(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149862
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/16 20060101AFI20220929BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052189
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】石原 宗幸
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA17
2F065AA22
2F065AA65
2F065BB12
2F065BB15
2F065DD03
2F065FF04
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL04
2F065LL06
2F065QQ13
2F065QQ14
2F065QQ23
2F065QQ25
2F065QQ29
2F065QQ31
2F065QQ32
2F065QQ42
2F065SS13
2F065SS15
(57)【要約】
【課題】解像度によらず高い精度で被写体の位置を特定すること。
【解決手段】画像処理装置1は、対象物が含まれる画像を取得する画像取得部31と、前記画像中の前記対象物上を通る或る軸において輝度値の変化量を取得し、前記或る軸上の第1の座標を前記対象物のエッジを検出するための基準点として決定し、前記或る軸上にあって前記第1の座標を基準とした或る範囲に含まれる複数の座標の輝度値の平均と、当該複数の座標各々における輝度値と、の偏差に基づいて、前記対象物のエッジとなる第2の座標を決定する画像処理部32と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が含まれる画像を取得する画像取得手段と、
前記画像中の前記対象物上を通る或る軸において輝度値の変化量を取得し、前記或る軸上の第1の座標を前記対象物のエッジを検出するための基準点として決定する第1の決定手段と、
前記或る軸上にあって前記第1の座標を基準とした或る範囲に含まれる複数の座標の輝度値の平均と、当該複数の座標各々における輝度値と、の偏差に基づいて、前記対象物のエッジとなる第2の座標を決定する第2の決定手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2の決定手段は、
前記エッジの法線方向の輝度成分に基づいて検出された極大値に基づいて前記被写体の中心座標を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2の決定手段は、
前記エッジの法線方向の輝度成分を積分し、積分により得られたデータをエッジ方向へ微分し、微分により得られたデータに基づいて前記極大値を検出する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2の決定手段は、
検出した前記極大値の前後所定数の画素の座標を用いて前記被写体の中心座標を算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記物体はチェーンであるとともに、前記被写体は前記チェーンのピンである
ことを特徴とする請求項1から4のうち何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
対象物が含まれる画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像中の前記対象物上を通る或る軸において輝度値の変化量を取得し、前記或る軸上の第1の座標を前記対象物のエッジを検出するための基準点として決定する第1の決定ステップと、
前記或る軸上にあって前記第1の座標を基準とした或る範囲に含まれる複数の座標の輝度値の平均と、当該複数の座標各々における輝度値と、の偏差に基づいて、前記対象物のエッジとなる第2の座標を決定する第2の決定ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
対象物が含まれる画像を取得する画像取得手段、
前記画像中の前記対象物上を通る或る軸において輝度値の変化量を取得し、前記或る軸上の第1の座標を前記対象物のエッジを検出するための基準点として決定する第1の決定手段、
前記或る軸上にあって前記第1の座標を基準とした或る範囲に含まれる複数の座標の輝度値の平均と、当該複数の座標各々における輝度値と、の偏差に基づいて、前記対象物のエッジとなる第2の座標を決定する第2の決定手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンベアチェーン等の移動する物体を撮像し、画像解析により当該物体の不具合や異常を検出する技術が知られている。この種の技術を開示するものとして例えば特許文献1が存在する。
【0003】
