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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149747
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】水貯留排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 1/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
E03F1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052032
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】藤本 雅一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 明久
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063AA01
(57)【要約】
【課題】維持管理を容易且つ効率的に行うことができる水貯留排水装置を提供する。
【解決手段】水貯留排水装置30は、対向配置される一対の固定枠31と、前記一対の固定枠31に取り付けられ、下方に水が通る通水口32を備える第1仕切板33と、前記第1仕切板33の上流側に間隔を空けて配置される第2仕切板60と、を備え、前記第2仕切板60は高さ方向の設置位置が異なる複数のオリフィス36(36a、36b)を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置される一対の固定枠と、
前記一対の固定枠に取り付けられ、下方に水が通る通水口を備える第1仕切板と、
前記第1仕切板の上流側に間隔を空けて配置される第2仕切板と、
を備え、
前記第2仕切板は高さ方向の設置位置が異なる複数のオリフィスを備える
ことを特徴とする水貯留排水装置。
【請求項2】
前記第2仕切板の上端は、前記第1仕切板の上端よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の水貯留排水装置。
【請求項3】
前記第1仕切板と前記第2仕切板の間に設置され、下部にオリフィスが設けられた第3仕切板をさらに備え、
前記第3仕切板の上端は、前記第1仕切板の上端よりも低く、
前記第2仕切板の上端は、前記第3仕切板の上端よりも低い、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水貯留排水装置。
【請求項4】
前記第3仕切板は、前記一対の固定枠に備えられたガイド枠に沿って昇降することを特徴とする請求項3に記載の水貯留排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水貯留排水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気象状況の変化等によって、局地的な集中豪雨が頻繁に発生している。このような局地的な集中豪雨による浸水によって都市や地域の機能が麻痺してしまうのを防止する必要が生じている。そのために、道路下などに雨水貯留管を設置し、一時的に雨水を貯留させることで下水道管などが溢れてしまうことを防止させることなどが行われている。雨水貯留管では接続枡等の空間で下流側へ水を流量規制しながら放出するためにオリフィスが設けられており、オリフィスには混入した枯葉やゴミ等による付着物の閉栓を防ぐことを目的に、ゴミ避けの金網が設置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-57633号公報
【特許文献2】特開2017-179824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オリフィスに設置されるゴミ避けの網は、枯葉やビニール袋等で過剰なゴミが付着すると網全体が閉塞する虞がある。網は壁の下(管底付近)にある。立坑の壁の高さは立坑の大きさにもよるが1mから2mほどある。水は濁っているので網に付着したゴミがよく見えない場合がある。満水時には、ゴミの撤去が困難である。
網の付着物を立坑上部から長尺の棒等を用いて除去する方法があるが、高所からの作業になるため危険である。水中に潜って網の付着物を除去する方法があるが、付着物の除去後に急に水の流出が強まる恐れがあるため危険である。
【0005】
局地的大雨後、貯留管の維持管理を行う際、オリフィスの小さな開口部では水の流出量が少なく、夾雑物を放流することが困難である。水を一気に放流させる方法として、仕切板を1つ1つ除去する方法があるが、非常に手間である。
オリフィスが1箇所の場合、豪雨中にそのオリフィスがゴミ等の付着物により閉塞すると、その上流が満水状態になり、計画する地表面の水を貯留する機能が損なわれる恐れがある。
【0006】
