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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149710
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】液晶素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220929BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B5/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051981
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井桁 幸一
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
【Fターム(参考)】
2H148FA04
2H148FA13
2H148FA21
2H149AA00
2H149AB01
2H149BA05
2H149BA22
2H149FA27W
(57)【要約】
【課題】特定波長の光を取り出す液晶素子を提供することにある。
【解決手段】本実施形態の液晶素子は、第1内面及び第1外面を有する第1透明基板と、前記第1内面に配置された第1配向膜と、前記第1透明基板と対向し、第2内面及び第2外面を有する第2透明基板と、前記第2内面に配置された第2配向膜と、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した第1液晶層と、を備え、前記第1液晶層は、第1コレステリック液晶を含み、前記第1外面を透過した入射光のうち、第1波長の第1円偏光を反射する反射面を有し、前記第1コレステリック液晶の第1螺旋軸は、前記第1液晶層の全域に亘り、一様な方向に傾斜し、前記第1外面及び前記第2外面は、前記第1液晶層で反射された前記第1円偏光を全反射する界面を形成している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内面及び第1外面を有する第1透明基板と、
前記第1内面に配置された第1配向膜と、
前記第1透明基板と対向し、第2内面及び第2外面を有する第2透明基板と、
前記第2内面に配置された第2配向膜と、
前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した第1液晶層と、を備え、
前記第1液晶層は、第1コレステリック液晶を含み、前記第1外面を透過した入射光のうち、第1波長の第1円偏光を反射する反射面を有し、
前記第1コレステリック液晶の第1螺旋軸は、前記第1液晶層の全域に亘り、一様な方向に傾斜し、
前記第1外面及び前記第2外面は、前記第1液晶層で反射された前記第1円偏光を全反射する界面を形成している、液晶素子。
【請求項2】
前記第2配向膜と前記第1液晶層LCとの境界に対する前記第1螺旋軸の傾斜角は、69°より小さい、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項3】
さらに、
前記第2透明基板と対向し、第3内面及び第3外面を有する第3透明基板と、
前記第3内面に配置された第3配向膜と、
前記第3透明基板と対向し、第4内面及び第4外面を有する第4透明基板と、
前記第4内面に配置された第4配向膜と、
前記第3配向膜と前記第4配向膜との間に位置し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した第2液晶層と、を備え、
前記第2液晶層は、第2コレステリック液晶を含み、前記第1円偏光とは異なる第2円偏光を反射する反射面を有し、
前記第2コレステリック液晶の第2螺旋軸は、前記第2液晶層の全域に亘り、一様な方向に傾斜し、
前記第3外面及び前記第4外面は、前記第2液晶層で反射された前記第2円偏光を全反射する界面を形成している、請求項1に記載の液晶素子。
【請求項4】
前記第4配向膜と前記第2液晶層との境界に対する前記第2螺旋軸の傾斜角は、前記第2配向膜と前記第1液晶層との境界に対する前記第1螺旋軸の傾斜角と同等であり、且つ、69°より小さい、請求項3に記載の液晶素子。
【請求項5】
前記第2コレステリック液晶の旋回方向は、前記第1コレステリック液晶の旋回方向とは逆回りであり、
前記第2コレステリック液晶の螺旋ピッチは、前記第1コレステリック液晶の螺旋ピッチと同等であり、
前記第2円偏光は、前記第1波長の光のうち、前記第1円偏光とは逆回りの円偏光である、請求項3に記載の液晶素子。
【請求項6】
前記第2コレステリック液晶の螺旋ピッチは、前記第1コレステリック液晶の螺旋ピッチとは異なり、
前記第2円偏光は、前記第1波長とは異なる第2波長の円偏光である、請求項3に記載の液晶素子。
【請求項7】
第1内面及び第1外面を有する第1透明基板と、
第2内面及び第2外面を有する第2透明基板と、
前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に位置し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した第1液晶層と、
前記第1液晶層と前記第2透明基板との間に位置し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した第2液晶層と、を備え、
前記第1液晶層は、第1コレステリック液晶を含み、前記第1外面を透過した入射光のうち、第1波長の第1円偏光を反射する反射面を有し、
前記第1コレステリック液晶の第1螺旋軸は、前記第1液晶層の全域に亘り、一様な方向に傾斜し、
前記第2液晶層は、第2コレステリック液晶を含み、前記第1円偏光とは異なる第2円偏光を反射する反射面を有し、
前記第2コレステリック液晶の第2螺旋軸は、前記第2液晶層の全域に亘り、一様な方向に傾斜し、
前記第1外面及び前記第2外面は、前記第1液晶層で反射された前記第1円偏光、及び、前記第2液晶層で反射された前記第2円偏光をそれぞれ全反射する界面を形成している、液晶素子。
【請求項8】
さらに、
前記第1透明基板と対向し、第3内面及び第3外面を有する第3透明基板と、
前記第2透明基板と対向し、第4内面及び第4外面を有する第4透明基板と、
前記第3外面及び前記第4外面に接する接着層と、を備え、
