IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 宇部興産株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149781
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】ポリアミドエラストマー樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20220929BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 77/02 20060101ALI20220929BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 69/00 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 69/40 20060101ALI20220929BHJP
   C08G 69/02 20060101ALI20220929BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20220929BHJP
   C08J 3/215 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/00
C08L77/02
C08K3/40
C08G69/00
C08G69/40
C08G69/02
C08J5/00 CFG
C08J3/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052083
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】山内 禎啓
(72)【発明者】
【氏名】藤村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 匡晴
【テーマコード(参考)】
4F070
4F071
4J001
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA54
4F070AB08
4F070AB16
4F070AC28
4F070AD01
4F070AD02
4F070AE01
4F070FA03
4F070FB06
4F070FC06
4F071AA54
4F071AB28
4F071AD01
4F071AE17
4F071AF13Y
4F071AF20Y
4F071BA01
4F071BB05
4J001DA01
4J001DA02
4J001DC05
4J001EA17
4J001EB08
4J001EC83
4J001FA03
4J001FB03
4J001FC03
4J001GA12
4J001GB02
4J001GB05
4J001JA04
4J001JA07
4J001JA12
4J001JB21
4J002CL001
4J002CL011
4J002CL051
4J002DE146
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DL006
4J002FA016
4J002FD016
4J002GM01
4J002GM02
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】柔軟性を維持しつつ、機械的強度に優れた成形品を与える樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーとを配合し、溶融混練することにより得られるポリアミドエラストマー樹脂組成物であって、ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合が0.1~10質量%である、ポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーとを配合し、溶融混練することにより得られるポリアミドエラストマー樹脂組成物であって、ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合が0.1~10質量%である、ポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミドエラストマーが、ハードセグメントとソフトセグメントを有し、前記ハードセグメントが、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物からなるナイロン塩、下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物及び下記式(3)で表されるラクタム化合物からなる群から選択される少なくとも1種から誘導されるポリアミド構成単位を有する、請求項1に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
【請求項3】
前記ハードセグメントが、ω-ラウリルラクタム、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種から誘導されるポリアミド構成単位を有する、請求項2に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【請求項4】
前記ハードセグメントが、前記ポリアミド構成単位と下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される構成単位とを含む、請求項2又は3に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【化2】
(式中、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
【請求項5】
前記ソフトセグメントが、ポリエーテル構成単位を有する、請求項2~4のいずれか1項に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【請求項6】
前記ソフトセグメントが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及び下記式(5)で表されるXYX型トリブロックポリエーテル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種から誘導されるポリエーテル構成単位を有する、請求項2~5のいずれか1項に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【化3】

(式中、xは1~20の整数、yは4~50の整数、及びzは1~20の整数をそれぞれ表す。)
【請求項7】
前記ポリアミドエラストマーが、下記式(1)で表されるジアミン化合物から誘導される第一構成単位と、
下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物又は下記式(3)で表されるラクタム化合物から誘導される第二構成単位と、
下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される第三構成単位と、
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【化4】

(式中、xは1~20の整数、yは4~50の整数、及びzは1~20の整数をそれぞれ表し、R、R及びRは、それぞれ炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
【請求項8】
前記板状無機フィラーの平均厚さが0.1~1.0μmである、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【請求項9】
前記板状無機フィラーがフレーク状ガラスである、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【請求項10】
前記ポリアミドエラストマー樹脂組成物がフレーク状ガラス以外の無機フィラーを実質的に含まない、請求項9に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、ポリアミドエラストマー樹脂組成物及びポリアミドエラストマー樹脂組成物を構成するポリアミドエラストマーのみをそれぞれ用い、ISO-527に準拠し成形温度230℃、金型温度40℃にて射出成形を行い得られた成形品について、
ポリアミドエラストマーのみから得られた成形品の引張降伏伸びに対する、ポリアミドエラストマー樹脂組成物から得られた成形品の引張降伏伸びの減少率が50%以下であり、
