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  • 特開-研磨パッドの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149762
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】研磨パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/20 20120101AFI20220929BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20220929BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B24B37/20
B24B37/013
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052059
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】糸山 光紀
(72)【発明者】
【氏名】関谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】小池 堅一
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC02
3C158BA01
3C158BA07
3C158CB01
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158EB14
3C158EB15
3C158EB22
3C158EB28
3C158EB29
5F057AA04
5F057AA21
5F057AA24
5F057BA11
5F057BB03
5F057BB11
5F057BB22
5F057CA11
5F057DA02
5F057EB06
5F057EB07
5F057EB08
5F057EB09
5F057EB12
5F057EB30
5F057FA25
5F057GB02
5F057GB20
(57)【要約】
【課題】終点検出用窓が研磨層から脱落すること及び有機残渣が被研磨物に付着することを抑制する。
【解決手段】型枠100の有底孔100Aの内面に離型剤101を塗布した後、プレポリマーと硬化剤の混合物102を有底孔100Aに流し込んで硬化させる。これにより、後に終点検出用窓3Bとなる円柱状素材103を製作する(図4(a)、(b))。
次に円柱状素材103を有機溶剤104に浸漬させることで、円柱状素材103に付着した離型剤101を除去する(図4(c))。
次に、円柱状素材103を型枠107内に設置してポリイソシアネートと硬化剤と中空微粒子の混合物108を型枠107に流し込んで硬化させて、ウレタンブロック109を製作する(図4(d))。
次に、上記ウレタンブロック109を水平方向に切断してシート状部材111を製作することで、終点検出用窓3Bを有する研磨層3Cを製作する(図4(e))。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物を研磨する研磨面を有する研磨層と、該研磨層に設けられて、検査光及び被研磨物からの反射光を透過させる終点検出用窓とを備える研磨パッドの製造方法であって、
上記終点検出用窓となる窓用素材を成形するための第1の型枠の凹部に離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、
上記窓用素材を成形するための混合物を上記第1の型枠の凹部に流し入れて硬化させ、さらに上記第1の型枠の凹部から上記窓用素材を取り出す窓用素材成形工程と、
上記第1の型枠から取り出した窓用素材を有機溶剤を用いて洗浄する洗浄工程と、
上記研磨層を成形するための第2の型枠内に上記窓用素材を配置した状態で、当該第2の型枠内に研磨層を成形するための混合物を流し入れて硬化させ、さらに上記第2の型枠から上記窓用素材が埋設された成形体を取り出す成形体成形工程と、
上記窓用素材が埋設された箇所を含むように上記成形体を所要の厚さに切り出して、上記終点検出用窓を有する研磨層を作成する切断工程とを有することを特徴とする研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
上記洗浄工程の有機溶剤として、エタノール、アセトン、クロロホルム、メタノール、イソプロピルアルコール、および酢酸エチルのいずれかを用いることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッドの製造方法。
【請求項3】
