(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149821
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】コイル部品の基体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/02 20060101AFI20220929BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20220929BHJP
B24B 19/02 20060101ALN20220929BHJP
B24B 9/00 20060101ALN20220929BHJP
B24B 31/00 20060101ALN20220929BHJP
【FI】
H01F41/02 D
H01F41/04 F
B24B19/02
B24B9/00 602Z
B24B31/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052139
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和寛
(72)【発明者】
【氏名】大渕 由圭
(72)【発明者】
【氏名】小野 健次
【テーマコード(参考)】
3C049
3C158
【Fターム(参考)】
3C049AA02
3C049AA09
3C049CA01
3C049CB01
3C158AA01
3C158CA01
3C158CB01
(57)【要約】
【課題】電子部品が小型化した場合でも、成形体の表面を適切に加工できること。
【解決手段】コイル部品の基体の製造方法は、無機粉末及び樹脂を含む混合物を加圧成形した成形体10を形成する工程と、加工装置30の加工部32上に成形体10の一部である被加工部(溝部16の内面)が接するように載置し、成形体10を加工部32が延びる搬送方向に移動させつつ、成形体10を搬送方向とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、成形体10の一部である被加工部を加工する工程と、成形体10を熱処理する工程と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粉末及び樹脂を含む混合物を加圧成形した成形体を形成する工程と、
加工装置の加工部上に前記成形体の一部である被加工部が接するように載置し、前記成形体を前記加工部が延びる搬送方向に移動させつつ、前記成形体を前記搬送方向とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、前記成形体の一部である前記被加工部を加工する工程と、
前記成形体を熱処理する工程と、を備えるコイル部品の基体の製造方法。
【請求項2】
前記加工部は、谷部と山部を繰り返しながら前記搬送方向に延びるレール部である、請求項1に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【請求項3】
前記レール部は、上面視で左右方向に曲折しながら前記搬送方向に延びる、請求項2に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【請求項4】
前記成形体の一部である前記被加工部は、前記成形体を前記搬送方向に垂直な面で断面視したときに凹状部である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【請求項5】
前記加工部の上部の前記搬送方向に直交する方向の幅は、前記搬送方向に垂直な面で断面視したときの前記凹状部の内面間の幅よりも小さい、請求項4に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【請求項6】
前記成形体は、コイル導体が巻回される軸部と、前記軸部の端に設けられ、前記コイル導体が引き出される前記凹状部を有する鍔部と、を備える、請求項4または5に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【請求項7】
前記成形体の一部である前記被加工部は、前記成形体の稜線部である、請求項1から3のいずれか一項に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【請求項8】
前記加工部の上部の前記搬送方向に垂直な方向の幅は、前記搬送方向において変化する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【請求項9】
前記加工装置は、前記加工部と、前記搬送方向に直交する方向で前記加工部と空隙を挟んで対向し、前記加工部を保持する保持部と、を備え、
前記加工部を振動させて前記成形体を前記搬送方向に移動させる、請求項1から8のいずれか一項に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【請求項10】
前記加工装置は、前記加工部と搬送部とを備え、
前記搬送部を振動させて前記成形体を前記搬送方向に移動させ、前記加工部を振動させて前記成形体の一部である前記被加工部を加工する、請求項1から9のいずれか一項に記載のコイル部品の基体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品の基体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品などに用いられる基体は、無機粉末と樹脂を含む混合物を加圧成形することで成形体を形成し、この成形体を熱処理することで得られる。成形体を形成するときに発生するバリを取り除く方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-194353号公報
