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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149870
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/08 20060101AFI20220929BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60C9/08 K
B60C9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052198
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】遠島 葉
(72)【発明者】
【氏名】信國 真吾
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131AA34
3D131AA35
3D131AA36
3D131AA39
3D131AA44
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC05
3D131BC22
3D131BC31
3D131DA07
3D131DA10
3D131EA10Y
3D131GA19
(57)【要約】
【課題】 耐サイドカット性能を向上しつつ、質量の増加を抑制しうる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】 空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、それぞれにビードコア5が埋設された一対のビード部4と、一対のビード部4の間に配されたトロイド状のカーカス6とを備える。カーカス6は、一対のビード部4の間を跨るように延びる第1プライ11と、トレッド部2において、第1プライ11のタイヤ半径方向外側に配され、かつ、一対のビード部4の間を跨るように延びる第2プライ12とを含む。第1プライ11は、第1コードの層からなる。第2プライ12は、第2コードの層からなる。第2コードの太さは、第1コードの太さの1.1~2.0倍である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
トレッド部と、
一対のサイドウォール部と、
それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、
前記一対のビード部の間に配されたトロイド状のカーカスとを備え、
前記カーカスは、
前記一対のビード部の間を跨るように延びる第1プライと、
前記トレッド部において、前記第1プライのタイヤ半径方向外側に配され、かつ、前記一対のビード部の間を跨るように延びる第2プライとを含み、
前記第1プライは、第1コードの層からなり、
前記第2プライは、第2コードの層からなり、
前記第2コードの太さは、前記第1コードの太さの1.1~2.0倍である、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1プライは、前記一対のビード部の前記ビードコア間を延びる本体部と、前記一対のビード部のそれぞれにおいて、前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向の内側から外側に落ち返された一対の折返し部とを含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2プライは、前記一対のビード部の前記ビードコア間を延びる本体部と、前記一対のビード部のそれぞれにおいて、前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向の内側から外側に落ち返された一対の折返し部とを含む、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1コード及び前記第2コードは、有機繊維コードからなる、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第2プライの幅5cmあたりに配された前記第2コードの本数である第2エンズは、前記第1プライの幅5cmあたりに配された前記第1コードの本数である第1エンズ以下である、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第2エンズは、前記第1エンズの0.75倍以上である、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記第2エンズは、前記第1エンズと等しい、請求項5又は6に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、第1プライと、第1プライに対して、タイヤ半径方向外側に配置された第2プライとを備えた空気入りタイヤが記載されている。