(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149825
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】トランスファの組付け方法
(51)【国際特許分類】
F16H 57/023 20120101AFI20220929BHJP
【FI】
F16H57/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052144
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】後藤 裕也
(72)【発明者】
【氏名】松本 和城
(72)【発明者】
【氏名】小畑 優作
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA02
3J063AB02
3J063AC16
3J063BA01
3J063CA03
3J063CB01
3J063CB32
3J063CB33
3J063XA10
(57)【要約】
【課題】安定したトランスファの組付けを簡便に実施する。
【解決手段】トランスファの組立て方法は、トランスファケース1を第一組付け台10に位置決めを伴って設置する工程S1と、第二組付け台17上でドライブギヤ2のスプロケット6とアウトプットシャフト3のスプロケット7にチェーン4を組付ける工程S2と、チェーン4を組付けた状態のドライブギヤ2とアウトプットシャフト3を移載治具11で位置決めを伴って保持して、第二組付け台17上から第一組付け10台上に移載する工程S3と、第一組付け台10に対する移載治具11の位置決めを伴った状態で、移載治具11に保持されたドライブギヤ2とアウトプットシャフト3をトランスファケース1に組付ける工程S4とを具備する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のトランスファを組立てるための方法であって、
トランスファケースを第一組付け台に位置決めを伴って設置する工程と、
ドライブギヤとアウトプットシャフトを第二組付け台に設置した状態で、前記ドライブギヤのスプロケットと前記アウトプットシャフトのスプロケットにチェーンを組付ける工程と、
前記チェーンを組付けた状態の前記ドライブギヤと前記アウトプットシャフトを移載治具で位置決めを伴って保持して、前記第二組付け台上から前記第一組付け台上に移載する工程と、
前記第一組付け台に対する前記移載治具の位置決めを伴った状態で、前記移載治具に保持された前記ドライブギヤと前記アウトプットシャフトを前記トランスファケースに組付ける工程とを具備したトランスファの組立て方法。
【請求項2】
前記移載治具で、中空状をなす前記ドライブギヤをその内周面を基準に芯出しした状態で保持すると共に、前記アウトプットシャフトをそのセンタリング穴を基準に芯出しした状態で保持する請求項1に記載のトランスファの組立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファの組付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のトランスファは、トランスミッションから出力されたエンジンの回転駆動力を前輪と後輪に分配するための機構で、例えばトランスミッションから延びるドライブシャフトがスプラインを介して中空状をなすドライブギヤの内周に連結される。そして、ドライブギヤの外周に設けたスプロケットと、ドライブギヤと中心軸が平行となる姿勢で配置されたアウトプットシャフトの外周に設けたスプロケットとにそれぞれチェーンを架け渡すことにより、ドライブシャフトからアウトプットシャフトへの動力伝達を可能としている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したドライブギヤとアウトプットシャフトはトランスファケースに取付けられるが、先にドライブギヤとアウトプットシャフトをトランスファケースに取付けると、ドライブギヤとアウトプットシャフトとの軸間距離が組付け完了時の大きさに固定されるため、ある程度のたるみが必要なチェーンを組み付けることが難しい。
【0005】
そのため、ドライブギヤとアウトプットシャフトとをトランスファケースから外した状態でチェーンを組み付ける必要があるが、これだとドライブギヤとアウトプットシャフトの姿勢を安定させた状態でチェーンを組み付けることが難しい。例えば一人の作業者がドライブギヤとアウトプットシャフトを所定の姿勢で把持した状態で、別の作業者がチェーンを架け渡すことでサブアッシー化は可能だが、これだと非常に手間がかかる上、人的コストの高騰も避けられない。
