IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ・デュポン株式会社の特許一覧 ▶ 東亞合成株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-カバーレイフィルム 図1
  • 特開-カバーレイフィルム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149801
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】カバーレイフィルム
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H05K3/28 B
H05K3/28 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052110
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】内山 まい
(72)【発明者】
【氏名】沖村 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
(72)【発明者】
【氏名】奥井 雅一
【テーマコード(参考)】
5E314
【Fターム(参考)】
5E314AA24
5E314AA36
5E314BB02
5E314CC15
5E314DD07
5E314FF06
5E314GG17
(57)【要約】
【課題】新規なカバーレイフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】カバーレイフィルムを、ポリイミドフィルム及び接着剤層で形成されたエッチング用カバーレイフィルムであって、接着剤層がエッチング可能であり、接着剤がエポキシ樹脂を含むものとする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドフィルム及び接着剤層で形成されたエッチング用カバーレイフィルムであって、接着剤層がエッチング可能であり、接着剤がエポキシ樹脂を含むカバーレイフィルム。
【請求項2】
カバーレイフィルムと金属積層板を含むフレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイフィルムであって、
カバーレイフィルムがポリイミドフィルム及び接着剤層で形成され、接着剤層を形成する接着剤がエポキシ樹脂を含み、
カバーレイフィルムがエッチングされており、接着剤層のサイドエッチング量がエッチング幅に対して30%以下であるカバーレイフィルム。
【請求項3】
接着剤層を形成する接着剤がナイロン樹脂を含む請求項1又は2記載のカバーレイフィルム。
【請求項4】
ナイロン樹脂の含有量が、接着剤100質量部に対して15~95質量部である請求項3記載のカバーレイフィルム。
【請求項5】
接着剤層の厚みが5~30μmである請求項1~4のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
【請求項6】
ポリイミドフィルムの厚みが5~40μmである請求項1~5のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
【請求項7】
ポリイミドフィルムが、パラフェニレンジアミン及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを含む芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む芳香族酸無水物成分とを原料に含み、パラフェニレンジアミンと4,4’-ジアミノジフェニルエーテルのモル比が45/55~1/99であり、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル比が95/5~50/50である請求項1~6のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
【請求項8】
ウェットエッチング用である請求項1~7のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載のカバーレイフィルムを用いたフレキシブルプリント配線板。
【請求項10】
フレキシブルプリント配線板の開口部に対する接着剤層のサイドエッチング量が30%以下である請求項9記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項11】
フレキシブルプリント配線板の開口部に対するポリイミドフィルムのサイドエッチング量が30%以下である請求項9又は10記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項12】
請求項1~8のいずれかに記載のカバーレイフィルムを金属積層板に貼り合わせる工程、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムをエッチングする工程、及び、カバーレイフィルムの接着剤層をエッチングする工程を含むフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング等に有用なカバーレイフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
銅張積層板等の金属積層板の表面を、カバーレイフィルムで保護することにより、フレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」ともいう)が形成される。カバーレイフィルムは、通常、ポリイミドフィルム等の絶縁層と接着剤層で形成されており、接着剤層を介して金属積層板を被覆する。
【0003】
被覆方法としては、従来、金型等を用いた機械的加工によって開口部を設けたカバーレイフィルムを、金属積層板の回路面と位置合わせした後、加熱加圧によって貼り合わせる方法が使用されてきた。
しかしながら、このような方法では、小さな開口部(例えば、孔径1000μm未満の開口部等)を形成できない等の問題があった。
【0004】
このような中、他の被覆方法として、エッチングを用いた方法が検討されている。
例えば、特許文献1には、ポリイミドエッチング剤でエッチング可能な接着剤がポリイミドフィルムに塗布されたカバーレイフィルムを、銅張積層板に貼り合わせた後、カバーレイフィルムに所望のパターンのレジスト層を形成し、ポリイミドエッチング剤でカバーレイフィルムをエッチング除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平5-62836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新規なカバーレイフィルムを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、効率よくエッチングしうるカバーレイフィルムを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、接着剤層のサイドエッチング量を少なくしうるカバーレイフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
カバーレイフィルムのエッチングを行う場合、接着剤層のエッチングが難しい場合があり、その中でも、エポキシ系接着剤を使用した場合はその傾向が顕著に見られた。
特に、ポリイミドフィルムとエポキシ系接着剤層で形成されたカバーレイフィルムにおいては、ポリイミドフィルムのエッチングは実施できても、接着剤層のエッチングが実施できない場合があった。また、エポキシ系接着剤層のエッチングが実施できる場合でも、ポリイミドフィルムと接着剤層の界面までエッチング液やエッチングガスが入り込んでしまうため、目的とするエッチング箇所よりも大きくエッチングされるサイドエッチング部分が大きくなってしまう問題があった。一方、ポリイミドフィルムとエポキシ系接着剤層間の密着性を向上させようとすると、接着剤層のエッチングが難しくなってしまうという問題があった。このように、ポリイミドフィルムを用いたカバーレイフィルムにおいて、接着剤層のエッチングと、接着剤層のサイドエッチング量を少なくすることは、両立が難しかった。
また、カバーレイフィルムには、接着剤層と金属積層板間の接着力も求められるが、接着剤層のエッチングと、当該接着力の両立も難しかった。
【0010】
このような中、本発明者らは、特定の成分を含むエポキシ系接着剤をポリイミドフィルムに塗布したカバーレイフィルムは、接着剤層を効率よくエッチングできるのみならず、接着剤層のサイドエッチング量も少なくしうること等を見出した。また、本発明者らは、このようなカバーレイフィルムは、従来のカバーレイフィルムと同程度の接着力で、接着剤層と金属積層板を接着しうること等を見出した。本発明者らはさらに研究を進め、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、以下のカバーレイフィルム等に関する。
[1]
ポリイミドフィルム及び接着剤層で形成されたエッチング用カバーレイフィルムであって、接着剤層がエッチング可能であり、接着剤がエポキシ樹脂を含むカバーレイフィルム。
[2]
カバーレイフィルムと金属積層板を含むフレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイフィルムであって、
カバーレイフィルムがポリイミドフィルム及び接着剤層で形成され、接着剤層を形成する接着剤がエポキシ樹脂を含み、
カバーレイフィルムがエッチングされており、接着剤層のサイドエッチング量がエッチング幅に対して30%以下であるカバーレイフィルム。
