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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149782
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20220929BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220929BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220929BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/81
A61K8/73
A61Q5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052084
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西垣 祥子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD281
4C083AD282
4C083BB04
4C083BB13
4C083BB32
4C083BB33
4C083CC33
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE28
(57)【要約】
【課題】本発明は、カチオン性界面活性剤を配合しない場合でも、毛髪に柔らかさを付与でき、かつ、まとまり、しっとり感、指通り、および滑らかさにも優れる毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の毛髪化粧料は、アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)0.5~50質量%と、炭素数10~28の高級アルコール(B)0.3~30質量%と、アニオン性増粘剤、ノニオン性増粘剤、およびノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤(C)0.03~10質量%と、水(D)とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)0.5~50質量%と、炭素数10~28の高級アルコール(B)0.3~30質量%と、アニオン性増粘剤、ノニオン性増粘剤、およびノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤(C)0.03~10質量%と、水(D)とを含む、毛髪化粧料。
【請求項2】
ダイマージリノール酸エステル(E)0.5~20質量%をさらに含む、請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
25℃で液状の油(F)0.5~20質量%をさらに含む、請求項1または2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)が、炭酸ジカプリリルおよび炭酸ジエチルへキシルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
前記炭素数10~28の高級アルコール(B)が、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、およびセタノールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
前記乳化剤(C)が、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、およびステアリン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
洗い流さないトリートメントである、請求項1~6のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
洗い流さないヘアトリートメントの1つとして、ヘアミルクが広く使用されている。ヘアミルクは、毛髪のダメージケアを目的として、毛髪にツヤ、まとまり、しっとり感、柔らかさを付与する目的で使用される場合が多い。近年は、毛髪にも肌にも使用可能な毛髪化粧料が好まれる傾向があり、ヘアミルクについても、毛髪への使用だけでなく、肌にも使用できるような製品が求められている。
【0003】
ヘアミルクは乳化物であることから、一般的に、界面活性剤が配合されている。ヘアミルクに配合される界面活性剤は、毛髪に柔らかさを付与するために、従来からカチオン性界面活性剤が用いられてきた。しかし、カチオン性界面活性剤は皮膚への刺激があり、肌のぬるつきも生じることが問題となっていた。特に、皮膚への刺激については、緩和するための検討が行われてきた。(特許文献1)。
【0004】
また、カチオン性界面活性剤を配合しないヘアミルクの検討も行われてきた(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-132625号公報
【特許文献2】特開2004-67651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、カチオン性界面活性剤が配合されているため、低刺激性ではあるものの、皮膚への刺激が懸念され、満足な品質ではなかった。特許文献2の技術では、カチオン性界面活性剤が配合されていないため、皮膚への刺激は抑えられていたが、毛髪の柔らかさが満足な品質ではなかった。
【0007】
このようなことから、本発明は、カチオン性界面活性剤を配合しない場合でも、毛髪に柔らかさを付与でき、かつ、まとまり、しっとり感、指通り、および滑らかさにも優れる毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する毛髪化粧料は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば、以下の[1]~[7]である。
【0009】
