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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149809
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】樹脂組成物、及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20220929BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220929BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
C08L67/02 ZBP
C08K3/26
C08L101/16
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052122
(22)【出願日】2021-03-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-11
(71)【出願人】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】笹川 剛紀
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB013
4J002AB043
4J002CF031
4J002CF182
4J002EH097
4J002FD016
4J002FD027
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J200AA04
4J200BA09
4J200BA14
4J200CA01
4J200DA12
4J200DA16
4J200DA24
4J200DA28
4J200EA07
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、引張強さ及び切断時伸びの低下が抑制された成形品を得ることができる、生分解性樹脂含有組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、生分解性樹脂と、重質炭酸カルシウムとを含み、前記生分解性樹脂と、前記重質炭酸カルシウムとの質量比が10:90~70:30であり、前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートアジペートを少なくとも含む、樹脂組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂と、重質炭酸カルシウムとを含み、
前記生分解性樹脂と、前記重質炭酸カルシウムとの質量比が10:90~70:30であり、
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートアジペートを少なくとも含む、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリ乳酸からなり、
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートと、前記ポリ乳酸との質量比が50:50~90:10である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリ乳酸からなり、
前記ポリブチレンサクシネートアジペートと、前記ポリ乳酸との質量比が50:50~90:10である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下のクエン酸アセチルトリブチルを更に含む、請求項1から3の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下の天然有機物を更に含み、
前記天然有機物が、セルロースパウダー、木粉、デンプン、モミ殻、オカラ、及びフスマからなる群から選択される1以上である、
請求項1から4の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、請求項1から5の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の樹脂組成物から得られた成形品。
【請求項8】
前記成形品がインフレーション成形品である、請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
前記成形品が押出成形品である、請求項7に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
生分解性樹脂は、微生物の作用や加水分解により、自然界に元来存在する物質へ分解されることから、環境に優しい樹脂として注目されている。
【0003】
生分解性樹脂に対し、環境負荷の小ささを損なわずに良好な諸特性等を付与するため、様々な成分を配合することが提案されている(例えば、特許文献1、2等)。この様な成分として、炭酸カルシウム等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-119850号公報
【特許文献2】特表2018-527416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、炭酸カルシウムを高配合した生分解性樹脂組成物は、該組成物を成形して得られる成形品の機械強度が低下する可能性がある。
