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特開2022-149735プログラム、画像処理方法、画像処理装置及びモデル生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149735
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】プログラム、画像処理方法、画像処理装置及びモデル生成方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20220929BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220929BHJP
   A61B 1/313 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61B8/12
A61B1/00 530
A61B1/00 526
A61B1/313 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052013
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 智仁
(72)【発明者】
【氏名】時田 昌典
【テーマコード(参考)】
4C161
4C601
【Fターム(参考)】
4C161AA22
4C161BB08
4C161CC07
4C161FF40
4C161FF46
4C161GG24
4C161MM10
4C161NN01
4C161QQ09
4C161RR01
4C161RR18
4C601DD01
4C601DD14
4C601EE11
4C601FE04
4C601JC06
4C601LL33
(57)【要約】
【課題】フラッシュ操作における各種の条件を提案することが可能なプログラム等を提供する。
【解決手段】コンピュータは、プログラムに従って、超音波信号を用いて血管の横断面を撮影した超音波断層画像を取得する。また、コンピュータは、取得した超音波断層画像に基づいて、超音波断層画像中の血管の内腔に関する情報を算出する。そして、コンピュータは、算出した内腔に関する情報に基づいて、光信号を用いて血管の横断面を撮影する際のフラッシュ操作に関する操作情報を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号を用いて血管の横断面を撮影した超音波断層画像を取得し、
取得した超音波断層画像に基づいて、前記血管の内腔に関する情報を算出し、
算出した前記内腔に関する情報に基づいて、光信号を用いて前記血管の横断面を撮影する際のフラッシュ操作に関する操作情報を特定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
超音波断層画像を入力した場合に前記超音波断層画像中の血管の内腔の領域を示す情報を出力するように学習済みの学習モデルに、取得した前記超音波断層画像を入力して、前記超音波断層画像中の血管の内腔の領域を出力し、
出力した内腔の領域に基づいて、前記内腔に関する情報を算出する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記内腔に関する情報は、前記内腔の横断面の径、及び、前記内腔の長軸方向の長さを含み、
超音波信号を用いて前記血管の横断面を複数箇所で撮影した複数の超音波断層画像を取得し、
取得した超音波断層画像の枚数に基づいて、撮影した前記血管の内腔の長軸方向の長さを算出する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記フラッシュ操作において前記血管内の血液と置換されるフラッシュ液の流量及び流速を含む前記操作情報を特定する
請求項1から3までのいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項5】
前記内腔に関する情報を入力した場合に前記フラッシュ操作に関する操作情報を出力するように学習済みの第2の学習モデルに、算出した前記内腔に関する情報を入力して、前記フラッシュ操作に関する操作情報を出力する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1から4までのいずれかひとつに記載のプログラム。
【請求項6】
前記第2の学習モデルは、前記内腔に関する情報及び患者に関する患者情報を入力した場合に前記フラッシュ操作に関する操作情報を出力するように学習してあり、
患者に関する患者情報を取得し、
算出した前記内腔に関する情報及び取得した前記患者情報を前記第2の学習モデルに入力して、前記フラッシュ操作に関する操作情報を出力する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
超音波信号を用いて血管の横断面を撮影した超音波断層画像を取得し、
取得した超音波断層画像に基づいて、前記血管の内腔に関する情報を算出し、
算出した前記内腔に関する情報に基づいて、光信号を用いて前記血管の横断面を撮影する際のフラッシュ操作に関する操作情報を特定する
処理をコンピュータが実行する画像処理方法。
【請求項8】
超音波信号を用いて血管の横断面を撮影した超音波断層画像を取得する取得部と、
取得した超音波断層画像に基づいて、前記血管の内腔に関する情報を算出する算出部と、
算出した前記内腔に関する情報に基づいて、光信号を用いて前記血管の横断面を撮影する際のフラッシュ操作に関する操作情報を特定する特定部と
を備える画像処理装置。
【請求項9】
患者の血管の内腔に関する情報と、光信号を用いて前記血管の横断面を撮影する際のフラッシュ操作に関する操作情報とを関連付けた訓練データを取得し、
前記訓練データを用いて、血管の内腔に関する情報を入力した場合に前記フラッシュ操作に関する操作情報を出力する学習済みの学習モデルを生成する
処理をコンピュータが実行するモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、画像処理方法、画像処理装置及びモデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の血管内にカテーテルを挿入し、バルーン又はステントを用いて血管の狭窄部位を拡張する血管内治療が行われている。血管内治療では、光干渉断層診断装置(OCT:Optical Coherence Tomography)を用いて血管内から血管の断層画像を撮影し、得られた断層画像によって血管の観察が行われている。OCTによる撮影時には、赤血球等の血球成分を含む血液によって光の乱反射と減衰が起こることがあるので、造影剤、低分子デキストラン又は生理食塩水等を血管内に注入して血液が無い状態を一時的に作り出すフラッシュ操作が行われる。特許文献1には、画像診断に使用する断層画像を適切に撮影するためのフラッシュ操作に用いるフラッシュ液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6562902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラッシュ操作においてフラッシュ液の種類及び希釈率、注入量及び注入する際の流速等の条件を適切に設定する必要がある。適切な条件でのフラッシュ操作が行われなかった場合、フラッシュ操作のやり直し及び断層画像の撮り直し等が発生し、手技時間が延長する。フラッシュ操作における条件は、治療対象の血管の状態や、使用するカテーテルのサイズ等を考慮して設定する必要があり、適切に選択することは容易ではない。特許文献1では、フラッシュ操作における各種の条件の選択については言及されていない。
