(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149892
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】データ表示処理方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220929BHJP
B21B 37/00 20060101ALI20220929BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20220929BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20220929BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20220929BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20220929BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B21B37/00 242
B21B38/00 C
B21B38/00 F
B21B38/04 Z
B21C51/00 E
B21C51/00 P
B21C51/00 R
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052230
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】山本 大貴
【テーマコード(参考)】
3C100
4E124
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA29
3C100AA34
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA58
3C100AA63
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C100BB33
3C100EE10
4E124AA10
4E124AA17
4E124BB01
4E124BB07
4E124BB08
4E124BB10
4E124CC01
4E124EE21
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】計測機器更新時のメンテナンス負荷を低減し、複数のデータの関連性を容易に把握可能な情報を提示する。
【解決手段】材料から金属製品を製造する製造プロセスにおいて取得された複数の製造実績データを表示するデータ表示処理方法であって、複数の計測機器により、複数の材料長さ位置での計測値を所定のデータ取得間隔で取得し、取得された計測値をそれぞれ材料毎に、製品特定情報及び材料長さ位置と関連付けて、テキストデータとして製造実績データ記憶部に記録し、製品特定情報に基づいて製造実績データ記憶部から同一の金属製品のテキストデータを特定し、特定されたテキストデータから表示対象として選択された少なくとも1つ以上のテキストデータを表示装置に表示する。複数のテキストデータを表示させる場合、テキストデータにおける材料長さが基準長さとなるように材料長さと基準長さとの比率に基づきデータ取得間隔を補正し、同一の尺度とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延工程を含む複数の工程を経て材料から金属製品を製造する製造プロセスにおいて、取得された複数の製造実績データを表示するデータ表示処理方法であって、
前記製造プロセスの各工程に設置された複数の計測機器により、材料長さ方向の複数の材料長さ位置での計測値を所定のデータ取得間隔で取得するデータ取得工程と、
前記各計測機器により取得された計測値を、それぞれ、前記材料毎に、前記金属製品を特定するための製品特定情報及び当該計測値が取得された材料長さ位置と関連付けて、テキストデータとして製造実績データ記憶部に記録するデータ記録工程と、
前記製品特定情報に基づいて前記製造実績データ記憶部から同一の金属製品についてのテキストデータを特定し、前記特定されたテキストデータから表示対象として選択された少なくとも1つ以上のテキストデータを表示装置に表示する表示工程と、
を含み、
前記表示工程において複数のテキストデータを表示させる場合、
前記テキストデータにおける前記材料長さが、任意に設定される基準長さとなるように、前記材料長さと前記基準長さとの比率に基づき前記データ取得間隔を補正し、前記選択された複数のテキストデータを同一の尺度で前記表示装置に表示させる、データ表示処理方法。
【請求項2】
前記基準長さは、表示対象の前記テキストデータから基準データとして任意に選択される1つのテキストデータの材料長さとする、請求項1に記載のデータ表示処理方法。
【請求項3】