本発明者は、この様な生分解性樹脂組成物においては、機械強度のうち、特に引張強さや切断時伸びが損なわれやすいことを見出した。
【0006】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、引張強さ及び切断時伸びの低下が抑制された成形品を得ることができる、生分解性樹脂含有組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートアジペートを少なくとも含む生分解性樹脂を用い、これを重質炭酸カルシウムと組み合わせることで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0008】
(1) 生分解性樹脂と、重質炭酸カルシウムとを含み、
前記生分解性樹脂と、前記重質炭酸カルシウムとの質量比が10:90~70:30であり、
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートアジペートを少なくとも含む、
樹脂組成物。
【0009】
(2) 前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリ乳酸からなり、
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートと、前記ポリ乳酸との質量比が50:50~90:10である、
(1)に記載の樹脂組成物。
【0010】
(3) 前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリ乳酸からなり、
前記ポリブチレンサクシネートアジペートと、前記ポリ乳酸との質量比が50:50~90:10である、
(1)に記載の樹脂組成物。
【0011】
(4) 前記樹脂組成物に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下のクエン酸アセチルトリブチルを更に含む、(1)から(3)の何れかに記載の樹脂組成物。
【0012】
(5) 前記樹脂組成物に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下の天然有機物を更に含み、
前記天然有機物が、セルロースパウダー、木粉、デンプン、モミ殻、オカラ、及びフスマからなる群から選択される1以上である、
(1)から(4)の何れかに記載の樹脂組成物。
【0013】
(6) 前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、(1)から(5)の何れかに記載の樹脂組成物。
【0014】
(7) (1)から(6)の何れかに記載の樹脂組成物から得られた成形品。
【0015】
(8) 前記成形品がインフレーション成形品である、(7)に記載の成形品。
【0016】
(9) 前記成形品が押出成形品である、(7)に記載の成形品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、引張強さ及び切断時伸びの低下が抑制された成形品を得ることができる、生分解性樹脂含有組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0019】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、生分解性樹脂と、重質炭酸カルシウムとを質量比10:90~70:30で含み、かつ、該生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートアジペートを少なくとも含むものである。
【0020】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)や、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)は、良好な生分解性を有する。
この様な生分解性樹脂とともに、炭酸カルシウムを配合した生分解性樹脂組成物によれば、該組成物から得られる成形品に対して、良好な特性(引き裂き性等)を付与できることが知られる。
【0021】
しかし、本発明者は、生分解性樹脂組成物中の炭酸カルシウムが多い場合、該組成物から得られる成形品における引張強さや切断時伸びが損なわれやすくなることを見出した。
そこで、本発明者が更に検討を重ねた結果、炭酸カルシウムとして重質炭酸カルシウムを選択することで、意外にも、上述のような引張強さ及び切断時伸びの低下を抑制できることを見出した。
【0022】
そして、本発明者は、この様な抑制効果が、重質炭酸カルシウムの平均粒子径を調整したり、所定の可塑剤や天然有機物(何れも後述)を重質炭酸カルシウムとともに配合したりすることで、より高められ得ることも見出した。
【0023】
この様な特定の成分を組み合わせることにより、上述のような引張強さ及び切断時伸びの低下を抑制できることは、理由は定かではないものの、極めて意外な知見である。
【0024】
本発明において「生分解性」とは、微生物の作用や加水分解によって分解する性質を意味し、実施例に示した方法で評価できる。
【0025】
本発明において「引張強さ」とは、対象に引張荷重を加えて破断させた場合における、破断に至るまでに到達した最大荷重を、引張荷重負荷前の断面積で除した値を意味し、実施例に示した方法で評価できる。
【0026】
本発明において「切断時伸び」とは、対象に引張荷重を加えて破断させた場合における、破断時点の伸びを意味し、実施例に示した方法で評価できる。
