(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022014994
(43)【公開日】2022-01-21
(54)【発明の名称】粘着テープ
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20220114BHJP
C09J 7/22 20180101ALI20220114BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220114BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/22
C09J133/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020117563
(22)【出願日】2020-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】399020212
【氏名又は名称】東山フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 真也
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA06
4J004CA07
4J004CB03
4J004CC02
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4J040BA192
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4J040DF001
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4J040GA26
4J040HD30
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4J040JA09
4J040JB09
4J040KA16
4J040KA17
4J040KA26
4J040KA31
4J040KA32
4J040KA35
4J040KA36
4J040LA06
4J040NA19
(57)【要約】
【課題】孔を埋める充填材の漏れを抑制するとともに、糊残りなく容易に剥離することができ、さらに導体回路の変色を抑制することのできる粘着テープを提供する。
【解決手段】基材フィルム12と基材フィルム12上に形成された粘着剤層14とを有し、粘着剤層14がカルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体とエポキシ系架橋剤とを含む粘着剤組成物で構成され、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体の酸価が4.0mg/KOH以上40mg/KOH以下であり、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシ基のモル量(a)とエポキシ系架橋剤のエポキシ基のモル量(b)との比(b/a)が0.3以上1.1以下であり、粘着剤層14の23℃における銅板に対する剥離力が0.3N/25mm以上20N/25mm以下である、多層プリント配線板の孔を樹脂で埋める工程に用いられる、粘着テープ10とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層プリント配線板の孔を樹脂で埋める工程に用いられる粘着テープであって、
基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された粘着剤層と、を有し、
前記粘着剤層が、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体とエポキシ系架橋剤とを含む粘着剤組成物で構成され、
前前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体の酸価が、4.0mg/KOH以上40mg/KOH以下であり、
前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシ基のモル量(a)と前記エポキシ系架橋剤のエポキシ基のモル量(b)との比(b/a)が、0.3以上1.1以下であり、
前記粘着剤層の23℃における銅板に対する剥離力が、0.3N/25mm以上20N/25mm以下である、粘着テープ。
【請求項2】
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率が、0.8×104Pa以上40×104Pa以下である、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記基材フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイドのうちの少なくとも1種を含む、請求項1または請求項2に記載の粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関し、さらに詳しくは、多層プリント配線板の孔を樹脂で埋める工程に用いられる粘着テープに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化・高機能化に伴い、プリント配線板には、パターンの微細化、実装面積の縮小化、部品実装の高密度化が要求されている。そのため、プリント配線板には、異なる配線層同士を電気的に接続するための層間接続を形成する貫通孔、すなわちスルーホールが設けられた両面基板や、コア材上に絶縁層、導体回路が順次形成され、ビアホールなどで層間接続されて多層化されたビルドアップ配線板などの多層基板が用いられる。
【0003】
このようなプリント配線板において、表面の導体回路間の凹部や、内壁面に配線層が形成されたスルーホール、ビアホールなどの孔部には、熱硬化性樹脂などの充填材により孔埋め加工処理がされるのが一般的である。熱硬化性樹脂の充填材としては、一般に、熱硬化性樹脂成分としてのエポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤、および無機フィラーを含有するものが用いられている。
