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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149945
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】金属樹脂接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20220929BHJP
   B29C 65/06 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
B23K20/12 340
B23K20/12 360
B23K20/12 344
B29C65/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052308
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100116861
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 義博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明
(72)【発明者】
【氏名】木下 大
(72)【発明者】
【氏名】野嶋 賢吾
【テーマコード(参考)】
4E167
4F211
【Fターム(参考)】
4E167AA06
4E167AA08
4E167AA27
4E167AA29
4E167BG02
4E167BG05
4E167BG06
4E167BG13
4E167BG16
4E167BG25
4F211AD03
4F211AD16
4F211AD19
4F211AG03
4F211AR02
4F211AR06
4F211TA01
4F211TC03
4F211TD11
4F211TN20
4F211TQ06
4F211TQ09
(57)【要約】
【課題】接着剤やリベットを使わず、短時間で金属とFRPとを接合し、長期的な接合信頼性も維持できる技術を提供すること。
【解決手段】 金属板とFRP板とをずれないように重ね合わせて保持する固定部13と、金属板側から押し当たり、回転による摩擦熱により金属板とFRP板とを接合する工具21と、工具21を軸を中心に回転させる把持回転部22と、FRP板側からあてがわれ工具21の押圧を受け止める載置面11と、工具21を金属板へ押し当てるまたは金属板から離す昇降装置12と、押当部分の温度の情報に加えて、工具21の回転数の情報および/または押当圧力の情報および/または室温の情報を取得する受信部33と、取得した情報に基づいて、昇降装置12および/または把持回転部22を制御して、金属板とFRP板とを接合する処理指示部35と、を具備した接合装置1
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板とFRP板とを接合する装置であって、
金属板とFRP板とをずれないように重ね合わせて保持する保持手段と、
金属板側から押し当たり、回転による摩擦熱により金属板とFRP板とを接合する押当棒体と、
押当棒体を棒体の軸を中心に回転させる回転手段と、
FRP板側からあてがわれ、FRP板と金属板とが間に入った状態で、押当棒体の押圧を受け止める裏当手段と、
押当棒体と裏当手段とを相対的に近づけまたは遠ざけ、回転を伴った押当棒体を金属板へ押し当てるまたは金属板から離す間隔手段と、
押当部分の温度の情報ないし温度推移に関する情報に加えて、押当棒体の回転数の情報ないし回転数の推移に関する情報、および/または、押当部分にかかる圧力である押当圧力の情報ないし押当圧力の推移に関する情報、および/または、室温の情報ないし室温の推移に関する情報を取得する情報取得手段と、
情報取得手段による取得した情報に基づいて、間隔手段および/または回転手段を制御して、押当棒体を押し当てた押当部分の金属板とFRP板とを接合する制御手段と、
を具備したことを特徴とする金属樹脂接合装置。
【請求項2】
金属板は、所定厚みのアルミニウムもしくはアルミニウム合金、または、所定厚みの銅もしくは銅合金であり、
FRP板は、所定厚みの炭素繊維強化プラスチック板であることを特徴とする請求項1に記載の金属樹脂接合装置。
【請求項3】
押当棒体は、金属板に対して垂直に配向される円柱形の鋼棒であって、端部が円形の面として金属板に押し当たるものであることを特徴とする請求項1に記載の金属樹脂接合装置。
【請求項4】
金属板の厚みとFRP板の厚みとを変えて予めおこなった、押当部分の温度推移に関する情報と、回転数の推移に関する情報と、押当圧力の推移に関する情報と、接合強度とに関する情報を組にして記憶した記憶手段を具備し、
制御手段は、記憶手段に記憶された情報に基づき押当を終了させることを特徴とする請求項1、2または3に記載の金属樹脂接合装置。
【請求項5】
各手段をマシニングセンタに実装したことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の金属樹脂接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板と樹脂板とを接着剤を用いずに接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な社会の意識が高まり、例えば自動車分野ではEVが着目され、部品も一層の軽量化、低コストの生産技術が必要とされてきている。