【特許文献2】特開2017-108029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成形体を形成した後にバレル研磨により成形体の表面を加工することが一般的に行われている。しかしながら、電子部品の小型化が進むに伴い、バレル研磨に用いられるメディアが小型化するため、メディアの自重が軽くなって運動エネルギーが小さくなり、成形体の表面を適切に加工することが難しくなっている。また、特許文献1、2に記載の方法は、主に摩擦エネルギーによって成形体の表面を加工するため、加工時間が長くなってしまうなど、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、電子部品が小型化した場合でも、成形体の表面を適切に加工できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無機粉末及び樹脂を含む混合物を加圧成形した成形体を形成する工程と、加工装置の加工部上に前記成形体の一部である被加工部が接するように載置し、前記成形体を前記加工部が延びる搬送方向に移動させつつ、前記成形体を前記搬送方向とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、前記成形体の一部である前記被加工部を加工する工程と、前記成形体を熱処理する工程と、を備えるコイル部品の基体の製造方法である。
【0007】
上記構成において、前記加工部は、谷部と山部を繰り返しながら前記搬送方向に延びるレール部である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記レール部は、上面視で左右方向に曲折しながら前記搬送方向に延びる構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記成形体の一部である前記被加工部は、前記成形体を前記搬送方向に垂直な面で断面視したときに凹状部である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記加工部の上部の前記搬送方向に直交する方向の幅は、前記搬送方向に垂直な面で断面視したときの前記凹状部の内面間の幅よりも小さい構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記成形体は、コイル導体が巻回される軸部と、前記軸部の端に設けられ、前記コイル導体が引き出される前記凹状部を有する鍔部と、を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記成形体の一部である前記被加工部は、前記成形体の稜線部である構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記加工部の上部の前記搬送方向に垂直な方向の幅は、前記搬送方向において変化する構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記加工装置は、前記加工部と、前記搬送方向に直交する方向で前記加工部と空隙を挟んで対向し、前記加工部を保持する保持部と、を備え、前記加工部を振動させて前記成形体を前記搬送方向に移動させる構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記加工装置は、前記加工部と搬送部とを備え、前記搬送部を振動させて前記成形体を前記搬送方向に移動させ、前記加工部を振動させて前記成形体の一部である前記被加工部を加工する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、成形体の表面を適切に加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る基体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】
図2(a)は、成形体の一例を示す平面図、
図2(b)は、
図2(a)のA方向から見た側面図である。
【
図3】
図3(a)は、第1の実施形態における成形体の加工時を示す上面図、
図3(b)は、
図3(a)のA方向から見た側面図、
図3(c)は、
図3(b)のB方向から見た側面図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、加工部による加工について説明する側面図である。
【
図5】
図5(a)は、第1の実施形態に係る第1変形例の加工装置の上面図、
図5(b)は、
図5(a)のA方向から見た側面図、
図5(c)は、
図5(b)のB方向から見た側面図である。
【
図6】
図6(a)は、第1の実施形態に係る第2変形例の加工装置の上面図、
図6(b)は、
図6(a)のA方向から見た側面図、
図6(c)は、
図5(b)のB方向から見た側面図である。
【
図7】
図7(a)は、第1の実施形態に係る第3変形例の加工装置の上面図、
図7(b)は、
図7(a)のA方向から見た側面図、
図7(c)は、
図7(b)のB方向から見た側面図である。
【
図8】
図8(a)は、第1の実施形態に係る第4変形例の加工装置の上面図、
図8(b)は、
図8(a)のA方向から見た側面図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、第1の実施形態に係る第4変形例の加工装置の加工部の曲折の他の例を示す上面図である。
【
図10】
図10(a)は、第2の実施形態における成形体の加工時を示す上面図、
図10(b)は、
図10(a)のA方向から見た側面図、
図10(c)は、
図10(b)のB方向から見た側面図である。
【
図11】
図11(a)は、第2の実施形態に係る第1変形例の加工装置の上面図、
図11(b)は、
図11(a)のA方向から見た側面図である。
【
図12】
図12(a)及び
図12(b)は、第3の実施形態に係る成形体の表面加工をする前の図、
図12(c)及び