特許文献1には、走行するコンベアチェーンを撮像するタイミングを制御し、内リンクと外リンクを接続するピンの位置が定位置に来る画像を逐次取得し、当該画像を解析してチェーンの形状変化を検出する技術が開示されている。画像解析の技術を利用することにより、人がノギス等の工具を使用してチェーンの結合部分の形状変化を計測することなく、チェーンの経年劣化や不具合を検出することができ、時間やコストを削減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される画像解析を利用した場合、高い解像度の画像に基づいてピン位置の特定を行う場合には、精度よく位置の特定ができる。しかしながら、撮像する位置がチェーンの位置から離れていたり、処理の都合上低い解像度で撮像していたりする場合には、低い解像度の画像しか得られない。このため、低い解像度の画像に基づいてピン位置の特定を行った場合には、精度よく位置の特定を行うことができない。その結果、特定したピン位置に基づいてピンとピンとの間の距離に基づいてチェーンの精度等を測定した場合であっても、信頼性が高い結果を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、解像度によらず高い精度で被写体の位置を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
態様の一例では、画像処理装置は、対象物が含まれる画像を取得する画像取得手段と、前記画像中の前記対象物上を通る或る軸において輝度値の変化量を取得し、前記或る軸上の第1の座標を前記対象物のエッジを検出するための基準点として決定する第1の決定手段と、前記或る軸上にあって前記第1の座標を基準とした或る範囲に含まれる複数の座標の輝度値の平均と、当該複数の座標各々における輝度値と、の偏差に基づいて、前記対象物のエッジとなる第2の座標を決定する第2の決定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、解像度によらず高い精度で被写体の位置を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置を含む画像処理システムの構成を示すシステム構成図である。
【
図2】
図1のコンベアチェーンの外リンクとピンを拡大した拡大図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の機能的構成のうち、画像処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】ピン中心位置算出処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】ピンの位置が中心にあるフレームデータのフレームの一例を示す図である。
【
図7】垂直方向にトリミング処理された第1画像領域の一例を示す図である。
【
図8】水平方向にトリミング処理された第2画像領域の一例を示す図である。
【
図9】第1画像領域に基づいて、積分値diffと、微分値intとをプロットしたグラフの一例である。
【
図10】第2画像領域に基づいて、積分値diffと、微分値intとをプロットしたグラフの一例である。
【
図11】ピンの中心座標を算出する概要を示す概要図である。
【
図12】各解像度に対応して得られた中心座標の算出結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1を含む画像処理システムSの構成を示すシステム構成図である。
図1に示す画像処理システムSは、コンベアチェーン21の異常を画像解析により検出する。
【0012】
[計測対象]
まず、計測対象となるコンベアチェーン21について説明する。コンベアチェーン21は、コンベア装置のスプロケット(図示省略)に懸架される無端状部材である。コンベアチェーン21は、スプロケット等の伝達手段を介してチェーン駆動部22の駆動力が伝達され、所定の速度で所定のルートを周回移動する。なお、コンベアチェーン21は、移動させる対象の用途に適応して移動速度を段階的に切り替えることができるように構成されている。
【0013】
本実施形態のコンベアチェーン21は、一対の外リンク23が内リンク24を両側から挟み込んだ状態でピン25により結合されて構成される。
図2は、
図1のコンベアチェーン21の外リンク23とピン25を拡大した拡大図である。
【0014】
ピン25は、外リンク23と内リンク24の結合部分毎に設けられており、本実施形態の画像処理装置1によって個別に特定される計測対象である。ピン25は、コンベアチェーン21の移動方向に並んでいる。なお、移動方向は
図1の矢印の方向である。ピン25は、四面リペットピンである。
【0015】
コンベアチェーン21は、外リンク(プレート)23、ピン25、円形の頭部26、頭部26における正方形の平面領域27、平面領域27の外縁である直線縁部28、及び外リンク23と平面領域27との間に形成される弓形部分29を有する。ピン25の頭部26を正面から見たときに、平面領域27(対象物)は、四角部分で、その他の部分(弓型部分29)は、ピン25の頭部26(頭頂部)の中心から離れるにつれて傾斜するように形成されている。ピン25の頭部26(頭頂部)が後述する照明部17によって光を当てられると、弓型部分29が影となり、四角の平面領域27のエッジが際立つ。すなわち、四角の平面領域27と弓型部分29との明度の差が大きくなる。