【0005】
一つの側面では、フラッシュ操作における条件(フラッシュ操作に関する操作情報)を提案することが可能なプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係るプログラムは、超音波信号を用いて血管の横断面を撮影した超音波断層画像を取得し、取得した超音波断層画像に基づいて、前記血管の内腔に関する情報を算出し、算出した前記内腔に関する情報に基づいて、光信号を用いて前記血管の横断面を撮影する際のフラッシュ操作に関する操作情報を特定する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、フラッシュ操作における条件(フラッシュ操作に関する操作情報)を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像診断システムの構成例を示す説明図である。
図2】ガイディングカテーテルの概要を説明する説明図である。
図3】画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
図4】診療DBの構成例を示す説明図である。
図5】学習モデルの概要を示す説明図である。
図6】フラッシュ情報の画面例を示す模式図である。
図7】第2学習モデルの生成処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】フラッシュ情報の提示処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】学習モデルの変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のプログラム、画像処理方法、画像処理装置及びモデル生成方法について、その実施形態を示す図面に基づいて詳述する。以下の実施形態では、血管内治療である心臓カテーテル治療を一例に説明する。
【0010】
図1は、画像診断システムの構成例を示す説明図である。本実施形態の画像診断システムは、血管内検査装置1と、透視画像撮影装置2と、画像処理装置3と、表示装置4と、入力装置5とを備える。血管内検査装置1は、患者の血管内断層像をイメージングするための装置であり、血管内から血管の横断面の断層画像を撮影する。本実施形態の血管内検査装置1は、血管内超音波診断法(IVUS)及び光干渉断層診断法(OCT)の両方の機能を備えるデュアルタイプのイメージングカテーテル10を用いた画像診断装置である。デュアルタイプのイメージングカテーテル10では、IVUSのみによって超音波断層画像を取得するIVUSモードと、OCTのみによって光干渉断層画像を取得するOCTモードと、IVUS及びOCTによって両方の断層画像を取得するデュアルモードとが設けられており、これらのモードを切り替えて使用することができる。なお、本実施形態の血管内検査装置1は、デュアルタイプのイメージングカテーテル10を用いた構成に限定されず、IVUSのみ又はOCTのみを備えるイメージングカテーテルを用いた構成でもよい。以下、超音波断層画像及び光干渉断層画像それぞれを適宜、IVUS画像及びOCT画像という。
【0011】
イメージングカテーテル10は患者の血管内に挿入される医用器具であり、血管内検査装置1は、血管内に挿入されたイメージングカテーテル10によって血管内から血管のIVUS画像及びOCT画像を撮影する。イメージングカテーテル10を用いてIVUS画像又はOCT画像を撮影する場合、医療従事者はまず、後述のガイディングカテーテル60(図2参照)を患者の血管内に挿入し、血管内に挿入したガイディングカテーテル60内に、イメージングカテーテル10を挿入する。イメージングカテーテル10は、画像診断用プローブ11(図2参照)を有しており、画像診断用プローブ11には、超音波(超音波信号)を送信すると共に血管内からの反射波を受信する超音波送受信部と、近赤外光(光信号)を送信すると共に血管内からの反射光を受信する光送受信部とが設けられている。血管内検査装置1は、イメージングカテーテル10の超音波送受信部で受信した超音波の反射波の信号に基づいてIVUS画像を生成し、光送受信部で受信した反射光の信号に基づいてOCT画像を生成する。血管内検査装置1がイメージングカテーテル10を用いて撮影したIVUS画像及びOCT画像は、画像処理装置3を介して表示装置4に表示される。
【0012】
なお、医療従事者は、OCT画像を撮影する際に、造影剤、低分子デキストラン又は生理食塩水等で構成されるフラッシュ液を血管内に注入して一時的に血液が無い状態(血液がフラッシュ液に置換された状態)を作り出すフラッシュ操作を行う。フラッシュ操作において、医療従事者は、血管内に挿入したガイディングカテーテル60を介してフラッシュ液の血管への注入を行う。
【0013】
透視画像撮影装置2は、患者体内を透視した透視画像を撮影するための装置であり、例えば患者の血管に造影剤を注入しながら患者の生体外からX線を用いて血管を撮影し、当該血管の透視画像であるアンギオ画像を得るためのアンギオグラフィ装置である。透視画像撮影装置2は、X線源及びX線センサを備え、X線源から照射されたX線をX線センサが受信することにより、患者のX線透視画像をイメージングする。なお、イメージングカテーテル10及びガイディングカテーテル60の先端にはX線を透過しないX線不透過マーカが装着されており、透視画像においてイメージングカテーテル10及びガイディングカテーテル60(X線不透過マーカ)の位置が可視化される。透視画像撮影装置2が撮影した透視画像は、画像処理装置3を介して表示装置4に表示される。本実施形態では、画像診断システムが、アンギオ画像を撮影する透視画像撮影装置2を備える構成とするが、生体外の複数の方向から患者の血管及びカテーテル10,60を撮影する装置であれば、特に限定されるものではない。
【0014】
