(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149932
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20220929BHJP
B60N 2/16 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052286
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】馬場 広
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087DB03
3B087DB04
(57)【要約】
【課題】乗物用シートの重量が大きくなるのを抑制することを目的とする。
【解決手段】乗物用シート(車両用シートS)は、シートクッションS1の左右に配置される左右のクッションサイドフレーム10と、左右のクッションサイドフレーム10を連結する連結パイプ(フロントパイプ20)と、クッションサイドフレーム10に回動可能に連結されるリンク(フロントリンク61)と、を備える。連結パイプは、左右方向に延びる第1部位21と、第1部位21よりも上に配置され、クッションサイドフレーム10に固定される第2部位22と、第1部位21から上に屈曲して、第2部位22に接続される第3部位23と、を有する。第2部位22は、リンクの上に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションの左右に配置される左右のクッションサイドフレームと、
左右のクッションサイドフレームを連結する連結パイプと、
前記クッションサイドフレームに回動可能に連結されるリンクと、を備え、
前記連結パイプは、
左右方向に延びる第1部位と、
前記第1部位よりも上に配置され、前記クッションサイドフレームに固定される第2部位と、
前記第1部位から上に屈曲して、前記第2部位に接続される第3部位と、を有し、
前記第2部位は、前記リンクの上に配置されていることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記リンクは、ストレート形状であることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記第2部位は、左右方向に延びることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記リンクの前記クッションサイドフレームに対する回動軸は、上下方向において、前記連結パイプの前記クッションサイドフレームとの接合部分の範囲内に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記クッションサイドフレームは、
前記連結パイプが接合されるパイプ接合部と、
前記リンクが連結されるリンク連結部と、を有し、
上下方向において、前記パイプ接合部の幅は、前記リンク連結部の幅よりも小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記第1部位の少なくとも一部は、左右方向から見て、前記クッションサイドフレームと重ならないことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物用シートとして、シートクッションの左右に配置される左右のクッションサイドフレームと、左右のクッションサイドフレームを連結する連結パイプと、クッションサイドフレームに回動可能に連結されるリンクと、を備えるものが知られている(特許文献1参照)。この技術では、連結パイプがストレート形状であり、リンクが連結パイプを避けるように円弧状に屈曲した形状となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、リンクの形状を、連結パイプを避けるように大きく屈曲させているので、リンクの重量が大きくなり、ひいては乗物用シートの重量が大きくなるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、乗物用シートの重量が大きくなるのを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る乗物用シートは、シートクッションの左右に配置される左右のクッションサイドフレームと、左右のクッションサイドフレームを連結する連結パイプと、前記クッションサイドフレームに回動可能に連結されるリンクと、を備える。