前記第1液晶層は、前記第1透明基板と前記第3透明基板とに間に位置し、
前記第2液晶層は、前記第2透明基板と前記第4透明基板とに間に位置している、請求項7に記載の液晶素子。
【請求項9】
さらに、
前記第1内面に配置され、前記第1液晶層に接する第1配向膜と、
前記第2内面に配置され、前記第2液晶層に接する第2配向膜と、
前記第3内面に配置され、前記第1液晶層に接する第3配向膜と、
前記第4内面に配置され、前記第2液晶層に接する第4配向膜と、を備えている、請求項8に記載の液晶素子。
【請求項10】
さらに、
前記第1液晶層と前記第2液晶層との間に位置し、第3内面及び第3外面を有する第3透明基板と、
前記第1内面及び前記第1液晶層に接する第1接着層と、
前記第3外面及び前記第2液晶層に接する第2接着層と、を備えている、請求項7に記載の液晶素子。
【請求項11】
さらに、
前記第3内面に配置され、前記第1液晶層に接する第1配向膜と、
前記第2内面に配置され、前記第2液晶層に接する第2配向膜と、を備えている、請求項10に記載の液晶素子。
【請求項12】
さらに、
前記第1内面に配置され、前記第1液晶層に接する第1配向膜と、
前記第2内面に配置され、前記第2液晶層に接する第2配向膜と、
前記第1液晶層及び前記第2液晶層に接する接着層と、を備えている、請求項7に記載の液晶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液晶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、コレステリック液晶を用いた各種液晶素子が検討されている。コレステリック液晶は、螺旋ピッチに応じて特定波長の光を反射する性質を有している。一例では、コレステリック液晶の螺旋軸が基板面に垂直な領域、螺旋軸が基板面に平行な領域、及び、螺旋軸が基板面に対して傾斜した領域を有する反射板が提案されている。また、他の例では、液晶層に印加する電圧を制御することで特定波長の光を選択反射する表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-215342号公報
【特許文献2】特開2012-198351号公報
【特許文献3】特開2013-54071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、特定波長の光を取り出す液晶素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の液晶素子は、
第1内面及び第1外面を有する第1透明基板と、前記第1内面に配置された第1配向膜と、前記第1透明基板と対向し、第2内面及び第2外面を有する第2透明基板と、前記第2内面に配置された第2配向膜と、前記第1配向膜と前記第2配向膜との間に位置し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した第1液晶層と、を備え、前記第1液晶層は、第1コレステリック液晶を含み、前記第1外面を透過した入射光のうち、第1波長の第1円偏光を反射する反射面を有し、前記第1コレステリック液晶の第1螺旋軸は、前記第1液晶層の全域に亘り、一様な方向に傾斜し、前記第1外面及び前記第2外面は、前記第1液晶層で反射された前記第1円偏光を全反射する界面を形成している。
【0006】
本実施形態の液晶素子は、
第1内面及び第1外面を有する第1透明基板と、第2内面及び第2外面を有する第2透明基板と、前記第1透明基板と前記第2透明基板との間に位置し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した第1液晶層と、前記第1液晶層と前記第2透明基板との間に位置し、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化した第2液晶層と、を備え、前記第1液晶層は、第1コレステリック液晶を含み、前記第1外面を透過した入射光のうち、第1波長の第1円偏光を反射する反射面を有し、前記第1コレステリック液晶の第1螺旋軸は、前記第1液晶層の全域に亘り、一様な方向に傾斜し、前記第2液晶層は、第2コレステリック液晶を含み、前記第1円偏光とは異なる第2円偏光を反射する反射面を有し、前記第2コレステリック液晶の第2螺旋軸は、前記第2液晶層の全域に亘り、一様な方向に傾斜し、前記第1外面及び前記第2外面は、前記第1液晶層で反射された前記第1円偏光、及び、前記第2液晶層で反射された前記第2円偏光をそれぞれ全反射する界面を形成している。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る液晶素子100の一例を示す断面図である。
図2図2は、第1螺旋軸AX1の傾斜角θ1を説明するための図である。
図3図3は、第1コレステリック液晶CL1の三次元的なレイアウトを模式的に示す図である。
図4図4は、第1コレステリック液晶CL1の二次元的なレイアウトを模式的に示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る液晶素子100の一例を示す断面図である。
図6図6は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図7図7は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図8図8は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図9図9は、基本構成を示す断面図である。
図10図10は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図11図11は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図12図12は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図13図13は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図14図14は、液晶素子100を備えた光学システム200の一例を示す断面図である。
図15図15は、図14に示した光学システム200の平面図である。
図16図16は、液晶素子100を備えた光学システム200の一例を示す断面図である。
