(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149722
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220929BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20220929BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20220929BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20220929BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/11
C08G59/18
H01B1/22 A
H01R11/01 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021051997
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ブンキ
(72)【発明者】
【氏名】大渕 健太郎
【テーマコード(参考)】
4J002
4J036
5G301
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002CD051
4J002DA106
4J002DC006
4J002DD047
4J002DH027
4J002EF027
4J002EF037
4J002EF047
4J002EF057
4J002EF067
4J002EF077
4J002EF117
4J002ET008
4J002FD148
4J002FD207
4J002GQ00
4J036AA01
4J036AD08
4J036DC31
4J036FA03
4J036FA04
4J036FA10
4J036JA15
5G301DA03
5G301DA13
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
【課題】リペア作業が容易であるとともに、リペア作業後に接続信頼性の高い電子素子実装基板が得られる導電性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)熱硬化性樹脂と、(B)前記熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤と、(C)はんだ粒子と、(D)フラックスと、を少なくとも含む導電性樹脂組成物であって、前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長1064nmまたは波長532nmの光の反射率が20%以下である、導電性樹脂組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱硬化性樹脂と、(B)前記熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤と、(C)はんだ粒子と、(D)フラックスと、を少なくとも含む導電性樹脂組成物であって、
前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長1064nmの光の反射率が20%以下である、導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長1064nmの光の透過率が55%以下である、請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)熱硬化性樹脂と、(B)前記熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤と、(C)はんだ粒子と、(D)フラックスと、を少なくとも含む導電性樹脂組成物であって、
前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長532nmの光の反射率が20%以下である、導電性樹脂組成物。
【請求項4】
前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長532nmの光の透過率が55%以下である、請求項3に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤は、前記(C)はんだ粒子の融点よりも100℃高い温度において、変性ないし熱分解しない、請求項5に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤は、導電性樹脂組成物中の固形分量に対して0.5~8質量%の割合で含まれる、請求項5または6に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(C)はんだ粒子は、導電性樹脂組成物中の固形分量に対して20~70質量%の割合で含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤が、カーボンブラック、チタンブラック、近赤外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5~8のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物に関し、とりわけ、電子素子を配線基板に実装する際に使用される導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置等の電気光学装置は、コンピュータや携帯電話その他各種電子機器の表示部などとして用いられ、特に液晶表示装置は軽量・薄型で消費電力も少ないことから各種電子機器の表示部として広く利用されている。これら液晶表示装置においては、液晶パネル等の電気光学部品の背面側に、いわゆるバックライトを備えたものが多く用いられている。
【0003】