図12(d)は、表面加工をした後の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を適宜参照しながら、本願発明の実施形態について説明する。但し、本願発明は図示された態様に限定される訳ではない。また、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る基体の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図1に示すように、まず、無機粉末と樹脂を含む混合物を加圧成形して成形体を形成する(ステップS10)。例えば、磁性粉末と樹脂を混合した混合物である磁性体ペーストを金型のキャビティ内に充填してプレス成形することで成形体を形成する。磁性粉末として、フェライト粉末又は金属磁性粉末などが用いられる。なお、磁性粉末の代わりに誘電体粉末やガラス粉末などの非磁性粉末を用いてもよい。
【0020】
図2(a)は、成形体10の一例を示す平面図、
図2(b)は、
図2(a)のA方向から見た側面図、
図2(c)は、
図2(a)のB方向から見た側面図である。
図2(a)から
図2(c)に示すように、成形体10は、例えば、軸部12と、軸部12の両端に設けられた鍔部14a及び14bと、を備えるドラムコアである。鍔部14aの軸部12が接続する面とは反対の面には、軸部12に巻回されるコイル導体が引き出される溝部16が2つ設けられている。溝部16の幅Wは例えば0.5mm以下である。溝部16は、少なくとも3つの平面で構成され、隣り合う面との角度は90°以上である。溝部16は、表面側が奥側よりも広がっている形状をしていてもよい。
【0021】
成形体10は、溝部16の内面17などにバリ18が発生することがある。バリ18は、成形体10を形成するときの加圧成形時に、無機粉末の一部が金型の隙間に入り込むことで形成される。バリ18の大きさは、無機粉末の大きさ、金型のクリアランスの大きさ、及び/又は加圧成形時の圧力の大きさなどによって変化する。金型のクリアランスの大きさが無機粉末の大きさよりも大きい場合に、大きなバリ18が形成され易い。
【0022】
図1に戻り、バリ18を取り除くために、成形体10に設けられた溝部16内を加工する(ステップS12)。
図3(a)は、第1の実施形態における成形体10の加工時を示す上面図、
図3(b)は、
図3(a)のA方向から見た側面図、
図3(c)は、
図3(b)のB方向から見た側面図である。
図3(a)から
図3(c)において、図の明瞭化のために加工装置30にハッチングを付している(以下の同様な図においても同じ)。
図3(a)及び
図3(b)では、成形体10の移動の途中状態を点線で図示している。
図3(a)から
図3(c)に示すように、成形体10の加工に用いられる加工装置30は、加工部32と加工部32を保持する保持部34とを備える。成形体10は、加工部32が延びた方向(搬送方向)に加工部32上を移動することで表面が加工される。加工部32は、例えば谷部と山部を繰り返しながら搬送方向に延びるレール部である。成形体10が搬送される方向をX軸方向、鉛直方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とする。
【0023】
加工部32は、成形体10よりも硬度の高い材質により形成される。加工部32は、例えばステンレス、ハイス鋼、又は超硬合金などにより形成される。加工部32の表面に砥石又は研磨粉などがコーティングされていてもよい。保持部34は、加工部32を保持することが可能な材料で形成されていて、例えば金属などで形成されている。加工装置30では、搬送方向に直交するY軸方向において加工部32と保持部34との間に空隙36が形成されていてもよい。
【0024】
加工部32は、Y軸方向に平行に並んで2つ設けられている。加工部32の数は被加工部19の数(本第1の実施形態では溝部16の数)によって増減されてもよい。加工部32の数が2以上であることにより、成型体10の搬送が容易になり、また、加工によって姿勢が変動する成型体10を安定して保持することができる。Z軸方向において加工部32が保持部34から突出した最小長さは鍔部14aに設けられた溝部16の深さよりも大きく、加工部32の上部のY軸方向の幅は溝部16のY軸方向の幅よりも小さい。このため、加工部32は溝部16内に挿入可能となっている。溝部16の内面17に発生したバリ18を取り除くために、加工部32の上部が溝部16内に挿入されて、加工部32上に溝部16が接するように載置される。そして、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を加工部32の谷部と山部に沿って鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、溝部16のみを加工して溝部16の内面17に発生したバリ18を取り除く。成形体10は、加工部32が振動することで搬送方向(+X方向)に移動する。
【0025】
加工部32上に溝部16を載置し、成形体10を搬送方向(+X方向)に移動させつつ、搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、成型体10の姿勢は、鍔部14aの下面が水平面に対して搬送方向(+X方向)に下向き及び上向きに傾くことが繰り返される。すなわち、成形体10の鍔部14aの下面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となること、俯角(マイナスの角度)となることが繰り返される。加工部32と溝部16との接触が線接触又は点接触となることが繰り返される。線接触及び点接触では、成形体10が搬送方向(+X方向)に移動することで発生する第1エネルギーと鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに移動することで発生する第2エネルギーとが合わさった加工エネルギーが接触部位に集中する。すなわち、第1エネルギーと第2エネルギーの両方が合わさって加工エネルギーとして、被加工部19である溝部16の一部の微細部分に衝撃として集中することになり、それによって、効率的に一部の微細部分の加工を行うことができる。このため、成形体10が小型で軽量であっても、溝部16内を適切に加工でき、バリ18を取り除くことができる。成形体10の鍔部14aの下面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となること、俯角(マイナスの角度)となることが繰り返されると、接触部位の位置は、被加工部である溝部16における搬送方向の前方部分となることと、搬送方向の後方部分へとなることが繰り返される。このように、常に被加工位置は移動し、このことにより被加工部である溝部16の全体にわたって適切な加工が行われる。このことを、