【0006】
以上の事情に鑑み、本明細書では、安定したトランスファの組付けを簡便に実施可能とすることを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明に係るトランスファの組付け方法によって達成される。すなわち、この組付け方法は、自動車のトランスファを組み立てるための方法であって、トランスファケースを第一組付け台に位置決めを伴って設置する工程と、ドライブギヤとアウトプットシャフトを第二組付け台に設置した状態で、ドライブギヤのスプロケットとアウトプットシャフトのスプロケットにチェーンを組付ける工程と、チェーンを組付けた状態のドライブギヤとアウトプットシャフトを移載治具で位置決めを伴って保持して、第二組付け台上から第一組付け台上に移載する工程と、第一組付け台に対する移載治具の位置決めを伴った状態で、移載治具に保持されたドライブギヤとアウトプットシャフトをトランスファケースに組付ける工程とを具備した点をもって特徴付けられる。
【0008】
このように、本発明に係るトランスファの組立て方法によれば、所定の組付け台(第二組付け台)を用いてドライブギヤとアウトプットシャフトにチェーンを組付けた後、移載治具で位置決めした状態でチェーンを組付けたドライブギヤ等がトランスファケース上に移載される。そして、移載治具を第一組付け台に位置決めした状態でドライブギヤとアウトプットシャフトをトランスファケースに組付ける。この際、トランスファケースは移載治具を介して第一組付け台に対して位置決めされた状態にあり、ドライブギヤとアウトプットシャフトは移載治具に対して位置決めされた状態にある。そのため、移載治具を第一組付け台に位置決めした状態でドライブギヤとアウトプットシャフトをトランスファケースに組付けることで、これらギヤ及びシャフトを精度よくトランスファケースに組付けできる。また、本発明では、ケースへの組付け前に専用の組付け台を用いてドライブギヤとアウトプットシャフトにチェーンを組み付けているので、チェーンの組付けも容易に行うことができる。また、何れの組付けも組付け台を用いており、かつチェーンを組付けた状態のギヤ等を移載治具で移載させるので、一連の組付け作業を一人の作業者で実施することができ、人的コストの面でも優位である。
【0009】
また、本発明に係るトランスファの組付け方法においては、移載治具で、中空状をなすドライブギヤをその内周面を基準に芯出しした状態で保持すると共に、アウトプットシャフトをそのセンタリング穴を基準に芯出しした状態で保持してもよい。
【0010】
本発明に係る組立て方法を実施する場合、トランスファケースへの組付け精度は、移載治具に対するドライブギヤ及びアウトプットシャフトの位置決め精度に大きく左右される。ここで、本発明では、移載治具で、ドライブギヤをその内周面を基準に芯出しした状態で保持すると共に、アウトプットシャフトをそのセンタリング穴を基準に芯出しした状態で保持するようにした。このように各部材を保持することで、ドライブギヤの中心軸とアウトプットシャフトの中心軸との平行度並びに中心軸間距離をともに高精度に設定した状態で、これらドライブギヤとアウトプットシャフトをトランスファケースに組付けることができる。また、ドライブギヤの内周面とアウトプットシャフトのセンタリング穴の内面はともに加工面であるから、これらの面を芯出しに利用することで、容易に高精度な位置決めを図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明に係るトランスファの組立て方法によれば、安定したトランスファの組付けを簡便に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトランスファの組立て方法のフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトランスファの組立て方法の概要を説明するための平面図である。
【
図4】
図3に示す第一組付け台にトランスファケースを設置する工程の一例を説明するための側面図で、(a)第一組付け台の上方にトランスファケースが搬入された状態、(b)第一組付け台を上昇させてトランスファケースを位置決めした状態をそれぞれ示す側面図である。
【
図5】