近年、電気光学装置等に使用されるバックライトとして、LEDアレイ基板が使用されるようになってきている。LEDアレイ基板は、配線基板上に複数のLEDチップをマトリックス状に実装したものであり、個々のLEDチップと配線基板とがはんだ等によって電気的に接続されたものである。最近はバックライトの小型化や効率化のため、LEDアレイ基板においても、より小さなLEDチップを使用し、個々のLEDチップを集積化して配線基板上に実装することが行われるようになってきた。それにともない、LEDチップの実装においても、従来のはんだによる電気的接続にかえて、異方性導電材料とよばれる導電ペーストや導電フィルムが使用されはじめている。異方性導電材料とは、絶縁性の硬化性樹脂バインダーに導電性粒子を分散させたものであり、電子部品どうし(ここでは、配線基板とLEDチップ)の電極部分を熱圧着することで、加圧方向にのみ導電性粒子を介して電子部品どうしの電気的接続を行い、隣接する電極間は絶縁性を維持しながら、硬化性樹脂バインダーの硬化により電子部品を固定することができるものである(例えば、特許文献1等)。
【0004】
はんだに代えて異方性導電材料を使用する利点は、多数のLEDチップを同時にかつ短時間で配線基板に実装できることにある。その反面、異方性導電材料は、はんだ接続に比べてリワーク性が悪いといった問題がある。即ち、はんだ接続であれば、リワーク対象部品を加熱することで容易に対象部品を配線基板から取り外し再実装することができるが、上記のような異方性導電材料による接続では、電子部品どうしが樹脂バインダーにより強固に接着しているため容易に取り外すことができず、電子部品を取り外しができた場合であっても硬化した樹脂バインダーが配線基板上に残存しているため、専用の溶剤等で樹脂バインダーを除去するなどする必要があった。
【0005】
これらの課題に対応すべく、特許文献2には、硬化させた異方性導電材を配線基板に残存させたまま、新しい異方性導電フィルムを貼り付け、リペア剤を使用することなく電子部品を再圧着可能な技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-003529号公報
【特許文献2】特開2010-272545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2において提案されている方法では、異方性導電フィルムの硬化物の150℃における弾性率を10MPa以下とする設計が必要であるため、電子部品間の接続信頼性(耐熱性)を得るのが困難であった。また、電子部品を再実装する際に加圧が必要であるため、配線基板としてFPC(フレキシブル配線基板)などを使用する場合は配線基板へのダメージが避けられない。
【0008】
さらに、近年においては、LEDチップの小型化が進み、例えば、外形寸法が数十ミクロン程度のLEDチップを1mm以下の隣接間隔で配線基板に実装したLEDアレイ基板も実用化されており、リペアのためにLEDチップを配線基板から取り外すことが益々困難になってきている。また、不具合のあるLEDチップを取り外した箇所が狭小であるため、配線基板側に残存する硬化した樹脂バインダーの除去作業も非常に困難になる。リペア箇所を加熱して樹脂バインダーやはんだを溶融させてLEDチップを除去することができるが、その場合はリペアする必要のない周囲のLEDチップや他の実装素子まで影響を与えてしまうことがある。局部的に加熱可能なレーザー等を用いることも考えられるが、その場合であってもLED素子が実装されている配線基板表面の絶縁膜や電極が加熱されることは避けられない。
【0009】
本発明は、このような課題のもとになされたものであり、その目的は、リペア作業が容易であるとともに、リペア作業後に接続信頼性の高い電子素子実装基板が得られる導電性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に対して、本発明者らは、導電性樹脂組成物により配線基板の電極と電子素子とを接続した電子素子実装基板から電子素子を除去する際に、導電性樹脂組成物の硬化物が特定の光学特性を有していれば、レーザー等の照射によって容易に電子素子を除去することができるとともに、除去対象の電子素子の周囲への影響を低減でき、リペア作業後の電子素子実装基板の接続信頼性も改善できる、との知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0011】
[1] (A)熱硬化性樹脂と、(B)前記熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤と、(C)はんだ粒子と、(D)フラックスと、を少なくとも含む導電性樹脂組成物であって、
前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長1064nmの光の反射率が20%以下である、導電性樹脂組成物。
[2] 前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長1064nmの光の透過率が55%以下である、[1]に記載の導電性樹脂組成物。
[3] (A)熱硬化性樹脂と、(B)前記熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤と、(C)はんだ粒子と、(D)フラックスと、を少なくとも含む導電性樹脂組成物であって、
前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長532nmの光の反射率が20%以下である、導電性樹脂組成物。
[4] 前記導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、該硬化被膜における波長532nmの光の透過率が55%以下である、[3]に記載の導電性樹脂組成物。
[5]、 (E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤をさらに含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物。
[6] 前記(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤は、前記(C)はんだ粒子の融点よりも100℃高い温度において、変性ないし熱分解しない、[5]に記載の導電性樹脂組成物。
