(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022149956
(43)【公開日】2022-10-07
(54)【発明の名称】炭化珪素質多孔体、ハニカム構造体、電気加熱触媒および炭化珪素質多孔体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/06 20060101AFI20220929BHJP
C04B 35/577 20060101ALI20220929BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20220929BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20220929BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20220929BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20220929BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220929BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220929BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20220929BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20220929BHJP
【FI】
C04B38/06 E
C04B35/577
B01J35/04 301F
B01J27/224 A ZAB
B01J32/00
F01N3/20 K
F01N3/24 L
F01N3/28 301P
F01N3/10 A
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021052320
(22)【出願日】2021-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎司
(72)【発明者】
【氏名】阿閉 恭平
(72)【発明者】
【氏名】冨田 崇弘
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091BA07
3G091CA03
3G091GA06
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3G091GB01Z
3G091GB03Z
3G091GB17Z
4D148AA06
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4D148CC53
4G169AA01
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4G169EA19
4G169EA26
4G169EB15X
4G169EB15Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC22X
4G169EC22Y
4G169ED10
4G169EE01
4G169EE03
(57)【要約】
【課題】高耐酸化性を有する炭化珪素質多孔体を提供する。
【解決手段】炭化珪素質多孔体は、β-SiC粒子と、Si粒子と、金属シリサイド粒子とを含む。β-SiC粒子の最大粒径は15μm以上である。Si粒子の含有率は10質量%以上である。Si粒子の最大粒径は40μm以下である。また、Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜が設けられる。これにより、高耐酸化性を有する(すなわち、高温酸化雰囲気下に曝露された後の抵抗変化率が小さい)炭化珪素質多孔体を提供することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素質多孔体であって、
β-SiC粒子と、
Si粒子と、
金属シリサイド粒子と、
を含み、
前記β-SiC粒子の最大粒径は15μm以上であり、
前記Si粒子の含有率は10質量%以上であり、
前記Si粒子の最大粒径は40μm以下であり、
前記Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜が設けられることを特徴とする炭化珪素質多孔体。
【請求項2】
請求項1に記載の炭化珪素質多孔体であって、
前記金属シリサイド粒子の含有率は5質量%以上であり、
前記金属シリサイド粒子の最大粒径は20μm以下であることを特徴とする炭化珪素質多孔体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炭化珪素質多孔体であって、
AlおよびBのうち1種以上をさらに含むことを特徴とする炭化珪素質多孔体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭化珪素質多孔体であって、
前記金属シリサイド粒子はニッケルシリサイドであることを特徴とする炭化珪素質多孔体。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の炭化珪素質多孔体であって、
室温における体積抵抗率は、0.01Ω・cm以上かつ1.0Ω・cm未満であることを特徴とする炭化珪素質多孔体。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の炭化珪素質多孔体であって、
950℃の大気中に50時間曝露した後の体積抵抗率の変化率は100%以下であることを特徴とする炭化珪素質多孔体。
【請求項7】
ハニカム構造体であって、
筒状外壁と、
前記筒状外壁の内部を複数のセルに仕切る格子状の隔壁と、
を備え、
前記筒状外壁および前記隔壁は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の炭化珪素質多孔体を含んで構成されることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項8】
エンジンから排出される排ガスの浄化処理を行う電気加熱触媒であって、
請求項7に記載のハニカム構造体と、
前記ハニカム構造体の外側面に固定されて前記ハニカム構造体に電流を付与する一対の電極部と、
を備えることを特徴とする電気加熱触媒。
【請求項9】
炭化珪素質多孔体の製造方法であって、
Si、C、および、金属シリサイドの原料金属を含む原料粉末を成形して焼成することにより焼成体を得る工程と、
前記焼成体に酸化処理を施すことにより炭化珪素質多孔体を得る工程と、
を備え、
前記炭化珪素質多孔体は、
β-SiC粒子と、
Si粒子と、
金属シリサイド粒子と、
を含み、
前記β-SiC粒子の最大粒径は15μm以上であり、
前記Si粒子の含有率は10質量%以上であり、
前記Si粒子の最大粒径は40μm以下であり、
前記Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜が設けられることを特徴とする炭化珪素質多孔体の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の炭化珪素質多孔体の製造方法であって、
前記原料金属はNiであり、
前記原料金属の平均粒径は5μm以下であることを特徴とする炭化珪素質多孔体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化珪素質多孔体およびその製造方法、当該炭化珪素質多孔体を含んで構成されるハニカム構造体、並びに、当該ハニカム構造体を備える電気加熱触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれるHC 、CO 、NOx等の有害物質の浄化処理のため、柱状のハニカム構造体等に触媒を担持させた触媒コンバータが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ディーゼル排ガス浄化用のフィルター(DPF)として利用可能なハニカム構造体が開示されている。当該ハニカム構造体は、1質量%~35質量%のニッケルシリサイドまたはジルコニウムシリサイド、および、0.5質量%~10質量%のアルミナ(Al2O3)を含有する炭化珪素質多孔体により構成されている。当該炭化珪素質多孔体の気孔率は38%~80%であり、これにより、DPFにおける高いガス透過性能を実現している。また、当該炭化珪素質多孔体では、主成分として含有されているβ-SiCの少なくとも一部の形状が、粒子径10μm以上の粒子状とされている。これにより、炭化珪素質多孔体の強度向上が図られている。特許文献2では、特許文献1のアルミナに代えて、酸化ホウ素(B2O3)換算で0.1質量%~10質量%のホウ素(B)を含有する炭化珪素質多孔体により構成されたハニカム構造体が開示されている。