図17図17は、図16に示した光学システム200の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸、及び、Z軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向または第1方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向または第2方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向または第3方向と称する。X軸及びY軸によって規定される面をX-Y平面と称する。X-Y平面を見ることを平面視という。第1方向X及び第2方向Yは、例えば液晶素子100に含まれる基板に平行な方向に相当し、また、第3方向Zは、液晶素子100の厚さ方向に相当する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る液晶素子100の一例を示す断面図である。
液晶素子100は、第1透明基板11と、第1配向膜AL11と、第1液晶層LC1と、第2配向膜AL12と、第2透明基板12と、を備えている。第1透明基板11は、第3方向Zにおいて第2透明基板12と対向している。第1液晶層LC1は、第1透明基板11と第2透明基板12との間に位置している。
【0011】
第1透明基板11及び第2透明基板12は、例えば、透明なガラス板または透明な合成樹脂板によって構成されている。第1透明基板11は、第1内面11Aと、第1内面11Aの反対側の第1外面11Bと、を有している。第2透明基板12は、第2内面12Aと、第2内面12Aの反対側の第2外面12Bと、を有している。第1内面11A及び第1外面11B、及び、第2内面12A及び第2外面12Bは、X-Y平面に平行な面である。
【0012】
第1外面11Bは、第1透明基板11の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率媒体に接している。同様に、第2外面12Bは、第2透明基板12の屈折率より小さい屈折率を有する低屈折率媒体に接している。低屈折率媒体は、例えば空気である。このような第1外面11B及び第2外面12Bは、後述するが、第1液晶層LC1で反射された反射光Lrを全反射する界面を形成している。
【0013】
第1配向膜AL11は、第1内面11Aに配置されている。第2配向膜AL12は、第2内面12Aに配置されている。第1配向膜AL11は、第3方向Zにおいて第2配向膜AL12と対向している。第1配向膜AL11及び第2配向膜AL12は、例えば、ポリイミドによって形成され、いずれもX-Y平面に沿った配向規制力を有する水平配向膜である。第1配向膜AL11の配向処理方向、及び、第2配向膜AL12の配向処理方向は、平行であり、互いに逆向きである。
【0014】
第1液晶層LC1は、第1配向膜AL11と第2配向膜AL12との間に位置し、第1配向膜AL11及び第2配向膜AL12に接している。第1液晶層LC1は、第1コレステリック液晶CL1を有している。なお、図1では、簡略化のため、第1コレステリック液晶CL1を構成する液晶分子LMとして、X-Y平面に平行な同一平面に位置する複数の液晶分子のうちの1つの液晶分子LMを図示しており、この液晶分子LMの配向方向は、同一平面に位置する複数の液晶分子の平均的な配向方向に相当する。
【0015】
第1コレステリック液晶CL1は、1つの第1螺旋軸AX1を中心として、複数の液晶分子LMが旋回しながら螺旋状に積み重ねられた構造体とみなすことができる。複数の第1コレステリック液晶CL1は、第1方向Xに配列されるとともに、第2方向Yにも配列されている。1つの第1コレステリック液晶CL1は、その一端側に位置する液晶分子LM11と、その他端側に位置する液晶分子LM12と、を有している。液晶分子LM11は第1配向膜AL11に近接し、液晶分子LM12は第2配向膜AL12に近接している。
【0016】
液晶分子LM11は、第1配向膜AL11の配向規制力によって所定の方向に配向している。液晶分子LM11は、第1液晶層LC1と第1配向膜AL11との境界B1から時計回りに鋭角のプレチルト角θP1を形成するように配向している。
液晶分子LM12は、第2配向膜AL12の配向規制力によって所定の方向に配向している。液晶分子LM12は、第1液晶層LC1と第2配向膜AL12との境界B2から時計回りに鋭角のプレチルト角θP2を形成するように配向している。
プレチルト角θP1は、プレチルト角θP2と同等である。つまり、液晶分子LM11の配向方向、及び、液晶分子LM12の配向方向は、ほぼ一致している。一例では、プレチルト角θP1及び角θP2は、20°以上であり、後述するように、21°より大きいことが望ましい。
【0017】
第1コレステリック液晶CL1の第1螺旋軸AX1は、第1液晶層LC1の法線方向つまり第3方向Zに対して傾斜している。複数の第1コレステリック液晶CL1の各々の第1螺旋軸AX1は、第1液晶層LC1の全域にわたり、一様な方向に傾斜している。図1に示す例では、第1螺旋軸AX1は、境界B2、第2内面12A、あるいは、X-Y平面から反時計回りに鋭角の傾斜角θ1を形成するように傾斜している(あるいは、第1螺旋軸AX1は、境界B1あるいは第1内面11Aから反時計回りに鋭角の傾斜角θ1を形成するように傾斜しているとみなすこともできる)。第1螺旋軸AX1の傾斜角θ1は、例えば、69°より小さい角度に設定されている。
【0018】
第1コレステリック液晶CL1は、螺旋ピッチPを有している。螺旋ピッチPは、螺旋の1周期(液晶分子LMが360度回転するのに要する第1螺旋軸AX1に沿った層厚)を示す。
【0019】
第1液晶層LC1は、第1配向膜AL11と第2配向膜AL12との間に、点線で示すような複数の反射面RS1を有している。複数の反射面RS1は、互いに略平行である。反射面RS1は、ブラッグの法則に従って、第1外面11Bを透過した入射光Liを反射光Lrと透過光Ltとに分割する。ここでの反射面RSは、液晶分子LMの配向方向が揃った面、あるいは、空間位相が揃った面(等位相面)に相当する。
【0020】
図1に示すX-Z断面においては、反射面RS1は、境界B1及びB2、第1内面11A、第2内面12A、あるいは、X-Y平面に対して傾斜している。反射面RS1は、第1螺旋軸AX1に対してほぼ直交している。
【0021】