[7] 前記(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤は、導電性樹脂組成物中の固形分量に対して0.5~8質量%の割合で含まれる、[5]または[6]に記載の導電性樹脂組成物。
[8] 前記(C)はんだ粒子は、導電性樹脂組成物中の固形分量に対して20~70質量%の割合で含まれる、[1]~[7]のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物。
[9] 前記(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤が、カーボンブラック、チタンブラック、近赤外線吸収剤からなる群より選択される少なくとも1種である、[5]~[8]のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電子素子実装基板から電子素子を除去する際に、レーザー等の照射によって容易に電子素子を除去することができるとともに、除去対象の電子素子の周囲への影響を低減でき、リペア作業後の電子素子実装基板の接続信頼性も改善することができる。特に、本発明によれば、小型化したLEDチップのリペアの際に有効である。
【発明を実施するための態様】
【0013】
本発明の導電性樹脂組成物は、(A)熱硬化性樹脂と、(B)前記熱硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤と、(C)はんだ粒子と、(D)フラックスとを必須成分として含むものであり、例えば、配線基板に電子素子を実装する際のように対向する電極間に導電性樹脂組成物を適用すると、対向電極間は電気的な接続が行われ、隣接する電極間は絶縁性が維持される性質を有する。本発明の導電性樹脂組成物は、硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際に、その硬化被膜における波長1064nmまたは波長532nmの光の反射率が20%以下となるものである。このような性質を有する導電性樹脂組成物とすることにより、導電性樹脂組成物の硬化物(例えば硬化被膜)にレーザー等を照射して加熱した際に効率的にレーザー照射箇所を加熱することができ、リペア作業において電子素子実装基板から電子素子を容易に除去することができる。また、レーザー照射により局所的に加熱した場合であっても、非照射部分への熱の拡散を抑制することができるため、除去対象の電子素子の周囲への影響を低減でき、リペア作業後の電子素子実装基板の接続信頼性も改善することができる。当該硬化被膜における波長1064nmまたは波長532nmの光の反射率は15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。また、本発明の効果をより発現する観点からは、波長1064nmおよび波長532nmの光の反射率がいずれも20%以下となるものがより好ましい。
【0014】
本発明の導電性樹脂組成物は、硬化させて厚さ30μmの硬化被膜とした際にその硬化被膜における波長1064nmまたは波長532nmの光の反射率が20%以下であり、好ましくは、波長1064nmまたは波長532nmの光の透過率が55%以下であるという特性を有するものである。硬化被膜が上記のような光学特性を有するような導電性樹脂組成物であれば、導電性樹脂組成物を構成する樹脂成分やはんだ粒子が光エネルギーを吸収してその一部または全部が熱エネルギーに変換されることにより、リペア作業における硬化物中の樹脂成分の除去性がより一層向上する。導電性樹脂組成物がこのような特性を有するために後記する(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤(以下、(E)光吸収剤ともいう)を必須とするわけではなく、(A)熱硬化性樹脂および(B)硬化剤、所望により添加されるその他の成分の選定については、光学特性を付与するものであれば、特に制限されない。前記(E)光吸収剤を含有する以外にも、例えば、硬化後の樹脂が着色するような組合せとすることで、上記特性を充足するようにしてもよい。また、(C)はんだ粒子が光エネルギーを吸収してその一部または全部を熱エネルギーに変換する機能を有していてもよいし、硬化した樹脂自体が光エネルギーを吸収してその一部または全部を熱エネルギーに変換してもよい。いずれにせよ、硬化被膜とした場合の波長1064nmまたは波長532nmの光の反射率が20%以下であり、好ましくは透過率が55%以下であるような導電性樹脂組成物であれば、リペア作業における硬化物中の樹脂成分の除去性が向上する。硬化被膜の透過率は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが特に好ましい。
【0015】
なお、本発明において規定する反射率および透過率は、具体的には以下のようにして測定することができる。先ず、導電性樹脂組成物を、ガラス基板(品名S1112、松浪硝子工業株式会社製)の一方の面に塗布し、導電性樹脂組成物を硬化させて厚さ30μmの硬化被膜を形成する。導電性樹脂組成物の硬化(硬化被膜の形成)は、ホットプレートを用いて、180℃で30分間の硬化条件にて行う。次いで、得られた硬化被膜が形成された基板を、例えば積分球ユニットISN-470を装着したV-570型紫外可視光赤外分光光度計(日本分光株式会社製)を用いて、波長1064nmまたは波長532nmの光の反射率および透過率を測定する。
【0016】
本発明の導電性樹脂組成物は、その硬化被膜が上記のような光学特性を有するものであるが、導電性樹脂組成物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0017】
<(A)熱硬化性樹脂>
(A)熱硬化性樹脂は、後記する(C)はんだ粒子のバインダーとして機能するとともに、硬化して配線基板と電子素子とを固着する機能を併せ持つ。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、シアネート樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、これらのなかでもエポキシ樹脂やアクリル樹脂を好ましく使用でき、特にエポキシ樹脂が好ましい。
【0018】
