(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149767
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現増強剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/48 20060101AFI20220929BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220929BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220929BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220929BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220929BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220929BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20220929BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20220929BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220929BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220929BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220929BHJP
【FI】
A61K36/48
A61P17/00
A61P37/08
A61P17/06
A61P11/02
A61P11/06
A61P17/10
A61Q19/08
A61Q19/00
A61K8/9789
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052067
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 知宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
(72)【発明者】
【氏名】川井 淳
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018ME07
4B018ME14
4B018MF01
4C083AA111
4C083AA112
4C083CC02
4C083EE12
4C083EE13
4C083EE14
4C088AB59
4C088AC06
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA63
4C088NA14
4C088ZA34
4C088ZA59
4C088ZA89
4C088ZB13
4C088ZC52
(57)【要約】
【課題】表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現増強剤の提供。
【解決手段】表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現増強剤は、ネムノキ樹皮抽出物を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネムノキ樹皮抽出物を含有する、表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現増強剤。
【請求項2】
前記保湿因子又はバリア機能因子が、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、又はアクアポリンである、請求項1に記載の発現増強剤。
【請求項3】
前記保湿因子又はバリア機能因子が、クローディン1、デスモコリン1、インテグリン2、フィラグリン、ケラチン1、ケラチン5、ケラチン10、ケラチン14、及びロリクリン、及びアクアポリン3からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の発現増強剤。
【請求項4】
表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現低下に関連する疾患又は症状を予防又は治療するための組成物であって、ネムノキ樹皮抽出物を含有する組成物。
【請求項5】
前記疾患又は症状が、皮膚老化症状、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬、乾皮症、座瘡、アレルギー性鼻炎、及び喘息からなる群より選択される、請求項4に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現増強剤に関する技術が開示される。
【背景技術】
【0002】
ネムノキは、日本国内では東北地方以南の山地の林縁、原野等の日当たりのよい湿地に自生するマメ科の落葉高木で、海外においては中国、東南アジア等にも分布し、栽培される。花期の頃に樹皮を採取し、水洗いしてから天日乾燥して適当な長さに刻んだものを合歓皮と称し、民間では関節炎、腰痛、利尿、浮腫、強壮を期待して服用され、外用として腫物、打撲傷、関節痛に煎じ液で患部を冷湿布したり、浴湯料として使用されてきた。ネムノキ樹皮には、トリテルペン系サポニン(多数のジュリブロシド類)、フラボノイド(ゲラルドン、イソオカニン、ルテオリン等)、タンニン等が含まれることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
ネムノキ抽出物の用途として、例えば、正常な時計遺伝子の発現リズムと比較して、不規則である又は異常である時計遺伝子の発現リズムを示す皮膚細胞に対して用いることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】和漢薬No.759(2016.8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現増強剤の提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ネムノキ樹皮抽出物の新たな用途として、ネムノキ樹皮抽出物が表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現を増強できることを見出した。斯かる知見に更なる研究を重ね本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、以下の態様を包含する。
項1.
ネムノキ樹皮抽出物を含有する、表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現増強剤。
項2.
前記保湿因子又はバリア機能因子が、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、又はアクアポリンである、項1に記載の発現増強剤。
項3.
前記保湿因子又はバリア機能因子が、クローディン1、デスモコリン1、インテグリン2、フィラグリン、ケラチン1、ケラチン5、ケラチン10、ケラチン14、及びロリクリン、及びアクアポリン3からなる群より選択される、項1又は2に記載の発現増強剤。
項4.
表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現低下に関連する疾患又は症状を予防又は治療するための組成物であって、ネムノキ樹皮抽出物を含有する組成物。
項5.
