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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149858
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】複合電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/40 20060101AFI20220929BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20220929BHJP
   H01G 17/00 20060101ALI20220929BHJP
   H03H 7/09 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
H01G4/40 321A
H01F27/00 S
H01G17/00
H03H7/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052182
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 利之
【テーマコード(参考)】
5E070
5E082
5J024
【Fターム(参考)】
5E070AA05
5E070AB10
5E082BC40
5E082DD08
5J024AA01
5J024BA09
5J024BA11
5J024CA04
5J024CA06
5J024CA09
5J024DA04
5J024DA29
5J024DA31
5J024DA34
5J024DA35
5J024EA03
5J024KA03
(57)【要約】
【課題】共振回路を形成する線路間の磁界結合を抑制することが可能な複合電子部品を提供する。
【解決手段】複合電子部品は、複数の誘電体層11a~11iと複数の導電体層12aが交互に積層された積層体10と、複数の導電体層のうち1または複数の第1導電体層12xにより形成された第1線路と、複数の導電体層のうち複数の第2導電体層12yにより形成された第1電極を含む第1キャパシタと、を備える第1共振回路と、複数の導電体層のうち1または複数の第3導電体層12zにより形成された第2線路、複数の第2導電体層により形成された第2電極を含む第2キャパシタと、を備え、前記複数の第2導電体層は前記1または複数の第1導電体層と前記1または複数の第3導電体層との間に位置する第2共振回路とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の導電体層が交互に積層された積層体と、
前記複数の導電体層のうち1または複数の第1導電体層により形成された第1線路と、前記複数の導電体層のうち複数の第2導電体層により形成された第1電極を含む第1キャパシタと、を備える第1共振回路と、
前記複数の導電体層のうち1または複数の第3導電体層により形成された第2線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第2電極を含む第2キャパシタと、を備え、前記複数の第2導電体層は前記1または複数の第1導電体層と前記1または複数の第3導電体層との間に位置する第2共振回路と、
を備える複合電子部品。
【請求項2】
入力端子と出力端子とを備え、前記第1共振回路および前記第2共振回路は、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である請求項1に記載の複合電子部品。
【請求項3】
前記1または複数の第3導電体層により形成された第3線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第3電極を含む第3キャパシタと、を備え、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である第3共振回路と、
前記1または複数の第1導電体層により形成された第4線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第4電極を含む第4キャパシタと、を備え、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である第4共振回路と、
を備える請求項2に記載の複合電子部品。
【請求項4】
前記第1共振回路、前記第2共振回路、前記第3共振回路および前記第4共振回路のうち、前記第1共振回路は最も前記入力端子に電気的に近い共振回路であり、前記第4共振回路は最も前記出力端子に電気的に近い共振回路である請求項3に記載の複合電子部品。
【請求項5】
前記1または複数の第1導電体層は前記入力端子および前記出力端子が設けられた前記積層体の表面と前記1または複数の第2導電体層との間に位置する請求項4に記載の複合電子部品。
【請求項6】