前記基準データは、表示対象の前記テキストデータのうち、前記材料長さが最も短いテキストデータ、前記材料長さが最も長いテキストデータ、または、前記材料長さが中央値であるテキストデータのいずれかである、請求項2に記載のデータ表示処理方法。
【請求項4】
前記テキストデータはcsvファイルとして前記製造実績データ記憶部に記録される、請求項1~3のいずれか1項に記載のデータ表示処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延工程を含む複数の工程を経て材料から金属製品を製造する製造プロセスにおいて、取得された複数の製造実績データを表示するデータ表示処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製品の一例である鉄鋼製品は、連続鋳造工程において溶鋼を鋳型によって凝固させ鋳片とした後、当該鋳片を切断して長さ数mの複数鋼片とし、さらに複数工程にて当該鋼片を数百mから数kmの長さに圧延して製造される。例えば熱延鋼帯、冷延鋼帯、形鋼、棒鋼、線材等の最終製品は、圧延後、熱処理等の二次加工を経て、最終ユーザの下で車の車体やエンジン部品等に利用される。
【0003】
これらの最終製品は、厳格な品質管理が必要であり、数kmの製品であっても数mm以下の疵や品質異常を検出し管理する必要がある。このため、圧延工程後の製品(中間製品または最終製品)において品質を満足しない部分が発見されると、不合部分を切り捨て、残部を合格品とする場合もあるが、当該製品全体が不合品とされる場合もある。こうした品質を満足しない部分の発生の抑制のために、各製造工程における、製造品質実績として取得された種々のデータを関連付けて解析し、品質を満足しない部分がある場合にはその原因を特定することで、操業や品質にフィードバックしていくことが重要である。
【0004】
しかしながら、鉄鋼製品を製造する製鉄プロセスには、各工程に多くの計測機器が設置されている。このため、品質異常の原因究明のために必要なデータが、計測機器毎に紙やデータとして管理されている場合が多い。このため、これらを各工程にまたがって突き合わせ原因を究明する場合には、多くの人手や時間を要し、操業へのフィードバックまでに時間を要する、すべての品質異常の原因究明ができない、といった課題がある。
【0005】
さらに、各工程では、設備や計測機器の新設あるいは更新が頻繁に行われ、計測機器により計測されるデータの管理メッシュ(すなわち、データ取得間隔)が頻繁に変更される。例えばデータ取得間隔が1m単位から5mm単位に変更されることにより、取得されたデータが格納されるデータベースの管理メッシュのサイズが変更される。
【0006】
ここで、従来のデータ管理方法では、リレーショナルデータベース(RDB)のような表形式でデータが管理されることが多く、また、省リソース化やデータの関連付けを容易にするために同一テーブルにて複数の計測機器のデータがまとめて管理されている。このような従来のデータ管理方法では、設備や計測機器の新設あるいは更新の度にテーブルを更新する必要があり、変更のない計測機器により計測されたデータの管理メッシュも便宜上、変更されることとなる。この場合、変更のない計測機器により計測されたデータの管理メッシュにはブランクが生成され、データ容量を無駄に使用することになる。
【0007】
さらに、変更のない計測機器により計測されたデータも、新設あるいは更新された計測機器により計測されたデータと同一テーブルに格納される。このため、データベースへのデータ格納処理ロジックや格納されたデータを利用するシステムの処理ロジックについても変更が必要となる。結果として、新設あるいは更新された計測機器により計測されたデータを利用可能とするためには作業が発生し、時間及びコストも要するため、メンテナンス性の観点からは課題がある。
【0008】
例えば特許文献1には、出鋼から製品完成に至る各工程の操業実績をもとに工程コード毎の現品管理データベースを作成すると共に、各工程に応じて設定したキーのファイルを作成し、当該ファイルのキー及び現品管理データベースに基づいて所要期間における全ての現品の発生から消滅までの現品一貫履歴を作成し、現品一貫履歴に基づいて作成した現品一貫データベースに基づいて各工程及び工程間における製造障害原因調査用のリストを作成する、鉄鋼製品の現品一貫履歴データベースの作成方法が開示されている。特許文献1に記載の方法に従えば、不合品と適正品質の製品(半製品あるいは最終製品)との操業実績を比較したリストが自動作成され、当該リストによって不合原因の特定が容易となり、不合品の発生割合を低減させることができる。
【0009】
また、特許文献2には、続鋳造工程から圧延工程などを経て薄鋼板を製造する薄鋼板製造一貫工程において、一貫工程における工程毎に、当該工程で製造する製品あるいは半製品としての製造物に関する品質関連情報を各工程の製造物の対応する位置毎に記憶蓄積し、かつ、各工程の製造物の位置を他工程の製造物において互いに対応する位置とを紐付けた紐付け情報も併せて記憶蓄積することにより、当該製造物の任意の位置について当該工程の情報及び他工程の情報も随時出力する、一貫品質管理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5-298327号公報