図4(a)及び
図4(b)を用いて詳しく説明する。
【0026】
図4(a)及び
図4(b)は、加工部32による加工について説明する側面図である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、成形体10は搬送方向とは異なる方向である鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに向きを変えるため、被加工部19a、19bは加工部32と一定の角度とはならず接触角度を変えながら加工が施される。接触角度は搬送方向を基準とするとプラスの角度からマイナスの角度まで、マイナスの角度からプラスの角度まで連続的に変化し得る。
図4(a)のように、成形体10の搬送方向に対して前方側の被加工部19aは、成形体10が谷部を通過する際に谷部より搬送方向で前方側に位置する加工部32との接触角度が大きくなり、このときに加工エネルギーが集中して加工が施される。
図4(b)のように、成形体10の搬送方向に対して後方側の被加工部19bは、成形体10が谷部を通過する際に谷部より搬送方向で後方側に位置する加工部32との接触角度が大きくなり、このときに加工エネルギーが集中して加工が施される。このように、被加工部19a、19bは加工部32との間で一定の角度とはならず様々な接触角度を作りながら上下左右方向において加工が施される。この成形体10の向きを繰り返し変えることで、より確実な加工を行うことができる。また、この方法によれば、1つの加工部32において、成形体10の被加工部19a、19bの2箇所の加工を一度の工程内で行うことができる。2箇所の被加工部19a、19bは、
図4(a)及び
図4(b)のように、成形体10の搬送方向に対して前方側に位置する部分と後方側に位置する部分であるため、被加工部19a、19bが溝部16の場合においては溝部16の両端が加工されるようになる。また、このような動きにより加工を施すことで、被加工部19a、19bは丸みを帯びた状態とすることができる。
【0027】
なお、ステップS12において、加工装置30を用いた成形体10の加工の前又は後に、成形体10の表面全体を加工するバレル研磨などを行ってもよい。また、バレル研磨は、ステップS12で行わずに、後述するステップS14の後に行ってもよい。
【0028】
図1に戻り、成形体10の加工が終了した後、成形体10に対して熱処理(例えば200℃程度)を行う(ステップS14)。これにより、成形体10からなる基体が形成される。
【0029】
なお、上記第1の実施形態により形成した基体を用いてコイル部品を製造する場合、軸部12に絶縁被膜付きの導線を巻回してコイル導体の周回部を形成し、周回部の両端から導線を溝部16内に引き出し、溝部16内に設けられた金属膜に導線を接続して外部電極を形成する。これにより、巻線型のコイル部品が得られる。
【0030】
以上説明したように、本第1の実施形態に係る基体の製造方法によれば、
図1に示すように、無機粉末及び樹脂を含む混合物を加圧成形した成形体10を形成する(ステップS10)。加工部32上に成形体10に形成された被加工部19である溝部16が接するように載置し、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、溝部16(被加工部19)を加工する(ステップS12)。その後、成形体10を熱処理する(ステップS14)。この方法によれば、加工部32と溝部16との接触が線接触又は点接触となることが繰り返され、この線接触又は点接触の接触部位に、成形体10が搬送方向(+X方向)に移動することで発生する第1エネルギーと鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに移動することで発生する第2エネルギーとが合わさった加工エネルギーが集中する。すなわち、第1エネルギーと第2エネルギーの両方が合わさって加工エネルギーとして、被加工部19である溝部16の一部の微細部分に衝撃として集中する。このため、成形体10が小型で軽量の場合でも、溝部16内を適切に加工できる。よって、溝部16に内面17に発生したバリ18を取り除くことができる。
【0031】
また、本第1の実施形態では、加工部32は、谷部と山部を繰り返しながら搬送方向(+X方向)に延びるレール部である。このような加工部32を用いることで、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることを容易に実現できる。
【0032】
また、本第1の実施形態では、加工部32により加工される成形体10の被加工部19が、成形体10を搬送方向(+X方向)に垂直な面(YZ面)で断面視したときに凹状部である溝部16である。電子部品の小型化に伴って溝部16の寸法も小さくなるため、バレル研磨を用いた表面加工では、溝部16内に入り込めるような小さなメディアを用いることになる。このため、メディアの自重が軽くなって発生する運動エネルギーが小さくなり、溝部16を適切に加工できずに、バリ18を取り除けない場合がある。しかしながら、加工部32上に溝部16が接するように載置し、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、上述したように、溝部16内を適切に加工でき、溝部16の内面17に発生したバリ18を取り除くことができる。
【0033】
また、本第1の実施形態では、加工部32の上部の搬送方向(+X方向)に垂直な方向(Y軸方向)の幅は、搬送方向(+X方向)に垂直な面(YZ面)で断面視したときの溝部16の内面間の幅よりも小さい。これにより、加工部32の上部を溝部16内に挿入することができ、溝部16内を加工することができる。
【0034】