前記複数の誘電体層と前記複数の導電体層の積層方向からみて、前記第1線路の少なくとも一部と前記第2線路の少なくとも一部とは重なり、前記第1線路の少なくとも一部と前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一部とは重なり、前記第2線路の少なくとも一部と前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一部とは重なる請求項1から5のいずれか一項に記載の複合電子部品。
【請求項7】
前記第1線路および前記第2線路の少なくとも一方はスパイラル形状である請求項1から6のいずれか一項に記載の複合電子部品。
【請求項8】
前記第1共振回路および前記第2共振回路を含むフィルタを備える請求項1から7のいずれか一項に記載の複合電子部品。
【請求項9】
前記フィルタを含むマルチプレクサを備える請求項8に記載の複合電子部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合電子部品に関し、例えば誘電体層が積層された複合電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートホンなどの代表される無線通信端末には、不要な妨害波を除去するフィルタまたは複数のフィルタを有するマルチプレクサが用いられている。誘電体層を積層した積層体内に、インダクタに相当する線路とキャパシタを各々有する複数の共振回路を備えるフィルタまたはマルチプレクサが知られている(例えば特許文献1から3)。複数の共振回路の線路間の磁界結合を制御するため、複数の線路の誘電体層内の配置を調整することが知られている(例えば特許文献2)。複数の線路を互いに異なる誘電体層に設けることが知られている(例えば特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-79865号公報
【特許文献2】国際公開第2012/066946号
【特許文献3】国際公開第2012/077498号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合電子部品の小型化にともない、線路間の磁界結合が大きくなる。例えば、複合電子部品の小型化により線路の形状がスパイラル形状となると、線路間の磁界結合がより大きくなる。これにより、共振回路の共振周波数を所望の値に設計することが難しくなる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、共振回路を形成する線路間の磁界結合を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の誘電体層と複数の導電体層が交互に積層された積層体と、前記複数の導電体層のうち1または複数の第1導電体層により形成された第1線路と、前記複数の導電体層のうち複数の第2導電体層により形成された第1電極を含む第1キャパシタと、を備える第1共振回路と、前記複数の導電体層のうち1または複数の第3導電体層により形成された第2線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第2電極を含む第2キャパシタと、を備え、前記複数の第2導電体層は前記1または複数の第1導電体層と前記1または複数の第3導電体層との間に位置する第2共振回路と、を備える複合電子部品である。
【0007】
上記構成におおいて、入力端子と出力端子とを備え、前記第1共振回路および前記第2共振回路は、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記1または複数の第3導電体層により形成された第3線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第3電極を含む第3キャパシタと、を備え、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である第3共振回路と、前記1または複数の第1導電体層により形成された第4線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第4電極を含む第4キャパシタと、を備え、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である第4共振回路と、を備える構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1共振回路、前記第2共振回路、前記第3共振回路および前記第4共振回路のうち、前記第1共振回路は最も前記入力端子に電気的に近い共振回路であり、前記第4共振回路は最も前記出力端子に電気的に近い共振回路である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記1または複数の第1導電体層は前記入力端子および前記出力端子が設けられた前記積層体の表面と前記1または複数の第2導電体層との間に位置する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記複数の誘電体層と前記複数の導電体層の積層方向からみて、前記第1線路の少なくとも一部と前記第2線路の少なくとも一部とは重なり、前記第1線路の少なくとも一部と前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一部とは重なり、前記第2線路の少なくとも一部と前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一部とは重なる構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1線路および前記第2線路の少なくとも一方はスパイラル形状である構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1共振回路および前記第2共振回路を含むフィルタを備える構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記フィルタを含むマルチプレクサを備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、共振回路を形成する線路間の磁界結合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1に係るフィルタの回路図である。
図2図2は、実施例1におけるフィルタの通過特性および反射特性を示す図である。
図3図3(a)および図3(b)は、実施例1に係るフィルタの斜視図である。
図4図4は、実施例1に係るフィルタの断面図である。
図5図5は、実施例1に係るフィルタの解体斜視図である。
図6図6は、実施例1に係るフィルタの解体斜視図である。
図7図7(a)から図7(e)は、実施例1に係るフィルタの各誘電体層および導電体層を示す平面図である。
図8図8(a)から図8(f)は、実施例1に係るフィルタの各誘電体層および導電体層を示す平面図である。
図9図9は、実施例2に係るトリプレクサの回路図である。
図10図10は、実施例2の変形例1に係る通信用モジュールの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例0018】
実施例1に係る複合電子部品として、バンドパスフィルタ(BPF)を例に説明する。図1は、実施例1に係るフィルタの回路図である。図1に示すように、フィルタ100では、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に並列共振回路PR1~PR4がシャント接続されている。並列共振回路PR1はノードN1とグランド端子Tgとの間に並列に接続された線路SL1およびキャパシタC1を有する。並列共振回路PR2はノードN2とグランド端子Tgとの間に並列に接続された線路SL2およびキャパシタC2を有する。並列共振回路PR3はノードN3とグランド端子Tgとの間に並列に接続された線路SL3およびキャパシタC3を有する。並列共振回路PR4はノードN4とグランド端子Tgとの間に並列に接続された線路SL4およびキャパシタC4を有する。
【0019】
ノードN1とN2とはキャパシタC5を介し接続され、ノードN3とN4とはキャパシタC6を介し接続されている。ノードN1とN4とはノードN2およびN3を介さずキャパシタC7およびC8を介し接続されている。線路SL2とSL3とは線路SL5を介し接続されている。線路SL1~SL5は、例えばストリップ線路等の伝送線路である。
【0020】
図2は、実施例1におけるフィルタの通過特性および反射特性を示す図である。図2に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutの間のフィルタ100の通過特性S21は、通過帯域Passおよび減衰極A1~A4を有する。減衰極A1およびA2は通過帯域Passより低く、減衰極A3およびA4は通過帯域Passより高い。減衰極A1~A4は主に並列共振回路PR1~PR4の共振周波数により形成される。通過帯域Passにおける反射特性S11は小さく、通過帯域Pass以外の帯域の反射特性S11は大きい。これにより、入力端子Tinに入力する高周波信号のうち通過帯域Passの高周波信号は、キャパシタC7およびC8とキャパシタC5、C6および線路SL5を介し入力端子Tinから出力端子Toutに通過する。通過帯域Pass以外の周波数の信号は抑圧される。
【0021】
フィルタ100の通過特性を所望の特性に設計するためには、減衰極A1~A4の周波数を定めることが重要である。しかし、図1のように、線路SL1とSL2とが磁界結合M1し、線路SL3とSL4とが磁界結合M2する。これにより、減衰極A1~A4を所望の周波数に設計することが難しくなる。実施例1では、磁界結合M1とM2を小さくすることにより、減衰極A1~A4の周波数の設定が容易となる。
【0022】
図3(a)および図3(b)は、実施例1に係るフィルタの斜視図である。図3(a)および図3(b)に示すように、フィルタ100は、積層体10を有している。積層体10の上面は方向識別マーク18が設けられた表面10bである。積層体10の下面は端子14が設けられた表面10aである。端子14は、入力端子Tin、出力端子Toutおよびグランド端子Tgを含む。積層体10は略直方体であり、積層体10の積層方向をZ方向、積層体10を平面視した長方形の長辺方向をX方向、短辺方向をY方向とする。