【0016】
本実施形態においては、平坦領域27のエッジを利用してピン25の中心座標を導出する。ピン25が四面リベットピンである構造上、平坦領域27の中心座標をピン25の中心座標として扱うことができる。
【0017】
コンベアチェーン21が有するピン25の数をn個とする。上述の通り、コンベアチェーン21は無端状部材であるため、n個目のピン25-nの次は1番目のピン25-1となる。
【0018】
以下の説明において、ピン25を区別して説明する必要がある場合には、便宜的に1番目をピン25-1とし、以降順番にピン25-2、ピン25-3・・・ピン25-nとする。また、一番目のピン25-1の中心と2番目のピン25-2の中心とを結ぶ直線の距離をピン間距離Lとする。
【0019】
[システム構成]
本実施形態の画像処理システムSの全体構成について説明する。画像処理システムSは、撮像部16と、照明部17と、画像処理装置1と、を備える。
【0020】
撮像部16は、周回するコンベアチェーン21を一定のフレームレートで動画撮影し、画像解析のための映像を取得する撮像手段である。撮像部16の撮像位置は、コンベアチェーン21の構成や点検作業の作業性を考慮して適宜設定される。
【0021】
本実施形態の撮像部16は、光学レンズ部161と、イメージセンサ162と、を主要な構成として備える。光学レンズ部161は、被写体を撮像するために、光を集光するレンズ、例えばフォーカスレンズやズームレンズ等で構成される。イメージセンサ162はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の光電変換素子や、AFE(Analog Front End)等から構成される。画像処理装置1は、撮像部16から出力される信号からフレーム(画像)を生成する。撮像部16から出力される信号を、以下、「フレーム」と呼ぶ。フレームデータは、画像処理装置1に適宜供給される。
【0022】
照明部17は、撮像部16の被写体であるコンベアチェーン21を照明する照明手段である。照明部17が、照度や色成分を調整してコンベアチェーン21を照らすことにより、撮像部16の撮像環境を一定のものにすることができる。照明部17の照度は、外光以上であることが好ましい。照明部17の照度を外光以上の支配的な光とすることで、後述するピン中心位置算出処理によるピン25の中心位置の検出をより正確なものとすることができる。
【0023】
画像処理装置1は、撮像部16から出力されるフレームデータに基づいて画像解析処理を行ってピン25の中心位置を特定する。画像処理装置1は、特定したピン25とピン25との間の距離を測定することにより、コンベアチェーン21の異常を検出する。画像処理装置1が検出した情報は、外部機器5に送信可能となっている。
【0024】
[ハードウェア構成]
本実施形態の画像処理装置1のハードウェア構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【0025】
画像処理装置1は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)等で構成されるプログラムメモリ12と、RAM(Random Access Memory)等で構成されるワークメモリ13と、バス14と、入出力インタフェース15と、通信部18と、入力部19と、出力部20と、記憶部30と、を備える。
【0026】
CPU11は、プログラムメモリ12に記録されているプログラム、又は、プログラムメモリ12からワークメモリ13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。ワークメモリ13には、CPU11が画像処理を含む各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。入出力インタフェース15には、通信部18、入力部19が接続されている。また、入出力インタフェース15には、撮像部16及び照明部17が有線又は無線により接続されている。
【0027】
通信部18は、インターネットを含むネットワークを介して外部機器5や他の装置(図示せず)との間で行う。通信部18は、有線又は無線のインタフェースを介して外部機器5と通信し、撮像したフレームデータや検出結果を外部機器5に送信する。
【0028】
入力部19は、各種釦等で構成され、ユーザの指示操作を受け付け、受け付けた指示操作に応じて各種情報を入力する。出力部20は、画像を表示するディスプレイや音声を拡声するスピーカ等を含む。尚、入力部19にタッチパネルが含まれる場合は入力部19と出力部20とを一体にしてもよい。
【0029】
記憶部30は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリで構成され、各種データを記憶する。記憶部30には、画像処理に関する各種のデータや、検出結果を示す情報等が格納される。