また、本第1の実施形態では、鍔部14aに設けられた溝部16には、軸部12に巻回されたコイル導体が引き出される。このような溝部16の寸法は小さいため、バレル研磨を行っても、メディアの自重が軽くなって発生する運動エネルギーが小さくなり、溝部16を適切に加工できない場合がある。しかしながら、加工部32上に溝部16が接するように載置し、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、上述したように、溝部16内を適切に加工できる。
【0035】
また、本第1の実施形態では、加工部32と保持部34は空隙36を挟んで対向する。そして、加工部32を振動させることで成形体10を搬送方向(+X方向)に移動させる。加工部32と保持部34の間に空隙36が形成されていることで、成形体10を搬送方向(+X方向)に移動させるための振動を2つの加工部32それぞれ独立に制御し易くなる。また、加工部32と保持部34の間に空隙36が形成されていることで、加工部32により加工された加工くずを空隙36内に排出することができ、加工くずが成形体10に付着することを抑制できる。加工くずが空隙36内に排出され易くするために、空隙36の-Z側から空気を吸引してもよい。
【0036】
成形体10の一部である溝部16を加工する加工装置は、
図3(a)から
図3(c)に示した加工装置30の場合に限られず、その他の場合でもよい。以下に、加工装置の変形例を示す。
【0037】
図5(a)は、第1の実施形態に係る第1変形例の加工装置30aの上面図、
図5(b)は、
図5(a)のA方向から見た側面図、
図5(c)は、
図5(b)のB方向から見た側面図である。
図5(a)から
図5(c)に示すように、加工装置30aでは、加工部32と保持部34の間に空隙が形成されていない。加工部32は、保持部34の上面に固定されていてもよいし、保持部34に一部が埋設されていてもよいし、埋設した部分が保持部34を貫通していてもよい。その他の構成は加工装置30と同じであるため説明を省略する。
【0038】
加工装置30aのように、加工部32と保持部34がその間に空隙が設けられずに一体となっていることで、保持部34による加工部32の保持強度が高くなる。
【0039】
図6(a)は、第1の実施形態に係る第2変形例の加工装置30bの上面図、
図6(b)は、
図6(a)のA方向から見た側面図、
図6(c)は、
図6(b)のB方向から見た側面図である。
図6(a)から
図6(c)に示すように、加工装置30bでは、保持部34の上面に加工部32と搬送部38が固定されている。搬送部38は、加工部32と同様に、X軸方向に谷部と山部を繰り返しながら延びている。搬送部38は、成形体10を加工部32上で搬送方向(+X方向)に移動させるために振動する。言い換えると、成形体10は、搬送部38の振動によって加工部32上を搬送方向(+X方向)に移動する。加工部32は、成形体10を加工するために振動する。加工部32は、搬送部38よりも表面粗さが大きくてもよい。加工部32と搬送部38の間に空隙が形成されていてもよい。その他の構成は加工装置30と同じであるため説明を省略する。
【0040】
加工装置30bのように、加工部32の他に搬送部38を備えていてもよい。そして、搬送部38を振動させて成形体10を搬送方向(+X方向)に移動させ、加工部32を振動させて成形体10の一部である溝部16内を加工してもよい。これにより、搬送部38を成形体10の搬送に適した振動で振動させ、加工部32を成形体10の加工に適した振動で振動させることができ、効率的な搬送及び加工の両立を図ることができる。
【0041】
図7(a)は、第1の実施形態に係る第3変形例の加工装置30cの上面図、
図7(b)は、
図7(a)のA方向から見た側面図、
図7(c)は、
図7(b)のB方向から見た側面図である。
図7(a)から
図7(c)では、加工部32上を移動する成形体10を図示している。上述した第1の実施形態に係る第2変形例の加工装置30bでは、加工部32と搬送部38とが共に谷部と山部を繰り返しながらX軸方向に延びている。これに対し、第1の実施形態に係る第3変形例の加工装置30cでは、
図7(a)から
図7(c)に示すように、搬送部38は谷部と山部を繰り返しながらX軸方向に延びているが、加工部32aは一定の高さでX軸方向に延びている。また、加工部32aと搬送部38との間には空隙36が形成されている。
【0042】
加工装置30cのように、加工部32aは一定の高さでX軸方向に延び、搬送部38は谷部と山部を繰り返しながらX軸方向に延びる場合でもよい。この場合、加工部32aの上面と搬送部38の上面との間隔を適切な大きさにすることで、成形体10を搬送方向(+X方向)に移動させつつ、搬送部38の谷部と山部によって成形体10を鉛直斜め上向き及び鉛直斜め下向きに移動させることができる。
【0043】
図8(a)は、第1の実施形態に係る第4変形例の加工装置30dの上面図、
図8(b)は、
図8(a)のA方向から見た側面図である。
図8(a)及び
図8(b)では、加工部32上を移動する成形体10を図示している。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、加工装置30dでは、加工部32は保持部34の上面に固定されかつ上面視で左右方向(Y軸方向)に曲折しながら搬送方向(+X方向)に延びている。加工部32のY軸方向に曲折している部分の最大振幅値、すなわち加工部32のうちの+Y方向への曲折が最大の部分と、加工部32のうちの-Y方向への曲折が最大の部分との間のY軸方向の距離は、被加工部19の開口幅である溝部16の幅よりも小さく設定される。その他の構成は加工装置30と同じであるため説明を省略する。
【0044】