前記疾患又は症状が、皮膚老化症状、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬、乾皮症、座瘡、アレルギー性鼻炎、及び喘息からなる群より選択される、項4に記載の組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現増強剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】三次元培養表皮モデルにジェネムクロック(商標)(東洋紡株式会社製)を適用した場合の表皮タイトジャンクション関連遺伝子の発現上昇を示す図である。
【
図2】三次元培養表皮モデルにジェネムクロック(商標)(東洋紡株式会社製)を適用した場合の表皮分化関連遺伝子の発現上昇を示す図である。
【
図3】三次元培養表皮モデルにジェネムクロック(商標)(東洋紡株式会社製)を適用した場合のアクアポリンの発現上昇を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ネムノキ樹皮抽出物
ネムノキ樹皮抽出物は、ネムノキ属植物の樹皮のみから抽出されたものに限らず、樹皮を含む限り、全体又はその一部(例えば、枝葉部)から抽出されたものであってもよい。抽出に供するネムノキ属植物は、裁断したままのものであってもよく、乾燥、粉砕等の前処理を施したものであってもよい。一実施形態において、ネムノキ樹皮抽出物は、ネムノキ属植物の枝葉部を、生のまま又は必要により乾燥して粉砕した後、抽出したものであることが好ましい。
【0012】
抽出溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ピリジン類;油脂、ワックス、その他オイル類が挙げられる。抽出溶媒は、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。2種類以上の抽出溶媒を組み合わせる場合、2種類以上の抽出溶媒を混合した混合溶媒による抽出であってもよく、各々の抽出溶媒による抽出の組み合わせ(例えば、水抽出及び有機溶媒抽出の組み合わせ)であってもよい。抽出溶媒としては、水、アルコール類、又はこれらの混合溶媒が好ましく、水(特に、70~100℃の熱水)がより好ましい。
【0013】
抽出条件は、使用する溶媒によっても異なるが、例えば水により抽出する場合、ネムノキ樹皮1質量部に対して1~100質量部の水を用い、4~100℃の温度で10分~7日間かけて抽出することが好ましく、ネムノキ樹皮1質量部に対して5~20質量部の水を用い、70~100℃の温度で30分~2時間かけて抽出することがより好ましい。なお、熱水抽出する場合、典型的には、加熱還流下で抽出が行われる。また、抽出効率をより高める観点から、抽出の際に、加圧、撹拌、超音波処理等を行ってもよい。
【0014】
ネムノキ樹皮抽出物は、抽出したままのものであってもよく、抽出後に希釈、濃縮、乾燥、分離、精製等の後処理を施したものであってもよい。分離方法としては、例えば、濾過、遠心分離等が挙げられる。精製方法としては、例えば、分別抽出、二溶媒間の分配、吸着剤による分別吸着、溶離、又はクロマトグラフィー等が挙げられる。
【0015】
ネムノキ樹皮抽出物は、いかなる形態であってもよく、例えば、乾燥粉末(乾燥後に粉砕等の処理を施したものも含む)等の固形状であってもよく、抽出液、乾燥粉末の分散液又は溶解液等の液状、又はペースト状であってもよい。
【0016】
ネムノキ樹皮抽出物は、例えば、特開2018-58783号公報に記載の方法により調製することができる。
【0017】
表皮の保湿因子又はバリア機能因子
保湿因子又はバリア機能因子は、表皮中に存在するものである限り、特に制限されない。保湿因子又はバリア機能因子は、表層を構成する層、すなわち、角層、顆粒層、有棘層、及び基底層のいずれの層に存在するものであってもよい。一実施形態において、表皮の保湿因子又はバリア機能因子は、例えば、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子等であってもよく、当該機能に関連する遺伝子又はそれにより発現するタンパク質の具体例としては、クローディン(例えば、クローディン1)、デスモコリン(例えば、デスモコリン1)、インテグリン(例えば、インテグリン2)、プロフィラグリン、フィラグリン、ロリクリン、インボルクリン、トランスグルタミナーゼ、ケラチン(例えば、ケラチン1、ケラチン5、ケラチン10、ケラチン14)、アクアポリン(例えば、アクアポリン3)等が挙げられる。これらの中でも、クローディン1、デスモコリン1、インテグリン2、フィラグリン、ロリクリン、ケラチン1、ケラチン5、ケラチン10、ケラチン14、及びアクアポリン3からなる群より選択される一種が好ましい。
【0018】
発現増強剤
発現増強剤は、発現増強剤を表皮に適用した場合に、発現増強剤を表皮に適用していない場合と比べて、表皮の保湿因子又はバリア機能因子の発現が増強するものである限り、特に制限されない。発現増強の程度は、発現増強剤を表皮に適用した場合の発現量が、発現増強剤を表皮に適用していない場合の発現量に対して1倍を超える限り、特に制限されず、例えば1.1倍以上、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.3倍以上である。発現増強の有無及び程度は、三次元培養皮膚モデルを用いたマイクロアレイにより分析することができる。