図8には、従来の水貯留排水装置の一例が示されている。従来の水貯留排水装置130は、一対の固定枠131に仕切板133が取り付けられ、仕切板133の下部にオリフィス136が1箇所設けられ、オリフィス136に網134が取り付けられている。このような従来の構成では、上述のように、網134に過剰なゴミが付着して網134全体が閉塞するとその上流が満水状態になり、ゴミの撤去が困難となる。また、ゴミの除去後に急に水の流出が強まる場合があり、予期せぬ事象が生じる可能性がある。図8のように、水貯留排水装置130においてオリフィス136が1箇所の場合、豪雨中にオリフィス136がゴミ等の付着物により閉塞する虞がある。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、維持管理を容易且つ効率的に行うことができる水貯留排水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用する。
(1)本発明の一態様に係る水貯留排水装置は、
対向配置される一対の固定枠と、
前記一対の固定枠に取り付けられ、下方に水が通る通水口を備える第1仕切板と、
前記第1仕切板の上流側に間隔を空けて配置される第2仕切板と、
を備え、
前記第2仕切板は高さ方向の設置位置が異なる複数のオリフィスを備える。
(2)上記(1)に記載の態様において、
前記第2仕切板の上端は、前記第1仕切板の上端よりも低くてもよい。
(3)上記(1)又は(2)に記載の態様において、
前記第1仕切板と前記第2仕切板の間に設置され、下部にオリフィスが設けられた第3仕切板をさらに備え、
前記第3仕切板の上端は、前記第1仕切板の上端よりも低く、
前記第2仕切板の上端は、前記第3仕切板の上端よりも低くてもよい。
(4)上記(3)に記載の態様において、
前記第3仕切板は、前記一対の固定枠に備えられたガイド枠に沿って昇降してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、維持管理を容易且つ効率的に行うことができる水貯留排水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る水貯留排水装置を備える排水設備の一例を示す平面図である。
図2図1の断面図である。
図3】同実施形態に係る水貯留排水装置の一例を上流側からみた概略斜視図である。
図4】同実施形態に係る水貯留排水装置の一例を下流側からみた概略斜視図である。
図5】複数のオリフィスが第2仕切板に備えられた一例を示す概略図である。
図6】同実施形態において、第3仕切板の昇降を説明するための概略斜視図であり、第2仕切板が昇降する前の状態を示す。
図7】同実施形態において、第3仕切板の昇降を説明するための概略斜視図であり、第2仕切板が昇降した後の状態を示す。
図8】従来の水貯留排水装置の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係る水貯留排水装置について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、本実施形態において共通する構成要素には同一符号を付してそれらの重複説明を省略する場合がある。
【0012】
図1から図7を参照して本実施形態に係る水貯留排水装置について説明する。
図1は本実施形態に係る水貯留排水装置を備える排水設備1の一例を示す平面図である。図2図1の断面図である。例えば、幹線道路2などの地中3には、幹線道路2に沿って雨水17や汚水20などの下水が合流するようにした合流式の下水道管4が埋設されている。幹線道路2に接続される街路5などの地中3には、街路5に沿って雨水17用の排水管6や汚水20用の排水管6などが埋設されている。この排水管6は下水道管4へ合流される。下水道管4と排水管6との合流部や、排水管6どうしの合流部などには、人孔7,8(マンホール)などが設置される。
【0013】
下水道管4や排水管6には、複数種類の規格寸法が存在しており、設置の際に地域の平均的な降雨状況などを考慮して最適な規格寸法のものが選定されている。下水道管4には、複数系統の排水管6が接続されるため、下水道管4は、排水管6よりも大径のものが使用される。
【0014】
排水設備1では、排水管6と、排水管6よりも径の大きい雨水貯留管12とが使用される。地中3に埋設された縦坑13に対して排水管6と雨水貯留管12とが接続される。
【0015】
排水管6は、地域の降雨状況などに応じた寸法のものが使用されている。雨水貯留管12は、局地的な集中豪雨による雨水17を貯留できて、且つ、各自治体で定める雨水流出抑制量を貯留できる貯水容量を想定した径寸法や長さを有するものとされる。この場合、雨水貯留管12は下水道管4よりも十分に大径の長尺物とされている。そして、この雨水貯留管12は、排水管6の下水道管4との合流部よりも上流側の部分に、排水管6に替えて適宜設けられる。
【0016】