【0027】
本発明において「引張強さ及び切断時伸びの低下が抑制されている」とは、例えば、本発明の要件を満たす樹脂組成物から得られた成形品の引張強さ及び切断時伸びが、生分解性樹脂の種類や配合量が共通する点以外は本発明の要件を満たさない樹脂組成物から得られた成形品の引張強さ及び切断時伸びよりも高いことを意味する。
【0028】
以下、本発明の樹脂組成物の構成について説明する。
【0029】
(生分解性樹脂の種類)
本発明における生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、「PBAT」ともいう。)又はポリブチレンサクシネートアジペート(以下、「PBSA」ともいう。)を少なくとも含む。つまり、発明における生分解性樹脂は、PBAT又はPBSAの何れかのみを含んでいてもよく、両方を含んでいても良い。
【0030】
本発明における生分解性樹脂としては、PBAT及びPBSA以外の生分解性樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくとも良い。
【0031】
本発明の樹脂組成物に含まれ得る、PBAT及びPBSA以外の生分解性樹脂としては、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン、ポリ(2-オキセタノン)等が挙げられる。これらのうち、本発明の効果を奏しやすいという観点からポリ乳酸が好ましい。
【0032】
なお、本発明において「ポリ乳酸」とは、原料モノマーとして乳酸成分のみを縮重合させて得られるポリ乳酸ホモポリマー、及び、原料モノマーとして乳酸成分と該乳酸成分と共重合可能なその他のモノマー成分とを縮重合させて得られるポリ乳酸コポリマーを包含する。
本発明においては、ポリ乳酸として知られる任意の重合体を使用できる。
【0033】
乳酸と共重合可能なその他のモノマー成分としては、特に限定されないが、例えば、オキシ酸、二価アルコール類、三価以上の多価アルコール類、芳香族ヒドロキシ化合物、二価のカルボン酸、三価以上の多価カルボン酸、ラクトン類等が挙げられる。
【0034】
オキシ酸としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシヘプタン酸等のオキシ酸が挙げられる。
【0035】
二価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチエレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
【0036】
三価以上の多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0037】
芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA等が挙げられる。
【0038】
二価のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、5-スルホイソフタル酸ナトリウム等が挙げられる。
【0039】
三価以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0040】
ラクトン類としては、例えば、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5-オキセパン-2-オン等が挙げられる。
【0041】
(生分解性樹脂の組成)
生分解性樹脂の組成としては、PBAT及びPBSAを少なくとも含む限り特に限定されないが、以下の何れかの態様が特に好ましい。
(態様1)生分解性樹脂がPBATからなる。
(態様2)生分解性樹脂がPBSAからなる。
(態様3)生分解性樹脂がPBAT及びPBSAからなる。
(態様4)生分解性樹脂が、PBAT及び/又はPBSAと、ポリ乳酸とからなる。
【0042】
本発明において「生分解性樹脂が樹脂Xからなる」とは、樹脂組成物中の生分解性樹脂として樹脂Xのみを含むことを意味する。
【0043】
上記(態様3)について、PBAT及びPBSAの配合比は特に限定されないが、PBATとPBSAとの質量比が、好ましくはPBAT:PBSA=10:90~90:10である。
【0044】
上記(態様4)について、PBAT及びPBSAと、ポリ乳酸との配合比は特に限定されないが、PBAT及びPBSA(総量)と、ポリ乳酸との質量比が、好ましくはPBAT及びPBSA:ポリ乳酸=50:50~90:10である。
【0045】
上記(態様4)について、PBATと、ポリ乳酸との配合比は特に限定されないが、PBATと、ポリ乳酸との質量比が、好ましくはPBAT:ポリ乳酸=50:50~90:10である。
【0046】
上記(態様4)について、PBSAと、ポリ乳酸との配合比は特に限定されないが、PBSAと、ポリ乳酸との質量比が、好ましくはPBSA:ポリ乳酸=50:50~90:10である。
【0047】
(重質炭酸カルシウム)
本発明において「重質炭酸カルシウム」とは、天然炭酸カルシウムを機械的に粉砕等することで得られるものであり、化学的沈殿反応等によって製造される合成炭酸カルシウム(すなわち、軽質炭酸カルシウム)とは明確に区別されるものである。
【0048】
重質炭酸カルシウムは、例えば、方解石(石灰石、チョーク、大理石等)、貝殻、サンゴ等の天然炭酸カルシウムを粉砕、及び分級することで得られる。
【0049】
重質炭酸カルシウムの製造方法における粉砕方法としては、湿式粉砕、及び乾式粉砕のうち何れも採用できる。経済的な観点から、脱水工程や乾燥工程等が不要な乾式粉砕が好ましい。