第2プライは、トレッド部に位置する内端部からタイヤ径方向内側に延びるサイド部と、一対のビードコアで巻き上げられた巻上部とをそれぞれ有する一対のプライ片を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-100307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の空気入りタイヤでは、第1プライのモジュラスや破断強度を、第2プライの一対のプライ片のそれらよりも低くすることで、軽量化が図られているものの、耐サイドカット性能についてはさらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、耐サイドカット性能を向上しつつ、質量の増加を抑制しうる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、トレッド部と、一対のサイドウォール部と、それぞれにビードコアが埋設された一対のビード部と、前記一対のビード部の間に配されたトロイド状のカーカスとを備え、前記カーカスは、前記一対のビード部の間を跨るように延びる第1プライと、前記トレッド部において、前記第1プライのタイヤ半径方向外側に配され、かつ、前記一対のビード部の間を跨るように延びる第2プライとを含み、前記第1プライは、第1コードの層からなり、前記第2プライは、第2コードの層からなり、前記第2コードの太さは、前記第1コードの太さの1.1~2.0倍であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1プライは、前記一対のビード部の前記ビードコア間を延びる本体部と、前記一対のビード部のそれぞれにおいて、前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向の内側から外側に落ち返された一対の折返し部とを含んでもよい。
【0008】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第2プライは、前記一対のビード部の前記ビードコア間を延びる本体部と、前記一対のビード部のそれぞれにおいて、前記ビードコアの周りをタイヤ軸方向の内側から外側に落ち返された一対の折返し部とを含んでもよい。
【0009】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第1コード及び前記第2コードは、有機繊維コードでもよい。
【0010】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第2プライの幅5cmあたりに配された前記第2コードの本数である第2エンズは、前記第1プライの幅5cmあたりに配された前記第1コードの本数である第1エンズ以下であってもよい。
【0011】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第2エンズは、前記第1エンズの0.75倍以上であってもよい。
【0012】
本発明に係る前記空気入りタイヤにおいて、前記第2エンズは、前記第1エンズと等しくてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用することにより、耐サイドカット性能を向上しつつ、質量の増加を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の空気入りタイヤの正規状態における回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。
図2】トレッド部におけるカーカス及びベルト層の展開図である。
図3図1のAーA線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態が図面に基づき説明される。図面は、発明の内容の理解を助けるために、誇張表現や、実際の構造の寸法比とは異なる表現が含まれることが理解されなければならない。また、各実施形態を通して、同一又は共通する要素については同一の符号が付されており、重複する説明が省略される。さらに、実施形態及び図面に表された具体的な構成は、本発明の内容理解のためのものであって、本発明は、図示されている具体的な構成に限定されるものではない。
【0016】
[空気入りタイヤ]
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の正規状態における回転軸を含むタイヤ子午線断面図である。図1において、一点鎖線は、タイヤ赤道(赤道面)Cを表わしている。本実施形態のタイヤ1は、乗用車用として構成されている。なお、タイヤ1は、乗用車用に限定されるものではなく、例えば、バスやトラックなどの重荷重用等として構成されてもよい。
【0017】
「正規状態」とは、タイヤ1が正規リム(図示省略)にリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、この正規状態において測定される値である。
【0018】
「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムである。正規リムは、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば"Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。
【0019】
「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧である。正規内圧は、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUSCOLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0020】