[1]アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)0.5~50質量%と、炭素数10~28の高級アルコール(B)0.3~30質量%と、アニオン性増粘剤、ノニオン性増粘剤、およびノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤(C)0.03~10質量%と、水(D)とを含む、毛髪化粧料。
[2]ダイマージリノール酸エステル(E)0.5~20質量%をさらに含む、[1]に記載の毛髪化粧料。
[3]25℃で液状の油(F)0.5~20質量%をさらに含む、[1]または[2]に記載の毛髪化粧料。
[4]前記アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)が、炭酸ジカプリリルおよび炭酸ジエチルへキシルからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[5]前記炭素数10~28の高級アルコール(B)が、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、およびセタノールからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[6]前記乳化剤(C)が、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、およびステアリン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
[7]洗い流さないトリートメントである、[1]~[6]のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カチオン性界面活性剤を配合しない場合でも、毛髪に柔らかさを付与でき、かつ、まとまり、しっとり感、指通り、および滑らかさにも優れる毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の毛髪化粧料について具体的に説明する。
<毛髪化粧料>
本発明の毛髪化粧料は、アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)0.5~50質量%と、炭素数10~28の高級アルコール(B)0.3~30質量%と、アニオン性増粘剤、ノニオン性増粘剤、およびノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤(C)0.03~10質量%と、水(D)とを含む。
【0012】
<アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)>
本発明の毛髪化粧料は、アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)(以下、単に「成分(A)」とも記す。)を0.5~50質量%、好ましくは1~30質量%、より好ましくは2~20質量%含む。
【0013】
成分(A)が前記範囲内にあると、毛髪に柔らかさと滑らかさを付与することができる。また、成分(A)が前記範囲内にあると、毛髪の柔らかさとしっとり感とを両立させることができる。
【0014】
成分(A)が前記下限量より少ないと、柔らかさと滑らかさが悪くなってしまう場合がある。また、成分(A)が前記上限量より多いと、製剤の安定性が悪く、製造直後に分離したり、凝集物が発生する場合がある。
【0015】
成分(A)としては、例えば、炭酸ジカプリリル、炭酸ジエチルへキシルが挙げられる。成分(A)が炭酸ジカプリリルおよび炭酸ジエチルへキシルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、柔らかさおよび滑らかさに優れることから、炭酸ジカプリリルがより好ましい。
【0016】
成分(A)は炭酸ジアルキルの炭素数が8であるため、毛髪に柔らかさと滑らかさを付与することができる。炭酸ジアルキルの炭素数が8より大きい炭酸ジアルキルでは、毛髪の柔らかさと滑らかさが悪くなる場合がある。
成分(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0017】
<炭素数10~28の高級アルコール(B)>
本発明の毛髪化粧料は、炭素数10~28の高級アルコール(B)(以下、単に「成分(B)」とも記す。)を0.3~30質量%、好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~15質量%含む。
【0018】
成分(B)が前記範囲内にあると、毛髪への塗布に適した粘度となる。また、成分(B)が前記範囲内にあると、しっとり感や毛先のまとまりに優れる。
【0019】
成分(B)が前記下限量より少ないと、しっとり感や毛先のまとまりが悪くなってしまう場合がある。また、成分(B)が前記上限量より多いと、製剤の安定性が悪く、製造直後に分離したり、凝集物が発生する場合がある。
【0020】
成分(B)としては、例えば、炭素数10~28の直鎖又は分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有する1価の高級アルコールが挙げられる。
成分(B)としては、炭素数が、12~18であることが好ましく、14であることがより好ましい。
【0021】
成分(B)は、飽和高級アルコールであっても、不飽和高級アルコールであってもよいが、製剤安定性の効果に優れることから、飽和高級アルコールが好ましい。
成分(B)として、具体的には、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、2-オクチルドデカノールが挙げられる。
【0022】
これらの中でも、成分(B)が、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、およびセタノールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、柔らかさとしっとり感との両立に優れることから、成分(B)がミリスチルアルコールであることがより好ましい。
成分(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
