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  • 特開-リアクトル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149818
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
H01F37/00 S
H01F37/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052135
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】波江野 健司
(57)【要約】
【課題】稼働時の筐体の振動または騒音を低減したリアクトルを実現する。
【解決手段】リアクトル(1)は、脚鉄心(10)と、脚鉄心の周囲に巻き回された巻線(30)と、脚鉄心の端部に結合された第1ヨーク鉄心(21)および第2ヨーク鉄心(22)と、脚鉄心、巻線、第1ヨーク鉄心および第2ヨーク鉄心を収容する筐体(80)と、を備え、筐体の上面に対して第1ヨーク鉄心を固定することなく、底面と第2ヨーク鉄心との相対位置が固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚鉄心と、
前記脚鉄心の周囲に巻き回された巻線と、
使用状態における前記脚鉄心の鉛直上側の端部に結合された第1ヨーク鉄心と、
前記使用状態における前記脚鉄心の鉛直下側の端部に結合された第2ヨーク鉄心と、
前記脚鉄心、前記巻線、前記第1ヨーク鉄心および第2ヨーク鉄心を収容する筐体と、を備え、
前記使用状態における前記筐体の鉛直上側の上面に対して前記第1ヨーク鉄心を固定することなく、前記使用状態における鉛直下側の底面と前記第2ヨーク鉄心との相対位置が固定されているリアクトル。
【請求項2】
前記脚鉄心の前記上面側の端部において、前記脚鉄心と前記巻線との間に配されるスペーサをさらに備える請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記スペーサは、
前記脚鉄心と前記巻線との間に配される被挿入部と、
前記巻線の、前記上面側の端面に接合される被接合部と、を備える請求項2に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のリアクトル100の、構成の一例を示す図である。図5は、図4におけるB-B線矢視断面図である。図4および図5に示すように、リアクトル100は、脚鉄心110、ヨーク鉄心120、巻線130、くさび140、筐体150、および接続部材160を備える。
【0003】
脚鉄心110は、磁性体のブロックと、非磁性体かつ絶縁体の材料により形成されたギャップとが交互に積み重ねられた鉄心である。ヨーク鉄心120は、脚鉄心110の両端に接続される鉄心である。巻線130は、脚鉄心110の周囲に巻き回される電線である。脚鉄心110は上下に分割可能であり、予め形成された巻線130に対して上下から挿入される。くさび140は、脚鉄心110と巻線120との間に配され、それらの相対位置を固定する。筐体150は、脚鉄心110、ヨーク鉄心120および巻線130を収容する。
【0004】
接続部材160は、筐体150の上面に対する脚鉄心110の相対位置を固定するように、当該上面に脚鉄心110を接続する。すなわち、脚鉄心110の、筐体150の上面に対する相対位置は固定されている。また、脚鉄心110は、筐体150の底面には固定されずに載置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアクトル100においては、巻線130に電流が流れると、脚鉄心110およびヨーク鉄心120が励磁され、磁歪振動が生じる。また、脚鉄心110が励磁されることで、脚鉄心110のブロックの間に磁気吸引力が発生する。当該磁気吸引力によってギャップが圧縮されることによっても振動が発生する。リアクトル100においては、これらの振動が、筐体150の上面および底面の両方に固体伝搬される。このため、筐体150に伝搬される振動、およびそれに伴う騒音が大きくなるという問題が生じる。
【0006】