【0004】
上述の触媒コンバータでは、排ガスの浄化処理の際に、触媒が活性温度まで昇温されている必要があるが、エンジンの始動直後等は触媒コンバータの温度が低いため、排ガスの浄化性能が低下するおそれがある。特に、プラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HV)では、モータのみによる走行が行われることにより、触媒の温度が低下しやすい。そこで、導電性の触媒コンバータに一対の電極を接続し、通電によって触媒コンバータ自体を発熱させることにより触媒を予熱する電気加熱触媒(EHC:Electrically Heated Catalyst)が利用されている。
【0005】
例えば、特許文献3では、電気加熱触媒に利用可能なハニカム構造体として、骨材としての炭化珪素粒子と、当該炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素とを含有し、体積電気抵抗(すなわち、体積抵抗率)が1Ω・cm~400Ω・cmであるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5193804号公報
【特許文献2】特許第5053981号公報
【特許文献3】特許第5735428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1および特許文献2のハニカム構造体では、SiC粒子の粒径があまり大きくないため、導電パスとなるSiC粒子同士の結合部分が細く括れている可能性が高い。また、当該ハニカム構造体では、SiC粒子同士の結合以外で導電パスを形成する構成はほとんど含まれていない。したがって、ハニカム構造体が高温酸化雰囲気に曝された場合、SiC粒子同士の細い結合部分が酸化されて導電パスが遮断され、体積抵抗率が大きく増大するおそれがある。このため、当該ハニカム構造体は、電気加熱触媒に転用することは難しい。また、近年、特許文献3のハニカム構造体のような電気加熱触媒に利用されるハニカム構造体では、体積抵抗率の更なる低減が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、高耐酸化性を有する炭化珪素質多孔体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい一の形態に係る炭化珪素質多孔体は、β-SiC粒子と、Si粒子と、金属シリサイド粒子と、を含む。前記β-SiC粒子の最大粒径は15μm以上である。前記Si粒子の含有率は10質量%以上である。前記Si粒子の最大粒径は40μm以下である。前記Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜が設けられる。
【0010】
好ましくは、前記金属シリサイド粒子の含有率は5質量%以上であり、前記金属シリサイド粒子の最大粒径は20μm以下である。
【0011】
好ましくは、前記炭化珪素質多孔体は、AlおよびBのうち1種以上をさらに含む。
【0012】
好ましくは、前記金属シリサイド粒子はニッケルシリサイドである。
【0013】
好ましくは、室温における体積抵抗率は、0.01Ω・cm以上かつ1.0Ω・cm未満である。
【0014】
好ましくは、950℃の大気中に50時間曝露した後の体積抵抗率の変化率は100%以下である。
【0015】
本発明は、ハニカム構造体にも向けられている。本発明の好ましい一の形態に係るハニカム構造体は、筒状外壁と、前記筒状外壁の内部を複数のセルに仕切る格子状の隔壁と、を備える。前記筒状外壁および前記隔壁は、上述の炭化珪素質多孔体を含んで構成される。
【0016】
本発明は、エンジンから排出される排ガスの浄化処理を行う電気加熱触媒にも向けられている。本発明の好ましい一の形態に係る電気加熱触媒は、上述のハニカム構造体と、前記ハニカム構造体の外側面に固定されて前記ハニカム構造体に電流を付与する一対の電極部と、を備える。
【0017】
本発明は、炭化珪素質多孔体の製造方法にも向けられている。本発明の好ましい一の形態に係る炭化珪素質多孔体の製造方法は、Si、C、および、金属シリサイドの原料金属を含む原料粉末を成形して焼成することにより焼成体を得る工程と、前記焼成体に酸化処理を施すことにより炭化珪素質多孔体を得る工程と、を備える。前記炭化珪素質多孔体は、β-SiC粒子と、Si粒子と、金属シリサイド粒子と、を含む。前記β-SiC粒子の最大粒径は15μm以上である。前記Si粒子の含有率は10質量%以上である。前記Si粒子の最大粒径は40μm以下である。前記Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜が設けられる。
【0018】
好ましくは、前記原料金属はNiであり、前記原料金属の平均粒径は5μm以下である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、高耐酸化性を有する炭化珪素質多孔体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一の実施の形態に係る電気加熱触媒の断面図である。
【
図2】ハニカム構造体の製造の流れを示す図である。
【
図3】実施例のハニカム構造体のSEM画像である。
【
図4】比較例のハニカム構造体のSEM画像である。
【
図5】比較例のハニカム構造体のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る電気加熱触媒1(EHC:Electrically Heated Catalyst)を示す断面図である。電気加熱触媒1は、一方向に長い柱状部材であり、
図1では、電気加熱触媒1の長手方向に垂直な断面を示している。電気加熱触媒1は、自動車等のエンジンから排出される排ガスの浄化処理を行う。
【0022】
電気加熱触媒1は、ハニカム構造体2と、一対の電極層31と、一対の電極部41とを備える。ハニカム構造体2、一対の電極層31、および、一対の電極部41は導電性を有する。ハニカム構造体2は、ハニカム構造を有する略円柱状の部材であり、電気加熱触媒1において触媒を担持する担体である。一対の電極層31は、ハニカム構造体2の外側面に固定される。一対の電極層31は、ハニカム構造体2の長手方向に延びる中心軸J1を挟んで対向して配置される箔状または板状の部材である。各電極層31は、ハニカム構造体2の外側面に沿って設けられる。
【0023】
一対の電極部41は、接合部42により一つの電極層31の表面に固定される。換言すれば、一対の電極部41は、一対の電極層31を介してハニカム構造体2の外側面に間接的に固定される。電極部41は、例えば、略帯状の部材である。電極部41は、ハニカム構造体2に電力を供給する電極端子の一部である。電極部41は、図示省略の電源に接続される。当該電源から電極部41を介して一対の電極層31間に電圧が印加されると、ハニカム構造体2に電流が流れ、ハニカム構造体2はジュール熱により発熱する。これにより、ハニカム構造体2に担持されている触媒が予熱される。電気加熱触媒1に印加される電圧は、例えば12V~900Vであり、好ましくは64V~600Vである。なお、当該電圧は適宜変更されてよい。
【0024】
ハニカム構造体2は、内部が複数のセル23に仕切られたセル構造体である。ハニカム構造体2は、筒状外壁21と、隔壁22とを備える。筒状外壁21は、長手方向(すなわち、
図1中の紙面に垂直な方向)に延びる筒状の部位である。長手方向に垂直な筒状外壁21の断面形状は、略円形である。当該断面形状は、楕円形や多角形等の他の形状であってもよい。
【0025】
隔壁22は、筒状外壁21の内部に設けられ、当該内部を複数のセル23に仕切る格子状の部材である。複数のセル23はそれぞれ、ハニカム構造体2の略全長に亘って長手方向に延びる空間である。各セル23は、排ガスが流れる流路であり、排ガスの浄化処理に利用される触媒は隔壁22に担持される。長手方向に垂直な各セル23の断面形状は、例えば、略矩形である。当該断面形状は、多角形または円形等の他の形状であってもよい。排ガスがセル23を流れる際の圧力損失低減の観点からは、当該断面形状は四角形または六角形であることが好ましい。また、ハニカム構造体2の構造強度向上および加熱均一性の観点からは、当該断面形状は長方形であることが好ましい。複数のセル23は、原則として同じ断面形状を有する。複数のセル23には、異なる断面形状のセル23が含まれてもよい。