上記洗浄工程においては、上記第1の型枠の凹部から取り出した窓用素材を上記有機溶剤に浸漬させた状態で超音波洗浄を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の研磨パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨パッドの製造方法に関し、より詳しくは、研磨加工の終点を検出するための終点検出用窓を備えた研磨パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、研磨加工の終点を検出する終点検出用窓を備えた研磨パッドの製造方法は公知である(例えば特許文献1)。
この特許文献1の製造方法においては、次のようにして研磨パッドの研磨層を製造するようになっている。つまり、後に終点検出用窓となる窓部材を予め型内の所定位置に固定しておき、その状態で型内に研磨層となる樹脂を流し込んで成形体を製作する。その後、成形体を所要厚さにスライスすることにより、終点検出用窓と一体となった研磨層を製造するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-001647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の研磨パッドにおいては、研磨層の製造工程において次のような不具合があった。すなわち、特許文献1の製造方法においては、先ず、窓部材用組成物を型内で成形させて上記窓部材を製作するが、成形後の窓部材を取り出しやすくするために、事前に型内における窓部材成形用の凹部内に離型剤を塗布するようにしている。
そのため、成形後の窓部材を上記凹部から取り出すと、該凹部に塗布された離型剤が成形後の窓部材の外面に付着した状態となっている。そのため、その後に上述した製造工程で研磨層を製作すると、窓部材からなる終点検出用窓の外周面とそれに接した研磨層との間に離型剤が残留した状態となるので、完成後の研磨パッドによる研磨加工中に終点検出用窓が研磨層から脱落する恐れがあった。しかも、残留した離型剤が被研磨物の研磨加工中に終点検出用窓に付着すると、被研磨物に有機残渣として離型剤が付着して、被研磨物の欠陥が発生する恐れがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、本発明は、被研磨物を研磨する研磨面を有する研磨層と、該研磨層に設けられて、検査光及び被研磨物からの反射光を透過させる終点検出用窓とを備える研磨パッドの製造方法であって、
上記終点検出用窓となる窓用素材を成形するための第1の型枠の凹部に離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、
上記窓用素材を成形するための混合物を上記第1の型枠の凹部に流し入れて硬化させ、さらに上記第1の型枠の凹部から上記窓用素材を取り出す窓用素材成形工程と、
上記第1の型枠から取り出した窓用素材を有機溶剤を用いて洗浄する洗浄工程と、
上記研磨層を成形するための第2の型枠内に上記窓用素材を配置した状態で、当該第2の型枠内に研磨層を成形するための混合物を流し入れて硬化させ、さらに上記第2の型枠から上記窓用素材が埋設された成形体を取り出す成形体成形工程と、
上記窓用素材が埋設された箇所を含むように上記成形体を所要の厚さに切り出して、上記終点検出用窓を有する研磨層を作成する切断工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、洗浄工程において有機溶剤により窓用素材を洗浄するため、第1の型枠の凹部から取り出した際に窓用素材の外面に離型剤が付着していたとしても、その離型剤を洗浄工程で除去することができる。
そして、その後の成形体成形工程においては、窓用素材とその周囲の成形体とが隙間なく強固に密着した状態で硬化する。つまり、研磨層が完成した際に、終点検出用窓の外面とそれを囲繞する研磨層の箇所との間に離型剤が介在されることなく両者が強固に密着した状態となる。したがって、完成後の研磨パッドによる被研磨物の研磨加工中において終点検出用窓が研磨層から脱落するのを効果的に抑制することができる。また、研磨加工中に終点検出用窓や被研磨物が、離型剤の残渣によって悪影響を受けることを防止して、被研磨物の欠陥が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例を示す研磨装置の構成図。
図2図1のII―II線に沿う要部の縦断面図。
図3図2の研磨パッドの研磨層の断面図。