【0004】
上記孔部に熱硬化性樹脂の充填材を充填する方法としては、例えば、孔版印刷法により充填する方法(特許文献1)、基板上に熱硬化性樹脂の充填材からなる過剰供給層を形成した後、余剰樹脂を取り除く方法(特許文献2)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-183519号公報
【特許文献2】特開2003-188308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の方法では、余剰樹脂を取り除く工程が多く、煩雑になりやすい。一方、このような充填方法において、孔部がスルーホールや貫通ビアなどの貫通孔である場合、基板の裏面側に粘着テープを貼着して、基板に形成された貫通孔を有底孔とすることで、基板の裏面側への充填材のにじみ出し、漏れを防止することができる。また、孔部内に配置された半導体素子、コイル、放熱部品などの電子部品素子を熱硬化性樹脂の充填材により孔埋め加工する場合においては、電子部品素子の配置、固定が容易となる。そして、熱硬化性樹脂の充填材の硬化工程後、粘着テープを除去することで、簡便に貫通孔の孔埋めを完了することが出来る。
【0007】
しかしながら、基板の貫通孔の穴埋めに用いる粘着テープにおいては、熱硬化性樹脂の充填材の硬化過程で粘着剤層が熱硬化性樹脂と反応したり、銅などの導体回路表面との密着性が上昇したりするなどして、容易に剥離することができなくなったり、銅などの導体回路が変色したりするおそれがある。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、孔を埋める充填材の漏れを抑制するとともに、糊残りなく容易に剥離することができ、さらに導体回路の変色を抑制することのできる粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明に係る粘着テープは、多層プリント配線板の孔を樹脂で埋める工程に用いられる粘着テープであって、基材フィルムと、前記基材フィルム上に形成された粘着剤層と、を有し、前記粘着剤層が、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体とエポキシ系架橋剤とを含む粘着剤組成物で構成され、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体の酸価が、4.0mg/KOH以上40mg/KOH以下であり、前記カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシ基のモル量(a)と前記エポキシ系架橋剤のエポキシ基のモル量(b)との比(b/a)が、0.3以上1.1以下であり、前記粘着剤層の23℃における銅板に対する剥離力が、0.3N/25mm以上20N/25mm以下である。
【0010】
前記粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率は、0.8×104Pa以上40×104Pa以下であるとよい。前記基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイドのうちの少なくとも1種を含むとよい
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る粘着テープによれば、孔を埋める充填材の漏れを抑制するとともに、糊残りなく容易に剥離することができ、さらに導体回路の変色を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着テープの断面図である。
【
図2】粘着テープを用い、多層プリント配線板の孔に熱硬化性樹脂の充填材を充填する、孔埋め工程の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る粘着テープの断面図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る粘着テープ10は、基材フィルム12と、基材フィルム12の一方面上に形成された粘着剤層14と、を有する。
【0015】
(基材フィルム)
基材フィルム12としては、高分子フィルム、ガラスフィルムなどが挙げられる。基材フィルム12の高分子材料としては、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン,ポリエチレン,ポリシクロオレフィン,シクロオレフィンコポリマーなどのポリオレフィン、トリアセチルセルロース,ジアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。基材フィルム12の高分子材料は、これらのうちの1種のみで構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。
【0016】
これらの中では、機械的強度や耐熱性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)の少なくとも1種以上であることが好ましい。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)が好ましい。
【0017】
基材フィルム12の厚みは、多層プリント配線板の孔を樹脂で埋める工程で、樹脂(充填材)の充填時に、粘着テープ10のたわみから生じる、粘着テープ10側への充填材の突出を抑制するなどの観点から、下限は10μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。また、上限は特に制限はないが、取り扱い性などの観点から500μm以下、好ましくは200μm以下である。なお、「フィルム」とは、一般に厚さが0.25mm未満のものをいうが、厚さが0.25mm以上のものであってもロール状に巻くことが可能であれば、厚さが0.25mm以上のものであっても「フィルム」に含まれるものとする。
【0018】
(粘着剤層)
粘着剤層14は、粘着テープ10を多層プリント配線板などの被着体に貼り合わせるためのものである。粘着剤層14は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体とエポキシ系架橋剤とを含む粘着剤組成物で構成される。