【0023】
図4は、実施例1に係るフィルタの断面図である。図4に示すように、積層体10はZ方向に交互に積層された誘電体層11a~11jと導電体層12a~12jを備えている。誘電体層11b~11jを貫通するビア配線13b~13jが設けられている。ビア配線13b~13jは、各々導電体層12a~12jの少なくとも2つの層を電気的に接続する。導電体層12iおよび12jは線路SL1およびSL4を形成する第1導電体層12xである。導電体層12d~12hはキャパシタC1~C8の電極を形成する第2導電体層12yである。導電体層12bおよび12cは線路SL2、SL3およびSL5を形成する第3導電体層12zである。
【0024】
図5および図6は、実施例1に係るフィルタの解体斜視図である。図5および図6では、ビア配線13bから13jの接続を破線で示す。図7(a)から図7(e)および図8(a)から図8(f)は、実施例1に係るフィルタの各誘電体層および導電体層を示す平面図である。図7(a)~図8(e)は、それぞれ誘電体層11a~11jの平面図である。図8(f)は、誘電体層11jを透過して端子14を見た平面図である。
【0025】
図5図8(f)に示すように、誘電体層11a上に形成された導電体層12aは、方向識別マーク18を形成する。誘電体層11b上に設けられた導電体層12bは、線路SL2aおよびSL3aを形成する。誘電体層11c上に設けられた導電体層12cは線路SL2bおよびSL3bを形成する。線路SL2aとSL2bとはビア配線13bにより電気的に接続され線路SL2を形成する。線路SL3aとSL3bとはビア配線13bにより電気的に接続され線路SL3を形成する。線路SL2aおよびSL3aは各々スパイラル形状である。また、線路SL2aとSL2bとで立体的な螺旋形状が形成され、線路SL3aとSL3bとで立体的な螺旋形状が形成される。導電体層12bは、線路SL2とSL3とを接続する線路SL5を含む。
【0026】
誘電体層11d上に設けられた導電体層12dはキャパシタC5およびC6のそれぞれの上部の電極C5aおよびC6aを形成する。誘電体層11e上に設けられた導電体層12eは、キャパシタC5およびC6のそれぞれの下部の電極C5bおよびC6bを形成し、キャパシタC2およびC3のそれぞれ上部の電極C2aおよびC3aを形成する。誘電体層11dと誘電体層11dを挟む電極C5aおよびC5bとはキャパシタC5を形成し、誘電体層11dと誘電体層11dを挟む電極C6aおよびC6bとはキャパシタC6を形成する。
【0027】
誘電体層11f上に設けられた導電体層12fは、キャパシタC2およびC3のそれぞれの下部の電極C2bおよびC3bを形成し、キャパシタC1およびC4のそれぞれの上部の電極C1aおよびC4aを形成する。誘電体層11eと誘電体層11eを挟む電極C2aおよびC2bとはキャパシタC2を形成し、誘電体層11eと誘電体層11eを挟む電極C3aおよびC3bとはキャパシタC3を形成する。
【0028】
誘電体層11g上に設けられた導電体層12gは、キャパシタC1およびC4のそれぞれの下部の電極C1bおよびC4bを形成し、キャパシタC7およびC8のそれぞれの上部の電極C7aおよびC8aを形成する。誘電体層11fと誘電体層11fを挟む電極C1aおよびC1bとはキャパシタC1を形成し、誘電体層11fと誘電体層11fを挟む電極C4aおよびC4bとはキャパシタC4を形成する。
【0029】
誘電体層11h上に設けられた導電体層12hはキャパシタC7およびC8のそれぞれの下部の電極C7bおよびC8bを形成する。誘電体層11gと誘電体層11gを挟む電極C7aおよびC7bとはキャパシタC7を形成し、誘電体層11gと誘電体層11gを挟む電極C8aおよびC8bとはキャパシタC8を形成する。
【0030】
誘電体層11i上に設けられた導電体層12iは、線路SL1aおよびSL4aを形成する。誘電体層11j上に設けられた導電体層12jは線路SL1b、SL4bおよびグランドパターンGを形成する。線路SL1aとSL1bとはビア配線13iにより電気的に接続され線路SL1を形成する。線路SL4aとSL4bとはビア配線13iにより電気的に接続され線路SL4を形成する。線路SL1a、SL1b、SL4aおよびSL4bは各々スパイラル形状である。また、線路SL1aとSL1bとで立体的な螺旋形状が形成され、線路SL4aとSL4bとで立体的な螺旋形状が形成される。
【0031】
誘電体層11j下には端子14により、入力端子Tin、出力端子Toutおよびグランド端子Tgが設けられている。グランド端子Tgはビア配線13jによりグランドパターンGに電気的に接続される。
【0032】
誘電体層11aから11jは、セラミックス材料からなり、主成分として例えばSi、CaおよびMgの酸化物(例えばディオプサイド結晶であるCaMgSi)を含む。誘電体層11aから11jの主成分は、Si、Caおよび/またはMg以外の酸化物でもよい。さらに、誘電体層11aから11jは、絶縁体材料としてTi、ZrおよびAlの少なくとも1つの酸化物を含んでもよい。