【0019】
発現増強剤は、ネムノキ樹皮抽出物を含有する限り、特に制限されない。ネムノキ樹皮抽出物の含有量(乾燥質量換算の含有量)は、発現増強効果を発揮する有効量である限り、特に限定されるものではないが、例えば0.00001質量%(又はw/v%)以上であり、好ましくは0.00005質量%(又はw/v%)以上、0.0001質量%(又はw/v%)以上、0.0005質量%(又はw/v%)以上、0.001質量%(又はw/v%)以上、0.005質量%(又はw/v%)以上、0.01質量%(又はw/v%)以上、又は0.05質量%(又はw/v%)以上である。ネムノキ樹皮抽出物の含有量は、100質量%以下であればよく、例えば50質量%(又はw/v%)以下であり、好ましくは30質量%(又はw/v%)以下、20質量%(又はw/v%)以下、10質量%(又はw/v%)以下、又は5質量%(又はw/v%)以下である。
【0020】
発現増強剤は、ネムノキ樹皮抽出物に加えて、担体を含有することが好ましい。担体としては、生理学的又は薬学的に許容し得るものである限り、特に制限されず、例えば、水;リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、HEPES緩衝液、トリス塩酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の緩衝液;カプリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール、セタノール、ステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、エタノール、イソプロパノール等の高級又は低級アルコール類;カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、イソノナン酸、カプロン酸等の高級脂肪酸又はそのエステル(アルキルエステル等);流動パラフィン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、パラフィンワックス、ワセリン等の炭化水素類;アボガド油、アルモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、ゴマ油、カカオ油、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、マカデミアナッツ油、ククイナッツ油、サフラワー油、大豆油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、パーシック油、ヒマシ油、綿実油、落花生油、タートル油、ミンク油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、グレープシード油、モクロウ、ホホバ油、牛脂、牛脂脂肪酸、豚油、卵黄油、硬化油等の油脂類;ラノリン(液状ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン等)、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、カンデリラロウ、モンタンロウ、セラックロウ等のロウ類;ジメチルポリシロキサン、メチフェニルシロキサン等のシリコーン類等が挙げられる。これらの担体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
発現増強剤は、さらに添加剤を含有してもよい。添加剤としては、生理学的又は薬学的に許容し得るものである限り、特に制限されず、形態や使用態様等に応じて適宜選択することができ、例えば、溶剤、分散剤、乳化剤、pH調整剤、増粘剤、防腐剤、安定剤、界面活性剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、香料、着色剤等が挙げられるが、これらに限定されない。添加剤は、1種類を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
発現増強剤は、例えば、医薬、試薬、食品、化粧料(医薬部外品を含む)、又はこれらに使用するための組成物の形態であってもよい。医薬の場合、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、軟膏剤、注射剤、貼付剤等であってもよい。食品の場合、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、中華麺、即席麺等の麺;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、ゼリー、ジャム、クリーム、スナック菓子、焼き菓子、パン等の菓子;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;粉乳、加工乳、発酵乳等の乳製品;マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;レトルトパウチ食品等であってもよい。また、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養補助食品、サプリメント等であってもよい。化粧料の場合、化粧水、乳液、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、オイル、パック等の基礎化粧料;洗顔料;皮膚洗浄料;シャンプー、リンス、ヘアートリートメント、ヘアクリーム、整髪料、パーマ剤、ヘアートニック、染毛料、育毛養毛料等の頭髪化粧料;ファンデーション、白粉、おしろい、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ等のメークアップ化粧料;美爪料等の仕上げ用化粧料;サンスクリーン等であってもよい。