本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2と、一対のサイドウォール部3と、それぞれにビードコア5、5が埋設された一対のビード部4と、一対のビード部4の間に配されたトロイド状のカーカス6とを備えている。
【0021】
ビード部4には、ビードコア5から半径方向外方に向かって延びるビードエーペックスゴム8が配置されている。さらに、カーカス6のタイヤ半径方向の外側かつトレッド部2の内部には、ベルト層7が配置されている。図2は、トレッド部2におけるカーカス6及びベルト層7の展開図である。
【0022】
[ベルト層]
図1及び図2に示されるように、ベルト層7は、少なくとも1枚、本実施形態では、タイヤ半径方向の内外に配された2枚の内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bを含んで構成されている。
【0023】
図2に示されるように、内側ベルトプライ7A及び外側ベルトプライ7Bは、例えば、ベルトコード7cの配列体がトッピングゴム7gで被覆されて形成されている。各ベルトコード7cの角度θ3は、タイヤ赤道Cに対して、例えば10~40度に設定されている。本実施形態のベルトコード7cには、スチールコードが採用されているが、芳香族ポリアミドやレーヨン等の高弾性の有機繊維コードが採用されてもよい。
【0024】
[カーカス]
図1に示されるように、カーカス6は、第1プライ11と、トレッド部2において、第1プライ11のタイヤ半径方向外側に配された第2プライ12とを含んで構成される。
【0025】
[第1プライ]
第1プライ11は、一対のビード部4の間を跨るように延びている。本実施形態の第1プライ11は、本体部11Aと、一対の折返し部11Bとを含んで構成されている。
【0026】
本体部11Aは、一対のビード部4のビードコア5間を延びている。一対の折返し部11Bは、一対のビード部4のそれぞれにおいて、ビードコア5の周りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されている。このような第1プライ11は、トレッド部2からビード部4にかけて(バットレス部9及びサイドウォール部3を含む)、タイヤ1の剛性を高めることができる。なお、本実施形態の第1プライ11は、本体部11Aと、一対の折返し部11Bとを含むものが例示されたが、このような態様に限定されない。第1プライ11は、例えば、本体部11Aのみで構成されてもよい。
【0027】
図2に示されるように、第1プライ11は、第1コード11cの層として構成されている。本実施形態の第1プライ11は、並列された第1コード11cと、第1コード11cを被覆するトッピングゴム11gとを含んで構成されている。第1コード11cは、タイヤ赤道Cに対して、例えば75~90度の角度θ1で配列されている。
【0028】
第1コード11cには、例えば、有機繊維コードやスチールコード等が適宜採用されうる。本実施形態の第1コード11cは、有機繊維コードで構成されている。有機繊維コードには、例えば、ナイロン、レーヨン又は芳香族ポリアミドなど(本例では、ナイロン)が採用されうる。このような第1コード11cは、耐サイドカット性能の向上に役立つ。
【0029】
図3は、図1のAーA線の断面図である。本実施形態の第1コード11cは、複数本のストランド13、13が撚り合わされて形成されている。本実施形態の第1コード11cは、2本のストランド13、13で構成されているが、3本以上のストランドで構成されてもよい。各ストランド13、13は、フィラメント束が下撚りされている。これらのストランド13、13が上撚りされることにより、1本の第1コード11cが構成されている。なお、下撚り数及び上撚り数等は、従来と同様に適宜設定されうる。
【0030】
[第2プライ]
図1に示されるように、第2プライ12は、一対のビード部4の間を跨るように延びている。本実施形態の第2プライ12は、本体部12Aと、一対の折返し部12Bとを含んで構成されている。
【0031】
本体部12Aは、一対のビード部4のビードコア5間を延びている。一対の折返し部12Bは、一対のビード部4のそれぞれにおいて、ビードコア5の周りをタイヤ軸方向の内側から外側に折り返されている。このような第2プライ12は、第1プライ11と同様に、トレッド部2からビード部4にかけて(バットレス部9及びサイドウォール部3を含む)、タイヤ1の剛性を高めることができる。なお、本実施形態の第2プライ12は、本体部12Aと、一対の折返し部12Bとを含むものが例示されたが、例えば、本体部12Aのみで構成されるものでもよい。
【0032】
一対の折返し部12Bのタイヤ半径方向の外端12tは、第1プライ11の一対の折返し部11Bのタイヤ半径方向の外端11tと、タイヤ半径で位置ずれされているのが望ましい。これにより、サイドウォール部3に大きな剛性段差が形成されるのを防ぐことができる。本実施形態の第2プライ12の外端12tは、第1プライ11の外端11tよりもタイヤ半径方向の内側に配されている。
【0033】
図2に示されるように、第2プライ12は、第2コード12cの層として構成されている。本実施形態の第2プライ12は、並列された第2コード12cと、第2コード12cを被覆するトッピングゴム12gとを含んで構成されている。第2コード12cは、タイヤ赤道Cに対して、例えば75~90度の角度θ2で配列されている。