【0033】
導電体層12aから12j、ビア配線13bから13jおよび端子14の上部は、例えばAg、Pd、Pt、Cu、Ni、Au、Au-Pd合金またはAg-Pt合金を主成分とする非磁性金属層である。端子14の上部は、上記金属材料に加えTiO、ZrOまたはAl等の非伝導性材料を含んでもよい。端子14の下部は、Ni膜およびSn膜である。
【0034】
積層体10は、例えば以下のようにして製造される。誘電体層11aから11jは例えばドクターブレード法を用い作製する。誘電体層11bから11jを貫通するビア配線13bから13jを形成する。例えば誘電体層11aから11jを貫通するビアホールをレーザ光照射により形成する。スキージ法等を用いビアホール内にビア配線13bから13jを形成する。誘電体層11aから11jの表面に導電体層12aから12jおよび端子14の上部を形成する。導電体層12aから12jおよび端子14の上部は例えばスクリーン印刷法または転写法を用い形成する。誘電体層11aから11jを積層して積層体10を形成する。誘電体層11aから11jの積層には例えば熱加圧または接着剤を用いる。積層体10を例えば700℃以上で焼成する。これにより、誘電体層11aから11jが焼結体となる。端子14の上部の下に端子14の下部を形成する。端子14の下部の形成には、例えばバレルメッキ法等のメッキ法を用いる。
【0035】
[シミュレーション]
実施例1のフィルタの通過特性および反射特性をシミュレーションした。シミュレーション条件は以下である。
積層体10のX方向の幅は1.0mm、Y方向の幅は0.5mm、およびZ方向の高さは0.2mmである。
各誘電体層11a~11jの厚さ、キャパシタC1~C8のキャパシタンスの概略値および線路SL1~SL5のインダクタンスの概略値を表1に示す。
【表1】
【0036】
実施例1に係るフィルタの通過特性S21および反射特性S11のシミュレーション結果は図2である。
【0037】
特許文献1~3では、共振回路を構成するキャパシタを、共振回路を構成する線路より端子側に設ける。これは、端子が接合される実装基板の金属パターンと線路との干渉を抑制するためである。しかし、線路SL1とSL2との距離が近いと図1のように磁界結合M1が生じる。線路SL3とSL4との距離が近いと磁界結合M2が生じる。これにより、並列共振回路PR1~PR4の共振周波数が変動してしまい、図2の減衰極A1~A4を所望の周波数に設定する設計が難しくなる。
【0038】
実施例1によれば、並列共振回路PR1(第1共振回路)は、線路SL1(第1線路)とキャパシタC1(第1キャパシタ)を備えている。線路SL1は、導電体層12iおよび12j(第1導電体層12x)により形成され、キャパシタC1の電極C1aおよびC1b(第1電極)は、導電体層12fおよび12g(第2導電体層12y)により形成されている。並列共振回路PR2(第2共振回路)は、線路SL2(第2線路)とキャパシタC2(第2キャパシタ)を備えている。線路SL2は、導電体層12bおよび12c(第3導電体層12z)により形成され、キャパシタC2の電極C2aおよびC2b(第2電極)は、導電体層12eおよび12f(第2導電体層12y)により形成されている。図4のように、第2導電体層12yは、第1導電体層12xと第3導電体層12zとの間に位置する。これにより、線路SL1とSL2との距離が離れ、かつ間にキャパシタC1およびC2の電極が設けられる。よって、線路SL1とSL2との磁界結合M1が小さくなる。よって、並列共振回路PR1およびPR2の共振周波数が設計しやすくなる。
【0039】
並列共振回路PR3(第3共振回路)は、線路SL3(第3線路)とキャパシタC3(第3キャパシタ)を備えている。線路SL3は、導電体層12bおよび12c(第3導電体層12z)により形成され、キャパシタC3の電極C3aおよびC3b(第3電極)は、導電体層12eおよび12f(第2導電体層12y)により形成されている。並列共振回路PR4(第4共振回路)は、線路SL4(第4線路)とキャパシタC4(第4キャパシタ)を備えている。線路SL4は、導電体層12iおよび12j(第1導電体層12x)により形成され、キャパシタC4の電極C4aおよびC4b(第4電極)は、導電体層12fおよび12g(第2導電体層12y)により形成されている。これにより、線路SL3とSL4との距離が離れ、かつ間にキャパシタC3およびC4の電極が設けられる。よって、線路SL3とSL4との磁界結合M2が小さくなる。よって並列共振回路PR3およびPR4の共振周波数が設計しやすくなる。
【0040】
図1のように、並列共振回路PR1~PR4は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間にシャント接続された並列共振回路である。これにより、並列共振回路PR1~PR4の共振周波数により図4の減衰極A1~A4を形成できる。磁界結合M1およびM2を小さくできるため減衰極A1~A4の周波数を設計しやすくなる。