第1コレステリック液晶CL1は、特定波長λの光のうち、第1コレステリック液晶CL1の旋回方向と同じ旋回方向の円偏光を反射する。例えば、第1コレステリック液晶CL1の旋回方向が右回りの場合、第1コレステリック液晶CL1は、特定波長λの光のうち、右回りの円偏光を反射し、左回りの円偏光を透過する。同様に、第1コレステリック液晶CL1の旋回方向が左回りの場合、第1コレステリック液晶CL1は、特定波長λの光のうち、左回りの円偏光を反射し、右回りの円偏光を透過する。
図1に示す反射光Lrは第1円偏光C1であり、透過光Ltは第1円偏光C1とは逆回りの第2円偏光C2である。つまり、第1円偏光C1及び第2円偏光C2のいずれか一方が左回りの円偏光であり、いずれか他方が右回りの円偏光である。しかも、第1円偏光C1及び第2円偏光C2は、同一波長の光である。
【0022】
一般的に、垂直入射した光に対する第1コレステリック液晶CL1の選択反射帯域Δλは、第1コレステリック液晶CL1の螺旋ピッチP、異常光に対する屈折率ne、常光に対する屈折率noに基づいて、「no*P~ne*P」で示される。このため、反射面RS1において特定波長λの円偏光を効率よく反射するためには、特定波長λが選択反射波長帯Δλに含まれるように、螺旋ピッチP、屈折率ne及びnoが設定される。
【0023】
このような第1液晶層LC1は、液晶分子LM11及び液晶分子LM12を含む複数の液晶分子LMの配向方向が固定された状態で硬化している。つまり、液晶分子LMの配向方向は、電界に応じて制御されるものではない。このため、液晶素子100は、配向制御のための電極を備えていない。
【0024】
図2は、第1螺旋軸AX1の傾斜角θ1を説明するための図である。ここでは、液晶素子100への入射光Liが第1外面11Bに対して垂直に入射するものとし、第1外面11Bに接する空気の屈折率を1としたときの液晶素子100の全体の平均的な屈折率が1.5であるものとして説明する。
【0025】
上記の通り、入射光Liのうちの一部の円偏光は、反射面RS1で反射される。この反射光Lrが第1外面11B(あるいは、空気と液晶素子100との界面)で全反射されるためには、反射光Lrの第1外面11Bへの入射角θiが臨界角以上の角度であることが要求される。上記の屈折率の関係の場合には、臨界角は、約42°である。入射角θiが42°のとき、反射面RS1のX-Y平面に対する傾きは21°であり、第1螺旋軸AX1のX-Y平面に対する傾斜角θ1は69°である。
【0026】
つまり、反射光Lrが第1外面11Bで全反射されて液晶素子100の内部を伝播するためには、入射角θiが臨界角より大きく、反射面RS1の傾きが21°より大きく、また、第1螺旋軸AX1の傾斜角θ1が69°より小さく設定される。このような傾斜角θ1を実現する一手法として、液晶分子LM11のプレチルト角θP1及び液晶分子LM12のプレチルト角θP2を21°より大きく設定する手法が挙げられる。
【0027】
図3は、第1コレステリック液晶CL1の三次元的なレイアウトを模式的に示す図である。複数の第1コレステリック液晶CL1は、第1方向Xに沿って配列されるとともに、第2方向Yに沿って配列されている。図示の都合上、一部の液晶分子LMのハッチングが異なっているが、すべての液晶分子LMは同種のものである。第1コレステリック液晶CL1の各々の第1螺旋軸AX1は、X-Z平面において、X軸に対して同一の傾斜角θ1で傾斜している。
【0028】
図4は、第1コレステリック液晶CL1の二次元的なレイアウトを模式的に示す図である。X-Y平面を平面視した際に、第1螺旋軸AX1は、一様な方向を向いている。図4に示す例では、第1コレステリック液晶CL1の各々の第1螺旋軸AX1は、X-Y平面において、X軸にほぼ平行である。
【0029】
図5は、本実施形態に係る液晶素子100の一例を示す断面図である。
第1液晶層LC1は、一方向に旋回した第1コレステリック液晶CL1を有している。ここでは、第1コレステリック液晶CL1を模式的に示している。例えば、第1コレステリック液晶CL1は、特定の第1波長λ1の第1円偏光C1を反射するべく、第1螺旋軸AX1に沿って螺旋ピッチP1を有している。第1コレステリック液晶CL1において、螺旋ピッチP1は、第1螺旋軸AX1に沿ってほとんど変化することなく一定である。
【0030】
このような液晶素子100において、第1外面11Bを透過した第1波長λ1の入射光Liのうち、第1円偏光C1は、第1液晶層LC1に形成された反射面RS1で反射される。反射光Lrは、第1外面11Bで反射された後に、第2外面12Bでも反射され、液晶素子100の内部を伝播する。液晶素子100を伝播した光は、第1透明基板11の側面11S及び第2透明基板12の側面12Sを透過し、出力光Loとして、液晶素子100の外部に取り出される。
【0031】
また、第1波長λ1の入射光Liのうち、第2円偏光C2は、液晶素子100を透過する。液晶素子100の透過光Ltは、第1波長λ1の第2円偏光C2の他に、第1波長λ1とは異なる波長の光を含んでいる。
【0032】
このように、本実施形態の液晶素子100によれば、特定の第1波長λ1の入射光Liのうち、所定の円偏光を液晶素子100の内部に閉じ込めて一方向に伝播させ、液晶素子100の側面から取り出すことができる。ここでの第1波長λ1とは、赤外線、紫外線、可視光のうちの青波長、緑波長、赤波長のいずれであってもよい。
【0033】
《変形例1》
図6は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図6に示す例は、図5に示した例と比較して、液晶素子100が、さらに、第3透明基板13と、第3配向膜AL13と、第2液晶層LC2と、第4配向膜AL14と、第4透明基板14と、を備えている点で相違している。第3透明基板13及び第4透明基板14は、上記の第1透明基板11などと同一材料によって形成され、第3配向膜AL13及び第4配向膜AL14は、上記の第1配向膜AL11などと同一材料によって形成され、第2液晶層LC2は、上記の第1液晶層LC1と同一材料によって形成されている。
【0034】
第3透明基板13は、第3方向Zにおいて、第2透明基板12と対向し、また、第2透明基板12から離間している。第2液晶層LC2は、第3透明基板13と第4透明基板14との間に位置している。
【0035】