【0030】
[機能的構成]
図4は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置1の機能的構成のうち、画像処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
図4に示すように、制御部としてのCPU11において、画像処理を実行する部分として、画像取得部31と、画像処理部(第1の決定手段、第2の決定手段)32と、が機能する。
【0031】
画像取得部31は、撮像部16から出力されるコンベアチェーン21を被写体として含むフレームデータ(撮像画像)を連続的に取得する。画像取得部31は、個別に特定可能な複数のピン25-1~25-nが所定の方向に配列されたコンベアチェーン21の、ピン25が含まれる画像を取得する。
【0032】
画像処理部32は、計測対象となるピン間距離Lを算出する。そして、記憶部30に記憶される過去に取得されたピン間距離Lと比較し、比較結果を出力する。比較結果は、例えば、前回の測定時からの伸び量として出力される。なお、出力制御部33によるピン間距離の算出には、フレーム数、フレームレート及びフレームデータ中の隣接しあうピン25とピン25の間の中心距離L(以下、「ピン間距離L」とも呼ぶ)を利用することができる。
【0033】
次に、本実施形態の画像処理装置1による画像処理についてフローチャートを参照しながら説明する。なお、以下の説明において、各ステップは、CPU11がプログラムメモリ12に記憶された制御プログラムをワークメモリ13上にロードして実行することで実現される。
【0034】
[ピン中心位置算出処理]
コンベアチェーン21のピン25の中心位置を算出するピン中心位置算出処理について説明する。本実施形態では、一枚のフレーム(画像)に含まれる隣接しあう二つのピン25,25の各々に対し、ピン間距離Lを測定する処理を実行して、ピン間距離Lを導出する処理が実行される。
図5は、ピン中心位置算出処理の流れを示すフローチャートである。
【0035】
処理が開始されると、画像取得部31が隣接しあう二つのピン25,25を含むフレームデータを取得する(ステップS11)。この処理では、画像取得部31により、ピン間距離Lの測定対象となる2つのピン25、25の位置がフレーム(画像)の中心付近にあるフレームデータが取得される(ステップS11)。例えば、マーキングが施されているピン25が最初に取得するべき対象に設定されている場合は、そのピンを含むピン間距離Lが含まれるフレームデータが取得される。そして、取得されたフレームデータからピン25を検出する処理が実行される。
【0036】
図6は、隣接しあう二つのピン25,25の位置が中心付近にあるフレームデータのうち、一つのピン25が含まれるフレーム(画像)50の一例を示す図である。隣接しあう二つのピン25,25の位置が中心付近にあるフレームデータに基づいて、ピン25の中心位置を検出する処理が実行される。
【0037】
次に、画像処理部32は、ピン25を含むフレームデータからピン25の位置が中心となる画像領域のデータを抽出するようトリミング処理を行う(ステップS12)。このトリミング処理では、ピン25の位置がそのフレームの中心となる矩形の画像領域のうち水平方向及び垂直方向のデータが切り取られる。以下トリミング処理された画像領域のデータをトリミング画像データとして説明する。
【0038】
図7は、垂直方向(x軸方向)にトリミング処理された第1画像領域51の一例を示す図である。xはピン25のx軸方向の長さを示し、y/2はピン25のy軸方向の長さのうち半分の長さを示す。
図8は、水平方向(y軸方向)にトリミング処理された第2画像領域52の一例を示す図である。yはピン25のy軸方向の長さを示し、2/xはピン25のx軸方向の長さのうち半分の長さを示す。後述するように、水平方向のエッジ(左エッジ及び右エッジ)を検出する場合には、
図7に示すように、垂直方向のピン25の位置がフレーム(画像)50の中心となるようにトリミング処理を行う。同様に、垂直方向のエッジ(上エッジ及び下エッジ)を検出する場合には、
図8に示すように、水平方向のピン25の位置がフレーム(画像)50の中心となるようにトリミング処理を行う。
図7は、垂直方向(x軸方向)にトリミング処理された第1画像領域51の一例を示す図である。
図8は、水平方向(y軸方向)にトリミング処理された第2画像領域52の一例を示す図である。
【0039】
次に、画像処理部32は、トリミング処理を行ったトリミング画像データのエッジの法線方向(水平方向及び垂直方向)の輝度成分を積分(integral)する(ステップS13)。画像処理部32は、積分したデータをエッジ方向(垂直方向及び水平方向)に微分(differential)する(ステップS14)。画像処理部32は、微分したデータを正規化し、極大値(ピーク)を検出する(ステップS15)。この処理では、画像処理部32は、微分したデータのうちマイナスとなったデータをプラスのデータに反転する。