【0019】
(カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体)
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体は、カルボキシ基が反応性官能基であり、このため、多層プリント配線板の導体回路(銅)に接しても導体回路(銅)の変色が抑えられる。
【0020】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレアート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートに無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸等の酸無水物を反応させたモノマー等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0021】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体の酸価は、4.0mg/KOH以上40mg/KOH以下である。上記酸価が4.0mg/KOH未満であると、粘着剤の凝集力が低下し、多層プリント配線板からの剥離時に糊残りや汚染が生じる。また、この観点から、上記酸価は、好ましくは6.0mg/KOH以上、さらに好ましくは7.0mg/KOH以上である。一方、上記酸価が、40mg/KOH超であると、粘着剤層14が孔を埋める充填材である熱硬化性樹脂と反応して強固に接着し、粘着テープ10の多層プリント配線板からの剥離時に糊残りが生じる。また、この観点から、上記酸価は、好ましくは30mg/KOH以下、さらに好ましくは25mg/KOH以下である。
【0022】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシ基量は、0.5mmol/100g以上150mmol/100g以下であることが好ましい。カルボキシ基量が0.5mmol/100g以上であると、粘着剤層14の硬さが確保されるため、粘着剤層14の耐久性が向上する。また、この観点から、カルボキシ基量は、より好ましくは1mmol/100g以上、さらに好ましくは3mmol/100g以上、特に好ましくは9mmol/100g以上である。一方、カルボキシ基量が150mmol/100g以下であると、粘着剤層14が硬くなりすぎず、粘着性が確保されるため、粘着剤層14の被着体に対する密着性に優れる。また、この観点から、カルボキシ基量は、より好ましくは100mmol/100g以下、さらに好ましくは70mmol/100g以下、特に好ましくは45mmol/100g以下である。
【0023】
(エポキシ系架橋剤)
エポキシ系架橋剤は、反応性基としてエポキシ基を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。エポキシ系架橋剤は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
エポキシ系架橋剤を2種以上併用する場合、少なくとも1種は、23℃において固体である架橋剤を用いてもよい。具体的には、軟化点が20℃~150℃のものを用いることが好ましく、40℃~120℃のものを用いることがより好ましく、60℃~100℃のものを用いることがより好ましい。
【0026】
上記23℃において固体である架橋剤の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、好ましくは1質量部~60質量部、より好ましくは3質量部~30質量部、さらに好ましくは5質量部~10質量部である。上記範囲のものを用いると、また粘着性付与剤として機能して初期剥離力を良好なものとすることができるとともに、粘着剤層14の耐熱性が向上する。
【0027】
エポキシ系架橋剤の反応性基の含有量は、好ましくは0.5mmol/g以上、より好ましくは1.0mmol/g以上、さらに好ましくは1.5mmol/g以上であり、特に好ましくは6.0mmol/g以上であり、20mmol/g以下が好ましく、より好ましくは15mmol/g以下、さらに好ましくは12mmol/g以下である。架橋剤の反応性基の含有量がこの範囲であれば粘着剤層14の凝集力が好ましいものとなり、糊残りや樹脂漏れを抑制することが出来る。
【0028】
エポキシ系架橋剤の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上、特に好ましくは0.7質量部以上であり、16質量部以下が好ましく、より好ましくは12質量部、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは4質量部以下である。エポキシ系架橋剤の含有量が0.05質量部以上であれば、十分な凝集力を発揮する。エポキシ系架橋剤の含有量が16質量部以下であれば、フィルム基材12との十分な密着性を発揮し、糊の転着を抑制することが出来る。
【0029】
カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシ基のモル量(a)とエポキシ系架橋剤のエポキシ基のモル量(b)との比(b/a)は、0.3以上1.1以下である。上記モル比が0.3未満であると、粘着剤層14の凝集力が不足し、粘着剤層14が凝集破壊しやすい。また、この観点から、上記モル比は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.7以上である。一方、上記モル比が1.1超であると、粘着剤層14に残留するカルボキシ基が多くなり、熱硬化性樹脂の充填材と反応することで粘着テープ10の剥離時に糊残りが抑えられない。また、この観点から、上記モル比は、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下である。
【0030】
上記粘着剤組成物は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体以外に、カルボキシ基を有していない(メタ)アクリル系共重合体を含んでいてもよい。また、(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体を含んでいてもよい。