図4図1ないし図3に示した研磨パッドの製造工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図3において、1は研磨装置であり、この研磨装置1は、薄板状の被研磨物2(例えば半導体ウエハ)を研磨パッド3によって研磨するようになっている。この研磨装置1は、被研磨物2に対して研磨加工を行う際に、被研磨物2の被研磨面2Aに向けて検査光L1を照射して反射光L2を得ることで、研磨加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出できるようになっている。
研磨装置1は、下方側に位置して上面に研磨パッド3が固定される研磨定盤4と、上方側に位置して下面に被研磨物2を保持する保持定盤5と、被研磨物2と研磨パッド3との間にスラリーS(研磨液)を供給するスラリー供給機構6と、検査光L1を用いて被研磨物2の研磨加工の進捗状況と加工の終点を検出する検出機構7を備えている。
研磨装置1による研磨加工の対象となる被研磨物2は、光学材料、シリコンウェハ、液晶用ガラス基板、半導体基板の他、ガラス、金属、セラミック等の板状物である。また、スラリー供給機構6が供給するスラリーSとしては、対象となる被研磨物2および求められる加工精度に応じて従来公知の好適な物を使用することができる。
上記研磨定盤4および保持定盤5はそれぞれ略円盤状となっており、それぞれ図示しない駆動機構によって矢印方向に回転するようになっており、また、上記保持定盤5は昇降可能に設けられている。
被研磨物2に研磨加工を行う際には、保持定盤5によって被研磨物2の被研磨面2A(下面)を研磨パッド3の研磨面3Aに設定圧力で押し当てた状態で、それらが相対的に回転されるとともに、スラリー供給機構6からスラリーSが被研磨物2の被研磨面2Aと研磨パッド3の研磨面3Aとの間に供給されるようになっている。
研磨パッド3の研磨面3Aには、研磨パッド3の中心(回転中心)を囲繞して同心円状に複数の環状溝3Aaが半径方向において等ピッチで形成されている(図3参照)。これら複数の環状溝3AaがスラリーSを保持するスラリー保持溝となっており、スラリー供給機構6から吐出されたスラリーSはこれら複数の環状溝3Aa内に流入して研磨面3Aの全域に供給されるようになっている。
【0009】
ところで、被研磨物2の研磨加工を行う際には、該被研磨物2の研磨加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出する必要がある。そこで、この研磨装置1は、下方側から上方に向けて検査光L1を照射して、被研磨物2の被研磨面2Aからの反射光L2を基にして研磨加工の進捗状況と加工終点を検出する検出機構7を備えている。研磨パッド3の所定位置には、上記検査光L1を透過させ、かつ被研磨物2の被研磨面2Aからの反射光L2を透過させる透明な終点検出用窓3Bが設けられている。
研磨パッド3は、上方側に位置する円板状の研磨層3Cと、研磨層3Cの下面3Cbに接着剤や両面テープで接着された円板状の支持層3D(クッション層)とで構成されている(図2参照)。研磨層3Cの所定位置に円板状の透明な終点検出用窓3Bが設けられており、その下方側となる支持層3Dの位置には、検査光L1及び被研磨物2からの反射光L2を通過させるための貫通孔3Daが穿設されている。研磨層3Cおよびそれに設けられた終点検出用窓3Bはともにポリウレタン等の弾性樹脂からなる。なお、終点検出用窓3Bは、検査光L1及び反射光L2の透過の妨げとなるような発泡を避けた構造とする必要がある。従って、より具体的には内部に空隙が形成されないポリウレタン等の弾性樹脂が好ましい。
研磨層3Cの所定位置には、上下方向の貫通孔3Caが形成された状態となっており、この貫通孔3Ca内に円板状の終点検出用窓3Bが隙間なく嵌合された状態となっている。つまり、終点検出用窓3Bの外周面3Baの全域は貫通孔3Caに隙間なく密着した状態となっている。終点検出用窓3Bの上面3Bbと研磨層3Cの研磨面3Aは同一平面となっており、また、終点検出用窓3Bの下面3Bcと研磨層3Cの下面3Cbは同一平面となっている。
この研磨層3Cの下面3Cbに支持層3Dの上面が接着剤や両面テープによって接着されている。そして、上下で一体となった研磨層3Cと支持層3Dからなる研磨パッド3は、その下面(支持層3Dの下面)を接着剤や両面テープによって研磨定盤4の上面4Aに固定されている(図2参照)。
研磨定盤4には、上記研磨パッド3の終点検出用窓3B及び支持層3Dの貫通孔3Daの下方位置に、検査光L1を上方へ照射する発光部7A及び被研磨物2からの反射光を受光する受光部7Bが設けられている。検出機構7は、これら発光部7A及び受光部7Bと、それらの作動を制御し、かつ、研磨加工中における加工の進捗状況と加工終了となる終点を検出する制御部7Cを備えている。
被研磨物2に対する研磨加工中においては、検出機構7の発光部7Aから検査光L1が上方に向けて照射されるので、該検査光L1は透明な終点検出用窓3Bを透過して被研磨物2の被研磨面2Aに照射される。すると、検査光L1は被研磨物2の被研磨面2Aによって下方に向けて反射され、その反射光L2は透明な終点検出用窓3Bを透過して受光部7Bによって検出される。受光部7Bで検出した反射光L2は制御部7Cへ伝達されるようになっている。