【0040】
図9、
図10を参照して、微分したデータから極大値(ピーク)を検出する例について説明する。
図9は、第1画像領域51に基づいて、積分値diffと、微分値intとをプロットしたグラフの一例である。
図10は、第2画像領域52に基づいて、積分値diffと、微分値intとをプロットしたグラフの一例である。
【0041】
図9に示すように、画像処理部32は、x軸方向にトリミング処理がされた第1画像領域51に基づいて、x軸方向の法線方向の輝度成分を積分して得られた積分値diffをプロットする。画像処理部32は、積分値diffをy軸方向に微分して得られた微分値intをプロットする。そして、画像処理部32は、
図7、
図9に示すように、ピン25のx軸方向の左エッジex1、右エッジex2の輝度値に基づいて算出した積分値diffは急峻な極大値(ピーク)x1、極大値(ピーク)x2として算出することができる。
図9の例では、算出された極大値(ピーク)x1の座標は「12」、極大値(ピーク)x2の座標は「69」である。
【0042】
同様に、
図10に示すように、画像処理部32は、y軸方向にトリミング処理がされた第2画像領域52に基づいて、y軸方向の法線方向の輝度成分を積分して得られた積分値diffをプロットする。画像処理部32は、積分値diffをx軸方向に微分して得られた微分値intをプロットする。そして、画像処理部32は、
図8、
図10に示すように、ピン25のy軸方向の上エッジey1、下エッジey2の輝度値に基づいて算出した積分値diffは急峻な極大値(ピーク)y1、極大値(ピーク)y2として算出することができる。
図10の例では、算出された極大値(ピーク)y1の座標は「11」、極大値(ピーク)y2の座標は「69」である。即ち、この極大値y1、y2は、エッジを検出するための基準点となる。
【0043】
画像処理部32は、検出したデータから極大値(ピーク)の前後11点(複数の座標)の画素(pixel)分の座標それぞれの輝度を加算し、加算した輝度の合計を11で割る(ステップS16)。すなわち、画像処理部32は極大値前後11点の座標における輝度の平均を算出する。
【0044】
画像処理部32は算出した11点の座標それぞれの輝度と、ステップS16で算出した11点の座標における平均の輝度と、の差を導出して絶対値をとる(ステップS17)。すなわち、画像処理部32は各々の座標について、輝度の偏差の絶対値を算出する。これにより11点の絶対値を求めることができる。
【0045】
画像処理部32は11点の座標について、ステップS17で算出した絶対値を重みとした加重平均を取る(ステップS18)。これにより画像処理部32は1つの座標を求めることができる。
【0046】
画像処理部32はステップS18で求めた座標を、エッジ(第2の座標)として扱い、同様に他方のエッジを求めることで、水平方向の中心位置を検出する(ステップS19)。
【0047】
画像処理部32は垂直方向に対し、上述と同様にステップS16~ステップS19の処理を繰り返し実行し、垂直方向の中心位置を検出する(ステップS20)。
【0048】
画像処理部は、隣接しあうピン25,25に対してもステップS16~ステップS20の処理を繰り返し実行することにより、各ピン25の中心座標を算出して、ピン25,25間の距離Lを算出する(ステップS21)。この処理が終了すると、ピン中心位置算出処理は終了となる。
【0049】
図11を参照して、極大値(ピーク)の前後の座標を用いてピン25の中心座標を算出する例について説明する。
図11は、ピン25の中心座標を算出する概要を示す概要図である。
図11の例では、所定数の画素(pixel)分として5画素(pixel)が設定されている。このため、画像処理部32は、
図9の極大値(ピーク)x1の前後5画素(pixel)の座標を用いてピン25の水平方向の中心座標を算出する。
【0050】
極大値(ピーク)x1の画素(pixel)の座標は「12」であるため、画像処理部32は、カウンタn(nは1以上の整数)に「12」をセットする。画像処理部32は、セットした「12」の座標に基づいて、n-5~n+5画素(pixel)、すなわち、画素(pixel)「7」~「17」に対応する11点の座標に基づいて中心座標を算出する。画像処理部32は、画素(pixel)「7」~「17」に対応する11点の座標の積分値diffに基づいて、ピン25の水平方向の中心座標を算出することができる。また、同様に、画像処理部32は、ピン25の垂直方向の中心座標を算出することができる。
【0051】
図12は、各解像度に対応して得られた中心座標の算出結果を示す図である。
図12では、算出結果として、各解像度に対応して得られたエッジと、得られたエッジに基づいて算出された水平方向及び垂直方向の中心座標と、誤差率とが示されている。
【0052】
計測サイズ1200×1200画素(pixel)の算出結果は、本実施形態の画像処理方法を適用せずに取得した実測値のデータである。計測サイズ600×600画素(pixel)、240×240画素(pixel)、120×120画素(pixel)の算出結果は、本実施形態の画像処理方法を適用して得られたデータである。