【0031】
(他の重合体)
カルボキシ基を有していない(メタ)アクリル系共重合体としては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体、スルホン酸基を有する(メタ)アクリル系共重合体、リン酸基を有する(メタ)アクリル系共重合体、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体、直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル系共重合体、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル系共重合体、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル系共重合体、芳香族基を有する(メタ)アクリル系共重合体、アルコキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリル系共重合体、三級アミノ基を有する(メタ)アクリル系共重合体、(メタ)アクリルアミド系共重合体などが挙げられる。また、(メタ)アクリル系共重合体以外の重合体としては、ビニル系重合体などが挙げられる。ビニル系重合体としては、ヒドロキシ基を有するビニル系重合体系重合体、カルボキシ基を有するビニル系重合体、エポキシ基を含有するビニル系重合体、芳香族基を有するビニル系重合体、ヘテロ環を有するビニル系重合体、カルボン酸ビニル系重合体、三級アミノ基を有するビニル系重合体、四級アンモニウム塩基を有するビニル系重合体、ハロゲン基を有するビニル系重合体、ビニルアミド系重合体、α-オレフィン系重合体、ジエン系重合体などが挙げられる。上記粘着剤組成物に含まれる他の重合体としては、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体が特に好ましい。
【0032】
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加物;等が挙げられる。これらの中でもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1~5のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0033】
スルホン酸基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、スルホン酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、スルホン酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。リン酸基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、リン酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸2-(ホスホノオキシ)エチル等が挙げられる。エポキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、エポキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、直鎖状アルキル基を有するアクリルモノマーとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ラウリルアクリレート、n-ステアリルアクリレート等の(メタ)アクリル酸直鎖アルキルエステルが挙げられる。直鎖状アルキル基を有するアクリルモノマーは、直鎖状アルキル基の炭素数が1~20であることが好ましい。より好ましくは直鎖状アルキル基の炭素数が1~10である。
【0035】
分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸分岐鎖アルキルエステルが挙げられる。分岐鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーは、分岐鎖状アルキル基の炭素数が3~20であることが好ましい。より好ましくは、分岐鎖状アルキル基の炭素数が3~10である。
【0036】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、環状アルキル基を有する(メタ)アクリルモノマー、多環式構造を有する(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。環状アルキル基としては、単環構造を有する環状アルキル基(例えば、シクロアルキル基)が挙げられ、また鎖状部分を有していてもよい。単環構造の環状アルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸環状アルキルエステルを挙げることができる。環状アルキル基を有する(メタ)アクリルモノマーは、環状アルキル基の炭素数が6~12であることが好ましい。
【0037】
多環式構造としては、橋かけ環構造を有する環状アルキル基(例えば、アダマンチル基、ノルボニル基、イソボルニル基)が挙げられ、また鎖状部分を有していてもよい。多環式構造を有する(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。多環式構造を有する(メタ)アクリルモノマーは、多環式構造の炭素数が6~12であることが好ましい。
【0038】
芳香族基を有する(メタ)アクリル系共重合体において、芳香族基としては、アリール基等をあげることができ、またアルキルアリール基、アラリル基、アリールオキシアルキル基等のように鎖状部分を有していてもよい。芳香族基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、芳香族基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基にアリール基が直接結合した化合物、(メタ)アクリロイルオキシ基にアラルキル基が直接結合した化合物、(メタ)アクリロイルオキシ基にアルキルアリール基が直接結合した化合物が挙げられる。芳香族基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香族基を有する(メタ)アクリルモノマーは、芳香族基の炭素数が6~12であることが好ましい。アラルキル基の炭素数は、6~12が好ましい。アルキルアリール基の炭素数は6~12が好ましい。