【0034】
第2コード12cは、例えば、有機繊維コードやスチールコード等で適宜構成されうる。本実施形態の第2コード12cは、有機繊維コードで構成されている。本実施形態の第2コード12cを構成する有機繊維コードには、第1コード11cを構成する有機繊維コードと同様のものが採用されている。このような第2コード12cは、耐サイドカット性能の向上に役立つ。なお、第2コード12cを構成する有機繊維コードには、第1コード11cとは異なる有機繊維コード(例えば、第1コードよりも大きな強度を有する有機繊維コード)が採用されてもよい。
【0035】
図3に示されるように、本実施形態の第2コード12cは、第1コード11cと同様に、複数本(本例では、2本)のストランド14、14が撚り合わされて形成されている。
【0036】
本実施形態のタイヤ1は、第1プライ11及び第2プライ12により、図1に示したトレッド部2とサイドウォール部3との間のバットレス部9から、サイドウォール部3にかけて、その剛性を確保することができる。したがって、本実施形態のタイヤ1は、耐サイドカット性能を向上することができる。さらに、本実施形態のタイヤ1は、耐サイドカット性能の向上により、バットレス部9からサイドウォール部3にかけて、ゴム厚みを減らすことができる。これにより、本実施形態のタイヤ1は、タイヤ1の質量の増加の抑制、及び、転がり抵抗の低減を実現することが可能となる。
【0037】
[第1コード及び第2コードの太さ]
本実施形態のタイヤ1では、耐サイドカット性能をさらに向上させるために、図3に示されるように、第2コード12cの太さT2が、第1コード11cの太さT1の1.1~2.0倍に設定されている。
【0038】
本明細書において、太さT1及びT2は、第1コード11c及び第2コード12cが有機繊維コードである場合、総繊度(dtex)で定義されるものとする。一方、第1コード11c及び第2コード12cが金属コード(スチールコード等)である場合には、素線束を含めた直径(mm)で、太さT1及びT2が定義されるものとする。
【0039】
本実施形態では、第2コード12cの太さT2が、第1コード11cの太さT1の1.1以上に設定されることにより、第1プライ11に比べて、走行中の衝撃が大きく伝えられる第2プライ12の剛性を高めることができる。これにより、タイヤ1は、耐サイドカット性能を向上させることができる。
【0040】
一方、第2コード12cの太さT2が、第1コード11cの太さT1の2.0倍以下に設定されることにより、第2プライ12の質量が必要以上に増加するのを防ぐことができる。これにより、本実施形態では、タイヤ1の質量の増加を抑制することができる。
【0041】
このように、本実施形態のタイヤ1は、第2コード12cの太さT2が、第1コード11cの太さT1の1.1~2.0倍に設定されることにより、耐サイドカット性能を向上しつつ、質量の増加を抑制することが可能となる。このような作用を効果的に発揮させるために、第2コード12cの太さT2は、好ましくは、第1コード11cの太さT1の1.3倍以上であり、また、好ましくは、1.8倍以下である。
【0042】
第1コード11cの太さ(総繊度)T1及び第2コード12cの太さ(総繊度)T2は、上記の関係を満たしていれば、適宜設定されうる。
【0043】
第1コード11cの太さ(総繊度)T1は、2000~3200dtexに設定されるのが望ましい。太さT1が2000dtex以上に設定されることにより、第1プライ11の剛性を維持することができるため、耐サイドカット性能を向上させうる。一方、太さT1が3200dtex以下に設定されることにより、第1プライ11の質量が必要以上に増加するのを防ぐことができる。このような観点より、太さT1は、好ましくは2200dtex以上であり、また、好ましくは、3000dtex以下である。
【0044】
第2コード12cの太さ(総繊度)T2は、3000~4600dtexに設定されるのが望ましい。太さT2が3000dtex以上に設定されることにより、第2プライ12の剛性を高めることができるため、耐サイドカット性能を向上させうる。一方、太さT2が4600dtex以下に設定されることにより、第2プライ12の質量が必要以上に増加するのを防ぐことができる。このような観点より、太さT2は、好ましくは3200dtex以上であり、また、好ましくは、4400dtex以下である。
【0045】
[第1プライ及び第2プライのエンズ]
第1プライ11の幅5cmあたりに配された第1コード11cの本数である第1エンズ、及び、第2プライ12の幅5cmあたりに配された第2コードの本数である第2エンズは、適宜設定することができる。なお、エンズを特定する際の第1プライ11の幅は、第1コード11cの長手方向と直交する方向に測定される。また、エンズを特定する際の第2プライ12の幅は、第2コード12cの長手方向と直交する方向に測定される。
【0046】
なお、第2エンズが第1エンズよりも大きくなると、第2プライ12の質量が必要以上に増加して、タイヤ1の質量が増加するおそれがある。さらに、加硫成形時のゴム流れにより、タイヤ周方向で隣接する第1コード11c、11c間に、複数の第2コード12cが割り込む傾向がある。これにより、第1コード11cと第2コード12cとの間のゴム厚みが小さくなり、耐サイドカット性能を十分に向上できないおそれがある。このような観点より、第2エンズは、第1エンズ以下に設定されるのが望ましい。