加工装置30dのように、加工部32が上面視で左右方向(Y軸方向)に曲折していることで、加工部32上を移動する成形体10は、加工部32に対して右(-Y方向)より又は左(+Y方向)よりを繰り返しながら搬送方向(+X方向)に移動する。成形体10には鉛直下向きに重力が作用しているから左右への移動する際にも重力の力が加わって、成形体10を搬送方向(+X方向)に移動させつつ、搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直方向に直交する横右向き(-Y方向)及び鉛直方向に直交する横左向き(+Y方向)に繰り返し移動させることになる。成型体10の姿勢は、搬送方向(+X方向)に対して搬送方向に左向き及び右向きに傾くことが繰り返される。すなわち、成形体10の被加工部19を含む面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となること俯角(マイナスの角度)となることと、成型体10が搬送方向に対して右に向くことと左に向くことが繰り返される。これにより、第1の実施形態と同様に、成形体10の搬送方向(+X方向)への移動で発生する第1エネルギーと鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きへの移動で発生する第2エネルギーと成形体10の搬送方向(+X方向)に対する左右への移動で発生する第3エネルギーとが合わさった加工エネルギーが被加工部19の微細部分に局所的に集中する。すなわち、第1エネルギーと第2エネルギーと第3エネルギーが合わさって加工エネルギーとして、被加工部19の一部の微細部分に衝撃として集中する。このため、成形体10が小型で軽量であっても、被加工部19を適切に加工でき、バリを取り除くことができる。成形体10の被加工部19を含む面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となり、俯角(マイナスの角度)となり、成型体10が搬送方向に対して右に向くことと左に向くことが繰り返されると、接触部位の位置は、被加工部19の面における搬送方向の前方部分となることと、搬送方向の後方部分へとなることが繰り返されると同時に被加工部19の面における搬送方向に対して左側部分となることと、搬送方向に対して右側部分へとなることが繰り返される。このように常に被加工位置は移動しこのことにより被加工部19の面の全体にわたって適切な加工が行われる。このため、被加工部19である溝部16内全体を満遍なく加工することができる。よって、溝部16の内面17に発生したバリ18を良好に取り除くことができる。
【0045】
図9(a)及び
図9(b)は、加工部32の曲折の他の例を示す上面図である。
図9(a)及び
図9(b)の曲折においても、
図8(a)の曲折と同様に、加工部32のY軸方向に曲折している部分の最大振幅値、すなわち加工部32のうちの+Y方向への曲折が最大の部分と、加工部32のうちの-Y方向への曲折が最大の部分との間のY軸方向の距離は、被加工部19の開口幅である溝部16の幅よりも小さく設定されるが、
図9(a)及び
図9(b)では、図の明瞭化のために、最大振幅幅を大きく図示している。
図8(a)では、加工部32は上面視で三角波状に曲折している場合を例に示したが、
図9(a)に示すように、加工部32は上面視で正弦波状に曲折している場合でもよい。すなわち、加工部32が左右方向(Y軸方向)に曲折するには、三角波状に曲折する場合や正弦波状に曲折する場合を含む。
【0046】
また、
図8(a)では、2つの加工部32の間隔は搬送方向(+X方向)において一定である場合を例に示したが、
図9(b)に示すように、2つの加工部32の間隔は搬送方向(+X方向)において変化する場合でもよい。なお、
図9(b)の場合においても、加工部32は上面視で正弦波状に曲折する場合でもよい。このように、加工部32のY軸方向の幅が搬送方向(+X方向)で変化することで、加工部32のY軸方向の幅と被加工部19である溝部16の開口幅との差の寸法であるクリアランスが搬送方向の位置によって変化することになる。このため、成形体10は加工部32に対して左(+Y方向)に寄ったり、右(-Y方向)に寄ったりすることが繰り返され易くなる。このことから、常に被加工位置は移動し、被加工部19である溝部16の内面17全体を満遍なく加工でき、溝部16の内面17に発生したバリ18を良好に取り除くことができる。
【0047】
なお、上記第1の実施形態において、成形体10がドラムコアである場合を例に示したが、Tコアなどのその他の場合でもよい。
【0048】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、鍔部14aに設けられた溝部16を加工する場合を例に示した。言い換えると、溝部16が被加工部19である場合を例に示した。本第2の実施形態では、軸部12を加工する場合の例を示す。すなわち、本第2の実施形態では、軸部12が被加工部19となる場合の例を示す。軸部12の側面にも、成形体10を形成するときの加圧成形によりバリが発生することがある。本第2の実施形態では、鍔部14aと鍔部14bの間隔(言い換えると、軸部12の軸方向の長さ)は0.5mm以下である。
【0049】
第2の実施形態に係る基体の製造方法のフローチャートは第1の実施形態の
図1と同じであるため図示を省略する。
図10(a)は、第2の実施形態における成形体10の加工時を示す上面図、
図10(b)は、
図10(a)のA方向から見た側面図、
図10(c)は、
図10(b)のB方向から見た側面図である。
図10(a)及び
図10(b)では、成形体10の移動の途中状態を点線で図示している。
図10(a)から
図10(c)に示すように、加工装置30eは、保持部34の上面に1本の加工部32が固定されている。
【0050】