軽量化、低コスト化に関しては、素材の選択、製造工程の簡素化効率化の方向性があり、たとえば、金属フレームとFRPとをうまく組み合わせて室内空間を構築する例が挙げられる。ここで、このような金属板と樹脂板とを接合する方法としては、リベット留め、接着剤留めがある。
【0003】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
リベット留めやボルト留めの場合は、穴開けにより応力が集中したり応力が残存したりする場合があり、毎日の温度変化や真夏の炎天下での放置、真冬の寒冷下での放置が何年にもわたり、加えて、加速減速振動にもさらされ、また、リベットやボルトによる重量増が生じるため好ましくない、という問題点があった。また、締結工程が必ず必要となるので、生産性が一定以上にはよくならない、という問題点があった。
【0004】
接着剤については、基本的に有機材料であるので、上記の様に、過酷な環境下に長期間さらされると、接合強度の信頼性が維持できない、という問題点があった。また、接着に際しては、塗布工程、密着時間の確保、が一つのモノコックを構築するにあたり多数回必要となるため、こちらも生産性が一定以上にはよくならない、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-170975
【特許文献2】特開2017-159517
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記に鑑みてなされたものであって、接着剤やリベットを使わず、短時間で金属とFRPとを接合し、長期的な接合信頼性も維持できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の金属樹脂接合装置は、金属板とFRP板とを接合する装置であって、金属板とFRP板とをずれないように重ね合わせて保持する保持手段と、金属板側から押し当たり、回転による摩擦熱により金属板とFRP板とを接合する押当棒体と、押当棒体を棒体の軸を中心に回転させる回転手段と、FRP板側からあてがわれ、FRP板と金属板とが間に入った状態で、押当棒体の押圧を受け止める裏当手段と、押当棒体と裏当手段とを相対的に近づけまたは遠ざけ、回転を伴った押当棒体を金属板へ押し当てるまたは金属板から離す間隔手段と、押当部分の温度の情報ないし温度推移に関する情報に加えて、押当棒体の回転数の情報ないし回転数の推移に関する情報、および/または、押当部分にかかる圧力である押当圧力の情報ないし押当圧力の推移に関する情報、および/または、室温の情報ないし室温の推移に関する情報を取得する情報取得手段と、情報取得手段による取得した情報に基づいて、間隔手段および/または回転手段を制御して、押当棒体を押し当てた押当部分の金属板とFRP板とを接合する制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0008】
すなわち、請求項1にかかる発明は、接合部分(押当部分)の温度だけでなく、回転数や押当圧力や室温により補正をおこない、接合信頼性を向上させることができる。
【0009】
金属板は、アルミニウムやアルミニウム合金、銅や銅合金、その他の金属板とすることができる。軽量とする場合は、軽金属を採用する。
FRP(繊維強化プラスチック)板は、そのマトリクスとして、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂やエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、メチルメタアクリレートとする例を挙げることができる。繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維、ボロン繊維、アラミド繊維などの例を挙げることができる。
なお、板は必ずしも平板に限定されず、曲率がついていても、接合を望む押当部分の金属曲板とFRP曲板とが接触するものであれば特に限定されない。厚みはそれぞれ1mm~5mmの範囲とすることができる。
押当棒体の素材としては、金属板より融点や軟化点が高い金属とするのが好ましいが、摩滅せず耐熱性があれば特に限定されず、例えばセラミクスも採用することができる。棒の断面は円形の他、正多角形としてもよい。また、端面は平面のほか球面や切頭錐としてもよい。押当棒体は押当部分の金属板面の法線方向に配向して押し当たる、すなわち、直立するような姿勢で進入するほか、仕様の態様により、角度がついて進入してもよい。太さは長径が4mm~20mm、長さは長径の1倍~10倍とすることができる。また、回転数は、300回転/min~4000回転/min、押当圧力は4Mpa~16MPaとすることができる。
裏当手段は、載置台である態様も当然に含む。
温度推移、回転数の推移、押当圧力の推移、室温の推移、における推移は、時間変化や履歴と言い換えることができる。例えば、一つ前の接合処理の熱が残存していてこれが影響することもあるため、推移に関する情報には、以前の処理に関する情報が含まれていてもよいものとする。
間隔手段による近づけまたは遠ざけは、押当棒体側が移動する態様であっても、裏当手段が移動する態様であってもよい。