【0026】
筒状外壁21の長手方向の長さは、例えば、30mm~200mmである。筒状外壁21の外径は、例えば、25mm~120mmである。ハニカム構造体2の底面の面積(すなわち、ハニカム構造体2の底面において筒状外壁21に囲まれる領域の面積)は、ハニカム構造体2の耐熱性向上の観点から、2000mm2~ 20000mm2であることが好ましく、5000mm2~ 15000mm2であることがさらに好ましい。筒状外壁21の厚さは、セル23を流れる流体の流出防止、ハニカム構造体2の強度向上、および、筒状外壁21と隔壁22との強度バランスの観点から、例えば0.1mm~1.0mmであり、好ましくは0.15mm~0.7mmであり、より好ましくは0.2mm~0.5mmである。
【0027】
隔壁22の長手方向の長さは、筒状外壁21と略同じである。隔壁22の厚さは、ハニカム構造体2の強度向上、および、排ガスがセル23を流れる際の圧力損失低減の観点から、例えば0.1mm~0.3mmであり、好ましくは0.15mm~0.25mmである。
【0028】
ハニカム構造体2のセル密度(すなわち、長手方向に垂直な断面における単位面積当たりのセル23の数)は、隔壁22の触媒担持面積の増大、および、排ガスがセル23を流れる際の圧力損失低減の観点から、例えば、40セル/cm2~150セル/cm2であり、好ましくは70セル/cm2~100セル/cm2である。当該セル密度は、ハニカム構造体2の底面における筒状外壁21の内周縁よりも内側の領域の面積により、ハニカム構造体2の全セル数を除算することにより求められる。セル23の大きさ、数、セル密度等は、様々に変更されてよい。
【0029】
ハニカム構造体2の筒状外壁21および隔壁22は、以下に説明する炭化珪素質多孔体を含んで構成される。本実施の形態では、筒状外壁21および隔壁22は、実質的に当該炭化珪素質多孔体のみにより構成される。
【0030】
当該炭化珪素質多孔体は、主成分が炭化珪素(SiC)である多孔質セラミックスである。炭化珪素質多孔体は、β-SiC粒子と、Si粒子(すなわち、珪素粒子)と、金属シリサイド粒子とを含む複合焼結体である。β-SiC粒子は、炭化珪素質多孔体の骨材である。Si粒子は、β-SiC粒子を結合させる結合材(すなわち、マトリックス)である。炭化珪素質多孔体では、複数のβ-SiC粒子が、β-SiC粒子間に細孔を形成するように、Si粒子によって結合されていることが好ましい。
【0031】
炭化珪素質多孔体におけるβ-SiC粒子の含有率は、例えば30質量%以上であり、好ましくは50質量%以上である。また、β-SiC粒子の含有率は、例えば90質量%以下であり、好ましくは70質量%以下である。
【0032】
炭化珪素質多孔体におけるβ-SiC粒子の最大粒径は、15μm以上であり、好ましくは20μm以上である。このように、β-SiC粒子の最大粒径を大きくする(すなわち、β-SiC粒子を粗大化する)ことにより、導電パスを形成するβ-SiC粒子同士の結合部が太くなる。したがって、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率が低くなる。また、β-SiC粒子同士の結合部が酸化された場合であっても、導電パスの遮断が生じにくくなる。したがって、炭化珪素質多孔体が高温酸化雰囲気に曝露された場合であっても、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率の変化が抑制される。すなわち、炭化珪素質多孔体の耐酸化性が向上される。なお、β-SiC粒子の最大粒径の上限は特に限定されないが、現実的な範囲として、例えば120μm以下である。
【0033】
β-SiC粒子の最大粒径は、以下の方法で求めた値である。まず、炭化珪素質多孔体の任意の断面を、任意の倍率(例えば、500倍)にて電子顕微鏡で観察し、視野内における最大粒子(すなわち、視野内において最大の面積を有する粒子)を抽出する。続いて、当該最大粒子の長径および短径を求める。具体的には、当該最大粒子の外周の2点を結び、かつ、重心を通る最大の径を長径として求める。また、当該最大粒子の外周の2点を結び、かつ、重心を通る最小の径を短径として求める。長径および短径の測定には、例えばMedia Cybernetics社製の画像解析ソフトウェア「Image Pro 9」を用いることができる。そして、長径と短径との算術平均を当該最大粒子の粒径とする。次に、炭化珪素質多孔体の上記断面において視野の位置を変更し、上記と同様に最大粒子の粒径を求める。そして、炭化珪素質多孔体の上記断面上の所定数(2以上であり、例えば20)の視野において最大粒子の粒径をそれぞれ取得し、当該所定数の最大粒子の粒径の算術平均をβ-SiC粒子の最大粒径とする。
【0034】
炭化珪素質多孔体におけるSi粒子の含有率は、10質量%以上であり、好ましくは12質量%以上である。また、Si粒子の含有率は、例えば70質量%以下であり、好ましくは50質量%以下である。炭化珪素質多孔体におけるSi粒子の最大粒径は、例えば5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。また、Si粒子の最大粒径は、40μm以下であり、好ましくは20μm以下である。Si粒子の最大粒径は、上述のβ-SiC粒子の最大粒径と同様の方法により求められる。
【0035】
Si粒子の含有率が10質量%以上とされ、Si粒子の最大粒径が40μm以下とされることにより、炭化珪素質多孔体においてSi粒子の分布の均一性が向上され、略均等に分布したSi粒子により、β-SiC粒子同士を繋ぐ導電パスが形成される。これにより、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率がさらに低くなる。また、炭化珪素質多孔体が高温酸化雰囲気に曝露された場合であっても、酸化による導電パスの遮断が抑制され、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率の変化がさらに抑制される。すなわち、炭化珪素質多孔体の耐酸化性がさらに向上される。
【0036】
炭化珪素質多孔体では、Si粒子の表面に酸化物被膜が設けられる。当該酸化物被膜の厚さは、0.01μm以上かつ5μm以下である。これにより、炭化珪素質多孔体が高温酸化雰囲気に曝露された場合であっても、Si粒子の酸化が抑制され、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率の変化がより一層抑制される。すなわち、炭化珪素質多孔体の耐酸化性がより一層向上される。上記酸化物被膜の厚さは、好ましくは0.05μm以上である。また、酸化物被膜の厚さは、好ましくは1.0μm以下である。
【0037】
酸化物被膜の厚さは、以下の方法で求めた値である。まず、炭化珪素質多孔体の酸化物被膜を含む任意の断面を、任意の倍率(例えば、10000倍)にて電子顕微鏡で観察し、視野内における酸化物被膜の最大厚さを求める。次に、炭化珪素質多孔体の上記断面において視野の位置を変更し、上記と同様に酸化物被膜の最大膜厚を求める。そして、炭化珪素質多孔体の上記断面上の所定数(2以上であり、例えば20)の視野において酸化物被膜の最大膜厚をそれぞれ取得し、当該所定数の最大膜厚の算術平均を酸化物被膜の厚さとする。
【0038】
上記酸化物被膜は、Si粒子を部分的または全体的に被覆する。酸化物被膜は、例えば二酸化珪素(SiO2)を含む。当該SiO2は、後述する炭化珪素質多孔体の製造時に、Si粒子の表面が酸化されることにより生成される。当該酸化物被膜は、SiO2以外の酸化物を含んでいてもよい。また、当該酸化物被膜は、SiO2を含まず、SiO2以外の酸化物により構成されていてもよい。
【0039】
炭化珪素質多孔体における金属シリサイド粒子の含有率は、例えば5質量%以上であり、好ましくは10質量%以上である。また、金属シリサイド粒子の含有率は、例えば30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下である。炭化珪素質多孔体における金属シリサイド粒子の最大粒径は、例えば5μm以上であり、好ましくは10μm以上である。また、金属シリサイド粒子の最大粒径は、例えば20μm以下であり、好ましくは15μm以下である。金属シリサイド粒子の最大粒径は、上述のβ-SiC粒子の最大粒径と同様の方法により求められる。