ポリアミドエラストマーのみから得られた成形品の引張弾性率に対する、ポリアミドエラストマー樹脂組成物から得られた成形品の引張弾性率の向上率が40%以上である、
請求項1~10のいずれか1項に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物を含む成形品。
【請求項13】
ポリアミドエラストマー樹脂組成物の製造方法であって、ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーとを配合し、200~300℃の溶融混錬温度で溶融混練する工程を含み、ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合が0.1~10質量%である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドエラストマー樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂にガラスフレーク、ガラス繊維等の無機フィラーを配合することにより、樹脂成形品に機械的強度、低成形収縮率及び良好な外観を付与することが知られている。例えば、特許文献1~3には、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂に特定の形状のフレーク状ガラスを配合した樹脂組成物が開示されている。特許文献4には、熱可塑性樹脂及び収束剤を用いたガラス繊維又はガラスフレークを含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されており、電気電子部品又は自動車用電装品として必要な絶縁性、耐熱性、寸法安定性及び強度に優れることが示されている。
【0003】
また、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂にガラス繊維及びガラスフレークを併用して、樹脂成形品の寸法精度及び外観を向上させたり、機械的強度と加熱後の反りのバランスを図ったりすることも知られている(例えば、特許文献5~7を参照)。
【0004】
一方で、各種成形における安定生産性、染色性及び染色堅牢性を向上させることを目的に、特定の構造及び物性を有するポリアミドエラストマー並びに亜リン酸化合物を所定の割合で含むポリアミドエラストマー組成物が提案されている(例えば、特許文献8を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/121756号
【特許文献2】国際公開第2007/111221号
【特許文献3】国際公開第2018/221313号
【特許文献4】特開2004-11036号公報
【特許文献5】特開2015-13984号公報
【特許文献6】特開2020-100832号公報
【特許文献7】特開2010-235761号公報
【特許文献8】国際公開第2017/146018号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~7のように、ポリカーボネート、ポリアミド等の熱可塑性樹脂にフレーク状ガラス、又はフレーク状ガラス及びガラス繊維を配合した樹脂組成物から形成される成形品では、機械的強度、寸法安定性及び外観は向上するものの、引張時の伸びが大きく低下する等、樹脂が本来有する柔軟性が失われてしまうという問題があった。そのため、柔軟性を維持しつつ、機械的強度を向上させた成形品を与える樹脂組成物が求められている。
【0007】
本発明は、柔軟性を維持しつつ、機械的強度に優れた成形品を与える樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ポリアミドエラストマー及び特定の形状の板状無機フィラーを特定の割合で配合した樹脂組成物とすることにより、成形品とした場合に、樹脂が本来有する柔軟性が維持され、機械的強度にも優れることを見出した。
【0009】
本発明は、以下の[1]~[13]に関する。
[1]ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーとを配合し、溶融混練することにより得られるポリアミドエラストマー樹脂組成物であって、ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合が0.1~10質量%である、ポリアミドエラストマー樹脂組成物。
[2]前記ポリアミドエラストマーが、ハードセグメントとソフトセグメントを有し、前記ハードセグメントが、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物からなるナイロン塩、下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物及び下記式(3)で表されるラクタム化合物からなる群から選択される少なくとも1種から誘導されるポリアミド構成単位を有する、[1]に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
[3]前記ハードセグメントが、ω-ラウリルラクタム、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種から誘導されるポリアミド構成単位を有する、[2]に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
[4]前記ハードセグメントが、前記ポリアミド構成単位と下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される構成単位とを含む、[2]又は[3]に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【化2】
(式中、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
[5]前記ソフトセグメントが、ポリエーテル構成単位を有する、[2]~[4]のいずれか1つに記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
[6]前記ソフトセグメントが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及び下記式(5)で表されるXYX型トリブロックポリエーテル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種から誘導されるポリエーテル構成単位を有する、[2]~[5]のいずれか1つに記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【化3】

(式中、xは1~20の整数、yは4~50の整数、及びzは1~20の整数をそれぞれ表す。)
[7]前記ポリアミドエラストマーが、下記式(1)で表されるジアミン化合物から誘導される第一構成単位と、下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物又は下記式(3)で表されるラクタム化合物から誘導される第二構成単位と、下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される第三構成単位と、を含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
【化4】

(式中、xは1~20の整数、yは4~50の整数、及びzは1~20の整数をそれぞれ表し、R、R及びRは、それぞれ炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
[8]前記板状無機フィラーの平均厚さが0.1~1.0μmである、[1]~[7]のいずれか1つに記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
[9]前記板状無機フィラーがフレーク状ガラスである、[1]~[8]のいずれか1つに記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
[10]前記ポリアミドエラストマー樹脂組成物がフレーク状ガラス以外の無機フィラーを実質的に含まない、[9]に記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