第3透明基板13は、第3内面13A及び第3外面13Bを有している。第4透明基板14は、第4内面14A及び第4外面14Bを有している。第3外面13B及び第4外面14Bは、低屈折率媒体、例えば空気に接している。このような第3外面13B及び第4外面14Bは、後述するが、第2液晶層LC2で反射された反射光Lr2を全反射する界面を形成している。
【0036】
第3配向膜AL13は、第3内面13Aに配置されている。第4配向膜AL14は、第4内面14Aに配置されている。第3配向膜AL13及び第4配向膜AL14は、いずれもX-Y平面に沿った配向規制力を有する水平配向膜である。
【0037】
第2液晶層LC2は、第3配向膜AL13と第4配向膜AL14との間に位置し、第3配向膜AL13及び第4配向膜AL14に接している。第2液晶層LC2は、第1液晶層LC1と同様に、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化している。また、第2液晶層LC2は、第1液晶層LC1と同様に、複数の第2コレステリック液晶CL2を有しているが、ここでは1つの第2コレステリック液晶CL2のみを簡略化して図示しいている。
【0038】
第2コレステリック液晶CL2の第2螺旋軸AX2は、第1コレステリック液晶CL1と同様に、第2液晶層LC2の法線方向つまり第3方向Zに対して傾斜している。複数の第2コレステリック液晶CL2の各々の第2螺旋軸AX2は、第2液晶層LC2の全域にわたり、一様な方向に傾斜している。これにより、第2液晶層LC2には、反射面RS2が形成されている。
【0039】
一例では、第2液晶層LC2と第4配向膜AL14との境界B4、あるいは、X-Y平面に対する第2螺旋軸AX2の傾斜角θ2は、境界B2あるいはX-Y平面に対する第1螺旋軸AX1の傾斜角θ1と同等であり、且つ、69°より小さい。
【0040】
第2コレステリック液晶CL2の旋回方向は、第1コレステリック液晶CL1の旋回方向とは逆回りである。また、第2コレステリック液晶CL2の螺旋ピッチP2は、第1コレステリック液晶CL1の螺旋ピッチP1と同等である。
【0041】
したがって、第1液晶層LC1の反射面RS1は第1円偏光C1を反射するように構成され、第2液晶層LC2の反射面RS2は第1円偏光C1とは逆回りの第2円偏光C2を反射するように構成される。但し、ここでの第1円偏光C1及び第2円偏光C2は、同一の第1波長λ1の光である。
【0042】
このような液晶素子100において、第1外面11Bを透過した第1波長λ1の入射光Liのうち、第1円偏光C1は、第1液晶層LC1の反射面RS1で反射される。反射光Lr1は、第1外面11Bで反射された後に、第2外面12Bでも反射される。その後、反射光Lr1は、第1透明基板11の側面11S及び第2透明基板12の側面12Sを透過し、出力光Lo1として、液晶素子100の外部に取り出される。
【0043】
第1波長λ1の入射光Liのうち、第2円偏光C2は、第1液晶層LC1及び第2透明基板12を透過した後に、第3外面13Bを透過し、第2液晶層LC2の反射面RS2で反射される。反射光Lr2は、第3外面13Bで反射された後に、第4外面14Bでも反射される。その後、反射光Lr2は、第3透明基板13の側面13S及び第4透明基板14の側面14Sを透過し、出力光Lo2として、液晶素子100の外部に取り出される。出力光Lo2の波長は、出力光Lo1の波長と同一である。
【0044】
このような変形例1によれば、第1波長λ1の入射光Liを第1円偏光C1及び第2円偏光C2に分離して液晶素子100の内部に閉じ込め、これらの円偏光を一方向に伝播させ、液晶素子100の側面から取り出すことができる。このため、上記の例と比較して、第1波長λ1の光の取出効率を向上することができる。
【0045】
《変形例2》
図7は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図7に示す例は、図6に示した例と比較して、第2コレステリック液晶CL2の螺旋ピッチP2が第1コレステリック液晶CL1の螺旋ピッチP1とは異なる点で相違している。
【0046】
第1液晶層LC1の反射面RS1は、第1波長λ1の第1円偏光C1を反射するように構成される。第2コレステリック液晶CL2の旋回方向が第1コレステリック液晶CL1の旋回方向と同一である場合、第2液晶層LC2の反射面RS2は、第1波長λ1とは異なる第2波長λ2の第1円偏光C1を反射するように構成される。
【0047】
一例では、螺旋ピッチP2は、螺旋ピッチP1より大きい。この場合、第2波長λ2は、第1波長λ1よりも長波長である。但し、螺旋ピッチP2が螺旋ピッチP1より小さくてもよく、この場合、第2波長λ2は、第1波長λ1よりも短波長である。
【0048】
第2コレステリック液晶CL2の旋回方向が第1コレステリック液晶CL1の旋回方向とは逆回りである場合、第2液晶層LC2の反射面RS2は、第1波長λ1とは異なる第2波長λ2の第2円偏光C2を反射するように構成される。
【0049】
このような液晶素子100において、第1外面11Bを透過した第1波長λ1の入射光Li1のうち、第1円偏光C1は、第1液晶層LC1の反射面RS1で反射される。反射光Lr1は、第1外面11Bで反射された後に、第2外面12Bでも全反射される。その後、反射光Lr1は、第1透明基板11の側面11S及び第2透明基板12の側面12Sを透過し、出力光Lo1として、液晶素子100の外部に取り出される。
また、第1波長λ1の第2円偏光C2は、反射面RS1を透過した後に第2液晶層LC2も透過する。液晶素子100の透過光Lt1は、第1波長λ1の第2円偏光C2の他に、他の波長の光を含んでいる。
【0050】
第1外面11Bを透過した第2波長λ2の入射光Li2のうち、第1円偏光C1は、第1液晶層LC1及び第1透明基板11を透過した後に、第3外面13Bを透過し、第2液晶層LC2の反射面RS2で反射される。反射光Lr2は、第3外面13Bで反射された後に、第4外面14Bでも反射される。その後、反射光Lr2は、第3透明基板13の側面13S及び第4透明基板14の側面14Sを透過し、出力光Lo2として、液晶素子100の外部に取り出される。
また、第2波長λ2の第2円偏光C2は、反射面RS2を透過する。液晶素子100の透過光Lt2は、第2波長λ2の第2円偏光C2の他に、他の波長の光を含んでいる。
【0051】
このような変形例2によれば、第1波長λ1の入射光Liのうちの一部の円偏光及び第2波長λ2の入射光Liのうちの一部の円偏光をそれぞれ液晶素子100の内部に閉じ込め、これらの円偏光を一方向に伝播させ、液晶素子100の側面から取り出すことができる。このため、上記の例と比較して、多波長の光を取り出すことができる。