縦坑13の内部に本実施形態に係る水貯留排水装置30が設けられる。縦坑13の内部において、水貯留排水装置30から、雨水貯留管12側の空間14(貯留側空間)と排水管6側の空間15(排水側空間)とに仕切られる。
なお、雨水17及び汚水20は図中において矢印の方向に流れる。例えば、図2においては、雨水17は空間14側から空間15側に流れる。すなわち、空間14側が上流、空間15側が下流である。また、図2において幹線道路2が上側、地中3が下側である。
【0017】
本実施形態に係る水貯留排水装置30について詳細を説明する。水貯留排水装置30は、対向配置される一対の固定枠31と、前記一対の固定枠31に取り付けられ、下方に水が通る通水口32を備える第1仕切板33と、前記第1仕切板33の上流側に間隔を空けて配置される第2仕切板60と、を備える。記第2仕切板60は高さ方向の設置位置が異なる複数のオリフィス36を備える。
【0018】
図3は、水貯留排水装置30の一例を上流側からみた概略斜視図である。図4は水貯留排水装置30の一例を下流側からみた概略斜視図である。
【0019】
一対の固定枠31は、縦坑13内部の底面部及び縦坑13内部の側面に一体的に形成される。図3及び図4に示すように、一対の固定枠31は、ぞれぞれの側面が向き合うように対向配置される。固定枠31は、例えば、コンクリートでできている。お互い向かい合う固定枠31のそれぞれの側面には、後述する第1仕切板33を嵌め込むための縦溝47が設けられる。この縦溝47は、固定枠31の上側から見て、例えば凹形状である。縦溝47は固定枠31の最下部まで設けられていない。縦溝47を固定枠31の最下部まで設けてもよい。一対の固定枠31の上端と縦坑13内部の上面との間には空間がある。すなわち、一対の固定枠31の高さは、縦坑13内部の高さよりも低い。一対の固定枠31の間隔は、縦坑13の径にもよるが、例えば、80cmから2mである。
【0020】
第1仕切板33は、図3及び図4に示すように、一対の固定枠31のそれぞれの側面の縦溝47に取り付けられる。第1仕切板33は、第1仕切板33の前面が鉛直方向となるように配置される。第1仕切板33の前面とは、上流側に向かう面である。
第1仕切板33は、下方に水(雨水17)が通る通水口32を備える。一対の固定枠31の縦溝47には、複数の第1仕切板33を上下方向に積み重ねるように嵌め込んでもよい。第1仕切板33を上下方向に積み重ねることにより、最大貯水量を調節することができる。第1仕切板33は一枚物でもよい。第1仕切板33の高さは、一対の固定枠31の高さと同等あるいはそれ以下である。第1仕切板33は、直方体状もしくは平板状で、例えば繊維強化樹脂でできている。第1仕切板33と一対の固定枠31とは一体化されてもよい。
【0021】
縦溝47は固定枠31の最下部まで設けられていないので、第1仕切板33を嵌め込んだ場合、第1仕切板33の下方に隙間(通水口32)が形成される。雨水17は、第1仕切板33の上流からこの通水口32を通って下流に流れる。
通水口32は矩形である。通水口32の鉛直方向の長さ(高さ)は、排水量の設定にもよるが5cmから30cm程度が好ましい。このような高さの通水口32を設けることで、後述する第3仕切板37を上昇させて雨水17を一気に下流へ放流することができる。通水口32の横方向の長さ(幅)は一対の固定枠31の間隔である。通水口32の高さは、あまりにも一気に大量の雨水17を放流すると下流の空間15の貯留可能な許容量を超えてしまう可能性があるので、より好ましい上限は20cmである。
縦溝47が固定枠31の最下部まで設けられて、固定枠31の最下部まで第1仕切板33を嵌め込む場合には、第1仕切板33の下部に貫通孔を形成して、通水口32としてもよい。この場合の貫通孔(通水口32)は、例えば、矩形、円形状、楕円形状である。この場合、貫通孔の高さ及び幅は、上述の固定枠31の最下部まで第1仕切板33を嵌め込まない場合の通水口32の大きさと同程度が好ましい。
【0022】
水貯留排水装置30は、第2仕切板60を備える。第2仕切板60は、第1仕切板33の上流側に間隔を空けて配置される。例えば、第2仕切板60は第1仕切板33から10cm~100cm程度の間隔を空けて上流側に配置されることが好ましい。第2仕切板60と第1仕切板33との間隔を40cmから100cmとすることで、第2仕切板60と第1仕切板33との間で清掃等の作業を行うスペースを確保できる。第2仕切板60は、例えば、平板状で、繊維強化樹脂からできている。第2仕切板60は縦坑13内部の底面部及び縦坑13内部の側面に接している。
第2仕切板60は、高さ方向の設置位置が異なる複数のオリフィス36(36a、36b)を備える。オリフィス36(36a、36b)の詳細は後述する。
第1仕切板33から貯留水を放流すると、第2仕切板60の上流側には第2仕切板60の高さの貯留水が溜まっている状態となる。よって、第2仕切板60の上端(高さ)は、作業員が屈んで容易に清掃作業等が行える高さが望ましい。第2仕切板60の高さは、第1仕切板33の上端(高さ)よりも低いことが好ましい。第2仕切板60の高さは、30cmから100cmが好ましい。これにより、第2仕切板60から下流側でのゴミ除去作業等を容易に行うことが可能となる。