前記連結パイプは、左右方向に延びる第1部位と、前記第1部位よりも上に配置され、前記クッションサイドフレームに固定される第2部位と、前記第1部位から上に屈曲して、前記第2部位に接続される第3部位と、を有する。
前記第2部位は、前記リンクの上に配置されている。
【0007】
この構成によれば、連結パイプがリンクを避けるように屈曲するので、従来のようにリンクを大きく屈曲させる必要がなく、リンクの重量を小さくすることができ、ひいては乗物用シートの重量が大きくなるのを抑制することができる。
【0008】
また、前記リンクは、ストレート形状であってもよい。
【0009】
この構成によれば、リンクの重量をより小さくすることができるので、乗物用シートの重量が大きくなるのをより抑制することができる。
【0010】
また、前記第2部位は、左右方向に延びていてもよい。
【0011】
この構成によれば、例えば第2部位が左右方向に対して斜めに延びる場合と比べ、リンクの位置が取付誤差により正規の位置から左右方向にずれても、リンクと第2部位との上下方向の隙間を所望の大きさに保つことができる。
【0012】
また、前記リンクの前記クッションサイドフレームに対する回動軸は、上下方向において、前記連結パイプの前記クッションサイドフレームとの接合部分の範囲内に配置されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、リンクの回動軸と連結パイプの接合部分が上下方向で略同じ位置に配置されるので、例えば、クッションサイドフレームの上下幅を小さくすることができる。
【0014】
また、前記クッションサイドフレームは、前記連結パイプが接合されるパイプ接合部と、前記リンクが連結されるリンク連結部と、を有し、上下方向において、前記パイプ接合部の幅は、前記リンク連結部の幅よりも小さくてもよい。
【0015】
この構成によれば、クッションサイドフレームの重量を小さくすることができるので、乗物用シートの重量が大きくなるのをより抑制することができる。
【0016】
また、前記第1部位の少なくとも一部が、左右方向から見て、前記クッションサイドフレームと重ならないように、前記クッションサイドフレームが構成されていてもよい。
【0017】
この構成によれば、例えば第1部位のすべてが左右方向から見てクッションサイドフレームに重なるようにクッションサイドフレームが構成される構造と比べ、クッションサイドフレームを上下方向に小型化することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、乗物用シートの重量が大きくなるのを抑制することができる。
【0019】
また、リンクをストレート形状とすることで、乗物用シートの重量が大きくなるのをより抑制することができる。
【0020】
また、第2部位を左右方向に延びるように構成することで、例えば第2部位が左右方向に対して斜めに延びる場合と比べ、リンクの位置が取付誤差により正規の位置から左右方向にずれても、リンクと第2部位との上下方向の隙間を所望の大きさに保つことができる。
【0021】
また、上下方向においてリンクの回動軸を連結パイプの接合部分の範囲内に配置することで、例えば、クッションサイドフレームの上下幅を小さくすることができる。
【0022】
また、上下方向においてクッションサイドフレームのパイプ接合部の幅をクッションサイドフレームのリンク連結部の幅よりも小さくすることで、クッションサイドフレームの重量を小さくすることができるので、乗物用シートの重量が大きくなるのをより抑制することができる。
【0023】
また、第1部位の少なくとも一部が、左右方向から見て、クッションサイドフレームと重ならないようにクッションサイドフレームを構成することで、例えば第1部位のすべてが左右方向から見てクッションサイドフレームに重なるようにクッションサイドフレームが構成される構造と比べ、クッションサイドフレームを上下方向に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシートの斜視図である。
【
図2】クッションフレームおよびバックフレームを示す斜視図である。
【
図3】クッションサイドフレームとハイト機構を左右方向内側から見た図であり、クッションサイドフレームが、最も上に位置する状態を示す図(a)と、最も下に位置する状態を示す図(b)である。
【
図4】フロントパイプの右側の端部周りの構造を示す斜視図である。
【