【0052】
なお、変形例1の如く、第1液晶層LC1に加えて第1コレステリック液晶CL1とは逆回りのコレステリック液晶を有する液晶層を追加し、また、第2液晶層LC2に加えて第2コレステリック液晶CL2とは逆回りのコレステリック液晶を有する液晶層を追加してもよい。これにより、第1波長λ1の入射光Li及び第2波長λ2の入射光Liの取出効率を向上することができる。
【0053】
《変形例3》
図8は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
液晶素子100は、第1内面11A及び第1外面11Bを有する第1透明基板11と、第2内面12A及び第2外面12Bを有する第2透明基板12と、第1透明基板11と第2透明基板12との間に位置する第1液晶層LC1と、第1液晶層LC1と第2透明基板12との間に位置する第2液晶層LC2と、を備えている。そして、第1外面11B及び第2外面12Bは、第1液晶層LC1で反射された第1円偏光C1、及び、第2液晶層LC2で反射された第2円偏光C2をそれぞれ全反射する界面を形成している。
【0054】
変形例3では、液晶素子100は、さらに、第3内面13A及び第3外面13Bを有する第3透明基板13と、第4内面14A及び第4外面14Bを有する第4透明基板14と、第3外面13B及び第4外面14Bに接する接着層ADと、第1内面11Aに配置された第1配向膜AL11と、第2内面12Aに配置された第2配向膜AL12と、第3内面13Aに配置された第3配向膜AL13と、第4内面14Aに配置された第4配向膜AL14と、を備えている。
【0055】
第3透明基板13は、第3方向Zにおいて、第1透明基板11と対向している。第1液晶層LC1は、第1透明基板11と第3透明基板13とに間に位置し、また、第1配向膜AL11と第3配向膜AL13との間に位置し、第1配向膜AL11及び第3配向膜AL13に接している。第1液晶層LC1は、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化している。また、第1液晶層LC1は、複数の第1コレステリック液晶CL1を有しているが、ここでは1つの第1コレステリック液晶CL1のみを簡略化して図示しいている。
【0056】
第1コレステリック液晶CL1の第1螺旋軸AX1は、第1液晶層LC1の法線方向つまり第3方向Zに対して傾斜している。複数の第1コレステリック液晶CL1の各々の第1螺旋軸AX1は、第1液晶層LC1の全域にわたり、一様な方向に傾斜している。これにより、第1液晶層LC1には、第1円偏光C1を反射するように構成された反射面RS1が形成される。
【0057】
第4透明基板14は、第3方向Zにおいて、第2透明基板12と対向している。第2液晶層LC2は、第2透明基板12と第4透明基板14とに間に位置し、また、第2配向膜AL12と第4配向膜AL14との間に位置し、第2配向膜AL12及び第4配向膜AL14に接している。第2液晶層LC2は、複数の液晶分子の配向方向が固定された状態で硬化している。また、第2液晶層LC2は、複数の第2コレステリック液晶CL2を有しているが、ここでは1つの第2コレステリック液晶CL2のみを簡略化して図示しいている。
【0058】
第2コレステリック液晶CL2の第2螺旋軸AX2は、第2液晶層LC2の法線方向つまり第3方向Zに対して傾斜している。複数の第2コレステリック液晶CL2の各々の第2螺旋軸AX2は、第2液晶層LC2の全域にわたり、一様な方向に傾斜している。これにより、第2液晶層LC2には、第2円偏光C2を反射するように構成された反射面RS2が形成されている。第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2の関係については、図6を参照して説明した変形例1と同様である。
【0059】
接着層ADは、透明であり、第3透明基板13と第4透明基板14とを接着している。接着層ADの屈折率は、第3透明基板13及び第4透明基板14の各々の屈折率と同等である。
【0060】
このような液晶素子100において、第1外面11Bを透過した第1波長λ1の入射光Liのうち、第1円偏光C1は、第1液晶層LC1の反射面RS1で反射される。反射光Lr1は、第1外面11Bで反射された後に、第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2を透過して、第2外面12Bでも反射される。その後、反射光Lr1は、第1透明基板11の側面11S、第2透明基板12の側面12S、第3透明基板13の側面13S、及び、第4透明基板14の側面14Sを透過し、出力光Loとして、液晶素子100の外部に取り出される。
【0061】
第1波長λ1の入射光Liのうち、第2円偏光C2は、第1液晶層LC1及び第3透明基板13を透過した後に、第4外面14Bを透過し、第2液晶層LC2の反射面RS2で反射される。反射光Lr2は、第1液晶層LC1を透過した後に、第1外面11Bで反射される。また、図示しないが、反射光Lr2は、第1外面11Bで反射された後に第2外面12Bで反射される場合もあり得る。その後、反射光Lr2は、第1透明基板11の側面11S、第2透明基板12の側面12S、第3透明基板13の側面13S、及び、第4透明基板14の側面14Sを透過し、出力光Loとして、液晶素子100の外部に取り出される。
【0062】
つまり、液晶素子100において、第1波長λ1の入射光Liのうちの第1円偏光C1は第1液晶層LC1で反射され、第2円偏光C2は第2液晶層LC2で反射されるが、液晶素子100の外部に出力される際には、これらの第1円偏光C1及び第2円偏光C2は、出力光Loとして合成される。
【0063】
このような変形例3によれば、第1波長λ1の入射光Liを第1円偏光C1及び第2円偏光C2に分離して液晶素子100の内部に閉じ込め、これらの円偏光を一方向に伝播させ、液晶素子100の側面から取り出すことができる。このため、第1波長λ1の光の取出効率を向上することができる。
【0064】
また、第1波長λ1とは異なるその他の波長の光は、液晶素子100を透過する。液晶素子100の内部には、屈折率が大きく異なる媒体が互いに接する界面が存在せず、他の波長の光の透過率を向上することができる。
【0065】