画像処理装置3には、表示装置4及び入力装置5が接続されている。表示装置4は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、血管内検査装置1で撮影されたIVUS画像及びOCT画像、透視画像撮影装置2で撮影されたアンギオ画像等の医用画像を表示する。入力装置5は、例えばキーボード、マウス、トラックボール又はマイク等であり、術者による各種の操作を受け付ける。表示装置4と入力装置5とは、一体に積層されて、タッチパネルを構成していてもよい。また入力装置5と画像処理装置3とは、一体に構成されていてもよい。更に入力装置5は、ジェスチャ入力又は視線入力等を受け付けるセンサであってもよい。
【0015】
画像処理装置3は、血管内検査装置1で撮影されたIVUS画像及びOCT画像と、透視画像撮影装置2で撮影された透視画像とを表示装置4に出力して表示させる。また画像処理装置3は、血管内検査装置1が撮影したIVUS画像に基づいて、撮影対象の血管のサイズ(径及び血管の走行方向の長さ)等を特定し、特定した血管のサイズ等に基づいて、OCT画像の撮影時に行うフラッシュ操作に関する操作情報(以下、フラッシュ情報という)を生成する。よって、本実施形態では、OCT画像を撮影する前にIVUS画像を撮影することにより、画像処理装置3がIVUS画像に基づいてフラッシュ情報を生成して術者に提示することができる。
【0016】
図2はガイディングカテーテル60の概要を説明する説明図である。ガイディングカテーテル60は、シース61と、シース61の端部に装着された分岐ハブ62とを有する。以下の説明ではガイディングカテーテル60の分岐ハブ62から遠い側を先端側と記載し、分岐ハブ62側を基端側と記載する。シース61は、先端部から分岐ハブ62の開口部64に亘って連続する管部を形成しており、分岐ハブ62の開口部64は、血管内検査装置1に接続されたイメージングカテーテル10(画像診断用プローブ11)の挿入口として用いられる。また分岐ハブ62にはサイドポート63が設けられており、サイドポート63は、フラッシュ液72を充填済みのシリンジ70の接続用ポートとして用いられる。ガイディングカテーテル60は、予め血管内に挿入されたガイドワイヤを受け入れ、ガイドワイヤによって冠動脈の入口付近まで導かれる。ガイディングカテーテル60の内部には、コネクタ部13に接続された画像診断用プローブ11が、分岐ハブ62の開口部64から挿通されている。
【0017】
イメージングカテーテル10は、画像診断用プローブ11と、画像診断用プローブ11の端部(基端側)に配置されたコネクタ部13とを有する。イメージングカテーテル10は、コネクタ部13を介して血管内検査装置1のMDU(Motor Drive Unit)(図示せず)に接続される。画像診断用プローブ11は、ガイディングカテーテル60に挿入されるシース(図示せず)と、シース内に挿通されたシャフトと、シャフトの先端に設けられたセンサ部12とを有する。シースの先端部には、ガイドワイヤが挿通可能なガイドワイヤ挿通部(図示せず)が設けられている。ガイドワイヤ挿通部は、予め血管内に挿入されたガイドワイヤを受け入れ、ガイドワイヤによって画像診断用プローブ11を観察部位又は患部まで導くのに使用される。センサ部12は超音波送受信部及び光送受信部を有する。シャフトには、超音波送受信部に接続された電気信号ケーブル(図示せず)と、光送受信部に接続された光ファイバケーブル(図示せず)とが内挿されており、電気信号ケーブル及び光ファイバケーブルはコネクタ部13に接続されている。画像診断用プローブ11は、ガイディングカテーテル60の内部で進退可能であり、シャフト及びセンサ部12は、画像診断用プローブ11のシース内部で進退可能であり、また周方向に回転することができる。血管内検査装置1は、コネクタ部13によってイメージングカテーテル10が着脱可能に取り付けられる駆動装置(MDU)を有しており、医療従事者の操作に応じて内蔵モータを駆動することにより、血管100内に挿入された画像診断用プローブ11の動作を制御する。例えばMDUは、画像診断用プローブ11を一定の速度で引っ張りながら周方向に回転させるプルバック操作を行う。画像診断用プローブ11は、プルバック操作によって先端側から基端側に移動しながら回転しつつ、所定の時間間隔で連続的に血管100内を走査することにより、画像診断用プローブ11に略垂直な複数枚のIVUS画像又はOCT画像を連続的に撮影する。
【0018】
フラッシュ操作を行う場合、医療従事者は、分岐ハブ62のサイドポート63に、フラッシュ液72を充填済みのシリンジ70を装着し、画像診断用プローブ11の先端部を観察位置付近に配置した後に、シリンジ70のプランジャー71を押し込む。これにより、シリンジ70内のフラッシュ液72が、ガイディングカテーテル60内を通って、ガイディングカテーテル60の先端から血管100内に射出される。射出されたフラッシュ液72により、当該部位の血液が押し流され、フラッシュ液72が充満する状態となる。この状態で画像診断用プローブ11(センサ部12)によってOCT画像を撮影することにより、血液の影響を受けないOCT画像を得ることができる。なお、プランジャー71の押し込みは例えばオートインジェクタを用いて行われる。
【0019】
図3は画像処理装置3の構成例を示すブロック図である。画像処理装置3はコンピュータであり、制御部31、主記憶部32、入出力I/F33、補助記憶部34、読取部35を備える。制御部31は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。制御部31は、バスを介して画像処理装置3を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0020】
主記憶部32は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の一時記憶領域であり、制御部31が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。
【0021】
入出力I/F33は、血管内検査装置1及び透視画像撮影装置2、表示装置4及び入力装置5が接続されるインタフェースである。制御部31は、入出力I/F33を介して、血管内検査装置1からIVUS画像又はOCT画像を取得し、透視画像撮影装置2からアンギオ画像を取得する。また制御部31は、入出力I/F33を介して、IVUS画像、OCT画像、又はアンギオ画像の医用画像信号を表示装置4へ出力することによって、表示装置4に医用画像を表示する。更に、制御部31は、入出力I/F33を介して、入力装置5に入力された情報を受け付ける。
【0022】