押当部分の温度の情報とは、接触箇所の温度に加え、押当棒体(の先端)の温度や、接触箇所近傍の金属板温度が含まれていてもよい。
制御手段は、押当部分の温度が金属板の融点未満FRP板の融点以上の範囲となるように制御して金属板とFRP板とを接合する。接合強度は、主として、金属板表面の微視的な凹凸にFRPのマトリクス成分が密に侵入して形成されるメカニカルロックに由来するものと考えられる。なお接合強度は、接合面の法線方向に引っ張る(剥離する)引張強度や、接線方向(接合面が広がる方向、法線方向に垂直な方向)に引っ張る剪断強度など、所望の要求強度に応じた強度を採用すればよい。
【0010】
請求項2に記載の金属樹脂接合装置は、請求項1に記載の金属樹脂接合装置において、金属板は、所定厚みのアルミニウムもしくはアルミニウム合金、または、所定厚みの銅もしくは銅合金であり、FRP板は、所定厚みの炭素繊維強化プラスチック板であることを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2にかかる発明は、アルミに関しては、軽量高強度な複合材(マルチマテリアル)を得ることができる。また、銅に関しては、短時間または相対的に溶融ないし軟化しにくいマトリクスのFRPであっても効果的・効率的に複合材を得ることができる。
【0012】
請求項3に記載の金属樹脂接合装置は、請求項1に記載の金属樹脂接合装置において、押当棒体は、金属板に対して垂直に配向される円柱形の鋼棒であって、端部が円形の面として金属板に押し当たるものであることを特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項3にかかる発明は、制御を容易化することができる。
【0014】
請求項4に記載の金属樹脂接合装置は、請求項1、2または3に記載の金属樹脂接合装置において、金属板の厚みとFRP板の厚みとを変えて予めおこなった、押当部分の温度推移に関する情報と、回転数の推移に関する情報と、押当圧力の推移に関する情報と、接合強度とに関する情報を組にして記憶した記憶手段を具備し、制御手段は、記憶手段に記憶された情報に基づき押当を終了させることを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項4にかかる発明は、自動制御による接合処理を実現できる。適宜機械学習や人工知能を組み込むまたは連動した処理としてもよい。
押当を終了させる、とは、押当棒体を金属板から離す、または、回転を止めることをいう。
回転数の推移に関する情報や、押当圧力の推移に関する情報には、時間的に一定であることも含まれる。
【0016】
請求項5に記載の金属樹脂接合装置は、請求項1~4のいずれか一つに記載の金属樹脂接合装置において、各手段をマシニングセンタに実装したことを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項5にかかる発明は、金属板と樹脂板の接合工程だけでなく、その前段の加工や処理、その後段の加工や処理をおこなうことができ、一連の作業を全自動で処理させることも可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、接着剤やリベットを使わず、短時間で金属とFRPとを接合し、長期的な接合信頼性も維持できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の接合装置の構成例を示した説明図である。
図2】3回の試験における試料の表面性状および剪断強度を示した結果である。
図3】3回の試験における押当部分の温度の上昇の仕方を示したグラフである。
図4】室温と押当部分の温度の上昇の仕方を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。ここではマシニングセンタに本発明の金属板とFRP板とを接合する機能を持たせてこれを金属樹脂接合装置として説明するものとする。このため、マシニングセンタには、フライス盤などの各構成、機能部が構築されているが、以降では、金属樹脂接合装置として改めて各手段や機能部を命名し説明するものとする。説明の便宜上金属樹脂接合装置を単に接合装置と適宜称する。また、金属板としてアルミニウム平板、FRP板としてCFRP平板を選択した例とする。
【0021】
図1は、接合装置の構成例を示した説明模式図である。なお、説明の便宜上縮尺は適宜変更して描画してある。
接合装置1は、台座部10と、工具回転部20と、制御部30と、を主要な構成とする。
【0022】
台座部10は、載置面11と昇降装置12と固定部13と荷重センサ14と温度センサ15aとを有する。
載置面11には、CFRP平板とアルミニウム平板とが面接触した状態で、CFRP平板を下にして載置される。固定部13は、載置面11に植設された複数本の規制棒からなり、平板が載置面11上を移動しないようにしている。
昇降装置12は、載置面11を鉛直方向に上下させ、後述するように工具21との距離を縮めたり離したりする。具体的にはシリンダを駆動させ伸縮をおこなうが、汎用技術を用いることができるのでその詳細な説明は省略する。
荷重センサ14は、載置面11の下に設けられ、二枚の平板が載置面11に乗った状態を0点にして、工具21からの押当圧力を逐次制御部30に送信する。
温度センサ15aは、工具21が押したる直下の載置面11に設けられ、CFRP板の温度を逐次制御部30に送信する。温度の取得方法は特に限定されないが、たとえば熱電対を用いる例を挙げることができる。