<乳化剤(C)>
本発明の毛髪化粧料は、アニオン性増粘剤、ノニオン性増粘剤、およびノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の乳化剤(C)(以下、単に「成分(C)」とも記す。)を0.03~10質量%、好ましくは0.05~5.0質量%、より好ましくは0.1~3.0質量%含む。
【0024】
成分(C)が前記範囲内にあると、製剤安定性、特に乳化力に優れ、毛髪の柔らかさも付与できる。
成分(C)が前記下限量より少ないと、製剤の安定性が悪く、製造直後に分離したり、凝集物が発生する場合がある。また、成分(C)が前記上限量より多いと、べたつきや硬さが生じる場合がある。
【0025】
成分(C)において、アニオン性増粘剤としては、例えば、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10-30))コポリマー、(アクリレーツ/イタコン酸ステアレス-20)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウムが挙げられる。
【0026】
ノニオン性増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(ベヘン酸/エイコ二酸)グリセリルジェランガム、タマリンドガムが挙げられる。
【0027】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸グリセリル、高級脂肪酸グリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイドが挙げられる。
【0028】
これらの中でも、成分(C)が、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、およびステアリン酸グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、乳化力と毛髪の柔らかさに優れることから、成分(C)が(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマーであることがより好ましい。
成分(C)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0029】
<水(D)>
本発明の毛髪化粧料は、水(D)を含む。本発明の毛髪化粧料は、水(D)を好ましくは15~98質量%、より好ましくは20~95質量%、さらに好ましくは30~85質量%含む。
【0030】
水(D)が前記範囲内にあると、製剤の伸びに優れ、毛髪のしっとり感にも優れるため好ましい。
水(D)として、具体的には、水道水、イオン交換水、精製水、天然水、および蒸留水が挙げられ、イオン交換水が好ましい。
【0031】
<ダイマージリノール酸エステル(E)>
本発明の毛髪化粧料は、ダイマージリノール酸エステル(E)(以下、単に「成分(E)」とも記す。)を好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは2~10質量%含む。
【0032】
成分(E)が前記範囲内にあると、滑らかさと指通りに優れるため好ましい。
成分(E)としては、例えば、ダイマージリノール酸とアルコール、アルコール混合物、またはダイマージオールとのエステルが挙げられる。
【0033】
成分(E)として、具体的には、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)が挙げられる。これらの中でも、毛先のまとまり、および指通りの持続性に特に優れることから、成分(E)がダイマージリノール酸ダイマージリノレイルであることがより好ましい。
成分(E)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
<25℃で液状の油(F)>
本発明の毛髪化粧料は、25℃で液状の油(F)(以下、単に「成分(F)」とも記す。)を好ましくは0.5~20質量%、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは2~10質量%含む。
【0035】
成分(F)が前記範囲内にあると、毛髪がべたつかずに、毛先のまとまりやしっとり感を付与できるため好ましい。
成分(F)としては、例えば、炭化水素類、植物油類、エステル油類、脂肪酸類、シリコーン油類等が挙げられる。
【0036】
具体的に、炭化水素類としては、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテンが挙げられる。
植物油類としては、植物性スクワラン、アーモンド油、マカダミアナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、ユチャ油、アンズ核油、ホホバ種子油が挙げられる。
【0037】
エステル油類としては、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸エチルへキシル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソステアリル、エチルヘキサン酸アルキル(C14-18)、コハク酸ジエチルへキシル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、オクタン酸セチル、イソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコールが挙げられる。
【0038】
脂肪酸類としては、イソステアリン酸、オレイン酸が挙げられる。
シリコーン類としては、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサンが挙げられる。
【0039】
しっとり感および毛先のまとまりの持続性を付与したい場合には、成分(F)が植物油類であることがより好ましく、植物油類の中でも、成分(F)が、植物性スクワラン、アーモンド油、マカダミアナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、コメヌカ油、ユチャ油、アンズ核油、ホホバ種子油からなる群より選択される少なくとも1種であることがさらに好ましく、柔らかさとしっとり感との両立にも優れることから、アーモンド油であることが最も好ましい。