【0039】
アルコキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、アルコキシ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが挙げられる。
【0040】
ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、ポリアルキレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度=2~10)フェニルエーテル(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリルモノマー;ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)エチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)プロピルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(重合度=2~10)フェニルエーテル(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール構造単位を有する(メタ)アクリルモノマー等が挙げられる。
【0041】
三級アミノ基を有する(メタ)アクリル系共重合体を構成する、三級アミノ基を有する(メタ)アクリルモノマーとしては、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリルアミド系共重合体を構成する、(メタ)アクリルアミド類としては、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-オクチル(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリアミド、N-(メタ)アクリイルモルフォリン等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド類は、(メタ)アクリルモノマーであるが、(メタ)アクリレートモノマーには含まれない。
【0043】
ヒドロキシ基を有するビニル系重合体系重合体を構成する、ヒドロキシ基を有するビニルモノマーとしては、p-ヒドロキシスチレン、アリルアルコール等が挙げられる。カルボキシ基を有するビニル系重合体を構成する、カルボキシ基を有するビニルモノマーとしては、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸等が挙げられる。エポキシ基を含有するビニル系重合体を構成する、エポキシ基を含有するビニルモノマーとしては、2-アリルオキシラン、グリシジルビニルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0044】
芳香族基を有するビニル系重合体を構成する、芳香族ビニルモノマーとしては、スチレン、α-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メトキシスチレン、2-ヒドロキシメチルスチレン、1-ビニルナフタレン等が挙げられる。ヘテロ環を有するビニル系重合体を構成する、ヘテロ環を有するビニルモノマーとしては、2-ビニルチオフェン、N-メチル-2-ビニルピロール、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン等が挙げられる。
【0045】
カルボン酸ビニル系重合体を構成する、カルボン酸ビニルとしては、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。三級アミノ基を有するビニル系重合体を構成する、三級アミノ基を有するビニルモノマーとしては、N,N-ジメチルアリルアミン等が挙げられる。四級アンモニウム塩基を有するビニル系重合体を構成する、四級アンモニウム塩基を有するビニルモノマーとしては、N-メタクリロイルアミノエチル-N,N,N-ジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。ハロゲン基を有するビニル系重合体を構成する、ハロゲン化ビニルモノマーとしては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、1-クロロ-1-フルオロエチレン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン等が挙げられる。ビニルアミド系重合体を構成する、ビニルアミド類としては、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、1-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-ε-カプトラクタム等が挙げられる。α-オレフィン系重合体を構成するα-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられる。ジエン系重合体を構成するジエン類としては、ブタジエン、イソプレン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等が挙げられる。
【0046】
(その他添加剤)
上記粘着剤組成物は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体、エポキシ系架橋剤、他の重合体以外に、その他添加剤を配合して使用することができる。その他の添加剤としては、架橋促進剤、架橋遅延剤、シランカップリング剤、粘着付与剤(タッキファイヤー)、可塑剤、軟化剤、剥離助剤、染料、顔料、色素、蛍光増白剤、帯電防止剤、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、防黴剤、防腐剤、酸素吸収剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、近赤外線吸収剤、水溶性消光剤、香料、金属不活性剤、造核剤、アルキル化剤、難燃剤、滑剤、加工助剤等が挙げられる。これらは用途や使用目的に応じて、適宜選択して配合して使用される。また、生産性などの観点から、上記粘着剤組成物は、有機溶剤を使用して希釈してもよい。