【0053】
誤差率は、解像度1200×1200画素(pixel)で得られた水平方向の中心及び垂直方向の中心の座標に対するズレの割合に基づいて算出される。
図12の解像度1200×1200画素(pixel)のように、高い解像度の画像に基づいてピン25の中心位置の特定を行う場合には、精度よく位置の特定を行うことができる。
【0054】
この点、本実施形態においては、低い解像度の画像に基づいてピン25の中心位置の特定を行った場合であっても、サブピクセル単位まで精度よくピン25の中心位置の特定を行うことができる。これにより、画像処理の都合上、低い解像度で撮像して低い解像度の画像しか得られない場合であっても、サブピクセル単位での計測を可能とすることにより、精度よく高い精度で被写体であるピン25の中心位置の特定を行うことができる。
【0055】
本実施形態の画像処理装置1による効果について説明する。
本実施形態の画像処理装置1は、個別に特定可能な複数のピン25-1~25-n(被写体)が所定の方向に配列されたコンベアチェーン21(物体)の、ピン25(被写体)が含まれる画像を取得する画像取得部31(画像取得手段)と、画像に含まれるピン25(被写体)の左エッジex1及び右エッジex2(エッジ)から得られた座標x1、x2、y1、y2に基づいて、ピン25(被写体)の中心座標を算出する画像処理部32(画像処理手段)と、を備える。
【0056】
これにより、低い解像度のフレームデータしか得られない場合であっても、サブピクセル単位での計測を可能とすることにより、精度よく被写体であるピン25の中心座標の算出を行うことができる。
【0057】
また、本実施形態の画像処理装置1の画像処理部32(画像処理手段)は、エッジの法線方向の輝度成分に基づいて検出された極大値(ピーク)に基づいてピン25(被写体)の中心座標を算出する。
【0058】
これにより、輝度成分に基づいて左エッジex1、右エッジex2、上エッジey1、下エッジey2に対応する極大値(ピーク)を容易に検出することができ、ピン25(被写体)の中心座標の算出精度をより向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態の画像処理装置1の画像処理部32(画像処理手段)は、左エッジex1、右エッジex2、上エッジey1、下エッジey2(エッジ)の法線方向の輝度成分を積分し、積分により得られたデータをエッジ方向へ微分し、微分により得られたデータに基づいて極大値(ピーク)を検出する。
【0060】
これにより、微分の結果、輝度値成分の変化を峻峭な極大値(ピーク)として検出することができ、左エッジex1、右エッジex2、上エッジey1、下エッジey2の検出精度をサブピクセル単位で行うことができる。
【0061】
また、本実施形態の画像処理装置1の画像処理部32(画像処理手段)は、検出した極大値の前後5画素(pixel)(所定数の画素)の座標を用いて左エッジex1、右エッジex2、上エッジey1、下エッジey2(エッジ)の中心座標を算出し、算出した中心座標に基づいてピン25(被写体)の中心座標を算出する。
【0062】
これにより、検出した極大値の画素(pixel)がなだらかであっても、左エッジex1、右エッジex2、上エッジey1、下エッジey2の検出精度をサブピクセル単位で行うことができる。
【0063】
また、上述の通り、本実施形態の物体は、コンベアチェーン21であるとともに、被写体はコンベアチェーン21のピン25である。
【0064】
これにより、移動するコンベアチェーン21のピン25とピン25との間のピン間距離Lを精度よく測定することができ、画像解析によりピン25間の伸び状態等を正確に評価できる。
【0065】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0066】
例えば、本発明は、画像処理機能を有する電子機器一般に適用することができる。例えば、本発明は、ノート型のパーソナルコンピュータ、ビデオカメラ、携帯型ナビゲーション装置、スマートフォン、タブレット等の各種電子装置に適用可能である。
【0067】
上述の実施形態において、ピン25は四角形状に形成されているがこの限りではない。例えば、ピン25は、多角形状や丸状であってもよい。
【0068】
上述の実施形態において、所定数の画素(pixel)分として5画素(pixel)が設定されているがこの限りではない。例えば、所定数の画素(pixel)分として3、5、7,9、11等であってもよい。
【0069】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0070】
換言すると、
図4の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が画像処理装置1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に
図4の例に限定されない。
【0071】