【0040】
しっとり感および柔らかさの持続性を付与したい場合には、成分(F)がエステル油類であることがより好ましく、エステル油類の中でも、成分(F)が、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸エチルへキシル、イソノナン酸イソノニル、イソステアリン酸イソステアリル、エチルヘキサン酸アルキル(C14-18)、コハク酸ジエチルへキシルであることがさらに好ましく、柔らかさと滑らかさにも優れることから、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルであることが最も好ましい。
【0041】
指通りおよびその持続性と、滑らかさとを付与したい場合には、成分(F)がシリコーン油類であることがより好ましく、シリコーン油類の中でも、成分(F)が、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、ジメチコノール、アミノ変性シリコーンであることがさらに好ましく、指通りおよびまとまりにも優れることから、高重合メチルポリシロキサンであることが最も好ましい。
成分(F)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0042】
<その他成分>
本発明の毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、保湿剤、生薬類、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、および色素等の添加剤を含有することができる。
【0043】
本発明の毛髪化粧料は、カチオン性界面活性剤を実質的に含まないことが好ましい。カチオン性界面活性剤を実質的に含まないとは、各成分の不純物として存在するカチオン性界面活性剤については毛髪化粧料に含まれていてもよいが、通常カチオン性界面活性剤を意図的に添加しないことを意味する。カチオン性界面活性剤を実質的に含まないとは、具体的には、本発明の毛髪化粧料中のカチオン性界面活性剤の含有量が、通常は0~1.5質量%、好ましくは、0~0.5質量%、より好ましくは、0~0.1質量%であることを意味する。
【0044】
<毛髪化粧料の製造等>
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を均一に混合するために、加熱条件下で行ってもよい。加熱条件下で製造する場合の温度としては、例えば75~85℃が挙げられる。
【0045】
本発明の毛髪化粧料は、上述した各成分を上述の配合量で混合することにより製造することができる。
【0046】
〔剤型〕
本発明の毛髪化粧料の剤型は、乳液状であることが好ましく、ヘアミルクであることがより好ましい。
【0047】
本発明の毛髪化粧料の外観は、例えば、透明または不透明な外観が挙げられるが、不透明な乳化状態であることが好ましい。乳化状態としては、W/O型、O/W型でもよく、マルチプルエマルションであってもよいが、毛髪に均一に塗布しやすいことから、O/W型が好ましい。
【0048】
本発明の毛髪化粧料は、噴射剤とともに用いることによりスプレー用組成物として用いることもできる。
【0049】
〔用途〕
本発明の毛髪化粧料は、洗い流さないトリートメントであることが好ましい。
本発明の毛髪化粧料は、タオルドライ後の濡れた毛髪や、乾いた毛髪等に塗布して使用することができる。
本発明の毛髪化粧料は、毛髪の潤いが増すことから、タオルドライ後の濡れた毛髪に塗布して使用することが好ましい。
【実施例0050】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0051】
〔実施例1~91、比較例1~19〕
実施例、および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0052】
【表1】
【0053】
表3~9の処方の数値は、毛髪化粧料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
表3~9に示す処方で各成分を混合することにより毛髪化粧料を製造し、試料として以下の方法で評価した。
【0054】
〔評価方法〕
(1)~(13)の評価項目のうち、(1)および(2)では、試料の物性について評価を行った。(2)~(13)では、専門パネラー(美容師)10名が1人ずつ、項目ごとの評価基準に従って官能評価を行った。(3)~(13)では、あらかじめ一般人の毛髪の痛みを再現するために以下のダメージ処理をした毛束を用いて評価を行った。
【0055】
(ダメージ処理)
毛束(約30cm、10gの人毛)(製品名BS-B3A、ビューラックス社製)を、表2に記載の配合割合で調製したダメージ処理用水溶液に60℃で、10分間浸漬して、ダメージを与えた。その後ダメージ処理用水溶液から毛束を取り出して水洗し、乾燥させた。
【0056】
【表2】
【0057】
ダメージ処理した毛束をシェルパデザインサプリD-1シャンプー(株式会社アリミノ製)1gを用いて洗浄、水洗した。
次に、シェルパデザインサプリD-1トリートメント(株式会社アリミノ製)1gをなじませた後、よく水洗し、軽く水気を切ってからタオルドライを行った。
【0058】
タオルドライを行った後、毛束に試料0.5gを塗布して(3)および(4)の評価を行った。その後、ドライヤーで乾燥させた後(5)~(13)の評価を行った。
各項目につき10名の評価点の平均を算出し、以下のとおり評価した。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が3.5点以上である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均が1.5点未満である。
【0059】
〔評価項目および評価基準〕
(1)製剤安定性
試料を100mL容量のPET容器に90g充填した後、45℃、25℃のそれぞれの温度で30日間保存した。保存後の試料の乳化状態について目視で確認し、評価した。
