキプレート3は、上壁部3cと、底壁部3dと、側壁部3e,3fと、を有している。側壁部3e,3fは、上壁部3cと底壁部3dとを連結する壁部である。この場合、上壁部3c、側壁部3e,3fによって山部3aが構成される。底壁部3d、側壁部3e,3fによって谷部3bが構成される。
【0021】
図1に示すように、コンクリート4は、デッキプレート3の上面側に打設される。コンクリート4は、デッキプレート3の谷部3b(
図5参照)の内部に充填された状態で、山部3a(
図5参照)の上面よりも高い位置まで充填される。このように、デッキプレート3に対してコンクリート4が打設されることで、床スラブ10が構成される。
【0022】
方杖部材6は、梁材2とデッキプレート3との間に配置される部材である。方杖部材6の下端部6aは梁材2に連結され、方杖部材6の上端部6bはデッキプレート3に連結される。方杖部材6は、梁材2とデッキプレート3との間の角部付近において、斜め上方に直線状に延びる部材である。方杖部材6の下端部6aは、下側のフランジ部12付近に連結されている。方杖部材6の下端部6aは、ウェブ部13よりもデッキプレート3側(
図1においてX軸方向の正側)の位置に連結される。方杖部材6の上端部6bは、デッキプレート3の下面のうち、梁材2から離間した位置に連結されている。これにより、デッキプレート3は、梁材2に対する横補剛材として機能することができる。また、方杖部材6は、デッキプレート3を補強することができる。
【0023】
図2に示すように、本実施形態では、梁材2AからX軸方向の正側に延びるように方杖部材6が設けられている。また、梁材2Aには、Y軸方向に互いに離間するように、複数箇所(3箇所)に方杖部材6が設けられている。梁材2BからX軸方向の負側に延びるように方杖部材6が設けられている。また、梁材2Bには、Y軸方向に互いに離間するように、複数箇所(3箇所)に方杖部材6が設けられている。
【0024】
図3を参照して、方杖部材6の構造について更に詳細に説明する。
図3(a)に示すように、一箇所の横補剛箇所には、一対の方杖部材6A,6Bが設けられている。方杖部材6A,6Bは、コ字状の断面を有した状態で長手方向に延びる鋼材である。方杖部材6A,6Bは、底壁部6cと、当該底壁部6cから立ち上がる一対の側壁部6d,6eを有している。方杖部材6Aの底壁部6cと方杖部材6Bの底壁部6cとは、互いにY軸方向に対向するように配置される。また、方杖部材6Aの側壁部6d,6eと、方杖部材6Bの側壁部6d,6eとは、Y軸方向において互いに反対側へ突出する。ただし、方杖部材6A,6Bの断面形状は特に限定されるものではない。また、方杖部材は必ずしも二つの部材から構成される必要もなく、構成材料の数量は適宜変更可能である。例えば、H型鋼によって方杖部材を構成してもよい。
【0025】
方杖部材6A,6Bの下端部6aは、補強壁14の下端部に連結されている(
図7(a)も参照)。具体的には、方杖部材6Aの底壁部6cと方杖部材6Bの底壁部6cとは、補強壁14を挟み込む。また、方杖部材6Aの底壁部6c、方杖部材6Bの底壁部6c、及び補強壁14には、ボルト17を挿通するための貫通孔が形成されている。従って、各貫通孔にボルト17を挿通させて締結することで、方杖部材6Aの底壁部6c及び方杖部材6Bの底壁部6cは、補強壁14を挟み込んだ状態で当該補強壁14に固定される。なお、ボルト17は、上下方向ではなく横方向に延びた状態で、方杖部材6A,6Bに挿入されるように設けられている。従って、一本のボルト17を支点として方杖部材6A,6Bを回転させることができる。他方のボルト17に対する貫通孔は、当該ボルト17が相対移動できるように、長孔としてもよい。この場合、方杖部材6A,6Bを回転させることで、デッキプレート3に対する上端部6bの取付位置を調整することができる。
【0026】
方杖部材6A,6Bの上端部6bは、上側連結金物20を介してデッキプレート3に連結される。本実施形態においては、上側連結金物20は、ボルト21によってデッキプレート3に固定される。また、方杖部材6A,6Bの上端部6bは、ボルト22によって上側連結金物20に固定される。これによって、方杖部材6A,6Bの上端部6bは、ボルト22、上側連結金物20、ボルト21を介してデッキプレート3に連結される。