本発明の一態様は、稼働時の筐体の振動または騒音を低減したリアクトルを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るリアクトルは、脚鉄心と、前記脚鉄心の周囲に巻き回された巻線と、使用状態における前記脚鉄心の鉛直上側の端部に結合された第1ヨーク鉄心と、前記使用状態における前記脚鉄心の鉛直下側の端部に結合された第2ヨーク鉄心と、前記脚鉄心、前記巻線、前記第1ヨーク鉄心および第2ヨーク鉄心を収容する筐体と、を備え、前記使用状態における前記筐体の鉛直上側の上面に対して前記第1ヨーク鉄心を固定することなく、前記使用状態における鉛直下側の底面と前記第2ヨーク鉄心との相対位置が固定されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、稼働時の筐体の振動または騒音を低減したリアクトルを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るリアクトルの構成を示す断面図である。
図2図1におけるA-A線矢視断面図である。
図3】スペーサの形状を示す図である。
図4】従来のリアクトルの、構成の一例を示す図である。
図5図4におけるB-B線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係るリアクトル1の構成を示す図である。図2は、図1におけるA-A線矢視断面図である。図1および図2に示すように、リアクトル1は、脚鉄心10、第1ヨーク鉄心21、第2ヨーク鉄心22、巻線30、くさび40、スペーサ50、第1コア締め金具61、第2コア締め金具62、コア固定ボルト70、および筐体80を備える。
【0012】
筐体80は、脚鉄心10、巻線30、第1ヨーク鉄心21および第2ヨーク鉄心22を収容する。筐体80は、リアクトル1の他の構成要素についても併せて収容する。また、筐体80の内部には、絶縁媒体85が充填されている。絶縁媒体85は、例えば絶縁油または絶縁用のガスである。筐体80は、底面81、上面82、および側面83を有する。底面81は、リアクトル1の使用状態において、筐体80の鉛直下側に位置する面である。上面82は、リアクトル1の使用状態において、筐体80の鉛直上側に位置する面である。側面83は、リアクトル1の使用状態において、筐体80の側面となる面である。
【0013】
上面82および側面83は、予め一体に形成されている。リアクトル1の製造時には、底面81に他の構成要素を取り付けた上で、当該他の構成要素を内部に収容するように上面82および側面83を配置する。その後、底面81に側面83を溶接し、筐体80の内部に絶縁媒体85を充填する。
【0014】
以下の説明では、底面81に垂直な方向を上下方向、底面81から上面82へ向かう方向を上方向、上方向とは逆の方向を下方向と称する場合がある。また、各図面においては、上方向が+Z方向、下方向が-Z方向として示されている。また、各図面においては、水平面における互いに垂直な2つの方向をX方向およびY方向として示している。
【0015】
脚鉄心10は、周囲に巻線30が巻き回される鉄心である。脚鉄心10は、ブロック11およびギャップ12を備える。ブロック11は、磁性体のブロックである。ブロック11は、例えば鋼板を積層させることで形成される。リアクトル1においては、複数のブロック11が、底面81から離隔する方向に積み上げられている。ギャップ12は、複数のブロック11の間に配される。ギャップ12は、非磁性体かつ絶縁体である材料で形成される。複数のブロック11は、ギャップ12を介して樹脂などで接着されている。図1に示す例では、リアクトル1は、3本の脚鉄心10を有する。
【0016】
第1ヨーク鉄心21は、リアクトル1の使用状態における脚鉄心10の鉛直上側の端部に結合されたヨーク鉄心である。換言すれば、第1ヨーク鉄心21は、脚鉄心10の、底面81から遠い側の端部に結合されている。第2ヨーク鉄心22は、リアクトル1の使用状態における脚鉄心10の鉛直下側の端部に結合されたヨーク鉄心である。換言すれば、第2ヨーク鉄心22は、脚鉄心10の、底面81に近い側の端部に結合されている。第1ヨーク鉄心21および第2ヨーク鉄心22は、脚鉄心10の両端に磁気結合されている。第1ヨーク鉄心21および第2ヨーク鉄心22は、例えば鋼板を積層させることで形成される。
【0017】
巻線30は、脚鉄心10の周囲に巻き回される電線である。上下方向における巻線30の高さは、上下方向における脚鉄心10の高さと略等しい。リアクトル1においては、巻線30を電流が流れることで脚鉄心10、第1ヨーク鉄心21および第2ヨーク鉄心22が励磁される。
【0018】