【特許文献2】特開2000-107992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1には、各工程のデータ(操業実績)の内容の詳細は記載されていないが、
図3を参照すると、半製品等の製品1個単位で管理しており、当該文献における操業実績とは、製品1個単位の操業条件の代表値(例えば圧延時温度の平均値)と考えられる。しかし、代表値の比較だけでは特定できない不合原因も存在する。
【0012】
また、上記特許文献2においては、代表値ではなく、チャートデータを取り込んで詳細メッシュのデータも扱っている。しかし、上記特許文献2には、詳細メッシュのデータ保管方法については記載がない。特許文献2に記載の方法によれば、計測機器が新設あるいは変更された場合、過去の製造実績と現在の製造実績との対比ができないため、データベースの改造が必要となり、長時間の改造時間が必要となる。また、計測機器の新設や変更の前後でデータ取得間隔が異なるため、データ取得間隔が疎であるときにはデータの余分な保管スペースが著しく増加する。
【0013】
さらに、上記特許文献1、2のいずれも、各工程のデータはそれぞれ表示されているのみであり、表示されている各工程のデータの関連性を視覚的に把握することは難しい。
【0014】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、計測機器が新設あるいは変更があった場合のメンテナンス負荷を低減し、かつ、ユーザが提示される複数のデータの関連性を容易に把握することが可能な、データ表示処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、圧延工程を含む複数の工程を経て材料から金属製品を製造する製造プロセスにおいて、取得された複数の製造実績データを表示するデータ表示処理方法であって、製造プロセスの各工程に設置された複数の計測機器により、材料長さ方向の複数の材料長さ位置での計測値を所定のデータ取得間隔で取得するデータ取得工程と、各計測機器により取得された計測値を、それぞれ、材料毎に、金属製品を特定するための製品特定情報及び当該計測値が取得された材料長さ位置と関連付けて、テキストデータとして製造実績データ記憶部に記録するデータ記録工程と、製品特定情報に基づいて製造実績データ記憶部から同一の金属製品についてのテキストデータを特定し、特定されたテキストデータから表示対象として選択された少なくとも1つ以上のテキストデータを表示装置に表示する表示工程と、を含み、表示工程において複数のテキストデータを表示させる場合、テキストデータにおける材料長さが、任意に設定される基準長さとなるように、材料長さと基準長さとの比率に基づきデータ取得間隔を補正し、選択された複数のテキストデータを同一の尺度で表示装置に表示させる、データ表示処理方法が提供される。
【0016】
基準長さは、表示対象のテキストデータから基準データとして任意に選択される1つのテキストデータの材料長さとしてもよい。
【0017】
基準データは、表示対象のテキストデータのうち、材料長さが最も短いテキストデータ、材料長さが最も長いテキストデータ、または、材料長さが中央値であるテキストデータのいずれかであってもよい。
【0018】
テキストデータはcsvファイルとして製造実績データ記憶部に記録してもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、計測機器が新設あるいは変更があった場合のメンテナンス負荷を低減し、かつ、ユーザが提示される複数のデータの関連性を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るデータ表示処理方法が適用される製造プロセスの一例であって、線材製造プロセスを示す説明図である。
【
図2】同実施形態に係るデータ処理システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図3】同実施形態に係るデータ表示処理方法を示すフローチャートである。
【
図4】同実施形態に係るデータ表示処理方法のデータ記録工程の概要を示す説明図である。
【
図5】同実施形態に係るデータ表示処理方法の表示工程の概要を示す説明図である。
【
図6】実施例において、従来技術のデータの保管形式を示す説明図である。
【
図7】実施例において、本発明のデータの保管形式を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
[1.概要]
まず、
図1に基づいて、本発明の一実施形態に係るデータ表示処理方法が適用される製造プロセスの一例と、本実施形態に係るデータ表示処理方法の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係るデータ表示処理方法が適用される製造プロセスの一例であって、線材製造プロセスを示す説明図である。