補助記憶部34は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。補助記憶部34は、制御部31が実行するコンピュータプログラムP、制御部31の処理に必要な各種データを記憶する。また、補助記憶部34は、後述する第1学習モデルM1、第2学習モデルM2及び診療DB34aを記憶する。第1学習モデルM1は、所定の訓練データを学習済みの機械学習モデルであり、IVUS画像を入力として、入力されたIVUS画像中の血管内腔の領域を出力するモデルである。第2学習モデルM2(第2の学習モデル)は、所定の訓練データを学習済みの機械学習モデルであり、血管情報、治療情報、及び患者情報を入力として、フラッシュ操作に関するフラッシュ情報を出力するモデルである。第1学習モデルM1及び第2学習モデルM2は、人工知能ソフトウェアを構成するプログラムモジュールとしての利用が想定される。診療DB34aは、患者の診療データを格納するデータベースである。なお、補助記憶部34は画像処理装置3に接続された外部記憶装置であってもよい。コンピュータプログラムPは、画像処理装置3の製造段階において補助記憶部34に書き込まれてもよいし、遠隔のサーバ装置が配信するものを画像処理装置3が通信にて取得して補助記憶部34に記憶させてもよい。
【0023】
読取部35は、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体30に記憶されたデータを読み取る。コンピュータプログラムPは、記録媒体30に読み出し可能に記録された態様であってもよく、読取部35が記録媒体30から読み出して補助記憶部34に記憶させてもよい。また、コンピュータプログラムPは半導体メモリに記録された態様であってもよく、制御部31は半導体メモリからコンピュータプログラムPを読み出して実行してもよい。
【0024】
画像処理装置3は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよい。また、画像処理装置3は、サーバクライアントシステムや、クラウドサーバ、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。以下の説明では、画像処理装置3が1台のコンピュータであるものとして説明する。
【0025】
本実施形態の画像処理装置3において、制御部31は、補助記憶部34に記憶されたコンピュータプログラムPを読み出して実行することにより、血管内検査装置1で撮影したIVUS画像に基づいて、撮影された血管の内腔のサイズを検出する処理を実行する。また制御部31は、検出した血管内腔のサイズ(血管情報)と、血管内検査装置1による血管内治療に用いる治療用デバイスに関する情報(治療情報)と、患者の情報(患者情報)とに基づいて、OCT画像を撮影する際に行うフラッシュ操作に関するフラッシュ情報を生成する処理を実行する。よって、本実施形態の画像処理装置3は、OCT画像を撮影する際のフラッシュ操作に関するフラッシュ情報を術者に提示することができる。なお、本実施形態の画像処理装置3では、IVUS画像中の血管内腔を検出する際に第1学習モデルM1を用い、血管情報、治療情報及び患者情報からフラッシュ操作の操作情情報を生成する際に第2学習モデルM2を用いる。
【0026】
図4は診療DB34aの構成例を示す説明図である。診療DB34aは、診療ID列、患者情報列、治療情報列、画像情報列を含む。診療ID列は、各診療データを識別するための診療IDを記憶する。患者情報列、治療情報列及び画像情報列はそれぞれ、診療IDに対応付けて、診療対象の患者に関する患者情報、当該患者に実施した治療及び実施予定の治療に関する治療情報、及び当該患者を検査して得た医用画像を記憶している。患者情報は、治療を実施した患者又は実施予定の患者に関する情報であり、患者の診療記録である。患者情報は、患者の年齢、性別、体重、身長、腎機能レベル(例えばCr値を5段階で評価した値)、診断名、既往歴等を含む。また患者情報は、治療歴、薬の服用歴、血液検査結果等を含んでもよい。治療情報は、患者に実施した血管内治療又は実施予定の血管内治療に関する情報である。治療情報は、例えば治療実施日又は実施予定日、治療した病変部の位置(病変部位)、病変部における血管内腔の大きさ(直径、長さ、体積)及び形状、使用したガイディングカテーテル60又は使用予定のガイディングカテーテル60の種類(例えば製品名)、直径及び長さ等の情報、使用したイメージングカテーテル10又は使用予定のイメージングカテーテル10の種類、直径及び長さ等の情報等を含む。また治療情報は、OCT画像を撮影する際のフラッシュ操作に使用したフラッシュ液(例えば造影剤)の種類、希釈率、投与量(フラッシュ量)及び流速(フラッシュ流速)等のフラッシュ情報を含む。更に治療情報は、フラッシュ情報に対応付けて、フラッシュ情報に含まれる各条件でフラッシュ操作を行った場合の成功確率を含む。成功確率は、フラッシュ操作を行ってOCT画像を撮影した術者によって登録される値であり、例えばOCT画像の撮影後に術者によって登録される。なお、フラッシュ操作の成功とは画像診断に十分用いることができるOCT画像を撮影できたと術者が判断したことを意味し、成功確率は例えば100点満点で術者の満足度を示す。また治療情報は、IVUS画像又はOCT画像を撮影する際のプルバック速度及び移動距離、透視画像撮影装置2でアンギオ画像を撮影する際に使用した造影剤の種類、希釈率及び投与量等を含む。更に治療情報は、病変部の性状、ガイディングカテーテル60の穿刺部位、透視画像の撮影時間、留置したステントの種類、直径、長さ及び総数、バルーンの種類、長さ、最大拡張径、最大拡張圧、拡張時間及び減衰時間、治療後の経過情報(例えば合併症発症の有無)等を含んでもよい。医用画像は、患者の血管をイメージングした画像であり、アンギオ画像、IVUS画像及びOCT画像を含む。また医用画像は、コンピュータ断層撮影画像(CT画像)、磁気共鳴画像(MRI画像)等を含んでもよい。
【0027】
図5は学習モデルM1,M2の概要を示す説明図である。図5Aは第1学習モデルM1を示し、図5Bは第2学習モデルM2を示す。第1学習モデルM1は、IVUS画像に含まれる所定のオブジェクトを認識するモデルである。第1学習モデルM1は、例えばセマンティックセグメンテーションにより、画像中のオブジェクトを画素単位で分類することができるモデルである。本実施形態の第1学習モデルM1は、1枚のIVUS画像を入力とし、IVUS画像に含まれる血管内腔を認識するように学習済みの機械学習モデルであり、認識した結果を出力する。具体的には、第1学習モデルM1は、入力されたIVUS画像の各画素を血管内腔の領域と、それ以外の領域とに分類し、各画素に領域毎のラベルを対応付けた分類済みのIVUS画像(以下ではラベル画像という)を出力する。第1学習モデルM1は、例えばU-Net、FCN(Fully Convolutional Network )、SegNet等で構成することができる。
【0028】
第1学習モデルM1は、入力層、中間層及び出力層(図示せず)を有し、中間層は、畳み込み層及びプーリング層と、逆畳み込み層とを有する。畳み込み層は、入力層を介して入力された画像の画素情報から画像の特徴量を抽出して特徴量マップを生成し、プーリング層は、生成された特徴量マップを圧縮する。逆畳み込み層は、畳み込み層及びプーリング層によって生成された特徴量マップを元の画像サイズに拡大(マッピング)する。なお、逆畳み込み層は、畳み込み層で抽出された特徴量に基づいて画像内にどのオブジェクトがどの位置に存在するかを画素単位で識別し、各画素がどのオブジェクトに対応するかを示したラベル画像を生成する。図5A右側に示すように、第1学習モデルM1から出力されるラベル画像は、IVUS画像の各画素が、血管内腔の領域と、それ例外の領域とにそれぞれ分類され、各領域に応じた画素値が割り当てられた画像となる。図5Aでは、血管内腔の領域に分類された画素をハッチングで示している。