【0040】
金属シリサイド粒子の含有率が5質量%以上とされ、金属シリサイド粒子の最大粒径が20μm以下とされることにより、炭化珪素質多孔体において金属シリサイド粒子の分布の均一性が向上される。後述するように、炭化珪素質多孔体が反応焼結により製造される際に、金属シリサイド(金属珪化物とも呼ばれる。)が略均等に分布することにより、炭化珪素質多孔体の略全体において、β-SiC粒子の粒成長(すなわち、粗大化)が促進される。これにより、導電パスを形成するβ-SiC粒子同士の結合部がさらに太くなり、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率がさらに低くなる。また、炭化珪素質多孔体が高温酸化雰囲気に曝露された場合であっても、導電パスの遮断がさらに生じにくくなり、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率の変化がさらに抑制される。すなわち、炭化珪素質多孔体の耐酸化性がさらに向上される。
【0041】
炭化珪素質多孔体では、金属シリサイド粒子が含まれることにより、熱伝導率も増大される。また、金属シリサイド粒子の含有率が20質量%以下とされることにより、炭化珪素質多孔体の熱膨張率が低減され、耐熱衝撃性が向上される。なお、上述の酸化物被膜は、金属シリサイド粒子の表面にも設けられてよい。これにより、炭化珪素質多孔体が高温酸化雰囲気に曝露された場合であっても、金属シリサイド粒子の酸化が抑制される。
【0042】
上記金属シリサイド粒子は、好ましくは、ニッケルシリサイドである。後述する炭化珪素質多孔体の製造時に、原料にニッケル(Ni)が含まれることにより、Siの融点が低下し、β-SiC粒子の粒成長(すなわち、粗大化)がさらに促進される。これにより、導電パスを形成するβ-SiC粒子同士の結合部がより一層太くなり、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率がより一層低くなる。また、炭化珪素質多孔体が高温酸化雰囲気に曝露された場合であっても、導電パスの遮断がより一層生じにくくなり、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率の変化がより一層抑制される。すなわち、炭化珪素質多孔体の耐酸化性がより一層向上される。
【0043】
本実施の形態では、上記金属シリサイド粒子は二珪化ニッケル(NiSi2)である。これにより、炭化珪素質多孔体の耐熱性が向上される。なお、金属シリサイド粒子は、NiSi2に加えて、NiSi2以外のニッケルシリサイド(例えば、Ni3Si、Ni5Si2、Ni2Si、NiSi)を含んでいてもよい。あるいは、金属シリサイド粒子は、NiSi2を含まず、NiSi2以外のニッケルシリサイドを含んでいてもよい。金属シリサイド粒子は、ニッケルシリサイドに加えて、ニッケルシリサイド以外の金属シリサイド(例えば、ジルコニウムシリサイド、鉄シリサイド、チタンシリサイド、タングステンシリサイド等)を含んでいてもよい。あるいは、金属シリサイド粒子は、ニッケルシリサイドを含まず、ニッケルシリサイド以外の金属シリサイドを含んでいてもよい。
【0044】
炭化珪素質多孔体は、アルミニウム(Al)およびホウ素(B)のうち1種以上を含んでいてもよい。Alおよび/またはBは、後述する炭化珪素質多孔体の製造の際に助剤として添加される。炭化珪素質多孔体の製造時に、原料にAlおよび/またはBが含まれることにより、β-SiC粒子の粒成長(すなわち、粗大化)が促進される。これにより、導電パスを形成するβ-SiC粒子同士の結合部が太くなり、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率が低くなる。また、炭化珪素質多孔体が高温酸化雰囲気に曝露された場合であっても、導電パスの遮断が生じにくくなり、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率の変化が抑制される。すなわち、炭化珪素質多孔体の耐酸化性が向上される。
【0045】
炭化珪素質多孔体にAlが含まれる場合、Alは元素として含まれていればよく、Alがどのような状態で炭化珪素質多孔体に含まれているかは問わない。Alは、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)として炭化珪素質多孔体に含まれていてもよい。同様に、炭化珪素質多孔体にBが含まれる場合、Bは元素として含まれていればよく、Bがどのような状態で炭化珪素質多孔体に含まれているかは問わない。Bは、例えば、酸化ホウ素(B2O3)として炭化珪素質多孔体に含まれていてもよい。
【0046】
炭化珪素質多孔体におけるβ-SiC相、Si相および金属シリサイド相の同定および定量は、粉末X線回折法(XRD)の結果を用いてWPPD(whole-powder-pattern decomposition)法によりパターンフィッティングすることにより行った。これらの解析には、例えば、Bruker社製「TOPAS」等のソフトウェアを用いることができる。
【0047】
室温における炭化珪素質多孔体の体積抵抗率は、0.01Ω・cm以上かつ1.0Ω・cm未満である。本明細書では、「室温」とは20℃を意味し、「体積抵抗率」とは、特に断りがない限り、室温における体積抵抗率を意味する。炭化珪素質多孔体の体積抵抗率が1.0Ω・cm未満とされることにより、電気加熱触媒1の通電性が向上され、電気加熱触媒1の迅速な昇温が実現される。また、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率が0.01Ω・cm以上とされることにより、炭化珪素質多孔体に比較的高い電圧が付与された場合であっても、過剰に電流が流れて電気回路が損傷することが防止される。炭化珪素質多孔体の体積抵抗率は、好ましくは0.5Ω・cm以下である。また、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率は、好ましくは0.1Ω・cm以上である。当該体積抵抗率は、四端子法(JIS C2525)により測定可能である。
【0048】
炭化珪素質多孔体を高温酸化雰囲気である950℃の大気中に50時間曝露した後の体積抵抗率の変化率(以下、「抵抗変化率」とも呼ぶ。)は、好ましくは100%以下である。当該変化率は、炭化珪素質多孔体を950℃の大気中に50時間曝露した後の体積抵抗率を、当該曝露を行う前の炭化珪素質多孔体の体積抵抗率(以下、「初期抵抗率」とも呼ぶ。)により除算した値から、1を減算した結果を百分率で表したものである。本明細書では、「抵抗変化率」とは、特に断りがない限り、950℃の大気中に50時間曝露した後の炭化珪素質多孔体の体積抵抗率の変化率を意味する。
【0049】
炭化珪素質多孔体の抵抗変化率が100%以下とされることにより、炭化珪素質多孔体が高温酸化雰囲気に曝露された場合であっても、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率の変動が好適に抑制される。これにより、電気加熱触媒1の通電性能等の諸性能が所望の範囲内に維持される。炭化珪素質多孔体の抵抗変化率は、より好ましくは50%以下である。なお、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率は、β-SiC粒子やSi粒子に含まれる不純物等の影響により低下する可能性がある。この場合、抵抗変化率は、-50%以上であることが好ましく、-10%以上であることが、より好ましい。炭化珪素質多孔体の体積抵抗率は変動しないことが望ましいため、抵抗変化率は0%に近いことが望ましい。
【0050】
炭化珪素質多孔体の気孔率は、例えば30%以上であり、好ましくは40%以上である。また、当該気孔率は、例えば70%以下であり、好ましくは65%以下である。当該気孔率を30%以上とすることにより、炭化珪素質多孔体のヤング率を低減し、耐熱衝撃性を向上させることができる。また、当該気孔率を70%以下とすることにより、炭化珪素質多孔体の緻密性が向上される。その結果、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率が低減されるとともに、炭化珪素質多孔体の耐酸化性および強度が向上される。当該気孔率は、例えば、水銀ポロシメータ等を用いて水銀圧入法(JIS R1655)により測定可能である。