図2に示す第二組付け台上でドライブギヤ等にチェーンを組付ける工程の一例を説明するための側面図である。
【
図6】
図2に示す第二組付け台上でドライブギヤ等にチェーンを組付ける工程の一例を説明するための平面図である。
【
図7】
図2に示す第二組付け台上からチェーンを組付けた状態のドライブギヤ等を第一組付け台上に移載する工程の一例を説明するための側面図で、(a)移載治具をドライブギヤ等に取付ける直前の状態、(b)移載治具をドライブギヤ等に取り付けた直後の状態をそれぞれ示す側面図である。
【
図8】
図2に示す第二組付け台上からチェーンを組付けた状態のドライブギヤ等を第一組付け台上に移載する工程の一例を説明するための側面図で、(a)ドライブギヤ等を外側から保持した状態、(b)ドライブギヤ等を保持した状態で第二組付け台上から移載治具を取り外した状態をそれぞれ示す側面図である。
【
図9】移載治具でドライブギヤ等を外側から保持する動作を説明するための水平断面図で、(a)外側保持部をスライドさせる前の状態、(b)外側保持部をスライドさせた状態をそれぞれ示す水平断面図である。
【
図10】
図2に示す第一組付け台上でチェーンを組付けた状態のドライブギヤ等をトランスファケースに組付ける工程の一例を説明するための側面図で、(a)移載治具が第一組付け台に対して位置決めされた状態、(b)ベアリングがケースに嵌合された状態をそれぞれ示す側面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るトランスファの組立て方法の内容を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るトランスファの組立て方法のフローチャートを示している。このチャートに示すように、本組立て方法は、トランスファケース1を第一組付け台10に設置して組付けの準備を行う組付け準備工程S1と、トランスファの組付け対象となるドライブギヤ2とアウトプットシャフト3にチェーン4を組付けるチェーン組付け工程S2と、チェーン4を組付けた状態のドライブギヤ2とアウトプットシャフト3(以後、単にサブアッシー5と称する。)を移載治具11で第一組付け台10上に移載する移載工程S3と、サブアッシー5をトランスファケース1に組付けるサブアッシー組付け工程S4とを具備する。以下、各工程の詳細を順に説明する。
【0015】
(S1)組付け準備工程
この工程S1では、組立て部品としてのトランスファケース1を第一組付け台10に位置決めを伴って設置し、トランスファケース1への組付け準備を行う。具体的には、
図2に示すように、トランスファケース1を載置したパレット12を搬送装置13により所定の方向に搬送し、第一組付け台10上の所定位置で停止させる。然る後、昇降装置14(後述する
図4(a)を参照)により第一組付け台10を上昇させて、トランスファケース1を第一組付け台10の所定位置に設置する。ここで、第一組付け台10には、例えば
図3に示すように、上方に突出するピン形状のケース位置決め部15(
図3では二本)が設けられている。そして、ケース位置決め部15がトランスファケース1の所定箇所(例えばボルト穴)と嵌合することにより、トランスファケース1が第一組付け台10に対して水平方向に位置決めされた状態で所定の位置に設置される(
図4(b)を参照)。
【0016】
本実施形態では、
図3及び
図4(a)に示すように、第一組付け台10に複数のガイド部材16が立設しており、トランスファケース1とケース位置決め部15によるトランスファケース1の位置決め保持を水平方向又は鉛直方向にガイド可能としている(
図4(b)を参照)。
【0017】
(S2)チェーン組付け工程
この工程S2では、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3を第二組付け台17に設置した状態で、ドライブギヤ2のスプロケット6とアウトプットシャフト3のスプロケット7にチェーン4を組付ける。具体的には、
図2に示すように、作業者Wの側方に第二組付け台17が設置される場合、図示しないフィーダ等から供給されるドライブギヤ2とアウトプットシャフト3を作業者Wの手で第二組付け台17に設置する。ここで、第二組付け台17は、例えば
図5に示すように、中心軸が鉛直方向に沿った姿勢でドライブギヤ2を保持可能な第一保持部18と、中心軸が鉛直方向に沿った姿勢でアウトプットシャフト3を保持可能な第二保持部19と、ドライブギヤ2のスプロケット6とアウトプットシャフト3のスプロケット7をそれぞれ同じ高さ位置で支持可能な支持部20とを有する。また、第一保持部18は、ドライブギヤ2を保持した状態で水平方向にスライド可能に構成されている。そのため、例えば