[11]前記ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、ポリアミドエラストマー樹脂組成物及びポリアミドエラストマー樹脂組成物を構成するポリアミドエラストマーのみをそれぞれ用い、ISO-527に準拠し成形温度230℃、金型温度40℃にて射出成形を行い得られた成形品について;ポリアミドエラストマーのみから得られた成形品の引張降伏伸びに対する、ポリアミドエラストマー樹脂組成物から得られた成形品の引張降伏伸びの減少率が50%以下であり;ポリアミドエラストマーのみから得られた成形品の引張弾性率に対する、ポリアミドエラストマー樹脂組成物から得られた成形品の引張弾性率の向上率が40%以上である、[1]~[10]のいずれか1つに記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物。
[12][1]~[11]のいずれか1つに記載のポリアミドエラストマー樹脂組成物を含む成形品。
[13]ポリアミドエラストマー樹脂組成物の製造方法であって、ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーとを配合し、200~300℃の溶融混錬温度で溶融混練する工程を含み、ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合が0.1~10質量%である、製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、柔軟性を維持しつつ、機械的強度に優れた成形品を与える樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
本発明のポリアミドエラストマー樹脂組成物は、ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーとを配合し、溶融混練することにより得られ、ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合が0.1~10質量%である。板状無機フィラーの配合割合を上記範囲とすることにより、ポリアミドエラストマーの柔軟性を維持しつつ、機械的強度に優れた成形品を与える樹脂組成物を提供することができる。
【0013】
<ポリアミドエラストマー>
ポリアミドエラストマーは、ポリアミドの構成単位を有するハードセグメント及びソフトセグメントを有する樹脂である。ポリアミドエラストマー樹脂組成物とすることにより、成形加工性並びに成形品としたときの機械的特性及び柔軟性のバランスが良好となる。
【0014】
ポリアミドエラストマーの第一の好ましい態様は、以下のとおりである。
ポリアミドエラストマーのハードセグメントは、ポリアミド形成性モノマー[ジアミン化合物とジカルボン酸化合物からなるナイロン塩、下記式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物及び下記式(3)で表されるラクタム化合物からなる群から選択される少なくとも1種]から誘導されるポリアミド構成単位を有することが好ましい。
【化5】

(式中、R及びRは、それぞれ炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
【0015】
ジアミン化合物とジカルボン酸化合物からなるナイロン塩のジアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジアミン、3-メチルペンタン-1,5-ジアミン等の炭素数2~20の脂肪族ジアミンが挙げられる。ジアミン化合物は、単独で又は2種以上を用いることができる。
【0016】
ジアミン化合物とジカルボン酸化合物からなるナイロン塩のジカルボン酸化合物の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2~25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14~48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;並びにテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、又はこれらの塩、エステル等の誘導体を挙げることができる。ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、クローダジャパン社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」等を用いることができる。ジカルボン酸化合物は、単独で又は2種以上を用いることができる。
【0017】
上記式(2)において、Rは、炭素数2~20の脂肪族基、脂環族基及び/又は芳香族基を含む二価の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数3~18の上記炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数4~15の上記炭化水素基であり、さらにより好ましくは炭素数10~15の上記炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数10~15のアルキレン基である。式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、10-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等の炭素数5~20の脂肪族ω-アミノカルボン酸等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を用いることができる。
【0018】
式(3)において、Rは、炭素数3~20の脂肪族基、脂環族基及び/又は芳香族基を含む二価の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数3~18の上記炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数4~15の上記炭化水素基であり、さらにより好ましくは炭素数10~15の上記炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数10~15のアルキレン基である。式(3)で表されるラクタム化合物としては、ε-カプロラクタム、ω-エナントラクタム、ω-ウンデカラクタム、ω-ラウリルラクタム、2-ピロリドン等の炭素数4~20の脂肪族ラクタム等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を用いることができる。
【0019】
これらの中でも、低吸水による寸法安定性、機械的特性及び柔軟性の観点から、ハードセグメントが、ω-ラウリルラクタム、11-アミノウンデカン酸及び12-アミノドデカン酸からなる群から選択される少なくとも1種から誘導されるポリアミド構成単位を有することが好ましい。
【0020】
ハードセグメントは、両末端にカルボキシル基を有するポリアミドから誘導することもでき、前記ポリアミド構成単位と下記式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される構成単位とを含むと、成形加工性並びに成形品としたときの機械的特性及び柔軟性のバランスの点で好ましい。
【化6】
(式中、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
【0021】
式(4)において、Rは、炭素数1~20の脂肪族基、脂環族基及び/又は芳香族基を含む二価の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~15の上記炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数2~12の上記炭化水素基であり、さらにより好ましくは炭素数4~10の上記炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数4~10のアルキレン基である。
【0022】
上記式(4)で表されるジカルボン酸化合物の具体例としては、ジアミン化合物とジカルボン酸化合物からなるナイロン塩のジカルボン酸化合物として例示した化合物を挙げることができる。これらの中でも、成形加工性並びに成形品としたときの機械的特性及び柔軟性のバランスの観点から、式(4)で表されるジカルボン酸化合物は、アジピン酸、シュウ酸、ドデカン二酸、セバシン酸又はダイマー酸であることが好ましい。式(4)で表されるジカルボン酸化合物は、単独で又は2種以上を用いることができる。
【0023】