粉砕に用いる粉砕機は特に限定されず、衝撃式粉砕機、粉砕メディア(ボールミル等)を用いた粉砕機、ローラーミル等が挙げられる。
【0050】
重質炭酸カルシウムの製造方法における分級は、空気分級、湿式サイクロン、デカンター等の従来知られる手段を採用できる。
【0051】
重質炭酸カルシウムは、表面処理が施されていてもよく、施されていなくとも良い。表面処理は、重質炭酸カルシウムの製造方法における任意の時点(粉砕前、粉砕中、分級前、分級後等)で行い得る。
【0052】
重質炭酸カルシウムの表面処理としては、物理的方法(プラズマ処理等)や、化学的方法(カップリング剤、界面活性剤等を用いた方法)が挙げられる。
【0053】
重質炭酸カルシウムの表面処理のうち、化学的方法において用いられるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等が挙げられる。
【0054】
重質炭酸カルシウムの表面処理のうち、化学的方法において用いられる界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。より具体的には、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩等が挙げられる。
【0055】
上記のような表面処理を施すことで、重質炭酸カルシウムの分散性等を高めることがきる。
ただし、表面処理を施されていない重質炭酸カルシウムは、成形時における表面処理剤の熱分解等による臭気の発生リスクを低減できる点で好ましい。
【0056】
重質炭酸カルシウムの形態は特に限定されないが、樹脂組成物中の分散性が良好であるという観点から、好ましくは粒子状である。
【0057】
重質炭酸カルシウムが粒子状である場合、その平均粒子径は、好ましくは0.7μm以上6.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上5.0μm以下、更に好ましくは1.5μm以上3.0μm以下である。
重質炭酸カルシウムの平均粒子径が上記範囲であると、樹脂組成物中での分散性が良好であり、樹脂組成物の過度な粘度上昇を防ぐことができる。更には、樹脂組成物から得られる成形品表面から重質炭酸カルシウム粒子が突出して脱落したり、表面性状や機械的強度等を損なったりしにくく、本発明の効果をより奏しやすくなる。
【0058】
本発明において「平均粒子径」とは、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値を意味する。
平均粒子径の測定機器としては、例えば、島津製作所社製の比表面積測定装置「SS-100型」を好ましく用いることができる。
【0059】
重質炭酸カルシウムが粒子状である場合、その粒径分布において、粒子径45μm以上の粒子が含まれないことが好ましい。
【0060】
重質炭酸カルシウムが粒子状である場合、その不定形性は、形状の球形化の度合い、すなわち真円度によって表すことができる。真円度が低いほど、不定形性が高いことを意味する。
重質炭酸カルシウムが粒子状である場合、その真円度は、好ましくは0.50以上0.95以下、より好ましくは0.55以上0.93以下、更に好ましくは0.60以上0.90以下である。
【0061】
本発明において「真円度」とは、粒子の投影面積を、粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積で割った値((粒子の投影面積)/(粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積))を意味する。
真円度の測定方法は特に限定されないが、例えば、走査型顕微鏡や実体顕微鏡等で得られる粒子の投影図を、市販の画像解析ソフトで解析することで特定できる。
具体的には、粒子の投影面積(A)、粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積(B)、粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の半径(r)、粒子の投影周囲長(PM)の測定結果に基づき、下式によって算出できる。
「真円度」=A/B=A/πr=A×4π/(PM)
【0062】
(樹脂組成物の組成)
本発明の樹脂組成物の組成は、生分解性樹脂と、重質炭酸カルシウムとの質量比が、生分解性樹脂:重質炭酸カルシウム=10:90~70:30である点以外は特に限定されない。
本発明によれば、樹脂組成物中の重質炭酸カルシウムの含有量が上記のように多くとも、該樹脂組成物から得られる成形品における引張強さや切断時伸びが損なわれにくい。
【0063】
本発明の樹脂組成物において、生分解性樹脂と重質炭酸カルシウムとの質量比は、生分解性樹脂:重質炭酸カルシウム=30:70~70:30が好ましく、50:50~70:30がより好ましい。
【0064】
生分解性樹脂の含有量の上限は、樹脂組成物に対して、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
【0065】
生分解性樹脂の含有量の下限は、樹脂組成物に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。
【0066】
重質炭酸カルシウムの含有量の上限は、樹脂組成物に対して、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0067】