図5】フロントパイプの右側の端部周りの構造を示す断面図である。
【
図6】ブラケットを、左右方向外側から見た側面図(a)と、左右方向内側から見た側面図(b)である。
【
図7】左側のブラケット周りの構造を左右方向外側から見た側面図である。
【
図8】左側のブラケット周りの構造を示す断面図である。
【
図9】クッションサイドフレームの処理部および非処理部を示す側面図(a)と、
図9(a)のI-I断面図(b)と、処理部の凸部を拡大して示す斜視図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態に係る乗物用シートは、自動車に搭載される車両用シートSとして構成されており、シートクッションS1、シートバックS2およびヘッドレストS3を備えている。
【0026】
シートクッションS1は、クッションフレームF1(
図2参照)に、クッションパッドと表皮材を被せることで構成されている。シートバックS2は、バックフレームF2(
図2参照)に、パッドと表皮材を被せることで構成されている。ヘッドレストS3は、図示せぬヘッドレストフレームに、パッドと表皮材を被せることで構成されている。
【0027】
図2に示すように、クッションフレームF1は、サイドフレームとしてのクッションサイドフレーム10と、パンフレームPFと、連結パイプとしてのフロントパイプ20と、
リアパイプRPと、ブラケット30とを有している。クッションサイドフレーム10、パンフレームPFおよびブラケット30は、板状の部材からなる。フロントパイプ20およびリアパイプRPは、円筒状のパイプ材からなる。
【0028】
クッションサイドフレーム10およびブラケット30は、クッションフレームF1(シートクッションS1)の左右に1つずつ配置されている。クッションサイドフレーム10は、前後方向に延びる。ブラケット30は、クッションサイドフレーム10の後端部に固定されている。
【0029】
パンフレームPFおよびフロントパイプ20は、左右のクッションサイドフレーム10の前端側の部分を連結する。リアパイプRPは、左右のクッションサイドフレーム10の後端部を連結する。リアパイプRPは、ストレート形状であり、左右方向に延びている。
【0030】
バックフレームF2は、バックサイドフレーム41と、上部フレーム42と、下部フレーム43とを有している。バックサイドフレーム41、上部フレーム42および下部フレーム43は、板状の部材からなる。バックサイドフレーム41は、バックフレームF2(シートバックS2)の左右に1つずつ配置されている。バックサイドフレーム41は、上下方向に延びる。
【0031】
上部フレーム42は、左右のバックサイドフレーム41の上端部を連結する。下部フレーム43は、左右のバックサイドフレーム41の下端部を連結する。
【0032】
車両用シートSは、リクライニング機構50と、ハイト機構60とをさらに備えている。リクライニング機構50は、クッションフレームF1に対してバックフレームF2を傾動させる機構である。ハイト機構60は、クッションフレームF1の高さを調整する機構である。リクライニング機構50およびハイト機構60は、クッションフレームF1の左右に1つずつ配置されている。ブラケット30は、リクライニング機構50を介してバックサイドフレーム41を回動可能に支持している。
【0033】
図3(a)に示すように、ハイト機構60は、リンクとしてのフロントリンク61と、フロントリンク61の後ろに離れて配置されるリアリンク62と、を備えている。フロントリンク61およびリアリンク62は、上端部がクッションサイドフレーム10に回動可能に連結され、下端部がアッパーレールURに回動可能に連結されている。なお、アッパーレールURは、車体のフロアに固定された図示せぬロアレールによって前後方向に移動可能に支持されている。
【0034】
フロントリンク61は、クッションサイドフレーム10に対して第1軸X1を中心に回動可能である。詳しくは、フロントリンク61の上端部は、クッションサイドフレーム10に固定されるフランジ付きのピンPNに回動可能に支持されている。フロントリンク61は、アッパーレールURに対して第2軸X2を中心に回動可能である。
【0035】
リアリンク62は、クッションサイドフレーム10に対して第3軸X3を中心に回動可能である。詳しくは、リアリンク62の上端部は、リアパイプRPに回動可能に支持されている。リアリンク62は、アッパーレールURに対して第4軸X4を中心に回動可能である。
【0036】