上記式(4)で表されるジカルボン酸化合物の存在下、上記ポリアミド構成単位を、常法により、開環重合又は重縮合させることによって両末端にカルボキシル基を有するハードセグメントを得ることができる。ハードセグメントのジカルボン酸化合物は、分子量調整剤として使用することができる。
【0024】
ハードセグメントの数平均分子量は、300~15000であることが好ましく、柔軟性、成形性の観点から300~6000であることがより好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量は、JIS K 1557に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量とする。具体的には、水酸基価を測定し、末端基定量法により、(56.1×1000×価数)/水酸基価を用いて算出する(この式において、水酸基価の単位は[mgKOH/g]である)。前記式中において、価数は1分子中の水酸基の数である。
【0025】
ポリアミドエラストマーのソフトセグメントは、ポリエーテルの構成単位を有することが好ましい。ソフトセグメントとしてポリエーテルの構成単位を有するポリアミドエラストマーとしては、ハードセグメントとソフトセグメントをエステル結合で結合したポリエーテルポリエステルポリアミドエラストマー、ハードセグメントとソフトセグメントをアミド結合で結合したポリエーテルポリアミドエラストマーが挙げられる。本発明の効果発現の観点から、ハードセグメントとソフトセグメントをアミド結合で結合したポリエーテルポリアミドエラストマーが好ましい。
【0026】
ソフトセグメントは、ポリエーテルの構成単位を有することが好ましく、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール及び下記式(5):
【化7】

(式中、xは1~20の整数、yは4~50の整数、及びzは1~20の整数をそれぞれ表す。)で表されるXYX型トリブロックポリエーテル基を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種から誘導されるポリエーテル構成単位を有することが好ましい。これらは、単独で又は2種以上を用いることができ、これらの中でも、成形加工性並びに成形品としたときの機械的特性及び柔軟性のバランスの観点から、式(5)に示されるXYX型トリブロックポリエーテルがより好ましい。
また、ポリエーテル化合物の末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等を用いることができる。ソフトセグメントの数平均分子量は、200~6000であることが好ましく、650~2000であることがより好ましい。
【0027】
上記式(5)において、x及びzは、それぞれ独立して、1~18の整数が好ましく、1~16の整数がより好ましく、1~14の整数がさらに好ましく、1~12の整数が特に好ましい。また、yは、5~45の整数が好ましく、6~40の整数がより好ましく、7~35の整数がさらに好ましく、8~30の整数が特に好ましい。
【0028】
ハードセグメントとソフトセグメントとの組み合わせとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組み合わせを挙げることができる。これらの中でも、ω-ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組み合わせ、ω-ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組み合わせ、ω-ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組み合わせ及びω-ラウリルラクタムの開環重縮合体/式(5)で表されるXYX型トリブロックポリエーテル基を有する化合物の組み合わせが好ましく、ω-ラウリルラクタムの開環重縮合体/式(5)で表されるXYX型トリブロックポリエーテル基を有する化合物の組み合わせが特に好ましい。
【0029】
ハードセグメントとソフトセグメントとの割合(質量比)は、ハードセグメント/ソフトセグメント=95/5~20/80であることが好ましい。この範囲であれば、成形体からのブリードアウトを回避しやすく、十分な柔軟性も確保しやすい。得られる成形体の機械的強度と柔軟性のバランスの観点から、ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)は、95/5~25/75であることがより好ましく、90/10~30/70であることがさらに好ましく、85/15~40/60であることが特に好ましく、80/20~50/50であることが最も好ましい。なお、本発明において、ハードセグメントとソフトセグメントとの割合(質量比)は、各セグメントを構成するモノマー成分の配合量を基準として算出される値である。通常、得られるポリアミドエラストマーのハードセグメントとソフトセグメントの割合(質量比)は、各セグメントを構成するモノマー成分の配合量を基準として算出される値と等しい。
【0030】
ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)が上記範囲より小さい場合、ポリアミド成分の結晶性が低くなる場合があり、強度、弾性率等の機械的物性が低下する場合がある。ハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)が上記範囲より大きい場合、ゴム弾性や柔軟性等のエラストマーとしての機能、性能が発現しにくくなる場合がある。
【0031】
ポリアミドエラストマーの市販品としては、例えば、ダイセル・エボニック株式会社製商品名「ダイアミド(登録商標)E62H」、「ダイアミド(登録商標)E73K2」、「ダイアミド(登録商標)E75K2」、「ダイアミド(登録商標)MSP-S」、「ダイアミド(登録商標)X4442W2」、「ダイアミド(登録商標)ZE7000」、「ダイアミド(登録商標)ZE7200」、「ベスタミド(登録商標)E40-S3」、「ベスタミド(登録商標)E47-S3」、「ベスタミド(登録商標)E55-S3」、「ベスタミド(登録商標)E58-S4」、「ベスタミド(登録商標)E62-S3」、「ベスタミド(登録商標)E62K2」、「ベスタミド(登録商標)EX9200」、アルケマ社製商品名「Pebax(登録商標)」シリーズ、「Pebax Rnew(登録商標)」シリーズ、エムスケミー・ジャパン株式会社製商品名「グリルフレックス(登録商標)EBG」、「グリルフレックス(登録商標)ELG」、「グリロン(登録商標)ELX」、宇部興産株式会社製商品名「UBESTA XPA(登録商標)」シリーズ、例えば、「UBESTA XPA 9040X1、同9040F1、同9048X1、同9048F1、同9055X1、同9055F1、同9063X1、同9063F1、同9068X1、同9068F1」(宇部興産株式会社製)等が挙げられる。
この中でも、宇部興産株式会社製商品名「UBESTA XPA(登録商標)」シリーズが好ましい。ポリアミドエラストマーは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0032】
ポリアミドエラストマーの第二の好ましい態様は、以下のとおりである。
ポリアミドエラストマーは、成形加工性並びに成形品としたときの機械的特性及び柔軟性のバランスの観点から、式(1)で表されるジアミン化合物から誘導される第一構成単位と、式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物又は式(3)で表されるラクタム化合物から誘導される第二構成単位と、式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される第三構成単位と、を含むことが特に好ましい。
【化8】

(式中、xは1~20の整数、yは4~50の整数、及びzは1~20の整数をそれぞれ表し、R、R及びRは、それぞれ炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
式(1)~(4)で表される化合物は、それぞれ、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0033】
[第一構成単位]
ポリアミドエラストマーを構成する第一構成単位は、式(1)で表されるジアミン化合物から誘導される。式(1)で表されるジアミン化合物は、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物であり、例えば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール等の両末端にプロピレンオキシドを付加することによりポリプロピレングリコール鎖を形成した後、このポリプロピレングリコール鎖の末端にアンモニア等を反応させることによって製造することができる。