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば制限なく使用することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂、後記するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、後記するアミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂等を挙げることができる。上記したエポキシ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
多官能エポキシ樹脂としては、ヒドロキシベンゾフェノン型液状エポキシ樹脂である株式会社ADEKA製のEP-3300E等、アミノフェノール型液状エポキシ樹脂(パラアミノフェノール型液状エポキシ樹脂)である三菱ケミカル株式会社製のjER 630、住友化学株式会社製のELM-100等、グリシジルアミン型エポキシ樹脂である三菱ケミカル株式会社製のjER 604、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のYH-434、住友化学工業株式会社製のスミエポキシELM-120、フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるダウ・ケミカル社製のD.E.N.431等が挙げられる。これら多官能エポキシ樹脂は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
上記したエポキシ樹脂のかなでも、導電性樹脂組成物をペースト状の形態とする観点においては、固体状よりも液状であることが好ましい。具体的には、ビスフェノール骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂がより好ましい。これらの市販品としては、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製のZX-1059(ビスフェノールA型・ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)や三菱ケミカル株式会社製のjER 828、同jER 834、同jER 1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、同jER 807、同jER 4004P(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、エア・ウォーター社製のR710(ビスフェノールE型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0021】
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル基を有する樹脂であれば特に制限はなく、例えばトリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチルプロパン骨格を有するエポキシアクリレート等の3官能のメタクリレートモノマー等が挙げられる。これらのなかでも、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能以上の多官能(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2官能以上のポリエステル(メタ)アクリレートを好ましく使用することができる。
【0022】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート、2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-N-カルバゾールのような複素環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0023】
2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレートのような脂環式(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、フルオレン型ジ(メタ)アクリレートのような芳香族(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0024】
3官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートのような脂肪族(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのような複素環式(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
<(B)硬化剤>
導電性樹脂組成物には、上記した(A)硬化性樹脂を硬化させるための(B)硬化剤が含まれる。(B)硬化剤としては、(A)熱硬化性樹脂を硬化させるために一般的に使用されている公知の硬化剤を使用することができ、例えばアミン類、イミダゾール類、多官能フェノール類、酸無水物、イソシアネート類、およびこれらの官能基を含むポリマー類があり、必要に応じてこれらを複数用いても良い。アミン類としては、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン等がある。イミダゾール類としては、アルキル置換イミダゾール、ベンゾイミダゾール等がある。また、イミダゾール化合物はイミダゾールアダクト体等のイミダゾール潜在性硬化剤であってもよい。多官能フェノール類としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールAおよびそのハロゲン化合物、さらに、これにアルデヒドとの縮合物であるノボラック、レゾール樹脂等がある。酸無水物としては、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸等がある。イソシアネート類としては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があり、このイソシアネートをフェノール類等でマスクしたものを使用しても良い。これら硬化剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