フロントリンク61は、ストレート形状の板状の部材である。詳しくは、第1軸X1と第2軸X2を結ぶ直線L1が、フロントリンク61の端縁のうち、短手方向で対向する2つの直線状の端縁61Aの間に位置する。2つの端縁61Aは、互いに平行となっている。
【0037】
リアリンク62は、略ストレート形状の板状の部材である。詳しくは、第3軸X3と第4軸X4を結ぶ直線L2が、リアリンク62の端縁のうち、短手方向で対向する2つの直線状の端縁62Aの間に位置する。2つの端縁62Aは、直線L2に対して対称であり、リアリンク62の上端部から下端部に向けて、互いに近づくように直線L2に対して傾斜している。
【0038】
フロントリンク61およびリアリンク62は、
図3(a)に示す上昇位置と、
図3(b)に示す下降位置との間で回動可能となっている。上昇位置は、クッションサイドフレーム10が最も上に位置するときの各リンク61,62の位置である。下降位置は、クッションサイドフレーム10が最も下に位置するときの各リンク61,62の位置である。
【0039】
フロントパイプ20は、第1軸X1の前に配置されている。フロントパイプ20から第1軸X1までの前後方向における距離D3は、フロントリンク61の長さよりも小さい。
【0040】
フロントパイプ20は、フロントリンク61が上昇位置に位置するときに、第2軸X2の上に配置されている。フロントパイプ20は、フロントリンク61が下降位置に位置するときに、前後方向において、第1軸X1と第2軸X2の間に配置されている。フロントパイプ20(詳しくは後述する第1部位21)は、フロントリンク61が下降位置に位置するときに、左右方向から見て、フロントリンク61と重なる。
【0041】
クッションサイドフレーム10は、フロントパイプ20が接合されるパイプ接合部10Aと、フロントリンク61が連結されるリンク連結部10Bとを有する。上下方向において、パイプ接合部10Aの幅W1は、リンク連結部10Bの幅W2よりも小さい。フロントリンク61のクッションサイドフレーム10に対する回動軸である第1軸X1は、上下方向において、フロントパイプ20のクッションサイドフレーム10との接合部分(後述する第2部位22)の範囲W3内に配置されている。
【0042】
フロントパイプ20の一部(詳しくは、後述する第1部位21の一部)は、左右方向から見て、クッションサイドフレーム10と重ならない。言い換えると、クッションサイドフレーム10の下端は、左右方向から見て、フロントパイプ20の第1部位21と重なっている。
【0043】
図4に示すように、フロントパイプ20は、左右方向に延びる第1部位21と、第1部位21よりも上に配置され、クッションサイドフレーム10に溶接等により固定される第2部位22と、第1部位21から上に屈曲して、第2部位22に接続される第3部位23とを有する。第2部位22および第3部位23は、第1部位21の左右にそれぞれ1つずつ設けられている。第2部位22は、フロントリンク61の上に配置されている。
【0044】
図5に示すように、第2部位22は、左右方向に延びている。第3部位23は、第1部位21から上に向けて屈曲する第1屈曲部23Aと、第1屈曲部23Aから左右方向外側かつ上側に向けて斜めの直線状に延びる直線部23Bと、直線部23Bから左右方向外側に向けて屈曲して第2部位22に接続される第2屈曲部23Cとを有する。フロントリンク61は、左右方向において、第2部位22の範囲内に配置されている。
【0045】
図6および
図7に示すように、ブラケット30は、バックサイドフレーム41にリクライニング機構50を介して固定される第1板状部31と、クッションサイドフレーム10に固定される第2板状部32と、第1板状部31と第2板状部32とに接続される脆弱部33と、フランジ34とを有する。
図8に示すように、第1板状部31は、バックサイドフレーム41の左右方向外側に配置されている。第2板状部32は、クッションサイドフレーム10の左右方向内側に配置されている。また、第1板状部31は、第2板状部32よりも左右方向外側に配置されている。
【0046】
リクライニング機構50は、ブラケット30に固定される固定部材51と、固定部材51に回動可能に支持される可動部材52とを備えている。可動部材52は、バックサイドフレーム41の下端部に溶接等により固定されている。
【0047】
図6および