第2仕切板60の横方向の長さ(幅)は、縦坑13内部の側面に取付可能な長さである。なお、第2仕切板60の高さ及び幅は、第2仕切板60を平面視した場合のそれぞれ高さ及び幅である。
【0023】
第2仕切板60は高さ方向の設定位置が異なる複数のオリフィス36(36a、36b)が設けられる。オリフィス36(36a、36b)は第2仕切板60を貫通している。オリフィス36(36a、36b)は、例えば円形状である。一つのオリフィス36(36a、36b)の開口面積は10cmから100cmである。オリフィス36(36a、36b)の開口面積は、後述する第3仕切板37のオリフィス36(36c)の開口面積と同等もしくはそれ以上となることが好ましい。オリフィス36(36a、36b)の形状は、円形状に限られるものではなく、例えば楕円形、矩形でもよい。図5においては、オリフィス36(36a、36b)は、円形である。
【0024】
複数のオリフィス36(36a、36b)は、図5に示すように、第2仕切板60を平面視した場合の高さ方向の設定位置が異なる。オリフィス36(36a、36b)の高さ方向の設定位置とは、第2仕切板60の下端(第2仕切板60を平面視した場合の下端)からオリフィス36(36a、36b)の重心の位置(高さ)である。図5においては、オリフィス36aの高さはHaで表され、オリフィス36bの高さはHbで表されている。オリフィス36aの高さHaとオリフィス36bの高さHbとは異なっている。
図5に示すように、高さ方向において、オリフィス36aとオリフィス36bとは一部重なってもよい。オリフィス36aとオリフィス36bとは、高さ方向において、重なってなくてもよい。
高さ方向における複数のオリフィス36(36a、36b)の高さが異なることで、貯留水が複数のオリフィス36(36a、36b)に分散して放流される。この場合、後述する網34(34a、34b)へのゴミ等の夾雑物の付着が分散されるので、目詰まりを抑制することができる。
【0025】
複数のオリフィス36(36a、36b)は、第2仕切板60を平面視した場合の横方向において、間隔Xa-bが空いている。間隔Xa―bは、横方向におけるオリフィス36aとオリフィス36bの距離である。図5に示すように、横方向において、オリフィス36aとオリフィス36bとは一部重なってなくてよい。間隔Xa-bは、ゴミ等の夾雑物で複数のオリフィスが同時に塞がれないよう、10cmから150cmが好ましく、より好ましくは下限が30cmである。オリフィス36aとオリフィス36bとは、横方向において、重なっていてもよい。
【0026】
本実施形態においては2つのオリフィス36(36a、36b)を採用しているが、オリフィス36の数は2に限られるものではない。オリフィス36の数は、縦坑13の貯留可能な許容量、オリフィス36の開口面積、第2仕切板60の大きさ等を考慮して決定する。
【0027】
オリフィス36には、図3に示すように、第2仕切板60の上流側にオリフィス36(36a、36b)を覆うように網34(34a、34b)が取り付けられる。網34(34a、34b)は、オリフィス36(36a、36b)の開口部の大きさよりも大きい。網34(34a、34b)は雨水17に混入するゴミ等の夾雑物による詰まりを防止する。網34(34a、34b)は、例えば平板形状、籠状である。網34(34a、34b)のメッシュの大きさは、オリフィス36(36a、36b)の開口部よりも十分小さい。網34は例えば金属でできている。
【0028】
本実施形態に係る水貯留排水装置30は、第1仕切板33の上流に間隔を空けて高さ方向の設定位置が異なる複数のオリフィス36(36a、36b)を備える第2仕切板60を有する。第1仕切板33から貯留水を放流すると、第2仕切板60より上流側に貯留水が溜まっている状態となる。ゴミ除去作業等は、第1仕切板33と第2仕切板60との間に作業者が入って行う。本実施形態に係る水貯留排水装置30によれば、第2仕切板60から下流側でのゴミ除去作業等を容易に行うことが可能となる。また、一方のオリフィス36(例えばオリフィス36a)がゴミ等で閉塞した場合、高さの異なる他のオリフィス36(例えばオリフィス36b)が機能することで下流に放流することが可能となる。
このように、本実施形態に係る水貯留排水装置30によれば、維持管理を容易且つ効率的に行うことができる。
【0029】
また、第1仕切板33と第2仕切板60の間に設置され、下部にオリフィス36(36c)が設けられた第3仕切板37をさらに備えてもよい。第3仕切板37は、第1仕切板33の上流且つ第2仕切板60の下流に配置される。第3仕切板37は、例えば、平板状で、繊維強化樹脂からできている。第3仕切板37の下端は縦坑13内部の底面部に接している。第3仕切板37は、上流から流れてくる雨水17に対して通水口32を塞ぐ位置に設置される。すなわち、第3仕切板37の上端(高さ)は、通水口32の上端よりも高い位置である。第3仕切板37は、高さ方向に対し第1仕切板33と一部重なるように設置される。