Z軸方向において加工部32が保持部34から突出した長さは鍔部14a及び14bの側面と軸部12の側面との間の長さよりも長く、加工部32のY軸方向の幅は鍔部14aと14bの間隔よりも小さい。このため、加工部32は、鍔部14aと14bの間の隙間に挿入可能となっている。軸部12の側面に発生したバリを取り除くために、加工部32の上部が鍔部14aと14bの間の隙間内に挿入されて、加工部32上に軸部12が接するように載置される。そして、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を加工部32の谷部と山部に沿って鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、軸部12を加工する。成形体10を搬送方向(+X方向)に移動させつつ、搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、成型体10の姿勢は、軸部12の被加工部の面が水平面に対して搬送方向に下向き及び上向きに傾くことが繰り返される。すなわち、成形体10の軸部12の被加工部の面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となることと、俯角(マイナスの角度)となることが繰り返される。これにより、第1の実施形態と同様に、成形体10の搬送方向(+X方向)への移動で発生する第1エネルギーと鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きへの移動で発生する第2エネルギーとが合わさった加工エネルギーが軸部12の一部の微細部分に局所的に集中する。すなわち、第1エネルギーと第2エネルギーの両方が合わさって加工エネルギーとして、被加工部19である軸部12の一部の微細部分に衝撃として集中する。このため、成形体10が小型で軽量であっても、軸部12を適切に加工でき、バリを取り除くことができる。成形体10の軸部12の被加工部の面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となることと、俯角(マイナスの角度)となることが繰り返されると、接触部位の位置は、軸部12の被加工部の面における搬送方向の前方部分となることと、搬送方向の後方部分へとなることが繰り返される。このように常に被加工位置は移動しこのことにより軸部12の被加工部の面の全体にわたって適切な加工が行われる。
【0051】
本第2の実施形態に係る基体の製造方法においても、無機粉末及び樹脂を含む混合物を加圧成形した成形体10を形成する。加工部32上に成形体10の被加工部19である軸部12が接するように載置し、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を搬送方向とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、軸部12(被加工部19)を加工する。その後、成形体10を熱処理する。この方法によれば、第1の実施形態と同様に、加工部32と軸部12との接触が線接触又は点接触となることが繰り返され、この線接触又は点接触の接触部位に、成形体10が搬送方向(+X方向)に移動することで発生する第1エネルギーと鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに移動することで発生する第2エネルギーとが合わさった加工エネルギーが集中する。すなわち、第1エネルギーと第2エネルギーの両方が合わさって加工エネルギーとして、被加工部19である軸部12の一部の微細部分に衝撃として集中する。このため、成形体10が小型で軽量の場合でも、軸部12を適切に加工できる。よって、軸部12に側面に発生したバリを取り除くことができる。
【0052】
また、本第2の実施形態では、加工部32により加工される成形体10の被加工部19は、成形体10を搬送方向(+X方向)に垂直な面(YZ面)で断面視したときに凹状部である鍔部14a及び14bとその間に挟まれた軸部12である。電子部品の小型化に伴って鍔部14aと14bの間隔が狭くなるため、バレル研磨を用いた表面加工では、鍔部14aと14bの間に入り込めるような小さなメディアを用いることになる。このため、メディアの自重が軽くなって発生する運動エネルギーが小さくなり、軸部12を適切に加工できずに、バリを取り除けない場合があり、特に鍔部14aと鍔部14bの間隔(言い換えると、軸部12の軸方向の長さ)は0.5mm以下である場合、適切な加工ができない。しかしながら、加工部32上に軸部12が接するように載置し、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、上述したように、軸部12を適切に加工でき、バリを取り除くことができる。
【0053】
図11(a)は、第2の実施形態に係る第1変形例の加工装置30fの上面図、
図11(b)は、
図11(a)のA方向から見た側面図である。
図11(a)及び
図11(b)に示すように、加工装置30fでは、加工部32のY軸方向の幅が搬送方向(+X方向)で変化している。加工部32のY軸方向の幅の最大値は、被加工部19の開口幅である鍔部14aと14bの間隔よりも小さく設定される。このように、加工部32のY軸方向の幅が搬送方向(+X方向)で変化することで、加工部32のY軸方向の幅と被加工部19の開口幅である鍔部14aと14bの間隔との差の寸法であるクリアランスが搬送方向の位置によって変化することになる。このため、成形体10は加工部32に対して左(+Y方向)に寄ったり、右(-Y方向)に寄ったりすることが繰り返され易くなる。このように、常に被加工位置は移動するため、第1の実施形態と同様の理由により、軸部12全体を満遍なく加工でき、軸部12の側面に発生したバリを良好に取り除くことができる。なお、上記第1の実施形態においても、加工部32のY軸方向の幅が搬送方向(+X方向)で変化してもよい。
【0054】
なお、上記第2の実施形態では、1本の加工部32上を成形体10が搬送方向(+X方向)に進むため、成形体10がバランスを崩して加工部32上から落ちてしまう恐れがある。そこで、Y軸方向で成形体10の両側に位置して加工部32が延びるX軸方向に延びたガイド部が設けられていてもよい。これにより、成形体10が加工部32上から落ちることを抑制できる。なお、上記第1の実施形態においても、Y軸方向で成形体10の両側にガイド部が設けられていてもよい。また、いずれの実施形態においても、ガイド部は片側のみに設けられていてもよい。
【0055】
[第3の実施形態]
上記第1の実施形態及び上記第2の実施形態では、成形体10に発生したバリを取り除く場合を例に示したが、本第3の実施形態では、成形体10の鍔部14aの側面と下面が形成する稜線部に丸みを形成する場合の例を示す。すなわち、本第3の実施形態では、成形体10の稜線部が被加工部となる。第3の実施形態に係る基体の製造方法のフローチャートは第1の実施形態の