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0072】
本実施形態における機能的構成は、演算処理を実行するプロセッサによって実現され、本実施形態に用いることが可能なプロセッサには、シングルプロセッサ、マルチプロセッサ及びマルチコアプロセッサ等の各種処理装置単体によって構成されるものの他、これら各種処理装置と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field‐Programmable Gate Array)等の処理回路とが組み合わせられたものを含む。
【0073】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0074】
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0075】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray(登録商標) Disc(ブルーレイディスク)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。
また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている
図1のプログラムメモリ12や、図示しないハードディスク等で構成される。
【0076】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【0077】
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0079】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
対象物が含まれる画像を取得する画像取得手段と、
前記画像中の前記対象物上を通る或る軸において輝度値の変化量を取得し、前記或る軸上の第1の座標を前記対象物のエッジを検出するための基準点として決定する第1の決定手段と、
前記或る軸上にあって前記第1の座標を基準とした或る範囲に含まれる複数の座標の輝度値の平均と、当該複数の座標各々における輝度値と、の偏差に基づいて、前記対象物のエッジとなる第2の座標を決定する第2の決定手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
[付記2]
前記第2の決定手段は、
前記エッジの法線方向の輝度成分に基づいて検出された極大値に基づいて前記被写体の中心座標を算出する
ことを特徴とする付記1に記載の画像処理装置。
[付記3]
前記第2の決定手段は、
前記エッジの法線方向の輝度成分を積分し、積分により得られたデータをエッジ方向へ微分し、微分により得られたデータに基づいて前記極大値を検出する
ことを特徴とする付記2に記載の画像処理装置。
[付記4]
前記第2の決定手段は、
検出した前記極大値の前後所定数の画素の座標を用いて前記被写体の中心座標を算出する
ことを特徴とする付記3に記載の画像処理装置。
[付記5]
前記物体はチェーンであるとともに、前記被写体は前記チェーンのピンである
ことを特徴とする付記1から4のうち何れか1つに記載の画像処理装置。
[付記6]
対象物が含まれる画像を取得する画像取得ステップと、
前記画像中の前記対象物上を通る或る軸において輝度値の変化量を取得し、前記或る軸上の第1の座標を前記対象物のエッジを検出するための基準点として決定する第1の決定ステップと、
前記或る軸上にあって前記第1の座標を基準とした或る範囲に含まれる複数の座標の輝度値の平均と、当該複数の座標各々における輝度値と、の偏差に基づいて、前記対象物のエッジとなる第2の座標を決定する第2の決定ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
[付記7]
コンピュータを、
対象物が含まれる画像を取得する画像取得手段、
前記画像中の前記対象物上を通る或る軸において輝度値の変化量を取得し、前記或る軸上の第1の座標を前記対象物のエッジを検出するための基準点として決定する第1の決定手段、
前記或る軸上にあって前記第1の座標を基準とした或る範囲に含まれる複数の座標の輝度値の平均と、当該複数の座標各々における輝度値と、の偏差に基づいて、前記対象物のエッジとなる第2の座標を決定する第2の決定手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0080】
1 画像処理装置
5 外部機器
11 CPU
12 プログラムメモリ
13 ワークメモリ
14 バス
15 入出力インタフェース
16 撮像部
17 照明部
18 通信部
19 入力部
20 出力部
21 コンベアチェーン
22 チェーン駆動部
23 外リンク
24 内リンク
25 ピン
26 頭部
27 平面領域
28 直線縁部
29 弓形部分
30 記憶部
31 画像取得部
32 画像処理部
33 出力制御部
51 第1画像領域
52 第2画像領域
161 光学レンズ部
162 イメージセンサ