【0047】
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤としては、特に制限されるものではないが、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0048】
シランカップリング剤の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.01質量部~1質量部、さらに好ましくは0.02質量部~0.6質量部である。シランカップリング剤の含有量を上記範囲に調節することによって、粘着剤層をガラス等の親水性被着体に適用する場合における界面での耐水性を上げることができる。
【0049】
(粘着付与剤)
粘着付与剤としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂等が挙げられる。ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン)や、これらの未変性ロジンを重合、不均化、水添化等により変性した変性ロジン(重合ロジン、安定化ロジン、不均化ロジン、完全水添ロジン、部分水添ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等)の他、各種のロジン誘導体等が挙げられる。
【0050】
ロジン誘導体としては、例えば、ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール系樹脂;未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したロジンのエステル化合物(未変性ロジンエステル)や、変性ロジンをアルコール類によりエステル化した変性ロジンのエステル化合物(重合ロジンエステル、安定化ロジンエステル、不均化ロジンエステル、完全水添ロジンエステル、部分水添ロジンエステル等)等のロジンエステル系樹脂;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂;ロジンエステル系樹脂を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン系樹脂や不飽和脂肪酸変性ロジンエステル系樹脂におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール系樹脂;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン系樹脂(特に、ロジンエステル系樹脂)の金属塩等が挙げられる。
【0051】
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン系樹脂、これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペンフェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂)が挙げられる。
フェノール系粘着付与樹脂としては、例えば、各種フェノール類(例えば、フェノール、m-クレゾール、3,5-キシレノール、p-アルキルフェノール、レゾルシン)とホルムアルデヒドとの縮合物(例えば、アルキルフェノール系樹脂、キシレンホルムアルデヒド系樹脂)、前記フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾール、前記フェノール類とホルムアルデヒドとを酸触媒で縮合反応させて得られるノボラック等が挙げられる。
【0052】
炭化水素系粘着付与樹脂(石油系粘着付与樹脂)としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂[炭素数4~5のオレフィンやジエン(ブテン-1、イソブチレン、ペンテン-1等のオレフィン;ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン等のジエン)等の脂肪族炭化水素の重合体等]、脂肪族系環状炭化水素樹脂[いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後重合させた脂環式炭化水素系樹脂、環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体又はその水素添加物、下記の芳香族系炭化水素樹脂や脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂等]、芳香族系炭化水素樹脂[炭素数が8~10であるビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)の重合体等]、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン-オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等が挙げられる。
【0053】
粘着付与剤の含有量は、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、5質量部~60質量部が好ましい。粘着付与剤の含有量を前記範囲とすることによって、多層プリント配線板との密着性が向上する。また、基材フィルム12との密着性も向上する。
【0054】
粘着剤層14は、23℃における銅板に対する剥離力が、0.3N/25mm以上20N/25mm以下である。上記剥離力が0.3N/25mm以上であることで、多層プリント配線板との密着性が確保される。また、この観点から、上記剥離力は、より好ましくは1.0N/25mm以上、さらに好ましくは2.0N/25mm以上である。一方、上記剥離力が20以下であることで、多層プリント配線板から剥離したときの糊残りが抑えられる。また、この観点から、上記剥離力は、より好ましくは16N/25mm以下、さらに好ましくは10N/25mm以下である。