【0051】
炭化珪素質多孔体の気孔径は、例えば1μm以上であり、好ましくは2μm以上である。また、当該気孔径は、例えば15μm以下であり、好ましくは10μm以下である。当該気孔径を1μm以上とすることにより、炭化珪素質多孔体の比表面積が過剰に大きくなって耐酸化性が低下することを抑制することができる。また、当該気孔径を15μm以下とすることにより、炭化珪素質多孔体の緻密性が向上される。その結果、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率が低減されるとともに、炭化珪素質多孔体の耐酸化性および強度が向上される。本明細書では、「気孔径」とは、炭化珪素質多孔体の平均細孔径を意味する。当該気孔径は、例えば、水銀ポロシメータ等を用いて水銀圧入法(JIS R1655)により測定可能である。
【0052】
炭化珪素質多孔体の嵩密度は、例えば1.0g/cm3以上であり、好ましくは1.1g/cm3以上である。また、当該嵩密度は、例えば1.5g/cm3以下であり、好ましくは1.3g/cm3以下である。当該嵩密度を1.0g/cm3以上とすることにより、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率が低減されるとともに、炭化珪素質多孔体の耐酸化性および強度が向上される。また、当該嵩密度を1.5g/cm3以下とすることにより、炭化珪素質多孔体の熱容量が低減されて昇温されやすくなる。当該嵩密度は、例えば、水銀ポロシメータ等を用いて水銀圧入法(JIS R1655)により測定可能である。
【0053】
電極層31は、ハニカム構造体2の外側面に沿って長手方向に延びるとともに、中心軸J1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」とも呼ぶ。)に広がる。電極層31は、電極部41からの電流を長手方向および周方向に広げ、ハニカム構造体2の発熱の均一性を向上させる。電極層31の長手方向の長さは、例えば、ハニカム構造体2の長手方向の長さの80%以上であり、好ましくは90%以上である。より好ましくは、電極層31は、ハニカム構造体2の全長に亘って延びる。
【0054】
電極層31の周方向の角度(すなわち、
図1において、電極層31の周方向両端から中心軸J1に延ばした2つの線分が成す角度)は、例えば30°以上であり、好ましくは40°以上であり、より好ましくは60°以上である。一方、一対の電極層31が近づきすぎてハニカム構造体2内部を流れる電流が減少することを抑制するという観点からは、電極層31の周方向の角度は、例えば140°以下であり、好ましくは130°以下であり、より好ましくは120°以下である。
【0055】
図1に示す例では、一対の電極層31の中心間の周方向の角度(すなわち、
図1において、2つの電極層31の周方向中心から中心軸J1に延ばした2つの線分が成す180°以下の角度)は180°であるが、当該角度はは適宜変更されてよい。例えば、当該角度は150°以上であり、好ましくは160°以上であり、より好ましくは170°以上である。
【0056】
電極層31の厚さ(すなわち、径方向における厚さ)は、電気抵抗が過大となることを防止するとともに、ハニカム構造体2を容器内に収納する際の(すなわち、キャニング時の)破損を防止するという観点から、例えば0.01mm~5mmであり、好ましくは0.01mm~3mmである。
【0057】
電極層31の体積抵抗率は、ハニカム構造体2の体積抵抗率よりも低いことが好ましい。これにより、ハニカム構造体2に比べて電極層31に電流が流れやすくなり、ハニカム構造体2の長手方向および周方向に電流が広がりやすくなる。
【0058】
電極層31は、例えば、導電性セラミックス、金属、または、導電性セラミックスと金属との複合材により形成される。当該導電性セラミックスは、例えば、炭化珪素(SiC)、または、珪化タンタル(TaSi2)や珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物である。当該金属は、例えば、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、Siまたはチタン(Ti)である。電極層31の材質は、1種または2種以上の金属に、熱膨張率低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素および窒化アルミニウム等を添加した複合材であってもよい。
【0059】
電極層31の材質は、ハニカム構造体2と同時に焼成可能であるものが好ましい。電極層31の材質は、耐熱性と導電性との両立の観点から、SiCまたは珪素-炭化珪素(Si-SiC)複合材を主成分とする(具体的には、90質量%以上含有する)セラミックスであることが好ましく、SiCまたはSi-SiC複合材であることがより好ましい。Si-SiC複合材は、骨材としてのSiC粒子、および、SiC粒子を結合させる結合材としてのSiを含有するものであり、複数のSiC粒子が、SiC粒子間に細孔を形成するようにして、Siによって結合されていることが好ましい。
【0060】
電極部41は、例えば、単体金属または合金により形成される。電極部41の材質は、高耐食性と、適切な体積抵抗率および熱膨張率とを有するという観点から、Cr、Fe、Co、Ni、Tiおよびアルミニウム(Al)のうち少なくとも1種を含む合金であることが好ましい。電極部41は、好ましくはステンレス鋼であり、Alを含むことがより好ましい。また、電極部41は、金属-セラミックス混合部材により形成されてもよい。当該金属-セラミックス混合部材に含まれる金属は、例えば、Cr、Fe、Co、Ni、SiまたはTiの単体金属、あるいは、これらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金である。当該金属-セラミックス混合部材に含まれるセラミックスは、例えば、炭化珪素(SiC)、または、金属珪化物(例えば、珪化タンタル(TaSi2)や珪化クロム(CrSi2))等の金属化合物である。当該セラミックスとして、サーメット(すなわち、セラミックスと金属との複合材)が用いられてもよい。当該サーメットは、例えば、金属珪素と炭化珪素の複合材、金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、または、上述の1種以上の金属に、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素および窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを1種以上添加した複合材である。
【0061】
接合部42はそれぞれ、例えば、金属および酸化物を含む複合材料により形成される。当該金属は、例えば、ステンレス鋼、Ni-Fe系合金およびSiのうち1種以上である。当該酸化物は、コージェライト系ガラス、二酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、および、これらの複合酸化物のうち1種以上である。
【0062】
接合部42は、金属以外の導電性物質を、上記金属に代えて、あるいは、上記金属に加えて含んでいてもよい。当該導電性物質は、例えば、ホウ化亜鉛やホウ化タンタル等のホウ化物、窒化チタンや窒化ジルコニウム等の窒化物、および、炭化珪素や炭化タングステン等の炭化物のうち1種以上である。
【0063】
次に、
図2を参照しつつ、ハニカム構造体2の製造の流れの一例について説明する。まず、Si、炭素(C)、および、金属シリサイドの原料金属(本実施の形態では、Ni)を含む原料粉末、並びに、バインダや造孔剤等が、所定の組成になるように秤量され、乾式ミキサにより乾式混合されることにより、混合粉末が得られる。なお、当該原料粉末およびバインダ等の混合は、溶媒(例えば、イオン交換水または有機溶媒等)を用いた湿式混合により行われてもよい。上記原料粉末には、主原料であるSi、CおよびNiに加えて、助剤が添加されてもよい。当該助剤は、例えば、Alおよび/またはBである。
【0064】
バインダとしては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等が利用可能である。造孔剤としては、グラファイト、小麦粉、澱粉、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、発泡樹脂(アクリロニトリル系プラスチックバルーン)、吸水性樹脂等が利用可能である。