【0034】
式(1)において、x及びzは、それぞれ独立して1~20であり、好ましくは1~18、より好ましくは1~16、さらに好ましくは1~14、特に好ましくは1~12である。yは4~50であり、好ましくは5~45、より好ましくは6~40、さらに好ましくは7~35、特に好ましくは8~30である。またx、y及びzの組合せとしては、xが2~6の範囲、yが6~12の範囲、zが1~5の範囲の組合せ;xが2~10の範囲、yが13~28の範囲、zが1~9の範囲の組合せ;xが10~12の範囲、yが6~12の範囲、zが9~11の範囲の組合せ等を好ましく例示することができる。
【0035】
式(1)で表されるジアミン化合物の具体例としては、米国HUNTSMAN社製エラスタミンRT-1000(式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ9、zがおよそ2)、XTJ-533(式(1)において、xがおよそ12、yがおよそ11、zがおよそ11)、XTJ-536(式(1)において、xがおよそ8.5、yがおよそ17、zがおよそ7.5)等を挙げることができる。
【0036】
また、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物として、XYX-1(式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ14、zがおよそ2)、XYX-2(式(1)において、xがおよそ5、yがおよそ14、zがおよそ4)、そしてXYX-3(式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ19、zがおよそ2)等を挙げることもできる。
【0037】
ポリアミドエラストマー中の第一構成単位の含有率は、ポリアミドエラストマーを構成する全モノマー成分の合計質量に対する、式(1)で表されるジアミン化合物の質量を基準として、例えば5~80質量%であり、5~75質量%であることがより好ましく、10~70質量%であることがさらに好ましく、15~60質量%であることが特に好ましく、20~50質量%であることが最も好ましい。
【0038】
[第二構成単位]
第二構成単位は、式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物又は式(3)で表されるラクタム化合物から誘導される。式(2)において、Rは、炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数2~20の脂肪族基、脂環族基及び/又は芳香族基を含む二価の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数3~18の上記炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数4~15の上記炭化水素基であり、さらにより好ましくは炭素数10~15の上記炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数10~15のアルキレン基である。
【0039】
式(2)で表されるアミノカルボン酸化合物の具体例としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、10-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等の炭素数5~20の脂肪族ω-アミノカルボン酸等を挙げることができる。
【0040】
式(3)においてRは炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数3~20の脂肪族基、脂環族基及び/又は芳香族基を含む二価の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数3~18の上記炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数4~15の上記炭化水素基であり、さらにより好ましくは炭素数10~15の上記炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数10~15のアルキレン基である。
【0041】
式(3)で表されるラクタム化合物の具体例としては、ε-カプロラクタム、ω-エナントラクタム、ω-ウンデカラクタム、ω-ラウリルラクタム、2-ピロリドン等の炭素数4~20の脂肪族ラクタム等を挙げることができる。
【0042】
[第三構成単位]
第三構成単位は、式(4)で表されるジカルボン酸化合物から誘導される。式(4)において、Rは、炭化水素鎖を含む連結基を表し、炭素数1~20の脂肪族基、脂環族基及び/又は芳香族基を含む二価の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1~15の上記炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数2~12の上記炭化水素基であり、さらにより好ましくは炭素数4~10の上記炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数4~10のアルキレン基である。また、mは0又は1を表す。
【0043】
ジカルボン酸化合物としては、脂肪族、脂環族及び芳香族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のジカルボン酸又はこれらの誘導体を用いることができる。
【0044】
ジカルボン酸化合物の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2~25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数14~48の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)等の脂肪族ジカルボン酸;1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;並びにテレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、又はこれらの塩、エステル等の誘導体を挙げることができる。ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、クローダジャパン社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」等を用いることができる。
【0045】
ポリアミドエラストマーにおける第二構成単位と第三構成単位との合計含有率は、ポリアミドエラストマーを構成する全モノマー成分の合計質量に対する、式(2)~(4)で表される化合物の合計質量を基準として、好ましくは20~95質量%、より好ましくは25~95質量%、さらに好ましくは30~90質量%、特に好ましくは40~85質量%、最も好ましくは50~80質量%である。
【0046】
[その他の構成単位]
ポリアミドエラストマーは、式(1)で表されるジアミン化合物以外の第二ジアミン化合物から誘導される第四構成単位をさらに含んでいてもよい。第二ジアミン化合物としては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び芳香族ジアミン、又はこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0047】
第二ジアミン化合物の具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、3-メチルペンタメチレンジアミン等の炭素数2~20の脂肪族ジアミン、メタキシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等を挙げることができる。
【0048】
<ポリアミドエラストマーの製造方法>
ポリアミドエラストマーの製造方法としては、例えば、特開2012-211251号公報を参照することができる。以下、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物を用いたポリエーテルポリアミドエラストマーの製造方法について説明するが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等から誘導されるポリエーテル構成単位をソフトセグメントとして有するポリアミドエラストマーについても同様である。