【0029】
上述した構成の第1学習モデルM1は、訓練用のIVUS画像と、図5A右側に示すようにIVUS画像中の各画素に対して、判別すべきオブジェクト(ここでは血管内腔)を示すデータがラベリングされたラベル画像とを含む訓練データを用意し、この訓練データを用いて未学習の学習モデルを機械学習させることにより生成することができる。なお、訓練用のラベル画像では、訓練用のIVUS画像に対して、各オブジェクトの領域に対応する座標範囲と、各オブジェクトの種類とを表すラベルが付与されている。第1学習モデルM1は、訓練データに含まれるIVUS画像が入力された場合に、訓練データに含まれるラベル画像を出力するように学習する。具体的には、第1学習モデルM1は、入力されたIVUS画像に基づいて中間層での演算を行い、IVUS画像中の各オブジェクト(ここでは血管内腔)を検出した検出結果を取得する。より具体的には、第1学習モデルM1は、IVUS画像中の各画素に対して、分類されたオブジェクトの種類を示す値がラベリングされたラベル画像を出力として取得する。そして第1学習モデルM1は、取得した検出結果(ラベル画像)を、訓練データが示す正解のオブジェクト領域の座標範囲及びオブジェクトの種類と比較し、両者が近似するように、ニューロン間の重み(結合係数)等のパラメータを最適化する。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、最急降下法、誤差逆伝播法等を用いることができる。これにより、IVUS画像が入力された場合に、IVUS画像中の血管内腔の領域を示すラベル画像を出力する第1学習モデルM1が得られる。
【0030】
画像処理装置3は、このような第1学習モデルM1を予め用意しておき、IVUS画像中の血管内腔の検出に用いる。なお、第1学習モデルM1は、IVUS画像中の血管内腔の位置及び形状を識別可能であればよい。本実施形態では、第1学習モデルM1は、IVUS画像中の血管内腔を認識できればよいが、血管内腔に加えて、血管壁(中膜及びプラーク)及びカテーテルの領域を認識するように構成されていてもよい。第1学習モデルM1の学習は他の学習装置で行われてもよい。他の学習装置で学習が行われて生成された学習済みの第1学習モデルM1は、例えばネットワーク経由又は記録媒体30経由で学習装置から画像処理装置3にダウンロードされて補助記憶部34に記憶される。
【0031】
第2学習モデルM2は、第1学習モデルM1を用いてIVUS画像から検出された血管内腔に関する血管情報と、患者に行う予定の血管内治療に関する治療情報と、診療DB34aに格納されている患者情報とを入力とする。なお、血管情報、治療情報及び患者情報の各項目のうちで用意できない情報がある場合、項目毎に予め設定されたデフォルトの情報を第2学習モデルM2に入力してもよい。そして第2学習モデルM2は、図5B右側に示すような各項目について推定した推定結果をフラッシュ情報として出力する。血管情報は、例えば血管内の病変部(治療対象箇所)の直径、長さ及び体積を含む。また血管情報は、冠動脈に対するガイディングカテーテル60の先端の位置、及び、ガイディングカテーテル60の先端と冠動脈との係合状態を含んでもよい。なお、病変部の長さは、例えば血管内検査装置1がIVUS画像を撮影した際のプルバック操作におけるプルバック距離を用いることができる。また、ガイディングカテーテル60の先端の位置、及び冠動脈との係合状態は、例えば透視画像撮影装置2で撮影されたアンギオ画像に基づいて検出可能である。なお、プルバック距離は、1回のプルバック操作によって撮影されたIVUS画像の枚数と、プルバック速度とに基づいて算出できる。
【0032】
治療情報は、例えば病変部の位置(例えば血管の種類)を含む。また治療情報は、使用予定のガイディングカテーテル60の種類(例えば商品名)、形状(直径及び長さ)、フラッシュ操作の際にガイディングカテーテル60の先端が配置される予定の位置、使用予定のイメージングカテーテル10の種類、形状(直径及び長さ)、フラッシュ操作の際にイメージングカテーテル10の先端が配置される予定の位置等、カテーテルに関するカテーテル情報を含む。なお、ガイディングカテーテル60及びイメージングカテーテル10の先端の位置は、透視画像撮影装置2によって撮影されたアンギオ画像に基づいて特定された位置を用いることができる。また治療情報は、使用予定の造影剤の種類、希釈率、造影剤の投与に使用するシリンジ70における内圧限界等、造影剤に関する造影剤情報を含む。また治療情報は、IVUS画像の撮影時に行ったプルバック操作におけるプルバック速度及びプルバック距離等、プルバック操作に関するプルバック情報を含む。また治療情報は、患者のアンギオ画像を含んでもよい。更に治療情報は、血管内治療が実施中である場合、既に使用された造影剤の種類、希釈率及び投与量と、今後に使用予定の造影剤の種類、希釈率及び投与量とを含んでもよい。患者情報は、例えば患者の年齢(年齢層)、体重、腎機能レベルを含む。上述したような治療情報及び患者情報は、診療DB34aに記録されている各情報を用いることができる。
【0033】
第2学習モデルM2が出力するフラッシュ情報は、フラッシュ液に使用する造影剤の種類及び希釈率、フラッシュ液を投与する際の流速(フラッシュ流速)及び投与量(フラッシュ流量)、これらの条件でフラッシュ操作を行った場合の成功確率を含む。第2学習モデルM2は、例えばCNN(Convolutional Neural Network)で構成されるが、決定木、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)、RNN(Recurrent Neural Network)等のアルゴリズムを用いて構成されてもよく、複数のアルゴリズムを組み合わせて構成されてもよい。
【0034】
第2学習モデルM2は、訓練用の血管情報、治療情報及び患者情報と、正解のフラッシュ情報とが対応付けられた訓練データを用意し、この訓練データを用いて未学習の学習モデルを機械学習させることにより生成することができる。訓練用の血管情報、治療情報及び患者情報は、血管内治療を実施した患者の診療データを用いることができ、例えば診療DB34aに記憶してある各情報を用いることができる。正解のフラッシュ情報も、患者の診療データに含まれるフラッシュ情報を用いることができる。画像処理装置3は、訓練データに含まれる血管情報、治療情報及び患者情報を第2学習モデルM2に入力し、訓練データに含まれる正解のフラッシュ情報を出力するように第2学習モデルM2の学習を行う。
【0035】