【0023】
発現増強剤が、食品等の製品形態である場合、製品本体又はその容器もしくは包装等に、例えば、表皮の保湿因子又はバリア機能因子(特に、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、アクアポリン)の発現増強のために用いられる旨の表示、表皮の保湿因子又はバリア機能因子(特に、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、アクアポリン)の発現低下に関連する症状の予防、改善、緩和、進行遅延、進行抑制等のために用いられる旨の表示、これらに類する使用態様に関する表示を付してもよく、製品の説明書に、上記表示に対応する記載を含めてもよい。
【0024】
発現増強剤は、表皮の保湿因子又はバリア機能因子(特に、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、アクアポリン)の発現低下に関連する疾患又は症状の予防又は治療(改善、緩和、進行遅延、進行抑制等を含む)、或いは、表皮の保湿因子又はバリア機能因子(特に、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、アクアポリン)の発現が低下している対象への適用に好適に用いることができる。そのような疾患又は症状は、クローディン1、デスモコリン1、インテグリン2、フィラグリン、ロリクリン、ケラチン1、ケラチン5、ケラチン10、ケラチン14、及びアクアポリン3からなる群からなる群より選択される一種の発現低下に関連する疾患又は症状であることが好ましく、具体例としては、肌荒れ、乾燥肌等の皮膚老化症状;アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬、乾皮症、座瘡等の皮膚疾患;アレルギー性鼻炎;喘息等が挙げられる。
【0025】
発現増強剤の適用方法は、発現増強効果を発揮する限り、特に制限されず、経口投与であってもよく非経口投与であってもよい。当該適用方法は、局所投与であることが好ましく、皮膚への直接塗布、散布、注射、又は噴霧であることが好ましい。
【0026】
本発明は、表皮の保湿因子又はバリア機能因子(特に、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、アクアポリン)の発現低下に関連する疾患又は症状を予防又は治療するため、或いは、表皮の保湿因子又はバリア機能因子(特に、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、アクアポリン)の発現が低下している対象に適用するための組成物であって、ネムノキ樹皮抽出物を含有する組成物も包含する。当該組成物の構成は、発現増強剤で述べた構成と同様の構成である。
【実施例0027】
以下、実施例により本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
三次元培養表皮モデル(SkinEthic(商標) RHE、以下「RHE」と称する)を増殖培地にて一晩馴化した。馴化後、増殖培地を1mL分注した6穴プレートにRHEを移し、RHEの角層側に試験試料(東洋紡株式会社製「ジェネムクロック(商標)」、ネムノキ樹皮エキス)を100μL適用した。24時間培養後、試験試料を除去しPBS(-)にて洗浄した。
【0029】
RNA回収前のRHEの生存率を、アラマーブルー法を用いて評価した。10%アラマーブルー試薬を含有した維持培地を12穴プレートに分注した。RHEをこのプレートに移し、2時間培養し、培養上清の蛍光強度(Ex./Em.= 544 nm/590 nm)を測定した。細胞生存率は、試験試料未処理群の蛍光強度に対するIndex(%)として算出した。
【0030】
蛍光強度を測定後、トランスウェルよりRHEをパンチで外しQIAzol(商標) Lysis reagent(QIAGEN社製)に浸漬した状態で-80℃にて凍結保管する。細胞生存率が90%以上となる高濃度側の条件を選定し、選定したRHEをTissue Lyser(QIAGEN社製)を用いて細胞を破砕した。破砕液からmiRNeasy(商標) Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて精製したRNAを回収した。回収したRNAについて、mRNA発現解析チップを用いて、DNAマイクロアレイを実施した。得られた結果を解析し、各種遺伝子発現解析の結果は、コントロール(PBS(-)適用)の補正値を1とした比で表し、Student t検定を用いて有意差検定を行った。
【0031】
結果を
図1~3に示す。
図1~3に示されるように、ジェネムクロック(商標)をRHEに適用した場合、表皮タイトジャンクション関連因子、表皮分化関連因子、及びアクアポリンの発現増強が見られた。