【0049】
例えば、ポリアミド形成性モノマー、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物及びジカルボン酸化合物の三成分を、逐次的に及び/又は同時に、加圧及び/又は常圧下で溶融重合し、必要に応じさらに減圧下で溶融重合する工程からなる方法を用いることができる。なお、ポリアミド形成性モノマーとジカルボン酸化合物の二成分を先に重合させ、ついで、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物を重合させる方法も利用できる。
【0050】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造に当たり、原料の仕込む方法に特に制限はないが、ポリアミド形成性モノマー、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物及びジカルボン酸化合物の合計に対して、ポリアミド形成性モノマー及びジカルボン酸化合物の合計が好ましくは20~95質量%、より好ましくは25~95質量%、さらに好ましくは30~90質量%、さらにより好ましくは40~85質量%、最も好ましくは50~80質量%の範囲であり、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物が好ましくは5~80質量%、より好ましくは5~75質量%、さらに好ましくは10~70質量%、さらにより好ましくは15~60質量%、最も好ましくは20~50質量%の範囲である。原料のうち、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物とジカルボン酸化合物は、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物のアミノ基とジカルボン酸化合物のカルボキシル基がほぼ等モルになるように仕込むことが好ましい。ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造に当たり、本発明の目的を妨げない範囲で、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物以外の第二ジアミン化合物を配合してもよい。
XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物の代わりに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等から誘導されるポリエーテルジアミン化合物を用いた場合も同様である。
【0051】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造は、重合温度が好ましくは150~300℃、さらに好ましくは160~280℃、特に好ましくは180~250℃で行うことができる。重合温度が上記温度より低い場合、重合反応が遅くなりやすく、上記温度より高い場合、熱分解が起きやすく良好な物性のポリマーが得られない場合がある。
【0052】
ポリエーテルポリアミドエラストマーは、ポリアミド形成性モノマーとしてω-アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合又は常圧溶融重合とそれに続く減圧溶融重合の工程からなる方法で製造することができる。
【0053】
一方、ポリアミド形成性モノマーとしてラクタム化合物、又はジアミン化合物とジカルボン酸化合物から合成されるもの及び/若しくはそれらの塩を用いる場合には、適量の水を共存させ、0.1~5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合及び/又は減圧溶融重合からなる方法で製造することができる。
【0054】
ポリエーテルポリアミドエラストマーは、重合時間が通常0.5~30時間で製造することができる。重合時間が上記範囲より短いと、分子量の上昇が不十分となりやすく、長いと熱分解による着色等が起こりやすく、いずれの場合も所望の物性を有するポリエーテルポリアミドエラストマーが得られない場合がある。
【0055】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造は、回分式でも、連続式でも実施することができ、またバッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置等を単独であるいは適宜組み合わせて用いることができる。
【0056】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造において、必要に応じて分子量調節や成形加工時の溶融粘度安定のために、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のモノアミン、酢酸、安息香酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸を添加することができる。これらの使用量は、最終的に得られるエラストマーの相対粘度が1.2~3.5(0.5質量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)の範囲になるように適宜添加することが好ましい。
【0057】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造において、上記のモノアミン、モノカルボン酸等の添加量は、得られるポリエーテルポリアミドエラストマーの特性を阻害されない範囲とするのが好ましい。
【0058】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造において、必要に応じて触媒として、リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等を、また触媒と耐熱剤の両方の効果をねらって亜リン酸、次亜リン酸、及びこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機系リン化合物を添加することができる。添加量は、通常、仕込み原料に対して50~3000ppmである。
【0059】
ポリエーテルポリアミドエラストマーの製造において、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、耐候剤、発泡剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、結晶核剤、結晶化促進剤、着色剤等を添加することができる。
【0060】
<0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラー>
ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーとを配合し、溶融混練することにより得られる。このようにして得られた樹脂組成物を用いることで、柔軟性を維持しつつ、機械的強度が向上した成形品を得ることが可能になる。
板状無機フィラーは、略平坦な面(X-Y平面)を有し、かつ、厚さ(Z)が略均一である無機フィラーである。本明細書において、平均厚さは、100個の板状無機フィラーについて走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて測定した厚さの平均値である。平均粒径は、レーザー回折散乱法に基づいて測定された粒度分布において、累積質量百分率が50%に相当する粒径(D50)である。
【0061】
板状無機フィラーの平均厚さは0.1~6.0μmであり、平均粒径は30~700μmである。平均厚さは、機械的強度の観点から、0.1~5.0μmであることが好ましく、0.1~1.0μmであることがより好ましい。平均粒径は、柔軟性の維持と機械的強度の観点から、30~500μmであることが好ましく、50~300μmであることがより好ましく、100~200μmであることが特に好ましい。板状無機フィラーの平均粒径が30μm未満であると、成形品の機械的強度向上の効果が得られず、700μmを超えると、成形品の機械的強度は大きく向上するものの、柔軟性が大きく低下する。
なお、ポリアミドエラストマーと板状無機フィラーとを配合し、溶融混練してポリアミドエラストマー樹脂組成物を製造する場合、樹脂組成物中の板状無機フィラーは、元の形状のままであっても、粉砕されていてもよい。
【0062】