そして、被研磨物2の研磨加工が進行して、被研磨物2の被研磨面2Aが徐々に研磨されることに伴って、受光部7Bによって検出される反射光L2の強度等が変化する。制御部7Cは、受光部7Bによって検出された反射光L2の強度等が、予め登録された強度等になると、被研磨面2Aが加工終点になったものと判定して、研磨加工を停止させる。すると、上記駆動機構が停止されるので研磨定盤4及び保持定盤5の回転が停止するとともに、スラリー供給機構6からのスラリーSの供給も停止されるようになっている。
このように、検出機構7の検査光L1を用いて被研磨物2の研磨加工が行われる際に研磨加工の終点を検出できるようになっている。なお、このような検査光L1を用いた検出機構7の構成は既に公知である。
【0010】
次に、上記研磨パッド3の製造方法の一態様について図4により説明する。本実施例は、研磨パッド3を製造するに際して、先ず、上記終点検出用窓3Bとなる円柱状素材103を製作し、該円柱状素材103を有機溶剤104で洗浄することが特徴となっており、それによって、完成後の研磨加工中に研磨パッド3から終点検出用窓3Bが脱落すること、有機残渣が被研磨物に付着することによる欠陥が発生することを抑制できるようになっている。
すなわち、本実施例では、先ず、最初の工程として円筒状の有底穴100Aを有する型枠100を用意し、該型枠100の有底孔100Aの内面全域に離型剤101(例えばミラックスRS-102(ミヨシ油脂株式会社))を塗布する(図4(a)参照:離型剤塗布工程)。なお、本実施例では、終点検出用窓3Bが円形であるが、これ以外に例えば長方形、正方形、多角形、楕円形等の様々な形状とすることができる。所望の形状に合わせて有底穴100を形成した型枠100を用いて、角柱状や楕円柱状の窓用素材を作製することにより、終点検出用窓3Bを長方形、正方形、多角形、楕円形等の形状とすることができる。
次に、本実施例の円柱状素材103はポリウレタン等の弾性樹脂からなるので、その材料を準備する。材料として、ポリイソシアネートを用意し、それに硬化剤を混合させて混合液102を作製する。そして、この混合液102を必要に応じ脱泡処理した後、上記型枠100の有底孔100Aに流し込んで硬化させる。
これにより、有底孔100Aの形状に倣った円柱状素材103が製作されるので、該円柱状素材103を型枠100の有底孔100Aから取り出す(図4(b):窓用素材成形工程)。その際、前述したように、予め有底孔100Aの内面全域には離型剤101が塗布されているので、有底孔100Aから円柱状素材103を円滑に取り出すことができる。しかしながら、取り外した円柱状素材103の外周面103A及び底面には、上記離型剤101が付着した状態となっている。
そこで、本実施例においては、この後、円柱状素材103に付着した離型剤101を除去する洗浄工程を設けている。つまり、予め有機溶剤104を貯溜した洗浄槽105を準備し、該洗浄槽105の有機溶剤104に上記円柱状素材103を所要時間(5分)浸漬させて洗浄する(図4(c):洗浄工程)。有機溶剤104に浸漬する時間が短いと離型剤101が円柱状素材103に残存することがあるため、円柱状素材103を有機溶剤104に浸漬させる時間が5分以上であることが好ましい。有機溶剤104としては、例えば、エタノール、アセトン、クロロホルム、メタノール、イソプロピルアルコール、および酢酸エチルのいずれかを用いる。特に、離型剤101との組み合わせからアセトンを用いることが好ましい。このように、有機溶剤104に浸漬させて円柱状素材103を洗浄することにより、円柱状素材103の表面に付着していた離型剤101は除去されるようになっている。なお、有機溶剤104に円柱状素材103を浸漬させた状態で、さらに超音波洗浄を行ってもよい。超音波洗浄を行うことで、円柱状素材103の表面に付着する離型剤101がより確実に除去されるようになる。
この後、洗浄槽105から円柱状素材103を取り出して、その表面を拭き取り乾燥させる。
この後の工程は、従来公知の研磨層及び研磨パッドの製造工程と同じである。すなわち、この後、長方形の箱型をした型枠107を用意するとともに、型枠107の所定位置に上記円柱状素材103を鉛直方向に立てた状態で設置する(図4(d))。本実施例では、円柱状素材103を1つ設置しているが、研磨パッド3に設ける終点検出用窓3Bの個数に応じて設置することができる。
次に、上記研磨層3Cの材料となるポリイソシアネートと硬化剤と発泡構造を形成させるための中空微粒子を混合して混合物108を作製し、該混合物108を上記型枠107内に流し入れて硬化させる(図4(d))。