【0023】
図1は、線材製造プロセスは、圧延工程を含む複数の工程を経て材料から金属製品を製造する製造プロセスの一例である。線材製造プロセスは、
図1に示すように、連続鋳造工程と、分塊圧延工程と、ビレット検査/精整工程と、線材圧延工程と、二次加工工程と、製品検査/精整工程とからなり、金属製品として線材を製造する。
【0024】
まず、連続鋳造工程において溶鋼を鋳型によって凝固させ鋳片とした後、当該鋳片を切断する。切断した鋳片は、分塊圧延工程にて圧延してビレットとした後、ビレット検査/精整工程にて表面疵探傷や内質欠陥探傷等の非破壊検査が実施され、必要に応じて精整される。その後、線材圧延工程にてビレットから線材とされた後、二次加工工程にて線材の熱処理、伸線処理等が行われ、製品検査/精整工程にて線材の全長検査、精整が行われた後、製品として出荷される。
【0025】
線材製造プロセスの各工程では、設備に設置された計測機器の計測値が、複数の製造実績データが取得される。例えば、
図1に示すように、分塊圧延工程には、圧延の圧下率を計測する計測機器A、及び、分塊圧延後のビレット5の温度を計測する計測機器Bが設置されている。また、ビレット検査/精整工程には、分塊圧延後のビレットの非破壊検査を実施する計測機器Cが設置されている。さらに、
図1には図示されていないが、二次加工工程には、伸線処理時の冷却水量を計測する計測機器等が設置されており、連続鋳造工程には約150個の計測機器が設置されている。このように、線材製造プロセスには、多くの計測機器が設置されている。
【0026】
なお、各計測機器により計測される製造実績データとしては、温度、圧下率、圧下量、注水量(冷却水量)、塗油量、表面疵チェック用の外観写真、超音波探傷疵検査結果、渦流探傷疵検査結果、等がある。
【0027】
各計測機器は、所定のデータ取得間隔でデータを取得し、データベースへ出力する。ここで、従来は、当該データは、リレーショナルデータベース(RDB)のような表形式で管理されること多く、また、省リソース化やデータの関連付けを容易にするために同一テーブルに複数の計測機器のデータがまとめられていた。しかし、上述のように、設備や計測機器の新設あるいは更新の度にテーブルを更新する必要があり、変更のない計測機器により計測されたデータの管理メッシュも便宜上、変更されることとなる。この場合、変更のない計測機器により計測されたデータの管理メッシュにはブランクが生成され、データ容量を無駄に使用することになる。
【0028】
そこで、本実施形態では、各計測機器により計測された製造実績データを、製品ごとにテキストデータとしてデータベースに記録する。テキストデータは、複数の計測値を区切り文字により区切って記録されたデータであって、例えば所定の計測間隔で計測された計測値がカンマによって区切られているcsvファイル等がある。かかるテキストデータには、金属製品に付与された固有の製品番号等の金属製品を特定するための製品特定情報、及び、当該計測値が取得された材料長さ位置を関連付ける。
【0029】
このように、各工程での製造実績データを、製品単位かつ計測機器単位で、計測値を取得した材料長さ位置とあわせてテキストデータとして記録する。これにより、設備や計測機器の新設あるいは更新があった場合にも、変更のない計測機器により計測されたデータのテキストデータへの影響はないため、メンテナンス負荷を低減することができ、データベース容量の増加も抑制することができる。また、このようなテキストデータによる計測値の管理によって、異なる工程における複数の計測値の表示処理も容易となり、複数の計測値の関連性をユーザが容易に把握できるように提示することが可能となる。以下、本実施形態に係るデータ表示処理方法について、詳細に説明する。
【0030】
[2.データ処理システム]
図2に基づいて、本実施形態に係るデータ表示処理方法が適用されるデータ処理システム1の一例を説明する。
図2は、本実施形態に係るデータ処理システム1の一構成例を示すブロック図である。
【0031】
本実施形態に係るデータ処理システム1は、
図1に示すように、計測機器群10と、プロセスコントローラ20と、製造実績データ記憶部30と、製品管理記憶部40と、入力装置50と、表示処理装置60と、出力装置70とを有する。
【0032】
計測機器群10は、製造プロセスにおける複数の工程に設置された複数の計測機器からなり、各工程において製造実績データを取得する。計測機器群10は、例えば
図2に示すように、計測機器A、計測機器B、計測機器C、・・といったように複数の計測機器からなる。計測機器群10の計測機器は同一の機器であってもよく、異なる機器であってもよい。計測機器により計測される製造実績データとしては、上述のように、例えば、温度、圧下率、圧下量、注水量(冷却水量)、塗油量、表面疵チェック用の外観写真、超音波探傷疵検査結果、渦流探傷疵検査結果、等がある。計測機器群10の各計測機器は、計測したデータをプロセスコントローラ20へ出力する。