脚鉄心10は、上下方向における中央で分割可能に形成されている。リアクトル1の製造時には、予め形成された巻線30の下側部分に脚鉄心10の下側部分を挿入し、その後で脚鉄心10の上側部分を巻線30の上側部分に挿入する。
【0019】
くさび40は、脚鉄心10と巻線30との間に配される部材である。くさび40は、例えば木材で形成される。また、くさび40は、脚鉄心10の上下方向における高さの半分の高さを有する。すなわち、くさび40の長さは、上下方向における中央で分割可能な脚鉄心10の、下側部分の高さに等しい。くさび40により、脚鉄心10の下側部分および巻線30が構造的に一体となる。したがって、リアクトル1の輸送時などにおける耐衝撃性が向上する。
【0020】
リアクトル1の製造時には、くさび40は、脚鉄心10の下側部分の周囲に配される。周囲にくさび40が配された脚鉄心10の下側部分に巻線30を装着することで、脚鉄心10と巻線30との間にくさび40が配される。
【0021】
スペーサ50は、脚鉄心10の上面側の端部において、脚鉄心10と巻線30との間に配される。スペーサ50は、例えばパルプを板状に圧縮したプレスボードにより形成される。スペーサ50により、脚鉄心10の上側部分と巻線30とが一体化される。
【0022】
図3は、スペーサ50の形状を示す図である。図3に示すように、スペーサ50は、被挿入部51および被接合部52を備える。被挿入部51および被接合部52はそれぞれ、互いに略直角な板状の部位である。被挿入部51は、脚鉄心10と巻線30との間に配される部位である。被接合部52は、巻線30の上面側の端面に接合される部位である。具体的には、被接合部52は、巻線30の上面側の端面に糊付けされる糊代であってよい。例えば被挿入部51および被接合部52が互いに面一な状態のプレスボードを折り曲げることで、図3に示す形状のスペーサ50を容易に製造できる。
【0023】
リアクトル1の製造時には、巻線30の上面に被接合部52が糊付けされ、巻線30の内面に被挿入部51が接した状態で、脚鉄心10の上側部分が巻線30に挿入される。このとき、巻線30の上面に被接合部52が糊付けされていることで、脚鉄心10と被挿入部51との摩擦によりスペーサ50が巻線30の内部へ引き込まれることが防止される。
【0024】
脚鉄心10および巻線30の寸法には、製造時の公差の範囲内でばらつきが生じる。このため、脚鉄心10と巻線30との間隙の大きさにも同様のばらつきが生じる。また、図2に示す例では、1組の脚鉄心10および巻線30に対して、6枚のスペーサ50が配されている。脚鉄心10および巻線30の形状しだいでは、スペーサ50が配される位置によっても脚鉄心10と巻線30との間隙の大きさにばらつきが生じる。このため、リアクトル1の製造時には、互いに厚さが異なる複数のスペーサ50が用意される。脚鉄心10と巻線30との間隙の大きさに応じた厚さのスペーサ50を使用することで、脚鉄心10と巻線30とを高い精度で一体化できる。
【0025】
なお、1組の脚鉄心10および巻線30に対するスペーサ50の数は、6枚に限定されない。スペーサ50の数を増加させると、脚鉄心10と巻線30とをより高い精度で一体化できる。一方で、スペーサ50の数を増加させると、それらのスペーサ50を配する手間が増大する。スペーサ50の数は、脚鉄心10と巻線30との一体化についての、必要な精度および許容される手間に応じて決定されればよい。
【0026】
第1コア締め金具61および第2コア締め金具62は、脚鉄心10、第1ヨーク鉄心21および第2ヨーク鉄心22を挟持する。第1コア締め金具61および第2コア締め金具62は、対応する第1ヨーク鉄心21または第2ヨーク鉄心22に対して、ヨーク鉄心積層スタッド63により一体に連結される。また、第1コア締め金具61および第2コア締め金具62は、脚鉄心10、特にギャップ12を締め付けるためのギャップ締付スタッド64により互いに連結される。これにより、第1コア締め金具61および第2コア締め金具62は、第1ヨーク鉄心21、第2ヨーク鉄心22、ならびに、第1ヨーク鉄心21および第2ヨーク鉄心22の間に配された脚鉄心10を上下から挟持する。この結果、第1コア締め金具61および第2コア締め金具62は、脚鉄心10の上側部分および下側部分、第1ヨーク鉄心21、第2ヨーク鉄心22、および巻線30と一体となる。
【0027】