【0055】
粘着剤層14は、23℃における貯蔵弾性率が、0.8×104Pa以上40×104Pa以下であることが好ましい。上記貯蔵弾性率が0.8×104Pa以上であると、熱硬化性樹脂の充填材の充填時に、充填材の押し圧による粘着剤層14の変形から生じる、充填材の突出を抑制することができる。また、この観点から、上記貯蔵弾性率は、より好ましくは1.0×104Pa以上、さらに好ましくは2.0×104Pa以上、特に好ましくは4.0×104Pa以上である。一方、上記貯蔵弾性率が40×104Pa以下であると、多層プリント配線板との密着性に優れる。また、この観点から、上記貯蔵弾性率は、より好ましくはより好ましくは35×104Pa以下、さらに好ましくは30×104Pa以下、特に好ましくは25×104Pa以下である。
【0056】
粘着剤層14の厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは15μm以上、特に好ましくは25μm以上である。粘着剤層14の厚みが1μm以上であると、多層プリント配線板との密着性が向上する。また、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。粘着剤層14の厚みが100μm以下であると、多層プリント配線板の孔に放熱用の銅やセラミックのチップを配する場合、チップが粘着剤層14側に突出することを抑制できる。
【0057】
粘着剤層14は、基材フィルム12の一方面上に粘着剤組成物を直接塗布して形成する方法、離型フィルムの面上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層14を形成した後、基材フィルム12の一方面上に転写する方法、第一の離型フィルムの面上に粘着剤組成物を塗布して粘着剤層14を形成した後、第二の離型フィルムを貼り合わせ、いずれか一方の離型フィルムを剥離して基材フィルム12の一方面上に転写する方法などにより形成することができる。
【0058】
粘着剤組成物の塗工には、例えば、リバースグラビアコート法,ダイレクトグラビアコート法,ダイコート法,バーコート法,ワイヤーバーコート法,ロールコート法,スピンコート法,ディップコート法,スプレーコート法,ナイフコート法,キスコート法などの各種コーティング法や、インクジェット法、オフセット印刷,スクリーン印刷,フレキソ印刷などの各種印刷法を用いて行うことができる。
【0059】
乾燥及び硬化工程は、塗工液に用いた溶剤等を除去し、硬化させることができれば特に限定されるものではないが、60~150℃の温度で20秒~300秒程度行うことが好ましい。特に、乾燥温度は、100~130℃が好ましい。
【0060】
図2には、粘着テープ10を用い、多層プリント配線板の孔に熱硬化性樹脂の充填材を充填する、孔埋め工程の工程図を示す。
【0061】
図2(a)に示すように、多層プリント配線板20には、スルーホールなどの複数の貫通孔22が形成されている。多層プリント配線板20の上面には、スクリーン印刷のためのスクリーン24が配置されている。そして、多層プリント配線板20の下面には、粘着剤層14を介して粘着テープ10が貼付されている。これにより、多層プリント配線板20の貫通孔22は、有底孔とされている。この状態で、
図2(b)に示すように、スクリーン24の上から熱硬化性樹脂の充填材26を、スキージ28を用いて充填する。この際、減圧条件下で充填するとよい。次いで、
図2(c)に示すように、スクリーン24を除去後、所定の温度まで昇温し、熱硬化性樹脂の充填材26を硬化させる。次いで、
図2(d)に示すように、多層プリント配線板20の下面に貼付していた粘着テープ10を剥離する。次いで、
図2(e)に示すように、多層プリント配線板20の上面に、貫通孔22の上面から出ている充填材26を研磨ロール30で研磨する。以上により、
図2(f)に示すように、貫通孔22に充填材26が充填された多層プリント配線板20が得られる。
【0062】
以上の構成の粘着テープ10によれば、孔を埋める充填材の漏れを抑制するとともに、糊残りなく容易に剥離することができ、さらに導体回路の変色を抑制することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
【実施例0064】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0065】
(実施例1)
<粘着剤組成物の調製>
カルボキシ基含有アクリル系共重合体であるアクリル系共重合体<1>(大塚化学製「TERPLUS 200-007」の固形分)100質量部に対し、エポキシ系架橋剤<1>を2.8質量部、エポキシ系架橋剤<2>を6.8質量部加え、固形分濃度が25質量%となるように酢酸ブチルを加え、粘着剤組成物を調製した。なお、カルボキシ基含有アクリル系共重合体のカルボキシ基のモル量(a)とエポキシ系架橋剤のエポキシ基のモル量(b)との比(b/a)は、0.9であった。
【0066】
<粘着テープの作製>
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ製「RM65」、厚さ75μm)の一方面上に、ベーカー式フィルムアプリケーターを用いて、厚さ25μmとなるように粘着剤組成物を塗布し、120℃で2分加熱後、粘着剤組成物のPETフィルムで覆われていない面に離型フィルム(東山フイルム製「HY-S10」、シリコーン系PET離型フィルム、厚み25μm)の離型面を貼り付けた。その後40℃で3日間養生し、粘着テープを作製した。
【0067】
(実施例2~7、比較例1~6)
粘着剤組成物の調製において、表1に記載の配合組成とし、調製した粘着剤組成物を用い、それぞれ粘着テープを作製した。
【0068】
用いた材料は以下の通りである。
・アクリル系共重合体<1>:カルボキシ基含有アクリル系共重合体(大塚化学製「TERPLUS200-007」の固形物)、酸価23.3mg/KOH
・アクリル系共重合体<2>:カルボキシ基含有アクリル系共重合体(藤倉化成製「LKG―1202A」の固形物)、酸価7.8mg/KOH