図5に示すように、第一保持部18を第二保持部19に近づけた状態でドライブギヤ2を設置した後、ドライブギヤ2のスプロケット6とアウトプットシャフト3のスプロケット7にチェーン4を架け渡す。この状態では、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3は組付け完成時の状態よりも相互に近い位置にあるため、
図6の二点鎖線で示すように、チェーン4にゆとり(たわみ)を持たせた状態で各スプロケット6,7に架け渡すことができる。
【0018】
然る後、第一保持部18を水平方向にスライドさせることにより、第一保持部18に保持されたドライブギヤ2及びスプロケット6がアウトプットシャフト3から遠ざかる向きに移動する。これにより、動力伝達可能な程度にチェーン4が張った状態で各スプロケット6,7に組付けられ、サブアッシー5の組立てが完了する(
図6中の実線で示す状態)。なお、本工程S2では、図示の如く、ドライブギヤ2の一端とアウトプットシャフト3の一端をそれぞれ第一保持部18と第二保持部19で保持した状態でチェーン4を組付けている。
【0019】
(S3)移載工程
この工程S3では、第二組付け台17上で組付けを行うことで得たサブアッシー5を移載治具11で第二組付け台17上から第一組付け台10上に移載する。ここで、移載治具11は、
図7(a)に示すように、把持部21と、ドライブギヤ2の芯出しを行う第一芯出し部22と、アウトプットシャフト3の芯出しを行う第二芯出し部23とを有する。本実施形態では、移載治具11は、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3をそれぞれ外側から保持する外側保持部24,25と、外側保持部24,25の操作を行う操作部26、及び第一組付け台10との位置決めを図るための位置決めピン27とをさらに有する。
【0020】
第一芯出し部22は、中空状をなすドライブギヤ2の内周面2aに嵌合可能に構成されている。詳述すると、第一芯出し部22は円環状の外周面22aを有し、この外周面22aがドライブギヤ2の内周面2aと嵌り合うことで、ドライブギヤ2がその内周面2aを基準として芯出しされた状態で第一芯出し部22に保持され得る。
【0021】
第二芯出し部23は、アウトプットシャフト3の一端面3aと当接可能な当接面23aと、一端面3aに設けられたセンタリング穴3bの内面3b1と当接可能な突起部23bとを有する。本実施形態では、突起部23bを有する部材は、弾性部材28により突起部23bの突出側に付勢されている。これにより、センタリング穴3bの内面3b1の製品ごとの高さ位置のばらつき、又は品種ごとの高さ位置の差を吸収しつつアウトプットシャフト3の芯出しが可能となる。
【0022】
外側保持部24,25は、第一芯出し部22と第二芯出し部23とでドライブギヤ2とアウトプットシャフト3とを芯出しした状態では、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3との間に配置される(
図7(b)を参照)。ここで、ドライブギヤ2用の外側保持部24は、
図8(a)に示すように、板状部材の先端に一対の傾斜面24aを有し、後述するスライド動作により、ドライブギヤ2の外周面2bと当接可能とされている。また、アウトプットシャフト3用の外側保持部25は、
図8(a)に示すように、同じく板状部材の先端に円弧面25aを有し、後述するスライド動作により、アウトプットシャフト3のスプロケット7の外周面7aと当接可能とされている。また、これら一対の外側保持部24,25は、操作部26(ここではレバー形状)の操作により、互いに遠ざかる向きに又は互いに近づく向きにスライド可能に構成されている。よって、
図7(b)に示すようにドライブギヤ2及びアウトプットシャフト3の芯出しがなされた状態で操作部26を操作することにより、一対の外側保持部24,25が互いに遠ざかる向きにスライドし、ドライブギヤ2の外周面2bとアウトプットシャフト3のスプロケット7の外周面7aに密着した状態で保持した状態となる(
図8(b)及び
図9(a)を参照)。
【0023】