図7に示すように、第1板状部31は、リクライニング機構50の固定部材51を固定するための第1孔31A、第2孔31B、第3孔31Cおよび第4孔31Dを有する。第1孔31Aと第2孔31Bは、前後方向に間隔を空けて配置されている。第3孔31Cと第4孔31Dは、上下方向に間隔を空けて配置されている。第3孔31Cおよび第4孔31Dは、前後方向において、第1孔31Aと第2孔31Bの間に配置されている。第3孔31Cは、第1孔31Aおよび第2孔31Bよりも上に配置されている。第4孔31Dは、第1孔31Aおよび第2孔31Bよりも下に配置されている。
【0048】
固定部材51は、4つのボス51Aを有する。4つのボス51Aは、バックサイドフレーム41のクッションサイドフレーム10に対する回動軸X5を中心とする円周上に間隔を空けて配置されている。1つのボス51Aは、第1孔31Aに入り、1つのボス51Aは、第2孔31Bに入る。残りの2つのボス51Aの一方は、第3孔31Cに入り、他方は、第4孔31Dに入る。各ボス51Aは、各孔31A~31Dに溶接により接合されている。
【0049】
第2板状部32は、クッションサイドフレーム10に固定される第1固定部32Aおよび第2固定部32Bを有する。第1固定部32Aおよび第2固定部32Bには、ボルトBL(
図8参照)が通る孔H1,H2が形成されている。
【0050】
第1固定部32Aおよび第2固定部32Bの左右方向外側の面は、クッションサイドフレーム10の左右方向内側の面に接触する。
図6(b)および
図8に示すように、第1固定部32Aおよび第2固定部32Bの左右方向内側の面には、ボルトBLが締結されるナットNTが固定されている。
【0051】
脆弱部33は、車両衝突時などにおいてブラケット30に衝撃が加わった際に、ブラケット30の変形の起点となる部位である。
図8に示すように、脆弱部33は、第1板状部31の下端から左右方向内側に屈曲した後、下方に屈曲して第2板状部32に接続されている。つまり、脆弱部33は、第1板状部31の左右方向外側の外面31Fから左右方向外側に突出しないように構成されている(
図8参照)。
【0052】
図7に示すように、脆弱部33は、第1固定部32Aから第2固定部32Bまで延びている。詳しくは、脆弱部33は、ブラケット30の前端30Aから後端30Bまで延びている。クッションサイドフレーム10の上端E1の後部は、後斜め上に向けて延びている。ブラケット30の前端30Aは、クッションサイドフレーム10の上端E1の後部の略延長線上に沿って、後斜め上に向けて延びている。
【0053】
クッションサイドフレーム10は、第1後端E2と、第1後端E2の上に位置する第2後端E3とを有する。第1後端E2の上部は、上に向けて延びている。第2後端E3は、第1後端E2の上端から前斜め上に向けて湾曲しながら延び、上端E1に接続されている。ブラケット30の後端30Bは、第1後端E2の上部の略延長線上に沿って、上に向けて延びている。脆弱部33は、クッションサイドフレーム10の上端E1から第1後端E2まで延びている。
【0054】
脆弱部33とクッションサイドフレーム10の第2後端E3との間には、間隔Dが空いている。脆弱部33の後端と第2後端E3との間隔D1は、脆弱部33の前端と第2後端E3との間隔D2よりも大きい。
【0055】
図6(a)に示すように、脆弱部33は、左右方向から見て、後斜め上に向けて凸となる第1円弧状部33Aと、下に向けて凸となる第2円弧状部33Bとを有する。第1円弧状部33Aは、ブラケット30の前端を含んでいる。第2円弧状部33Bは、第1円弧状部33Aの後端からブラケット30の後端まで延びている。
【0056】
第1固定部32A、詳しくは孔H1は、第1円弧状部33Aの所定の第1位置P1における第1法線L3上に位置する。第2固定部32B、詳しくは孔H2は、第2円弧状部33Bの所定の第2位置P2における第2法線L4上に位置する。
【0057】
図6(a),(b)に示すように、フランジ34は、ブラケット30の後端30Bから左右方向内側に向けて屈曲している。フランジ34は、第1板状部31から脆弱部33を経て第2板状部32まで延びている。
【0058】
図9(a)に示すように、クッションサイドフレーム10は、前後方向に延びる長尺の板状のベース壁11と、ベース壁11の下端(短手方向の一端)に位置する第1フランジ部12と、ベース壁11の上端(短手方向の他端)に位置する第2フランジ部13とを有する。ベース壁11は、左右方向と交差、詳しくは直交した面を有する。ベース壁11は、フロントパイプ20の端部が入る第1取付孔H11と、ピンPN(
図4参照)が入る第2取付孔H12と、リアパイプRPが入る第3取付孔H13とを有する。
【0059】