(B)硬化剤の配合量は、導電性樹脂組成物の硬化速度や硬化後の硬化物強度の観点から、固形分換算で(A)熱硬化性樹脂100質量部に対して、3~15質量部であることが好ましく、4~10質量部であることがより好ましく、特に5~8質量部の範囲であることが好ましい。
【0027】
(B)硬化剤や、所望により添加してもよい硬化促進剤の種類や配合量を調整することにより、導電性樹脂組成物の硬化速度を制御することができるが、導電性樹脂組成物に異方性を付与できる観点からは、樹脂の反応温度(硬化温度)が後記する(C)はんだ粒子の融点よりも高いことが好ましく、5℃以上高いことがより好ましい。なお、「異方性」の導電性樹脂組成物とは、はんだ粒子が溶融するとはんだ粒子が電極に集まる性質を利用し、流動状態にある硬化性樹脂中に分散したはんだ粒子が溶融して電極に自己集合し、接続しようとする電極間にのみはんだを配置でき、隣接する電極間では絶縁性が確保できる性質をいう。上記したように、(A)熱硬化性樹脂の反応温度(硬化温度)が(C)はんだの融点よりも高いことで、組成物中で分散していた(C)はんだ粒子を、熱硬化性樹脂が硬化する前に自己凝集させることができる。
【0028】
<(C)はんだ粒子>
(C)はんだ粒子としては、従来公知のものを特に制限なく使用することができ、例えば、金、銀、ニッケル、銅、鉛、および後述の低融点はんだ粒子などが挙げられる。(C)はんだ粒子は、核としてのガラスやセラミック、プラスチックなどの非導電性の粒子をはんだで被覆した複合粒子、前記非導電性粒子とはんだ粒子とを有する複合粒子であってもよい。(C)はんだ粒子が、上記複合粒子または熱溶融性の金属粒子であると、加熱により(C)はんだ粒子が溶融変形するため、接続時に電極との接触面積が増加し、特に高い信頼性が得られる。
【0029】
(C)はんだ粒子としては、170℃以下での加熱により溶融するようなはんだ粒子を用いることが好ましく、なかでも低融点はんだ粒子がより好ましく、Sn-Pb系、Sn-Bi系の低融点はんだ粒子がより好ましい。なお、低融点はんだ粒子とは、融点が200℃以下、好ましくは170℃以下、より好ましくは150℃以下のはんだ粒子を意味する。特に、上記した不良電子素子の除去工程において、電子素子を除去し易くする観点からは、(C)はんだ粒子の融点は、上記した硬化性樹脂の硬化物のガラス転移温度よりも高くてもよく、低くてもよい。
【0030】
また、低融点はんだ粒子としては鉛を含まないはんだ粒子が好ましく、この鉛を含まないはんだ粒子とは、JIS Z 3282:2017(はんだ-化学成分および形状)で規定されている、鉛含有率0.10質量%以下のはんだ粒子を意味する。
【0031】
鉛を含まないはんだ粒子としては、錫、ビスマス、インジウム、銅、銀、アンチモンから選択される1種類以上の金属から構成される低融点はんだ粒子が好適に用いられる。特に、コスト、取り扱い性、接合強度のバランスの観点から、錫(Sn)とビスマス(Bi)との合金が好ましく用いられる。
【0032】
このような低融点はんだ粒子中のBiの含有割合は、15~65質量%、好ましくは35~65質量%、より好ましくは55~60質量%の範囲で適宜選択される。
【0033】
Biの含有割合を15質量%以上とすることにより、その合金は約160℃で溶融を開始する。さらにBiの含有割合を増加させると溶融開始温度は低下していき、20質量%以上で溶融開始温度が139℃となり、58質量%で共晶組成となる。したがって、Biの含有割合を15~65質量%の範囲とすることにより、低融点化効果が十分に得られる結果、低温であっても十分な導通接続が得られる。
【0034】
(C)はんだ粒子は、球状であることが好ましい。ここで、球状とは(C)はんだの形状が確認できる倍率において、球状粉の長径と短径の比が1~1.5のものを90%以上含むものをいう。また、(C)はんだ粒子は、平均粒子径が1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることがさらに好ましい。なお、本明細書において平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分布計を用いて測定されたメディアン径(D50)をいう。
【0035】
また、(C)はんだ粒子は、比表面積が300cm2/g~2000cm2/gであることが好ましく、500cm2/g~1500cm2/gであることがより好ましい。比表面積が上記範囲にあるはんだ粒子を使用することにより、配線基板の電極と電子素子との導通接続の安定性が向上する。なお、はんだ粒子の比表面積とは、BET法で測定された値を意味し、具体的には、一つの分子の大きさが既知の不活性ガス(例えば窒素ガス)を測定試料の表面に吸着させ、その吸着量と不活性ガスの占有面積とから比表面積を求めることができる。
【0036】
(C)はんだ粒子の配合量は、導電性樹脂組成物中の固形分量に対して20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましく、特に35~55質量%の範囲であることが好ましい。(C)はんだ粒子の配合量を20質量%以上とすることにより、配線基板と電子素子との密着性を確保しつつ十分な導通接続を確保することができる。また、(C)はんだ粒子の配合量を70質量%以下とすることにより、導通接続性を確保しつつ十分な密着性を確保することができる。
【0037】
<(D)フラックス>
本発明の導電性樹脂組成物は、導通接続の安定性を高める観点から、(A)熱硬化性樹脂、(B)硬化剤、(C)はんだ粒子に加えて、(D)フラックスを含む。(D)フラックスとしては、導電性樹脂組成物に使用される公知のフラックスを使用することができ、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛と無機ハロゲン化物との混合物、塩化亜鉛と無機酸との混合物、溶融塩、リン酸、リン酸の誘導体、有機ハロゲン化物、ヒドラジン、有機酸、松脂等が挙げられる。これらフラックスは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