【0033】
なお、上記の設置された計測機器とは、恒久的に設置した計測機器の他、持ち運び可能な製品外観撮像装置(例えば、カメラ、撮像機能を備えたスマートフォンやタブレット端末等)のような一時的に設置した計測機器も含む。
【0034】
プロセスコントローラ20は、計測機器群10により計測された計測値を製造実績データ記憶部30に記録する。プロセスコントローラ20は、計測機器群10から入力された計測値を、計測機器毎に、製品単位で、計測値を取得した材料長さ位置とあわせてテキストデータとして製造実績データ記憶部30に記録する。なお、プロセスコントローラ20によるテキストデータの記録処理についての詳細は後述する。
【0035】
製造実績データ記憶部30は、計測機器により計測された計測値を記憶するデータベースである。製造実績データ記憶部30は、計測機器群10により計測された計測値を、計測機器毎に、製品単位で、計測値を取得した材料長さ位置とあわせてテキストデータとして記憶する。製造実績データ記憶部30に記憶されたテキストデータは、後述する表示処理装置60により、ユーザからの表示要求に応じて取得される。なお、製造実績データ記憶部30の詳細な構成については後述する。
【0036】
製品管理記憶部40は、製造プロセスにて製造される金属製品の製造条件を記憶するデータベースである。製品管理記憶部40は、少なくとも、金属製品に固有の製品番号と、当該金属製品に対応する各工程の材料に固有の材料番号と、を含む。さらに、製品管理記憶部40は、各工程での材料長さや、各工程で実施された検査結果等を記憶してもよい。なお、各工程での材料長さ及び各工程で実施された検査結果は、製品管理記憶部40に記憶されない場合には、製造実績データ記憶部30に記憶させてもよい。製品管理記憶部40が記憶するデータは、例えば後述する表示処理装置60により参照される。
【0037】
入力装置50は、ユーザが情報を入力するための装置であって、例えばマウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチ及びレバー等の、ユーザが情報を入力するために操作する装置である。入力装置50から入力された情報は、表示処理装置60へ出力される。例えば、ユーザは、入力装置50を用いて、出力装置70に表示させたい製造実績データを指定し、入力装置50は、入力されたデータ指定情報を表示処理装置60へ出力する。
【0038】
表示処理装置60は、計測機器群10により取得された製造実績データの少なくとも一部を、所定の表示形式となるように処理し、出力装置70へ出力する。表示処理装置60は、データ取得処理部61と、表示処理部63とを有する。データ取得処理部61は、入力装置50から入力されたデータ指定情報に基づいて、製品管理記憶部40を参照し、製造実績データ記憶部30から指定された製造実績データのテキストデータを取得する。表示処理部63は、データ取得処理部61により取得されたテキストデータについて、所定の表示形式となるように表示処理する。表示処理部63により表示処理されたテキストデータの情報は、出力装置70へ出力される。
【0039】
出力装置70は、表示処理部63により表示処理されたテキストデータの情報をユーザに視覚的に通知する装置である。出力装置70は、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置等の表示装置であってもよく、プリンターや移動通信端末等であってもよい。
【0040】
以上、本実施形態に係るデータ処理システム1の一構成例について説明した。
【0041】
なお、データ処理システム1のプロセスコントローラ20は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の各種のプロセッサによって構成され、プロセスコントローラ20の機能は、当該プロセッサが所定のプログラムにしたがって動作されることにより実現され得る。表示処理装置60も、例えばCPUやDSP等の各種のプロセッサによって構成され、その機能は、当該プロセッサが所定のプログラムにしたがって動作されることにより実現され得る。なお、プロセスコントローラ20及び表示処理装置60は、上述のように各種のプロセッサであってもよいし、プロセッサとメモリ等の記憶装置とが一体的に構成されたいわゆるマイコンであってもよい。あるいは、プロセスコントローラ20及び表示処理装置600は、PC(Personal Computer)やサーバ等の各種の情報処理装置であってもよい。
【0042】
また、製造実績データ記憶部30及び製品管理記憶部40は、RAM(Random Access Memory)等のメモリであってもよく、データ格納用のストレージ装置であってもよい。RAM等のメモリは、例えば表示処理装置60に内蔵されてもよい。ストレージ装置は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイスまたは光磁気記憶デバイス等により構成可能である。