[3]
接着剤層を形成する接着剤がナイロン樹脂を含む[1]又は[2]記載のカバーレイフィルム。
[4]
ナイロン樹脂の含有量が、接着剤100質量部に対して15~95質量部である[3]記載のカバーレイフィルム。
[5]
接着剤層の厚みが5~30μmである[1]~[4]のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
[6]
ポリイミドフィルムの厚みが5~40μmである[1]~[5]のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
[7]
ポリイミドフィルムが、パラフェニレンジアミン及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを含む芳香族ジアミン成分と、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む芳香族酸無水物成分とを原料に含み、パラフェニレンジアミンと4,4’-ジアミノジフェニルエーテルのモル比が45/55~1/99であり、ピロメリット酸二無水物と3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル比が95/5~50/50である[1]~[6]のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
[8]
ウェットエッチング用である[1]~[7]のいずれかに記載のカバーレイフィルム。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載のカバーレイフィルムを用いたフレキシブルプリント配線板。
[10]
フレキシブルプリント配線板の開口部に対する接着剤層のサイドエッチング量が30%以下である[9]記載のフレキシブルプリント配線板。
[11]
フレキシブルプリント配線板の開口部に対するポリイミドフィルムのサイドエッチング量が30%以下である[9]又は[10]記載のフレキシブルプリント配線板。
[12]
[1]~[8]のいずれかに記載のカバーレイフィルムを金属積層板に貼り合わせる工程、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムをエッチングする工程、及び、カバーレイフィルムの接着剤層をエッチングする工程を含むフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新規なカバーレイフィルムを提供できる。
【0013】
本発明の他の態様によれば、効率よくエッチング可能なカバーレイフィルムを提供しうる。
【0014】
本発明の他の態様によれば、接着剤層を効率よくエッチング可能なカバーレイフィルムを提供しうる。このようなカバーレイフィルムによれば、接着剤層のサイドエッチング量(又は、サイドエッチング幅)を少なくしうる。
【0015】
本発明の他の態様によれば、ポリイミドフィルムを効率よくエッチング可能なカバーレイフィルムを提供しうる。このようなカバーレイフィルムによれば、ポリイミドフィルムのサイドエッチング量を少なくしうる。
【0016】
本発明の他の態様によれば、従来のカバーレイフィルムと同程度の接着力で金属積層板と接着しうるカバーレイフィルムを提供しうる。
【0017】
本発明の他の態様によれば、カバーレイフィルムをエッチングできるため、小さな開口部(例えば、1000μm未満の孔径の開口部等)が形成されたフレキシブルプリント配線板を製造しうる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例の接着剤層エッチング後の試料の穴部分を、カバーレイフィルム側の上面から見た図である。
図2図1のX-X矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のカバーレイフィルムは、ポリイミドフィルム及び接着剤層で形成されて(又は、ポリイミドフィルムに接着剤層が積層されて)いる。このようなカバーレイフィルムは、通常、ポリイミドフィルムの片面に接着剤層を有する。
本発明のカバーレイフィルムにおいて、接着剤層を形成する接着剤は、通常、エポキシ樹脂を含む。
【0020】
[ポリイミドフィルム]
ポリイミドフィルムは、通常、芳香族ジアミン成分と芳香族酸無水物成分を原料に含有する。
【0021】
芳香族ジアミン成分は、例えば、パラフェニレンジアミン及び/又は4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを少なくとも含んでいればよい。
芳香族ジアミン成分がパラフェニレンジアミン及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを含む場合、カバーレイフィルムを効率よくエッチングしやすい等の観点から、パラフェニレンジアミンと4,4’-ジアミノジフェニルエーテルのモル比は、例えば、50/50~1/99(例えば、45/55~1/99)、好ましくは40/60~1/99(例えば、35/65~3/97)程度であってよい。
【0022】
芳香族酸無水物成分は、例えば、ピロメリット酸二無水物及び/又は3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を少なくとも含んでいればよい。
芳香族酸無水物成分がピロメリット酸二無水物及び3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含む場合、カバーレイフィルムを効率よくエッチングしやすい等の観点から、ピロメリット酸二無水物と3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物のモル比は、例えば、99/1~40/60(例えば、97/3~45/55)、好ましくは96/4~50/50(例えば、95/5~60/40)程度であってよい。
【0023】
芳香族ジアミン成分としては、パラフェニレンジアミン及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテル以外の他の芳香族ジアミン成分を含んでいてもよい。
他の芳香族ジアミン成分としては、3,3'-ジアミノジフェニルエーテル、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルプロパン(例えば、4,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,4'-ジアミノジフェニルプロパン、3,3'-ジアミノジフェニルプロパンなど)、ジアミノジフェニルメタン(例えば、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,4'-ジアミノジフェニルメタン、3,3'-ジアミノジフェニルメタンなど)、ベンジジン、ジアミノジフェニルサルファイド(例えば、4,4'-ジアミノジフェニルサルファイド、3,4'-ジアミノジフェニルサルファイド、3,3'-ジアミノジフェニルサルファイドなど)、ジアミノジフェニルスルホン(例えば、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,4'-ジアミノジフェニルスルホン、3,3'-ジアミノジフェニルスルホンなど)、2,6-ジアミノピリジン、ビス-(4-アミノフェニル)ジエチルシラン、3,3'-ジクロロベンジジン、ビス-(4-アミノフェニル)エチルホスフィノキサイド、ビス-(4-アミノフェニル)フェニルホスフィノキサイド、ビス-(4-アミノフェニル)-N-フェニルアミン、ビス-(4-アミノフェニル)-N-メチルアミン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル、3,4'-ジメチル-3',4-ジアミノビフェニル、3,3'-ジメトキシベンジジン、2,4-ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-アミノ-t-ブチルフェニル)エーテル、p-ビス(2-メチル-4-アミノペンチル)ベンゼン、p-ビス-(1,1-ジメチル-5-アミノペンチル)ベンゼン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N-(3-アミノフェニル)-4-アミノベンズアミド、4-アミノフェニル-3-アミノベンゾエート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0024】
ポリイミドフィルムの原料成分としては、本発明の効果を妨げない範囲で、上記芳香族ジアミン成分以外の他のジアミン成分を含んでもよい。
他のジアミン成分としては、例えば、ジアミノアダマンタン類(例えば、1,3-ジアミノアダマンタン、3,3'-ジアミノ-1,1'-ジアミノアダマンタン、3,3'-ジアミノメチル-1,1'-ジアダマンタンなど)、ジアミノアルカン類(例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4'-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11-ジアミノドデカン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、3-メトキシヘキサエチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,12-ジアミノオクタデカンなど)、1,2-ビス(3-アミノプロポキシ)エタン、2,5-ジアミノ-1,3,4-オキサジアゾール、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、N-(3-アミノフェニル)-4-アミノベンズアミド、4-アミノフェニル-3-アミノベンゾエート等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0025】