板状無機フィラーを構成する材料は、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有するものであれば、特に限定されない。例えば、板状無機フィラーとして、フレーク状ガラス、雲母、板状タルク、カオリン、クレイ、板状アルミナ、各種の金属箔等が挙げられる。中でも、成形品の柔軟性の低下がなく、機械的特性が向上する観点から、フレーク状ガラスが好ましい。板状無機フィラーは、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0063】
フレーク状ガラス等の粉砕されやすい板状無機フィラーを用いた場合、溶融混練後のポリアミドエラストマー樹脂組成物中の板状無機フィラーの一部又はすべては、少なくとも部分的に粉砕されて元の形状が維持されておらず、また粉砕によって微細な板状無機フィラーが生じていると考えられるため、該樹脂組成物中の板状無機フィラーの形状を特定することは一般的に困難である。このような樹脂組成物であっても、溶融混練後に粉砕されずに残った又は粉砕の程度が小さい板状無機フィラーが、成形品の機械的強度向上に寄与するものと考えられる。また溶融混錬時の板状無機フィラーの粉砕によって生じた微細な板状無機フィラーが、成形品の柔軟性の維持に寄与するものと考えられる。
【0064】
板状無機フィラーは、表面処理剤により表面処理されていてもよい。さらに、作業性を高めるために、これらの表面処理剤により収束ないし顆粒化されていてもよい。表面処理剤としては、シランカップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニア系カップリング剤等の各種カップリング剤;水ガラス、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、澱粉、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン樹脂、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、脂肪酸、界面活性剤等を挙げることができる。表面処理剤は、単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0065】
表面処理剤は、予め板状無機フィラーに適用し、乾燥させて表面処理若しくは収束処理を施しておくか、又は樹脂組成物の調製の際に、板状無機フィラーと同時に添加してもよい。ポリアミドエラストマーと、顆粒化された板状無機フィラーとを配合し、溶融混練してポリアミドエラストマー樹脂組成物を製造する場合、樹脂組成物中の板状無機フィラーは、顆粒状態のままであっても、すべてが解れて個々の粒子になっていても、部分的に解れて一部が顆粒のまま残っていてもよく;解れた個々の粒子がさらに粉砕されていてもよい。
【0066】
フレーク状ガラスの市販品としては、日本板硝子株式会社製商品名「Eガラスフレーク(登録商標)REF-160A(平均厚さ:5μm、平均粒径:160μm)」、「Eガラスフレーク(登録商標)REF-600A(平均厚さ:5μm、平均粒径:600μm)」、日本板硝子株式会社製商品名「Cガラスフレーク(登録商標)RCF-160A(平均厚さ:5μm、平均粒径:160μm)」、「Cガラスフレーク(登録商標)RCF-600A(平均厚さ:5μm、平均粒径:600μm)」、日本板硝子株式会社製商品名「ファインフレーク(登録商標)MEG160FY-M01(平均厚さ:0.7μm、平均粒径:160μm)」等が挙げられる。
【0067】
ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合は、0.1~10質量%である。ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合は、0.1~5質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがより好ましい。板状無機フィラーの配合割合を上記範囲とすることにより、柔軟性を維持しつつ、機械的強度が向上した成形品を得ることが可能になる。板状無機フィラーの配合割合が0.1質量%未満であると、成形品の機械的強度向上の効果が得られず、10質量%を超えると、成形品の機械的強度は大きく向上するものの、柔軟性が大きく低下する。
【0068】
<その他の成分>
ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、ポリアミドエラストマー以外の樹脂;平均厚さが0.1~6.0μmの範囲外である、又は平均粒径が30~700μmの範囲外である板状無機フィラー;ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状の無機又は有機フィラー;ガラスビーズ、シリカ、炭酸カルシウム等の粒子状の無機又は有機フィラー;前記表面処理剤以外の表面処理剤;可塑剤、酸化防止剤、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、耐候剤、発泡剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、結晶核剤、結晶化促進剤、着色剤等が挙げられる。
【0069】
ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、成形品の柔軟性低下防止の観点から、フレーク状ガラス以外の無機フィラーを実質的に含まないことが好ましい。なお、「実質的に含有しない」とは、例えば工業用原料により不可避的に混入される場合を除き、意図的に含ませないことを意味する。具体的には、ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中のフレーク状ガラス以外の無機フィラー配合割合が0.1質量%未満であることを意味し、好ましくは0.05質量%未満、より好ましくは0.03質量%未満である。
【0070】
[ポリアミドエラストマー樹脂組成物の製造方法]
ポリアミドエラストマー樹脂組成物の製造方法は、ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーとを配合し、200~300℃の溶融混錬温度で溶融混練する工程を含み、ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中において、板状無機フィラーの配合割合が0.1~10質量%である。
溶融混練温度を200~300℃とすることにより、板状無機フィラーの過度の粉砕を抑制し、柔軟性を維持しつつ、機械的強度に優れた成形品を与える樹脂組成物を提供することができる。ここで溶融混錬温度とは、溶融混錬機から押し出された直後の溶融樹脂温度を、熱電対温度計を用いて測定した値である。測定に用いる熱電対温度計は公知の物を用いることができる。溶融混練温度は、210~300℃であることが好ましく、220~300℃であることがより好ましく、240℃~290℃であることがさらに好ましく、260℃~290℃であることが特に好ましい。
【0071】
ポリアミドエラストマー樹脂組成物の製造方法は、例えば次の方法を適用することができる。
ポリアミドエラストマーと、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーと、その他の成分とを混合する際には、単軸、二軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、及びミキシングロール等通常公知の溶融混練機が用いられる。例えば、二軸押出機を使用して、全ての原材料を配合後、溶融混練する方法、一部の原材料を配合後、溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法等、いずれの方法を用いてもよい。この中でも、板状無機フィラーの過度の粉砕を抑制し、柔軟性を維持しつつ、機械的強度に優れた成形品を与える樹脂組成物を得る観点から、二軸押出機を使用して、一部の原材料を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法が好ましい。その際、板状無機フィラーはサイドフィーダーから混合される。使用する板状無機フィラーは、顆粒化されていてもよく、顆粒化されていなくてもよい。
なお、板状無機フィラーを予めポリアミドエラストマーに混合してマスターバッチとして使用してもよい。
【0072】