◎:45℃で30日間保存後、分離や凝集がない。
〇:25℃で30日間保存後、分離や凝集がない。
△:25℃で30日間保存後、分離や凝集がある。
×:製造直後に分離する、凝集物がある。
【0060】
(2)剤の伸び
試料0.5gを手のひらにとり、手のひらに広げる際の伸びやすさを触感で評価した。
4点:非常に伸びが良い
3点:伸びが良い
2点:やや伸びが悪い
1点:非常に伸びが悪く広がりにくい
【0061】
(3)塗布時の毛髪へのなじみ
タオルドライ後の毛束に試料を塗布したときの毛髪へのなじみやすさについて、触感で評価した。
4点:非常になじみやすい
3点:ややなじみやすい
2点:なじみにくい
1点:非常になじみにくい
【0062】
(4)塗布後の手のぬるつき
毛束に試料を塗布した後の手のぬるつきについて、触感で評価した。
4点:全くぬるつかない
3点:ほとんどぬるつかない
2点:ややぬるつく
1点:ぬるつきがある
【0063】
(5)毛髪のべたつき
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の毛髪表面のべたつきについて、触感で評価した。
4点:全くべたつかない
3点:ほとんどべたつかない
2点:ややべたつく
1点:非常にべたつく
【0064】
(6)毛髪の柔らかさ
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の毛髪の柔らかさについて、触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬い
1点:非常に硬い
【0065】
(7)毛髪の滑らかさ
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の毛髪の滑らかさについて、触感で評価した。
4点:非常に滑らかである
3点:滑らかである
2点:やや滑らかではない
1点:滑らかではない
【0066】
(8)指通り
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の毛髪の指通りについて、触感で評価した。
4点:非常に指通りが良い
3点:指通りが良い
2点:やや指通りが悪い
1点:指通りが悪い
【0067】
(9)毛先のまとまり
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の毛先のまとまりについて、触感と目視で評価した。
4点:非常にまとまりが良い
3点:まとまりが良い
2点:ややまとまらない
1点:全くまとまらない
【0068】
(10)毛髪のしっとり感
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後の毛髪のしっとり感について、触感で評価した。
4点:非常にしっとりしている
3点:しっとりしている
2点:ややしっとりしていない
1点:全くしっとりしていない
【0069】
(11)毛髪の柔らかさの持続性
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後、25℃、湿度50%の状態で5時間放置した。放置後の毛髪の柔らかさについて、触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:硬い
1点:非常に硬い
【0070】
(12)指通りの持続性
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後、25℃、湿度50%の状態で5時間放置した。放置後の毛髪の指通りについて、触感で評価した。
4点:非常に指通りが良い
3点:指通りが良い
2点:やや指通りが悪い
1点:指通りが悪い
【0071】
(13)毛先のまとまりの持続性
毛束に試料を塗布し、ドライヤーで乾燥させた後、25℃、湿度50%の状態で5時間放置した。放置後の毛先のまとまりについて、触感と目視で評価した。
4点:非常にまとまりが良い
3点:まとまりが良い
2点:ややまとまらない
1点:全くまとまらない
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
【表6】
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
【表9】
【0079】
実施例1~91で製造した毛髪化粧料は、(1)~(13)の評価項目において良好な結果となった。実施例91は、特に良好な結果となった。
本発明の毛髪化粧料は、カチオン性界面活性剤を配合しない場合でも、毛髪に柔らかさを付与でき、かつ、まとまり、しっとり感、指通り、および滑らかさにも優れる毛髪化粧料であることがわかる。
【0080】
比較例1および3で製造した毛髪化粧料は、アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)が規定量より少ないため、毛髪の柔らかさ、まとまり、しっとり感、および滑らかさが悪かった。
【0081】
比較例2および4で製造した毛髪化粧料は、アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキル(A)が規定量より多いため、製造直後に分離してしまい、製剤安定性が悪かった。
比較例5で製造した毛髪化粧料は、アルキル基の炭素数が8である炭酸ジアルキルが配合されていないため、毛髪の柔らかさ、滑らかさ、べたつき、および指通りが悪かった。
【0082】
比較例6、8、および10で製造した毛髪化粧料は、炭素数10~28の高級アルコール(B)が規定量より少ないため、毛髪の柔らかさ、まとまり、しっとり感、および滑らかさが悪かった。
【0083】
比較例7、9、および11で製造した毛髪化粧料は、炭素数10~28の高級アルコール(B)が規定量より多いため、各成分を均一に混合できず、製剤安定性が悪かった。
比較例12、14、16、および18で製造した毛髪化粧料は、乳化剤(C)が規定量より少ないため、製造直後に分離してしまい、製剤安定性が悪かった。
【0084】
比較例13、15、17および19で製造した毛髪化粧料は、乳化剤(C)が規定量より多いため、毛髪の柔らかさ、滑らかさ、べたつき、指通りおよびしっとり感が悪かった。