なお、ここでは、第1波長λ1を取り出すための液晶素子100について説明したが、第1波長λ1とは異なる波長を取り出すための複数の液晶素子が積層されてもよい。
【0066】
《変形例4》
上記した各例では、液晶層は一対の透明基板あるいは一対の配向膜の間に位置していたが、この例に限らない。例えば、塗布型のコレステリック液晶を適用することで、一基板上にコレステリック液晶を含む液晶層を形成することができる。
【0067】
図9は、基本構成を示す断面図である。
すなわち、水平配向膜である配向膜AL10は、透明基板10の内面10Aに配置されている。液晶層LCは、配向膜AL10の上に、コレステリック液晶性モノマを含む液晶材料を塗布した後に、紫外線を照射し、モノマを重合することで形成される。
ここに示す基本構成の液晶層LCは、変形例4のみならず、他の変形例にも適用される。
【0068】
図10は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図9に示す例は、図8に示した例と比較して、第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2の各々の一方の面が配向膜に接する構成である点で相違している。
【0069】
液晶素子100は、第1内面11A及び第1外面11Bを有する第1透明基板11と、第2内面12A及び第2外面12Bを有する第2透明基板12と、第1透明基板11と第2透明基板12との間に位置する第1液晶層LC1と、第1液晶層LC1と第2透明基板12との間に位置する第2液晶層LC2と、を備えている。そして、第1外面11B及び第2外面12Bは、第1液晶層LC1で反射された第1円偏光C1、及び、第2液晶層LC2で反射された第2円偏光C2をそれぞれ全反射する界面を形成している。
【0070】
変形例4では、液晶素子100は、さらに、第3内面13A及び第3外面13Bを有する第3透明基板13と、第1内面11A及び第1液晶層LC1に接する第1接着層AD1と、第3外面13B及び第2液晶層LC2に接する第2接着層AD2と、第3内面13Aに配置された第1配向膜AL11と、第2内面12Aに配置された第2配向膜AL12と、を備えている。第3透明基板13は、第1液晶層LC1と第2液晶層LC2との間に位置している。第1配向膜AL11は第1液晶層LC1に接し、第2配向膜AL12は第2液晶層LC2に接している。
【0071】
第3透明基板13、第1配向膜AL11、及び、第1液晶層LC1は、図9に示した基本構成に相当する。同様に、第2透明基板12、第2配向膜AL12、及び、第2液晶層LC2も、図9に示した基本構成に相当する。第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2の詳細については、上記の例と同様である。
【0072】
第1接着層AD1は、透明であり、第1透明基板11と第1液晶層LC1とを接着している。第1接着層AD1の屈折率は、第1透明基板11の屈折率と同等である。
第2接着層AD2は、透明であり、第3透明基板13と第2液晶層LC2とを接着している。第2接着層AD2の屈折率は、第3透明基板13の屈折率と同等である。
【0073】
このような液晶素子100における光学作用については、上記の変形例3と同様である。
【0074】
このような変形例4においても、変形例3と同様の効果が得られる。加えて、変形例3と比較して、部品点数を削減することができ、コストを削減することができる。
【0075】
なお、変形例4においても、第1波長λ1を取り出すための液晶素子100のみならず、第1波長λ1とは異なる波長を取り出すための複数の液晶素子が積層されてもよい。
【0076】
《変形例5》
図11は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図11に示す例は、図10に示した例と比較して、第3透明基板13を省略した点で相違している。
【0077】
液晶素子100は、第1内面11A及び第1外面11Bを有する第1透明基板11と、第2内面12A及び第2外面12Bを有する第2透明基板12と、第1透明基板11と第2透明基板12との間に位置する第1液晶層LC1と、第1液晶層LC1と第2透明基板12との間に位置する第2液晶層LC2と、を備えている。そして、第1外面11B及び第2外面12Bは、第1液晶層LC1で反射された第1円偏光C1、及び、第2液晶層LC2で反射された第2円偏光C2をそれぞれ全反射する界面を形成している。
【0078】
変形例5では、液晶素子100は、さらに、第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2に接する接着層ADと、第1内面11Aに配置された第1配向膜AL11と、第2内面12Aに配置された第2配向膜AL12と、を備えている。第1配向膜AL11は第1液晶層LC1に接し、第2配向膜AL12は第2液晶層LC2に接している。
【0079】
第1透明基板11、第1配向膜AL11、及び、第1液晶層LC1は、図9に示した基本構成に相当する。同様に、第2透明基板12、第2配向膜AL12、及び、第2液晶層LC2も、図9に示した基本構成に相当する。第1液晶層LC1及び第2液晶層LC2の詳細については、上記の例と同様である。
【0080】
接着層ADは、透明であり、第1液晶層LC1と第2液晶層LC2とを接着している。
【0081】
このような液晶素子100における光学作用については、上記の変形例3と同様である。
【0082】
このような変形例5においても、変形例3と同様の効果が得られる。加えて、変形例4と比較して、部品点数をさらに削減することができ、コストを削減することができる。
【0083】
なお、変形例5においても、第1波長λ1を取り出すための液晶素子100のみならず、第1波長λ1とは異なる波長を取り出すための複数の液晶素子が積層されてもよい。
【0084】
《変形例6》
図12は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
ここでは、液晶素子100への入射光が太陽光である場合について説明する。太陽光は、可視光Vの他に、赤外線I、紫外線Uを含んでいる。第1液晶層LC1の反射面RS1は、紫外線Uの第1円偏光C1を反射するように構成されている。つまり、第1液晶層LC1に含まれる第1コレステリック液晶CL1の螺旋ピッチP1は、紫外線Uの波長に応じて設定されている。
【0085】