図1と同じであるため図示を省略する。本第3の実施形態では、
図1のステップS12において、成形体10の稜線部を丸みを帯びた形状にするために、成形体10の表面を加工する。稜線部とは成形体10の各面の境界部のことである。
【0056】
加工装置30の加工部32上に成形体10の被加工部となる稜線部が接するように載置し、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させる。成形体10を搬送方向(+X方向)に移動させつつ、搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させることで、成型体10の姿勢は、被加工部の稜線部を含む面が水平面に対して搬送方向に下向き及び上向きに傾くことが繰り返される。すなわち、成形体10の被加工部の稜線部を含む面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となることと、俯角(マイナスの角度)となることが繰り返される。これにより、成形体10の稜線部と加工部32とは一定の角度とはならず接触角度が繰り返し変わるため、成形体10の稜線部を、丸みを帯びた形状(R形状)に加工することができる。被加工部となる稜線部の加工部32への載置方向は任意の方向で可能であるが、好ましくは、搬送方向(+X方向)に対して、垂直になるように、すなわちY方向に向くように載置される。このような方向で載置することで、成型体10の姿勢が、被加工部の稜線部を含む面が水平面に対して搬送方向に下向き及び上向きに傾くことが繰り返されるときの、被加工部の稜線部を含む面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となる際、俯角(マイナスの角度)となる際の移動量が大きくなり、効率的な加工ができる。本第3の実施形態では、成形体10の稜線部が被加工部となるため、加工装置30の加工部32のY方向の幅は成形体10を加工部32に置載した時のY方向の幅よりも大きい。成形体10が加工部32を保持する形状ではないので、Y軸方向で成形体10の両側に位置して加工部32が延びるX軸方向に延びたガイド部が設けられていてもよい。これにより、成形体10が加工部32上から落ちることを抑制できる。いずれの実施形態においても、ガイド部は片側のみに設けられていてもよい。
【0057】
図12(a)及び
図12(b)は、成形体10の表面加工をする前の図、
図12(c)及び
図12(d)は、表面加工をした後の図である。
図12(a)及び
図12(c)は成形体10の平面図、
図12(b)は
図12(a)のA-A間の断面図、
図12(d)は
図12(c)のA-A間の断面図である。
図12(a)から
図12(d)のように、加工部32上に成形体10の被加工部19である稜線部20が接するように載置し、成形体10を加工部32が延びる搬送方向(+X方向)に移動させつつ、成形体10を搬送方向(+X方向)とは異なる鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きに繰り返し移動させる。上記第1、第2の実施形態と同様に、成形体10の搬送方向(+X方向)への移動で発生する第1エネルギーと鉛直斜め下向き及び鉛直斜め上向きへの移動で発生する第2エネルギーとが合わさった加工エネルギーが成形体10の被加工部19である稜線部20の一部の微細部分に局所的に集中する。すなわち、第1エネルギーと第2エネルギーの両方が合わさって加工エネルギーとして、成形体10の被加工部19である稜線部20の一部の微細部分に衝撃として集中する。このため、成形体10が小型で軽量であっても、成形体10の被加工部19である稜線部20を適切に加工でき、丸みを帯びた形状に加工できる。成形体10の被加工部19である稜線部20を含む面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となること、俯角(マイナスの角度)となることが繰り返されると、接触部位の位置は、成形体10の被加工部19である稜線部20を含む面における搬送方向の前方部分となることと、搬送方向の後方部分へとなることが繰り返される。このことにより、成形体10の被加工部19である稜線部20を含む面の全体にわたって適切な加工が行われる。特に被加工部19の稜線部20を含む面が搬送方向で水平面に対して仰角(プラスの角度)となる際、俯角(マイナスの角度)となる際の移動量が大きくなり、効率的な加工ができることで、成形体10の稜線部20を、丸みを帯びた形状(R形状)となるよう加工することが効率的にできる。
【0058】
本第3の実施形態においても、上記第1、第2の実施形態と同様に、加工部32は上面視で左右方向(Y軸方向)に曲折しながら搬送方向(+X方向)に延びていてもよい。加工部32のY軸方向に曲折している部分の最大振幅値、すなわち加工部32のうちの+Y方向への曲折が最大の部分と、加工部32のうちの-Y方向への曲折が最大の部分との間のY軸方向の距離は、被加工部19の開口幅である溝部16の幅よりも小さく設定される。このため、成形体10は加工部32に対して左(+Y方向)に寄ったり、右(-Y方向)に寄ったりすることが繰り返され易くなる。このように、常に被加工位置は移動することで、上記第1、第2の実施形態と同様の理由により、成型体10の被加工部19全体を満遍なく加工でき、成形体10の被加工部19である稜線部20を、丸みを帯びた形状(R形状)に加工することができる。
【0059】
なお、上記第3の実施形態において、成形体10に発生したバリ18を加工部32によって取り除き、それに連続して成形体10の稜線部20を加工部32によって加工して丸みを帯びた形状にしてもよい。
【0060】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 成形体
12 軸部
14a、14b 鍔部
16 溝部
17 内面
18 バリ
19 被加工部
20 稜線部
30、30a、30b、30c、30d、30e、30f 加工装置
32 加工部
34 保持部
36 空隙
38 搬送部