具体的には、画像処理装置3は、訓練用の血管情報、治療情報及び患者情報を第2学習モデルM2に入力し、図5Bに例示した各項目のフラッシュ情報を出力として第2学習モデルM2から取得する。画像処理装置3は、出力されたフラッシュ情報を、訓練データに含まれる正解のフラッシュ情報と比較し、両者が近似するように、ニューロン間の重み(結合係数)等のパラメータを最適化する。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、最急降下法、誤差逆伝播法等を用いることができる。これにより、患者の血管情報、治療情報及び患者情報が入力された場合にフラッシュ情報を出力する第2学習モデルM2が得られる。
【0036】
なお、図5Bに示した各項目において、「造影剤の種類」は分類結果で示される項目であるが、その他の項目は連続値で表現される項目である。このように第2学習モデルM2は、いわゆる分類問題と回帰問題とを同時に扱うが、例えば全ての項目を回帰問題と見なして連続値を出力し、分類結果として示すべき項目を連続値から二値に変換すればよい。あるいは、各項目に対応する出力層を別々に設け、中間層で抽出された特徴量を各出力層に入力して、各項目の推定を別々に行うようにしてもよい。あるいは、第2学習モデルM2自体を項目別に用意し、別々に推定を行ってもよい。
【0037】
画像処理装置3は、このような第2学習モデルM2を予め用意しておき、新たに治療を実施する患者に対するフラッシュ情報の生成に用いる。なお、新たに治療を実施する患者のフラッシュ情報を生成する場合、画像処理装置3は、当該患者のIVUS画像を血管内検査装置1で撮影し、得られたIVUS画像から第1学習モデルM1を用いて血管内腔の大きさを検出する。また画像処理装置3は、検出した血管内腔の大きさ(血管情報)に、患者の治療予定の内容(治療情報)及び患者情報を加えて第2学習モデルM2に入力することでフラッシュ情報を生成する。画像処理装置3は、生成したフラッシュ情報を表示装置4に出力して表示させる。
【0038】
第2学習モデルM2の学習は他の学習装置で行われてもよい。他の学習装置で学習が行われた場合、学習済みの第2学習モデルM2は、例えばネットワーク経由又は記録媒体30経由で学習装置から画像処理装置3にダウンロードされて補助記憶部34に記憶される。
【0039】
図6はフラッシュ情報の画面例を示す模式図である。図6に示す画面は、術者に提示するフラッシュ情報として、フラッシュ液(例えば造影剤)の投与量(フラッシュ量)の低減を重視したパターンと、フラッシュ液の流速(フラッシュ流速)の低減を重視したパターンとの2パターンのフラッシュ情報を表示している。また図6に示すフラッシュ情報は、フラッシュ流速、フラッシュ量(造影剤の総量)、成功確率を含んでおり、更に、このフラッシュ情報に関する注意事項及びアドバイスを含んでいる。注意事項及びアドバイスは、例えばフラッシュ情報が、フラッシュ量又はフラッシュ流速のいずれの低減を重視したものであるかに応じて、予め補助記憶部34に記憶されている。よって、制御部31は、生成したフラッシュ情報の内容に応じた注意事項及びアドバイスを補助記憶部34から読み出して表示画面に表示させることによって、フラッシュ情報と共に注意事項及びアドバイスを術者に提示することができる。
【0040】
なお、図6のパターンAに示すアドバイスのように、フラッシュ操作の際にガイディングカテーテル60の先端位置を血管に対して適切な位置に位置合わせすることにより、フラッシュ液が他の血管に流れ出る量を減らすことができ、その結果、フラッシュ量の低減が可能となる。また、図6のパターンBに示すアドバイスのように、フラッシュ液に使用する造影剤の希釈率を上昇させることにより、フラッシュ液の粘度が低下するので、血管に対する負荷の低減が可能となる。このようにフラッシュ量の低減又はフラッシュ流速の低減を更に実現できるアドバイスを術者に提示することができる。なお、フラッシュ情報に造影剤の種類及び希釈率を含めて表示してもよい。また画像処理装置3は、患者の情報から最適なフラッシュ情報を特定し、特定したフラッシュ情報のみを表示する構成でもよい。
【0041】
術者は、提示された各パターンのフラッシュ情報の各情報及び注意事項に基づいて、最適なフラッシュ情報を特定する。例えば術者は、患者の体調を考慮して、最適なパターンのフラッシュ情報を特定する。また術者は、フラッシュ情報と共に提示されるアドバイスと自身の手技技術とを考慮して最適なフラッシュ情報を特定する。そして術者は、特定したフラッシュ情報(フラッシュ条件)でのフラッシュ操作を行う。ここでは、術者は、例えばオートインジェクタに対して、特定したフラッシュ条件(フラッシュ流速及びフラッシュ量等)を設定し、オートインジェクタによるフラッシュ液の注入を実行する。そして、術者は、フラッシュ操作を実行した後、OCT画像の撮影を実行する。
【0042】
フラッシュ情報と共に術者に提示される注意事項及びアドバイスは、フラッシュ情報がフラッシュ量の低減を重視したものである場合、例えばプルバック速度を上昇させることによってフラッシュ量の総量の低減をアドバイスする情報であってもよい。なお、プルバック速度を上昇させた場合、プルバック操作に要する時間が短縮されるので、少ない量のフラッシュ液でのフラッシュ操作が可能となる。
【0043】
以下に、訓練データを学習して第2学習モデルM2を生成する処理について説明する。図7は第2学習モデルM2の生成処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の処理は、画像処理装置3の制御部31が、補助記憶部34に記憶してあるコンピュータプログラムPに従って行うが、他の学習装置で行われてもよい。
【0044】
画像処理装置3の制御部31は、1人の患者に関する血管情報、治療情報及び患者情報と、この患者に対して実施したフラッシュ操作に関するフラッシュ情報とを対応付けた訓練データを取得する(S11)。フラッシュ情報には、当該フラッシュ情報に含まれる各条件でのフラッシュ操作に対する成功確率が含まれる。訓練データ用の血管情報、治療情報及び患者情報と、訓練データ用のフラッシュ情報とは、診療DB34aに記憶されている各情報を用いることができる。なお、訓練データは、予め訓練データ用の血管情報、治療情報及び患者情報と、フラッシュ情報とを用意して訓練データDB(図示せず)に登録しておいてもよい。この場合、制御部31は、訓練データDBから訓練データを取得すればよい。
【0045】
制御部31は、取得した訓練データを用いて第2学習モデルM2の学習処理を行う(S12)。ここでは、制御部31は、訓練データに含まれる血管情報、治療情報及び患者情報を第2学習モデルM2に入力し、フラッシュ情報の各項目に関する出力値を取得する。制御部31は、出力された各項目に関する出力値を、正解の各項目の情報と比較し、両者が近似するようにニューロン間の重み等のパラメータを最適化する。
【0046】