重質炭酸カルシウムの含有量の下限は、樹脂組成物に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上である。
【0068】
(樹脂組成物中のその他の成分)
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記の成分に加えて、任意の成分が更に含まれ得る。この様な成分は、単独又は2種以上の組み合わせで使用できる。また、この様な成分の種類や配合量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定し得る。
【0069】
本発明の樹脂組成物に含まれ得る成分としては、可塑剤、天然有機物、生分解性樹脂以外の樹脂、充填剤(重質炭酸カルシウム以外)、色剤、滑剤、酸化防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。
【0070】
[可塑剤]
可塑剤としては、例えば、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジアリール、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-2-メトキシエチル、酒石酸ジブチル、o-ベンゾイル安息香酸エステル、ジアセチン、エポキシ化大豆油等が挙げられる。
【0071】
本発明者の検討の結果、上記可塑剤のうち、クエン酸アセチルトリブチルが、重質炭酸カルシウムとの組み合わせにおいて、生分解性樹脂の生分解性を損なわずに、成形品の引張強さ及び切断時伸びの低下を特に抑制しやすいという意外な知見を見出した。
【0072】
可塑剤の含有量の上限は、本発明の樹脂組成物に対して、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下である。
【0073】
可塑剤の含有量の下限は、本発明の樹脂組成物に対して、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上である。
【0074】
可塑剤としてクエン酸アセチルトリブチルを用いる場合、その含有量の上限は、本発明の樹脂組成物に対して、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは15.0質量%以下である。
【0075】
可塑剤としてクエン酸アセチルトリブチルを用いる場合、その含有量の下限は、本発明の樹脂組成物に対して、好ましくは5.0質量%以上、より好ましくは7.5質量%以上である。
【0076】
[天然有機物]
天然有機物としては、樹脂組成物に配合され得る任意の成分を使用できる。
【0077】
本発明者の検討の結果、天然有機物のうち、セルロースパウダー、木粉、デンプン、モミ殻、オカラ、及びフスマからなる群から選択される1以上が、重質炭酸カルシウムとの組み合わせにおいて、生分解性樹脂の生分解性を損なわずに、成形品の引張強さ及び切断時伸びの低下を特に抑制しやすいという意外な知見を見出した。
【0078】
本発明において「セルロースパウダー」とは、粉末状のセルロースであれば特に限定されない。
セルロースパウダーの平均粒子径は、好ましくは5μm以上45μm以下、より好ましくは10μm以上30μm以下である。
セルロースパウダーとしては市販品を使用しても良い。
【0079】
本発明において「木粉」とは、任意の樹木(ヒノキ、スギ等)から得られた粉末であれば特に限定されない。
木粉の平均粒子径は、好ましくは20μm以上300μm以下、より好ましくは20μm以上45μm以下である。
木粉としては、例えば、「おがくず」として知られるものを使用できる。
【0080】
本発明において「デンプン」とは、樹脂とともに配合され得る任意の形態のものを使用できる。デンプンは、例えば粉末状であっても良い。
【0081】
本発明において「モミ殻」とは籾の最外皮を意味し、樹脂とともに配合され得る任意の形態のものを使用できる。モミ殻は、例えば粉末状であっても良い。
【0082】
本発明において「オカラ」とは豆乳の搾り滓を意味し、樹脂とともに配合され得る任意の形態のものを使用できる。オカラは、乾燥物が好ましく、粉末乾燥物がより好ましい。
【0083】
本発明において「フスマ」とは小麦の製粉時に除かれる皮(外皮部、胚芽等)を意味し、樹脂とともに配合され得る任意の形態のものを使用できる。フスマは、例えば粉末状であっても良い。
【0084】
天然有機物の含有量(総量)の上限は、樹脂組成物に対して、好ましくは25.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下である。
【0085】
天然有機物の含有量(総量)の下限は、樹脂組成物に対して、好ましくは3.0質量%以上、より好ましくは5.0質量%以上である。
【0086】
[その他]
以下、本発明の樹脂組成物に含まれ得るその他の成分を例示する。
【0087】
生分解性樹脂以外の樹脂としては、
ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;
エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂;
ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;
ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂;
アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体等のポリスチレン系樹脂;