【0027】
上側連結金物20は、デッキプレート3に固定される本体部24と、方杖部材6A,6Bを固定する固定片26と、を備える。本体部24は、デッキプレート3の底壁部3dの下面に固定される板状の部材によって構成される。本体部24は、デッキプレート3の底壁部3dと平行をなすように広がる。デッキプレート3の底壁部3d及び本体部24には、ボルト21を挿通させるための貫通孔が形成されている。従って、各貫通孔にボルト21を挿通させて締結することで、本体部24は、デッキプレート3の底壁部3dに固定される。
図3(b)に示すように、ボルト21は、デッキプレート3の底壁部3dから上方へ延びるように配置される。従って、コンクリート4が打設された場合、ボルト21は床スラブ10(
図1参照)と一体化する。
【0028】
固定片26は、本体部24の下面から下方へ向かって延びる板状の部材によって構成される。固定片26は、方杖部材6A,6Bの底壁部6cと平行をなすように広がる。方杖部材6Aの底壁部6cと方杖部材6Bの底壁部6cとは、固定片26を挟み込む。また、方杖部材6Aの底壁部6c、方杖部材6Bの底壁部6c、及び固定片26には、ボルト22を挿通するための貫通孔が形成されている。従って、各貫通孔にボルト22を挿通させて締結することで、方杖部材6Aの底壁部6c及び方杖部材6Bの底壁部6cは、固定片26を挟み込んだ状態で当該固定片26に固定される。
【0029】
次に、本実施形態に係る横補剛構造100の作用・効果について説明する。
【0030】
まず、比較例に係る横補剛構造について説明する。梁材(大梁)の横座屈を防止するために横補剛材として孫梁を設ける場合がある。ここで、近年の建築物の高層化・大スパン化に対して建築物の重量を低減することが求められているが、
図1において仮想線で示すように、孫梁80は一対の梁材2A,2E間で延びる長尺の部材であるため、重量が重くなるという問題がある。更に、梁材2A,2E間に孫梁80が床下にて橋渡し形式で位置するため、床下空間を通る配管やダクトの配置に制約が生じるという問題が生じる。
【0031】
これに対し、本実施形態に係る横補剛構造100は、梁材2とデッキプレート3との間に配置された方杖部材6を備えている。方杖部材6は、デッキプレート3を介した床スラブ10全体への応力伝達を行うことができるため、梁材2に対する横補剛材として機能することができる。ここで、方杖部材6の下端部6aは梁材2に連結され、方杖部材6の上端部6bはデッキプレート3に連結される。従って、方杖部材6の上端部6bを他の梁材まで延ばさなくとも、連結対象の梁材2付近のデッキプレート3に連結することで、方杖部材6のスパンを短くすることができる。従って、横補剛材の重量を軽くすることができる。また、方杖部材6のスパンを短くすることで、床下空間SP(
図1参照)を広く確保することができる。以上より、横補剛構造100の重量を低減すると共に床下空間SPを広く確保することができる。
【0032】
デッキプレート3は、X軸方向に延びる山部3a及び谷部3bを有してよい。この場合、デッキプレート3の山部3a及び谷部3bの形状を有効に利用して、方杖部材6の上端部6bを連結することが可能となる。また、デッキプレート3を含めた床スラブ全体の強度を向上することで、方杖部材6の横補剛材としての性能を高めることもできる。
【0033】
方杖部材6の上端部6bは、上側連結金物20を介してデッキプレート3に連結され、上側連結金物20は、ボルト21によってデッキプレート3に固定されてよい。この場合、コンクリート4の打設前には、デッキプレート3に対して、上側連結金物20のボルト21をデッキ用インサートとして仕込んでおくことができる。これにより、コンクリート4を打設することで、上側連結金物20を床スラブと一体化させることができる。このように、先に上側連結金物20をデッキプレート3に連結させておくことで、コンクリート4の打設後に、床スラブ10の下側で作業が完結する形で、方杖部材6をデッキプレート3に連結することが可能となる。また,上側連結金物20を用いた場合、凹凸の断面形状のデッキプレート3に限らず、平滑なデッキプレート3にも適用可能であり,デッキプレート3の形状に影響を受けずに連結可能とすることができる。