【0043】
[3.データ表示処理方法]
次に、
図3~
図5に基づいて、本実施形態に係るデータ表示処理方法について説明する。
図3は、本実施形態に係るデータ表示処理方法を示すフローチャートである。
図4は、本実施形態に係るデータ表示処理方法のデータ記録工程の概要を示す説明図である。
図5は、本実施形態に係るデータ表示処理方法の表示工程の概要を示す説明図である。
【0044】
(S100:データ取得工程)
本実施形態に係るデータ表示処理方法では、
図3に示すように、まず、金属製品の製造プロセスに設置された計測機器群10により計測値が随時取得される(S100)。計測機器群10による計測は、金属製品となる材料に対する処理が各工程で行われる毎に、随時行われる。このとき、計測機器群10は、1つの材料について、所定のデータ取得間隔で、すなわち材料長さ方向における複数の材料長さ位置で、複数の計測を行ってもよい。この場合、計測機器群10は、計測を行った材料長さ位置とともに取得した計測値をプロセスコントローラ20へ出力する。
【0045】
(S110:データ記録工程)
プロセスコントローラ20は、計測機器群10から入力された各計測値を、製造実績データとして製造実績データ記憶部30に記録する(S110)。プロセスコントローラ20は、計測機器群10から入力された計測値を、計測機器毎に、製品単位で、計測値を取得した材料長さ位置と関連付けてテキストデータとして製造実績データ記憶部30に記録する。
【0046】
データ記録工程の具体例を
図4に示す。
図4では、
図1に示した線材製造プロセスの分塊圧延工程において、設置されている2つの計測機器A、Bの計測値X、Yを製造実績データ記憶部30に記録する場合を想定する。
図4に示すように、計測機器A、Bは、それぞれ、所定のデータ取得間隔で、計測を行う。これにより、各材料長さ位置における計測値X、Yが得られる。プロセスコントローラ20は、取得された計測値X、Yを、計測機器毎に、製品単位で、テキストデータを生成する。このとき製品は、金属製品を特定するための製品特定情報により表される。製品特定情報としては、例えば、金属製品に固有の製品番号がある。
【0047】
プロセスコントローラ20は、例えば、テキストデータのファイル名を製品番号及び計測機器名により表し、当該ファイルには、この製品番号の製品となる材料の材料長さ位置及び取得された計測値を、テキストデータとして記録する。例えば
図4において、製品番号1の材料の処理時に計測機器Aによって取得された計測値Xは、ファイル名「製品番号1_計測機器A.csv」のファイルに、材料長さ位置(1~○○)と関連付けて記録される。このように、計測機器毎に、製品単位で生成されたテキストデータは、製造実績データ記憶部30に記録される。
【0048】
なお、計測機器及び製品番号と、各材料長さ位置での計測値とを関連付ける方法は、
図4に示したようにファイル名に計測機器及び製品番号を付与する以外の方法であってもよい。例えば、計測機器及び製品番号を当該テキストデータ内に記載してもよく、計測機器及び製品番号をメタファイルに記録してもよい。
【0049】
また、テキストデータに関連付けられる製品特定情報は、上述のように金属製品に固有の製品番号であってもよく、当該金属製品に対応する各工程の材料に固有の材料番号であってもよい。
【0050】
このようにデータを記録することで、従来のリレーショナルデータベース(RDB)のような表形式でデータを管理する場合に比べ、設備や計測機器の新設あるいは更新があった場合にも、変更のない計測機器により計測されたデータのテキストデータへの影響はないため、メンテナンス負荷を低減することができ、データベース容量の増加も抑制することができる。
【0051】
(S120~S180:表示工程)
次いで、表示処理装置60により、製造実績データ記憶部30に記録された製造実績データの表示処理が行われる(S120~S180)。
【0052】
まず、表示処理装置60のデータ取得処理部61は、入力装置50を用いてユーザから指定された金属製品を特定するための製品特定情報、例えば製品番号に基づき、当該製品番号に対応する製造実績データを、製造実績データ記憶部30から検索する(S120)。製造実績データ記憶部30に記録されているテキストデータには、金属製品の製造番号が関連付けられている。データ取得処理部61は、指定された製造番号が関連付けられた計測値名を、製造実績データ記憶部30から取得する。また、製造番号ではなく材料番号がテキストデータに関連付けられている場合もある。この場合、データ取得処理部61は、まず製品管理記憶部40を参照して指定された製造番号に対応する材料番号を取得し、取得した材料番号が関連付けられたテキストデータの計測値名を製造実績データ記憶部30から取得すればよい。なお、計測値名は、製造実績データの内容、例えば温度、圧下率、圧下量、注水量(冷却水量)、塗油量、表面疵チェック用の外観写真、超音波探傷疵検査結果、渦流探傷疵検査結果、等である。また、計測値名の代わりに計測機器名を取得してもよい。