【0065】
続いて、上述の混合粉末と適量の水等とがニーダーにより混練され、得られた混練物から土練機により坏土が作製される。そして、当該坏土が押出成形されることにより、ハニカム構造を有する成形体(以下、「ハニカム成形体」とも呼ぶ。)が作製される(ステップS11)。次に、ハニカム成形体に対して、マイクロ波乾燥が行われた後、100℃にて熱風乾燥が行われる。さらに、乾燥後のハニカム成形体に対して、大気雰囲気下において200℃~1000℃にて1時間~10時間の脱脂が行われる。
【0066】
脱脂後のハニカム成形体は、アルゴン(Ar)雰囲気等の不活性ガス雰囲気下にて1250℃~1800℃(好ましくは、1300℃~1750℃)にて0.5時間~5時間焼成される。これにより、ハニカム構造を有する焼成体(以下、「ハニカム焼成体」とも呼ぶ。)が作製される(ステップS12)。
【0067】
その後、ハニカム焼成体の酸化処理が行われることにより、上述のハニカム構造体2が作製される(ステップS13)。ステップS13の酸化処理は、ハニカム構造体2が使用時に酸化雰囲気に曝露される前に行われる予備的な酸化処理であり、以下、「予備酸化処理」とも呼ぶ。当該予備酸化処理は、例えば、大気雰囲気下においてハニカム焼成体が900℃~1300℃にて0.5時間~20時間加熱されることにより行われる。当該予備酸化処理は、酸化エージングとも呼ばれる。ハニカム焼成体に対して予備酸化処理が行われることにより、Si粒子の表面にSiO2等の酸化物被膜が生成され、Si粒子の表面が当該酸化物被膜により被覆される。なお、予備酸化処理の際の温度、時間および雰囲気等は、様々に変更されてよい。また、上述のハニカム成形体の乾燥、脱脂および焼成の際の温度、時間および雰囲気等も、様々に変更されてよい。
【0068】
ハニカム構造体2の製造では、上述の原料粉末におけるNiの平均粒径は、5μm以下であることが好ましい。これにより、後述するハニカム成形体においてNiの分布の均一性が向上される。このため、ハニカム成形体が焼成される際に、ハニカム成形体の略全体においてβ-SiC粒子の粒成長(すなわち、粗大化)が促進される。その結果、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率がさらに低くなるとともに、炭化珪素質多孔体の耐酸化性がさらに向上される。本明細書では、原料粉末の「平均粒径」とは、特に断りがない限り、レーザー回折散乱法(JIS R1629)により粒度分布測定した値であり、体積基準の平均粒径である。
【0069】
上述の原料粉末におけるSiの平均粒径は、例えば1μm~100μmであり、好ましくは2μm~80μmである。また、原料粉末におけるCの平均粒径は、例えば5nm~50μmであり、好ましくは10nm~30μmである。原料粉末におけるAlの平均粒径は、例えば1μm~100μmであり、好ましくは3μm~50μmである。
【0070】
電気加熱触媒1は、上述のように製造されたハニカム構造体2に、一対の電極層31、および、一対の電極部41が固定されることにより製造される。電気加熱触媒1では、ハニカム構造体2の複数のセル23の内側面(すなわち、隔壁22の側面)に触媒が担持さされる。なお、一対の電極層31は、ハニカム構造体2の前駆体であるハニカム成形体に電極層31の原料である電極層ペーストが付与され、ハニカム成形体および電極層ペーストが共に焼成されることにより、ハニカム構造体2と同時に形成されてもよい。
【0071】
次に、表1~表3を参照しつつ、本発明に係るハニカム構造体2の実施例、および、ハニカム構造体2と比較するための比較例について説明する。表1は、実施例のハニカム構造体2および比較例のハニカム構造体の原料組成を示し、表2~表3は、実施例のハニカム構造体2および比較例のハニカム構造体の組成および特性を示す。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表1に示すように、実施例1~7および比較例1~4では、主原料であるSi、C、Niの組成、Niの平均粒径、並びに、助剤の有無、種類および添加量を変更している。実施例1~7のハニカム構造体2は、上述のステップS11~S13により製造した。ステップS12におけるハニカム成形体の焼成温度および焼成時間は、1430℃および2時間である。比較例1のハニカム構造体についても同様である。
【0076】
表2中のβ-SiC、SiおよびNiSi2の含有率は、上述の粉末X線回折法により測定した。X線回折装置としては、封入管式X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製 D8-ADVANCE)を使用した。測定条件はCuKα,40kV,40mA,2θ=10~70°とし、測定のステップ幅は0.002°とした。また、β-SiC、SiおよびNiSi2の最大粒径は、上述の方法により求めた。SiO2の膜厚は、上述の酸化物被膜の厚さの求め方で求めた。
【0077】
表3中の初期抵抗率は、四端子法(JIS C2525)により測定した体積抵抗率である。抵抗変化率は、上述の方法により求めた。具体的には、ハニカム構造体2の隔壁22から切り出された試験片を950℃の大気中に50時間曝露した後、当該試験片の体積抵抗率(以下、「曝露後抵抗率」とも呼ぶ。)を四端子法により測定した。そして、曝露後抵抗率を初期抵抗率により除算した値から、1を減算した結果を百分率で表したものを抵抗変化率とした。ハニカム構造体の体積抵抗率を測定する場合の断面積は、開口率を用いて補正した。
【0078】
実施例1では、ハニカム構造体2の主原料であるSi、C、Niの含有率はそれぞれ、70.9質量%、21.7質量%および7.4質量%であり、Niの平均粒径は0.5μmである。また、主原料(すなわち、Si、CおよびNi)100質量部に対し、バインダ10質量部と、造孔剤2質量部とを添加している。なお、助剤であるAlおよびBは添加されていない。
【0079】
実施例1のハニカム構造体2の構成は、β-SiC、Si、NiSi2、および、酸化物被膜であるSiO2であった。SiO2の膜厚は0.5μmであった。Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、13質量%および10μmであった。β-SiCの含有率および最大粒径はそれぞれ、72質量%および22μmであった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、13質量%および11μmであった。
【0080】
図3は、実施例1のハニカム構造体2の研磨断面を示すSEM(走査型電子顕微鏡)画像である。
図3中の白色部81はNiSi
2であり、黒色部84は気孔である。また、濃い灰色部82はβ-SiCであり、薄い灰色部83はSiである。
図3では、β-SiCを示す灰色部82の一部を破線にて囲み、Siに対応する灰色部83を二点鎖線にて囲む。後出する
図4および
図5においても同様である。
【0081】
実施例1では、原料粉末中のSiが、β-SiCおよびNiSi2の生成において消尽されず、ハニカム構造体2において10質量%以上残存しているため、上述のように、ハニカム構造体2の体積抵抗率が低くなるとともに耐酸化性が向上される。また、β-SiC粒子の最大粒径が15μm以上であるため、導電パスを形成するβ-SiC粒子同士の結合部が太くなり、ハニカム構造体2の体積抵抗率がより低くなるとともに耐酸化性がより向上される。さらに、Si粒子の含有率および最大粒径がそれぞれ、10質量%以上および40μm以下であるため、Si粒子の分布の均一性が向上され、略均等に分布したSi粒子により、β-SiC粒子同士を繋ぐ導電パスが形成される。これにより、ハニカム構造体2の体積抵抗率がさらに低くなるとともに耐酸化性がさらに向上される。その上、Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜(すなわち、SiO2の被膜)が予め設けられているため、ハニカム構造体2の耐酸化性がより一層向上される。具体的には、実施例1では、ハニカム構造体2の初期抵抗率は、0.10Ω・cmと低く、抵抗変化率は10%と小さかった。
【0082】