これにより、ドライブギヤ2及びアウトプットシャフト3が位置決め(芯出し)されて移載治具11に保持された状態となるので、作業者Wが把持部21を把持して、移載治具11を持ち上げることにより、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3が第二組付け台17から上方に離脱する(
図9(b)を参照)。然る後、作業者Wが把持した状態の移載治具11を第二組付け台17上から第一組付け台10上へと移動させることで、サブアッシー5が第二組付け台17上から第一組付け台10上に移載される。
【0024】
(S4)サブアッシー組付け工程
この工程では、第一組付け台10上に移載したサブアッシー5(ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3とチェーン4の一体品)をトランスファケース1に組付ける。詳細には、作業者Wの手で、移載治具11を第一組付け台10上に移動させた後、移載治具11を下降させて、第一組付け台10に対する移載治具11の位置決めを行う。
【0025】
本実施形態では、第一芯出し部22の先端に位置決めピン27が設けられており(
図7(a)を参照)、移載治具11にドライブギヤ2が保持された状態では、位置決めピン27がドライブギヤ2の内周を貫通した状態にある(
図9(b)を参照)。また、第一組付け台10には、上述した移載治具11の位置決めピン27と嵌り合う位置決め穴29が設けられている(
図3を参照)。また、第一組付け台10には、移載治具11と一体に下降するアウトプットシャフト3の他端部(下端部)3dと当接して、アウトプットシャフト3の位置決めを図るシャフト位置決め部30が設けられている。本実施形態では、シャフト位置決め部30は、アウトプットシャフト3の他端部3dを挿入可能な挿入穴30aと、挿入穴30a内に配設され、アウトプットシャフト3の他端面3eに設けられたセンタリング穴3fの内面3f1と当接可能な突起部30bとを有する。よって、移載治具11を下降させていき、ドライブギヤ2の下端から突出した位置決めピン27を第一組付け台10の位置決め穴29に挿入すると共に、アウトプットシャフト3の他端部3dをシャフト位置決め部30の挿入穴30aに挿入して、他端面(下端面)3eに設けたセンタリング穴3fの内面3f1に突起部30bを当接させる。これにより、移載治具11が第一組付け台10に対して少なくとも二箇所で位置決めされる。また、アウトプットシャフト3が芯出しされた状態で第一組付け台10に保持される(何れも
図10(a)を参照)。
【0026】
このようにして移載治具11の第一組付け台10に対する位置決めを行った後、引き続き移載治具11を下降させることにより、ドライブギヤ2に取付けた二個の軸受8a,8bのうち下側の軸受8aがトランスファケース1の軸受取付け部位1aに例えば圧入により固定される。また、アウトプットシャフト3に取付けた二個の軸受9a,9bのうち下側の軸受9aがトランスファケース1の軸受取付け部位1bに例えば圧入により固定される(
図10(b)を参照)。本実施形態では、各軸受8a,9aの圧入が同時に行われるように、ドライブギヤ2及びアウトプットシャフト3の移載治具11に対する軸方向の位置決めがなされている。
【0027】
ここで、シャフト位置決め部30の突起部30b(を有する部材)は、
図10(a)に示すように、弾性部材31により上方に付勢された状態で昇降可能に支持されている。そのため、移載治具11の下降動作に伴って、アウトプットシャフト3及び突起部30bを有する部材が下方に移動しつつ、一対の突起部23b,30bによるアウトプットシャフト3の芯出し状態が維持される。そのため、上述した下降動作(圧入動作)は、ドライブギヤ2及びアウトプットシャフト3が移載治具11に対して位置決め(芯出し)された状態で行われると共に、移載治具11が第一組付け台10に対して位置決めされた状態で行われる。よって、サブアッシー5(特にドライブギヤ2及びアウトプットシャフト3)のトランスファケース1に対する組付けが高精度に実施される。
【0028】
この後、操作部26を作業者Wが操作して、一対の外側保持部24,25を互いに近づける向きにスライドさせることで、各外側保持部24,25によるドライブギヤ2とアウトプットシャフト3の保持状態を解消する。そして、移載治具11の把持部21を把持して持ち上げることで、ドライブギヤ2及びアウトプットシャフト3から第一及び第二芯出し部22,23が外れ、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3(及びチェーン4)がトランスファケース1側に残る。最後に、トランスファケース1を持ち上げて第一組付け台10から外すことで、トランスファケース1にドライブギヤ2とアウトプットシャフト3、及びチェーン4を組付けてなるトランスファのメインアッシーが得られる。そして、得られたメインアッシーに必要な部品をさらに組付け、必要に応じて、洗浄、検査等を行うことで、自動車用トランスファが完成する。