また、ベース壁11は、ブラケット30の第1固定部32Aを取り付けるための第4取付孔H14と、ブラケット30の第2固定部32Bを取り付けるための第5取付孔H15とを有する。第4取付孔H14は、リアパイプRPよりも前に配置され、第5取付孔H15は、リアパイプRPよりも後ろに配置されている。
【0060】
図9(b)に示すように、第1フランジ部12は、屈曲部12Aと、平板部12Bとを有する。屈曲部12Aは、ベース壁11の下端から左右方向外側に屈曲した後、左右方向内側に折り返されるように屈曲している。平板部12Bは、屈曲部12Aの左右方向内側の端から左右方向内側に向けて左右方向(ベース壁11と直交する方向)に延びている。平板部12Bは、ベース壁11よりも左右方向内側に突出している。
【0061】
第2フランジ部13は、屈曲部13Aと、平板部13Bとを有する。屈曲部13Aは、ベース壁11の上端から左右方向外側に屈曲した後、左右方向内側に折り返されるように屈曲している。平板部13Bは、屈曲部13Aの左右方向内側の端から左右方向内側に向けて左右方向(ベース壁11と直交する方向)に延びている。平板部13Bは、ベース壁11よりも左右方向内側に突出している。
【0062】
図9(a)に示すように、第1フランジ部12は、エンボス加工による強化処理(以下、「エンボス処理」ともいう。)が施された第1処理部PP1と、エンボス処理が施されていない第1非処理部NP11,NP12とを有する。第2フランジ部13は、エンボス処理が施された第2処理部PP2と、エンボス処理が施されていない第2非処理部NP2とを有する。
【0063】
図9(c)に示すように、第1処理部PP1および第2処理部PP2は、エンボス加工で形成された複数の凸部CVを有する。複数の凸部CVは、例えば、所定方向に間隔を空けて複数並ぶとともに、所定方向に交差する交差方向に間隔を空けて複数並んでいる。
【0064】
第1処理部PP1および第2処理部PP2は、それぞれ、前後方向の一端から他端にかけて、屈曲部12A,13Aおよび平板部12B,13Bを有する。前述した複数の凸部CVは、各処理部PP1,PP2の屈曲部12A,13Aおよび平板部12B,13Bの両方に形成されている。なお、複数の凸部CVは、屈曲部および平板部のうち少なくとも一方に形成されていればよい。
【0065】
第1非処理部NP11は、第1フランジ部12の後端を含んでいる。第1非処理部NP12は、第1フランジ部12の前端を含んでいる。第1処理部PP1は、前後方向において、第1非処理部NP11と第1非処理部NP12の間に配置されている。
【0066】
後側の第1非処理部NP11は、屈曲部12Aおよび平板部12Bを有する。後側の第1非処理部NP11は、第1処理部PP1の後端から上に向けて湾曲するように延びている。前側の第1非処理部NP12は、屈曲部12Aを有しておらず、平板部12Bのみを有する。詳しくは、前側の第1非処理部NP12は、ベース壁11の下端から左右方向内側に屈曲した後、左右方向に沿って延びる。
【0067】
第2処理部PP2は、第2フランジ部13の後端を含んでいる。第2非処理部NP2は、第2処理部PP2の前に配置されている。第2非処理部NP2は、第2フランジ部13の前端を含んでいる。第2非処理部NP2は、屈曲部13Aを有しておらず、平板部13Bのみを有する。詳しくは、第2非処理部NP2は、ベース壁11の上端から左右方向内側に屈曲した後、左右方向に沿って延びる。
【0068】
第1非処理部NP11,NP12の前後方向における一端から他端までの長さは、それぞれ、第1処理部PP1の前後方向における一端から他端までの長さよりも小さい。第2非処理部NP2の前後方向における一端から他端までの長さは、第2処理部PP2の前後方向における一端から他端までの長さよりも小さい。
【0069】
第1処理部PP1の前後方向における一端から他端までの長さは、第2処理部PP2の前後方向における一端から他端までの長さよりも大きい。前後方向において、第2処理部PP2は、第1処理部PP1の範囲内に配置されている。
【0070】
第1処理部PP1の後端は、リアパイプRPよりも後ろ、かつ、第5取付孔H15よりも前に位置する。第2処理部PP2の後端は、第4取付孔H14よりも後ろ、かつ、リアパイプRPよりも前に位置する。
【0071】
第1処理部PP1の前端は、フロントパイプ20よりも前に位置する。第2処理部PP2の前端は、フロントリンク61よりも後ろに位置する。
【0072】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