【0023】
工具回転部20は、工具21と把持回転部22と温度センサ15bとを有する。
工具21は、所定長さの円柱形の圧延鋼材であって鉛直に配向され、下端面が軸に対して垂直に形成されている。
把持回転部22は、円柱の上端側を把持し、工具21を軸に沿って回転させる。なお、回転数の経時変化については逐次制御部30に送信する。
工具21は、昇降装置12による平板のせり上がりにより、下端の円形端面がアルミニウム平板側から回転しながら面接触して押し当たり、摩擦熱により押当箇所の平板同士が接合される。
温度センサ15bは、工具21の下端付近の温度を検出して逐次制御部30に送信する。
【0024】
制御部30は、室温測定器31と、領域温度測定器32と、受信部33と、記憶部34と、処理指示部35と、を有する。
室温測定器31は、接合装置1の設置場所の室温を測定し、受信部33に測定値を逐次送信する。
領域温度測定器32はサーモグラフィであって、工具21とアルミニウム平板との接触面(押当部分)を中心として所定領域各点の温度を測定して受信部33に逐次データを送信する。
受信部33は、室温測定器31、領域温度測定器32、台座部10、工具回転部20からの情報を受信する。具体的には、室温測定器31から室温の情報を、領域温度測定器32から押当部分を中心とした領域の温度の情報を、荷重センサ14から押当圧力の情報を、把持回転部22から押当圧力の情報を、温度センサ15aから押当部分直下のCFRP版の温度の情報を、温度センサ15bから押当部分直上の工具21の温度の情報を、それぞれ入力する。
記憶部34は、アルミニウム平板の厚みとCFRP平板の厚みとを変えて予めおこなった、押当部分の温度推移に関する情報と、回転数の推移に関する情報と、押当圧力の推移に関する情報と、接合強度とに関する情報を組にして記憶している。なお接合強度は別途剥離試験をおこない引張強度を接合強度として記憶させる。
処理指示部35は、受信部33に入力された各種情報ないし当該情報の時間推移に基づき、昇降装置12と把持回転部22とを制御して、工具21を押し当てた押当部分の金属板とFRP板とを接合し、また、押当を終了させる。このとき、記憶部34に記憶された情報も加味することにより、より適正な処理を実現できる。温度センサ15a、15bの情報は、領域温度測定器32による温度情報の校正や補正に用いることができる。なお、処理指示部35の処理アルゴリズムは適宜設定すればよく、機械学習やAI技術により狙いの接合強度が出るようにする。
【0025】
次に、具体的な評価試験について説明する。
まず、アルミニウム平板(A1050;30mm×100mm×2mm)と、CFRP平板(PA6 3K(一村産業株式会社製)融点215℃;30mm×100mm×1mm)を用意し、重ね合わせ長さを45mmとして重ね合わせ、載置面11に載置した。
工具21は、SS400材のΦ10mm×60mmとした。
領域温度測定器32により押当部分の温度を逐次測定し、110℃に至ったところで回転を止めることとし、押当圧力500N、回転数1050rpmとして処理指示部35が各所を制御した。
評価試験は連続して3回行い、表面性状および剪断強度を測定した。
図2は、3回の試験における試料の表面性状および剪断強度を示した結果である。なお剪断強度については、試料片を長手方向に引っ張り、最大強度を重ね合わせ面積で割った値とした。
一回目は、剪断強度は26kPaでありアルミに若干の変形、樹脂に溶融再凝固痕が認められた。二回目は、剪断強度は441kPaでありアルミに大きな変形、樹脂に溶融再凝固痕が認められた。三回目は、剪断強度は894kPaでありアルミには円形の孔があき、樹脂にもおおきな溶融再凝固痕が認められた。
図3は、温度の上昇の仕方を示したグラフである。回を重ねる毎に、温度の上昇の仕方が早まっていくのを確認した。これは、工具21や載置面11等に熱が残存した結果であると思われる。なお、本試験では数十秒で設定温度に至っており、短時間での接合が可能であることが確認できた。
また、別途、4mm厚のCFRP平板に対して、Φ10mmのSS400丸棒を、回転数318rpmで押し当てた時の表面温度の上昇の時間変化を、室温が10℃と25℃の場合について測定した。結果を図4に示す。室温により、温度上昇の仕方が大きく異なることが確認できた。
従って、接合装置1は、適正な接合ないし所望の接合となるような制御には、周囲の温度や工具等の温度履歴の情報が必要であることを確認した。
【0026】
以上のように、本発明によれば、接着剤やリベットを使わず、短時間で金属とFRPとを接合し、接着剤不使用のため長期的な接合信頼性も維持できる技術を提供することができた。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、自動車産業分野、航空産業分野、ロケットや精製打上などの宇宙開発分野に適用できる。体内に埋め込む人工骨代替素材としての利用も可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 接合装置
10 台座部
11 載置面
12 昇降装置
13 固定部
14 荷重センサ
15a 温度センサ
15b 温度センサ
20 工具回転部
21 工具
22 把持回転部
30 制御部
31 室温測定器
32 領域温度測定器
33 受信部
34 記憶部
35 処理指示部
図1
図2
図3
図4