【0029】
以上述べたように、本実施形態にトランスファの組立て方法によれば、所定の組付け台(第二組付け台17)を用いてドライブギヤ2とアウトプットシャフト3にチェーン4を組付けてサブアッシー5を得た後、移載治具11で位置決めした状態でサブアッシー5がトランスファケース1上に移載される。そして、移載治具11を第一組付け台10に位置決めした状態でドライブギヤ2の軸受8aとアウトプットシャフト3の軸受9aをそれぞれトランスファケース1の所定部位1a,1bに固定する。この際、トランスファケース1は移載治具11を介して第一組付け台10に対して位置決めされた状態にあり、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3は移載治具11に対して位置決めされた状態にある。そのため、移載治具11を第一組付け台10に位置決めした状態でドライブギヤ2とアウトプットシャフト3をトランスファケース1に組付けることで、ドライブギヤ2及びアウトプットシャフト3を精度よくトランスファケース1に組付けできる。また、本実施形態では、トランスファケース1への組付け前に専用の組付け台(第二組付け台17)を用いてドライブギヤ2のスプロケット6とアウトプットシャフト3のスプロケット7にチェーン4を組み付けているので、チェーン4の組付けを容易に行うことができる。また、何れの組付けも組付け台10,17を用いており、かつチェーン4を組付けた状態のドライブギヤ2及びアウトプットシャフト3(サブアッシー5)を移載治具11で移載させるので、一連の組付けに係る工程S1~S4を一人の作業者Wで実施することができ、人的コストの面でも優位である。
【0030】
また、本実施形態では、移載治具11に第一芯出し部22と第二芯出し部23とを設けて、第一芯出し部22により中空状をなすドライブギヤ2をその内周面2aを基準に芯出しした状態で保持すると共に、第二芯出し部23によりアウトプットシャフト3をそのセンタリング穴3fを基準に芯出しした状態で保持するようにした。このように、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3を芯出しした状態で移載治具11に保持することにより、ドライブギヤ2の中心軸とアウトプットシャフト3の中心軸との平行度並びに中心軸間距離をともに高精度に設定した状態で、これらドライブギヤ2とアウトプットシャフト3をトランスファケースに組付けることができる(
図10(a)及び
図10(b)を参照)。また、ドライブギヤ2の内周面2aとアウトプットシャフト3のセンタリング穴3b,3fの内面3b1,3f1はともに加工面であるから、これらの面2a,3b1,3f1を芯出しに利用することで、容易に高精度な位置決めを図ることができる。また、軸方向一方側から移載治具11を接近させるだけの操作でドライブギヤ2等の芯出しを行うことができるので、移載治具11の芯出し構造を簡素化でき、移載治具11全体の小型化も可能となる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係るトランスファの組立て方法及び移載治具は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0032】
例えば上記実施形態では、ドライブギヤ2の内周面2aを基準としてドライブギヤ2の芯出しを行った状態でドライブギヤ2を移載治具11に保持する場合を例示したが、もちろんこれには限定されない。例えばドライブギヤ2の外周面2bなど、内周面2a以外の面を基準としてドライブギヤ2の芯出しを行ってもよい。この場合、第一芯出し部22は、ドライブギヤ2の芯出しの基準となる面の形態に応じた構造とすればよい。同様に、上記実施形態では、アウトプットシャフト3のセンタリング穴3b,3fの内面3b1,3f1を基準としてアウトプットシャフト3の芯出しを行った状態でアウトプットシャフト3を移載治具11に保持する場合を例示したが、もちろんこれには限定されない。例えばアウトプットシャフト3の外周面を基準としてアウトプットシャフト3の芯出しを行ってもよい。この場合、第二芯出し部23は、アウトプットシャフト3の芯出しの基準となる面の形態に応じた構造とすればよい。