芳香族酸無水物成分としては、ピロメリット酸二無水物及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外の他の芳香族酸無水物成分を含んでいてもよい。
他の芳香族酸無水物成分としては、例えば、2,3',3,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンジカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(例えば、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-デカヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,5,6-ヘキサヒドロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロ-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロ-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロ-1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物)、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、3,4,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0026】
特に好ましい芳香族ジアミン成分と芳香族酸無水物成分の組み合わせとしては、接着剤層のエッチングを経ても接着剤層との密着性を保持しやすい等の観点から、例えば、芳香族ジアミン成分としてパラフェニレンジアミンと4,4’-ジアミノジフェニルエーテルをモル比50/50~1/99(好ましくは、45/55~1/99)で含み、芳香族酸無水物成分としてピロメリット酸二無水物と3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をモル比99/1~40/60(好ましくは、95/5~50/50)で含む組み合わせ等である。
【0027】
[無機粒子]
ポリイミドフィルムは、通常、無機粒子を含む。無機粒子は、通常、ポリイミドフィルム中に分散されている。
分散に供する無機粒子としては、例えば、酸化物{例えば、SiO(シリカ)、TiO(酸化チタン(IV))等}、無機酸塩{例えば、CaHPO(リン酸水素カルシウム)、CaPO(リン酸カルシウム)、Ca(二りん酸カルシウム)等のリン酸(水素)塩、CaCO(炭酸カルシウム)等の炭酸塩}等が挙げられる。無機粒子は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0028】
分散に供する無機粒子の平均粒子径は、例えば、0.5~2.2μm、好ましくは0.5~2.0μm、より好ましくは0.5~1.9μmであってよい。尚、無機粒子の平均粒子径の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を使用してよい。
【0029】
分散に供する無機粒子の粒度分布については、狭い分布であること、つまり類似の大きさの無機粒子が全無機粒子に占める割合が高い方が良い。例えば、粒子径0.5~2.5μmの粒子が全無機粒子中80体積%以上(例えば、80~100体積%)の割合を占めていてもよい。尚、無機粒子の粒度分布の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を使用してよい。
【0030】
ポリイミドフィルムは、無機粒子以外の添加剤(例えば、顔料、艶消剤等)を含んでいてもよい。当該添加剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
顔料としては、特に限定されないが、例えば、黒色顔料{例えば、アニリンブラック、黒色の複合酸化物顔料(CICP)等}等が挙げられる。
艶消剤としては、特に限定されないが、例えば、セラミックス材料{例えば、ホウ化物、窒化物、炭化物、酸化物(例えば、アルミナ、酸化チタン、シリカ等)}等が挙げられる。
【0031】
顔料や艶消剤が粒子状の場合、分散に供する顔料粒子又は艶消剤粒子の平均粒子径は、例えば、0.5~7.0μm、好ましくは0.5~6.8μm、より好ましくは0.5~6.5μmであってよい。尚、粒子の平均粒子径の測定方法は、特に限定されず、公知の方法を使用してよい。
【0032】
顔料や艶消剤が粒子状の場合、分散に供する顔料粒子又は艶消剤粒子の粒度分布については、上述の無機粒子の粒度分布と同様であってもよい。
【0033】
ポリイミドフィルムは、粒子(例えば、無機粒子、顔料粒子、艶消剤粒子等)を含有している方が、理由は定かではないが、接着剤層との密着性を向上しやすい。ポリイミドフィルムが粒子を含有すると、ポリイミドフィルム表面に凹凸が形成されるため、接着剤が当該凹凸部分まで入り込むことで、ポリイミドフィルムと接着剤層との密着性を向上しやすいと想定される。
【0034】
[ポリイミドフィルムの製造方法]
次に、ポリイミドフィルムの製造方法について説明する。
ポリイミドフィルムを得るに際しては、まず、芳香族ジアミン成分及び芳香族酸無水物成分を含む成分を有機溶媒中で重合させることにより、ポリアミック酸溶液(以下、ポリアミド酸溶液ともいう)を得る。
【0035】
ポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒、N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン等のピロリドン系溶媒、フェノール、o-,m-,或いはp-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒、ヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。さらには、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素と組み合わせて使用してもよい。
【0036】
ポリアミック酸溶液の重合方法は公知のいずれの方法で行ってもよく、例えば、
(1)先に芳香族ジアミン成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族酸無水物成分を芳香族ジアミン成分全量と当量になるよう加えて重合する方法、
(2)先に芳香族酸無水物成分全量を溶媒中に入れ、その後芳香族ジアミン成分を芳香族酸無水物成分と当量になるよう加えて重合する方法、
(3)一方の芳香族ジアミン成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族酸無水物成分が95~105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族ジアミン成分を添加し、続いてもう一方の芳香族酸無水物成分を全芳香族ジアミン成分と全芳香族酸無水物成分とがほぼ当量になるよう添加して重合する方法、
(4)一方の芳香族酸無水物成分を溶媒中に入れた後、反応成分に対して一方の芳香族ジアミン成分が95~105モル%となる比率で反応に必要な時間混合した後、もう一方の芳香族酸無水物成分を添加し、続いてもう一方の芳香族ジアミン成分を全芳香族ジアミン成分と全芳香族酸無水物成分とがほぼ当量になるよう添加して重合する方法、
(5)溶媒中で一方の芳香族ジアミン成分と芳香族酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させてポリアミック酸溶液(A)を調整し、別の溶媒中でもう一方の芳香族ジアミン成分と芳香族酸無水物成分をどちらかが過剰になるよう反応させポリアミック酸溶液(B)を調整する。こうして得られた各ポリアミック酸溶液(A)と(B)を混合し、重合を完結する方法。この時ポリアミック酸溶液(A)を調整するに際し芳香族ジアミン成分が過剰の場合、ポリアミック酸溶液(B)では芳香族酸無水物成分を過剰に、またポリアミック酸溶液(A)で芳香族酸無水物成分が過剰の場合、ポリアミック酸溶液(B)では芳香族ジアミン成分を過剰にし、ポリアミック酸溶液(A)と(B)を混ぜ合わせこれら反応に使用される全芳香族ジアミン成分と全芳香族酸無水物成分とがほぼ当量になるよう調整する方法、等が挙げられる。
なお、重合方法はこれらに限定されることはなく、その他公知の方法を用いてもよい。
【0037】
ポリアミック酸を構成する芳香族酸無水物成分と芳香族ジアミン成分とは、それぞれのモル数が大略等しくなる割合で重合されるが、その一方が10モル%、好ましくは5モル%の範囲内で他方に対して過剰に配合されてもよい。
【0038】
重合反応は、有機溶媒中で撹拌しながら行うことが好ましい。重合温度は、特に限定されないが、通常は、反応溶液の内温0~80℃で行なわれる。重合時間は、特に限定されないが、10分~30時間連続して行うことが好ましい。重合反応は、必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもよい。両反応体の添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン成分の溶液中に芳香族酸無水物を添加することが好ましい。重合反応中に真空脱泡することは、良質なポリアミック酸の有機溶媒溶液を製造するのに有効な方法である。また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加することによって、重合反応の制御を行ってもよい。前記末端封止剤は、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0039】