図8に示すように、ブラケット30の第2板状部32が、クッションサイドフレーム10の左右方向内側に配置されるので、車両用シートSが左右方向に大型化するのを抑制することができる。
【0073】
第1板状部31が第2板状部32よりも左右方向外側に配置されるので、例えば第1板状部が第2板状部と左右方向で同じ位置に配置される場合と比べ、クッションサイドフレーム10を左右方向内側に配置することができ、車両用シートSが左右方向に大型化するのを抑制することができる。
【0074】
ブラケット30が脆弱部33を有することで、衝突時において脆弱部33を起点にしてブラケット30を変形させることができるので、ブラケット30により衝撃を吸収することができる。
【0075】
脆弱部33が第1板状部31の左右方向外側の外面31Fから左右方向外側に突出しないので、例えば脆弱部が第1板状部の左右方向外側の外面から左右方向外側に突出する構成と比べ、車両用シートSが左右方向に大型化するのを抑制することができる。
【0076】
図7に示すように、脆弱部33がブラケット30の前端から後端まで延びているので、例えば脆弱部がブラケットの端まで延びない構成と比べ、衝突時においてブラケット30を容易に変形させることができる。
【0077】
脆弱部33が第1固定部32Aから第2固定部32Bまで延びているので、衝突時においてバックサイドフレーム41に加わる衝撃が、脆弱部33で吸収された後、第1固定部32Aおよび第2固定部32Bに伝達されるので、第1固定部32Aおよび第2固定部32Bが破損するのを抑制することができる。
【0078】
脆弱部33とクッションサイドフレーム10の第2後端E3との間に間隔Dが空いているので、衝突時において、ブラケット30の第1板状部31がクッションサイドフレーム10の第2後端E3に近づくように(下に移動するように)、ブラケット30を変形させることができる。
【0079】
図4に示すように、フロントパイプ20がフロントリンク61を避けるように屈曲するので、従来のようにリンクを大きく屈曲させる必要がなく、リンクの重量を小さくすることができ、ひいては車両用シートSの重量が大きくなるのを抑制することができる。
【0080】
フロントリンク61がストレート形状であるので、例えばフロントリンクが屈曲した形状である場合と比べ、フロントリンク61の重量を小さくすることができ、車両用シートSの重量が大きくなるのを抑制することができる。
【0081】
フロントパイプ20の第2部位22が左右方向に延びるので、例えば第2部位が左右方向に対して斜めに延びる場合と比べ、フロントリンク61の位置が取付誤差により正規の位置から左右方向にずれても、フロントリンク61と第2部位22との上下方向の隙間を所望の大きさに保つことができる。
【0082】
図3に示すように、フロントリンク61のクッションサイドフレーム10に対する回動軸である第1軸X1が、上下方向において、フロントパイプ20のクッションサイドフレーム10との接合部分の範囲W3内に配置されるので、クッションサイドフレーム10の上下幅を小さくすることができる。
【0083】
上下方向において、クッションサイドフレーム10のパイプ接合部10Aの幅が、リンク連結部10Bの幅よりも小さいので、クッションサイドフレーム10の重量を小さくすることができ、車両用シートSの重量が大きくなるのを抑制することができる。
【0084】
フロントパイプ20の第1部位21の一部が、左右方向から見て、クッションサイドフレーム10と重ならないので、例えば第1部位のすべてが左右方向から見てクッションサイドフレームに重なる構造と比べ、クッションサイドフレーム10を上下方向に小型化することができる。
【0085】
図9に示すように、各フランジ部12,13が、エンボス処理が施された処理部PP1,PP2を有するので、クッションサイドフレーム10の剛性を高くすることができる。
【0086】
第1フランジ部12が、エンボス処理が施されていない第1非処理部NP11を有するので、第1非処理部NP11を衝突時における衝撃を吸収する部位として利用することができる。
【0087】
第1処理部PP1が、エンボス加工で形成された複数の凸部CVを有するので、複数の凸部CVにより第1処理部PP1の剛性を高くすることができる。
【0088】
第1非処理部NP11を第1フランジ部12の後端に配置することで、衝突時においてクッションサイドフレーム10の後端にある第1非処理部NP11をブラケット30とともに変形させることができるので、ブラケット30と第1非処理部NP11の変形によって衝撃を吸収することができる。