上記したフラックスのなかでも、有機酸を好適に使用することができる。好ましい有機酸としては、モノカルボン酸の他、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等の多価カルボン酸が挙げられる。モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等が挙げられる。ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等が挙げられる。トリカルボン酸としては、ベンゼン-1,2,5-トリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,3-プロパントリカルボン酸等が挙げられる。また、テトラカルボン酸としては、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。これらのカルボン酸のなかでも、ジカルボン酸が好ましく、グルタル酸、アジピン酸がより好ましく、特にアジピン酸が好ましい。
【0039】
導電性樹脂組成物中の(D)フラックスの含有量は、組成物中の固形分量に対して1~15質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。フラックスの含有量が上記範囲内である導電性樹脂組成物とすることにより、導通接続性をより一層向上させることができる。
【0040】
また、(D)フラックスの活性度を調整するために、塩基性有機化合物を含んでいてもよい。塩基性有機化合物としては、塩酸アニリンおよび塩酸ヒドラジン等が挙げられる。
【0041】
<(E)光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤>
本発明の導電性樹脂組成物は、厚さ30μmの硬化被膜とした際の該硬化被膜における反射率および透過率を、上記した範囲により調整し易くするために、光エネルギーを吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤を含んでいることが好ましい。導電性樹脂組成物が(E)光吸収剤を含むことにより、リペア作業後の接続信頼性がより向上する。なお、ここでの光とは、熱線帯域にある電磁波に限らず、例えば300nm~10.6μmの種々の波長を含むものであるが、特に、可視光帯域から近赤外帯域の電磁波を吸収してその一部またはその全部を熱エネルギーに変換し得る光吸収剤であることが好ましい。
【0042】
本発明において使用できる(E)光吸収剤としては、各種着色剤、カーボンブラック、チタンブラック、近赤外線吸収剤等が挙げられる。着色剤としては、赤、青、緑、黄等の公知の着色剤を使用することができ、顔料、染料、色素のいずれでもよい。近赤外線吸収剤としては、近赤外線帯域(700~1800nm)に吸収を有する物質であれば特に制限されず、例えば、平面四配位構造を有するニッケルジチオレン錯体等の金属錯体化合物、ポリメチン骨格を伸ばしたシアニン色素、アルミニウムや亜鉛を中心に持つフタロシアニン色素、アントラキノン、ナフトキノン、スクアリウム色素、キノン系化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、上記した(C)はんだ粒子の融点よりも100℃高い温度において変性ないし熱分解しないものであることが好ましい。このような特性を有する(E)光吸収剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、フタロシアニンを好ましく使用することができる。具体的には、三菱ケミカル株式会社のMA11、同MA100、同MA600、同#900、同MA7、同MA77、同MA14、同MA8(いずれもカーボンブラック)、レジノカラー工業株式会社のブラックSD-TT2259(カーボンブラック)、三菱マテリアル電子化成株式会社の12S、同13M、同13M-C、同13M-T、同UF-8、同FB15M(いずれもチタンブラック)、赤穂化成株式会社のTilackD TM-F(チタンブラック)、山田化学工業株式会社のFDN-010、同FDN-007、同FDN-008(フタロシアニン系近赤外線吸収剤)、東洋ビジュアルソリューションズ株式会社のOPTLION(登録商標)(近赤外線吸収剤)、住友金属鉱山株式会社のLaB6(六ホウ化ランタン)、同CWO(登録商標(セシウムドープ酸化タングステン)、日本触媒株式会社のIR-915、同IR-924、同HA-1(いずれも近赤外線吸収剤)、富士フイルム株式会社のIR-001(近赤外線吸収剤)、東京化成工業株式会社のIR-813(p-トルエンスルホナート)、同インドシアニングリーン、同Copper(II)5,9,14,18,23,27,32,36-Octabutoxy-2,3-naphthalocyanine、オリヱント化学工業株式会社のOIL Blue613等が挙げられる。
【0043】
上記した(E)光吸収剤は、(C)はんだ粒子の分散性や加熱時の自己凝集性を阻害しなければ、その大きさや形状が制限されるものではないが、上記した(E)光吸収剤が導電性樹脂組成物中で溶解しない材料である場合は、導電性樹脂組成物の硬化被膜の反射率をより低減する観点から、平均粒子径は1μm以下であることが好ましい。なお、平均粒子径とは、レーザー回折式粒度分計を用いて測定されたメディアン径(D50)をいう。また、導電性樹脂組成物への配合時に溶解するものであってもよい。
【0044】
導電性樹脂組成物中の(E)光吸収剤の含有量は、使用する(A)熱硬化性樹脂の種類や(C)はんだ粒子の配合量によって適宜調整することができるが、本発明の効果の観点からは組成物中の固形分量に対して0.5~8質量%であることが好ましく、0.6~6質量%であることがより好ましい。
【0045】
さらに、導電性樹脂組成物には、硬化物の物理的強度等を上げるために、必要に応じてフィラーを配合することができる。フィラーとしては、公知の無機または有機フィラーが使用できるが、特に、硫酸バリウム、球状シリカ、ハイドロタルサイトおよびタルクが好ましく用いられる。また、難燃性を得るために金属酸化物や水酸化アルミ等の金属水酸化物を体質顔料フィラーとして使用することができる。これらフィラーのなかでも、レーザー光の波長帯域の少なくとも一部を吸収し得る波長帯域を有するものを好ましく使用することができる。