こうして得られるポリアミック酸溶液は、固形分を、通常5~40重量%、好ましくは10~30重量%を含有する。また、その粘度は、特に限定されないが、ブルックフィールド粘度計による測定値が、通常10~2000Pa・sであり、安定した送液のために、好ましくは100~1000Pa・sである。尚、有機溶媒溶液中のポリアミック酸は部分的にイミド化されていてもよい。
【0040】
また、ポリアミック酸溶液は、通常、無機粒子を含有する。無機粒子を含有するポリアミック酸溶液を得るに際しては、予め重合したポリアミック酸溶液に無機粒子を添加してもよいし、無機粒子の存在下でポリアミック酸溶液を重合してもよい。
【0041】
無機粒子は、溶媒(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N、N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホオキサイド、N-メチルピロリドン等の極性溶媒等)に分散されたスラリー(無機粒子スラリー)として使用することが、凝集を防止できるため好ましい。
【0042】
無機粒子スラリーの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法に従ってよい。無機粒子スラリーの製造方法としては、例えば、ミキサーを用いて無機粒子と溶媒を混合する方法等が挙げられる。ミキサーとしては、高速ディスパー、ホモミキサー、ボールミル、コーレスミキサー、撹拌式ディスパー等の剪断力の高いものを用いることが好ましい。また、湿式粉砕処理を行い、平均粒子径を細かくしてもよい。湿式粉砕処理には、例えば、ビーズミル、サンドミル等を用いることができる。
【0043】
無機粒子スラリーとしては、無機粒子が予め溶媒中に分散された市販品を使用してもよい。また、無機粒子スラリーは、必要に応じて、他の有機溶媒や配合剤等を含んでいてもよい。
【0044】
無機粒子スラリー中の無機粒子の濃度は、特に限定されないが、例えば、1~80重量%、好ましくは1~60重量%、より好ましくは1~40重量%である。
【0045】
無機粒子の添加量は、ポリイミドを形成したときにポリイミド樹脂固形分1重量当たり、通常は0.05~0.8重量%、好ましくは0.05~0.55重量%、より好ましくは0.05~0.52重量%、特に好ましくは0.05~0.5重量%となる量であってよい。
【0046】
ポリアミック酸溶液は、顔料や艶消剤を含有していてもよい。顔料や艶消剤を含有するポリアミック酸溶液は、上述した無機粒子を含有するポリアミック酸溶液と同様にして得てもよい。なお、顔料スラリーや艶消剤スラリーは、上述した無機粒子スラリーと同様であってもよい。
【0047】
顔料の添加量は、ポリイミドを形成したときにポリイミド樹脂固形分1重量当たり、例えば、1~30重量%、好ましくは1.3~25重量%、より好ましくは1.5~24重量%となる量であってよい。
【0048】
艶消剤の添加量は、ポリイミドを形成したときにポリイミド樹脂固形分1重量当たり、例えば、0.5~15重量%、好ましくは0.6~13重量%、より好ましくは0.6~12重量%となる量であってよい。
【0049】
ポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、ポリアミック酸溶液をフィルム状にキャストし熱的に脱環化脱溶媒させてポリイミドフィルムを得る方法、ポリアミック酸溶液に環化触媒及び脱水剤を混合し化学的に脱環化させてゲルフィルムを作製し、これを加熱脱溶媒することによりポリイミドフィルムを得る方法が挙げられる。
【0050】
化学的に脱環化させる方法においては、まず上記ポリアミック酸溶液を調製する。上記ポリアミック酸溶液は、環化触媒(イミド化触媒)、脱水剤及びゲル化遅延剤等を含有することができる。
【0051】
環化触媒の具体例としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン等の脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン、イソキノリン、ピリジン、β-ピコリン等の複素環式第3級アミン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を併用できる。なかでも複素環式第3級アミンを少なくとも一種以上使用する態様が好ましい。
【0052】
脱水剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族カルボン酸無水物、無水安息香酸等の芳香族カルボン酸無水物等が挙げられるが、なかでも無水酢酸及び/又は無水安息香酸が好ましい。
【0053】
ポリアミック酸溶液からポリイミドフィルムを製造する方法としては、例えば、環化触媒及び脱水剤を含有せしめたポリアミック酸溶液をスリット付き口金等から支持体上に流延してフィルム状に成形し、支持体上でイミド化を一部進行させて自己支持性を有するゲルフィルムとした後、支持体より剥離して熱処理を行うことにより、ポリイミドフィルムを得る方法が挙げられる。
【0054】
上記ポリアミック酸溶液は、加熱された支持体上に流延され、支持体上で熱閉環反応をし、自己支持性を有するゲルフィルムとなって支持体から剥離される。
【0055】
上記支持体とは、金属製の回転ドラムやエンドレスベルトであり、その温度は液体又は気体の熱媒、及び/又は電気ヒーター等の輻射熱により制御される。
【0056】
上記ゲルフィルムは、支持体からの受熱及び/又は熱風や電気ヒーター等の熱源からの受熱により、通常30~200℃、好ましくは40~150℃に加熱されて閉環反応し、遊離した有機溶媒等の揮発分を乾燥させることにより自己支持性を有するようになり、支持体から剥離される。
【0057】
上記支持体から剥離されたゲルフィルムは、回転ロールにより走行速度を規制しながら走行方向に延伸してもよい。延伸温度は、例えば、140℃以下であってもよい。延伸倍率は、例えば1.01~1.90倍、好ましくは1.05~1.60倍、さらに好ましくは1.10~1.50倍であってもよい。走行方向に延伸されたゲルフィルムを、テンター装置に導入し、テンタークリップによって幅方向両端部を把持し、テンタークリップと共に走行させながら、幅方法へ延伸してもよい。
【0058】
上記の延伸されたゲルフィルムは、風、赤外ヒーター等で15秒から30分加熱してもよい。次いで、熱風及び/又は電気ヒーター等により、例えば、250~550℃の温度で15秒~30分熱処理を行ってもよい。
【0059】
ポリイミドフィルムの厚みは、走行速度を調整することによって調整してもよい。
【0060】
このようにして得られたポリイミドフィルムに対して、さらにアニール処理を行ってもよい。アニール処理の方法は、特に限定されず、常法に従ってよい。アニール処理の温度は、特に限定されないが、例えば200~500℃、好ましくは200~370℃、より好ましくは210~350℃であってもよい。具体的には、前記温度範囲に加熱された炉の中を、低張力下にてフィルムを走行させ、アニール処理を行ってもよい。走行時のフィルム張力は、例えば10~50N/m、より好ましくは20~30N/mであってもよい。
【0061】
上記のようにして得られたポリイミドフィルムの厚さ(平均厚さ)は、例えば、1~150μm(例えば、1~125μm)、好ましくは3~100μm(例えば、3~80μm)、より好ましくは5~80μm(例えば、7~50μm、10~40μm、5~40μm等)程度であってよい。
【0062】
[接着剤層]
接着剤層を形成する接着剤は、通常、接着成分を含む。
接着成分は、通常、エポキシ樹脂を含んでいてよい。
また、接着剤層は、エッチング可能な層であってよい。エッチングは、ドライエッチング、ウェットエッチング等であってよく、好適にはウェットエッチングであってよい。
【0063】
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、汎用のエポキシ樹脂を使用してよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は、変性されたものであってもよい。エポキシ樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。なお、エポキシ樹脂は、固体であってもよく、液体であってもよい。
【0064】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、例えば、500g/当量以下、好ましくは400g/当量以下、より好ましくは300g/当量以下程度であってもよい。
【0065】
接着成分は、エッチングを効率よく行いうる(特に、接着剤がエッチング可能な接着剤層を効率よく形成しうる)ことや、エッチングの行いやすさと接着能力とのバランス等の観点から、ポリアミド樹脂を含んでいてよい。
接着成分がポリアミド樹脂を含むことによってエッチングを効率よく行いうる理由は、定かではないが、特に、接着剤層のエッチング(特に、後述するウェットエッチング)においては、ポリアミド樹脂のアミド基が、接着剤層のエッチング液によって加水分解され、エッチングが進行しやすいためと推測される。
【0066】