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニル系樹脂;
ポリフェニレンスルフィド;
ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテル系樹脂等
が挙げられる。
ただし、本発明の効果を奏しやすいという観点から、本発明の樹脂組成物には、生分解性樹脂以外の樹脂を含まないか、含むとしても少量(例えば、樹脂組成物に対して1.0質量%以下)であることが好ましい。
【0088】
充填剤としては、合成物又は天然鉱物由来物の何れも使用できる。
充填剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等の炭酸塩(重質炭酸カルシウムを除く)、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、又はこれらの水和物等が挙げられる。
より具体的には、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、黒鉛等が挙げられる。
ただし、本発明の効果を奏しやすいという観点から、本発明の樹脂組成物には、重質炭酸カルシウム以外の充填剤を含まないか、含むとしても少量(例えば、樹脂組成物に対して0.1質量%以下)であることが好ましい。
【0089】
色剤としては、従来知られる有機顔料、無機顔料又は染料の何れも使用できる。
有機顔料としては、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオオサジン系、ペリノン系、キノフタロン系、ペリレン系顔料等が挙げられる。
無機顔料としては、群青、酸化チタン、チタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、酸化クロム、亜鉛華、カーボンブラック等が挙げられる。
【0090】
滑剤としては、例えば、脂肪酸系滑剤(ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、複合型ステアリン酸、オレイン酸等)、脂肪族アルコール系滑剤、脂肪族アマイド系滑剤(ステアロアミド、オキシステアロアミド、オレイルアミド、エルシルアミド、リシノールアミド、ベヘンアミド、メチロールアミド、メチレンビスステアロアミド、メチレンビスステアロベヘンアミド、高級脂肪酸のビスアミド酸、複合型アミド等)、脂肪族エステル系滑剤(ステアリン酸-n-ブチル、ヒドロキシステアリン酸メチル、多価アルコール脂肪酸エステル、飽和脂肪酸エステル、エステル系ワックス等)、脂肪酸金属石鹸系滑剤等が挙げられる。
【0091】
酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリトール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0092】
難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、金属水和物等の非リン系非ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
【0093】
発泡剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等)、脂環式炭化水素類(シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等)、ハロゲン化炭化水素類(クロロジフルオロメタン、ジフロオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、パーフルオロシクロブタン等)、無機ガス(二酸化炭素、窒素、空気等)、水等が挙げられる。
【0094】
(樹脂組成物の好ましい組成)
本発明の樹脂組成物の好ましい態様として、例えば、樹脂組成物に対して、PBAT及び/又はPBSAを55~65質量%、重質炭酸カルシウムを25~35質量%、クエン酸アセチルトリブチルを5~15質量%含むものが挙げられる。
【0095】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上記の成分を用いて、樹脂組成物の製造方法として従来知られる方法に基づき製造できる。
【0096】
樹脂組成物は、例えば、成分の混合及び溶融混練等を経て得られる。
混合や溶融混練のタイミングは、採用しようとする成形方法(押出成形、射出成形、真空成形等)に応じて適宜設定できる。例えば、混合は、成形機のホッパーから投入する前や、成形と同時に行っても良い。
溶融混練は、例えば、二軸混練機等によって行っても良い。
【0097】
本発明の樹脂組成物の形態は、例えば、任意の大きさ及び形状のペレットであり得る。
【0098】
ペレットの形状は特に限定されず、例えば、円柱、球形、楕円球状等であっても良い。
【0099】
ペレットのサイズは特に限定されない。例えば、球形ペレットの場合、直径1~10mmであり得る。楕円球状のペレットの場合、縦横比0.1~1.0、縦横の長さ1~10mmであり得る。円柱ペレットの場合、直径1~10mm、長さ1~10mmであり得る。
【0100】
本発明の樹脂組成物を必要に応じて乾燥させた後、成形することで、所望の成形品を得ることができる。
【0101】
<成形品>
本発明の成形品は、任意の成形方法によって本発明の樹脂組成物を成形することで得られる。
【0102】