【0047】
一方、第2エンズが第1エンズよりも必要以上に小さくなると、第2プライ12の剛性を十分に高くすることができず、耐サイドカット性能を十分に向上できないおそれがある。さらに、加硫成形時のゴム流れにより、タイヤ周方向で隣接する第2コード12c、12c間に、複数の第1コード11cが割り込む傾向がある。これにより、第1コード11cと第2コード12cとの間のゴム厚みが小さくなり、耐サイドカット性能を十分に向上できないおそれがある。このような観点より、第2エンズは、第1エンズの0.75倍以上に設定されるのが望ましい。
【0048】
上記のような作用をより効果的に発揮させるために、第2エンズは、第1エンズと等しいのが望ましい。これにより、タイヤ1は、加硫成形時のゴム流れによって、タイヤ周方向において、第1コード11cと第2コード12cとを交互に配置することができるため、第1コード11cと第2コード12cとの間のゴム厚みが小さくなるのを防ぐことができる。さらに、第2プライ12の剛性の向上と、第2プライ12の質量増加の抑制とが、バランス良く実現されうる。したがって、本実施形態のタイヤ1は、耐サイドカット性能を向上しつつ、質量の増加を抑制することができる。
【0049】
第1エンズ及び第2エンズは、適宜設定される。本実施形態の第1エンズ及び第2エンズは、35~60(本/5cm)に設定されている。第1エンズ及び第2エンズが35(本/5cm)以上に設定されることにより、耐サイドカット性能を向上させることができる。一方、第1エンズ及び第2エンズが60(本/5cm)以下に設定されることにより、第1プライ11及び第2プライ12の質量の増加が抑制されうる。このような観点より、第1エンズ及び第2エンズは、好ましくは40(本/5cm)以上であり、また、好ましくは56(本/5cm)以下である。
【0050】
本実施形態のタイヤ1は、第1プライ11及び第2プライ12による耐サイドカット性能の向上により、第1プライ11の外端11t及び第2プライ12の外端12tを、タイヤ最大幅位置Mよりもタイヤ半径方向内側に位置させることができる。これにより、第1プライ11及び第2プライ12の質量が必要以上に増加するのを抑制できるため、タイヤ1の質量の増加を抑制することができる。
【0051】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0052】
[実施例A]
図1に示した空気入りタイヤが、表1の仕様に基づいて試作された(実施例1~実施例5、比較例1、及び、比較例2)。そして、各試作タイヤについて、耐サイドカット性能、及び、タイヤの質量が評価された。共通仕様やテスト方法は、次のとおりである。また、テストの結果が表1に示される。
タイヤサイズ:265/65R18
リムサイズ:18×8.0J
内圧:250kPa
バットレス部の厚さ:6.0mm
サイドウォール部の厚さ:3.0mm
第1プライ:
第1コード:ナイロン(ストランド:2本)
第1エンズ:48(本/5cm)
第2プライ:
第2コード:ナイロン(ストランド:2本)
第2エンズ:48(本/5cm)
【0053】
<耐サイドカット性能>
各試作タイヤを上記リムにリム組みし、上記内圧を充填するとともに、サイドウォール部に、クサビ型の刃が取付けられた錘を有する振子を自由落下させて衝撃を与え、サイドウォール部が破壊されたときのエネルギーが、錘の質量及び落下高さに基づいて求められた。結果は、比較例1のエネルギーを100とする指数で表示された。数値が大きいほど良好である。
【0054】
<タイヤの質量>
各試作タイヤ1本当たりの質量が測定された。結果は、比較例1の質量を100とする指数で表示された。数値が小さいほど軽量であり、質量の増加が抑制されている。
【0055】
【表1】
【0056】
テストの結果、実施例の空気入りタイヤは、比較例の空気入りタイヤに比べて、耐サイドカット性能を向上しつつ、質量の増加を抑制することができた。
【0057】
[実施例B]
図1に示した空気入りタイヤが、表2の仕様に基づいて試作された(実施例1、実施例6~実施例9)。そして、各試作タイヤについて、耐サイドカット性能、タイヤの質量、及び、耐久性能が評価された。共通仕様は、表2の仕様、及び、下記の仕様を除いて、実施例Aに記載のとおりである。また、テスト方法は、下記の耐久性能を除いて、実施例Aの記載のとおりである。
第1コードの太さT1(総繊度):2200(dtex)
第2コードの太さT2(総繊度):4400(dtex)
【0058】
<耐久性能>
ドラム耐久試験機を用い、下記の条件にてタイヤを走行させた。そして、サイドウォール部に損傷が発生するまでの走行距離に基づいて、実施例1を100とする指数で評価された。数値の大きい方ほど、良好である。なお、90以上であれば、空気入りタイヤに求められる耐久性能を有している。
速度:60km/h
荷重:14.35kN
【0059】
【表2】
【0060】
テストの結果、実施例の空気入りタイヤは、耐サイドカット性能を向上しつつ、質量の増加を抑制することができた。さらに、第1エンズと第2エンズとの比が好ましい範囲内の実施例1、実施例7及び実施例8は、他の実施例に比べて、耐久性能を向上させることができた。
【符号の説明】
【0061】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
11 第1プライ
12 第2プライ
図1
図2
図3