ポリアミド樹脂は、例えば、ジアミンとジカルボン酸の縮合重合体、環状アミド化合物の開環重合体、アミノ酸の縮合重合体等であってよい。ポリアミド樹脂は、脂肪族骨格及び芳香族骨格のいずれかを含んでいてもよいし、両方を含んでいてもよい。ポリアミド樹脂は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。ポリアミド樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を使用してよい。
【0067】
ジアミンとしては、例えば、脂肪族ジアミン[例えば、直鎖又は分岐鎖の脂肪族ジアミン(例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、ノナンジアミン等)、脂環式ジアミン(例えば、イソホロンジアミン等)]、芳香族ジアミン(例えば、キシレンジアミン、ピペラジン等)等が挙げられる。ジアミンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0068】
ジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデカン酸、ドデカン二酸、ダイマ酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸等)等が挙げられる。ジカルボン酸は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0069】
環状アミド化合物としては、例えば、β-ラクタム、ε-カプロラクタム、ラウリンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。環状アミド化合物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0070】
アミノ酸としては、例えば、脂肪族アミノ酸[例えば、直鎖又は分岐鎖の脂肪族アミノ酸(例えば、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等)、脂環族アミノ酸(例えば、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等)]、芳香族アミノ酸(例えば、4-アミノメチル安息香酸等)等が挙げられる。アミノ酸は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0071】
ポリアミド樹脂は、好適には、主として脂肪族骨格を含むポリアミド樹脂(又は、ナイロン樹脂)であってもよい。
【0072】
ナイロン樹脂としては、特に限定されず、例えば、脂肪族ジアミンを含むジアミンと脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸の縮合重合体、環状アミド化合物の開環重合体、脂肪族アミノ酸を含むアミノ酸の縮合重合体等であってよい。
【0073】
ナイロン樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として機能してもよい。
ナイロン樹脂の酸価は、エポキシ樹脂との反応性や、接着剤層を効率よくエッチングしやすい等の観点から、例えば、4~10mgKOH/g等であってもよい。
ナイロン樹脂のアミン価は、エポキシ樹脂との反応性や、接着剤層を効率よくエッチングしやすい等の観点から、例えば、1~6mgKOH/g等であってもよい。
なお、酸価は、樹脂1g中に存在する酸を中和するのに要するKOHのmg数であってよく、アミン価は、樹脂1g中に存在するアミンを中和するのに要する塩酸に当量のKOHのmg数であってよい。
酸価の測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述の方法を用いてもよい。
アミン価の測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述の方法を用いてもよい。
【0074】
接着成分は、エポキシ樹脂の硬化剤を含んでいてよい。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、汎用の成分であってよく、例えば、アミン類[例えば、脂肪族ポリアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等)、芳香族ポリアミン(例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等)]、酸無水物類[例えば、環状脂肪族酸無水物(例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸等)]等が挙げられる。これら硬化剤は、変性されたものであってもよい。エポキシ樹脂の硬化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
また、前述のポリアミド樹脂は、硬化剤として機能してもよい。
【0075】
接着剤(又は、接着剤層)は、本発明の効果を奏する範囲内で、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、及びエポキシ樹脂の硬化剤以外の他の接着成分を含んでいてもよい。
他の接着成分としては、特に限定されないが、例えば、上記例示以外の熱可塑性樹脂(例えば、フェノキシ樹脂等)や熱硬化性樹脂等が挙げられる。他の接着成分は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0076】
接着剤(又は、接着剤層)は、本発明の効果を奏する範囲内で、接着成分以外の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、カップリング剤、難燃剤(又は難燃助剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
【0077】
カップリング剤としては、汎用の成分、例えば、シラン系カップリング剤{例えば、ビニル基含有シラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン等)、エポキシ基含有シラン(例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等)、(メタ)アクリロイル基含有シラン(例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、アミノ基含有シラン[例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン等]、メルカプト基含有シラン(例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等)、スチリル基含有シラン(例えば、p-スチリルトリメトキシシラン等)、ウレイド基含有シラン(例えば、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等)、イソシアネート基含有シラン(例えば、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等)等}、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0078】
難燃剤(難燃助剤を含む)としては、汎用の成分、例えば、金属水和物[例えば、金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等)、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム等]、ハロゲン系化合物{例えば、ハロゲン含有低分子化合物(デカブロモジフェニルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールA等)、ハロゲン含有樹脂[例えば、エポキシ樹脂(臭素化エポキシ樹脂等)等]等}、アンチモン系化合物(例えば、三酸化アンチモン等)、リン系化合物(例えば、リン含有オリゴマー、リン酸アンモニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム等)等が挙げられる。
【0079】
酸化防止剤としては、汎用の成分、例えば、フェノール系化合物[例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等]、リン系化合物[例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等]等)等が挙げられる。
【0080】
紫外線吸収剤としては、汎用の成分、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤[例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-〔(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル〕-ベンゾトリアゾール等]、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルベンゾフェノン等)、サリシレート系紫外線吸収剤(例えば、フェニルサリシレート等)、シアノアクリレート系紫外線吸収剤(例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等)、オキザリックアニリド系紫外線吸収剤(例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド等)、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤(例えば、ビス-〔2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペジリニル〕セバケート、ビス-〔N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル〕セバケート等)等が挙げられる。