このような液晶素子100において、第1外面11Bを透過した紫外線Uである入射光Liのうち、第1円偏光C1は、第1液晶層LC1に形成された反射面RS1で反射される。反射光Lrは、第1外面11Bで反射された後に、第2外面12Bでも反射され、液晶素子100の内部を伝播する。液晶素子100を伝播した光は、第1透明基板11の側面11S及び第2透明基板12の側面12Sを透過し、紫外線Uの出力光Loとして、液晶素子100の外部に取り出される。
【0086】
また、紫外線Uの入射光Liのうち、第2円偏光C2は、透過光Lt1として液晶素子100を透過する。液晶素子100の透過光Lt2は、可視光V及び赤外線Iを含んでいる。
【0087】
このような液晶素子100によれば、紫外線Uの入射光Liのうち、所定の円偏光を液晶素子100の内部に閉じ込めて一方向に伝播させ、液晶素子100の側面から取り出すことができる。また、液晶素子100は、透過光Lt2として、可視光Vの主要な成分である第1成分(青成分)、第2成分(緑成分)、及び、第3成分(赤成分)の各々を透過する。このため、液晶素子100を透過した光の着色を抑制することができる。
【0088】
なお、上記した変形例1の如く、第1液晶層LC1に加えて第1コレステリック液晶CL1とは逆回りのコレステリック液晶を有する液晶層を追加することで、紫外線Uの取出効率を向上することができる。
【0089】
《変形例7》
図13は、本実施形態に係る液晶素子100の他の例を示す断面図である。
図13に示す例は、図12に示した例と比較して、第1液晶層LC1の反射面RS1が赤外線Iの第1円偏光C1を反射するように構成された点で相違している。つまり、第1液晶層LC1に含まれる第1コレステリック液晶CL1の螺旋ピッチP1は、赤外線Iの波長に応じて設定されており、図12に示した例の螺旋ピッチP1より大きい。
【0090】
このような液晶素子100において、第1外面11Bを透過した赤外線Iである入射光Liのうち、第1円偏光C1は、第1液晶層LC1に形成された反射面RS1で反射される。反射光Lrは、第1外面11Bで反射された後に、第2外面12Bでも反射され、液晶素子100の内部を伝播する。液晶素子100を伝播した光は、第1透明基板11の側面11S及び第2透明基板12の側面12Sを透過し、赤外線Iの出力光Loとして、液晶素子100の外部に取り出される。
【0091】
また、赤外線Iの入射光Liのうち、第2円偏光C2は、透過光Lt1として液晶素子100を透過する。液晶素子100の透過光Lt2は、可視光V及び紫外線Uを含んでいる。
【0092】
このような液晶素子100によれば、赤外線Iの入射光Liのうち、所定の円偏光を液晶素子100の内部に閉じ込めて一方向に伝播させ、液晶素子100の側面から取り出すことができる。また、液晶素子100が透過光Lt2として可視光Vの主要な成分を透過するため、液晶素子100を透過した光の着色を抑制することができる。
【0093】
なお、上記した変形例1の如く、第1液晶層LC1に加えて第1コレステリック液晶CL1とは逆回りのコレステリック液晶を有する液晶層を追加することで、赤外線Iの取出効率を向上することができる。
【0094】
《応用例1》
図14は、液晶素子100を備えた光学システム200の一例を示す断面図である。
光学システム200は、上記の液晶素子100と、集光器111と、光ファイバー112と、を備えている。なお、ここに示す液晶素子100は、一例であり、上記の各例に示したいずれの液晶素子100が適用されてもよい。集光器111は、液晶素子100の側面、つまり、第1透明基板11の側面11S及び第2透明基板12の側面12Sに接続されている。光ファイバー112は、集光器111に接続されている。
【0095】
図15は、図14に示した光学システム200の平面図である。
液晶素子100に入射した太陽光に含まれる所定波長λの入射光Liのうち、第1円偏光C1及び第2円偏光C2の少なくとも一方の円偏光が反射光Lrとなって液晶素子100を伝播する。このような反射光Lrは、側面11S及び側面12Sから取り出され、集光器111によって集光される。集光された光は、光ファイバー112に出力される。
【0096】
《応用例2》
図16は、液晶素子100を備えた光学システム200の一例を示す断面図である。
光学システム200は、上記の液晶素子100と、集光器121と、光電変換素子122と、を備えている。なお、ここに示す液晶素子100は、一例であり、上記の各例に示したいずれの液晶素子100が適用されてもよい。集光器121は、液晶素子100の側面、つまり、第1透明基板11の側面11S及び第2透明基板12の側面12Sに接続されている。光電変換素子122は、集光器121に接続されている。
【0097】
図17は、図16に示した光学システム200の平面図である。
複数の集光器121及び複数の光電変換素子122は、側面11Sに沿って並んでいる。光電変換素子122は、受光した光のエネルギーを電力に変換するものである。つまり、光電変換素子122は、受光した光によって発電するものである。このような光電変換素子122の種類は、特に限定されるものではない。
【0098】
液晶素子100に入射した太陽光に含まれる所定波長λの入射光Liのうち、第1円偏光C1及び第2円偏光C2の少なくとも一方の円偏光が反射光Lrとなって液晶素子100を伝播する。このような反射光Lrは、側面11S及び側面12Sから取り出され、複数の集光器121によって集光される。集光された光は、光電変換素子122に出力される。光電変換素子122は、受光した光によって発電する。
【0099】
以上説明したように、本実施形態によれば、特定波長の光を取り出す液晶素子を提供することができる。
【0100】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
100…液晶素子
11…第1透明基板 11B…第1外面 AL11…第1配向膜
12…第2透明基板 12B…第2外面 AL12…第2配向膜
13…第3透明基板 AL13…第3配向膜
14…第4透明基板 AL14…第4配向膜
LC1…第1液晶層 CL1…第1コレステリック液晶 AX1…第1螺旋軸 RS1…反射面 P1…螺旋ピッチ θ1…傾斜角
LC2…第2液晶層 CL2…第2コレステリック液晶 AX2…第2螺旋軸 RS2…反射面 P2…螺旋ピッチ θ2…傾斜角
200…光学システム
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