実施例2では、主原料(すなわち、Si、CおよびNi)100質量部に対し、助剤であるAlを1質量部添加した点を除き、ハニカム構造体2の作製条件は実施例1と同じである。ハニカム構造体2の構成は、実施例1と同じ構成(すなわち、β-SiC、Si、NiSi2、および、酸化物被膜であるSiO2)に、表中には示していないがAl2O3を加えたものであった。SiO2の膜厚は0.4μmであった。Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、13質量%および35μmであった。β-SiCの含有率および最大粒径はそれぞれ、70質量%および26μmであった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、14質量%および15μmであった。実施例2では、ハニカム構造体2の初期抵抗率は、0.15Ω・cmと低く、抵抗変化率は20%と小さかった。
【0083】
実施例3では、助剤であるAlの添加量を2質量部に変更した点を除き、ハニカム構造体2の作製条件は実施例2と同じである。ハニカム構造体2の構成は、実施例2と同じであった。SiO2の膜厚は0.3μmであった。Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、13質量%および32μmであった。β-SiCの含有率および最大粒径はそれぞれ、70質量%および28μmであった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、14質量%および12μmであった。実施例3では、ハニカム構造体2の初期抵抗率は、0.12Ω・cmと低く、抵抗変化率は20%と小さかった。
【0084】
実施例4では、助剤であるAlの添加量を5質量部に変更した点を除き、ハニカム構造体2の作製条件は実施例2と同じである。ハニカム構造体2の構成は、実施例2と同じであった。SiO2の膜厚は0.1μmであった。Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、12質量%および30μmであった。β-SiCの含有率および最大粒径はそれぞれ、68質量%および33μmであった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、14質量%および9μmであった。実施例4では、ハニカム構造体2の初期抵抗率は、0.20Ω・cmと低く、抵抗変化率は30%と小さかった。
【0085】
実施例5では、主原料であるSi、C、Niの含有率をそれぞれ、74.5質量%、17.7質量%および7.8質量%に変更した点を除き、ハニカム構造体2の作製条件は実施例4と同じである。ハニカム構造体2の構成は、実施例4と同じであった。SiO2の膜厚は0.05μmであった。Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、24質量%および38μmであった。β-SiCの含有率および最大粒径はそれぞれ、56質量%および30μmであった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、14質量%および15μmであった。実施例5では、ハニカム構造体2の初期抵抗率は、0.08Ω・cmと低く、抵抗変化率は50%と小さかった。
【0086】
実施例6では、助剤を添加していない点を除き、ハニカム構造体2の作製条件は実施例5と同じである。ハニカム構造体2の構成は、実施例5と同じであった。SiO2の膜厚は0.3μmであった。Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、26質量%および15μmであった。β-SiCの含有率および最大粒径はそれぞれ、56質量%および17μmであった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、16質量%および10μmであった。実施例6では、ハニカム構造体2の初期抵抗率は、0.12Ω・cmと低く、抵抗変化率は50%と小さかった。
【0087】
実施例7では、主原料(すなわち、Si、CおよびNi)100質量部に対し、助剤であるBを0.5質量部添加した点を除き、ハニカム構造体2の作製条件は実施例1と同じである。ハニカム構造体2の構成は、実施例1と同じ構成(すなわち、β-SiC、Si、NiSi2、および、酸化物被膜であるSiO2)に、表中には示していないがB2O3を加えたものであった。SiO2の膜厚は1.0μmであった。Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、12質量%および35μmであった。β-SiCの含有率および最大粒径はそれぞれ、71質量%および25μmであった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、14質量%および15μmであった。実施例7では、ハニカム構造体2の初期抵抗率は、0.52Ω・cmと低く、抵抗変化率は80%と小さかった。
【0088】
比較例1では、Niの平均粒径を35μmとした点を除き、ハニカム構造体の作製条件は実施例1と同じである。ハニカム構造体の構成は、実施例1と同じであった。SiO2の膜厚は0.5μmであった。Siの含有率は13質量%であった。Siの最大粒径は50μm(すなわち、40μmよりも大)と大きかった。β-SiCの含有率は72質量%であった。β-SiCの最大粒径は10μm(すなわち、15μm未満)と小さかった。NiSi2の含有率は13質量%であった。NiSi2の最大粒径は22μm(すなわち、20μmよりも大)と大きかった。
【0089】
図4は、比較例1のハニカム構造体の研磨断面を示すSEM画像である。比較例1では、最大粒径が40μmよりも大きいSi粒子が偏在することにより、β-SiC粒子同士の結合が阻害されている。また、β-SiC粒子の最大粒径も15μm未満と小さいため、β-SiC粒子の結合部における導電パスが細い。このため、高温酸化雰囲気において当該Si粒子およびβ-SiC粒子の結合部が酸化されると、導電パスが遮断されて体積抵抗率が大きく増大する。したがって、ハニカム構造体の耐酸化性は低くなる。さらには、比較例1では、最大粒径が20μmよりも大きいNiSi
2粒子が偏在しており、Niによるβ-SiC粒子の粒成長が促進されなかった部位が多く存在すると考えられる。したがって、ハニカム構造体の耐酸化性はさらに低くなる。具体的には、比較例1では、ハニカム構造体の初期抵抗率は、0.15Ω・cmであり、抵抗変化率は150%(すなわち、100%よりも大)と大きかった。
【0090】
比較例2では、主原料であるSi、C、Niの含有率をそれぞれ、68.5質量%、24.4質量%および7.2質量%に変更し、Niの平均粒径を0.5μmに変更した点を除き、ハニカム構造体の作製条件は実施例1と同じである。ハニカム構造体の構成は、実施例1と同じであった。SiO2の膜厚は0.5μmであった。Siの含有率は5質量%(すなわち、10質量%未満)と小さかった。Siの最大粒径は5μmであった。β-SiCの含有率は87質量%であった。β-SiCの最大粒径は5μm(すなわち、15μm未満)と小さかった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、7質量%および5μmであった。
【0091】
図5は、比較例2のハニカム構造体の研磨断面を示すSEM画像である。比較例2では、Si粒子の含有率が10質量%未満と小さいため、β-SiC粒子同士を繋ぐSi粒子による導電パスが少ない、または、実質的に存在しない。また、β-SiC粒子の最大粒径も15μm未満と小さいため、β-SiC粒子の結合部における導電パスが細い。このため、ハニカム構造体の体積抵抗率は比較的大きくなり、耐酸化性は著しく低下する。具体的には、比較例2では、ハニカム構造体の初期抵抗率は、0.64Ω・cmであり、抵抗変化率は440%(すなわち、100%よりも大)と大きかった。
【0092】
比較例3では、Niの平均粒径を35μmとした点を除き、ハニカム構造体の作製条件は実施例2と同じである。ハニカム構造体の構成は、実施例2と同じであった。SiO2の膜厚は0.5μmであった。Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、12質量%および35μmであった。β-SiCの含有率は71質量%であった。β-SiCの最大粒径は10μm(すなわち、15μm未満)と小さかった。NiSi2の含有率は14質量%であった。NiSi2の最大粒径は25μm(すなわち、20μmよりも大)と大きかった。比較例3では、最大粒径が20μmよりも大きいNiSi2粒子が偏在しており、Niによるβ-SiC粒子の粒成長が促進されなかった部位が多く存在すると考えられる。したがって、ハニカム構造体の耐酸化性は低くなる。具体的には、比較例3では、ハニカム構造体の初期抵抗率は、0.05Ω・cmであり、抵抗変化率は150%(すなわち、100%よりも大)と大きかった。