【0030】
第3仕切板37の上端(高さ)は、第1仕切板33の上端(高さ)よりも低いことが好ましい。第3仕切板37の横方向の長さ(幅)は、後述する一対のガイド枠35に取付可能な長さである。なお、第3仕切板37の高さ及び幅は、第3仕切板37を平面視した場合のそれぞれ高さ及び幅である。
第3仕切板37に設けられるオリフィス36cは、第1仕切板33下方の通水口32に対向する。オリフィス36cは第3仕切板37を貫通している。また、第3仕切板37に設けられるオリフィス36cは、第1仕切板33下方の通水口32に相当する高さに備えられる。オリフィス36cの形状は、円形状に限られるものではなく、例えば楕円形、矩形でもよい。
また、第3仕切板37に設けられるオリフィス36cの高さは、第2仕切板60に設けられる複数のオリフィス36a、36bの高さと同等である。
【0031】
第2仕切板60の上端(高さ)は、第3仕切板37の上端(高さ)よりも低いことが好ましい。第2仕切板60の高さは、第3仕切板37の高さの-1cmから-30cmである。
【0032】
オリフィス36(36a、36b)にインバート(図示無し)を設けてもよい。インバートをオリフィス36(36a、36b)に設けることで、上流から流入する雨水17が円滑に流れるようにすることができる。
【0033】
第3仕切板37は、第1仕切板33の上流側に第1仕切板33と間隔を空けて配置されてもよい。第1仕切板33と第3仕切板37との間隔は、例えば、10cmから100cmである。第1仕切板33と第3仕切板37とが接する(第1仕切板33と第3仕切板37との間隔が0)場合には、第3仕切板37が昇降する際に、第1仕切板33及び第3仕切板37の接する面に疵が発生してしまうので、第1仕切板33と第3仕切板37との間隔は20cm以上が好ましい。第1仕切板33と第3仕切板37との間隔を広げすぎると、水貯留排水装置30の設置面積を拡大してしまうので、第1仕切板33と第3仕切板37との間隔は60cm以下が好ましい。
このように、第3仕切板37が第1仕切板33の上流側に第1仕切板33と間隔を空けて配置されるので、第3仕切板37が昇降する際に、第1仕切板33及び第3仕切板37の接する面に疵が発生することを防ぐことができる。
【0034】
第3仕切板37は、図6及び図7に示すように、一対の固定枠31に備えられた一対のガイド枠35に設けられ、ガイド枠35に沿って昇降する。図6は第3仕切板37の昇降を説明するための概略斜視図であり、第3仕切板37が昇降する前の状態(第3仕切板37が接地している状態)を示し、図7は第3仕切板37が昇降した後の状態を示す。ガイド枠35は、一対の固定枠31の上流側に設けられる。
【0035】
第3仕切板37は、仕切板昇降機40と接続され、仕切板昇降機40を操作することで第3仕切板37を昇降させることができる。仕切板昇降機40は、例えば上部に昇降ハンドル41と、昇降ハンドル41を支持する支持棒42と、を備える。昇降ハンドル41は、縦坑13が満水時においても水につかることなく作業ができるような高さに設定される。より容易に仕切板昇降機40を操作するために、昇降ハンドル41が地上に突出していることが好ましい。支持棒42は縦坑13の底面部に、回転可能に固定される。支持棒42の表面は、例えばねじ加工されたねじ部42Aを有する。第3仕切板37には、支持棒42のねじ部42Aと螺合可能に加工されたねじ部37Aを有する。
【0036】
支持棒42のねじ部42Aと第3仕切板37のねじ部37Aとが螺合した状態において、仕切板昇降機40の昇降ハンドル41を操作(回転)させることで、第3仕切板37を昇降させることができる。貯留管の維持管理を行う際、第3仕切板37を上昇させることができるので、雨水17やゴミ等の夾雑物を一気に下流へ放流することができる。また、放流後、水位の減少した安全な縦坑13内で後述する網の清掃等の作業を行うことができる。
本実施形態に係る仕切板昇降機40は、例えば図6及び図7に示すように、第3仕切板37の幅方向の両端側に接続するように2つ設置されているが、仕切板昇降機40が第3仕切板37に設置される数は2に限らない。
【0037】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲が上記実施形態のみに限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、「ほぼ」、「同等」、「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる程度や精度のものを含むという意味で用いられる。
【符号の説明】
【0038】
30 水貯留排水装置
31 固定枠
32 通水口
33 第1仕切板
34、34a、34b 網
35 ガイド枠
36、36a、36b、36c オリフィス
37 第3仕切板
40 仕切板昇降機
60 第2仕切板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8