・アクリル系共重合体<3>:カルボキシ基含有アクリル系共重合体(藤倉化成製「LKG-1201A」の固形物)、酸価58mg/KOH
・アクリル系共重合体<4>:ヒドロキシル基含有アクリル系共重合体(大塚化学製「TERPLUS N5505」の固形物)、水酸基価19.4mg/KOH
・エポキシ系架橋剤<1>:三菱ガス化学製「TETRAD-C」(常温で液状)
・エポキシ系架橋剤<2>:三菱ケミカル製「JER1002」(軟化点78℃)
・イソシアネート系架橋剤<1>:旭化成製「デュラネートTPA-100」(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体)
・粘着付与剤<1>:テルペンフェノール樹脂(ヤスハラケミカル製「YSポリスターN125」)
【0069】
作製した粘着テープの粘着剤層の貯蔵弾性率、厚さ、銅板に対する剥離力を求めた。また、作製した粘着テープを用い、各評価(銅板の変色、糊残り、樹脂漏れ)を行った。
【0070】
(貯蔵弾性率)
作製した粘着シートの粘着剤層を、ハンドローラーを用いて貼り合わせて積層し、厚さ0.5mmの積層体を測定サンプルとした。粘弾性測定装置(TA instrument社製「Discovery HR-2」)を用いて、23℃50%RHの環境下、せん断モード、ジオメトリ:φ8mmパラレルプレート、周波数:1Hz、ひずみ:1%で、測定サンプルのせん断貯蔵弾性率を測定した。
【0071】
(厚さ)
厚さ測定機(テスター産業製、「TH-104」)を用いて、粘着テープ全体の総厚を測定し、この総厚から基材フィルム及び離型フィルムの厚さを除することで、粘着剤層の厚さを求めた。
【0072】
(銅板に対する剥離力)
作製した粘着テープを幅25mm、長さ150mmのサイズにカットし、離型フィルムを剥がした後、無酸素銅板(エンジニアリングテストサービス製「C1020P」、厚さ1.5mm、50mm×150mm)にハンドローラーを用いて圧着した。得られた剥離力試験用サンプルを23℃で1時間静置した後、180°剥離試験により銅板に対する初期の剥離力を測定した。また、得られた剥離力試験用サンプルを恒温槽で温度150℃で1時間加熱した後、恒温槽から取り出し、23℃で1時間静置した後、180°剥離試験により銅板に対する加熱後の剥離力を測定した。180°剥離試験は、精密万能試験機(島津製作所製「AUTOGRAPH AGS-1kNX、50Nロードセル」)を用いて、引張速度0.3m/min、剥離角180°で行った。
【0073】
(銅板の変色)
上記加熱後の剥離力の測定で粘着テープを剥離した後の無酸素銅板の表面を目視で観察し、銅板の変色を評価した。粘着テープが貼られていた部分と貼られていなかった部分で、銅板の色に差がなかった場合を「○」、銅板の色に差があった場合を「×」とした。
【0074】
(糊残り)
作製した粘着テープを幅25mm、長さ150mmのサイズにカットし、離型フィルムを剥がした後、φ5×25mmの貫通した長丸穴を開けた無酸素銅板(エンジニアリングテストサービス製、「C1020P」、厚さ1.5mm、50mm×150mm)の一方の面全体に貼り合わせて有底孔を形成し、23℃の環境下において1時間静置した。次いで、熱硬化性樹脂充填材(山栄化学製「PHP-900 IR-6P」、エポキシ樹脂)を、形成した有底孔にスキージを用いて充填した後、恒温槽を用いて温度110℃で1時間加熱し、さらに、温度150℃で30分加熱することで、熱硬化性樹脂充填材を硬化させた。恒温槽から取り出した評価サンプルを室温まで冷却した後、貼り合わせた粘着テープを剥がし、粘着テープが貼られていた充填材の表面と銅板の表面を目視で観察し、糊残りの有無を調べた。
(対樹脂糊残り)
充填材の表面に糊残りなく、樹脂および粘着テープの破損がなかったものを「○」、糊残りがある、もしくは、樹脂および粘着テープの破損があるものを「×」とした。
(対銅板糊残り)
銅板の表面に糊残りがなかったものを「○」、銅板の表面の一部に糊残りがあるが、実用上問題ないものを「△」、銅板の表面の全面にわたって糊残りがあるものを「×」とした。
【0075】
(樹脂漏れ)
上記糊残り評価において粘着テープを剥がした銅板の表面をマイクロスコープ(キーエンス製、VHX-1000)で100倍拡大観察し、樹脂漏れを評価した。銅板に樹脂がにじみ出しているものを「×」、銅板に樹脂がにじみ出していないものを「○」とした。
【0076】
【0077】
【0078】
実施例1~7、比較例1~6から、粘着テープの粘着剤層が、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体とエポキシ系架橋剤とを含む粘着剤組成物で構成され、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体の酸価が、4.0mg/KOH以上40mg/KOH以下であり、カルボキシ基を有する(メタ)アクリル系共重合体のカルボキシ基のモル量(a)とエポキシ系架橋剤のエポキシ基のモル量(b)との比(b/a)が、0.3以上1.1以下であり、粘着剤層の23℃における銅板に対する剥離力が、0.3N/25mm以上20N/25mm以下であることで、熱硬化性樹脂の充填材を孔埋め加工する際の、孔を埋める充填材の漏れを抑制できるとともに、粘着テープを糊残りなく容易に剥離することができ、さらに導体回路の変色を抑制することができることがわかる。
【0079】
比較例1および比較例2は、アクリル系共重合体の酸価が40mg/KOHを超えるため、粘着剤層が熱硬化性樹脂と反応して強固に接着し、糊残りが発生した。また比較例1は、加熱後の剥離力が過度に上昇したため、銅板から容易に剥離することが困難であった。比較例3は、モル比(b/a)が0.3未満であるため、粘着剤層が熱硬化性樹脂と反応して強固に接着し、糊残りが発生した。比較例4は、モル比(b/a)が1.1を超えるため、粘着剤層が熱硬化性樹脂と反応して強固に接着し、糊残りが発生した。また、銅板に対して糊残りが発生した。比較例5は、23℃における銅板への粘着力が0.3N/25mm未満であるため、樹脂漏れが発生した。比較例6は、アクリル系共重合体が水酸基ヒドロキシル基含有アクリル系共重合体であり、架橋剤がイソシアネート系であることから、銅板が酸化し変色した。また、23℃における銅板への粘着力が0.3N/25mm未満であるため、樹脂漏れが発生した。