【0081】
接着剤は、溶剤を含んでいてもよい。例えば、上記接着成分(及び、必要に応じて添加剤)を溶剤と混合することにより、接着剤を形成してもよい。
溶剤としては、接着成分を溶解可能なものであれば、特に限定されないが、例えば、アルコール系溶剤(例えば、メタノール、エタノール、i-プロピルアルコール、n-プロピルアルコール、i-ブチルアルコール、n-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール等)、ケトン系溶剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等)、芳香族炭化水素系溶剤(例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等)、エステル系溶剤(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等)、塩素系溶剤(例えば、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン等)等が挙げられる。溶媒は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
溶剤には、接着成分が溶解する範囲内で、上記例示以外の成分(例えば、水、フェノール、ギ酸、酢酸等)が添加されていてもよい。
【0082】
溶剤は、好適にはアルコール系溶剤を含んでいてもよく、例えば、アルコール系溶剤と、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤及び塩素系溶剤から選択される1種以上との組み合わせ等であってよい。
【0083】
溶剤がアルコール系溶剤を含む場合、アルコール系溶剤の含有量は、全溶剤中において、例えば、30~90質量%(例えば、40~80質量%)程度であってよい。
【0084】
接着剤において、ポリアミド樹脂の含有量は、接着剤100質量部に対して、接着剤層を効率よくエッチングしやすい(特に、接着剤層のサイドエッチング量を低減しやすい)、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムがエッチングによる影響を受けにくい(例えば、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムに良好な開口部を形成しやすい、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムが、エッチング前の厚みを反映しやすい)等の観点から、例えば、15~95質量部、好ましくは20~90質量部(例えば、20~80質量部)、さらに好ましくは30~80質量部(例えば、25~60質量部)、特に好ましくは30~60質量部(例えば、30~50質量部)程度であってよい。
【0085】
接着剤において、エポキシ樹脂とポリアミド樹脂の質量比は、接着剤層を効率よくエッチングしやすい(例えば、接着剤層のサイドエッチング量を低減しやすい)、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムがエッチングによる影響を受けにくい(例えば、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムに良好な開口部を形成しやすい、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムが、エッチング前の厚みを反映しやすい)等の観点から、例えば、85:15~5:95、好ましくは80:20~10:90(例えば、75:25~15:85)、より好ましくは70:30~20:80(例えば、65:35~25:75質量部)、特に好ましくは60:40~30:70程度であってよい。
【0086】
接着剤において、エポキシ樹脂の硬化剤の含有量は、特に限定されず、使用するエポキシ樹脂の種類や硬化剤の種類等に応じて適宜設定してよい。
【0087】
接着剤において、接着成分の含有量は、接着剤全体に対して、例えば、1~99質量%(例えば、5~90質量%)、好ましくは10~80質量%(例えば、15~70質量%)程度であってよい。
【0088】
接着剤において、添加剤は、接着成分1質量部に対して、例えば、1.5~200質量部(例えば、2~170質量部)、好ましくは2~150質量部(例えば、3~140質量部)、さらに好ましくは3~120質量部(例えば、5~100質量部)程度であってよい。
【0089】
[カバーレイフィルム]
カバーレイフィルムは、ポリイミドフィルムの片面に接着剤層が形成されていてよい。接着剤層の形成方法は、特に限定されず、例えば、ポリイミドフィルムに接着剤を塗布及び乾燥する方法であってよい。接着剤を塗布及び乾燥する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いてよい。
【0090】
カバーレイフィルムは、エッチング用であってもよい。エッチングは、ドライエッチングであってもよく、ウェットエッチングであってもよい。
【0091】
カバーレイフィルムにおいて、ポリイミドフィルムの厚さ(平均厚さ)は、特に限定されないが、例えば、1~150μm(例えば、1~125μm)、好ましくは3~100μm(例えば、3~80μm)、より好ましくは5~80μm(例えば、7~50μm、10~40μm、5~40μm等)程度であってよい。
【0092】
カバーレイフィルムにおいて、接着剤層の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されないが、接着剤層のサイドエッチング量を低減しやすい等の観点から、例えば、50μm以下(例えば、1~45μm)、好ましくは40μm以下(例えば、2~35μm)、さらに好ましくは30μm以下(例えば、5~30μm)程度であってもよい。
【0093】
カバーレイフィルムにおいて、ポリイミドフィルムの厚さ(平均厚さ)と接着剤層の厚さ(平均厚さ)の比率は、カバーレイフィルムを効率よくエッチングしやすい(例えば、ポリイミドフィルムのサイドエッチング量や、接着剤層のサイドエッチング量を低減しやすい)等の観点から、ポリイミドフィルムの厚さ:接着剤層の厚さが、例えば、5:1~1:5、好ましくは4:1~1:4、より好ましくは3:1~1:3程度であってもよい。
【0094】
[フレキシブルプリント配線板(FPC)]
本発明のカバーレイフィルムは、金属積層板の被覆等の用途に使用することができる。本発明のカバーレイフィルムを金属積層板に貼り合わせることにより、フレキシブルプリント配線板(FPC)を製造することができる。
すなわち、本発明は、本発明のカバーレイフィルムを用いたフレキシブルプリント配線板も包含する。フレキシブルプリント配線板は、カバーレイフィルムと金属積層板を含んでいればよく、金属積層板にカバーレイフィルムが積層されていてよい。このようなフレキシブルプリント配線板は、金属積層板の片面にカバーレイフィルムを有していてよい。
また、本発明は、フレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイフィルムも包含する。
【0095】
金属積層板は、例えば、絶縁層(例えば、ポリイミドフィルム等)と金属層で形成されたものであってよい。金属層は、金属箔であってもよいし、金属蒸着膜であってもよい。金属層は、絶縁層の片面に形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。絶縁層の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されず、例えば、5~200μm等であってもよい。金属層の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されず、例えば、1~50μm等であってもよい。なお、金属積層板は、絶縁層と金属層以外の他の層を有していてもよい。金属積層板において、他の層の積層箇所は特に限定されない。
金属積層板の製造方法は、特に限定されず、公知の方法[例えば、絶縁層に金属箔を熱プレスする方法、絶縁層の表面に金属を蒸着(例えば、真空蒸着等)する方法等]を使用してよい。
【0096】
金属層を構成する金属としては、特に限定されないが、例えば、銅、銅合金、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム等が挙げられ、銅又は銅合金を好適に用いてもよい。
金属積層板としては、銅張積層板を好適に用いてもよい。
【0097】
FPCの製造方法は、特に限定されないが、エッチングを用いた方法が好ましい。
エッチングは、例えば、ウェットエッチング、ドライエッチング等であってもよく、特に、ウェットエッチングを好適に用いてもよい。
【0098】
FPCの製造方法の一態様は、例えば、本発明のカバーレイフィルムを金属積層板に貼り合わせる工程(I)、カバーレイフィルムにレジスト層を形成する工程(II)、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムをエッチングする工程(III)及び接着剤層をエッチングする工程(IV)を含んでいてよい。なお、工程(I)~(IV)は、通常、この順に行ってよい。各工程の前後は、必要に応じて他の工程(例えば、洗浄工程、中和工程等)を含んでいてもよい。