【0046】
また、フィラーを配合する場合は、導電性樹脂組成物中での分散性を高めるために、フィラーは表面処理されたものであってもよい。表面処理がされているフィラーを使用することで、凝集を抑制することができる。表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機フィラーの表面を処理することが好ましい。
【0047】
カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
導電性樹脂組成物には、調製のし易さや塗布性の観点から有機溶剤を配合してもよい。有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
本発明の導電性樹脂組成物は、上述した各成分を所定の配合割合にて配合撹拌し、公知慣用の方法にて製造することができる。
【0050】
本発明の導電性樹脂組成物は、電子部品における部材同士の電気的接続に用いることができる。例えば、プリント配線板と電子素子との電気的接続やプリント配線板間の電気的接続に用いることができ、特にベアチップやLEDチップ等の電子素子を基板上に直接搭載して接続するチップオンボード(COB)等の電子素子実装基板に好適に使用することができる。なかでも、隣接する電極間隔がファインピッチの配線基板に複数の素子を実装して一括して電気的接続を行う用途に好適に使用することができる。
【0051】
<リペア作業>
電子素子実装基板において特定された不良箇所を加熱して、特定された電子素子を配線基板から除去する。加熱する領域としては、特定された不良箇所が含まれていればよく、不良箇所が1箇所のみである場合は当該不良箇所のみを加熱して、特定された電子素子を除去することができる。また、電子素子実装基板中に不良箇所が複数箇所ある場合は、個々の不良箇所を加熱してもよいし、配線基板全体を加熱して、特定された電子素子を除去してもよい。
【0052】
加熱温度としては、配線基板に実装されている電子素子が除去できる温度であれば特に制限はないが、導電性樹脂組成物の硬化物のガラス転移点よりも高い温度であることが好ましく、かつはんだ粒子の溶融固化物(即ち、導電性樹脂組成物に含まれる(C)はんだ粒子)の融点以上の温度であることが好ましい。使用する導電性樹脂組成物に含まれる(A)熱硬化性樹脂や(C)はんだ粒子にもよるが、加熱は、100~240℃で行われることが好ましく、120~200℃で行われることがより好ましく、140~170℃で行われることがさらに好ましい。また、加熱時間は1~60秒は好ましく、1~30秒がより好ましく、1~15秒がさらに好ましい。
【0053】
加熱は、配線基板の電子素子が実装されている側の面から行ってもよく、反対側の面から行ってもよいが、電子素子への熱ダメージを最小限に留める観点からは、配線基板の電子素子が実装されている側とは反対側の面から加熱することが好ましい。また、加熱手段としては特に限定されず、種々の方法を使用することができ、例えば、不良箇所のみを局所的に加熱する場合には、スポットヒーターやヒートドライヤー等の加熱手段を適用することができ、また、配線基板全体を加熱する場合には、ホットプレート等の面状加熱手段を適用することができる。
【0054】
加熱により、配線基板と電子素子とを固定(接着)している導電性樹脂組成物の硬化物が軟化し、硬化物中のはんだ粒子の溶融固化物が再溶融することで、不要な応力をかけずに電子素子を電子素子実装基板から除去することができる。電子素子を除去する手段として、ピンセット等を用いて手動により行ってもよく、また、専用の把持具を備えた除去装置を使用してもよい。
【0055】
次いで、上記のようにして特定の電子素子を除去した後、電子素子実装基板表面に残存している導電性樹脂組成物の硬化物の除去を行う。このような残存物は、新しい電子素子を再実装した際に、接続不良の原因となったり、電子素子の実装位置がずれたりする場合がある。本発明の導電性樹脂組成物によれば、レーザー光照射等によって残存する硬化物のみを局所的に容易に除去することができるともに、その周囲に与える熱の影響を低減することができる。照射するレーザー光としては、特に制限なく種々の波長ないし種類のレーザー光を使用することができ、連続波レーザーであってもパルス波レーザーであってもよい。連続波レーザーとしては、例えば、YVO4レーザー、ファイバーレーザー、エキシマレーザー、グリーンレーザー、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He-Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザー等を用いることができる。また、パルス波レーザーとしては、例えば、ナノセックパルスレーザー、ミリセックパルスレーザー等を用いることができる。これらのなかでも、硬化物の除去性や取扱い性の観点から、ファイバーレーザー(波長1064nm)、炭酸ガスレーザー(波長10.6μm)、YAGレーザー(波長1064nm)、グリーンレーザー(波長532nm)を用いることが好ましい。
【0056】
レーザー光の出力は、硬化物中の樹脂成分が除去できる程度であれば特に制限されるものはないが、出力が高いと過度の熱が発生し基板を損傷してしまう恐れがある。そのため、0.2~1.0W程度の平均出力で、繰り返しレーザー光照射を行うことが好ましい。繰り返しの回数は特に制限はないが、基板の損傷と実用性との両立からは5~50回程度であることが好ましい。また、連続波レーザーを用いて繰り返しレーザー光照射を行ってもよく、パルス波レーザーを用いてもよい。レーザー光のビーム径は、例えば、5μm~200μm程度である。
【実施例0057】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り全て質量基準である。
【0058】
<導電性樹脂組成物の調製>