この硬化過程において後に終点検出用窓3Bとなる円柱状素材103の外周面全域に液状の混合物108が隙間なく密着する。その際、上記洗浄工程において、円柱状素材103の外周面103Aから離型剤101が除去されているので、円柱状素材103の外周面103A全域に対して、その周囲の混合物108が隙間なく強固に密着することができる。
これによって、円柱状素材103が埋設された状態のウレタンブロック109(成形体)が成形される(図4(d):成形体成形工程)。このウレタンブロック109が上記研磨層3Cの部分となる。
この後、上記ウレタンブロック109を型枠107から取り外した後に、該ウレタンブロック109における円柱状素材103が埋設された箇所を含むように、所要の厚さとなるように水平面に沿って薄く切断してシート状部材111として切り出す(図4(e)参照:切断工程)。
この後、シート状部材111を必要に応じて研磨面3Aとなる面を厚み修正および微細な凹凸形成(目立て)の観点から、研削(バフィング)する。そしてシート状部材111(研磨層3C)の研磨面3Aと反対側となる研磨層3Cの下面3Cbに両面テープ等を貼り付ける。これにより、シート状部材111が上記研磨層3Cとなり、かつ、シート状部材111の上面が上記研磨面3Aとなる。また、円柱状素材103の箇所が上記終点検出用窓3Bとなり、その上面3Bbは研磨面3Aと同一平面となり、下面3Bcは研磨層3Cの下面3Cbと同一平面となる(図4(e):切断工程)。
この後、研磨層3C(シート状部材111)の研磨面3Aの同心円上となる位置に上記複数の環状溝3Aaを切削加工で形成する(図4(f):溝形成工程)。これにより、研磨パッド3の研磨層3Cが完成する。
このようにして研磨層3Cが完成したら、予め貫通孔3Daを穿設した支持層3D(クッション層)を研磨層3Cの下面3Cbに接着剤や両面テープで接着する。最後に、シート状部材107(研磨層3C)及び支持層3Dを積層したものを円板状に切断する。これにより、本実施例の研磨パッド3が完成する(図4(f))。
このようにして製造された研磨パッド3は、その下面(支持層3Dの下面)が両面テープや接着剤等によって上記研磨定盤4の上面4Aに固着されるようになっている。
【0011】
以上のように、本実施例の製造方法においては、後に終点検出用窓3Bとなる円柱状素材103を製作したら、その後の洗浄工程において、該円柱状素材103を有機溶剤104に浸漬させている。それにより、円柱状素材103の外周面103Aや底面等に付着していた離型剤101を除去することができる。
そのため、円柱状素材103を埋設させてウレタンブロック109(成形体)を製作した際に、円柱状素材103の外周面103(終点検出用窓3Bの外周面3Ba)とその周囲のウレタンブロック109の箇所(貫通孔3Caの内周面)の間に隙間が生じることなく、両者が強固に密着するようになっている。
そのため、完成後の研磨パッド3による研磨加工中において、終点検出用窓3Bが研磨層3Cから脱落するのを効果的に抑制することができる。また、研磨加工中において、終点検出用窓3Bや被研磨物2が離型剤の残渣によって悪影響を受けることを防止できるので、被研磨物2の欠陥が発生することを抑制することができる。
なお、上記実施例においては、上記円柱状素材103の洗浄工程において、円柱状素材103に対して有機溶剤を浸漬させた状態で超音波洗浄を行ってもよい。超音波洗浄を行うことで、円柱状素材103の表面に付着していた離型剤101がより確実に除去することができ、上記と同様に、研磨加工中における終点検出用窓3Bの脱落や離型剤の有機残渣が被研磨物に付着することによる欠陥の発生を抑制することができる。
なお、本実施例における研磨層3Cおよび終点検出用窓3Bは、ポリイソシアネートと硬化剤を用いたが、ポリイソシアネートは予めポリオール等によってプレポリマーとしたものを用いてもよい。硬化剤としては、水酸基やアミノ基といったイソシアネートと反応する官能基を複数有しているものであればよく、ポリイソシアネート等により鎖伸長したポリオールやポリアミンを用いても良い。さらに、本実施例では研磨層3Cに発泡構造を形成させるため、中空微粒子は例えば塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体等を用いることができ、また水等の化学発泡剤や、不活性ガス等を単独使用、またはこれら併用しても良い。
【符号の説明】
【0012】
1‥研磨装置 2‥被研磨物
3‥研磨パッド 3A‥研磨面
3B‥終点検出用窓 3C‥研磨層
100…型枠 100A…有底穴(凹部)
101…離型剤 102…混合液
103…円柱状素材(窓用素材) 104…有機溶剤
107…型枠 108…混合物
109…ウレタンブロック(成形体) 111…シート状部材

図1
図2
図3
図4