二軸押出機を用いて溶融混錬を行う場合、溶融混錬中のシリンダー設定温度は200℃~300℃とすることが好ましく、200℃~280℃とすることがより好ましく、200℃~250℃とすることがさらに好ましく、210℃~240℃とすることが最も好ましい。また溶融混錬中の押出量は30~80kg/Hrとすることが好ましく、30~70kg/Hrとすることがより好ましく、40~60kg/Hrとすることがさらに好ましい。さらに溶融混錬中のスクリュー回転数は100~600rpmとすることが好ましく、100~500rpmとすることがより好ましい。これらの混錬条件を材料に応じて適宜選択することによって溶融混錬温度を200℃~300℃に調整することができる。
【0073】
[ポリアミドエラストマー樹脂組成物の物性]
ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、ISO-527に準拠し成形温度230℃、金型温度40℃にて射出成形を行い得られた成形品の引張降伏強度、引張降伏伸び及び引張弾性率が、それぞれ、10MPa以上、50~200%及び260MPa以上であることが好ましい。なお、引張降伏強度、引張降伏伸び及び引張弾性率は、ISO-527に準拠して測定した値である。引張降伏強度、引張降伏伸び及び引張弾性率が上記範囲であると、成形品の柔軟性と機械的強度のバランスが良好である。好ましくは、引張降伏強度は15~25MPaであり、引張降伏伸びは80~150%であり、引張弾性率は、260~500Mpaである。
【0074】
ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、ポリアミドエラストマー樹脂組成物及びポリアミドエラストマー樹脂組成物を構成するポリアミドエラストマーのみをそれぞれ用い、ISO-527に準拠して得られた成形品について、以下の特性を有することが好ましい。
(1)ポリアミドエラストマーのみから得られた成形品の引張降伏伸びに対する、ポリアミドエラストマー樹脂組成物から得られた成形品の引張降伏伸びの減少率が50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、さらに好ましくは0%である。
(2)ポリアミドエラストマーのみから得られた成形品の引張弾性率に対する、ポリアミドエラストマー樹脂組成物から得られた成形品の引張弾性率の向上率が40%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは80%以上である。
(3)ポリアミドエラストマーのみから得られた成形品の引張降伏強度に対する、ポリアミドエラストマー樹脂組成物から得られた成形品の引張降伏強度の向上率が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは30%以上である。
【0075】
[ポリアミドエラストマー樹脂組成物の用途]
ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、特に制限されず、公知の方法を利用する成形品の製造に用いることができる。具体的には、ポリアミドエラストマー樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形等による成形品の製造に用いることができる。
【0076】
ポリアミドエラストマー樹脂組成物を含む成形品は、樹脂本来の柔軟性が維持され、かつ、機械的強度に優れるため、耐熱性、耐寒性等、温度環境が大きく変動する環境で使用される部品、例えば、自動車等の車両分野におけるギヤ、ベルト等の駆動部品、及びタイヤのサイドウォール、ベルト等に好適に使用することができる。
【実施例0077】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0078】
[製造例1 ポリアミドエラストマー1(PAE-1)の製造]
撹拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を供えた70Lの圧力容器に、12-アミノドデカン酸(宇部興産株式会社製)14.3kg、アジピン酸(旭化成株式会社製)1.48kg、エラスタミンRT-1000(米国ハンツマン社製、数平均分子量 約1000、XYX型トリブロックポリエーテルジアミン化合物、式(1)において、xがおよそ3、yがおよそ9、zがおよそ2)10.0kg、次亜リン酸ナトリウム 11.2g、及びIrganox(登録商標)245(BASF社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤)80gを仕込んだ。容器内を窒素置換した後、加熱を開始した。槽内温度が230℃に到達した時点から更に5時間加熱撹拌し、反応水を系外に留去しながら重合反応を行った。反応終了後、ポリマー取り出し口から無色透明のポリマーを水中へストランド状に吐出し、ペレタイザーによりカッティングを行って約13kgのPAE-1を得た。PAE-1のハードセグメント/ソフトセグメント(質量比)は、61.2:38,8である。
【0079】
[無機フィラー]
以下の材料を使用した。
フレーク状ガラス1:REF-160A(日本板硝子株式会社製、平均厚さ:5μm、平均粒径:160μm)
フレーク状ガラス2:MEG160FY-M01(日本板硝子株式会社製、平均厚さ:0.7μm、平均粒径:160μm)
異形断面チョップドストランド(日東紡績株式会社製、CSG-3PA-820S、異形比:4、長さ:3mm)
ガラス繊維(日本電気硝子株式会社製、ガラスファイバー T-249H、単繊維径:13μm、長さ:3mm)
タルク(富士タルク工業株式会社製、平均粒径:13μm)
【0080】
実施例1~2及び比較例1~4
シリンダー温度220℃の二軸押出機において、下記表1に示すとおり、ポリアミドエラストマー1(PAE-1)を原料供給部(ホッパー)より、無機フィラーをサイドフィード部よりそれぞれ投入し、押出量50kg/Hr、スクリュー回転数400rpmの条件で溶融混練し、実施例1~2及び比較例1~4のペレットを得た。溶融混錬時の溶融混錬温度は実施例1:275℃、実施例2:275℃、比較例1:250℃、比較例2:280℃、比較例3:280℃、比較例4:280℃であった。
なお、比較例1は、無機フィラーを配合しなかった。表中の組成の単位は質量%であり、樹脂組成物全体を100質量%とする。
【0081】
【表1】
【0082】
[評価方法]
実施例1~2及び比較例1~4のペレットをそれぞれ用い、ISO-527に準拠し成形温度230℃、金型温度40℃にて射出成形を行い、成形品を得た。こうして得られた成形品について、ISO-527に準拠し、テンシロン型引張試験機(Shimazu AG-I、株式会社島津製作所製)を用いて、引張降伏強度、引張降伏伸び及び引張弾性率を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
実施例1~2及び比較例2~4において、引張降伏強度及び引張弾性率については、比較例1の各試験結果に対する向上率を、引張降伏伸びについては、比較例1の試験結果に対する減少率を併せて算出した。結果を表2に示す。
【0084】
引張降伏強度向上率、引張降伏伸び減少率及び引張弾性率向上率の評価基準は、以下のとおりである。
<引張降伏強度向上率>
◎:30%以上
○:10%以上30%未満
×:10%未満
<引張降伏伸び減少率>
◎:0%
○:0%超50%以下
×:50%超
<引張弾性率向上率>
◎:80%以上
○:40%以上80%未満
×:40%未満
【0085】
【表2】
【0086】
ポリアミドエラストマー樹脂組成物100質量%中、0.1~6.0μmの平均厚さ及び30~700μmの平均粒径を有する板状無機フィラーの配合割合が0.1~10質量%である、実施例1及び2のポリアミドエラストマー樹脂組成物は、無機フィラーを含有しない比較例1に対する引張降伏伸び減少率が0%である一方、引張降伏強度及び引張弾性率が比較例1よりも向上していることがわかる。特に、平均厚さ0.7μm及び平均粒径160μmのフレーク状ガラスを用いた実施例2は、引張降伏伸び減少率が0%であり、比較例1に対する引張降伏強度及び引張弾性率の向上率が大きく、好ましい。
【0087】
異形断面チョップドストランド及びガラス繊維をそれぞれ使用した比較例2及び3は、引張降伏強度及び引張弾性率の向上の点で優れるものの、引張降伏伸びの低下が著しく、樹脂本来の柔軟性が失われていた。平均粒径13μmのタルクを使用した比較例4は、引張降伏伸び減少率は0%であるものの、引張弾性率の向上率が小さい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明のポリアミドエラストマー樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、回転成形等による各種成形品の製造に用いることができる。