【0099】
工程(I)において、カバーレイフィルムを金属積層板に貼り合わせる方法は、特に限定されず、加熱圧着する公知の方法等であってよい。このような方法は、特に限定されず、例えば、熱プレス機を用いた方法、ロールを用いた方法等であってよい。加熱圧着の温度は、特に限定されず、例えば、50~200℃等であってよい。加熱圧着の圧力は、特に限定されず、例えば、1~10MPa等であってよい。加熱圧着の時間は、特に限定されず、例えば、1分~1時間等であってよい。
【0100】
工程(I)は、上記貼り合わせ後に、接着剤層を硬化させる工程を含んでいてもよい。硬化温度は、接着剤に含まれる成分等によって適宜設定してよく、例えば、100~200℃等であってもよい。硬化時間は、特に限定されないが、例えば、30分~5時間(例えば、1~3時間)等であってよい。
【0101】
工程(II)では、通常、工程(I)の後、カバーレイフィルム上にレジスト層を形成してよい。
レジスト層を形成するレジストは、例えば、紫外線硬化型レジスト、アルカリ現像型レジスト、熱硬化型レジスト等であってよく、紫外線硬化型レジストを好適に用いてもよい。レジストは、ドライフィルムレジスト、液状レジストのいずれであってもよく、ドライフィルムレジストを好適に用いてもよい。レジストは、ネガ型、ポジ型のいずれであってもよい。レジストとしては、特に限定されず、公知のものを使用してよい。
【0102】
レジスト層の形成においては、通常は、まず、レジストをカバーレイフィルム上に貼り付け又は塗布し、レジストの種類に合わせた硬化を行う。この際、レジスト上に、目的とするパターンを有するマスクを積層させて硬化を行ってよい。硬化方法は、特に限定されず、公知の方法を使用してよい。
例えば、紫外線硬化型のドライフィルムレジストを使用する場合、カバーレイフィルム上にドライフィルムレジストを貼り合わせた後、ドライフィルム上にパターンマスクを積層し、紫外線を露光することにより、硬化を行ってもよい。
本発明のカバーレイフィルムは、小さい開口部[例えば、1000μ未満(例えば、500μm以下、100μm以下等)の開口部]を有するパターンマスクを使用した場合も、効率よくFPCを製造しやすい。
【0103】
上記硬化後に、未硬化部分のレジストを現像して除去することにより、レジスト層を形成することができる。現像方法は、特に限定されず、レジストの種類に合わせた公知の現像液を使用した方法であってよい。
【0104】
レジスト層の厚さ(平均厚さ)は、特に限定されず、例えば、5~50μm(例えば、10~30μm)等であってよい。
【0105】
工程(III)では、通常、工程(II)の後、カバーレイフィルムのポリイミドフィルムをエッチングしてよい。エッチングする方法は、特に限定されず、公知の方法を用いてよい。エッチングは、ウェットエッチングであってもよく、ドライエッチングであってもよい。
【0106】
ウェットエッチングを行う場合は、エッチング液に浸漬させればよい。
ポリイミドフィルムのエッチング液は、ポリイミドフィルムをエッチング可能な液であれば特に限定されず、市販のポリイミドエッチング液を使用してよい。ポリイミドフィルムのエッチング液としては、例えば、オキシアルキルアミン[例えば、アルカノールアミン(例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等の第一級アルカノールアミン;ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等の第二級アルカノールアミン)等]及びアルカリ金属化合物[例えば、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等)]を含む溶液等が挙げられる。
ポリイミドフィルムのエッチング液は、溶剤(例えば、N-メチル-2-ピロリドン等の極性有機溶媒等)を含有していてもよい。
【0107】
ドライエッチングを行う場合、反応性イオンエッチング等の公知の方法を使用してよい。
【0108】
ポリイミドフィルムをエッチングした後、レジスト層を除去(又は、剥離)してもよい。レジスト層の除去(又は、剥離)方法は、特に限定されず、使用するレジストの種類に応じた公知の方法を使用してよく、例えば、除去(又は、剥離)液を使用してもよい。
【0109】
工程(IV)では、通常、工程(III)の後、カバーレイフィルムの接着剤層をエッチングしてよい。エッチングする方法は、特に限定されず、公知の方法を用いてよい。エッチングは、ウェットエッチングであってもよく、ドライエッチングであってもよい。
【0110】
ウェットエッチングを行う場合は、エッチング液に浸漬させればよい。
接着剤層のエッチング液としては、例えば、過マンガン酸塩[例えば、過マンガン酸アルカリ金属塩(例えば、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等)等]及び/又は水酸化ナトリウムを含む溶液を使用してもよい。
接着剤層のエッチング液は、水を含有していてよい。
【0111】
接着剤層のエッチング液において、過マンガン酸塩の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.5~50質量%(例えば、1~40質量%、2~30質量%等)程度であってもよい。
接着剤層のエッチング液において、水酸化ナトリウムの濃度は、特に限定されないが、例えば、0.01~40質量%(例えば、0.05~30質量%、0.1~25質量%等)程度であってもよい。
【0112】
ドライエッチングを行う場合、反応性イオンエッチング等の公知の方法を使用してよい。
【0113】
上記のようにして、フレキシブルプリント配線板を作製することができる。
本発明において、フレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイフィルムは、エッチングされたものであってよい。
このようなカバーレイフィルムにおいて、接着剤層は、サイドエッチング量が、エッチング幅[又は、目標としているエッチング幅(又は、孔径(穴径)]に対して、例えば、40%以下(例えば、38%以下)、好ましくは35%以下(例えば、30%以下)、より好ましくは28%以下(例えば、25%以下)を充足していてもよい。
【0114】
フレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイフィルムにおいて、ポリイミドフィルムのサイドエッチング量は、エッチング幅[又は、目標としているエッチング幅(又は、孔径(穴径))]に対して、例えば、40%以下(例えば、38%以下)、好ましくは35%以下(例えば、30%以下)、より好ましくは28%以下(例えば、25%以下、20%以下)を充足していてもよい。
【0115】
フレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイフィルムにおいて、ポリイミドフィルムにおける開口部分の幅(又は、孔径(穴径))は、エッチング幅[又は、目標としているエッチング幅(又は、孔径(穴径)]に対して、例えば、90%以上(例えば、93%以上)、好ましくは95%以上(例えば、97%以上)を充足していてもよく、例えば、130%以下(例えば、125%以下)、好ましくは125%以下(例えば、120%以下)、より好ましくは115%以下(例えば、110%以下)を充足していてもよい。
カバーレイフィルムのエッチング(特に、ウェットエッチング)において、ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムのエッチングのみならず、接着剤層のエッチングによってもエッチングがされうる。一方、本発明のカバーレイフィルムは、接着剤層が効率よくエッチングされうるため、ポリイミドフィルムが接着剤層のエッチングによる影響を受けにくい。そのため、本発明のカバーレイフィルムによれば、前記ポリイミドフィルムにおける開口部分の幅は、目標としているエッチング幅との差異を少なくしやすい。
【0116】
フレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイフィルムにおいて、ポリイミドフィルムの厚さ(平均厚さ)は、フレキシブルプリント配線板を構成する前(すなわち、金属積層板と貼り合わせる前)のカバーレイフィルムにおけるポリイミドフィルムの厚さに対して、例えば、40%以上(例えば、45%以上)、好ましくは50%以上(例えば、55%以上)、特に好ましくは60%以上(例えば、65%以上)を充足していてもよい。
上記のように、本発明のカバーレイフィルムは、接着剤層が効率よくエッチングされうるため、接着剤層のエッチングによるポリイミドフィルムの厚みの低減を抑制しやすい。すなわち、本発明では、フレキシブルプリント配線板を構成するカバーレイフィルムにおけるポリイミドフィルムの厚さが、フレキシブルプリント配線板を構成する前のカバーレイフィルムにおけるポリイミドフィルムの厚さを反映しやすい。
【0117】
フレキシブルプリント配線板において、接着剤層のサイドエッチング量は、フレキシブルプリント配線板の開口部[又は、開口部の幅(又は、孔径(穴径)]に対して、例えば、40%以下(例えば、38%以下)、好ましくは35%以下(例えば、30%以下)、より好ましくは28%以下(例えば、25%以下)を充足していてもよい。
【0118】
フレキシブルプリント配線板において、ポリイミドフィルムのサイドエッチング量は、フレキシブルプリント配線板の開口部[又は、開口部の幅(又は、孔径(穴径)]に対して、例えば、40%以下(例えば、38%以下)、好ましくは35%以下(例えば、30%以下)、より好ましくは28%以下(例えば、25%以下)を充足していてもよい。