【0041】
図1のように、共振回路PR1~PR4のうち共振回路PRP1は入力端子Tinに最も電気的に近く、共振回路PR4は出力端子Toutに最も電気的に近い。そこで、第1導電体層12xを入力端子Tinおよび出力端子Toutが設けられた積層体10の表面10bと第2導電体層12yとの間に位置させる。これにより、入力端子Tinと並列共振回路PR1との接続距離、および出力端子Toutと並列共振回路PR2との接続距離を短くできる。また、入力端子Tinと出力端子Toutから遠い並列共振回路PR2およびPR3のQ値は高いことが好ましい。線路SL2およびSL3が実装基板から遠くなるため、線路SL2およびSL3のQ値が高くなり、並列共振回路PR2およびPR3のQ値を高くできる。
【0042】
Z方向からみて、線路SL1の少なくとも一部と線路SL2の少なくとも一部とが重なる場合、線路SL1とSL2とが磁界結合しやすい。そこで、線路SL1の少なくとも一部と電極C1a、C1b、C2aおよびC2bの少なくとも一部とを重ね、線路SL2の少なくとも一部と電極C1a、C1b、C2aおよびC2bの少なくとも一部とを重ねる。これにより、磁界結合M1を小さくできる。
【0043】
同様に、Z方向からみて、線路SL3の少なくとも一部と線路SL4の少なくとも一部とが重なる場合、線路SL3とSL4とが磁界結合しやすい。そこで、線路SL3の少なくとも一部と電極C3a、C3b、C4aおよびC4bの少なくとも一部とを重ね、線路SL4の少なくとも一部と電極C3a、C3b、C4aおよびC4bの少なくとも一部とを重ねる。これにより、磁界結合M2を小さくできる。
【0044】
Z方向からみて、線路SL1およびSL2は線路SL3およびSL4と重ならない。これにより、線路SL1とSL3およびSL4との磁界結合は小さく、線路SL2とSL3およびSL4との磁界結合は小さい。
【0045】
線路SL1からSL4の少なくとも1つはスパイラル形状である。線路がスパイラル形状の場合、線路SL1~SL4間の磁界結合が大きくなる。よって、第2導電体層12yを第1導電体層12xと第3導電体層12zとの間に配置することが好ましい。なお、ここで、スパイラル形状は、同一導電体層(同一平面)上でのスパイラル形状に加え、複数の導電体層に形成されたヘリカル形状および螺旋形状等も含む。線路SL1からSL4を各々複数の導電体層により形成される例を説明したが、線路SL1からSL4は各々1つの導電体層により形成されてもよい。
【0046】
フィルタが4個の並列共振回路を有する例を説明したが、フィルタは、2個、3個または5個以上の並列共振回路を有してもよい。
【実施例0047】
実施例2は、実施例1のフィルタを用いたトリプレクサの例である。図9は、実施例2に係るトリプレクサの回路図である。図9に示すように、トリプレクサ50はフィルタ52、54および56を備えている。共通端子Antと端子LB、MBおよびHBとの間にそれぞれフィルタ52、54および56が接続されている。共通端子Antにはアンテナ58が接続されている。フィルタ52は例えばローパスフィルタLPFまたはバンドパスフィルタBPFであり、ローバンドの高周波信号を通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。フィルタ54は例えばバンドパスフィルタBPFであり、ローバンドより高い周波数のミドルバンドの高周波信号を通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。フィルタ56は例えばハイパスフィルタHPFまたはバンドパスフィルタBPFであり、ミドルバンドより高い周波数のハイバンドの高周波信号を通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。
【0048】
フィルタ52、54および56の少なくとも1つのフィルタを実施例1のフィルタとすることができる。フィルタ52、54および56の少なくとも2つを備えるマルチプレクサを複合電子部品としてもよい。マルチプレクサの例としてトリプレクサの例を説明したが、マルチプレクサはダイプレクサ、デュプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0049】
[実施例2の変形例1]
実施例2の変形例1は、実施例1のフィルタを用いた通信用モジュールの例である。図10は、実施例2の変形例1に係る通信用モジュールの回路図である。図10に示すように、モジュール60は、フィルタ61、スイッチ62、ローノイズアンプLNA63およびパワーアンプPA64を備えている。
【0050】
アンテナ端子TAにアンテナ58が接続される。アンテナ端子TAには、フィルタ61の一端が接続されている。フィルタ61の他端にはスイッチ62が接続されている。スイッチ62にはLNA63の入力端子およびPA64の出力端子が接続されている。LNA63の出力端子は受信端子TRに接続されている。PA64の入力端子は送信端子TTに接続されている。受信端子TRおよび送信端子TTにはRFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)が接続されている。