本発明の成形品は、用途等に応じた任意の形状であり得る。
本発明の成形品は、例えば、フィルム、シート、容器体(食品容器等)、日用品(各種使い捨て製品等)、自動車用部品、電気電子部品、各種消耗品(建築部材等の分野におけるもの等)等であり得る。
【0103】
本発明の樹脂組成物は機械特性が良好であるため、特に、インフレーション成形又は押出成形に適する。したがって、本発明の成形品は、好ましくはインフレーション成形品又は押出成形品である。
【0104】
インフレーション成形品としては、フィルム、シート、袋(レジ袋等)が挙げられる。
インフレーション成形品の肉厚は特に限定されないが、好ましくは10μm~200μm、更に好ましくは30μm~100μmである。
【0105】
押出成形品としては、フィルム、シート、中空品が挙げられる。
【0106】
<成形品の製造方法>
本発明の成形品の製造方法は、得ようとする成形品に応じて適宜選択できる。
本発明の成形品の製造方法としては、例えば、インフレーション成形法、押出成形法、射出成形法、発泡射出成形法、射出圧縮成形法、ブロー成形法、プレス成形法、カレンダー成形法、真空成形法等が挙げられる。
【0107】
成形条件は、樹脂組成物の組成や、成形品の種類等に応じて適宜設定できる。
【0108】
成形品がフィルムやシート等である場合、その成形時又は成形後に、一軸若しくは二軸方向、又は多軸方向に延伸しても良いし、しなくとも良い。
【実施例0109】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0110】
<樹脂組成物の作製>
表1~4に示す各成分を含む樹脂組成物を準備した。なお、表中の組成の数値の単位は「質量%」である。
【0111】
樹脂組成物中の各成分の詳細は下記の通りである。なお、以下、「平均粒径」とは、島津製作所社製の比表面積測定装置「SS-100型」を用い、JIS M-8511に準じた空気透過法による比表面積の測定結果から計算した値である。
【0112】
(生分解性樹脂)
生分解性樹脂1:ポリブチレンアジペートテレフタレート70質量%、及びポリ乳酸30質量%からなる。
生分解性樹脂2:ポリブチレンサクシネートアジペート70質量%、及びポリ乳酸30質量%からなる。
【0113】
(炭酸カルシウム)
炭酸カルシウム1:重質炭酸カルシウム粒子(平均粒径:2.2μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム2:重質炭酸カルシウム粒子(平均粒径:7.2μm、表面処理なし)
炭酸カルシウム3:軽質炭酸カルシウム粒子(平均粒径:1.5μm、表面処理なし)
【0114】
(可塑剤)
可塑剤1:クエン酸アセチルトリブチル
可塑剤2:クエン酸トリエチル
【0115】
(天然有機物)
セルロースパウダー:平均粒径20μm
木粉:平均粒径30μm、ヒノキ由来
デンプン:粉末状
モミ殻:粉末状
オカラ:粉末乾燥物
フスマ:粉末状
【0116】
<インフレーション成形品の作製>
インフレーション成形品として、フィルムを作製した。
具体的には、インフレーションフィルム押出ライン(60mmの円形ダイ、1.2mmのダイギャップ、30mmのネジ直径、L/D比=30)により、厚さ30μmのフィルムを作製した。フィルムは、2.5のBUR(ブローアップ比)で処理した。
なお、押出機において、各区域の温度は180℃~200℃に設定し、回転数は20rpmに維持した。
【0117】
<フィルムの評価>
得られたフィルムの引張強さ、切断時伸び、生分解性を下記の方法で評価した。その結果を表1~4に示す。
【0118】
(引張強さ、及び切断時伸び)
各フィルムから、JIS K6251:2017のダンベル状3号形試験片を得た。
得られた試験片の引張試験を、ストログラフ(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、23℃で行った。延伸速度は100mm/分に設定した。
得られた応力-歪曲線に基づき、引張強さ(単位:MPa)及び切断時伸び(単位:%)を測定し、以下の基準で評価した。
なお、引張強さ及び切断時伸びの値が高いほど、引張強さ及び切断時伸びが良好であることを意味する。
【0119】
[引張強さの評価基準]
A:引張強さが25MPa超である。
B:引張強さが15MPa以上25MPa未満である。
C:引張強さが5MPa以上15MPa未満である。
D:引張強さが5MPa未満である。
【0120】
[切断時伸びの評価基準]
A:切断時伸びが250%超である。
B:切断時伸びが150%以上250%未満である。
C:切断時伸びが50%以上150%未満である。
D:切断時伸びが50%未満である。
【0121】
(生分解性)
各フィルムの大きさを、縦30mm×横30mmに調整し、試験片を得た。
得られた試験片を、室温(25℃±5℃)と同程度に温度調整した海水(10ml)とともに25mlのバイアル瓶内に入れ、1か月間放置した。
次いで、各試験片の状態を目視観察し、以下の基準で評価した。
【0122】
[生分解性の評価基準]
A:試験片がほぼ完全に分解されている。
B:試験片が部分的に分解されているか、又は試験片に変化が認められない。

【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
【表3】
【0126】
【表4】
【0127】
各表の通り、何れの樹脂組成物から得られたフィルムにも生分解性が認められた。
他方で、本発明の要件を満たす樹脂組成物から得られたフィルムは、良好な引張強さ、及び切断時伸びをも備えていた。