【0053】
データ取得処理部61は、表示処理部63に対して、取得した製造実績データ名を検索結果として出力装置70に出力させる(S130)。これにより、出力装置70には、ユーザが指定した製品番号の金属製品の製造プロセスにおいて取得された計測値名が表示される。
【0054】
ユーザは、出力装置70に表示された計測値名から、一覧表示させたい計測値を選択する(S140)。ユーザは、入力装置50を用いて一覧表示させたい計測値を選択する。入力装置50は、ユーザにより選択された計測値名をデータ取得処理部61へ出力する。データ取得処理部61は、入力された計測値名の操業実績データが記録されたテキストデータを、製造実績データ記憶部30から取得し(S150)、表示処理部63へ出力する。
【0055】
表示処理部63は、選択された計測値を出力装置70に出力させる。選択された計測値が1つの場合には、各材料長さ位置における当該計測値を示すグラフをそのまま表示させればよい。一方、選択された計測値が複数の場合には、異なる工程で取得された計測値であれば、各工程での材料長さが異なる。このため、各材料長さ位置における計測値を示すグラフをそれぞれそのまま表示しても、表示の尺度が異なり、これらの計測値の関係を直感的に把握するのは難しい。そこで、表示処理部63は、選択された計測値の表示の尺度が同一となるように表示処理を行う。
【0056】
まず、表示処理部63は、任意に選択される1つのテキストデータを基準データとし、基準データにおける材料長さを基準長さとする(S160)。基準データは、例えば、選択されたテキストデータのうち、材料長さが最も短いテキストデータ、材料長さが最も長いテキストデータ、または、材料長さが中央値であるテキストデータのいずれかとしてもよい。あるいは、基準テータは設定せず、任意の基準長さを設定してもよい。例えば、製造プロセスにおいて着目したい工程での材料長さを基準長さとしてもよい。基準データの決定方法は、予め設定されていてもよく、ユーザが計測値を選択した際に合わせて設定してもよい。
【0057】
そして、表示処理部63は、基準データ以外のテキストデータにおける材料長さが基準長さとなるように、材料長さと基準長さとの比率に基づき、データ取得間隔を補正し、すべての計測値の表示の尺度を同一にする(S170)。そして、表示処理部63は、同一の尺度に補正された各材料長さ位置における計測値のグラフを、出力装置70に一覧表示させる(S180)。
【0058】
表示工程の具体例を
図5に示す。
図5では、
図1に示した線材製造プロセスの連続鋳造工程、分塊圧延工程及び製品検査/精整工程にて取得された計測値を、一覧表示させる場合を想定する。
図5に示すように、連続鋳造工程、分塊圧延工程及び製品検査/精整工程の各工程における材料5の材料長さは、それぞれ異なり、後工程となるにつれて長くなる。例えば、連続鋳造工程の材料長さが5m、分塊圧延工程の材料長さが10m、製品検査/精整工程の材料長さが1000mであったとする。材料長さが中央値である分塊圧延工程に設置された計測機器Bの計測値を基準データとすると、表示処理部63は、連続鋳造工程の材料長さを2倍にし、製品検査/精整工程の材料長さを1/1000倍にして、各計測値をグラフで表す。これにより、3つの計測値を同一の尺度で表すことができる。
【0059】
同一の尺度で表された3つの計測値のグラフは、例えば重ね合わせて表示させることで、材料の同一位置における異なる工程での計測値を容易に把握することができる。あるいは、同一の尺度で表された3つの計測値のグラフを並列表示させてもよい。このような重ね合わせ表示や並列表示によって、ある工程で生じた値の変化が、前後の工程にどのように影響しているのかを把握することも容易となる。
【0060】
このような表示処理を、上述のように計測値をテキストデータにより管理し、表示させる都度データベースからテキストデータを取得して行うことで、異なる工程における複数の計測値の表示処理も容易となり、複数の計測値の関連性をユーザが容易に把握できるように提示することが可能となる。
【0061】
以上、本実施形態に係るデータ表示処理方法について説明した。
【実施例0062】
データ表示処理方法について、特許文献2に記載の従来方法と本発明の方法とについて、以下の効果検証を行った。
【0063】
製造プロセスに設置された複数の計測機器のうち1つの計測機器を更新したときに、計測機器の計測値が記憶されるデータベースの保管容量の増加の程度を検証した。本検証では、3つの計測機器A~Cについて、各材料長さ位置の計測値をデータベースに記録した。検証におけるデータ保管期間は2日とし、1日当たりに製造される製品数は1300個とした。計測機器A~Cは、1つの材料について10000点の材料長さ位置で計測を行った。計測値1点のサイズは8バイトとした。データ保管期間1日目(製品番号1~1300)は計測機器A~Cに変更はなく、データ保管期間2日目(製品番号1301~2600)に計測機器Aを更新し、更新前の2倍の測定点数で計測するようにした。なお、計測機器B、Cは、データ保管期間2日目も1日目と同様とした。