【0051】
モジュール60は、例えばTDD(Time Division Duplex)通信方式の通信用モジュールである。TDD通信方式では送信帯域と受信帯域とは同じ帯域である。フィルタ61は例えばバンドパスフィルタであり、送信帯域と受信帯域を含む通過帯域の高周波信号を通過させ他の周波数の信号を抑圧する。
【0052】
受信信号を受信するとき、スイッチ62はフィルタ61とLNA63とを接続する。これにより、アンテナ58に受信された高周波信号はフィルタ61により受信帯域の信号に濾波され、LNA63により増幅されRFIC65に出力される。送信信号を送信するとき、スイッチ62はフィルタ61とPA64とを接続する。これにより、RFIC65から出力された高周波信号は、PA64により増幅され、フィルタ61により送信帯域の信号に濾波され、アンテナ58から出力される。
【0053】
実施例2の変形例1の通信用モジュール内のフィルタ61を実施例1のフィルタとすることができる。モジュールとしては、他の回路形式の通信用モジュールでもよい。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 積層体
11a-11j 誘電体層
12a-12j 導電体層
13b-13j ビア配線
14 端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2021-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の導電体層が交互に積層された積層体と、
前記複数の導電体層のうち1または複数の第1導電体層により形成された第1線路と、前記複数の導電体層のうち複数の第2導電体層により形成された第1電極を含む第1キャパシタと、を備える第1共振回路と、
前記複数の導電体層のうち1または複数の第3導電体層により形成された第2線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第2電極を含む第2キャパシタと、を備え、前記複数の第2導電体層は前記1または複数の第1導電体層と前記1または複数の第3導電体層との間に位置する第2共振回路と、
を備える複合電子部品。
【請求項2】
入力端子と出力端子とを備え、前記第1共振回路および前記第2共振回路は、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である請求項1に記載の複合電子部品。
【請求項3】
前記1または複数の第3導電体層により形成された第3線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第3電極を含む第3キャパシタと、を備え、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である第3共振回路と、
前記1または複数の第1導電体層により形成された第4線路と、前記複数の第2導電体層により形成された第4電極を含む第4キャパシタと、を備え、前記入力端子と前記出力端子との間にシャント接続された並列共振回路である第4共振回路と、
を備える請求項2に記載の複合電子部品。
【請求項4】
前記第1共振回路、前記第2共振回路、前記第3共振回路および前記第4共振回路のうち、前記第1共振回路は最も前記入力端子に電気的に近い共振回路であり、前記第4共振回路は最も前記出力端子に電気的に近い共振回路である請求項3に記載の複合電子部品。
【請求項5】
前記1または複数の第1導電体層は前記入力端子および前記出力端子が設けられた前記積層体の表面と前記複数の第2導電体層との間に位置する請求項4に記載の複合電子部品。
【請求項6】
前記複数の誘電体層と前記複数の導電体層の積層方向からみて、前記第1線路の少なくとも一部と前記第2線路の少なくとも一部とは重なり、前記第1線路の少なくとも一部と前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一部とは重なり、前記第2線路の少なくとも一部と前記第1電極および前記第2電極の少なくとも一部とは重なる請求項1から5のいずれか一項に記載の複合電子部品。
【請求項7】
前記第1線路および前記第2線路の少なくとも一方はスパイラル形状である請求項1から6のいずれか一項に記載の複合電子部品。
【請求項8】
前記第1共振回路および前記第2共振回路を含むフィルタを備える請求項1から7のいずれか一項に記載の複合電子部品。
【請求項9】
前記フィルタを含むマルチプレクサを備える請求項8に記載の複合電子部品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
上記構成において、前記1または複数の第1導電体層は前記入力端子および前記出力端子が設けられた前記積層体の表面と前記複数の第2導電体層との間に位置する構成とすることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図7
【補正方法】変更
【補正の内容】
図7