コア固定ボルト70は、第2コア締め金具62を底面81に固定する。上述したとおり、第2コア締め金具62は、第2ヨーク鉄心22と一体に連結されている。したがって、コア固定ボルト70は、第2コア締め金具62を底面81に固定することで、底面81と第2ヨーク鉄心22との相対位置を固定する。コア固定ボルト70が第2コア締め金具62を底面81に固定する具体的な態様については特に限定されず、第2コア締め金具62を底面81に強固に固定できればよい。
【0028】
リアクトル1においては、使用状態における筐体80の鉛直上側の上面に対して第1ヨーク鉄心21を固定することなく、鉛直下側の底面と第2ヨーク鉄心22との相対位置が固定されている。このため、脚鉄心10、第1ヨーク鉄心21および第2ヨーク鉄心22において生じた振動は、底面81へのみ固体伝搬される。上記振動は、筐体80の他の面へは、絶縁媒体85を介して伝搬される。しかし、絶縁媒体85を介して伝搬される振動の大きさは、固体伝搬される振動の大きさと比較して小さい。
【0029】
したがって、リアクトル1においては、例えば図4および図5に示したリアクトル100と比較して、筐体80へ伝搬される振動の大きさが低減されるため、当該振動に起因する騒音も低減される。さらに、リアクトル1は、底面81に対する第2ヨーク鉄心22の相対位置が固定されていることにより、リアクトル100と比較して、第2ヨーク鉄心22近傍において優れた耐衝撃性を有する。
【0030】
また、上述したとおり、リアクトル1においては、脚鉄心10の上側部分と巻線30とがスペーサ50により一体化されている。このため、リアクトル1は、筐体80に対する第1ヨーク鉄心21の相対位置が筐体80の他の面に対して固定されていなくても、第1ヨーク鉄心21の近傍において優れた耐衝撃性を有する。
【0031】
なお、筐体80の振動および騒音を低減する観点からは、リアクトル1は必ずしもスペーサ50を備えなくてもよい。リアクトル1がスペーサ50を備えない場合であっても、脚鉄心10、第1ヨーク鉄心21および第2ヨーク鉄心22において生じた振動は、底面81から筐体80へのみ固体伝搬されるため、リアクトル100と比較して筐体80の振動および騒音を低減することは可能である。ただし、上述した耐衝撃性の観点からは、リアクトル1はスペーサ50を備えることが好ましい。
【0032】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るリアクトルは、脚鉄心と、前記脚鉄心の周囲に巻き回された巻線と、使用状態における前記脚鉄心の鉛直上側の端部に結合された第1ヨーク鉄心と、前記使用状態における前記脚鉄心の鉛直下側の端部に結合された第2ヨーク鉄心と、前記脚鉄心、前記巻線、前記第1ヨーク鉄心および第2ヨーク鉄心を収容する筐体と、を備え、前記使用状態における前記筐体の鉛直上側の上面に対して前記第1ヨーク鉄心を固定することなく、前記使用状態における鉛直下側の底面と前記第2ヨーク鉄心との相対位置が固定されている。
【0033】
上記の構成によれば、巻線に電流が流れることで、脚鉄心、第1ヨーク鉄心および第2ヨーク鉄心が励磁されて振動が生じる。当該振動は、第2ヨーク鉄心から筐体の底面へは固体伝搬されるが、第1ヨーク鉄心から筐体の上面へは固体伝搬されない。したがって、リアクトルの稼働時における筐体の振動および当該振動に起因する騒音を低減できる。
【0034】
本発明の態様2に係るリアクトルは、態様1において、前記脚鉄心の前記上面側の端部において、前記脚鉄心と前記巻線との間に配されるスペーサをさらに備える。
【0035】
上記の構成によれば、脚鉄心および巻線が、脚鉄心の上面側において、スペーサにより一体化される。したがって、リアクトルは、第1ヨーク鉄心の近傍において優れた耐衝撃性を有する。
【0036】
本発明の態様2に係るリアクトルは、態様2において、前記スペーサは、前記脚鉄心と前記巻線との間に配される被挿入部と、前記巻線の、前記上面側の端面に接合される被接合部とを備える。
【0037】
上記の構成によれば、被接合部が巻線の端面に接合される。したがって、脚鉄心を挿入する場合に脚鉄心と被挿入部との間の摩擦によりスペーサが巻線の内部へ引き込まれることが防止される。
【0038】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0039】
1 リアクトル
10 脚鉄心
21 第1ヨーク鉄心
22 第2ヨーク鉄心
30 巻線
50 スペーサ
51 被挿入部
52 被接合部
80 筐体
81 底面
82 上面
図1
図2
図3
図4
図5