この様な効果は、可塑性としてクエン酸アセチルトリブチルが配合されている場合、天然有機物が配合されている場合、又は重質炭酸カルシウムの平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下である場合において、より奏されやすい傾向にあった。
【0128】
上記の試験において「生分解性樹脂1」及び「生分解性樹脂2」の代わりに、PBATからなる生分解性樹脂、又はPBSAからなる生分解性樹脂を用いたところ、上記の結果と同様の結果が得られた。
【0129】
なお、データは示していないが、可塑剤として、本例で示したものの代わりに、従来知られるその他の可塑剤(フタル酸ジブチル、酒石酸ジブチル等)を用いたところ、何れも可塑剤2(クエン酸トリエチル)を用いた場合と同程度の結果であった。
このことから、可塑剤としてクエン酸アセチルトリブチルを用いると、PBAT又はPBSAを含む生分解性樹脂の生分解性を損なわずに、得られる成形品の引張強さ、及び切断時伸びを特に高めやすいことがわかった。
【手続補正書】
【提出日】2021-05-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物であって、
生分解性樹脂と、重質炭酸カルシウムと、クエン酸アセチルトリブチルとを含み、
前記生分解性樹脂と、前記重質炭酸カルシウムとの質量比が10:90~70:30であり、
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートアジペートを少なくとも含み、
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート又は前記ポリブチレンサクシネートアジペートの含有量が、前記樹脂組成物に対して、7.0質量%以上であり、
前記クエン酸アセチルトリブチルの含有量が、前記樹脂組成物に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリ乳酸からなり、
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートと、前記ポリ乳酸との質量比が50:50~90:10である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリ乳酸からなり、
前記ポリブチレンサクシネートアジペートと、前記ポリ乳酸との質量比が50:50~90:10である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下の天然有機物を更に含み、
前記天然有機物が、セルロースパウダー、木粉、デンプン、モミ殻、オカラ、及びフスマからなる群から選択される1以上である、
請求項1からの何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、請求項1からの何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1からの何れかに記載の樹脂組成物から得られた成形品。
【請求項7】
前記成形品がインフレーション成形品である、請求項に記載の成形品。
【請求項8】
前記成形品が押出成形品である、請求項に記載の成形品。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物であって、
生分解性樹脂と、重質炭酸カルシウムと、クエン酸アセチルトリブチルとを含み、
前記生分解性樹脂と、前記重質炭酸カルシウムとの質量比が10:90~70:30であり、
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート又はポリブチレンサクシネートアジペートを少なくとも含み、
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート又は前記ポリブチレンサクシネートアジペートの含有量が、前記生分解性樹脂に対して、70質量%以上であり、
前記クエン酸アセチルトリブチルの含有量が、前記樹脂組成物に対して、5.0質量%以上20.0質量%以下である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンアジペートテレフタレート及びポリ乳酸からなる
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記生分解性樹脂が、ポリブチレンサクシネートアジペート及びポリ乳酸からなる
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物に対して、3.0質量%以上25.0質量%以下の天然有機物を更に含み、
前記天然有機物が、セルロースパウダー、木粉、デンプン、モミ殻、オカラ、及びフスマからなる群から選択される1以上である、
請求項1からの何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記重質炭酸カルシウムの平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、請求項1からの何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1からの何れかに記載の樹脂組成物から得られた成形品。
【請求項7】
前記成形品がインフレーション成形品である、請求項に記載の成形品。
【請求項8】
前記成形品が押出成形品である、請求項に記載の成形品。