【0034】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0035】
例えば、上側連結金物の構造は、
図3に示すものに限定されない。例えば、
図4(a)及び
図5(a)に示す上側連結金物120が採用されてもよい。上側連結金物120は、デッキプレート3の断面形状に沿った形状を有することで、当該デッキプレート3に嵌め込まれることによって固定される。具体的に、上側連結金物120は、本体部121と、固定片122と、係止部123,124と、を備える。本体部121は、デッキプレート3の底壁部3dに沿って平板状に広がる。本体部121は、
図3(a)の本体部24とは異なり、ボルトを挿通させるための貫通孔を有しておらず、デッキプレート3に直接固定される構成を有していない。係止部123は、デッキプレート3の側壁部3fに沿って平板状に広がる。係止部123は、デッキプレート3の側壁部3eに沿って平板状に広がる。係止部123,124は、デッキプレート3の側壁部3f,3eに係止される。なお、固定片122は、
図3の固定片26と同様の構成を有している。
【0036】
図5(a)に示すように、係止部123,124は、本体部121の上面から傾斜した状態で上方へ延びるように突出している。これによって、本体部121及び係止部123,124の組み合わせによって、デッキプレート3の谷部3bの断面形状に対応するような台形状の形状が構成される。また、係止部123,124の上端部には、爪部123a,124aが形成されている。爪部123a,124aは、デッキプレート3の側壁部3f,3eに形成された段差部126,127に引っ掛かるように、デッキプレート3側に屈曲している。このような構成により、上側連結金物120をデッキプレート3に取り付ける際には、デッキプレート3の谷部3bに対して下方から上側連結金物120を嵌め込む。爪部123a,124aが側壁部3f,3eの段差部126,127に引っ掛かることにより、係止部123,124が側壁部3f,3eに係止される。これにより、上側連結金物120がデッキプレート3に取り付けられる。なお、係止部123,124は、側壁部3f,3eに対してビス125(
図4(a)参照)で固定されている。当該ビス留めによって、上側連結金物120のデッキプレート3のスパン方向に対するすべりを抑制できる。
【0037】
以上のように、方杖部材6の上端部6bは、上側連結金物120を介してデッキプレート3に連結され、上側連結金物120は、デッキプレート3の断面形状に沿った形状を有することで、当該デッキプレート3に嵌め込まれることによって固定されてよい。この場合、デッキプレート3に嵌め込むだけで容易に上側連結金物120を連結することができる。また、コンクリート4の打設後に上側連結金物120をデッキプレート3に連結することも可能となる。また、コンクリート4の打設後に、床スラブ10の下側で作業が完結する形で、方杖部材6をデッキプレート3に連結することが可能となる。
【0038】
また、方杖部材6は、上側連結金物を用いることなくデッキプレート3に接続されてよい。例えば、
図4(b)及び
図5(b)に示す構造を採用してもよい。
図4(b)及び
図5(b)に示す例では、方杖部材6A,6Bの上端部6bは、デッキプレート3に挿入されたボルト31を介して、デッキプレート3に連結される。ボルト31は、デッキプレート3の側壁部3e,3fを貫通する長尺のボルトである。これに対し、方杖部材6Aは側壁部3eと対向する位置に配置され、方杖部材6Bは側壁部3fと対向する位置に配置され、ボルト31が挿入されることによってデッキプレート3に連結される。
【0039】
以上のように、方杖部材6の上端部6bは、デッキプレート3に挿入されたボルト31を介して、デッキプレート3に連結されてよい。この場合、ボルト31をデッキプレート3に挿入した状態でコンクリート4を打設することで床スラブ10と一体化させておくことができる。そして、後から方杖部材6をボルト31を介してデッキプレート3に連結させることが可能である。先にボルト31をデッキプレート3に連結させておくことで、コンクリート4の打設後に、床スラブ10の下側で作業が完結する形で、方杖部材6をデッキプレート3に連結することが可能となる。
【0040】