【0089】
第1非処理部NP11,NP12の前後方向における一端から他端までの長さが、それぞれ、第1処理部PP1の前後方向における一端から他端までの長さよりも小さいので、例えば第1処理部の長さが各第1非処理部の長さよりも小さい構成に比べ、クッションサイドフレーム10の剛性を高くすることができる。
【0090】
第2処理部PP2が第2フランジ部13の後側に配置されるので、第2フランジ部13のうち乗員からの荷重が大きく加わる後側の部位の剛性を第2処理部PP2によって高くすることができる。また、第2フランジ部13の前側の部位を第2非処理部NP2とすることで、第2フランジ部13の前側の部位に他の部材を取り付けるための孔などの形状や位置の精度を高くすることができる。
【0091】
第2非処理部NP2の前後方向における一端から他端までの長さが、第2処理部PP2の前後方向における一端から他端までの長さよりも小さいので、例えば第2処理部の長さが第2非処理部の長さよりも小さい構成に比べ、クッションサイドフレーム10の剛性を高くすることができる。
【0092】
第1処理部PP1の前後方向における一端から他端までの長さが、第2処理部PP2の前後方向における一端から他端までの長さよりも大きいので、クッションサイドフレーム10の下部の剛性を高くすることができる。
【0093】
前後方向において第2処理部PP2が第1処理部PP1の範囲内に配置されているので、例えば前後方向において第2処理部が第1処理部の範囲外に配置される構成と比べ、クッションサイドフレーム10の剛性を高くすることができる。
【0094】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0095】
前記実施形態では、第1板状部31を第2板状部32よりも左右方向外側に配置したが、本発明はこれに限定されず、例えば、第1板状部と第2板状部は左右方向で同じ位置に配置されていてもよい。
【0096】
前記実施形態では、ブラケット30に脆弱部33を設けたが、本発明はこれに限定されず、ブラケットは脆弱部を有していなくてもよい。
【0097】
第1部位21、第2部位22および第3部位23を有するフロントパイプ20の構造は、左右のクッションサイドフレームを連結する連結パイプであれば、例えばリアパイプなどの他のパイプにも適用することができる。また、リンクは、ハイト機構60を構成するリンクに限らず、クッションサイドフレームに回動可能に連結されるリンクであれば、どのようなリンクであってもよい。
【0098】
エンボス処理は、クッションサイドフレーム10のフランジ部12,13に限らず、例えば、バックサイドフレームのフランジ部に施されていてもよい。つまり、エンボス処理は、サイドフレームのフランジ部であれば、どのフランジ部に施されていてもよい。また、フランジ部に施す強化処理は、エンボス処理に限らず、焼入れによる処理であってもよい。焼入れとしては、例えば、高周波焼入れやレーザー焼入れなどを採用することができる。
【0099】
フランジ部に施す強化処理は、フランジ部の少なくとも一部に施されていればよく、例えば、フランジ部の全体に施されていてもよい。つまり、フランジ部は、処理部のみを有し、非処理部を有さない構成であってもよい。また、強化処理は、フランジ部に加え、ベース壁に施されていてもよい。
【0100】
前記実施形態では、フランジ部12,13の屈曲部12A,13Aが左右方向外側に突出する構成としたが、本発明はこれに限定されず、フランジ部の屈曲部は、ベース壁から左右方向外側に突出せずに、左右方向内側に屈曲する形状であってもよい。
【0101】
前記実施形態では、脆弱部33を、第1板状部31の左右方向外側の外面31Fから左右方向外側に突出しないように構成したが、本発明はこれに限定されず、例えば、脆弱部は、第1板状部の左右方向外側の外面から左右方向外側に突出するように屈曲していてもよい。
【0102】
前記実施形態では、乗物用シートとして、自動車で使用される車両用シートSを例示したが、本発明はこれに限定されず、その他の乗物用シート、例えば、船舶や航空機などで使用されるシートに適用することもできる。
【0103】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 クッションサイドフレーム
20 フロントパイプ
21 第1部位
22 第2部位
23 第3部位
61 フロントリンク
S 車両用シート
S1 シートクッション