制御部31は、未処理のデータがあるか否かを判断する(S13)。例えば訓練データが予め訓練データDBに登録してある場合、制御部31は、訓練データDBに記憶してある訓練データにおいて、未処理の訓練データがあるか否かを判断する。未処理のデータがあると判断した場合(S13:YES)、制御部31はステップS11の処理に戻り、学習処理が未処理の訓練データに基づいて、ステップS11~S12の処理を行う。未処理のデータがないと判断した場合(S13:NO)、制御部31は一連の処理を終了する。
【0047】
上述した処理により、患者の血管情報、治療情報及び患者情報を入力した場合にフラッシュ情報を出力するように学習された第2学習モデルM2が得られる。なお、上述したような訓練データを用いた学習処理を繰り返し行うことにより、第2学習モデルM2を更に最適化することができる。また、既に学習済みの第2学習モデルM2についても、上述した処理を行うことによって再学習させることができ、この場合、判別精度がより高い第2学習モデルM2が得られる。
【0048】
図8は、フラッシュ情報の提示処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の処理は、画像処理装置3の制御部31が、補助記憶部34に記憶してあるコンピュータプログラムPに従って行う。なお、本実施形態の画像診断システムでは、血管内治療を行う際に血管の断層画像を撮影する場合、まず血管内検査装置1をIVUSモードで使用してIVUS画像を撮影する。その後、必要に応じて血管内検査装置1をOCTモードで使用してOCT画像を撮影する。その際に、画像処理装置3は、先に撮影したIVUS画像に基づいて、OCT画像の撮影時に行うべきフラッシュ操作における条件(フラッシュ情報)を生成して術者に提示する。術者は、提示されたフラッシュ情報を考慮して、実行すべきフラッシュ操作の内容(フラッシュ情報)を選択できる。
【0049】
画像処理装置3の制御部31(取得部)は、患者の血管を血管内から撮影したIVUS画像を血管内検査装置1から取得する(S21)。そして、制御部31は、取得したIVUS画像に基づいてフラッシュ情報を生成する。なお、制御部31は、ステップS21の処理後、例えば入力装置5を介して術者からOCT画像の撮影指示を受け付けた場合に、IVUS画像に基づいてフラッシュ情報を生成する処理を実行してもよい。
【0050】
フラッシュ情報を生成する場合、制御部31はまず、IVUS画像を第1学習モデルM1に入力し、第1学習モデルM1からの出力画像に基づいて、IVUS画像中の血管内腔を検出する(S22)。そして制御部31(算出部)は、検出した血管内腔に基づいて血管内腔の直径を算出する(S23)。血管内腔の直径は例えば、血管内腔の中心を通る血管内径の最小値及び最大値であり、制御部31は、例えばIVUS画像中の血管内径上の画素数に基づいて直径を算出する。また制御部31(算出部)は、検出した血管内腔に基づいて、IVUSで撮影された血管内腔の長さを算出する(S24)。血管内腔の長さは、血管の走行方向(長軸方向)の長さであり、例えばIVUS画像の撮影時に行ったプルバック操作によるプルバック距離である。なお、プルバック距離は、1回のプルバック操作によって撮影されたIVUS画像の枚数と、プルバック速度とに基づいて算出できる。更に制御部31(算出部)は、検出した血管内腔に基づいて、血管内腔の体積を算出する(S25)。血管内腔の体積は、血管内腔の断面積及び長さから算出される体積である。血管内腔の断面積は、算出した血管内腔の直径に基づいて算出されてもよく、IVUS画像中の血管内腔内の画素数に基づいて算出されてもよい。制御部31は例えば、1枚のIVUS画像における血管内腔の断面積を算出し、隣り合うIVUS画像間の距離(IVUS画像の撮影位置間の距離)に基づいて、1枚のIVUS画像における血管内腔の体積を算出する。そして制御部31は、それぞれのIVUS画像における血管内腔の体積を加算することにより、IVUSで撮影された血管内腔の体積を算出する。このような処理により、制御部31は、IVUS画像で撮影された血管内腔の直径、長さ及び体積等、血管内腔に関する血管情報を算出する。なお、これらの各情報の算出処理は、従来使用されている血管内検査装置1又は画像処理装置3で行われている算出処理によって実行可能である。また制御部31は、例えば透視画像撮影装置2で撮影したアンギオ画像に基づいて、この時点でのガイディングカテーテル60の先端の位置及び画像診断用プローブ11の先端の位置を検出し、検出した位置を血管情報として用いる。
【0051】
制御部31(特定部)は、患者の治療情報及び患者情報を診療DB34aから読み出し、算出した血管情報と、読み出した患者の治療情報及び患者情報とを第2学習モデルM2に入力し、第2学習モデルM2からの出力情報に基づいてフラッシュ情報を生成する(S26)。制御部31は、生成したフラッシュ情報を表示装置4に出力し、例えば図6に示すような画面にてフラッシュ情報を表示する(S27)。フラッシュ情報は、例えば図6に示すように複数パターンが表示され、術者は、表示されたフラッシュ情報から、実行すべきフラッシュ情報を選択する。また術者は、選択したフラッシュ情報に基づいて、例えばオートインジェクタに対して、選択したフラッシュ液72が充填されたシリンジ70の装着、フラッシュ流速及びフラッシュ量の設定等を行い、フラッシュ操作を実行する。なお、制御部31は、例えば入力装置5を介して、いずれかのフラッシュ情報に対する術者の選択を受け付け(S28)、選択を受け付けた場合、選択されたフラッシュ情報を診療DB34aに記憶しておく(S29)。
【0052】
オートインジェクタは、術者によって設定されたフラッシュ条件に基づくフラッシュ操作を実行し、その後、術者は、血管内検査装置1を用いてOCT画像の撮影を行う。制御部31は、OCT画像を血管内検査装置1から取得し(S30)、取得したOCT画像を表示装置4に出力して表示する(S31)。術者は、表示されたOCT画像にて血管の状態を観察し、必要に応じて血管内治療を行う。なお、血管内治療では、術者は、ガイディングカテーテル60からイメージングカテーテル10を一旦取り出し、ガイディングカテーテル60にバルーンカテーテル等の治療用カテーテルを挿入して手技を行う。
【0053】