【実施例0119】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【0120】
<ポリイミドフィルムの厚み>
Mitutoyo社製ライトマチック(Series318)を使用して測定した。
【0121】
<ナイロン樹脂の酸価の測定>
ナイロン樹脂1gをベンジルアルコール40mlに溶解し、京都電子工業社製自動滴定装置「AT-510」にビュレットとして同社製「APB-510-20B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.01mol/Lのベンジルアルコール性KOH溶液を用いて電位差滴定を行い、樹脂1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0122】
<ナイロン樹脂のアミン価の測定>
ナイロン樹脂3gを1-ブタノール20mlとトルエン20mlとの混合溶液に溶解し、京都電子工業社製自動滴定装置「AT-510」にビュレットとして同社製「APB-510-01B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.1mol/Lの2-プロパノール性塩酸溶液を用いて電位差滴定を行い、樹脂1gあたりの塩酸と当量KOHのmg数を算出した。
【0123】
<接着強度の測定>
作製したエッチング未処理の試料を10mmの幅に裁断して、ポリイミドフィルムを銅箔から剥がすときの接着強度を引張試験機(エー・アンド・デイ社製、テンシロン万能試験機)にて引張速度50mm/分で測定した(単位N/cm)。
【0124】
<ポリイミドフィルムの穴径>
接着剤層エッチング後の試料をマイクロスコープ(KEYENCE社製、VHX-2000)にて観察し、ポリイミドフィルムにおける穴部分(開口部分)の直径を計測した。なお、図1は、接着剤層エッチング後の試料をカバーレイフィルム側の上面から見た図を示し、図1において、1はポリイミドフィルム、2はポリイミドフィルムにおける開口部分、3はポリイミドフィルムにおける開口部分の直径、4はポリイミドフィルムにおけるサイドエッチング部分を示す。
【0125】
<ポリイミドフィルムのサイドエッチング量>
接着剤層エッチング後の試料の断面を切り出し、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製、VK-9710)にて断面を観察し、ポリイミドフィルムのテーパー(先細り)が生じている距離をポリイミドフィルムのサイドエッチング量として、計測した。なお、図2は、図1のX-X矢視断面図である。図2において、5は接着剤層、6は銅箔、7はポリイミドフィルムのサイドエッチング量を示す。
【0126】
<試料におけるポリイミドフィルムの厚み>
接着剤エッチング後の試料の断面を切り出し、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製、VK-9710)にて断面を観察し、断面からポリイミドフィルムの厚みを計測した。
【0127】
<接着剤層のサイドエッチング量>
接着剤層エッチング後の試料の断面を切り出し、レーザー顕微鏡(KEYENCE社製、VK-9710)にて断面を観察し、ポリイミドフィルムのテーパーの先端部から接着剤層の最もエッチングされているところまでの距離を、接着剤層のサイドエッチング量として計測した。なお、図2における8は、接着剤層のサイドエッチング量を示す。
【0128】
(実施例1)
[ポリアミック酸合成例]
ピロメリット酸二無水物(PMDA)(分子量218.12)/3,3’,4、4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)(分子量294.22)/4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)(分子量200.24)/パラフェニレンジアミン(PPD)(分子量108.14)を、モル比で65/35/80/20の割合で用意し、DMAc(N,N-ジメチルアセトアミド)中20重量%溶液にして重合し、3500poiseのポリアミド酸溶液を得た。
【0129】
[ポリイミドフィルムの製膜]
上記合成例で得たポリアミック酸溶液に、リン酸水素カルシウム(平均粒子径0.87μm、粒子径0.5~2.5μmの粒子の割合が全粒子中81.5体積%)のN,N-ジメチルアセトアミドスラリーを、ポリイミド(フィルム)中の(すなわち、ポリイミドを形成したときにポリイミド樹脂1重量当たりの)リン酸水素カルシウムの割合が0.15重量%となるように添加し、十分攪拌、分散させた。
このポリアミック酸溶液に、無水酢酸(分子量102.09)とβ-ピコリンからなる転化剤を、ポリアミック酸に対し、それぞれ2.0モル当量の割合での混合、攪拌した。得られた混合物を、口金より回転する65℃のステンレス製ドラム上にキャストし、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをドラムから引き剥がし、その両端を把持し、加熱炉にて250℃×30秒、400℃×30秒、550℃×30秒処理し、厚さ5μmのポリイミドフィルムを得た。
【0130】
[接着剤]
攪拌機、還流脱水装置及び蒸留管を備えたフラスコに、アゼライン酸65質量部、ドデカン二酸190質量部、ピペラジン100質量部、蒸留水120質量部を仕込んだ。温度を120℃に昇温して水を留出させた後に、20℃/時間の割合で240℃にまで昇温し、3時間反応を継続してナイロン樹脂を得た。得られたナイロン樹脂の酸価は6.0(mgKOH/g)であり、アミン価は4.5(mgKOH/g)であった。
得られたナイロン樹脂40質量部、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-665)10質量部及びフェノキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、jER1256)50質量部を、エタノール/トルエン=7/3の混合溶剤400質量部に溶解した。
【0131】
[カバーレイフィルムの作成]
上記で得られた接着剤を、上記で得られたポリイミドフィルムに、乾燥後の接着剤層の膜厚が10μmになるように塗布し、50℃で2分間乾燥した後に、更に150℃で5分間乾燥した。
【0132】
[試料の作成]
上記で得られたカバーレイフィルムに、厚さ35μmの圧延銅箔を貼り合わせて、180℃、3MPaの条件下で3分間加熱圧着した後、160℃のオーブンで2時間熱処理して接着剤層を硬化させ、試料を作成した。
【0133】
[ポリイミドフィルムエッチング]
試料のポリイミドフィルム表面にドライフィルムレジストを貼り合わせ、紫外線露光及びアルカリ現像を行って、直径70μmの孔を有するパターン形状を形成した。その後、レイテック(株)製のポリイミドエッチング液TPE3000Nに一定時間浸漬し、ポリイミドフィルムの一部を除去した。
【0134】
[接着剤層エッチング]
ポリイミドフィルムエッチング後の試料を、過マンガン酸ナトリウム(8.5質量%)及び水酸化ナトリウム(5質量%)含有のエッチング液(溶媒:水)100g中で一定時間浸漬して、接着剤層をエッチングし、水洗した後、中和した。
【0135】
(実施例2~9)
カバーレイフィルムに使用するポリイミドフィルムの組成及び厚み、接着剤中のナイロン樹脂の含有量、及び、カバーレイフィルムにおける接着剤層の厚みを、表1に記載のものとした以外は実施例1と同様にした。
【0136】
(比較例1)
カバーレイフィルムに使用するポリイミドフィルムの厚み、及び、接着剤層の厚みを、表1に記載のものとし、接着剤として、クレゾールノボラックエポキシ樹脂(DIC株式会社製、EPICLON N-665)20質量部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、jER1256)60質量部、ノボラック型フェノール樹脂(DIC株式会社製、TD-2106)19.5質量部及び2-メチル―4―メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、2E4MZ)0.5質量部をエタノール/トルエン=7/3の混合溶剤400質量部に溶解したものを使用した以外は、実施例1と同様にした。
【0137】
実施例1~9及び比較例1のカバーレイフィルムの構成を表1に、評価結果を表2に示す。
【0138】
【表1】
【0139】
【表2】
【0140】
実施例1~9では、ポリイミドフィルム及び接着剤層をエッチングすることができた。
一方、比較例1では、ポリイミドフィルムはエッチングできたが、接着剤層をエッチングすることができなかった。
【0141】
(参考例1)
接着剤として、実施例1で使用した接着剤の代わりに、アクリル系接着剤(パイララックス、DuPont社製)を使用した以外は実施例1と同様にした。接着剤層をエッチングすることはできたものの、エッチング速度が速すぎるため、接着剤層をうまくエッチングすることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明のカバーレイフィルムは、エッチングを用いたフレキシブルプリント配線板の製造等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0143】
1 ポリイミドフィルム
2 ポリイミドフィルムにおける開口部分
3 ポリイミドフィルムにおける開口部分の直径
4 ポリイミドフィルムにおけるサイドエッチング部分
5 接着剤層
6 銅箔
7 ポリイミドフィルムのサイドエッチング量
8 接着剤層のサイドエッチング量
図1
図2