以上のように、デッキプレート3に予め上側連結金物20やボルト31を仕込んだり、あるいは後付け可能な上側連結金物120を介することで、方杖部材6の床スラブ10への応力伝達を可能とし、且つ、後施工を可能とすることで施工性を向上できる。
【0041】
また、方杖部材の上端部をコンクリート4と一体化させる場合、次のような課題が生じる。例えば、プレキャスト床板と一体化させるために方杖部材の上端部にアンカー筋を通して場所打ちコンクリート内に突設させる場合、方杖部材の取り付け作業が床下面のみで完結しない点、プレキャスト床板と一体化施工となる方杖部材の固定にコンクリートの養生期間を伴う点などの課題がある。また、方杖部材をプレキャスト床板の目地に突設させる必要があるため、方杖部材は薄い平鋼に限定される。また、方杖部材を取り付けた状態でコンクリートを養生する必要があるため、後施工ができないという課題もある。これに対し、上述の実施形態や変形例では、コンクリート4の打設後に、床スラブ10の下側で作業が完結する形で、方杖部材6をデッキプレート3に連結することが可能となるため、上述の課題が生じない。また、方杖部材をデッキプレート3への接合としている点、横補剛材の断面が限定されない点、床スラブ10に予め上側金物などを仕込むことで後施工が可能となる点において、メリットがある。
【0042】
デッキプレート3形状は特に限定されず、様々なタイプのデッキプレートに対して本発明の構造を適用することができる。すなわち、山部及び谷部の形状は特に限定されない。また、例えば、
図6に示すようなフラットタイプのデッキプレート103に本発明の構造を適用してもよい。
図6に示すように、デッキプレート103は、平面部104と、山部106と、を備える。平面部104は、XY平面と平行に広がる板状の部分である。山部106は、平面部104から下方へ向かって突出してX軸方向に延びる部分である。山部106は、Y軸方向に互いに離間するように所定のピッチで設けられる。方杖部材6A,6Bは、山部106に対して連結される。
【0043】
また、上述の実施形態では、方杖部材6の下端部6aは補強壁14に連結されていたが、連結方法は特に限定されない。例えば、
図7(b)に示すように、方杖部材6A,6Bの下端部6aは、下側連結金物90を介して梁材2に連結されてもよい。この場合、梁材2に対する方杖部材6A,6Bの下端部6aの連結位置の制約を低減することができる。具体的に、下側連結金物90は、上金物91と、下金物92と、中間金物93と、を備える。上金物91は、フランジ部12の上面に配置される本体部91aと、方杖部材6A,6Bに挟まれるように固定される固定片91bと、を有する。下金物92は、フランジ部12の下面に配置される。中間金物93は、フランジ部12と同じ厚みを有しており、上金物91の本体部91aと下金物92とで挟まれる。上金物91の本体部91a、中間金物93、及び下金物92をボルトで固定することで、下側連結金物90がフランジ部12に固定される。
【0044】
なお、
図7(a)(b)の構造によれば、方杖部材6の下端部6aを梁材2に連結するために、フランジ部12に孔を形成しなくともよい構造としたり、溶接を行わなくてもよい構造とすることができる。例えば、フランジ部12に孔を形成して、方杖部材6をボルト接合する場合、フランジ部12への穿孔により梁材2の断面性能が低下し,本来保有すべき耐力・変形能力を阻害する可能性がある。また、方杖部材6を溶接接合とする場合、火花等が飛び散る危険性から、溶接作業時に下方での並行作業ができず、作業効率が低下する可能性がある。また、作業者にとっては、上向き作業となるため作業性の低下・安全衛生管理の徹底を要する。
【0045】
方杖部材6が設けられる箇所、及び方向は限定されない。例えば、小梁に対応する梁材2E,2Fに方杖部材6が設けられてもよい。また、梁材2C,2Dに対して、Y軸方向に延びるような方杖部材6を設けてもよい。
【0046】
また、梁材の構造も特に限定されない。例えば、
図8に示すように、小梁に該当する梁材が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2…梁材、3…デッキプレート、3a…山部、3b…谷部、6…方杖部材、20,120…上側連結金物、90…下側連結金物、100…横補剛構造。