【0033】
また、上記実施形態では、ドライブギヤ2の外側保持部24として、水平方向へのスライドによりドライブギヤ2の外周面2bを保持可能な形態を例示したが、もちろんこれには限られない。ドライブギヤ2又はドライブギヤ2と一体に固定された部材を外側から保持可能な限りにおいて、外側保持部24は任意の形態をとり得る。同様に、アウトプットシャフト3の外側保持部25についても、上記実施の形態に限られず、任意の形態を採り得る。もちろん、必要に応じて、外側保持部24,25の一方又は双方を省略することも可能である。
【0034】
また、上記実施形態では、移載治具11の第一組付け台10に対する位置決めを図る目的で、第一芯出し部22の下端に位置決めピン27を延長して設けると共に、この位置決めピン27と嵌り合う位置決め穴29を第一組付け台10に設けた場合を例示したが、もちろん、これには限られない。位置決めピン27に加えて、もしくは位置決めピン27に代えて他の位置決め部を移載治具11に設けてもよい。その場合、当該位置決め部による第一組付け台10に対する移載治具11の位置決めがなされた状態で、各軸受8a,9aの組付け(ここでは圧入)が行われるようにすればよい。
【0035】
また、上記実施形態では、移載治具11に設けた把持部21を作業者Wの手で把持して移載治具11を移動させる場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば搬送装置など作業者W以外によって移載治具11を第二組付け台17上から第一組付け台10上に移動させてもよい。また、第一組付け台10上の移載治具11を下降させてドライブギヤ2とアウトプットシャフト3の組付けを行ってもよい。
【0036】
また、ドライブギヤ2とアウトプットシャフト3に対するチェーン4の組付けに関し、上記実施形態では、たるんだ状態のチェーン4の内側に各スプロケット6,7を配置した状態で、ドライブギヤ2を保持する第一保持部18をスライドさせることにより、チェーン4を張った状態で各スプロケット6,7に組付ける場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば第二保持部19をスライド可能に構成し、たるんだ状態のチェーン4の内側に各スプロケット6,7を配置した状態で、第二保持部19をスライドさせることにより、チェーン4を張った状態で各スプロケット6,7に組付けてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、第一組付け台10にトランスファケース1を設置した後、第二組付け台17上でドライブギヤ2とアウトプットシャフト3にチェーン4を組付ける場合を例示したが、もちろんこれには限られない。例えば第二組付け台17上でドライブギヤ2とアウトプットシャフト3に対するチェーン4の組付けを行った後、トランスファケース1を第一組付け台10の所定位置に設置し、然る後、サブアッシー5を移載治具11で第一組付け台10上に移載してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 トランスファケース
1a ドライブギヤの組付け部位(軸受の圧入部位)
1b アウトプットシャフトの組付け部位(軸受の圧入部位)
2 ドライブギヤ
2a 内周面
2b 外周面
3 アウトプットシャフト
3a 一端面
3b,3f センタリング穴
3b1,3f1 内面
3d 他端部
3e 他端面
4 チェーン
5 サブアッシー
6,7 スプロケット
8a,8b 軸受(ドライブギヤ)
9a,9b 軸受(アウトプットシャフト)
10 第一組付け台
11 移載治具
12 パレット
13 搬送装置
14 昇降装置
15 ケース位置決め部
16 ガイド部材
17 第二組付け台
18 第一保持部
19 第二保持部
20 支持部
21 把持部
22 第一芯出し部(ドライブギヤ)
22a 外周面
23 第二芯出し部(アウトプットシャフト)
23a 当接面
23b 突起部
24 外側保持部(ドライブギヤ)
24a 傾斜面
25 外側保持部(アウトプットシャフト)
25a 円弧面
26 操作部
27 位置決めピン
28 弾性部材
29 位置決め穴
30 シャフト位置決め部
30a 挿入穴
30b 突起部
31 弾性部材
S1 組付け準備工程
S2 チェーン組付け工程
S3 移載工程
S4 サブアッシー組付け工程
W 作業者