【0093】
比較例4では、上述のステップS13における予備酸化処理を省略した点を除き、ハニカム構造体の作製条件は実施例4と同じである。ハニカム構造体の構成は、Si粒子の表面に酸化物被膜が形成されなかった点を除き、実施例4と同じであった。比較例4では、Siの含有率および最大粒径はそれぞれ、12質量%および30μmであった。β-SiCの含有率および最大粒径はそれぞれ、68質量%および33μmであった。NiSi2の含有率および最大粒径はそれぞれ、14質量%および10μmであった。比較例4では、ハニカム構造体の初期抵抗率は、0.15Ω・cmであった。また、ハニカム構造体の抵抗変化率は、酸化物被膜が設けられていないため220%(すなわち、100%よりも大)と大きかった。
【0094】
以上に説明したように、炭化珪素質多孔体は、β-SiC粒子と、Si粒子と、金属シリサイド粒子とを含む。β-SiC粒子の最大粒径は15μm以上である。Si粒子の含有率は10質量%以上である。Si粒子の最大粒径は40μm以下である。また、Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜が設けられる。
【0095】
当該炭化珪素質多孔体では、Si粒子の最大粒径が15μm以上と粗大化されることにより、導電パスを形成するβ-SiC粒子同士の結合部が太くなる。また、原料粉末中のSiが消尽されず、Si粒子として10質量%以上残存しているため、β-SiC粒子同士を繋ぐSi粒子の導電パスが好適に形成される。さらに、Si粒子の含有率および最大粒径がそれぞれ、10質量%以上および40μm以下とされることにより、Si粒子の分布の均一性が向上され、β-SiC粒子同士を繋ぐSi粒子の導電パスが略均等に分布する。これにより、ハニカム構造体2の体積抵抗率が低くなり、耐酸化性が向上される。その上、Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜(上記例では、SiO2の被膜)が設けられることにより、ハニカム構造体2の耐酸化性がさらに向上される。したがって、高耐酸化性を有する(すなわち、高温酸化雰囲気下に曝露された後の抵抗変化率が小さい)炭化珪素質多孔体を提供することができる。
【0096】
上述のように、炭化珪素質多孔体では、金属シリサイド粒子の含有率は5質量%以上であり、当該金属シリサイド粒子の最大粒径は20μm以下であることが好ましい。これにより、炭化珪素質多孔体における金属シリサイド粒子の分布の均一性が向上される。すなわち、炭化珪素質多孔体が製造される際に、金属シリサイド粒子を構成する金属により、炭化珪素質多孔体の略全体において、β-SiC粒子の粒成長(すなわち、粗大化)が促進される。その結果、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率をさらに低減させることができるとともに、炭化珪素質多孔体の耐酸化性をさらに向上することができる。
【0097】
上述のように、炭化珪素質多孔体は、AlおよびBのうち1種以上をさらに含むことが好ましい。このように、炭化珪素質多孔体の製造時に、AlおよびBのうち1種以上を助剤として添加することにより、β-SiC粒子の粒成長をさらに促進させることができる。
【0098】
上述のように、金属シリサイド粒子はニッケルシリサイドであることが好ましい。これにより、炭化珪素質多孔体の製造時におけるβ-SiC粒子の粒成長を、より好適に促進させることができる。
【0099】
上述のように、炭化珪素質多孔体の室温における体積抵抗率は、0.01Ω・cm以上かつ1.0Ω・cm未満であることが好ましい。このように、炭化珪素質多孔体では、非常に低い体積抵抗率を実現することができる。
【0100】
上述のように、炭化珪素質多孔体では、950℃の大気中に50時間曝露した後の体積抵抗率の変化率は100%以下であることが好ましい。これにより、より高い耐酸化性を有する炭化珪素質多孔体を提供することができる。
【0101】
上述のハニカム構造体2は、筒状外壁21と、格子状の隔壁22とを備える。隔壁22は、筒状外壁21の内部を複数のセル23に仕切る。筒状外壁21および隔壁22は、上述の炭化珪素質多孔体を含んで構成される。これにより、高耐酸化性を有するハニカム構造体2を実現することができる。
【0102】
上述の電気加熱触媒1は、エンジンから排出される排ガスの浄化処理を行う。電気加熱触媒1は、上述のハニカム構造体2と、ハニカム構造体2の外側面に固定されてハニカム構造体2に電流を付与する一対の電極部41と、を備える。上述のようにハニカム構造体2は高耐酸化性を有するため、電気加熱触媒1による排ガスの浄化処理を効率良く長期間に亘って行うことができる。
【0103】
上述の炭化珪素質多孔体の製造方法は、Si、C、および、金属シリサイドの原料金属を含む原料粉末を成形して焼成することにより焼成体を得る工程(ステップS11~S12)と、当該焼成体に酸化処理を施すことにより炭化珪素質多孔体を得る工程(ステップS13)と、を備える。当該炭化珪素質多孔体は、β-SiC粒子と、Si粒子と、金属シリサイド粒子とを含む。β-SiC粒子の最大粒径は15μm以上である。Si粒子の含有率は10質量%以上である。Si粒子の最大粒径は40μm以下である。また、Si粒子の表面に、厚さ0.01μm以上かつ5μm以下の酸化物被膜が設けられる。これにより、上述のように、高耐酸化性を有する炭化珪素質多孔体を提供することができる。
【0104】
上述のように、当該炭化珪素質多孔体の製造方法では、上記原料金属はNiであり、原料金属の平均粒径は5μm以下であることが好ましい。これにより、炭化珪素質多孔体が製造される際に、当該原料金属の分散の均一性が向上し、炭化珪素質多孔体の略全体において、当該原料金属によりβ-SiC粒子の粒成長(すなわち、粗大化)が促進される。その結果、炭化珪素質多孔体の体積抵抗率をさらに低減させることができるとともに、炭化珪素質多孔体の耐酸化性をさらに向上することができる。
【0105】
上述の炭化珪素質多孔体、ハニカム構造体2および電気加熱触媒1では、様々な変更が可能である。
【0106】
例えば、炭化珪素質多孔体における金属シリサイド粒子の含有率は5質量%未満であってもよく、金属シリサイド粒子の最大粒径は20μmよりも大きくてもよい。
【0107】
また、炭化珪素質多孔体は、AlおよびBの双方を含んでいてもよく、AlおよびBを含んでいなくてもよい。
【0108】
炭化珪素質多孔体の室温における体積抵抗率は、0.01Ω・cm未満であってもよく、1.0Ω・cmよりも大きくてもよい。また、抵抗変化率(すなわち、950℃の大気中に50時間曝露した後の体積抵抗率の変化率)は、100%よりも大きくてもよく、-50%未満であってもよい。
【0109】
上述の炭化珪素質多孔体の製造方法では、金属シリサイドの原料金属であるNiの平均粒径は、5μmよりも大きくてもよい。また、上述のように、当該原料金属はNiには限定されず、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、チタン(Ti)またはタングステン(W)等であってもよい。
【0110】
電気加熱触媒1では、ハニカム構造体2の外形は略円柱状には限定されず、様々に変更されてよい。また、電極層31および電極部41の数および配置も様々に変更されてよい。なお、電気加熱触媒1では、電極層31が省略され、電極部41がハニカム構造体2に直接的に固定されてもよい。
【0111】
ハニカム構造体2は、電気加熱触媒以外の用途(例えば、セラミックスヒータ)に利用されてもよい。
【0112】
上述の炭化珪素質多孔体は、ハニカム構造体2以外の構造体に利用されてもよい。例えば、略円筒状または略平板状等の様々な形状の構造体が、当該炭化珪素質多孔体を含んで構成されてもよい。
【0113】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、自動車等のエンジンからの排ガスの浄化処理に用いられる電気加熱触媒等に利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 電気加熱触媒
2 ハニカム構造体
21 筒状外壁
22 隔壁
41 電極部
S11~S13 ステップ