下記表1に示す各成分を所定割合で配合し、撹拌機(FBLh600M、東京硝子器械株式会社製)を用いて400rpmで10分間混合することで各導電性樹脂組成物(実施例1~6および比較例1)を調製した。なお、表1中の*1~*10は、以下の成分を表す。
*1:エポキシ樹脂(jER 828、三菱ケミカル株式会社製)
*2:硬化剤(DICY、ジシアンジアミド)
*3:低融点はんだ粒子(DS10、融点139℃、三井金属鉱業株式会社製、球状、比表面積:541cm2/g)
*4:フラックス(グルタル酸)
*5:カーボンブラック(MA11、平均粒子径29nm、三菱ケミカル株式会社製)
*6:チタンブラック(12S、一次粒子径:80~100nm、三菱マテリアル電子化成株式会社製)
*7:チタンブラック(13M、一次粒子径:80~100nm、三菱マテリアル電子化成株式会社製)
*8:近赤外線吸収剤(FDN-010、山田化学工業株式会社製)
*9:青色染料(OIL Blue613、オリヱント化学工業株式会社製)
*10白色顔料(CR-58、酸化チタン、平均粒子径:0.28μm、石原産業株式会社製)
【0059】
得られた各導電性樹脂組成物を、ガラス基板(品名S1112、松浪硝子工業株式会社製)の一方の面に塗布し、ホットプレートを用いて180℃で30分間の硬化条件にて硬化させることにより、厚さ30μmの硬化被膜を形成した。
続いて、得られた硬化被膜が形成された基板を、積分球ユニットISN-470を装着したV-570型紫外可視光赤外分光光度計(日本分光株式会社製)を用いて、波長1064nmおよび波長532nmでの反射率および透過率を測定した。測定条件は、測定レスポンス:Fast、バンド幅:2nm、走査速度:400nm/min、開始波長1100nm、終了波長350nm、データ取り込み間隔2nmであり、リファレンスとしてガラス基板(品名S1112、松浪硝子工業株式会社製)、反射板としてスペクトラロン(登録商標)を用いた。その他はJIS K 7375:2008に準拠して測定した。測定結果は下記表1に示すとおりであった。
【0060】
<評価>
(実装後の接続信頼性)
得られた各導電性樹脂組成物を、PCB基板(電極幅:120μm、電極長さ:200um、ピッチ幅:0.6mm、電極数10、フラッシュAu処理)上に、メタルマスク(マスク厚:100μm、開口:200μm×100μm)を介してスクレイパーにより厚みが80μmになるように塗布した。
続いて、導電性樹脂組成物を塗布した状態のPCB基板の各電極位置に個々のLEDチップ(125μm×75μm)の電極が重なり合うように配置し、LEDチップ側から、180℃、10分間の加熱を行い、10個のLEDチップが実装された評価基板を作製した。各評価基板の電極部分に、7011DCシグナルソース(日置電機株式会社製)を用いて、2.5Vの電圧を印加し、LEDの点灯可否を確認した。LEDの点灯可否を以下の基準で評価した。
◎:評価基板10個のLEDのうち、9個以上が点灯
○:評価基板10個のLEDのうち、6~8個が点灯
△:評価基板10個のLEDのうち、3~5個が点灯
×:評価基板10個のLEDのうち、2個以下が点灯
評価結果は表1に示されるとおりであった。
【0061】
<リペア後の接続信頼性>
上記した評価基板のうち、10個のLED全てが点灯する基板を選択し、基板の裏側から、加熱面を断熱材で部分的にマスクしたホットプレートを用いて170℃で1分間加熱し、10個のLEDを基板から除去したあと、基板を室温まで冷却した。LEDが除去されたそれぞれの箇所を目視にて観察し、10箇所全てにおいて、導電性樹脂組成物の硬化物が、基板表面の電極に残存していることを確認した。
次いで、LEDが除去された箇所に、ファイバーレーザー(波長:1064μm、ビーム径:40μm)を用いて、0.4Wの出力にて1秒間、レーザー光を照射した。この操作を10回繰り返した。
その後、LEDが除去された箇所(1箇所の面積:約120μm×200μm)に、各導電性樹脂組成物をディスペンサー装置を用いて300mg塗布し、LED実装基板に使用したLEDと同じLEDを塗布した箇所に配置し、基板の電極とLEDの電極の位置が重なり合うように調整した。続いて、LEDチップ側から、180℃で10分間の加熱を行い、LEDの再実装を行った。再実装基板の電極部分に、7011DCシグナルソース(日置電機株式会社製)を用いて、2.5Vの電圧を印加し、LEDの点灯可否を確認した。LEDの点灯可否を以下の基準で評価した。
◎:評価基板10個のLEDのうち、9個以上が点灯
○:評価基板10個のLEDのうち、6~8個が点灯
△:評価基板10個のLEDのうち、3~5個が点灯
×:評価基板10個のLEDのうち、2個以下が点灯
評価結果は表1に示されるとおりであった。
【0062】
<リペア時の周辺絶縁膜への影響>
再実装基板のLEDを実装した周りの絶縁膜をOM顕微鏡にて観察した。絶縁膜の変質等がないかを下記の評価基準により評価した。
◎:形状の変化および色の変化がいずれも確認できない
○:形状の変化は確認できないが、色の変化を一部で確認できる
△:形状の変化および色の変化を一部で確認できる
×:形状の変化および色の変化を全体で確認できる
評価結果は表1に示されるとおりであった。
【0063】
【0064】
表1の評価結果からも明らかなように、硬化被膜における波長1064nmの光の反射率、および波長532nmの光の反射率がいずれも20%以下である導電性樹脂組成物(実施例1~6)では、LED等の電子素子を回路基板に実装した際の接続信頼性を維持しながらも、電子素子実装基板から電子素子を除去した後に再度電子素子を実装するリペア作業後においても、当該電子素子の周辺絶縁部に影響を与えることなく、優れた接続信頼性を有していることがわかる。
また、硬化被膜における波長1064nmの光の透過率、および波長532nmの光の透過率のいずれも55%以下である導電性樹脂組成物(実施例1~4)は、周辺絶縁部の影響がより一層抑えられ、接続信頼性も向上することがわかる。
一方、硬化被膜における波長1064nmの光の反射率、および波長532nmの光の反射率がいずれも20%を超える導電性樹脂組成物(比較例1)では、電子素子を回路基板に実装した際の接続信頼性は維持できるものの、電子素子を除去した回路基板の周辺絶縁部が変質し、再実装後の接続信頼性を有していないことがわかる。