【0064】
(1)計測機器が更新された場合のデータ保管容量
従来方法では、計測機器の計測値をデータベースに記録する際、他工程のデータと関連付けて記録する方法であり、表形式でデータを管理した。このとき、省リソース化やデータの関連付けを容易にするために同一テーブルにて計測機器A~Cの計測値をまとめて管理した。従来技術のデータの保管形式は、
図6上側に示す通りとなる。すなわち、従来方法のデータベースでは、計測機器A~Cのデータ取得間隔(材料長さ位置のピッチ)を統一して計測値を管理している。
【0065】
従来技術の方法では、計測設備Aの測定点数を2倍とした場合、同一テーブル内で管理されている計測機器B、Cのデータも形式上、計測機器Aと同一ピッチにて管理せねばならない。このため、
図6下側に示すように、計測機器Aについては更新後もすべての材料長さ位置で計測値がデータベースに記録されるが、計測機器B、Cについては、計測機器Aのみが計測する材料長さ位置では計測値が存在せず、当該メッシュには「null」が入力される。このように、計測機器Aの更新により、更新のない計測機器B、Cについてもデータベースの保管容量が必要となる。また、計測機器Aの更新前のデータについても同一テーブルで管理するため、更新前のデータについては、計測機器A~Cすべてについて計測機器Aの更新に伴い、「null」を入力するデータベースの保管容量が必要となる。
【0066】
一方、本発明の方法では、テキストデータとしてcsvファイルにて製品番号及び計測機器単位に計測値を管理した。
図7に、本発明の方法における計測値のデータ保管状態を示す。
図7に示すように、計測機器A~Cの計測値は、それぞれ、別ファイルとして、製品毎に計測機器単位で記録した。製品及び計測機器は、ファイル名として計測値と関連付けた。計測機器Aの更新前は、計測機器A~Cともに、材料長さ位置の1~10000での計測値がテキストデータとして各csvファイルに記録されている。なお、
図7では説明を分かりやすくするため、各材料長さ位置での計測値を表形式で示している。
【0067】
計測機器Aが更新されると、更新された計測機器Aのテキストデータのみ、記録される材料長さ位置での計測値が2倍に増加する。更新のない計測機器B、Cについては、計測機器Aの更新前と同様であり、データ保管容量は変化しない。このように、本発明の方法では、計測機器Aを更新した場合、対象の計測機器のみのファイルを更新するのみでよい。
【0068】
表1に、上記条件下での従来方法と本発明の方法とのデータ保管容量の比較結果を示す。
【0069】
【0070】
上記表1より、本発明の方法によれば、従来方法に比べて約30%程度のデータ保管容量を削減できる。
【0071】
(2)計測機器が更新された場合の更新作業負荷
次に、計測機器が更新された場合の更新作業負荷について検討する。ここでは、計測機器群の計測値をデータベースに記録し、データベースに記録されたデータのうち表示対象データを読み取り、例えば
図5に示したように一覧表示するまでの工程において、計測機器Aが更新された場合に生じる更新作業負荷を見積もった。
【0072】
まず、従来方法では、計測機器群の計測値を表形式のデータベースに記録し、当該データベースから表示対象データを読み取り、一覧表示を行う処理が行われる。従来方法において、計測機器Aの更新に伴い生じる更新作業は、表形式のデータベースの更新と、一覧表示時の表示対象データ取得ロジックの更新となる。すなわち、
図6に示したように、計測機器Aの更新に伴い、テーブルのメッシュ数を2倍にする必要があり、テーブルへの計測値の書き込み位置も変更となることからデータ書き込みロジックの変更も必要となる。また、テーブルの変更に伴い、一覧表示の表示対象データを取得する際にnull値を読み込まないようにするよう表示対象データ取得ロジックを更新する必要がある。これらの更新作業には、おおよそ1~3か月程度の工期を要すると想定される。
【0073】
一方、本発明の方法では、計測機器群の計測値はcsvファイルにそのまま記録されるため、csvファイルを記憶するデータベースの更新は不要である。また、表示対象データの一覧は、選択された表示対象データを都度データベースから取得し、作成して表示するため、表示対象取得ロジックの更新も不要である。したがって、更新作業負荷は生じない。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0075】
例えば、上記実施形態では、計測機器の計測値は、プロセスコントローラを介してデータベースである製造実績データ記憶部に記録したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、計測機器が計測値をテキストデータとして出力可能な場合には、プロセスコントローラを介さず、直接データベースに計測値をテキストデータとして記録してもよい。