なお、制御部31は、血管内検査装置1で撮影されたOCT画像を表示装置4に表示した場合に、例えばOCT画像に対する評価に関する情報を入力装置5を介して術者から取得する(S32)。OCT画像に対する評価情報は、例えばOCT画像が画像診断に十分用いることができるクリアフレームであるか否かを示す情報であり、例えばクリアフレームである(可)又はクリアフレームでない(否)ことを示す情報であってもよい。またOCT画像に対する評価情報は、術者が画像診断に用いる際の満足度(例えば5段階評価又は100点満点の各値)であってもよい。また制御部31は、血管内検査装置1によるOCT画像の撮り直しが行われたか否かを判断し、撮り直しが行われた場合に、このときのフラッシュ情報に対して低評価(例えば5段階評価の1)を付与し、撮り直しが行われなかった場合に、このときのフラッシュ情報に対して高評価(例えば5段階評価の5)を付与してもよい。更に制御部31は、1回のプルバック操作で撮影された複数のOCT画像について、術者によって所定以上の評価が得られたOCT画像(クリアフレーム)、又は、病変部の画質又は輝度が所定の画質又は輝度以上であるOCT画像(クリアフレーム)を抽出し、クリアフレームの割合を算出し、算出した割合を評価情報に用いてもよい。なお、OCT画像がクリアフレームであるか否かの判定を、機械学習によって構築された学習モデル(ニューラルネットワーク)を用いて行ってもよい。例えばCNNで構成され、OCT画像が入力された場合に、OCT画像が画像診断に十分用いることができるクリアな画像であるか否かを示す情報を出力するように学習された学習モデルを用いてもよい。この場合、画像処理装置3は、OCT画像を学習済みの学習モデルに入力し、学習モデルからの出力情報に基づいて、OCT画像がクリアフレームであるか否かを判定することができる。このように各フラッシュ情報に付与される評価情報は、フラッシュ操作における成功確率を示していてもよく、このような評価情報から成功確率が算出されてもよい。制御部31は、フラッシュ情報に対する評価情報を取得した場合、フラッシュ情報に対応付けて、取得した評価情報(成功確率)を診療DB34aに記憶しておく。これにより、診療DB34aに記憶したフラッシュ情報及びフラッシュ情報に対する評価情報を、第2学習モデルM2の学習における訓練データに用いることができる。
【0054】
上述した処理により、本実施形態では、OCT画像を撮影する際に実施すべきフラッシュ操作における条件(フラッシュ情報)が、IVUS画像と、患者の治療情報及び患者情報とに基づいて生成される。よって、フラッシュ操作によって適切に血液を除去できないフラッシュ不良の発生が抑制され、適切なフラッシュ操作を実施できる可能性が向上する。適切なフラッシュ操作が実施できた場合、フラッシュ操作のやり直し及びOCT画像の撮り直し等の発生が抑制され、手技時間の延長が回避できる。また、フラッシュ液に造影剤を用いたフラッシュ操作を実施する場合には、フラッシュ操作のやり直しによる造影剤の投与量の増加、正確には造影剤に含まれるヨードの投与量の増加を回避でき、患者の腎機能への影響を最小限に留めることができ、腎機能に対する負担を軽減できる。
【0055】
本実施形態のように、デュアルタイプのイメージングカテーテル10を用いる血管内検査装置1では、血管内治療の実施後、例えば病変部にステントを留置した後に、ステントの留置位置を確認するためにOCT画像の撮影が行われる。このときにも、OCT画像の撮影を行う前にIVUS画像を撮影し、得られたIVUS画像からフラッシュ情報を生成し、生成されたフラッシュ情報を術者に提示することができる。このような場合にも、術者は、提示されたフラッシュ情報に基づいて、実行すべきフラッシュ操作の内容を特定することにより、最適なフラッシュ条件を選定できる。
【0056】
図9は学習モデルの変形例を示す説明図である。上述した第1学習モデルM1及び第2学習モデルM2は、図9に示すように1つの学習モデルで構成されていてもよい。図9に示す学習モデルM3は、例えば1回のプルバック操作によって撮影された複数のIVUS画像と、患者の治療情報及び患者情報とを入力とし、上述した第2学習モデルM2と同様のフラッシュ情報を出力する構成を有する。図9に示す学習モデルM3は例えばCNNを有し、CNNによって、入力されたIVUS画像から画像の特徴量を抽出する。ここで抽出される特徴量は、IVUS画像中の血管内腔に関する血管情報に相当する。よって、学習モデルM3は、CNNで抽出した特徴量と、入力された治療情報及び患者情報とに基づいてフラッシュ情報を生成することができる。このように1つの学習モデルM3で構成した場合であっても、IVUS画像と、患者の治療情報及び患者情報とからフラッシュ情報が生成され、生成されたフラッシュ情報を術者に提示することができる。
【0057】
本実施形態において、患者の血管情報、治療情報及び患者情報からフラッシュ操作における各情報を生成する処理は第2学習モデルM2を用いる構成の代わりに、ルールベースで行うように構成されていてもよい。この場合、例えば、血管情報、治療情報及び患者情報の各情報の組合せに対して、最適なフラッシュ情報を対応付けたテーブルを用意しておき、画像処理装置3は、テーブルの内容から、患者の血管情報、治療情報及び患者情報に応じたフラッシュ情報を特定する。この場合にも、患者に応じた最適なフラッシュ情報を術者に提示できる。
【0058】
本実施形態では、第1学習モデルM1及び第2学習モデルM2を用いてIVUS画像と、患者の治療情報及び患者情報とに基づいてフラッシュ情報を生成する処理を画像処理装置3がローカルで行う構成であるが、この構成に限定されない。例えば、第1学習モデルM1及び第2学習モデルM2を用いたフラッシュ情報の生成処理を行うサーバを設けてもよい。この場合、画像処理装置3は、IVUS画像、治療情報及び患者情報をサーバへ送信し、サーバで生成されたフラッシュ情報を取得するように構成されていてもよい。なお、ここでのサーバが診療DB34aを記憶するサーバである場合、画像処理装置3は、IVUS画像のみをサーバへ送信し、サーバで生成されたフラッシュ情報を取得することができる。このような構成とした場合であっても、本実施形態と同様の処理が可能であり、同様の効果が得られる。
【0059】
本実施形態において、第2学習モデルM2は、例えばフラッシュ液(造影剤)の投与量の低減を重視する場合、又はフラッシュ液の流速の低減を重視する場合等のように治療のシチュエーション毎に用意されていてもよい。また第2学習モデルM2は、フラッシュ操作の処理対象の部位(例えば血管の種類)毎、又は、血管に対するガイディングカテーテル60の先端の位置毎に用意されていてもよい。例えば、右冠動脈用のモデル、左前下行枝用のモデル、回旋枝用のモデル、ガイディングカテーテル60の先端が冠動脈に十分係合している場合用のモデル、係合状態が浅い場合用のモデルが用意されていてもよい。この場合、画像処理装置3は、それぞれのモデルを用いて生成したフラッシュ情報を術者に提示してもよい。また、画像処理装置3は、処理対象の血管の種類又は術者による設定入力に応じて使用するモデルを選択し、選択したモデルを用いてフラッシュ情報を生成して術者に提示することができる。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 血管内検査装置
2 透視画像撮影装置
3 画像処理装置
4 表示装置
5 入力装置
10 イメージングカテーテル
11 画像診断用プローブ
60 ガイディングカテーテル
61 シース
62 分岐ハブ
70 シリンジ
34a 診療DB
M1 第1学習モデル
M2 第2学習モデル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9